JP4437222B2 - 金属−酸素系無機ゲル前駆体を光照射により可逆的に構造変化させる方法 - Google Patents

金属−酸素系無機ゲル前駆体を光照射により可逆的に構造変化させる方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属酸化物を作製するための金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造を光照射により可逆的に変化させる方法に関するものであり、更に詳しくは、有機フォトクロミック化合物を金属アルコキシドに相互作用させた無機有機ハイブリッドゲル前駆体に、光化学反応を積極的に取り入れた、新規な、金属酸化物前駆体としての金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造を可逆的に変化させる方法に関するものである。
本発明は、例えば、ガラスやセラミックス等の金属酸化物を作製するための前駆体としての、ゾルゲル法によって作製される金属−酸素系無機ゲル前駆体関連の技術分野において、従来、この金属−酸素系無機ゲル前駆体を外部刺激によって構造変化させる技術がなかったことを踏まえ、金属アルコキシドと有機フォトクロミック化合物を相互作用させて作製した新規な金属−酸素系無機ゲル前駆体を利用することにより、その構造を可逆的に変化させることを可能とする新しい金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造制御方法を提供するものとして有用である。
本発明は、高機能性セラミック製造のための基盤技術となる新しい金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造制御方法を提供するものである。
これまでに、高分子ゲルにおいては、例えば、フォトクロミック化合物をその側鎖にグラフトすることにより、外部からの刺激、例えば、紫外線照射や電場によって、容易にその構造を変化させることのできる技術が数多く報告されており、これらの技術を、例えば、光駆動焦点可変レンズ等の光学部品や人工筋肉、人工関節等へ応用することが種々検討されている(特許文献1−3、非特許文献1−3参照)。
これに対し、金属−酸素−金属のネットワークからなる無機ゲルは、ガラスやセラミックス等の金属酸化物を作製するための前駆体として、ゾルゲル法等によって作製されているが、この金属−酸素系無機ゲルを、外部刺激によって可逆的に構造変化させる技術に関する報告例は見当たらない。
特公平06−19517号公報 特公平06−47620号公報 特開平02−6901号公報 M.Irie, D.Kungwatchakun, Makromol.Chem. Rapid Commun., Vol. 5, 829 (1984). M.Irie, D.Kungwatchakun, Makromolecules,Vol. 19, 2476 (1986) M.Irie, Makromolecules, Vol.19, 2890 (1986).
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、金属−酸素系無機ゲルの構造を制御する方法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、金属−酸素−金属のネットワークからなる無機ゲル前駆体と相互作用することのできる有機フォトクロミック化合物を無機ゲル前駆体溶液中に添加し、適切な波長の光を照射することによって、より効率よく、簡便に、金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造を可逆的に変化させることができる方法の開発に成功し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば、ガラスやセラミックス等の高性能金属酸化物を作製するための金属−酸素系無機前駆体の構造を光照射により可逆的に変化させる方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)金属−酸素−金属のネットワークからなる金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造を可逆的に変化させる方法であって、有機フォトクロミック化合物の官能基を介して金属アルコキシドと有機フォトクロミック化合物を相互作用させることで作製した、金属酸化物を調製するための金属−酸素系無機ゲル前駆体に光照射することによって、前記有機フォトクロミック化合物の構造変化を誘起することにより、該有機フォトクロミック化合物と相互作用した前記無機ゲル前駆体の構造変化を誘起して、その構造を可逆的に変化させることを特徴とする前記金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造制御方法。
(2)光照射によって可逆的にシス−トランス光異性化反応を起こす有機フォトクロミック化合物を用いることを特徴とする、前記(1)に記載の方法。
(3)有機フォトクロミック化合物の添加量によって、金属−酸素系無機ゲル前駆体の可逆的な構造変化量を制御することを特徴とする、前記(1)に記載の方法。
(4)金属−酸素系無機ゲル前駆体に波長領域が250nmから400nmの紫外光及び波長領域が400nmから500nmの可視光を照射することを特徴とする、前記(1)に記載の方法。
)金属−酸素源として金属アルコキシドを用い、ゾルゲル法によって金属−酸素系無機ゲル前駆体を作製することを特徴とする、前記(1)に記載の方法。
)前記(1)から()のいずれかに記載の方法で構造変化を誘起した金属−酸素系無機ゲル前駆体に水を添加し、加水分解して重合反応を促進させることを特徴とする、可逆的に構造制御した金属−酸素系無機ゲル前駆体の重合方法。
)有機フォトクロミック化合物の構造変化に伴って、金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造変化を誘起できるタイミングである、ゲルの流動性が保持されている状態で、水を添加して加水分解することを特徴とする、前記()に記載の方法。
)金属−酸素系無機ゲル前駆体が沈殿を起こさない程度で加水分解反応を行うことを特徴とする、前記()に記載の方法。
)金属−酸素−金属のネットワークからなる金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造を可逆的に変化させる方法で、構造制御した高機能性金属酸化物を作製するための前駆体を製造する方法であって、有機フォトクロミック化合物を官能基を介して金属アルコキシドと有機フォトクロミック化合物を相互作用させることにより、前記有機フォトクロミック化合物の構造変化を誘起することによって、該有機フォトクロミック化合物と相互作用した前記無機ゲル前駆体の構造変化を誘起して、光照射により可逆的に構造変化する金属−酸素系無機ゲル前駆体を作製することを特徴とする、金属酸化物を作製するための無機有機ハイブリッドゲル前駆体の製造方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、有機フォトクロミック化合物を金属アルコキシドに相互作用させて作製した無機有機ハイブリッド前駆体の構造を光照射によって可逆的に変化させることを特徴とするものである。
本発明において、先ず、用いるアルコキシドとしては、例えば、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラエトキシド等が挙げられ、光照射効果の著しいジルコニウムテト−n−ブトキシドが好適なものとして例示される(K.Nishizawa, T.Miki, K.Suzuki and K.Kato, Key Eng. Mater., 147,228
(2002) 参照)。しかし、これらに限定されるものではなく、本発明では、テトラエトキシシラン、アルミニウムイソプロポキシド等の、他の同様の金属アルコキシドを用いることができる。
次に、上記アルコキシドに添加する有機フォトクロミック化合物としては、光照射によって可逆的に分子構造変化を起こすものであれば良く、例えば、光照射によって、可逆的にシスートランス異性化反応を起こす化合物であるスチルベンやチオインジゴ等が挙げられ、その一つであるアゾベンゼン系化合物が好適なものとして例示される。
更に、これに加えて、フォトクロミック化合物は、上記アルコキシドと相互作用するために官能基を有することが必要であり、例えば、アゾベンゼンのフェニル基にカルボキシル基を有する4−フェニルアゾ安息香酸が好適なものとして例示される。しかし、これらに制限されるものではなく、これらと同等又は類似のものであれば同様に使用することができる。
また、フォトクロミック化合物の添加量は、アルコキシドとの相互作用に影響を与え、添加量が多いほど無機ゲルの構造変化を大きく誘起できる傾向にあるが、フォトクロミック化合物の種類によっては、添加量が多くなると沈殿を生じたり、結晶化や凝集を起こすことで相分離をもたらすものがあるため、注意が必要である。
更に、用いる溶媒としては、上記アルコキシド、及びフォトクロミック化合物を溶解することができるものであれば良く、例えば、2−メトキシエタノールが好適なものとして例示される。しかし、これに制限されるものではなく、これと同効のものであれば同様に使用することができる。本発明では、上記アルコキシドと上記有機フォトクロミック化合物を、例えば、 2 雰囲気下で所定の割合で溶媒に添加して混合攪拌し、これを還流して金属−酸素系無機ゲル前駆体を調製する。
次に、光プロセスについて説明する。前述のアルコキシド、及びフォトクロミック化合物を用いて調製した金属−酸素系無機ゲル前駆体に光照射を行う。使用する光源としては、例えば、アゾベンゼン系のフォトクロミック化合物を用いた場合には、波長領域が250nmから400nm付近の紫外光を放出する光源であれば良く、例えば、超高圧水銀灯を用いて適切なガラスフィルターで分光する方法が好適なものとして例示される。また、他のフォトクロミック化合物を使う場合には、その化合物に最適な波長の光を照射することが望ましい。
続いて、アゾベンゼン系のフォトクロミック化合物を用いた場合には、波長領域が400nmから500nm付近の可視光を放出する光源を用いて光照射を行う。使用する光源としては、例えば、超高圧水銀灯を用いて適切なガラスフィルターで分光する方法が好適なものとして例示される。また、前述の場合と同様に、他のフォトクロミック化合物を使う場合には、その化合物に最適な波長の光を照射することが望ましい。本発明は、以上の光照射プロセスにより、フォトクロミック化合物の構造を可逆的に変化させ、それに伴って、フォトクロミック化合物と相互作用している金属−酸素系無機ゲル前駆体の可逆的な構造変化を誘起する、これまでにない画期的な方法である。
更に、本発明では、金属−酸素系無機ゲル前駆体に、水を添加し、加水分解反応を行うことで重合反応を促進させるが、この場合、水を添加するタイミングが重要である。すなわち、ゲル化の進行具合と有機物のフォトクロミズムによるゲルの構造変化の誘起度との間には密接な関係があり、ゲル化が進みすぎるとゲルの流動性が阻害されるため、フォトクロミック化合物の構造変化を誘起しても、ゲルの構造変化を誘起することが困難になることが予測される。従って、水を添加するタイミングとしては、ゲルの流動性が充分に保たれている状態、例えば、光照射直後に添加する方法が好適なものとして例示される。
また、水の添加量・濃度は、加水分解速度に影響を与え、添加量が多いほど、また、高濃度ほど加水分解速度は速くなる傾向にあるため、高濃度の水を過剰に添加すると、加水分解速度が大きすぎて沈殿を生じてしまう恐れがある。そのため、水の添加量・濃度の調製は重要であり、水を添加しても沈殿を生じない程度、例えば、溶媒で0.1mol/l濃度に希釈した水を金属−酸素系無機ゲル前駆体溶液3.5mlに対し50μl程度添加する方法が好適なものとして例示される。
本発明の方法は、一例として、例えば、Zr−O系無機ゲル前駆体の構造を変化させる場合に好適に用いられるが、これに限らず、例えば、Al−O、Mg−O、Si−O、Ti−O、Sn−O、Hf−O、Ce−O、Y−O等に代表される金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造を変化させる場合に、広く適用することが可能である。本発明の金属−酸素系無機ゲル前駆体は、構造制御した高機能性金属酸化物を作製するための前駆体として有用である。
本発明により、1)有機フォトクロミック化合物を金属アルコキシドに相互作用させて作製した高機能性セラミックス作製のための無機有機ハイブリッドゲル前駆体を提供することができる、2)この無機有機ハイブリッド前駆体に、光化学反応を積極的に取り入れた、新規な、金属酸化物前駆体としての金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造を可逆的に変化させる方法を提供することができる、3)本発明により、高機能性セラミックス作製のプロセスの効率化が図られる、4)そのため、所定の機能を有する金属−酸素系無機ゲル前駆体を用いて、機能性集積材料等を作製することが可能となる、という格別の効果が得られる。
次に、参考例及び実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
参考例
(1)方法
ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド(Zr(O−n−C494 又はZr(O−n−Bu)4 )とアゾベンゼン(C6
5 N=NC65 )のモル比が20:1になるように、これらを 2
雰囲気下のグローブボックス中で2−メトキシエタノールと混合撹拌し、3時間還流した。室温まで冷却後、一晩撹拌し、Zr−O無機ゲル前駆体溶液とした。この溶液に250Wの超高圧水銀灯(multilight
UIV-270, Ushio Co. Ltd., Tokyo,
Japan, 照射波長:270nmから460nm,エネルギー密度70mW/cm2
以下)を用い、737−ガラスフィルター(Corning Glass Works, Corning, New York, U.S.A., C.S.No.737)を通して分光した約320nmから390nmの紫外光(737−UV)を室温下で所定時間照射した。
照射直後、0.1MのH2 Oにより加水分解して、可視紫外分光分析装置(UV-Vis, U-4100, HITACHI high-technologies Co.
Ltd.,Tokyo, Japan )によりアゾベンゼンと無機ゲル前駆体の構造変化を確認した。更に、737−UV照射直後の溶液に、同様の光源を用い373−ガラスフィルター(Corning
Glass Works, Corning, New York, U.S.A., C.S.No.373)を通して分光した420nmから460nmの可視光(373−Vis)を室温下で所定時間照射した。照射直後、0.1MのH2
Oにより加水分解して、可視紫外分光分析装置(UV-Vis, U-4100, HITACHI high-technologies Co. Ltd.,Tokyo, Japan )によりアゾベンゼンと無機ゲル前駆体の構造変化を確認した。
(2)結果
図1に、アルコキシドとアゾベンゼンを20:1のモル比で添加して調製したZr−O無機ゲル前駆体溶液の可視紫外線吸収スペクトルを示した。アゾベンゼンを添加して調製したZr−O無機ゲル前駆体溶液に737−UVを照射、引き続いて373−Visを照射したところ、有機物の構造が可逆的に変化する様子が観測され、Zr−O無機ゲル前駆体中において、溶液反応と同様のアゾベンゼンのシス−トランス光異性化反応が起こっていることが確認された。
しかし、図2に示したように、Zr−O無機ゲル前駆体中でアゾベンゼンのシス−トランス光異性化反応が起こっても、Zr−O無機ゲル前駆体に起因する5.9eV付近の吸収帯には何の変化も見られないことが分かった。
(1)方法
ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド(Zr(O−n−C494 又はZr(O−n−Bu)4 )と4−フェニルアゾ安息香酸(C6
5 N=NC64 COOH)のモル比が20:1になるように、これらをN2
雰囲気下のグローブボックス中で2−メトキシエタノールと混合撹拌し、3時間還流した。室温まで冷却後、一晩撹拌し、Zr−O無機ゲル前駆体溶液とした。この溶液に250Wの超高圧水銀灯(multilight
UIV-270, Ushio Co. Ltd., Tokyo,
Japan, 照射波長:270nmから460nm,エネルギー密度70mW/cm2
以下)を用い、737−ガラスフィルター(Corning Glass Works, Corning, New York, U.S.A., C.S.No.737)を通して分光した約320nmから390nmの紫外光(737−UV)を室温下で所定時間照射した。
照射直後、0.1MのH2 Oにより加水分解して、可視紫外分光分析装置(UV-Vis, U-4100, HITACHI high-technologies Co.
Ltd.,Tokyo, Japan )により4−フェニルアゾ安息香酸と無機ゲル前駆体の構造変化を確認した。更に、737−UV照射直後の溶液に、同様の光源を用い373−ガラスフィルター(Corning
Glass Works, Corning, New York, U.S.A., C.S.No.373)を通して分光した420nmから460nmの可視光(373−Vis)を室温下で所定時間照射した。照射直後、0.1MのH2
Oにより加水分解して、可視紫外分光分析装置(UV-Vis, U-4100, HITACHI high-technologies Co. Ltd.,Tokyo, Japan )により4−フェニルアゾ安息香酸と無機ゲル前駆体の構造変化を確認した。
(2)結果
図3に、アルコキシドと4−フェニルアゾ安息香酸を20:1のモル比で添加して調製したZr−O無機ゲル前駆体溶液の可視紫外線吸収スペクトルを示した。4−フェニルアゾ安息香酸を添加して調製したZr−O無機ゲル前駆体溶液に737−UVを照射、引き続いて373−Visを照射したところ、アゾベンゼンの場合と同様に、Zr−O無機ゲル前駆体中の有機物の構造が光によって可逆的に変化する様子が観測された。
更に、図4に示したように、4−フェニルアゾ安息香酸の場合には、光による有機物の可逆的な構造変化に伴って、Zr−O無機ゲル前駆体に起因する5.9eV付近の吸収帯位置が可逆的に変化する様子が観測された。この結果は、4−フェニルアゾ安息香酸中のカルボキシル基とZr−O無機ゲル前駆体が相互作用していることを示唆しており、光によって有機物の構造変化を誘起することにより、有機物と相互作用したZr−O無機ゲル前駆体の構造変化を誘起できることを示すものであった。
(1)方法
ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド(Zr(O−n−C494 又はZr(O−n−Bu)4 )と4−フェニルアゾ安息香酸(C6
5 N=NC64 COOH)のモル比が1:1になるように、これらをN2
雰囲気下のグローブボックス中で2−メトキシエタノールと混合撹拌し、3時間還流した。室温まで冷却後、一晩撹拌し、Zr−O無機ゲル前駆体溶液とした。この溶液に250Wの超高圧水銀灯(multilight
UIV-270, Ushio Co. Ltd., Tokyo,
Japan, 照射波長:270nmから460nm,エネルギー密度70mW/cm2
以下)を用い、737−ガラスフィルター(Corning Glass Works, Corning, New York, U.S.A., C.S.No.737)を通して分光した約320nmから390nmの紫外光(737−UV)を室温下で所定時間照射した。
照射直後、0.1MのH2 Oにより加水分解して、可視紫外分光分析装置(UV-Vis, U-4100, HITACHI high-technologies Co.
Ltd.,Tokyo, Japan )により4−フェニルアゾ安息香酸と無機ゲル前駆体の構造変化を確認した。更に、737−UV照射直後の溶液に、同様の光源を用い373−ガラスフィルター(Corning
Glass Works, Corning, New York, U.S.A., C.S.No.373)を通して分光した420nmから460nmの可視光(373−Vis)を室温下で所定時間照射した。照射直後、0.1MのH2
Oにより加水分解して、可視紫外分光分析装置(UV-Vis, U-4100, HITACHI high-technologies Co. Ltd.,Tokyo, Japan )により4−フェニルアゾ安息香酸と無機ゲル前駆体の構造変化を確認した。
(2)結果
図5に、4−フェニルアゾ安息香酸をアルコキシドに対して1:1で添加して調製したZr−O無機ゲル前駆体溶液の可視紫外線吸収スペクトルを示した。4−フェニルアゾ安息香酸を1:1で添加して調製したZr−O無機ゲル前駆体溶液に737−UVを照射、引き続いて373−Visを照射したところ、アゾベンゼンの場合と同様に、Zr−O無機ゲル前駆体中の有機物の構造が光によって可逆的に変化する様子が観測された。
更に、図6に示したように、4−フェニルアゾ安息香酸をアルコキシドに対して1:1で添加した場合にも、光による有機物の可逆的な構造変化に伴って、Zr−O無機ゲル前駆体に起因する5.9eV付近の吸収帯位置が可逆的に変化する様子が観測された。そして、この変化率は、それらを20:1で添加した場合に比べて大きかったことから、4−フェニルアゾ安息香酸の添加量を増やすことによって、有機物と相互作用したZr−O無機ゲル前駆体の構造変化を大きく誘起できることを示すものであった。
図7(a)に、4−フェニルアゾ安息香酸の赤外線吸収スペクトルを示した。1680cm−1にカルボキシル基のC=O伸縮振動に相当する吸収ピークが観測された。図7(b)に、アルコキシドと4−フェニルアゾ安息香酸を1:1のモル比で添加して調製したZr−O無機ゲル前駆体の赤外線吸収スペクトルを示した。これらの結果から、Zr−O無機ゲル前駆体と4−フェニルアゾ安息香酸が、4−フェニルアゾ安息香酸のカルボキシル基を介して相互作用していることが確認された。
以上の結果から、ジルコニウムアルコキシドと相互作用できるフォトクロミック化合物を添加して調製したZr−O無機ゲル前駆体溶液に、適切な波長の光を照射すると、フォトクロミック化合物の構造変化に伴って、Zr−O無機ゲル前駆体の構造変化を誘起できることが明らかとなった。
以上詳述したように、本発明は、金属−酸素系無機ゲル前駆体を光照射により可逆的に構造変化させる方法に係るものであり、本発明により、有機フォトクロミック化合物を金属アルコキシドに相互作用させて作製した新規無機有機ハイブリッドゲル前駆体を提供することができる。金属酸化物前駆体としての金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造を可逆的に制御することができる。本発明は、高機能性セラミック製造のための基盤技術に関するものであり、例えば、光メモリ、光スイッチング素子、シャッター、センサー等の光学部品や光徐放剤としてのコントロールリリース材料等として有用である。

Claims (9)

  1. 金属−酸素−金属のネットワークからなる金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造を可逆的に変化させる方法であって、有機フォトクロミック化合物の官能基を介して金属アルコキシドと有機フォトクロミック化合物を相互作用させることで作製した、金属酸化物を調製するための金属−酸素系無機ゲル前駆体に光照射することによって、前記有機フォトクロミック化合物の構造変化を誘起することにより、該有機フォトクロミック化合物と相互作用した前記無機ゲル前駆体の構造変化を誘起して、その構造を可逆的に変化させることを特徴とする前記金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造制御方法。
  2. 光照射によって可逆的にシス−トランス光異性化反応を起こす有機フォトクロミック化合物を用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 有機フォトクロミック化合物の添加量によって、金属−酸素系無機ゲル前駆体の可逆的な構造変化量を制御することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  4. 金属−酸素系無機ゲル前駆体に波長領域が250nmから400nmの紫外光及び波長領域が400nmから500nmの可視光を照射することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  5. 金属−酸素源として金属アルコキシドを用い、ゾルゲル法によって金属−酸素系無機ゲル前駆体を作製することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  6. 請求項1からのいずれかに記載の方法で構造変化を誘起した金属−酸素系無機ゲル前駆体に水を添加し、加水分解して重合反応を促進させることを特徴とする、可逆的に構造制御した金属−酸素系無機ゲル前駆体の重合方法。
  7. 有機フォトクロミック化合物の構造変化に伴って、金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造変化を誘起できるタイミングである、ゲルの流動性が保持されている状態で、水を添加して加水分解することを特徴とする、請求項に記載の方法。
  8. 金属−酸素系無機ゲル前駆体が沈殿を起こさない程度で加水分解反応を行うことを特徴とする、請求項に記載の方法。
  9. 金属−酸素−金属のネットワークからなる金属−酸素系無機ゲル前駆体の構造を可逆的に変化させる方法で、構造制御した高機能性金属酸化物を作製するための前駆体を製造する方法であって、有機フォトクロミック化合物を官能基を介して金属アルコキシドと有機フォトクロミック化合物を相互作用させることにより、前記有機フォトクロミック化合物の構造変化を誘起することによって、該有機フォトクロミック化合物と相互作用した前記無機ゲル前駆体の構造変化を誘起して、光照射により可逆的に構造変化する金属−酸素系無機ゲル前駆体を作製することを特徴とする、金属酸化物を作製するための無機有機ハイブリッドゲル前駆体の製造方法。
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