しかしながら、上述の水分センサは、土壌中、即ち被測定対象物中に埋設されて使用するものである。言い換えれば、水分センサは、土壌等、その被測定対象物に暴露された状態で使用されることとなる。その結果、被測定対象物に含有される水分や他の組成物質から侵食され易く、特に、水分センサが連続的に使用される場合には、その耐久性を低下させるという問題点があった。
また、連続的に使用される水分センサに対するメンテナンスは、水分センサを被測定対象物から取り出さなければ行うことができないので、メンテナンスが煩雑であるという問題点があった。更に、土壌中に埋設されて使用されている水分センサに対し、メンテナンスや故障等により土壌から取り出す必要が生じた場合には、その対応する水分センサを見つけだすことが困難であるという問題点があった。
加えて、水分センサにて計測された土壌の水分状態に応じて灌水量を制御する灌水制御装置には、その土壌に植えられた植物に対して最適な灌水量での灌水を施すことが望まれる。従って、該灌水制御装置では、水分センサは、育成する植物の近傍に配設されることが望ましいが、植物の近傍に水分センサを埋設すると植物の根を傷つけるといった事態が発生しかねず、植物の成長に悪影響を与えかねない。一方で、根の位置を回避して(植物の植設位置から離れた位置に)水分センサを設置すると、測定される水分状態は、植物が実際に存在する環境からズレたものとなりかねない。故に、植物の存在する環境における正確な水分状態に応じて的確な灌水を実行することが困難であるという問題点があった。
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、被測定対象物に含有される水分をその被測定対象物の外方から非接触で測定することのできる水分測定装置と、その水分測定装置により、土壌の水分状態を正確に検出し、その検出された水分状態に対応した的確な灌水量で、土壌に対する灌水を制御する土壌灌水制御システムとを提供することを目的としている。
この目的を達成するために請求項1記載の水分測定装置は、被測定対象物に含有される水分を測定してその測定された水分を示す水分情報を出力するものであり、前記被測定対象物の表面から放射される赤外線を検出する赤外線検出部を有し、その赤外線検出部により検出された赤外線の強度に基づいて前記被測定対象物の表面温度を非接触で測定し得る対象温度測定手段と、前記被測定対象物と比較する標準物質の温度を測定する標準温度測定手段と、その標準温度測定手段により測定された標準物質の温度と、前記対象温度測定手段により測定された被測定対象物の表面温度との温度差を算出する温度差算出手段と、前記標準物質の温度と前記被測定対象物の表面温度との温度差と、前記被測定対象物に含有される水分との間の相関関係を示す演算式を記憶する演算式記憶手段、または、前記温度差に対応させて前記被測定対象物に含有される水分を示す水分情報を予め記憶するテーブルのいずれかと、前記演算式記憶手段に記憶される演算式または前記テーブルに基づいて、前記温度差算出手段により算出された温度差から前記被測定対象物の水分情報を導出する水分情報導出手段とを備え、前記被測定対象物の外部において、前記被測定対象物に非接触で前記被測定対象物が含有する水分を測定するものである。
請求項2記載の水分測定装置は、請求項1記載の水分測定装置において、前記被測定対象物は土壌とされており、前記演算式記憶手段は、前記標準物質の温度と前記土壌の表面温度との温度差と、その土壌中の水分の負圧を示すPF値との間の相関関係を示す演算式を記憶するものであり、前記テーブルは、前記温度差に対応させて前記水分情報として前記PF値を予め記憶するものであり、前記水分情報導出手段は、前記演算式記憶手段に記憶される演算式または前記テーブルに基づいて、前記温度差算出手段により算出された温度差から前記被測定対象物のPF値を水分情報として導出するものである。
請求項3記載の水分測定装置は、請求項1または2に記載の水分測定装置において、前記対象温度測定手段は、前記被測定対象物の1の測定エリアの複数の測定点から放射される赤外線をそれぞれ個別に検出する複数の赤外線検出素子を前記赤外線検出部に備えており、その赤外線検出素子のそれぞれにて検出された赤外線の強度に基づいて、前記被測定対象物の複数の測定点における表面温度をそれぞれ測定するものであり、前記温度差算出手段および前記水分情報導出手段は、前記対象温度測定手段により測定された前記各測定点の表面温度のそれぞれに基づいて、前記各測定点に対応する温度差および水分情報をそれぞれ導出するものであり、前記被測定対象物について、前記1の測定エリアの複数の測定点で個別に水分を測定し得るものである。
請求項4記載の水分測定装置は、請求項3記載の水分測定装置において、前記複数の赤外線検出素子の少なくとも一部は、前記被測定対象物の測定エリアの中心から外方へ向かう1の方向に沿った複数の測定点において赤外線を検出するために、前記1の方向に対応した1の列に配列されている。
請求項5記載の水分測定装置は、請求項4記載の水分測定装置において、前記複数の赤外線検出素子は、2の列に配列されると共にその各列の中央近傍で前記2の列が交差する十字状に配置されている。
請求項6記載の水分測定装置は、被測定対象物に含有される水分を測定してその測定された水分を示す水分情報を出力するものであり、複数の赤外線検出素子にて形成され前記被測定対象物の1の測定エリアにおける複数の測定点の表面から放射される赤外線を前記各赤外線検出素子によってそれぞれ個別に検出する赤外線検出部を有し、その赤外線検出部により検出された前記各測定点の赤外線の強度に基づいて、前記各測定点における表面温度を非接触で測定し得る対象温度測定手段と、前記被測定対象物と比較する標準物質の温度を測定する標準温度測定手段と、その標準温度測定手段により測定された標準物質の温度と、前記対象温度測定手段により測定された被測定対象物の表面温度とを前記各測定点毎に比較し、前記各測定点の表面温度と標準物質の温度とに温度差があるか否かを判断する比較判断手段と、その比較判断手段により温度差がないと判断された前記測定点の内、最も測定エリアの中心側となる測定点の位置に基づいて、前記被測定対象物の測定表面に沿った方向における水分の分布長さを確定する表面方向分布長確定手段と、所定量の水分を前記被測定対象物を代表する代表物に供給した場合に形成される水分分布のモデル形状の大きさを示すモデル形状情報を記憶するモデル情報記憶手段と、前記被測定対象物の水分の分布形状を前記モデル形状の相似形とし、前記表面方向分布長確定手段により確定された分布長さと、前記モデル情報記憶手段に記憶されるモデル形状情報であって前記モデル形状の測定表面に沿った方向の長さとを比較し、その比較結果に応じて前記モデル形状を形成した水分の所定量を案分して、前記被測定対象物の測定エリア内に含有される水分量を算出する水分量算出手段とを備え、その水分量算出手段により算出された水分量を水分情報として出力することにより、前記被測定対象物の外部において、前記被測定対象物に非接触で前記被測定対象物が含有する水分を測定するものである。
請求項7記載の水分測定装置は、請求項6記載の水分測定装置において、前記モデル形状を形成した所定量の水分を、前記被測定対象物に供給した場合に前記表面方向分布長確定手段により確定される分布長さと、前記モデル形状情報の測定表面に沿った方向の長さとを比較し、前記モデル形状に対する前記被測定対象物の実際の水分の分布形状のズレ量を算出するズレ量算出手段を備えており、前記水分量算出手段は、そのズレ量算出手段により算出されたズレ量に基づいて補正された水分量を算出するものである。
請求項8記載の水分測定装置は、請求項6または7に記載の水分測定装置において、前記被測定対象物は土壌とされており、前記モデル形状は、平面上で交差する2方向の半径の少なくとも一方と、その平面に直交する高さ方向の半径とによって定義される楕円体とされている。
請求項9記載の水分測定装置は、請求項8記載の水分測定装置において、土壌の特性に関する土質情報を入力する入力手段と、前記モデル情報記憶手段は、前記土質情報に対応するモデル形状情報を記憶するものであり、前記水分量算出手段は、前記モデル情報記憶手段に記憶されるモデル形状情報の内、前記入力手段により入力された土質情報に対応するモデル形状情報を選択し、その選択されたモデル形状情報の測定表面に沿った方向の長さを用いて、前記被測定対象物の測定エリア内に含有される水分量を算出するものである。
請求項10記載の水分測定装置は、請求項6から9のいずれかに記載の水分測定装置において、前記複数の赤外線検出素子の少なくとも一部は、前記被測定対象物の測定エリアの中心から外方へ向かう1の方向に沿った複数の測定点において赤外線を検出するために、前記1の方向に対応した1の列に配列されている。
請求項11記載の水分測定装置は、請求項10記載の水分測定装置において、前記複数の赤外線検出素子は、2の列に配列されると共にその各列の中央近傍で前記2の列が交差する十字状に配置されている。
請求項12記載の水分測定装置は、請求項1から3のいずれかに記載の水分測定装置において、請求項6から11のいずれかに記載の水分測定装置の各構成を備えたものである。
請求項13記載の土壌灌水制御システムは、灌水を施すべき土壌について測定された土壌中の水分に応じて灌水を制御する制御手段を備えたものであり、請求項1から12のいずれかに記載の水分測定装置と、水系の液体を土壌に供給する流路を形成する配管と、前記配管の下流側の先端部分に配設され、灌水を施すことにより育成される育成物が植えられた位置近傍の土壌に前記水系の液体を供給する供給部とを備えており、前記水分測定装置は、土壌表面より上方に配設されると共に、前記供給部から水系の液体が供給される範囲の土壌表面から放射される赤外線の少なくとも一部が前記赤外線検出部に入射される位置に配置されており、前記制御手段は、水系の液体の供給量およびタイミングの少なくとも一方を、前記水分測定装置により測定された土壌に含有される水分に応じて制御するものである。
請求項14記載の土壌灌水制御システムは、請求項13記載の土壌灌水制御システムにおいて、前記供給部は、育成物が植えられた位置近傍の上方であって且つ土壌表面に水系の液体を直接的に供給する位置に配設されており、前記水分測定装置は、前記供給部から水系の液体が供給される位置を中心とする所定範囲が測定エリアとなるように、該位置を中心とする所定範囲の土壌表面から放射される赤外線の少なくとも一部が前記赤外線検出部に入射される位置に配置されており、土壌に対する水系の液体の供給は前記供給部からの滴下により行われるものである。
請求項15記載の土壌灌水制御システムは、請求項13または14に記載の土壌灌水制御システムにおいて、前記土壌は、複数の区画に分割され1の区画に1の育成物を植えるものとされており、前記供給口は、前記区画毎にそれぞれ各1ずつ設けられており、前記配管は、該配管内を流動する前記水系の液体の流路を前記各供給口側へそれぞれ分岐させる分岐部と、予め定められた複数の前記区画が属する組毎に配設されると共に該組に属する前記各区画に対応する前記分岐部の最も上流側の分岐部より上流に配置され、前記組に属する各区画への前記水系の液体の流路を開閉する流路開閉手段とを備えており、前記水分測定装置の赤外線検出部は、前記1の組に対して1設けられており、前記制御手段は、前記水分測定装置により前記組の土壌の水分が測定されると、その測定された土壌の水分に応じて対応する前記流路開閉手段を開閉動作させ、前記組に属する全区画に対し、同じ条件で水系の液体の供給量またはタイミングを制御するものである。
請求項16記載の土壌灌水制御システムは、請求項13または14に記載の土壌灌水制御システムにおいて、前記供給口は、1の育成物が植えられる1の区画毎にそれぞれ設けられ、前記配管は、該配管内を流動する前記水系の液体の流路を前記各供給口側へそれぞれ分岐させる分岐部と、その分岐部のそれぞれに対応して設けられると共にその分岐部への前記水系の液体の流路を開閉する分岐流路開閉手段とを備えており、前記水分測定装置は、前記区画毎に水分を測定するものであり、前記制御手段は、前記水分測定装置により前記各区画毎に水分が測定されると、その測定された土壌の水分に応じて対応する前記分岐流路開閉手段を動作させ、土壌への水系の液体の供給量またはタイミングを前記各区画毎に制御するものである。
請求項17記載の土壌灌水制御システムは、請求項13から16のいずれかに記載の土壌灌水制御システムにおいて、前記水分測定装置により各区画毎または組毎に測定された水分に対応する前記水分情報を前記区画または組に対応付けて表示する表示手段と、前記水系の液体の供給開始後から所定時間が経過するまで、前記水分測定装置にて測定される水分に対応する前記水分情報を、前記表示手段において非表示とする水分情報非表示手段とを備えている。
請求項1記載の水分測定装置によれば、被測定対象物の表面から放射される赤外線は赤外線検出部により検出され、検出された赤外線の強度に基づいてその被測定対象物の表面温度が非接触で対象温度測定手段により測定される。対象温度測定手段により測定された被測定対象物の表面温度と標準温度測定手段により測定された標準物質の温度との温度差が、温度差算出手段により算出される。そして、演算式記憶手段に記憶される演算式またはテーブルに基づいて、温度差算出手段により算出された温度差から被測定対象物の水分情報が、水分情報導出手段により導出される。これにより、被測定対象物の外部において、被測定対象物に非接触で、被測定対象物に含有される水分を測定することができる。言い換えれば、水分測定装置の検出部位を、被測定対象物に直接接触させることなく、被測定対象物の水分を測定することができる。
よって、被測定対象物が装置を侵食(腐食)あるいは汚染する成分を含有するものであっても、その影響を直接的に受けることなく水分測定を行うことができるという効果がある。特に、長期間連続して水分の測定を行う場合においては、水分を検出する検出部位を被測定対象物に貫入(埋設)する従来の装置では、被測定対象物からの影響を大きく受けるため、そのダメージが大きい。しかし、本装置は、被測定対象物からの影響を直接的に受けることなく、装置(水分の検出部位、赤外線検出部)を連続使用することができるので、被測定対象物からの影響を低減させるための特別な機構や、高耐久性の材料の使用を不要とし、装置コストを低減することができる。また、装置のライフサイクルを長くすることができ、ランニングコストを低く抑制することができる。
また、検出部位(対象温度測定手段)を被測定対象物に貫入(埋設)する必要がないことから、その設置や測定を簡便かつ容易とすることができ、測定操作にかかる作業者の労力を省力化することができるという効果がある。加えて、水分測定装置を連続して使用する場合は、検出部位に対してもメンテナンスを行う必要があるが、従来の水分測定装置のような検出部位を被測定対象物中に埋設する構成ではないため、被測定対象物から検出部位を取り出すといった作業を行うことなくメンテナンスを行うことができ、メンテナンス作業を容易とすることができる。
更には、被測定対象物に検出部位を貫入する必要がないので、被測定対象物の自由度を向上させることができるという効果がある。つまり、被測定対象物に非接触、非破壊で、水分を測定できるため、例えば、検出部位の貫入そのものが困難な剛体、超硬物質や、穴を開けることが忌避される成型品や建材等であっても、水分を測定することができる。
また、従来の装置に比べて、被測定対象物の設置場所に制限されることなく、水分を測定することができるという効果がある。例えば、従来の装置では、被測定対象物に検出部位を貫入(埋設)する必要性から、被測定対象物が高所や入り組んだ場所に在する場合には測定不能となるという不具合があるが、本装置は、被測定対象物に対し遠隔の位置において水分を測定することができるので、かかる不具合の発生を低減することができる。
請求項2記載の水分測定装置によれば、請求項1記載の水分測定装置の奏する効果に加え、被測定対象物は土壌とされており、演算式記憶手段には、標準物質の温度と土壌の表面温度との温度差と、その土壌中の水分の負圧を示すPF値との間の相関関係を示す演算式が記憶されており、またテーブルには、温度差に対応させてPF値が予め記憶されている。そして、水分情報導出手段により、演算式記憶手段に記憶される演算式またはテーブルに基づいて、温度差算出手段にて算出された温度差から被測定対象物のPF値が水分情報として導出される。導出されたPF値は水分情報として出力されるので、土壌の水分状態を、PF値により、土壌を管理する管理者や作業者に通知することができる。ここでPF値は、土壌の水分の指標として汎用される指標であるため、土壌を管理する管理者や作業者に、感覚的に土壌の水分状態を理解させやすく、また、管理者側においては使い勝手がよいという効果がある。
更に、水分測定装置を連続して使用する場合には、故障などにより検出部位(対象温度測定手段)の交換やメンテナンスを行う必要があるが、従来の水分測定装置のような検出部位を土壌中(被測定対象物中)に埋設する構成ではないので、メンテナンスに際し、検出部位を土壌中から見つけ出すといった困難な作業を不要とし、メンテナンス性を向上させることができる。
請求項3記載の水分測定装置によれば、請求項1または2に記載の水分測定装置の奏する効果に加え、対象温度測定手段に備えられた複数の赤外線検出素子により、被測定対象物の1の測定エリアの複数の測定点から放射される赤外線がそれぞれ個別に検出され、その赤外線検出素子のそれぞれにて検出された赤外線の強度に基づいて、被測定対象物の複数の測定点における表面温度がそれぞれ測定される。そして、その対象温度測定手段により測定された各測定点の表面温度のそれぞれに基づいて、各測定点に対応する温度差および水分情報が、温度差算出手段および水分情報導出手段により、それぞれ導出される。このため、被測定対象物について、1の測定エリアの複数の測定点でそれぞれ個別に水分を測定することができる。よって、1の測定エリアにおいて各部の水分状態を詳細に検出することができ、1の測定エリア内の正確な水分状態を、測定者等に通知することができるという効果がある。
1の測定エリア内において水分を測定する測定点を1箇所とすると、その測定された水分を示す1の水分情報により測定エリア全体の水分状態が示されることとなる。ここで、被測定対象物が不均質な物質であると、水分状態にバラツキが発生し易い。かかる不均質な被測定対象物に対し、測定エリア内の1の検出測定点で測定された水分情報にて、その測定エリア全体の水分状態を示すと、示された水分状態が、被測定対象物の実態と整合しないという事態が発生する。しかし、1の測定エリアの複数の測定点で個別に水分を測定することができるので、1の測定エリア内の各部についてそれぞれの水分状態を(水分情報により)示すことができ、被測定対象物が不均質な物質であっても、正確な水分の分布状況を測定者等に把握させることができる。
請求項4記載の水分測定装置によれば、請求項3記載の水分測定装置の奏する効果に加え、複数の赤外線検出素子の少なくとも一部は、被測定対象物の測定エリアの中心から外方へ向かう1の方向に沿った複数の測定点において赤外線を検出するために、1の方向に対応した1の列に配列されているので、少ない数の赤外線検出素子にて、的確に測定エリア内の各部を網羅(代表)する水分状態の検出を行うことができる上、装置コストの上昇を抑制することができるという効果がある。
赤外線検出素子を複数設けると、測定エリア内の水分状態を詳細に検出することができる一方で、当然、装置コストが増大する。このため、配設する赤外線検出素子の数は少ないほど良いが、少ない数の赤外線検出素子を無造作に配設すると、デタラメな測定点で水分測定が行われてしまうこととなり、取得された水分情報にて測定エリアの水分状態を的確に示すことができない。
ここで、水分が被測定対象物に供給された場合には、その供給位置を中心とし、中心から外方へと拡散浸透する。地中で拡散された水分の分布形状は、土壌表面からの上面視(平面方向)においておおよそ等方的であることが多く、かかる場合には水分の分布形状は、土壌表面からの上面視において略円形状となる。従って、測定エリアの中心を該分布形状の中心とすれば、被測定対象物の測定エリアの中心から外方へ向かう1の方向に沿った複数の測定点において赤外線を検出するように、複数の赤外線検出素子の少なくとも一部を構成することにより、赤外線検出素子の数を抑制しつつ、測定エリア全体の水分状態を網羅した的確な水分情報を得ることができる。
請求項5記載の水分測定装置によれば、請求項4記載の水分測定装置の奏する効果に加え、複数の赤外線検出素子は、2の列に配列されると共にその各列の中央近傍で2の列が交差する十字状に配置されているので、中心から4方向に測定エリア内の水分を測定することができ、請求項4に記載した複数の赤外線検出素子を1の方向に対応した1の列に配列する場合に比べて、より高精度に、測定エリア内の水分を測定することができるという効果がある。その上、ランダムに多数の赤外線検出素子を設ける場合に比べて、その配設数を抑制することができ、装置コストを抑制することができるという効果がある。
また、一方の列において何らかの理由で測定不能な状況(いずれかの赤外線検出素子による赤外線検出が不能となる状況)が発生しても、他の列に配置された赤外線検出素子の検出結果にて、測定結果をカバーすることができるという効果がある。従って、装置の信頼性を向上させることができる。
請求項6記載の水分測定装置によれば、赤外線検出部の各赤外線検出素子により検出された各測定点の赤外線の強度に基づいて、各測定点における表面温度が対象温度測定手段によって非接触で測定される。対象温度測定手段により測定された被測定対象物の表面温度は、各測定点毎に、標準温度測定手段により測定された標準物質の温度と比較され、各測定点の表面温度と標準物質の温度とに温度差があるか否かが比較判断手段により判断される。比較判断手段により温度差がないと判断された測定点の内、最も測定エリアの中心側となる測定点の位置に基づいて、被測定対象物の測定表面に沿った方向における水分の分布長さが表面方向分布長確定手段により確定される。また、所定量の水分を被測定対象物を代表する代表物に供給した場合に形成される水分分布のモデル形状の大きさを示すモデル形状情報が、モデル情報記憶手段には記憶されている。そして、その記憶されるモデル形状情報であってモデル形状の測定表面に沿った方向の長さと、表面方向分布長確定手段により確定された分布長さとが水分量算出手段により比較される。更に、その比較結果に応じて、モデル形状を形成した水分の所定量が案分されて、被測定対象物の測定エリア内に含有される水分量が算出される。水分量算出手段により算出された水分量は水分情報として出力されるので、被測定対象物の外部において、被測定対象物に非接触で被測定対象物が含有する水分を測定することができる。
よって、被測定対象物が装置を侵食(腐食)あるいは汚染する成分を含有するものであっても、その影響を直接的に受けることなく水分測定を行うことができるという効果がある。特に、長期間連続して水分の測定を行う場合においては、水分を検出する検出部位を被測定対象物に貫入(埋設)する従来の装置では、被測定対象物からの影響を大きく受けるため、そのダメージが大きい。しかし、本装置は、被測定対象物からの影響を直接的に受けることなく、装置(水分の検出部位、赤外線検出部)を連続使用することができるので、被測定対象物からの影響を低減させるための特別な機構や、高耐久性の材料の使用を不要とし、装置コストを低減することができる。また、装置のライフサイクルを長くすることができ、ランニングコストを低く抑制することができる。
また、検出部位(対象温度測定手段)を被測定対象物に貫入(埋設)する必要がないことから、その設置や測定を簡便かつ容易とすることができ、測定操作にかかる作業者の労力を省力化することができるという効果がある。加えて、水分測定装置を連続して使用する場合は、検出部位に対してもメンテナンスを行う必要があるが、従来の水分測定装置のような検出部位を被測定対象物中に埋設する構成ではないため、被測定対象物から取り出すといった作業を行うことなくメンテナンスを行うことができ、メンテナンス作業を容易とすることができる。
更には、被測定対象物に検出部位を貫入する必要がないので、被測定対象物の自由度を向上させることができるという効果がある。つまり、被測定対象物に非接触、非破壊で、水分を測定できるため、例えば、検出部位の貫入そのものが困難な剛体、超硬物質や、穴を開けることが忌避される成型品や建材等であっても、水分を測定することができる。
加えて、従来の装置に比べて、被測定対象物の設置場所に制限されることなく、水分を測定することができるという効果がある。例えば、従来の装置では、被測定対象物に検出部位を貫入(埋設)する必要性から、被測定対象物が高所や入り組んだ場所に在する場合には測定不能となるという不具合があるが、本装置は、被測定対象物に対し遠隔の位置において水分を測定することができるので、かかる不具合の発生を低減することができる。
また、測定エリア内の水分状態を測定エリア内の水分量によって測定者等に通知することができる。言い換えれば、被測定対象物を採取して水分の蒸発量から含有される水分量を求めるといった煩雑な操作を行うことなく、被測定対象物に含有される水分量(測定エリア内の水分量の総量や重量分率)を測定することができるという効果がある。このように測定結果を水分量で導出することにより、操作者が、他の装置による測定結果との互換性を求める場合に対応でき、他の装置による測定結果との比較を容易とすることができるという効果がある。
請求項7記載の水分測定装置によれば、請求項6記載の水分測定装置の奏する効果に加え、モデル形状を形成した所定量の水分を被測定対象物に供給した場合に表面方向分布長確定手段により確定される分布長さと、モデル形状情報の測定表面に沿った方向の長さとが、ズレ量算出手段により比較され、被測定対象物の実際の水分の分布形状のモデル形状に対するズレ量が算出される。そして、水分量算出手段により、そのズレ量算出手段によって算出されたズレ量に基づいて補正された水分量が算出される。
よって、実際の被測定対象物に即した正確な水分量の測定を行うことができるという効果がある。多岐に亘る被測定対象物を網羅する代表物を選定することは困難であるため、実際に測定する被測定対象物と代表物との間には性質の差異が発生する。この性質の差異により、所定量の水分が被測定対象に供給された場合に形成される水分の分布形状が、モデル形状とは一致しない場合がある。そして、この形状のズレが大きいと、算出される水分量がデタラメな値となっていまい、測定結果の信頼性を低下させてしまう。しかし、所定量の水分を被測定対象物に供給した場合に表面方向分布長確定手段により確定される分布長さと、モデル形状情報の測定表面に沿った方向の長さとの比較結果(ズレ量)に基づいて、補正された水分量が算出されるので、被測定対象物の水分量の測定結果を正確なものとすることができる。
請求項8記載の水分測定装置によれば、請求項6または7に記載の水分測定装置の奏する効果に加え、被測定対象物は土壌とされており、モデル形状は、平面上で交差する2方向の半径の少なくとも一方と、その平面に直交する高さ方向の半径とによって定義される楕円体とされている。選定された灌水条件の範囲で土壌に灌水を行うと、土壌中の水分の分布形状は略楕円体となる。よって、実際の土壌中の水分の分布形状に近い楕円体をモデル形状として用いるので、そのモデル形状の大きさを示すモデル形状情報に基づいて算出される水分量を正確なものとすることができるという効果がある。
更に、水分測定装置を連続して使用する場合には、故障などにより検出部位(対象温度測定手段)の交換やメンテナンスを行う必要があるが、従来の水分測定装置のような検出部位を被対象測定物中に埋設する構成ではないので、メンテナンスに際し、検出部位を土壌中から見つけ出すといった困難な作業を不要とし、メンテナンス性を向上させることができる。
尚、ここで、灌水とは、水系の液体を土壌に供給することであり、一般的な水を供給するのみならず、例えば肥料や薬剤が含有された水系の液体を供給することを含む概念である。
請求項9記載の水分測定装置によれば、請求項8記載の水分測定装置の奏する効果に加え、土壌の特性に関する土質情報が入力手段から入力されると、水分量算出手段により、モデル情報記憶手段に記憶されるモデル形状情報の内、入力手段により入力された土質情報に対応するモデル形状情報が選択され、その選択されたモデル形状情報の測定表面に沿った方向の長さを用いて、被測定対象物の測定エリア内に含有される水分量が算出される。
土質は、その土壌を構成する土砂の粒度や成分等によって決定され、例えば、粘土質、砂地、堆肥土壌、泥炭等に分類される土壌の性質である。ここで、1の土質の下で規定されたモデル形状情報を用いて、土質が大きく異なる土壌で水分量を算出すると、算出された水分量が実際の値から大きくはずれてしまいかねない。しかし、本装置は、土質情報に対応するモデル形状情報を予め記憶しており、入力手段により入力された土質情報に対応するモデル形状情報に基づいて、水分量が算出されるので、実際の土質に即した信頼線の高い水分量を算出(測定)することができるという効果がある。
請求項10記載の水分測定装置によれば、請求項6から9のいずれかに記載の水分測定装置の奏する効果に加え、複数の赤外線検出素子の少なくとも一部は、被測定対象物の測定エリアの中心から外方へ向かう1の方向に沿った複数の測定点において赤外線を検出するために、1の方向に対応した1の列に配列されているので、少ない数の赤外線検出素子にて、的確に測定エリア内の水分の分布長さを確定することができ、装置コストの上昇を抑制することができるという効果がある。
赤外線検出素子を複数設けると、当然、装置コストが増大する。このため、配設する赤外線検出素子の数は少ないほど良いが、少ない数の赤外線検出素子が無造作に設けられると、対象温度測定手段による表面温度の測定がデタラメな測定点で行われてしまい、被測定対象物の水分の分布長さを確定することが困難となる。
ここで、水分が被測定対象物に供給された場合には、その供給位置を中心とし、中心から外方へと拡散浸透する。地中で拡散された水分の分布形状は、土壌表面からの上面視(平面方向)においておおよそ等方的であることが多く、かかる場合には水分の分布形状は、土壌表面からの上面視において略円形状となる。従って、測定エリアの中心を該分布形状の中心とすれば、被測定対象物の測定エリアの中心から外方へ向かう1の方向に沿った複数の測定点において赤外線を検出するように、複数の赤外線検出素子の少なくとも一部を構成することにより、赤外線検出素子の数を抑制しつつ、被測定対象物の水分の分布長さを適切に確定することができる。
請求項11記載の水分測定装置によれば、請求項10記載の水分測定装置の奏する効果に加え、複数の赤外線検出素子は、2の列に配列されると共にその各列の中央近傍で2の列が交差する十字状に配置されているので、中心から4方向に対し、測定エリア内の水分の分布長さを確定することができる。よって、請求項10に記載した複数の赤外線検出素子を1の方向に対応した1の列に配列する場合に比べて、より高精度に、被測定対象物の水分の分布長さを確定することができ、その結果、より正確に測定エリア内の水分量を測定することができるという効果がある。
また、水分の分布形状の中心が測定エリアの中心からずれる場合があるが、十字状の4方向に沿ったズレであれば、その略円形状の水分分布についての直径を確定することができるので、ズレが発生しても被測定対象物の水分の分布長さを支障なく確定することができるという効果がある。また、一方の列において何らかの理由で測定不能な状況(いずれかの赤外線検出素子による赤外線検出が不能となる状況)が発生しても、他の列に配置された赤外線検出素子の検出結果にて、測定結果をカバーすることができるという効果がある。従って、装置の信頼性を向上させることができる。その上、ランダムに多数の赤外線検出素子を設ける場合に比べて、その配設数を抑制することができ、装置コストを抑制することができるという効果がある。
請求項12記載の水分測定装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の水分測定装置の奏する効果に加えて、請求項6から11のいずれかに記載の水分測定装置の各構成を備えているので、1の装置により、被測定対象物(被測定対象物の1の測定エリア)に含有される水分量と、被測定対象物の1の測定エリア内の各測定点における水分情報(PF値やその他の水分を示す指標)とにより、被測定対象物の水分を測定することができるという効果がある。これによれば、1の測定エリア内の各測定点の個別の水分状態に基づいたミクロな視点と、その測定エリア全体に含有される水分量に基づいたマクロな視点との両者により、被測定対象物の水分状態に対する多面的な知見を、測定者等に与えることができる。
また、共通の赤外線検出素子によって検出された赤外線の強度に基づいて、上記した複数種類の異なる水分情報を得ることができるので、各水分情報(水分量とその他の水分情報)の測定にそれぞれ特化した装置を別体で設ける場合に比べて、装置コストを削減できるという効果がある。
請求項13記載の土壌灌水制御システムによれば、配管により水系の液体が土壌に供給される。配管の下流側の先端部分には供給部が配設されており、この供給部により、灌水を施すことにより育成される育成物が植えられた位置近傍の土壌に水系の液体が供給される。請求項1から12のいずれかに記載の水分測定装置は、土壌表面より上方に配設されると共に、供給部から水系の液体が供給される範囲の土壌表面から放射される赤外線の少なくとも一部が、その赤外線検出部に入射される位置に配置される。そして、供給部から水系の液体が供給された土壌中の水分は、かかる水分測定装置により測定される。測定された土壌に含有される水分に応じて、水系の液体の供給量およびタイミングの少なくとも一方は、制御手段によって制御される。よって、水分を測定するために検出部位を土壌中に埋設する必要がなく、育成物の根や地下茎を水分測定装置によって損傷することがないという効果がある。
また、従来の水分測定装置では、育成物の根や地下茎を損傷することを懸念して、育成物の近傍の水分状態が測定困難であった。しかし、本水分測定装置では、育成物の根を損傷することがないので、育成物の根の位置に規制されることなく、水分を測定する測定エリアを自由に設定することができる。土壌の水分状態に応じて灌水を実行する場合には、育成物に対して灌水が施される(水系の液体が供給される)ことと、育成物が植えられた位置近傍における水分の状態を監視し、その監視した水分状態に基づいた灌水を実行することとが重要である。水分状態の監視位置(範囲)が育成物が植えられた位置とはかけ離れた位置であっては、育成物に対する適切な灌水は実行できないからである。本システムでは、育成物が植えられた位置近傍の土壌に水系の液体が供給され、また、育成物の根の位置に規制されることなく水分を測定する測定エリアを自由に設定することができるので、最も水分状態を監視するべき範囲、即ち、育成物の植えられた位置近傍を含む範囲(供給部から水系の液体が供給される範囲)の水分状態に応じて、灌水を制御することができる。故に、育成物に対し過不足なく効果的な灌水を行うことができるという効果がある。
請求項14記載の土壌灌水制御システムによれば、請求項13記載の土壌灌水制御システムの奏する効果に加え、供給部は、育成物が植えられた位置近傍の上方であって且つ土壌表面に水系の液体を直接的に供給する位置に配設される。そして、供給部から水系の液体が供給される位置を中心とする所定範囲が測定エリアとなるように水分測定装置の赤外線検出部は配置され、その供給位置を中心とする所定範囲の土壌表面から放射される赤外線の少なくとも一部が、赤外線検出部に入射される。このため、供給位置を中心とする所定範囲の土壌の水分が測定される。また、供給部から土壌に対する水系の液体の供給は滴下により行われる。
よって、育成物の植えられた位置近傍に照準を合わせた低水量での灌水(水系の液体の供給)を実行でき地下水汚染を発生させ難い上、滴下された水系の液体はゆっくりと土壌に浸透拡散するため根の発育に必要な空気を土壌中において確保することができるという効果がある。また、水系の液体は土壌表面に直接的に供給されるので、育成物の葉を濡らさずに灌水を実行でき、病害虫の発生を抑制することができるという効果がある。
更に、滴下により土壌中に浸透拡散した水の分布形状は、土壌表面において略円形状であって土壌中において略楕円体となるため、水分測定装置が水分量算出手段を備えたものであってモデル形状を楕円体として測定エリア内の水分量を算出するものである場合において、実際の水分の分布形状とモデル形状とを整合させることができ、水分算出手段により算出される水分量を適切なものとすることができるという効果がある。
また、水分測定装置が十字状に配列された赤外線検出素子を備えている場合には、いずれかの方向の列の赤外線検出素子によって赤外線が検出されていれば、水分の分布長さを確定することができるので、何らかの理由で赤外線の入射光路の一部が遮断されても、水分量の測定に支障が生じることはない。従って、測定された水分に基づいて灌水を実行する本システムの動作の信頼性を向上させることができる。
請求項15記載の土壌灌水制御システムによれば、請求項13または14に記載の土壌灌水制御システムの奏する効果に加え、土壌は、複数の区画に分割され1の区画に1の育成物が植えられている。供給口は、1の区画毎にそれぞれ各1ずつ設けられており、配管内を流動する水系の液体の流路は、配管の分岐部により各供給口側へそれぞれ分岐され、水系の液体は各供給口まで供給される。また、配管には、予め定められた複数の区画が属する組毎に配設されると共に該組に属する各区画に対応する分岐部の最も上流側の分岐部よりも上流に配置される流路開閉手段が設けられている。そして、この流路開閉手段により、組に属する各区画への水系の液体の流路が開閉される。水分測定装置の赤外線検出部は、1の組に対して1設けられており、水分測定装置により組の土壌の水分が測定されると、制御手段により、その測定された土壌の水分に応じて対応する流路開閉手段が開閉され、組に属する全区画に対し、同じ条件で水系の液体の供給量またはタイミングが制御される。
よって、過剰品質となる不必要な(水分測定装置の)赤外線検出部や流路開閉手段等の装置数を削減することができ、システム全体を構築するために必要なコストを抑制することができるという効果がある。例えば、同種の育成物が植えられた各区画の土壌の状態がおおよそ均質である場合には、各区画の灌水の条件を同じ条件とすることができる。かかる場合に、各区画毎に灌水を制御することは無駄であるので、その区画を1の組として管理し、各組に1配設された水分測定装置の赤外線検出部にて検出された赤外線の強度に基づいて測定される水分を代表値として、その組に属する各区画の灌水を制御することにより、的確かつ効率的に灌水を実行することができる。また、組単位で灌水動作を管理することにより、各区画単位で灌水動作を制御する場合に比べてデータの処理量を低減することができるので、制御手段の制御負担を軽減することができるという効果がある。
請求項16記載の土壌灌水制御システムによれば、請求項13または14に記載の土壌灌水制御システムの奏する効果に加え、供給口は、1の育成物が植えられる1の区画毎にそれぞれ設けられている。配管内を流動する水系の液体の流路は、配管の分岐部により各供給口側へそれぞれ分岐され、水系の液体は各供給口まで供給される。また、配管には、その分岐部のそれぞれに対応して設けられる分岐流路開閉手段が設けられており、その分岐部への水系の液体の流路がこの分岐流路開閉手によって開閉される。制御手段は、水分測定装置により各区画毎に測定された土壌の水分に応じて対応する分岐流路開閉手段を動作させる。これにより、土壌への水系の液体の供給量またはタイミングを各区画毎に制御することができる。よって、各区画毎に異なる制御が必要な場合、例えば、各区画毎に土壌の状態が異なる場合や、育成物がセンシティブであって個別に対応した灌水を実行する必要があるものなどに対応した、高精度な灌水を実行することができるという効果がある。
請求項17記載の土壌灌水制御システムによれば、請求項13から16のいずれかに記載の土壌灌水制御システムの奏する効果に加え、水分測定装置により各区画毎または組毎に測定された水分に対応する水分情報が、表示手段により、区画または組に対応付けて表示される。ここで、水系の液体の供給開始後から所定時間が経過するまでは、水分測定装置にて測定される水分に対応する水分情報は、水分情報非表示手段によって、表示手段における表示が非表示とされる。
よって、土壌の管理者や作業者などは、表示手段に表示される水分情報により、土壌の水分状態を確認することができるという効果がある。その上、信頼性の低い水分情報が表示手段に表示されることを回避し、土壌の管理者や作業者など、その水分情報を閲覧する閲覧者に、混乱を与えることを回避できるという効果がある。水系の液体の供給が開始されると、土壌中の水分は変化するが、土壌中において水分状態が平衡状態に達するまでは、出力される水分情報の信頼性は低下する。かかる信頼性の低い水分情報が表示されてしまうと、その水分情報に基づいて、実際には不要なアクションが土壌の管理者や作業者によって行われるといった事態が発生しかねない。そこで、本システムでは、水系の液体の供給開始後から所定時間が経過するまでは、水分情報を非表示とし、信頼性の低い水分情報によって土壌の管理者や作業者などが誤ったアクションを起こすことを抑制している。
尚、表示手段は、独立して設けられても良く、また、水分測定装置あるいは制御手段が設けられる装置に設けられても良い。また、水分情報非表示手段は、測定そのものを非実行とすることによって水分情報を非表示とするものであっても良く、測定は実行するが表示手段への水分情報の出力を非実行とするものであっても良い。更には、測定後に表示手段へ出力された水分情報を表示手段において非表示とするものであっても良い。
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の1実施形態である灌水制御システム100の概略を示す外観図である。
本灌水制御システム100は、非接触で土壌の水分を測定する水分センサ装置20を備え、その水分センサ装置20で測定された水分に応じて灌水を制御するシステムである。
この灌水制御システム100には、栽培土壌101に供給する水を貯留する原水タンク8と、栽培土壌101に供給する肥料濃厚液を貯留する肥料濃厚液タンク9とが設けられており、供給経路3により、原水タンク8および肥料濃厚液タンク9に貯留される水および肥料濃厚液は、栽培土壌101に供給される。
供給経路3は、原水タンク8からの水が輸送される水供給管路10aと、肥料濃厚液タンク9からの肥料濃厚液が輸送される液肥供給管路10bと、水または肥料濃厚液、或いは水と肥料濃厚液との混合液が輸送される混合供給管路10cとを備えている。
水供給管路10aの上流側の端部は原水タンク8に挿入されており、水供給管路10aの経路上には、原水タンク8の水を送出する定量ポンプである貯水ポンプ11aが配設されている。また、水供給管路10aには流量センサ5が設けられており、水供給管路10a内を輸送される水の流量がこの流量センサ5により検出されるようになっている。なお、この流量センサ5は、後述するポンプ側電磁弁13aの下流側に配設されており、ポンプ側電磁弁13aにて調整された水の流量が検出されるようになっている。
液肥供給管路10bの上流側の端部は液肥タンク9に挿入されており、液肥供給管路10bの下流側の端部は水供給管路10aの下流側の端部に連結されている。液肥供給管路10bの経路上には、肥料濃厚液を送出する定量ポンプである液肥ポンプ11bが配設されている。更に、水供給管路10aと液肥供給管路10bとにはそれぞれ逆止弁が設けられており、混合供給管路10cからの逆流が防止されている。
混合供給管路10cは、水供給管路10aと液肥供給管路10bとの連結位置から下流側に配設され、栽培土壌101に設けられた複数のベット(畝)のそれぞれに灌水(施肥を含む)を実行するために、各ベットのそれぞれに対応した分岐配管を備えている。各分岐配管の下流側は、各ベット上に敷設された灌水チューブ2にて形成されている。
灌水チューブ2は、栽培土壌101の各ベット毎にそれぞれ1ラインずつ敷設された樹脂製のチューブであり、長手方向に沿って、チューブ壁面に複数の散水孔(分岐部)が穿設されている。散水孔は、灌水チューブ2が敷設されたベットに植えられた各植物(育成物)のそれぞれに対応して各1ずつ設けられている。
本実施形態においては、栽培土壌101の各ベットにおいて所定面積に区分された1の区画に、1の植物が植えられている。言い換えれば、1のベット(栽培土壌101)は複数の区画に分割されている。このため、散水孔は、各区画のそれぞれに各1ずつ設けられていることとなる。尚、各区画には、それぞれ1〜nの識別番号が全区画で連番となるように付与されており、メイン制御装置1および水分センサ装置20においては、それぞれの識別番号に基づいて各区画の管理が実行される。
また、灌水チューブ2には、散水孔と連通するノズル2aが連設されている(図2参照)。かかるノズル2aにより、灌水チューブ2内を輸送された液体(輸液、即ち水、肥料濃厚液、混合液のいずれか)の流路は、植物の根元近傍へと分岐され、ノズル先端2aから、輸液が栽培土壌101上の所定位置(ドロップポイントP)に滴下される。
尚、ここで、滴下とは、栽培土壌101の表面の定位置(本実施形態ではドロップポイントPに相当)にドロップ状または糸状で輸液を供給することを示しており、かかる土壌表面の定位置にドロップ状または糸状となる条件で輸液を供給することが、「選定された灌水条件の範囲で土壌に灌水を行う」ことに該当する。
また、供給経路3は、減圧弁12や電磁弁13など、供給経路3内を輸送される輸液の流路を開閉する管路開閉器を備えており、これらを別々に開閉させることにより水と肥料濃厚液とを別々に供給、停止させることができるように構成されている。
電磁弁13の内、ポンプ側電磁弁13aは、水供給管路10aに設けられており、通電量に比例して弁の開放量が調整される比例制御電磁弁で構成されている。つまり、このポンプ側電磁弁13aの開放量が変更されることにより、水供給管路10aから混合供給管路10cに流入する水の流量が調整され、栽培土壌101に供給される混合液の濃度を変更することができるようになっている。
電磁弁13の内、混合供給管電磁弁13bは、混合供給管路10cの分岐配管のそれぞれに設けられた複数の電磁弁で構成されており、分岐配管毎に輸液の供給と停止とを行うものである。
更には、電磁弁13の内、チューブ側電磁弁13c(図2参照)は、灌水チューブ2の各散水孔のそれぞれに対応して設けられ、各区画の識別番号と同じ識別番号で管理される複数のチューブ側第1電磁弁〜チューブ側第n電磁弁で構成されている。チューブ側第1電磁弁は、該散水孔を開閉するものであり、灌水制御システム100は、このチューブ側電磁弁13cにより個々に散水孔を開閉することにより、栽培土壌101への灌水(輸液の滴下)を、各区画毎に個別に実行できるように構成されている。
尚、液肥供給管路10bには流量を調整する弁は非設とされており、液肥供給管路10bから混合供給管路10cへは、液肥ポンプ11bの動作によって、一定量の肥料濃厚液が供給される。
また、灌水制御システム100は、日射センサ7と、水分センサ装置20と、日射センサ7と水分センサ装置20とに接続されるメイン制御装置1とを備えている。日射センサ7は、日射量を検出する一般的なセンサであり、栽培土壌101全体のほぼ中央部に設置されている。この日射センサ7で検出された日射量は、デジタルデータに変換された後、日射センサ7からメイン制御装置1に出力される。
水分センサ装置20は、各ベットの個々の区画毎に栽培土壌101の水分を測定する装置であり、各区画毎に設けられ対応する区画の水分状態を検出するための水分センサ6を備えている。水分センサ6は赤外線センサで構成されており、水分センサ装置20は、栽培土壌101表面から放射される赤外線の強度を水分センサ6にて検出することにより土壌の表面温度を測定し、測定された土壌の表面温度と、同じく赤外線センサで構成される温度センサ50(図3参照)により測定された気温との温度差から、土壌中の水分状態を示す水分情報(PF値、水分量)を導出するように構成されている。導出された水分情報は、メイン制御装置1に出力される。尚、本水分センサ装置20は、PF値と水分量との両者を測定するように構成されているが、PF値のみを測定する装置または水分量のみを測定する装置であってもよい。また、赤外線センサとしては、赤外線のもつ熱効果による素子温度の上昇によって生ずる素子の電気的性質の変化を検知するものであって、サーモパイル型、焦電型、ボロメータ型のような各種の一般的なセンサが用いられる。
メイン制御装置1は、水分センサ装置20および日射センサ7から入力された水分情報および日射量等に基づいて植物の生育環境を管理すると共に、システムの各部を制御し、栽培土壌101に対する灌水(施肥を含む)を実行する装置である。
尚、本実施の形態で灌水とは、一般的な水のみを供給することに限られるものでなく、水に各種の薬剤(殺菌剤や殺虫剤等)が混合された混合液(水系の液体)を供給することを含む概念である。従って、水系の液体である肥料濃厚液によって行われる本実施形態の施肥は、広義には灌水に含まれるものとする。
具体的には、メイン制御装置1は、設定入力した各時刻において灌水を実行する。灌水に際しては、供給する肥料濃度に応じて、水、肥料濃厚液、水と肥料濃厚液の混合液のいずれかを供給するように、貯水ポンプ11aおよび液肥ポンプ11bの駆動と、ポンプ側電磁弁13aとを制御する。また、灌水(施肥を含む)を実行するベットに対応する混合供給管電磁弁13bを動作させて、対応する混合供給管10cの流路を開通させる。更には、水分センサ装置20から入力された水分情報に応じて、チューブ側電磁弁13cを開閉し、各区画毎に灌水量を調整する。
これにより、灌水(目的濃度の肥料が含有された水系の液体の供給)が、各区画に対して個別に実行される。これによれば、その区画に植えられたそれぞれの植物に、過不足なく最適な灌水を実行することができる。
また、メイン制御装置1には操作パネル22が備えられており、操作者による所定の入力操作により、灌水時刻や肥料濃度、更には適正水分値(適正なPF値の範囲或いは適正な水分量の範囲)が登録されるようになっている。肥料濃度は、灌水時刻毎に異なる肥料濃度を設定できるように灌水時刻毎に設定可能とされている。この肥料濃度を変更することにより、水のみの灌水、肥料濃厚液の原液での灌水を実行することができる。この操作パネル22により実行される入力操作の操作手順や入力値は、メイン制御装置1に設けられた表示装置21に表示される。登録された灌水時刻、肥料濃度、適正水分値は、書換可能な不揮発性のメモリ(図示省略)に記憶される。
また、表示装置21には、メイン制御装置1に接続される各部の動作状態や、流量センサ5や日射センサ7からの入力値が表示される。更には、水分センサ装置20から入力された各区画の水分情報が、1のベット毎に各区画の識別番号に対応付けて表示される。
図2は、栽培土壌101の1の区画を模式的に示した部分拡大図であり、図2(a)は植物とノズル2aと水分センサ6との位置関係を説明する図であり、図2(b)は、水分センサ6の内部構造であって検出素子(赤外線検出素子)の配列を示した図である。
1の区画において植物の根元近傍となる所定位置は、灌水(輸液)の供給位置であるドロップポイントPとして設定されており、かかるドロップポイントPの上方には、ノズル2aが、その先端を下方側に向けて開口した状態で設けられている。これにより、輸液は栽培土壌101上の定位置(ドロップポイントP)に供給される。ノズル2a内には、散水孔を開閉するチューブ側電磁弁13cが内設されており、かかるチューブ側電磁弁13cの動作により、ノズル2aへの輸液の供給と非供給とが切り換えられる。
散水孔が開放されていると、灌水チューブ2にて輸送された輸液は、ノズル2a側に分岐され、ノズル2aを経由してノズル2a先端からドロップポイントPへと滴下される。尚、ノズル2aを非設とし灌水チューブ2の散水孔をドロップポイントPの上方に配設することにより、散水孔から輸液を滴下する構成としても良い。
各区画において、ドロップポイントPを中心とする所定範囲は、土壌の水分を測定する水分センサ6の測定エリアとされており、測定エリア内にはドロップポイントPを中心に十字状に16の測定点が設けられている。詳細には、ドロップポイントPを中心として左右に延出されるライン上において、ドロップポイントPから右方に向かって4つの測定点が配置され、また、ドロップポイントPから左方に向かって4つの測定点が配置されている。各測定点にはそれぞれ識別番号が付与されており、ドロップポイントPから右方側の各測定点には、ドロップポイントPから外方へ向かって昇順となるように1〜4の識別番号がそれぞれ付与されている。一方、ドロップポイントPから左方側の各測定点には、ドロップポイントPから外方へ向かって昇順となるように5〜8の識別番号のそれぞれが付与されている。
また、識別番号1〜8の測定点を結ぶラインに直交するライン上において、ドロップポイントPから奥方に向かって4つの測定点が配置され、また、ドロップポイントPから手前側に向かって4つの測定点が配置されている。各測定点にはそれぞれ識別番号が付与されており、ドロップポイントPから奥方側の各測定点には、ドロップポイントPから外方へ向かって昇順となるように9〜12の識別番号がそれぞれ付与されている。また、ドロップポイントPから手前側の各測定点には、ドロップポイントPから外方へ向かって昇順となるように13〜16の識別番号のそれぞれが付与されている。
水分センサ6は、各区画のそれぞれに対応して区画の識別番号と同じ識別番号で管理される複数の第1〜第n水分センサで構成されている。各水分センサ6には、図2(b)に示すように、測定エリアの16の測定点のそれぞれに対応する16の検出素子が備えられている。かかる16の検出素子は、上記した1〜16の識別番号が付与された各測定点と同様の十字状に配列され、各測定点に対応して、中心から右方向に1〜4、左方向に5〜8、奥方向(図2(b)において紙面上方向)に9〜12、手前方向(図2(b)において紙面下方向)に13〜16の識別番号が付与されている。各検出素子には対応する識別番号の測定点から放射される赤外線が入射され、各測定点における赤外線強度が検出される。つまり、ドロップポイントPを中心とする十字状に赤外線強度が検出される。検出された赤外線強度は各検出素子毎に、水分センサ装置20の本体へと入力される。このように、水分センサ6により各測定点の赤外線強度がそれぞれ検出されることにより、水分センサ装置20によって、各測定点におけるそれぞれの水分情報(PF値)と、測定エリア内の水分量(各区画において土壌に含有される水分量)とを測定することができる。
また、水分センサ6は、測定エリアに植えられた植物の根元位置から斜め上方に配設され、植物の葉等によって遮られることなく測定点からの赤外線が直接的に水分センサ6に入射されるように設置されている。尚、測定点から水分センサ6までの間に、鏡面やレンズ等を設け、赤外線が水分センサ6に間接的に入射されるように構成しても良い。
測定エリア内に設けられる測定点の数およびその測定点に対応して設けられる検出素子の配置形状および数は、上記した形状や数に限られない。例えば、測定エリア内のPF値のみを簡便に測定する場合には、少なくとも1の測定点の赤外線強度が測定されれば良い。その1の測定点におけるPF値を代表値として測定エリア内のおおよその水分状態を示すことができるからである。かかる場合には、水分センサ6に設けられる検出素子の数は1以上で良い。逆に、測定エリア内のより精密な水分情報(PF値および水分量)が所望される場合には、測定エリア内の更に多くの測定点の赤外線強度を検出するように、上記した数以上の検出素子を設けても良い。
かかる多数の測定点(検出素子)を設ける場合であっても、少なくとも一部の測定点(検出素子)は、ドロップポイントP(中心)から外方へ向かう少なくとも1の線上には配列されていることが望ましい。本実施形態においては、輸液は滴下により栽培土壌101上の定位置であるドロップポイントPへと供給される。栽培土壌101に浸透した輸液(水分)は、土壌中において略楕円体の分布形状を形成し、更に、かかる楕円体の平面方向(栽培土壌101表面側からの上面視)の形状は略円形状となる(図4参照)。従って、ドロップポイントP(中心)から外方へ向かう少なくとも1の線上に測定点を配列することにより、略円形状に拡散した水分の分布長(分布半径)を的確に測定することができるのである。尚、本実施形態では、分布長は円形状の幅(直径に相当)を示し、分布半径Xは、ドロップポイントPから円形状の外周上の1の点までの距離に対応する長さとする。
尚、本実施形態の水分センサ装置20は、1〜4の識別番号が付与された測定点で測定された赤外線強度に基づいて水分の分布半径Xを確定し、その確定された分布半径Xを楕円体の体積を算出する平面方向の半径として水分の分布形状を算定しているが、測定点(検出素子)は十字状に設けられているので、平面上において直交する2方向で上記円形状の分布長を求めることができる。これによれば、4方向のいずれかの方向にドロップポイントPがズレても、2方向の分布長を比較して長い側を正当な分布長(直径)とし得、その正当な分布長を2等分して分布半径Xを算出することにより、分布半径Xを1方向のみにて確定する場合よりも精度良く分布半径Xを確定することができる。
図3は、本灌水制御システム100の電気回路構成の概略を示すブロック図である。図3に示すように、灌水制御システム100は、メイン制御装置1と、水分センサ装置20と、流量センサ5と、日射センサ7と、メイン制御装置1によって制御される貯水ポンプ11aと液肥ポンプ11bと複数の電磁弁13とを備えている。
メイン制御装置1は、流量センサ5、日射センサ7、水分センサ装置20から入力される情報に基づいて、システムの各部を制御し、栽培土壌101に対する灌水を実行する装置である。このメイン制御装置1は、演算装置であるCPU31と、そのCPU31により実行される各種の制御プログラムや固定値データを記憶した書き換え不能な不揮発性のメモリであるROM32と、各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリであるRAM33と、時計回路34とを備えている。ROM32には、制御プログラムの一部として、水分センサ装置20からの入力される水分情報(PF値、水分量)に応じて、各区画毎に灌水量を算出するプログラムが記憶されている。
時計回路34は、時刻の計時を行うためのものであり、時計回路34によって計時された時刻は、CPU31によって読み出され、各処理に使用される。時計回路34から読み出された時刻により、登録された灌水時刻の到来であるとCPU31によって判断された場合には、ROM32に記憶される制御プログラムに基づいて、操作者により登録された適正水分値(適正なPF値の範囲或いは適正な水分量の範囲)と、水分センサ装置20から入力された水分情報(PF値、水分量)とから、各区画毎に必要な灌水量が算出される。そして、その算出された灌水量に応じた各デバイスの動作が、CPU31からドライバ回路24に指示される。具体的には、各区画毎に対応するチューブ側電磁弁13cに対し算出された灌水量を滴下する時間分の開放動作と、混合供給管電磁弁13bの所定時間の開放動作と、ポンプ側電磁弁13aの所定時間の開放動作と、貯水ポンプ11aの稼働と、液肥ポンプ11bの稼働とがドライバ回路24に指示される。
本実施形態では、栽培土壌101への灌水量(輸液の供給量)をチューブ側電磁弁13cの開放時間を調節することにより、個々の区画毎に算出された灌水量となるように調節したが、チューブ側電磁弁13cの開閉間隔や開閉回数を変更することにより、灌水量を調節する構成としても良い。また、チューブ側電磁弁13cを通電量によって弁の開放量が変化する比例制御電磁弁で形成し、各チューブ側電磁弁13cへの通電量を制御して弁の開放量を調節することにより、栽培土壌101へ供給する灌水量を調節する構成としても良い。
また、灌水制御システム100は、上記したように、灌水量のみならず、灌水中の肥料濃度を変更することができるように構成されている。到来した灌水時刻に対応して登録されている肥料濃度が「0」である場合には、液肥ポンプ11bは非稼働とされ、液肥ポンプ11bを除いた、チューブ側電磁弁13c、混合供給管電磁弁13b、ポンプ側電磁弁13a、貯水ポンプ11aの動作がCPU31からドライバ回路24に指示される。同様に、到来した灌水時刻に対応して登録されている肥料濃度が肥料濃厚液と同じ(原液濃度)である場合には、貯水ポンプ11aは非稼働とされ、貯水ポンプ11aを除いた、チューブ側電磁弁13c、混合供給管電磁弁13b、ポンプ側電磁弁13a、液肥ポンプ11bの動作がCPU31からドライバ回路24に指示される。
また、到来した灌水時刻に対応して登録されている肥料濃度が、肥料濃厚液の原液濃度以下の任意の濃度(「0」を除く)である場合には、混合液の供給指示であるとCPU31により認識される。そして、その濃度を実現するために必要な水供給管路10aから混合供給管路10cへの水の流量がCPU31により算出され、算出されたその流量を実現するポンプ側電磁弁13aの開放量が求められると共に、求められた開放量が通電量に換算されてCPU31からドライバ回路24に指示される。
かかるCPU31、ROM32、RAM33、時計回路34は、データバス、アドレスバスにより構成されるバスライン35を介して互いに接続されている。また、バスライン35は、入出力ポート36に接続されている。入出力ポート36には、バスライン35以外に、表示装置21、操作パネル22、警報装置であるアラーム23、ドライバ回路24、水分センサ装置20が接続されている。
ドライバ回路24は、メイン制御装置1に接続される各デバイスを動作させるための回路であり、貯水ポンプ11a、液肥ポンプ11b、ポンプ側電磁弁13a、混合供給管電磁弁13b、チューブ側電磁弁13cなどの各デバイスのそれぞれに接続されている。
このドライバ回路24は、接続されるデバイスを動作させるための回路であり、上記したCPU31からなされる各指示に応じて、各デバイスに対応した電圧を生成し、生成した電圧を指示された時間、対応するデバイスに供給する。
また、ドライバ回路24には、流量センサ5に接続される流量演算回路25が接続されている。流量演算回路25には、流量センサ5にて検出された水の流量を示す検出値が入力される。上記したように、混合液が栽培土壌101に供給される場合には、登録された任意の肥料濃度に応じて水の流量を制御する必要がある。その任意の肥料濃度に対応した水の流量は上記したようにCPU31によって算出されている。流量演算回路25は、流量センサ5から入力された水の流量を示す検出値から、上記算出された水の流量との差を算出し、その差に基づいて、ポンプ側電磁弁13aに対する通電量を変更する指示をドライバ回路24に出力するものである。これにより、ポンプ側電磁弁13aに対するフィードバック制御が実行され、水の流量が上記算出された流量となるように調整され、混合液の肥料濃度が厳密に管理される。
更に、メイン制御装置1は、外部入出力機器としてパーソナルコンピューターなどの上位コンピューターやプリンターを接続することができるように構成されており、メイン制御装置1に登録された灌水時刻、灌水量、肥料濃度などの値や、水分センサ装置20から入力された水分情報、更には、日射センサ7からの入力値などの多くの情報を、コンピューターやプリンターに出力し、一括して閲覧することができるようになっている。
水分センサ装置20は、水分センサ6から入力される赤外線強度のデータから土壌表面の温度を測定し、その土壌表面の温度と気温との温度差から土壌の水分情報(PF値、水分量)を算出する、即ち、水分を測定する装置である。水分センサ6は、A/Dコンバータ49を介して接続されており、水分センサ6からの入力値(赤外線強度のデータ)に基づいて測定された水分情報は、水分センサ装置20からメイン制御装置1へ出力される。
この水分センサ装置20は、演算装置であるCPU41と、書き換え不能な不揮発性のメモリであるROM42と、各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリであるRAM43と、書換可能な不揮発性のメモリであるEEPROM44とを備えている。
CPU41は、タイマ回路41aを備えており、栽培土壌101への灌水が終了したタイミングからの経過時間を計時可能に構成されている。計時する時間は、土質ごとに予め定められて後述するROM42の標準値テーブル42bに記憶されている。
ROM42には、CPU41により実行される制御プログラム42aと、制御プログラム42aの実行に際して必要となる固定値データを記憶する標準値テーブル42bと温度変換テーブル42cとを備えている。
制御プログラム42aは、水分センサ装置20の動作を制御するプログラムである。図5から図9に示すフローチャートのプログラムは、制御プログラム42aの一部として備えられている。ここで、PF値は、土壌中の水分の負圧を示す値である。このPF値と温度差との間には一定の相関関係が得られるため、この特性を利用して温度差からPF値を算出するPF値算出処理(S32、図9参照)のプログラムを、制御プログラム42aとして備えており、このPF値算出処理(S32)により、PF値は算出される。
ここで、本実施の形態においては、PF値と温度差との相関関係は、一次関数y=ax+bの関係とされ、「PF値=a*温度差+b」によって規定されている。この一次関数を適用することによって、PF値の有効範囲(実際に使用される現実に即したPF値の範囲)において、温度差から、的確かつ簡便にPF値が算出される。尚、PF値と温度差との相関関係を示す演算式は、必ずしも単純な一次関数に限られるものでなく、二次関数等を含む各種の演算式が適宜採用される。
また、水分量は、1の区画において該区画の土壌に含有される水分量を示す値である。本実施形態においては、滴下によって輸液(水分)を土壌に供給した場合の水分の分布形状を略楕円体とし、更に、土壌中に形成された水分の分布形状(楕円体)は、水分量に応じて体積変化すると共に各分布形状が相似関係にあるとして水分量を算出する水分量算出処理(S31、図8参照)のプログラムを、制御プログラム42aとして備えている。この水分量算出処理(S31)により、1の区画の土壌に含有される水分量が算出される。尚、算出される1の区画の土壌に含有される水分量は絶対値ではなく、所定量の水分量を示す楕円体モデルに比較して求められる相対値で算出される。
水分センサ6は、上記したように栽培土壌101の各区画毎に設けられ、各区画において16の測定点の赤外線強度を検出するように構成されている。これに対応して、水分センサ装置20では、1の区画毎に水分量が算出されると共に、1の区画について16の測定点におけるPF値が算出される。
標準値テーブル42bは、水分情報を算出する際に必要となるパラメータを記憶するテーブルである。本実施形態では、この標準値テーブル42bに、水分量の算出に際して使用される標準の楕円体モデルの大きさを示す標準値が、土質毎にそれぞれ記憶されている。土質は土壌の性質を示す要因の1つであり、粘土質、砂地、堆肥土壌等に分類される。一方、本実施形態では、水分量を算出するために制定された楕円体モデルは、滴下にて土壌に所定量(例えば100mlなど)の輸液(水分)を供給した場合に、その分布形状が土壌中において略楕円体となることに基づいたものである。ここで、所定量の輸液(水分)を供給した場合において、土質が異なると、分布形状(楕円体モデルの大きさ)が異なる。故に、所定量の輸液(水分)を各土質を代表する土壌にそれぞれ供給した場合に形成される各楕円体モデルについて、その深さ方向の分布半径Zoと、深さ方向に直行する土壌表面に沿った平面方向の分布半径Xoと、4πXo2Zo/3で算出される体積Wmとが、各土質に対応する標準値としてこの標準値テーブル42bに記憶されている。
また、本実施形態では、輸液(水分)が土壌中において土壌表面に沿った平面方向において等方的に拡散し略円形状、すなわち、Xo=Yoとなる楕円体モデルを採用している。このため、平面方向の分布半径は、1方向の分布半径Xoによって規定され、水分量(楕円体モデルの体積)は、4πXoYoZo/3ではなく、4πXo2Zo/3にて算出される。
更に、土壌中に供給された所定量の輸液(水分)は、その分布形状が平衡状態となるまでに所定時間を要する。つまり、所定量の輸液(水分)が供給された後から、ある時間が経過するまでは、拡散が平衡状態に到達せずその分布形状が変化する。この平衡状態に達するまでの経過時間は、各土質毎に測定された値が、所定時間として、それぞれ各土質に対応して、この標準値テーブル42bに記憶されている。
水分量の測定に際しては、この標準値テーブル42bが参照され、土質に対応する所定時間が経過するまで、水分量の算出(測定)は、回避される。また、PF値についても平衡状態に達してから取得されるように、上記の所定時間が経過するまで、その測定は回避される。かかる測定が回避された期間中は、水分情報がメイン制御装置1に非出力となる。尚、メイン制御装置1は、正常に水分センサ装置20が動作している状態において水分情報が受信されない場合には、水分情報を非表示とすると共に測定回避期間であることを表示装置21に表示するようになっている。
輸液が滴下された場合に、その輸液によって土壌中の水分状態が平衡状態に達するまでにはタイムラグがある。従って、かかる平衡状態に達するまでは、水分情報は刻々と変化し、出力される水分情報の信頼性を低下させてしまう。そこで、本水分センサ装置20では、かかる期間の水分測定を回避し、信頼性の低い水分情報が出力されることを回避している。尚、測定そのものを回避するのではなく、水分測定は実行するが水分情報のメイン制御装置1への出力を非実行とすることによりメイン制御装置1における水分情報の表示を非表示またはエラー表示としても良く、メイン制御装置1において、灌水開始から灌水終了後の所定時間が経過するまで、受信した水分情報を非表示とすることとしても良い。
温度変換テーブル42cは、水分センサ6および温度センサ50にて検出された赤外線強度を温度(温度情報)に変換するためのテーブルであり、水分センサ6と温度センサ50とによりそれぞれ検出される赤外線強度と温度とが対応して記憶されている。水分センサ6および温度センサ50からA/Dコンバータ49を介して入力された赤外線強度のデータ(電圧値)は、この温度変換テーブル42cにて、それぞれ温度情報に変換される。
水分センサ6は、栽培土壌101の表面から放射される赤外線強度を検出するものであるので、水分センサ6にて検出された赤外線強度を温度変換テーブル42cを用いて温度情報に変換することにより土壌の表面温度が測定される。また、温度センサ50は、水分を測定する測定対象の土壌(被測定対象物)が存在する雰囲気の温度である気温(外気温度)を測定するものである。この温度センサ50により、検出された赤外線強度を温度変換テーブル42cを用いて温度情報に変換することにより外気温度が測定される。尚、温度センサ50は、外気温度を測定するものに限られず、灌水されない部分の土壌の表面温度を測定するものとしても良い。
RAM43は、待機フラグ43aと、タイマ開始フラグ43bと、キャリブレーションフラグ43cと、外気温度メモリ43dと、土壌温度メモリ43eとを備えている。
待機フラグ43aは、水分測定を回避する期間であることを示すフラグであり、メイン制御装置1から灌水を実行するタイミングで水分センサ装置20に出力される点滴開始情報を受信することによりオンされる。オンされた待機フラグ43aは、灌水終了後に所定時間が経過することによりオフされる。この待機フラグ43aがオンされている間は、CPU41は水分情報の算出を回避する。
タイマ開始フラグ43bは、灌水終了後の所定時間が経過したか否かを示すフラグである。本実施形態では、灌水終了後、土壌の水分状態が平衡状態に達するまで、水分の測定(水分情報の算出)を回避するように水分センサ装置20は構成されている。このため、灌水が終了したことを示す点滴終了情報をメイン制御装置1から受信することにより標準値テーブル42bに記憶される土質に対応した所定時間がタイマ回路41aにセットされ、かかるタイミングでタイマ開始フラグ43bはオンされる。オンされたタイマ開始フラグ43bはタイマ回路41aにセットされた時間が経過するとオフされる。このオフにより、灌水終了から所定時間が経過したことがCPU41に認識され、水分の測定(水分情報の算出)が開始される。
キャリブレーションフラグ43cは、キャリブレーションの実行が操作者により指示されたか否かを示すフラグである。操作パネル47に設けられたキャリブレーションボタン47aがオンされることによりオンされる。水分センサ装置20は、タイマ割込により実行されるスイッチ読込処理(図5参照)により、キャリブレーションボタン47aの状態を常時監視しており、このスイッチ読込処理にて、キャリブレーションボタン47aのオンが検出されることにより、キャリブレーションフラグ43cはオンされる。オンされたキャリブレーションフラグ43cは、後述するキャリブレーション処理(S30、図7参照)が終了することによりオフされる。
外気温度メモリ43dは、温度情報(外気温度)を記憶するメモリである。温度センサ50から入力された赤外線強度のデータ(電圧値)は、栽培土壌101の水分を測定するタイミング、すなわち、所定のサンプリングタイム毎に取得され、温度情報(外気温度)に変換されて、この外気温度メモリ43dに書き込まれる。外気温度メモリ43dに先に記憶される外気温度は、新たに取得された外気温度により更新される。
土壌温度メモリ43eは、温度情報(栽培土壌101の表面温度)を記憶するメモリであり、各区画のそれぞれに対応して各1ずつ、第1〜第n土壌温度メモリ43e1〜43enで構成されている。水分センサ6から入力された電圧値は、栽培土壌101の水分を測定するタイミング、すなわち、所定のサンプリングタイム毎に取得され、温度情報(栽培土壌101の表面温度)に変換されてこの土壌温度メモリ43eに書き込まれる。
ここで、第1〜第n土壌温度メモリ43e1〜43enは、各区画に付与された1〜nの識別番号のそれぞれに対応しており、CPU41により、変換された温度情報(栽培土壌101の表面温度)は、第1〜第n土壌温度メモリ43e1〜43enの内、検出元の区画に対応する1の土壌温度メモリに書き込まれる。1の水分センサ6は、16の測定点の赤外線強度を検出するものであるので、1の土壌温度メモリ43eには、かかる赤外線強度のデータ(電圧値)に基づいた16の測定点の表面温度が、各測定点を示す識別番号に対応付けて書き込まれる。
EEPROM44は、書換可能な不揮発性のメモリであり、電源断後も書き込まれた情報を保持するものである。このEEPROM44は、補正係数メモリ44aを備えている。補正係数メモリ44aは、キャリブレーション処理(S30)によって導出された補正係数を記憶するためのメモリである。
標準値テーブル42bには、土質毎に対応した標準値が記憶されているが、各標準値は、その土質を代表するモデル系(代表物)で取得された値である。ここで、楕円体モデルが形成された土壌と、実際の測定系の土壌とは異なることが多い。このため、同じ土質であるからといって標準値をそのまま適用してしまうと、測定結果として出力された水分量が、実際の水分量から大きくずれてしまうことがある。例えば、堆肥土壌のモデル系で、100mlの輸液(水分)によって形成された楕円体モデルの体積が300mlであった場合に、実際に測定される土壌では、100mlの輸液(水分)によって形成された楕円体が200mlであると、楕円体モデルを基準に比例計算で算出される水分量は、実際は100mlであるにも関わらず、(200÷300)×100により約67mlとなってしまう。そこで、水分センサ装置20には、かかる事態を想定して、楕円体モデルの形状に対する補正係数を取得することができるように構成されている。取得された補正係数は、この補正係数メモリ44aに書き込まれて記憶される。
水分量測定処理(S31)に際しては、CPU41により、この補正係数メモリ44aが参照され、この補正係数メモリ44aに記憶される補正係数によって補正された水分量が算出される。尚、初期状態においては、この補正係数メモリ44aには、デフォルト値「1」が記憶されている。
かかるCPU41、ROM42、RAM43、EEPROM44は、データバス、アドレスバスにより構成されるバスライン45を介して互いに接続されている。また、バスライン45は、入出力ポート46に接続されている。入出力ポート46には、バスライン45以外に、操作パネル47、液晶表示装置(以下単に「LCD」と称す)48、A/Dコンバータ49、メイン制御装置が接続され、A/Dコンバータ49を介して水分センサ6と温度センサ50とが接続されている。
操作パネル47は、土質選択ダイヤル47aと、キャリブレーションボタン47bとを備えている。土質選択ダイヤル47aは、土質の選択を実行するダイヤルであり、操作者によって操作されるものである。本実施形態では、土質を、粘土質、砂地、堆肥土壌との3種類のいずれかに設定することができるようになっており、各土質毎に予め定められたダイヤル位置が設けられている。そして、土質選択ダイヤル47aがセットされたダイヤル位置に応じて、対応する土質を示す信号が入力され、これによりCPU41に、選択された土質が認識される。
キャリブレーションボタン47bは、操作者により操作されるボタンであり、キャリブレーション処理の実行を要求するためのものである。このキャリブレーションボタン47bは、押下によりオンされると共に押下された応力から解放されるとオフされる押しボタンタイプのスイッチを内蔵している。キャリブレーションボタン47bが押下されると、スイッチオンとなって、キャリブレーション処理の実行要求としてCPU41に判断され、キャリブレーションフラグ43cがオンされる。
操作パネル47により実行される入力操作の操作手順や入力値(情報)は、LCD48に表示され、これにより、操作者は、自己の入力操作の確認や入力した情報を確認することができる。
次に、図4を参照して、上記した水分センサ装置20にて実行される水分量の測定概念について説明する。
図4は、ノズル2aから栽培土壌101のドロップポイントPへと輸液が滴下された場合における土壌の水分状態の経時変化を模式的に示した図である。図4の左側は、滴下された輸液(水分)の栽培土壌101中における平面方向の分布形状を土壌表面からの上面視により示した図であり、図4の右側には、滴下された輸液(水分)の分布形状を断面視した図である。
図4(a),(b),(c)において、実線にて示した円および楕円は水分の分布範囲の境界を示しており、その内側がそれぞれ水分の分布範囲を示している。図4(a),(b),(c)中における左側に、ドロップポイントPを中心に4方向に表示された四角の列は、16の測定点のそれぞれを示しており、かかる各四角の内側に表示された数字は、土壌の表面温度と外気温度との温度差を示している。
図4(a)は、ノズル2aからの輸液の滴下が終了した直後の水分の分布状態を示したものである。土壌中に浸透した輸液は、ドロップポイントPを中心に平面方向において等方的に拡散し、平面方向において円形状となる水分分布が形成されている。このため、土壌表面に沿った平面上において、分布半径X1と、分布半径X1に直交する方向の分布半径Y1は等しくなっている。
ここで、供給された輸液(水分)が分布した範囲では、それ以外の範囲に比べて温度が低くなっており、外気温度との間で負の温度差が生じている。一方、供給された輸液の分布範囲外では、外気温度との間には温度差は発生していない。また、各測定点のそれぞれは、ドロップポイントPから予め定めた距離を隔てて(例えば所定間隔で)設けられている。故に、土壌の表面温度が気温よりも低くなっている最外方の測定点を検出することにより、水分の平面方向の分布半径X1を確定することができる。尚、本実施形態では、ドロップポイントPから、外方に向かう方向において温度差が0となった最初の測定点の内側までの距離を実際の分布半径X相当の距離とし、かかる距離を分布半径Xとして確定している。即ち、分布半径Xには、実測値ではなく、ドロップポイントPから温度差が0となった最初の測定点の内側までの距離にて実測値を近似した距離を採用している。
また、輸液の滴下が終了した直後の水分分布は、図4(a)の断面図に示すようにX1(Y1)を平面方向の最大半径とし、高さ(深さ)方向の分布半径Z1を有する楕円体となって、地表面近くに分布している。
図4(b)は、図4(a)に示した輸液の滴下終了直後から所定時間経過した場合の水分の分布状態を示した図である。水分の分布状態はおおよそ平衡(最大)に達し、上面視においても断面視においても水分の分布範囲(分布半径X2,Z2)が、滴下終了直後の分布範囲(分布半径X1,Z1)よりも拡大していることが示されている。滴下により水分を土壌に供給すると、その浸透速度が遅いため、滴下終了と同時には、水分の分布状態は最大分布とならず、輸液の滴下終了から所定時間後に、遅れて最大分布が形成されるのである。また、水分分布の深さ方向の位置は、滴下終了直後よりも地下方向に下降している。
図4(c)は、図4(b)に示した状態から更に時間が経過した場合の水分の分布状態を示した図である。水分量は、植物による吸収や蒸発により減少し、上面視においても断面視においても水分の分布範囲(分布半径X3,Z3)が、図4(b)に示した水分の分布範囲(分布半径X2,Z2)よりも縮小していることが示されている。
ここで、本実施形態では、土壌に滴下した輸液によって形成される水分分布の楕円体は、(土質毎に対応する)楕円体モデルの相似形とされており、また、水分量の違いによって異なる体積となる各楕円体も全て(その土質に対応する)楕円体モデルの相似形とされている。更に、楕円体の体積と水分量とは比例するものとされている。平面方向の水分の分布半径X1は、図4(a)で説明したように、水分センサ6によって検出された赤外線強度に基づいて確定することができるので、平面方向の分布半径Xの標準値Xoに対する増減量から、深さ方向の分布半径Zの標準値Zoに対する増減量を比例計算によって求めることができ、これにより、実際の土壌中での水分の分布半径Zを算出することができる。そして、かかる分布半径X,Zにより、土壌中の楕円体の体積を算出することができる。故に、算出された楕円体の体積と、所定量の水分量に対応する楕円体モデルの体積との比例関係に基づいて、楕円体で分布している土壌中の水分量を算出することができるのである。
また、本実施形態においては、水分量を算出するために制定された楕円体モデルは、所定量の輸液(水分)を滴下した後、所定時間が経過して、その分布形状がおおよそ平衡状態に達した楕円体モデル(即ち図4(b)に示した状態)とされており、かかる楕円体モデルの大きさを示す情報である分布半径Xo,Zoおよび体積Wmが、標準値として標準値テーブル42bに記憶されている。更に、輸液の滴下終了直後から分布形状が上記の平衡状態に達するまでに要した所定時間(或いは該所定時間を基準として定められた時間)が、水分量の測定を回避する所定時間として、標準値テーブル42bに記憶されている。
水分センサ装置20では、水分の分布状態が、その滴下された水分量における平衡状態(定常状態、最大分布)に達するまでは、水分量の測定を回避することを目的として、標準値テーブル42bに記憶されているかかる所定時間は、水分量の測定を非実行としている。従って、図4(a)に示した輸液の滴下終了直後の状態では、水分量の測定は行われず、滴下した輸液の土壌中の分布状態がおおよそ定常状態(図4(b)の状態)になってから水分量を測定することとなる。このため、標準値テーブル42bに記憶される楕円体モデルとの比較により算出される水分量を信頼性の高いものとすることができる。
続いて、水分センサ装置20において実行される各制御処理を図5から図9のフローチャートを参照しながら説明する。図5は、タイマ割込処理によって所定時間毎に実行されるスイッチ読込処理のフローチャートである。このスイッチ読込処理は、キャリブレーションボタン47bの状態を監視する処理であり、まず、キャリブレーションボタン47bがオンされたか否かを確認し(S1)、キャリブレーションボタン47bがオフであれば(S1:No)、このスイッチ読込処理を終了し、一方、キャリブレーションボタンが47bがオンされていれば(S1:Yes)、キャリブレーションフラグ43cをオンして(S2)、このスイッチ読込処理を終了する。
図6は、予め設定されたサンプリングタイム毎に起動される測定処理のフローチャートである。この測定処理は、水分センサ6によって検出された赤外線強度に基づいて、PF値と水分量を算出する処理であり、まず、待機フラグ43aがオンであるか否かを確認する(S11)。その結果、待機フラグ43aがオンであれば(S11:Yes)、既に、灌水が開始されており、且つ、その灌水終了後から所定時間が経過する前であるので、S12,S13の処理をスキップし、その処理をS14の処理に移行する。一方、待機フラグ43aがオフであれば(S11:No)、メイン制御装置1から点滴開始情報を受信したか否かを確認し(S12)、点滴開始情報の受信でなければ(S12:No)、灌水終了から所定時間が経過した後であって測定を回避する期間を終了しているので、水分状態の測定を行うために、その処理をS21の処理に移行する。
また、S12の処理で確認した結果、点滴開始情報の受信であれば(S12:Yes)、点滴開始情報の受信であれば(S12:Yes)、灌水開始の通知であるので、水分の測定を非実行とするべく、待機フラグ43aをオンする(S13)。その後、タイマ開始フラグ43bがオンされたか否かを確認し(S14)、タイマ開始フラグ43bがオンであれば(S14:Yes)、点滴終了後の所定時間の経過待機中であるので、S15〜S17の処理をスキップして、その処理をS18の処理に移行する。
一方、タイマ開始フラグ43bがオフであれば(S14:No)、点滴終了情報を受信したか否かを確認する(S15)。その結果、点滴終了情報が未受信であれば(S15:No)、この測定処理を終了し、次回以降に起動される測定処理において、点滴終了情報の受信が確認されるまで、S16以降の処理は非実行とされる。
また、S15の処理で確認した結果、点滴終了情報を受信していれば(S15:Yes)、土質選択ダイヤル47aの状態を確認し、土質選択ダイヤル47aにより指定された土質に対応する所定時間を標準値テーブル42bから読み出して、その値をタイマ回路41aにセットした後(S16)、タイマ開始フラグ43bをオンする(S17)。続いて、タイマ回路41aにセットされた時間が経過したか否かを確認し(S18)、該時間が経過していなければ(S18:No)、引き続き水分の測定を回避する必要があるので、この測定処理を終了し、次回以降に起動される測定処理において、タイマ回路41aにセットされた時間の経過が確認されるまで、水分の測定が回避される。
一方、S18の処理で確認した結果、タイマ回路41aにセットされた時間が経過していれば(S18:Yes)、測定を開始するタイミングであるので、待機フラグ43aをオフし(S20)、変数mに1を設定する(S21)。そして、第m水分センサ(水分センサ6の内、識別番号mで管理されるもの、変数mが1であれば第1水分センサ)から入力される該第m水分センサの各検出素子にて検出された赤外線強度を示す電圧値(赤外線強度のデータ)を読み取り(S22)、読み取った電圧値を温度変換テーブル42cに基づいて、温度(土壌の表面温度)に変換する(S23)。次に、変換された各温度(各温度情報)を検出元の検出素子の識別番号に対応つけて第m土壌温度メモリ43に書き込む(S24)。そして、変数mが区画の最大の識別番号n以上であるか否かを確認し(S25)、変数mが識別番号n以上であれば(S25:Yes)、全区画に対して水分センサ6からの入力値に基づく土壌の表面温度の測定が終了したと判断し、温度センサ50から入力された電圧値を読み取って(S27)、その読み取った電圧値を温度変換テーブル42cに基づいて、温度(外気温度)に変換し、変換した温度(温度情報)を外気温度メモリ43dに書き込む(S28)。
その後、キャリブレーションフラグ43cがオンであるか否かを確認し(S29)、キャリブレーションフラグ43cがオフであれば(S29:No)、キャリブレーション処理(S30)をスキップして、その処理をS31の処理の処理に移行し、キャリブレーションフラグ43cがオンであれば(S29:Yes)、水分量の補正係数の算出要求がなされているので、キャリブレーション処理を実行した後(S30,図7参照)、水分量を算出する水分量算出処理を実行し(S31)、更にPF値を算出するPF値算出処理を実行して(S32)、この測定処理を終了する。
また、S25の処理で確認した結果、変数mが識別番号n以上でなければ(S25:No)、全区画に対する温度測定が未完了であるので、変数mに1加算した後(S26)、その処理をS22の処理に移行し、変数mが区画の最大の識別番号nに到達するまで、S22〜S26の処理を繰り返す。
図7は、図6の測定処理において実行されるキャリブレーション処理(S30)のフローチャートである。キャリブレーション処理(S30)は、水分センサ装置20により算出(測定)される水分量の信頼性を向上させるため、水分量の算出に使用する楕円体モデルの体積を補正する補正係数を算出する処理である。このキャリブレーション処理(S30)では、まず、第1土壌温度メモリ43e1に記憶される各土壌の表面温度から外気温度をそれぞれ減算して、各測定点毎に温度差を算出し(S41)、ドロップポイントPから識別番号4の測定点に向かう方向に沿って最初に温度差が0となる測定点を抽出する(S42)。その後、抽出された測定点からドロップポイントPまでの距離(水分分布の分布半径X)を求める(S43)。本実施の形態では、予め定められた間隔で各測定点は配置されているので(予め定められた測定点から赤外線を検出し得るように各検出素子が配設されているので)、1の測定点が決定されると、ドロップポイントPからその測定点までの距離を確定することができる。尚、本実施形態では、上記したように、ドロップポイントPから、温度差が0であった測定点の内側までの距離を分布半径Xとして確定する。
続いて、標準値テーブル42bに記憶される各標準値の内、土質選択ダイヤル47bの示す土質に対応する標準値Xoで、分布半径Xを除して、深さ方向の変化率△Zを求める(△Z=X/Xo)(S44)。形成される楕円体は相似形とされているので分布半径Xの変化率が分布半径Zの変化率に相当するのである。その後、標準値テーブル42bに記憶される各標準値の内土質選択ダイヤル47bの示す土質に対応する標準値Zoに変化率△Zを乗じ、水分の深さ方向の分布半径Zを求める(Z=Zo*△Z)(S45)。そして、S43の処理で算出された分布半径XとS45の処理で算出された分布半径Zとから楕円体の体積Wを算出する(W=4πX2Z/3)(S46)。
その後、算出した楕円体の体積Wを、土質選択ダイヤル47bに対応した楕円体モデルの体積を示す標準値Wmを灌水量に応じて補正したWm’で除して、補正係数W1を算出する(W1=W/Wm’)(S47)。本実施形態では、楕円体モデルの体積の標準値Wmは、所定量として100mlの輸液が供給された場合に形成される水分の分布形状とされている。一方で、本土壌灌水システム100は、各区画に最適な水分を供給することを目的として、水分センサ装置20にて測定された水分情報等に応じて灌水量が可変とされる。従って、キャリブレーション処理が実行された場合に、第1の区画に供給される灌水量は一定ではなく、その灌水量は、楕円体モデルが形成された場合の所定量(100ml)と等しいとは限らない。このため、供給された灌水量と楕円体モデルが形成された場合の所定量(100ml)との比率で、楕円体モデルの体積を示す標準値Wmを補正したWm’を用いて補正係数が算出されるようになっている。
S47の処理の後は、算出された補正係数W1を補正係数メモリ44aに書き込んで(S48)、キャリブレーションフラグ43cをオフし(S49)、このキャリブレーション処理(S30)を終了する。
尚、各区画に対して供給される灌水量は、メイン制御装置1から点滴開始情報と共に水分センサ装置20に送信されており、水分センサ装置20の所定の記憶領域に記憶されている。
図8は、図6の測定処理において実行される水分量算出処理(S31)のフローチャートである。水分量算出処理(S31)は、水分センサ6により検出された赤外線強度によって測定された各区画の測定点の表面温度から、各区画毎に、その区画(測定エリア)の土壌に含有される水分量を算出する処理である。この水分量算出処理(S31)では、まず、変数mを1に設定した後(S50)、第m土壌温度メモリ43eに記憶される各土壌の表面温度から外気温度をそれぞれ減算し、各測定点毎に温度差を算出し(S51)、ドロップポイントPから識別番号4に向かう方向に沿って最初に温度差が0となる測定点を抽出する(S52)。その後、抽出された測定点からドロップポイントPまでの距離(分布半径X)を求める(S53)。
続いて、標準値テーブル42bに記憶される各標準値の内、土質選択ダイヤル47bの示す土質に対応する標準値Xoで、分布半径Xを除して、深さ方向の変化率△Zを求める(△Z=X/Xo)(S54)。その後、標準値テーブル42bに記憶される各標準値の内土質選択ダイヤル47bの示す土質に対応する標準値Zoに変化率△Zを乗じ、水分の深さ方向の分布半径Zを求める(Z=Zo*△Z)(S55)。そして、S53の処理で算出された分布半径XとS55の処理で算出された分布半径Zとから楕円体の体積Wを算出する(W=4πX2Z/3)(S56)。
その後、第mエリア内の水分量を、算出された楕円体の体積Wを、土質選択ダイヤル47bの示す土質に対応する楕円体モデルの体積の標準値Wmに補正係数W1を乗じた値で除し、更に、楕円体モデルが形成された場合に供給された輸液の所定量(100ml)を乗じて、第m区画の土壌に含有される水分量を算出する(水分量=(W/Wm*W1)*100)(S57)。つまり、水分センサ装置20は、測定された平面方向の分布半径Xから、土壌中の楕円体の体積Wを算出し、更にかかる楕円体を楕円体モデルと相似形として、楕円体モデルと、測定された分布半径Xに基づく楕円体との、体積比例により水分量を測定する。そして、算出された水分量に区画の識別番号mを付加し、メイン制御装置1に出力する(S58)。これにより、メイン制御装置1に水分量は各区画に対応して格納され、表示装置21における表示が可能となる。
その後、変数mが区画の識別番号の最大値n以上であるか否かを確認し(S59)、変数mが識別番号n以上であれば(S59:Yes)、全区画に対して水分量の測定が終了したと判断し、この水分測定処理(S31)を終了する。一方、変数mが区画の最大の識別番号n以上でなければ(S59:No)、全区画に対する水分量の測定が未完了であるので、変数mに1加算した後(S60)、その処理をS51の処理に移行し、変数mが区画の最大の識別番号nに到達するまで、S51〜S60の処理を繰り返す。
図9は、図6の測定処理において実行されるPF値算出処理(S32)のフローチャートである。PF値算出処理(S32)は、水分センサ6により検出された赤外線強度によって測定された各区画の測定点の表面温度から、各測定点のPF値を算出する処理である。このPF値算出処理(S32)では、まず、変数mを1に設定した後(S61)、第m土壌温度メモリ43eに記憶される各土壌の表面温度から外気温度をそれぞれ減算して、各測定点毎に温度差を算出する(S62)。次いで、算出された温度差(△T)から各測定点毎にPF値を求める。このPF値は、一次関数の演算式「PF値=a*△T+b」で求められる。ここで、演算式の傾きaは、0.01〜1、切片bは、1〜5の範囲とされており、好ましくは、傾きaは、0.2〜0.5、切片bは、3〜4の範囲とされ、更に好ましくは、傾きaは、0.24〜0.32、切片bは、3.3〜3.5の範囲とされている。尚、本実施形態では、傾きa0.28、切片b3.37とする「PF値=0.28△T+3.37」が温度差からPF値を求める演算式として定められており、かかる演算式に従って温度差からPF値が算出される(S63)。
その後、算出された各PF値に対し、区画の識別番号mと測定点の識別番号(1〜16のいずれか)とを付加し、メイン制御装置1に出力する(S64)。これにより、メイン制御装置1にPF値は各区画毎に測定点に対応付けて格納され、表示装置21における表示が可能となる。
次に、変数mが区画の識別番号の最大値n以上であるか否かを確認し(S65)、変数mが識別番号n以上であれば(S65:Yes)、全区画に対してPF値の測定が終了したと判断し、このPF値算出処理(S32)を終了する。一方、変数mが区画の最大の識別番号n以上でなければ(S65:No)、全区画に対するPF値の測定が未完了であるので、変数mに1加算した後(S66)、その処理をS61の処理に移行し、変数mが区画の最大の識別番号nに到達するまで、S62〜S66の処理を繰り返す。
以上説明したように、水分センサ装置20によれば、被測定対象物である土壌に非接触で、土壌に含有される水分を測定することができる。よって、土壌に侵食(腐食)あるいは汚染する成分が含有されていても、その影響を直接的に受けることなく水分測定を行うことができる。また、水分センサ6を土壌中に貫入(埋設)する必要がないことから、その設置や測定を簡便かつ容易とすることができ、測定操作にかかる作業者の労力を省力化することができる。
また、灌水制御システム100によれば、植えられた植物の根や地下茎を損傷することなく土壌の水分を測定できるので、育成物の根の位置に規制されることなく、水分を測定し、土壌の水分状態に応じて灌水を実行する場合に、最も水分状態を監視するべき範囲、即ち、植物の植えられた位置近傍を含む範囲の水分状態に応じて、灌水を制御することができる。故に、植物に対し過不足なく効果的な灌水を行うことができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施形態では、灌水制御システム100は、水分センサ装置20にて各区画毎に水分を測定し、その区画毎に灌水量を制御する構成とした。これに代えて、複数の区画を1のブロック(組)として、1の組に1の水分センサ6を配し、そのブロック単位で水分を測定すると共に、ブロック単位で灌水を実行するように、チューブ側電磁弁13cをブロックに属する各ノズル2aの最上流側に1ずつ設け、かかるチューブ側電磁弁13cの開閉を制御することにより、ブロック単位で灌水を制御するように構成しても良い。また、かかる場合には、メイン制御装置1の表示装置21には、組毎に水分情報が表示されるように構成される。これにより、システム全体を構築するためにかかる費用を削減することができる。このブロックに属する各ノズル2aの最上流側に1ずつ設けられるチューブ側電磁弁13cが、請求項15記載の流路開閉手段に該当する。
加えて、ベットに沿って稼働レールを設けるとともに、水分センサ6をその稼働レール上を可動する可動式として、各区画からの赤外線強度の検出を、1の水分センサ6により順次行うこととしても良い。土壌中の水分を非接触で測定する本水分センサ装置20では、水分センサ6を測定対象の土壌(被測定対象物)に対して抜き差しすることなく複数の区画に対し順次水分測定を行うことができるので、水分センサ6を可動式とすることができ、装置コストを低減することができる。
更に、水分センサ装置20が、PF値のみを測定する装置として構成される場合には、水分量を算出する必要がないので、灌水方法は滴下に限定されず、ドロップポイントPについても植物の根元近傍には限定されない。
灌水の供給方法や他の要因(土質や環境)によりモデル体が球体や楕円体以外の他の形状となる場合には、その条件に応じたモデル体の大きさを示す情報が標準値として標準値テーブル42に記憶されるように構成すると共に、水分センサ装置20に、灌水方法や環境条件を入力する入力手段を設け、その入力手段にて入力された因子に対応したモデル体の標準値に基づいて水分量を測定するように、水分センサ装置20を構成しても良い。
また、上記実施形態では、栽培土壌101に属する各区画の土質は、同じ土質であるものとし、水分センサ装置20で管理される各区画に対し、同じ土質が指定されるものとした。これに変えて、各区画毎に土質を示す情報を操作パネル47により入力可能に構成し、その入力された土質を示す情報を各区画毎に記憶するように水分センサ装置20を構成しても良い。また、水分量算出処理(S31)は、各区画毎に土質の情報を読み出し、その土質に対応する標準値を採用して、水分情報を算出するように構成しても良い。
加えて、上記実施形態では、水分センサ装置20は、ROM42に記憶される制御プログラムの演算式によってPF値を算出するように構成されたが、これに代えて、温度差とPF値とを対応させて記憶するテーブルをROM42に設け、かかるテーブルを参照することにより、算出された温度差からPF値を導出するように構成しても良い。尚、かかる場合のテーブルが請求項1記載のテーブルに該当する。
更に、上記実施形態では、水分センサ装置20は、水分測定装置の各構成を備えて構成されたが、水分センサ装置20は、必ずしも水分測定装置の各構成全てを備える必要はなく、水分センサ装置20以外の装置が水分測定装置の構成の一部を有しても良い。言い換えれば、水分測定装置は、2以上の装置によって形成されていても良く、各構成が、灌水制御システム100のいずれかに備えられていれば良い。かかる例としては、例えば、水分測定装置の各構成の内、温度を測定する構成部分と、温度差から水分情報を導出するための構成部分とが、異なる装置に備えられたものが例示される。尚、上記実施形態の水分センサ装置を、水分測定装置の各構成の内の温度を測定する構成部分を備えた装置とし、メイン制御装置1を温度差から水分情報を導出するための構成部分を備えた装置としても良い。
更に、上記実施形態では、水分センサ装置20は、水分を測定する測定対象(被測定対象物)は土壌とされ、土壌に対応した演算式や標準値が制御プログラム42aと標準値テーブル42bとに記憶されたが、被測定対象物は土壌に限られるものでなく、水分センサ装置20に、土壌以外の各種物質に対応した演算式や標準値を記憶させると共に、測定対象物の種類を指定する指定手段と、その指定手段による指定に応じて演算式や標準値を選択する選択手段とを設け、各種物質の水分を測定するように水分センサ装置20を構成しても良い。これによれば、例えば、剛体、超硬物質や、穴を開けることが忌避される成型品や建材等にそれぞれ対応した演算式や標準値をROM42に記憶させることにより、かかる物質の水分を非接触、被破壊で測定することができるので、測定部位(装置側と被測定対象物側の両者)にダメージを与えることを回避できる。