JP4437623B2 - 電動補助自転車用動力ユニット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、後輪のハブ内にモータおよび減速機と、人力駆動系の内装式変速機とを設けた電動補助自転車用動力ユニットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の動力ユニットとしては、例えば特開2000−43780号公報に開示されたものがある。この公報に示された動力ユニットは、人力駆動用の内装式変速機を車軸に一体的に設けてハブ内の軸心部に配置し、この変速機の径方向の外側に駆動用モータを同一軸線上に位置するように配設するとともに、このモータの側方に遊星歯車式減速機を配設している。
【0003】
これらの部材を収容するハブは、有底円筒状のハブ本体と、このハブ本体の開口部を閉塞する蓋体とによって構成し、外周部にスポーク取付用のリングを固着している。
この動力ユニットを組立てるためには、先ず、有底円筒状に形成したハブ本体に車軸とともに内装式変速機を装着し、次に、モータと減速機とをこの順に組付け、その後、ハブの蓋体を前記ハブ本体に固定することによって行う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したように構成した従来の電動補助自転車用動力ユニットは、内装式変速機の径方向の外側にモータが位置しており、外径が大きくなるという問題があった。また、ハブ本体に車軸および内装式変速機と、モータと、減速機と、蓋体とをこの順に組込まなければならないから、組立時間を短縮することができないという問題もあった。
【0005】
本発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、電動補助自転車用動力ユニットを径方向にコンパクトに形成するとともに、短い時間で簡単に組立てることができるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明に係る電動補助自転車用動力ユニットは、モータをハブ本体の内側底部に配置してこのモータと減速機とをハブ本体内に車幅方向に並設し、ハブの蓋体の内側に前記減速機に向けて開口する凹陥部を形成し、この凹陥部に内装式変速機を収納し、前記蓋体に、前記凹陥部の内面から径方向の内側へ延びて前記内装式変速機の外周部と前記減速機との間を仕切る円板状の仕切壁を設けたものである。
【0007】
本発明によれば、モータと、減速機と、内装式変速機とを車幅方向に並べて配置できる。また、ハブ本体にモータと減速機とを組込む作業と、蓋体に内装式変速機を組込む作業とを別の工程で行うことができる。さらに、この動力ユニットは、組立時に内装式変速機の各部材を蓋体によって保持することができる。
【0008】
また、本発明によれば、内装式変速機に塗布したグリスが遠心力によって径方向の外側へ流れたとしても、蓋体と仕切壁とによって囲まれた空間に貯留させることができる。
【0009】
請求項に記載した発明に係る電動補助自転車用動力ユニットは、請求項に記載した発明に係る電動補助自転車用動力ユニットにおいて、仕切壁にグリス注入口を穿設し、減速機における前記グリス注入口と対向する部位に、ハブの回転方向に沿って延びる突条を形成したものである。
【0010】
この発明によれば、蓋体に内装式変速機を組付けた状態でグリス注入口から内装変速機収納部分にグリスを注入することができる。また、走行時にはハブが回転することによってグリス注入口が減速機の突条に対向するから、グリスが遠心力で流動したときにグリス注入口から減速機側へ漏洩するのを前記突条によって防ぐことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る電動補助自転車用動力ユニットの一実施の形態を図1ないし図8によって詳細に説明する。
図1は本発明に係る動力ユニットを搭載した電動補助自転車の側面図、図2は動力ユニットの平面図で、同図は車体フレームに取付ける部分を部分的に破断した状態で描いてある。図3は動力ユニットの断面図、図4は要部を拡大して示す断面図、図5は減速機の側面図、図6は蓋体に入力部材と二つの一方向クラッチとを組付けた状態を示す側面図である。図7はハブ本体と蓋体の断面図、図8は仕切板を示す図で、同図(a)は正面図、同図(b)は断面図である。
【0012】
これらの図において、符号1で示すものは、この実施の形態による電動補助自転車である。この電動補助自転車1は、後輪2の軸心部に動力ユニット3を搭載し、ペダル4を踏込む力(人力)と、動力ユニット3内のモータ5(図3参照)の動力との合力によって後輪2を駆動して走行するものである。
【0013】
前記後輪2は、軸心部の前記動力ユニット3と、この動力ユニット3のハブ6にスポーク7を介して接続したリム8と、タイヤ9などによって構成している。前記ペダル4を踏込む力は、ペダルクランク軸10に設けたチェーンリング(図示せず)からチェーン11によって動力ユニット3の入力用スプロケット12(図3参照)に伝達される。
【0014】
前記モータ5は、この実施の形態ではブラシ付きDCモータを使用しており、車体フレーム13のシートチューブ14と後輪2との間に配設されたバッテリーから給電されて回転する。このモータ5のモータハウジング15は、図2および図3に示すように、軸線方向の中央部に位置する円筒16と、この円筒16の両端に連結用ボルト17によって固定した左側カバー18と右側カバー19とによって構成している。前記円筒16の内周面に複数の永久磁石20を固着し、前記両カバー18,19の軸心部に、コイル21を有するロータ22を軸受23によって回転自在に支持させている。このロータ22の車体右側の端部には、図3に示すように、出力歯車24を一体に形成している。また、左側カバー18には、前記コイル21に給電するためのブラシ25を取付けている。
【0015】
このモータ5の動力は、人力の大きさに略比例するように増減させる。詳述すると、前記チェーンリングの近傍に設けた踏力検出用センサ26(図1参照)により人力を検出し、前記バッテリーの下方に搭載したコントローラ27によって前記人力の大きさに略比例するようにモータ5の動力を増減させている。
【0016】
前記動力ユニット3は、図3に示すように、前記ハブ6の内部に前記モータ5と、減速機31と、内装式変速機32とを収納することによって形成している。前記ハブ6は、図7に示すように、有底円筒状に形成したハブ本体33と、このハブ本体33の開口部を閉塞する蓋体34とによって構成しており、モータ5と減速機31とを用いて形成した後述する車軸35に軸受36〜39によって回転自在に支持させている。
【0017】
前記ハブ本体33は、外周部にスポーク7を接続するためのフランジ40を一体に形成し、車体左側の端部に後述するドラムブレーキ41(図2参照)のブレーキドラム42を一体に形成している。
前記蓋体34は、図7に示すように、ハブ本体33の開口部に嵌合する外側円筒43と、この外側円筒43の内側に同一軸線上に位置するように設けた内側円筒44と、これら両円筒43,44の車体右側の端部に接続して径方向に延びる円環状の底板45とから形成しており、外周部を固定用ボルト46(図2,3参照)によってハブ本体33の開口端部に固定している。前記内側円筒44と底板45とによって囲まれた部分、言い換えれば車体左側に向けて(減速機31に向けて)開口する凹陥部47に、後述する内装式変速機32を収納している。
【0018】
前記ドラムブレーキ41は、従来からよく知られている拡径式のもので、図1および図2中に符号51で示すシュープレートによって車軸35に支持させている。このシュープレート51の前端部は、図1に示すように、車体フレーム13のチェーンステー52に固定用バンド53によって固定している。このドラムブレーキ41のブレーキレバーを図1中に符号54で示す。図2において、符号55はアンカーピンを示し、56はブレーキカム軸を示す。
【0019】
車軸35は、図2および図3に示すように、車体左側の端部に位置する左側ボルト61と、このボルト61を圧入して保持した前記モータハウジング15と、このモータハウジング15の車体右側の端部に固定用ボルト62によって締結させた減速機用フレーム63と、この減速機用フレーム63に圧入して車体右側へ突出させた右側ボルト64などによって構成している。前記モータハウジング15の車体左側の端部の小径ボス部65に前記軸受36を介してハブ本体33の車体左側の端部を回転自在に支持させている。
【0020】
この車軸35の車体フレーム13への固定は、左側ボルト61と右側ボルト64とをそれぞれ車体フレーム13のエンドプレート66に挿通させ、両ボルト61,64に固定用ナット67を締付けることによって行う。この締結時には、モータハウジング15の前記小径ボス部65の外端面に凹設した位置決め用の丸穴68(図2参照)に前記シュープレート51のストッパーピン69を嵌合させる。このストッパーピン69はリベットによって形成している。
【0021】
この実施の形態では、ストッパーピン69と丸穴68とを車軸35の軸心を挾んで一方と他方の二箇所に配設している。このようにストッパーピン69を丸穴68に嵌合させることによって、モータ駆動時の反力がストッパーピン69からシュープレート51を介して車体フレーム13に伝達され、前記反力を車体フレーム13で支えることができる。
【0022】
また、モータハウジング15の外端面がシュープレート51に密着することによってモータ5の熱がシュープレート51を介して車体フレーム13側に伝導されるから、ハブ6内に収納されているモータ5を冷却することができる。
【0023】
減速機31は、モータ5の回転を減速してハブ6に伝達するもので、図3および図5に示すように、前記減速機用フレーム63に支軸71を介して回転自在に支持させた3個の中間歯車72と、前記蓋体34の内側円筒44に回転自在に支持させた内歯歯車からなる外周歯車73とを備えている。
前記減速機用フレーム63は、モータハウジング15の車体右側の端面に突出させた三箇所の取付座74に脚部75を車体右側から嵌合させ、この脚部75に固定用ボルト62を貫通させてモータハウジング15に固定している。
【0024】
前記中間歯車72は、合成樹脂によって成形しており、大径歯車76と小径歯車77とを一体に形成している。この中間歯車72の大径歯車76は前記出力歯車24に噛合させ、小径歯車77は前記外周歯車73に噛合させている。この外周歯車73は、外周部を前記蓋体34の外側円筒43に一方向クラッチ78を介して接続している。この一方向クラッチ78は、スプラグ型のものを使用し、外周歯車73から外側円筒43のみに動力が伝達されるように構成している。この一方向クラッチ78のスプラグ片を図3および図4において符号78aで示し、外輪を符号78bで示し、内輪を符号78cで示す。前記外輪78bは、図3および図4中に符号79で示すホルダーリングによって車体左側への移動が阻止されている。前記ホルダーリング79は、前記外側円筒43の先端とハブ本体33の段部とによって挟持している。
【0025】
図5において、この中間歯車72の大径歯車76に形成した符号80で示すものは、3個の中間歯車72の位相を一致させるためのマークである。このマーク80の先端が示す大径歯車76の歯を出力歯車24に噛合させることによって、3個の中間歯車72の位相が一致し、全ての中間歯車72の小径歯車77を外周歯車73に噛合させることができる。
【0026】
前記内装式変速機32は、従来からよく知られているように遊星歯車機構を用いた2段変速型のもので、図3および図4に示すように、前記入力用スプロケット12を固着した円筒状の入力部材81と、この入力部材81の外周部とハブ6の蓋体34との間に介装した低速段用一方向クラッチ82と、前記入力部材81の車体左側の端部に設けた遊星歯車式増速機83と、この遊星歯車式増速機83の外周歯車84と前記蓋体34との間に介装した高速段用一方向クラッチ85と、遊星歯車式増速機83の太陽歯車86を用いて構成した切換機構87とによって構成している。
【0027】
前記入力部材81は、内周部を車軸35の前記右側ボルト64に前記軸受37,38によって回転自在に支持させるとともに、外周部に前記軸受39を介して蓋体34を回転自在に支持している。すなわち、この入力部材81は、蓋体34と右側ボルト64との間に軸受37〜39を介して介装されている。
前記低速段用一方向クラッチ82は、パウル型のもので、入力部材81から蓋体34へ動力を伝達するように構成している。詳述すると、この低速段用一方向クラッチ82は、図4および図6に示すように、ラチェット片82aを入力部材81に回転方向への移動が規制される状態で回動自在に支持させ、このラチェット片82aが係合する外周側の内歯部材82bを蓋体34の底板45の内周部に圧入によって固定している。
【0028】
前記遊星歯車式増速機83は、前記入力部材81に立設したキャリアピン91に遊星歯車92を回転自在に支持させ、外周歯車84を前記高速段用一方向クラッチ85を介して蓋体34に接続している。前記外周歯車84は、この実施の形態では高速段用一方向クラッチ85の一部を構成するように形成している。
この高速段用一方向クラッチ85は、パウル型のものを用いて前記外周歯車84から蓋体34へのみ動力が伝達されるように構成しており、図4および図6に示すように、ラチェット片85aを蓋体34の内側円筒44に回転方向への移動が規制される状態で回動自在に支持させ、このラチェット片85aが係合する内周側の外歯部材85bに前記外周歯車84を一体に形成している。
【0029】
この高速段用一方向クラッチ85および前記遊星歯車92と、前記減速機31との間には、本発明に係る仕切壁を構成する仕切板93を配設している。この仕切板93は、図8に示すように円板状に形成し、図4に示すように、外周部を蓋体34の内側円筒44にサークリップ94によって保持させて蓋体34の凹陥部47の内周面から径方向の内側へ延びている。また、この仕切板93は、蓋体34との間に形成された変速機収納空間にグリスを注入するためのグリス注入口95を穿設している。さらに、この仕切板93に隣接する前記減速機用フレーム63には、前記グリス注入口95と対向する部位にハブ6の回転方向に沿って延びる突条96を一体に形成している。
【0030】
遊星歯車式増速機83の太陽歯車86は、円筒状に形成して車軸35の右側ボルト64に回転自在および軸線方向に移動自在に支持させている。この太陽歯車86の車体左側の端部には、減速機用フレーム63に形成した歯97と協働してドッグクラッチ98を構成する歯99を一体に形成し、内周部には、後述する切換機構87の駆動用ピン100を内周側段部86aとサークリップ101,102とによって挾んで係合させている。
【0031】
前記ドッグクラッチ98は、太陽歯車86が図4に示すように車体左側に移動して歯97と歯99とが噛合することにより接続し、太陽歯車86が車体右側に移動し、歯97から歯99が離間して前記噛合状態が解消されることによって切断される。このドッグクラッチ98が接続状態になって太陽歯車86の回転が減速機用フレーム63によって阻止されることにより、前記入力部材81の回転が遊星歯車式増速機83と高速段用一方向クラッチ85とを介して蓋体34に伝達される。また、ドッグクラッチ98が切断されることによって、太陽歯車86が自由に回転できるようになって遊星歯車式増速機83を経由する動力伝達系が遮断され、前記入力部材81の回転が低速段用一方向クラッチ82を介して蓋体34に伝達される。入力部材81の回転数を一定とした場合、前記ドッグクラッチ98が接続する状態に較べてドッグクラッチ98が切断される状態では、ハブ6の回転数は低くなる。
【0032】
前記ドッグクラッチ98の接続・切断状態を切換機構87によって切換えている。この切換機構87は、前記太陽歯車86に係合させた駆動用ピン100を右側ボルト64のガイド穴103に車幅方向へ移動自在に嵌合させ、このピン100をプッシュロッド104と圧縮コイルばね105とによって車幅方向へ移動させて太陽歯車86を軸線方向に平行移動させる。前記プッシュロッド104は、前記右側ボルト64の軸心部の貫通孔64aに移動自在に挿入して車体右側へ突出させ、突出側端部に操作機構(図示せず)を接続している。前記圧縮コイルばね105は、右側ボルト64の中空部106に装填し、前記駆動用ピン100と盲プラグ107との間に弾装している。
【0033】
このように構成した切換機構87においては、駆動用ピン100をプッシュロッド104により圧縮コイルばね105の弾発力に抗して車体左側へ移動させることによって、駆動用ピン100とともに太陽歯車86が車体左側へ移動し、前記ドッグクラッチ98が接続する。また、プッシュロッド104を車体右側へ移動させることにより、駆動用ピン100が圧縮コイルばね105の弾発力によって車体右側へ移動し、これに伴って太陽歯車86が同方向へ移動してドッグクラッチ98が切断される。
【0034】
このように構成した電動補助自転車用動力ユニット3を組立てるためには、先ず、モータ5に減速機31を固定用ボルト62によって固定して車軸35を組立てる。このときには、予めモータハウジング15に左側ボルト61を取付け、減速機用フレーム63に右側ボルト64を取付けておく。この右側ボルト64には盲プラグ107を予め取付けておく。
【0035】
モータ5に減速機31を組付けた後、減速機31から突出する右側ボルト64に遊星歯車式増速機83の太陽歯車86を装着し、さらに、駆動用ピン100および圧縮コイルばね105を装着する。その後、太陽歯車86にサークリップ101,102を取付ける。減速機31は、外周歯車73と一方向クラッチ78を取外した状態とする。次に、上述したように形成した車軸35をハブ本体33の開口側端部(車体右側の端部)からハブ本体33内に挿入し、モータハウジング15の小径ボス部65に軸受36を介してハブ本体33を接続する。
【0036】
一方、上記とは別の工程でハブ6の蓋体34に内装式変速機32と減速機31の外周歯車73および一方向クラッチ78などを後述する手順によって組付ける。この組付けは、先ず、蓋体34の内周部に、軸受39と、低速段用一方向クラッチ82の内歯部材82bとを圧入し、高速段用一方向クラッチ85のラチェット片85aを装着する。
【0037】
次に、入力部材81を蓋体34に組付ける。このとき、入力部材81には、予め軸受37,38と、低速段用一方向クラッチ82のラチェット片82aとを組付けておく。入力部材81の蓋体34への組付けは、蓋体34の内側(ハブ本体33側)から行い、組付け工程の途中でラチェット片82aを内歯部材82bに係合させる。この組付けが終了した後、高速段用一方向クラッチ85の外歯部材85b(遊星歯車式増速機83の外周歯車84)を組付ける。さらに、遊星歯車増速機83のキャリアピン91を入力部材81に取付けるとともに、このキャリアピン91に、遊星歯車92をこれが外周歯車84に噛合する状態で取付ける。
【0038】
このように蓋体34に内装式変速機32を組込んだ後、仕切板93をサークリップ94によって取付け、仕切板93のグリス注入口95から内部にグリスを注入する。仕切板93を上述したように蓋体34に取付けることによって、内装式変速機32が蓋体34から外れるのを阻止できるようになる。
グリス注入後、減速機31の外周歯車73と一方向クラッチ78とを蓋体34に装着する。この外周歯車73と一方向クラッチ78の各摺動部にもグリスを塗布する。このグリスによって外周歯車73と一方向クラッチ78とが蓋体34に保持されるから、次の工程で蓋体34をとり回すときに前記両部材が脱落するのを防ぐことができる。
【0039】
ハブ本体33と蓋体34とに上述したように各部材をそれぞれ組込んだ後、ハブ本体33内にホルダーリング79を挿入し、蓋体34の外側円筒43をハブ本体33内に嵌合させる。この嵌合作業の途中で、減速機31の外周歯車73が中間歯車72に噛合し、内装式変速機32の遊星歯車92が太陽歯車86に噛合する。また、入力部材81の内周側に設けた軸受37,38が右側ボルト64に嵌合する。蓋体34をハブ本体33に組付けた後に固定用ボルト46で蓋体34をハブ本体33に固定することによって、動力ユニット3の組立て作業が終了する。
【0040】
上述したように構成した電動補助自転車用動力ユニット3は、モータ5と、減速機31と、内装式変速機32とを車幅方向に並べて配置しているから、これらの部材が径方向に並ぶ場合に較べて外径を小さく形成することができる。
また、ハブ本体33にモータ5と減速機31とを組込む作業と、蓋体34に内装式変速機32を組込む作業とを別の工程で行うことができるから、全ての部材をハブ本体33に順次組込む場合に較べて、組立時間を短縮することができる。
【0041】
さらに、この動力ユニット3は、組立時に内装式変速機32の入力部材81と、低速側および高速段用一方向クラッチ82,85と、遊星歯車92および外周歯車84を蓋体34によって保持することができる。すなわち、相対的に小型の部材を組合わせて形成される一方向クラッチ82,85や、小型の部品である遊星歯車92を簡単に組込むことができる。
【0042】
さらにまた、上述した動力ユニット3は、仕切板93を蓋体34に取付けているから、内装式変速機32に塗布したグリスが遠心力によって径方向の外側へ流れたとしても、このグリスを蓋体34と仕切板93とによって囲まれた空間に貯留させることができる。
【0043】
加えて、前記仕切板93にグリス注入口95を形成しているから、蓋体34に内装式変速機32を組付けた状態でグリス注入口95から内部の内装変速機収納部分にグリスを注入することができる。しかも、走行時にハブ6が回転することによってグリス注入口95が減速機31の突条96に対向するから、グリスがグリス注入口95から減速機31側へ漏洩するのを前記突条96によって防ぐことができる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、モータと、減速機と、内装式変速機とが車幅方向に並ぶから、内装式変速機の外周側にモータを設けた従来の動力ユニットに較べて径方向の小型化を図ることができる。
また、ハブ本体にモータと減速機とを組込む作業と、蓋体に内装式変速機を組込む作業とを別の工程で行うことができるから、全ての部材をハブ本体に順次組込む場合に較べて、組立時間を短縮することができる。さらに、この動力ユニットは、組立時に内装式変速機の各部材を蓋体によって保持することができるから、相対的に小さい部材を多く有する内装式変速機の組込み作業を簡単に行うことができる。
【0045】
また、本発明によれば、内装式変速機に塗布したグリスが遠心力によって径方向の外側へ流れたとしても、このグリスを蓋体と仕切壁とによって囲まれた空間に貯留させることができる。このため、長期間にわたって内装式変速機をグリスによって潤滑することができ、内装式変速機の信頼性が高い動力ユニットを実現することができる。
【0046】
請求項記載の発明によれば、蓋体に内装式変速機を組付けた状態でグリス注入口から内装変速機収納部分にグリスを注入することができるから、グリスを簡単に注入することができる。また、走行時には、グリス注入口から減速機側へグリスが漏洩するのを減速機の突条が防ぐようになるから、グリスの注入を簡単に行うことができる構造を採りながら、前記グリスが蓋体側に貯留し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る動力ユニットを搭載した電動補助自転車の側面図である。
【図2】 動力ユニットの平面図である。
【図3】 動力ユニットの断面図である。
【図4】 要部を拡大して示す断面図である。
【図5】 減速機の側面図である。
【図6】 蓋体に入力部材と二つの一方向クラッチとを組付けた状態を示す側面図である。
【図7】 ハブ本体と蓋体の断面図である。
【図8】 仕切板を示す図である。
【符号の説明】
2…後輪、3…動力ユニット、6…ハブ、5…モータ、31…減速機、32…内装式変速機、33…ハブ本体、34…蓋体、47…凹陥部、93…仕切板、95…グリス注入口、96…突条。

Claims (2)

  1. 後輪のハブを有底円筒状のハブ本体と、このハブ本体の開口部を閉塞する蓋体とによって構成し、このハブ内に駆動用モータおよび減速機と、人力駆動系の内装式変速機とを設けた電動補助自転車用動力ユニットにおいて、前記モータを前記ハブ本体の内側底部に配置してこのモータと前記減速機とをハブ本体内に車幅方向に並設し、前記蓋体の内側に前記減速機に向けて開口する凹陥部を形成し、この凹陥部に前記内装式変速機を収納し
    前記蓋体に、前記凹陥部の内面から径方向の内側へ延びて前記内装式変速機の外周部と前記減速機との間を仕切る円板状の仕切壁を設けたことを特徴とする電動補助自転車用動力ユニット。
  2. 請求項記載の電動補助自転車用動力ユニットにおいて、仕切壁にグリス注入口を穿設し、減速機における前記グリス注入口と対向する部位に、ハブの回転方向に沿って延びる突条を形成したことを特徴とする電動補助自転車用動力ユニット。
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