(関連する出願との関係)
この出願は、特許協力条約に基づく国際受理官庁として機能する米国特許商標庁に同時に出願した表題「端側吻合用フランジ付き移植片を製造するための装置と方法」(以下、「同時に出願したPCTインプラ(Impla)国際出願」という)に関連する。同時に出願したPCTインプラ国際出願は、共にインプラ(Impla)社に譲渡されていて、米国を除く全ての指定国のための出願人であり、スコット・ランダル、ロイ・タング、およびアルバート・エル・ラメイの名前は、米国のみの出願人としてである。出願人は、同時に出願したPCTインプラ国際出願をさらにここで示して、それらを参照することによりここに取り込む。
(発明の背景)
閉塞した状態の末梢血管のバイパスのためのカフ移植片の使用、特に大腿部パッチプロテーゼ(patch prosthese)は、この分野でよく知られている。しかしながら、現在まで、吻合部分において静脈組織で形成された先端部カフを持った自家移植または合成移植片が使用されてきた。適切なカフ移植片の例は、ジェイ・エイチ・ミラーの「静脈カフとPTFEの使用」に記載されたミラーカラー(collar)、ダブリュ・ビー・サウンダース(1989)の「血管外科技術」第2版276〜286ページ、およびアール・エス・テーラーほかによって記載された「ポリテトラフルオロエチレンバイパス移植片用の改良された技術」のテーラーパッチ(patch):ブラザー・ジェイ・スルグの「血液透析静脈パッチの長期間使用結果」、79:348から354(1992)がある。ミラー移植片とテーラー移植片の両方がカフ移植片でいずれも吻合部分に自家静脈カフを持ったポリテトラフルオロエチレン移植片を用いている。ミラーカラーとテーラーパッチのそれぞれが、ポリテトラフルオロエチレン組織界面での従順な不整合を避けるために吻合部分に静脈組織を使用している。
本発明は、フレアの付いた2重バルブ形状に組み込まれる大腿下腿部バイパス用の新しいタイプの吻合部分を提供する。本発明の移植片形状は、血液透析特性の関数として、吻合用の最適な幾何学を提供する。バイパスプロテーゼから動脈への血流を最適にすることによって、内膜の過剰な形成は、移植片の開通性の付随する増加と減少した罹患率と共に減少される。
本発明は、一体のポリテトラフルオロエチレン製の先端部フランジまたはカフを、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)移植片に形成する方法と装置を提供する。本発明の装置は、拡張部を形成する径方向に延びたスロットを有する管状のモールドを備えている。
本発明のフランジカフ移植片は、次のようにして作られる。第1に、管状の突出部形成するためにPTFEの潤滑剤混合物をビレット内に突出することによって焼結されていない管状のPTFE血管移植片を形成し、そして、管状のカフを、1)拡張部への負圧の適用、または2)高度に柔順な血管形成バルーンによって管状に突出した管腔を通って管状突出部の部分を径方向に離すような正圧の適用、によってカフ(cuff)された移植片を形成する。
支流移植片を組み立てる種々の異なった試みがなされてきた。1938の早くから、ブラウンの米国特許第2、127、930号は、構造的形状の周りに処理された動物組織の細片を巻き付けて形成して、動物の組織とバインダで作られた、生命吸収可能で外科的に組織移植可能な移植片を開示している。
1990年3月20日にポシスに許可された米国特許第4、909、979号は、血管移植片として使用される人のへその緒を整形する方法を開示している。この方法は、緒を形作り治療する間、へその緒を支持し整形するためにマンドレルを使用している。PTFEコーティングが、へその緒をマンドレルに設けるのを容易にするためにマンドレルに施されている。マンドレルの整形部には、マンドレルに複数の真空開口部が設けられている。へその緒は、エタノールで処理され、緒が乾燥するまで真空で処理される。緒は、ついで、治療的定着的解決のために膨張され、へその緒が実質的に気密に処置され、また、マンドレル形成部の周りに円周的に圧縮されコンパクト化されるまで真空が与えられる。
1982年10月19日にボディッキィに許可された米国特許第4、354、495号は、PTFEチューブを、例えばポリウレタン、アクリル酸、ポリエチレン、ポリカーボネートなどのモールド可能なプラスチックで形成されたハブ(hub)に接続する方法を開示している。この方法は、膨出部すなわち突出部を形成し、ついで膨出部をモールドに挿入し、そしてモールド内で膨出部の周りにモールド可能なプラスチックのハブをモールドするために、PTFEチューブの部分を選択的に加熱することを含んでいる。
1990年9月18日にカネダ他に許可された米国特許第4、957、508号は、外方へフレアの付いた基端部と先端部とを有した弾性的な医療用チューブを開示している。これらの端部の外側への張り出し部は、反対の弾性的特性を示すために、チューブの内面と外面とを形成することによって設けられ、内面は拡張する力を示すのに対し、外面は収縮する力を示す。チューブは、高分子量のポリマー、好ましくは、ハロゲン化ポリビニル、ポリスチレン、ポリマーシリーズ、ポリマーシリーズの縮合物、セルロースシリーズの高ポリマー、ポリウレタンシリーズの高ポリマー、ポリスルホンシリーズの樹脂、ポリアミドなどで、これらのコポリマーまたは混合物とともに作られている。
1995年2月7日にノシキ他に許可された米国特許第5、387、236号は、血管プロテーゼと、PTFEまたは他の微細孔材料で作られた血管プロテーゼ基質を準備し、生物学的組織のプロテーゼ基質断片の壁内に付着して捕捉することによって、血管プロテーゼを製造する方法とを開示している。生物学的組織の断片は、血管組織、結合組織、および筋肉組織ならびに/または血管内皮細胞、滑らかな筋肉細胞、および繊維母細胞である。植え付け工程は、細胞物質を移植片の内壁に付着し、血管プロテーゼの微細孔マトリクス内に組織の基質を入れ込むために管腔壁の表面と反管腔壁表面との間に圧力差を与えることによって導かれる。
1989年11月28日にベリー他に許可された米国特許第4、883、453号は、冠状大動脈バイパス移植片とその移植片の製造方法を開示している。この移植片と、プレートとは、静電気的に紡いだ繊維構造に作られている。移植片は、移植片をマンドレルに設け、接着剤をプレートの開口を取り囲むプレートの表面に施し、移植片が接着剤に接触するまでマンドレルをプレートの開口を通過させることによってプレートに接着されている。接着剤は、プレートと移植片を形成する材料用に適切な接着剤であればよい。ここで参照して述べた好ましい実施例によれば、移植片は、好ましくは、プレートに隣接した移植片の壁厚がプレートとの距離よりも大きいテーパーを付けられた壁厚を有している。
1992年5月5日にハヤシ他に許可された米国特許第5、110、526号は、モールドされたPTFE物品を製造する工程を開示している。この工程によれば、非焼結PTFEの突出部が焼結モールド内に挿入されている。焼結モールドは、非焼結PTFEの突出部の外径よりもわずかに大きい直径を有している。非焼結PTFEの突出部の外径と焼結モールドの内面との間隙は、焼結モールドの外径の2%のオーダーである。突出部は、突出部の端子管腔内に挿入されたプラグと、ワイヤおよび取り出しリールを介して焼結モールド内に引き込まれる。PTFEの突出部は、焼結モールドの長さに一致するように切断され、焼結モールドは、切断された突出部の端部に封止される。組立品は焼結炉に搬送されて焼結される。焼結中、突出部は、焼結モールドと接触するまで拡張し、焼結モールドの形状に一致する。冷却後、焼結突出部は、焼結モールドから離れて収縮し、焼結モールドと対応した同じ形状になる。
1965年7月20にエリー・ジュニア他に許可された米国特許第3、196、194号は、FEP―フッ化炭素チューブ用突出工程を開示している。突出工程は、バレル突出装置を通って管状の突出部を形成する流体FEPコポリマーを突出し、管状の突出部をヒータ内に配置し、FEP突出部を径方向に拡張する管状の突出部を圧縮し、そして、記憶機能を持った熱収縮可能なチューブ直径が減少された突出部にするために拡張した突出部を冷却するネジから成る。
1985年3月12にマドラスに許可された米国特許第4、503、568号は、端側吻合と吻合過形成の減少用動脈のバイパスのプロテーゼを開示している。動脈のバイパスのプロテーゼは、一般に、管状の入口部材と、管状の出口部材と、かかと部材とを有する接続要素から成る。管状の入口は、血流を受けその入口通路を提供する。管状の出口部材は、管状の入口と結合され角度を成して変位していて、入口部材からの血流の通路を提供する。かかと部材は、出口部材から実質的に同軸に延びている。かかと部材の先端部は、開口した動脈切開部を通って、動脈切開部の上流の容器の部分に挿入されている。かかとは、固いか、または入口と出口部材と連続した通路を有する。喉部は、管状の入口と出口部材との間に設けられていて、円周のスカートが喉部を取り巻いている。スカートは、血管の外膜組織に癒着される。
PTFE材料を作るための公知の方法を特に参照すると、技術の状態と目的の例として次のものを引用する。1984年11月13日に発行された米国特許第4、482、516号は、粗い微細構造を有する高強度の延伸PTFE製品を製造する工程を開示している。この特許はバウマン他に許可されたもので、延伸率が最大40%までのものを示している。結果的にはPTFEの微細構造は、ついで、節のサイズすなわち、高さと幅と小繊維の長さを考慮することを意味する「粗さ」指針によって規定される。
1994年12月27日にツー他に許可された米国特許第5、376、110号は、移植片の壁部を横切った交互の圧力の影響下で行われたコラーゲン(collagen)交差結合によって血管移植片を製造する方法を開示している。交互の圧力は、コラーゲン繊維の交差結合を意図している。
1988年5月10日にキャンベル他に許可された米国特許第4、743、480号は、螺旋状の溝が突出したバレルおよび/またはマンドレルに機械で加工された管状のPTFE製品を突出し拡張する方法を開示している。管状のPTFE製品の突出は、突出部の長手方向の軸線から85〜15°の間で角度をなして設けられた節を有する突出部に帰着する。
最後に、1980年11月18日にオキタに許可された米国特許第4、234、535号は、チューブの内面における比較的小さな直径の繊維と、チューブの外径の少なくとも2倍の直径の繊維とを有する延伸PTFE血管移植片を形成する工程を開示している。移植片はPTFEの管状の突出部が形成され、ついで、駆動と取り上げキャプスタンに載せられる工程によって製造される。キャプスタンの駆動システムは、約327°Cの温度の加熱セットを通って、ついで、約327°Cの温度で突出部の径方向の拡張を引き起こす真空ケースの中へ突出部を搬送し、そして、径方向への拡張後、冷却空気の導入によって真空ケースは焼結温度よりも低い温度まで冷却され、それによって、駆動と取り上げキャプスタンからの張力によって、チューブを拡張された直径に長手方向に固定する。この特許は、また、径方向への拡張工程中のチューブ管腔を通って搬送される冷却空気の使用を開示し請求している。冷却空気をチューブ管腔を通って搬送することにより、管腔の表面の温度は、PTFEの焼結温度よりも低く維持される。このようにして、管腔と非管腔での異なった直径の小繊維(fibril)が形成される。
現在の臨床実務において、バイパスまたはアクセスプロテーゼと先端部動脈との先端部吻合は、長い静脈パッチを持ったプロテーゼを動脈に吻合することによる吻合部分位での静脈要素の介挿(リントン(Linton)パッチ)、静脈パッチを用いた吻合領域におけるプロテーゼの拡大(テーラー(Taylor)パッチ)のような直接吻合のみでなく、プロテーゼと動脈との間の静脈シリンダーの介挿(ミラー(Miller)カラー)もまた達成された。大腿先端部移植片において、移植片と感受性のある動脈との間の従順な不一致および血行要因が、血栓症と吻合部分位の血管内膜過形成の発達の主な原因となっているという証拠が形成されてきている。
米国特許第2、127、930号
米国特許第4、909、979号
米国特許第4、354、495号
米国特許第4、957、508号
米国特許第5、387、236号
米国特許第4、883、453号
米国特許第5、110、526号
米国特許第3、196、194号
米国特許第4、503、568号
米国特許第4、482、516号
米国特許第5、376、110号
米国特許第4、743、480号
米国特許第4、234、535号
本発明のこれらの目的と他の目的、態様、および、利点は、添付した図面を参照して本発明の好ましい実施例をより詳細に説明した以下の記述によって、当業者にとってより明らかとなるであろう。
図1は、PTFEを有する隔離ひかがみ要素と先端移植片への大腿部後続脛骨バイパスを示している。大腿部動脈の閉塞部3またはひかがみ動脈の閉塞部4を先端循環部にバイパスするのにPTFE移植片を使用することはよく知られている。上述したように、種々のカフやパッチ技術が考案されてきた。
図2は、代表的には3〜4cmの伏在静脈の静脈要素8が、動脈2から外方へ延びた円筒状のカフを形成するために、ひかがみ動脈または脛骨動脈の動脈切開開口部に施され、そして縫合されたミラーカフ5を示している。静脈要素8は、長手方向に開口し、6/0または7/0プロレーン縫合(prolene suture)を用いて動脈切開部に吻合することによってカラー状に形成されている。カラーは、ついで6/0プロレーン縫合で閉じられる。ePTFEの移植片10が、カラーの円周に合うように切断され、ついで連続した5/0プロレーン縫合を用いてカラーに吻合される。ミラーカフ5は、脛骨動脈、ひかがみ動脈、または、たとえば大腿部―ひかがみ部―脛部のような連続したバイパス処置において、PTFEが吻合されるような場合に示されている。
図3は、テーラーパッチ7を示している。テーラーパッチ処置において、5〜6cmの長さの静脈が、代表的には伏在静脈の利用可能な要素から取り入れられている。取り入れられた静脈は、長手方向に開口していて、ダイアモンド形状の静脈パッチ8を形成するために整形されている。ePTFEの移植片10の先端部は、ePTFEの移植片10の頂面に沿ってU字状とV字状のスロットに整形されている。ePTFEの移植片のU字状の開口端部は、ePTFEの動脈縫合ラインを形成しているのに対し、V字状のスロットは、静脈パッチ8に縫合される。静脈パッチ8は、ePTFEの移植片10のV字状のスロットに沿って、また、動脈切開開口部の正しい方向に設けられていて、ePTFEの移植片10と動脈切開部の両方に縫合されている。縫合ラインは、テーラーパッチバイパス移植片を完成するために、移植片のかかと部分から移植片のつま先部分へ延びている。
標準的な端部と側部とのePTFE移植片/動脈吻合用移植片の開通性は、1年間で21〜60%の間の開通性と、および3年間で14〜38%の間の開通性とが報告されている。ミラーカラーを使用した1年間の開通性は、ePTFE下腿移植片用として47%報告されていて、3年間の開通性は52%である。テーラーパッチを使用した1年間の開通性は、86%報告されていて、3年間の開通性は52%報告されている。1993年2月3日の病院最新情報のジェイ・エフ・チェスター等の「血管再構築用中間配置静脈パッチ」による。動脈吻合への直接PTFEは、比較的固いPTFEと、PTFEと感受性の動脈間の最初の増殖の形成とにより、動脈の機械的ひずみによって批評されている。これらの2つのファクターは、直接PTFEの動脈吻合への高閉塞割合と、低移植片の開通性特性に関係されている。シー・ダブリュ・ジャミッソン他の「血管外科」第5版第330〜340ページ(1994)による。
フランジ付き移植片の好ましい実施例は、図4〜8に示されている。図4に示されたように、フランジ付き移植片10の第1の実施例は、管状のePTFEの移植片11が先端2分割形状のフランジ12(第一部材)とフランジ14(第二部材)を有する2つに分けられた2重バルブ形状である。端部と側部が接する端側吻合において、移植片11の先端部は、受け側の動脈2に形成された動脈切開部に吻合されている。吻合を容易にし、ePTFEの移植片11と受け側動脈2との間の従順な適合性を増加し、そして、移植片11から受け側動脈2への血行流を最適化するために、二またに分かれたフランジ12と14とは、移植片11の長手方向の軸線に実質的に垂直な反対方向に突出している。
移植片11が、受け側動脈2と端側の関係に配置された場合、二またに分かれたフランジ12と14との端部は、受け側動脈2の長手方向の軸線と平行になり、受け側動脈2に関して基端と先端の方向に延びている。二またに分かれたフランジ12と14は、好ましくは、受け側動脈2の曲線と実質的に一致し、また開口した動脈切開部に対して二またに分かれたフランジ12と14とを取り囲むように位置する延びた球根状の形状を有している。
二またに分かれたフランジ12と14とは、好ましくは、つま先部分19、21で終息する円弧状の外周縁部18、20を持った、実質的に楕円形の形状を有するように各形成されている。かかと領域17は、直ちに管状の移植片および二またに分かれたフランジ12、14の円弧状の各外周縁部18、20と接触する。フランジ12の外周縁部18とフランジ14の外周縁部20との間の接合部は、かかと領域17においてクロッチ(crotch)角度16を形成する。クロッチ角度16は、かかと領域17における移植片の強度を最大にするために、45°と180°との間が好ましい。
二またに分かれたフランジ12と14は、互いに対称的であっても非対称的であっても良い。対称的かまたは非対称的かの二またに分かれたフランジ12、14を選択をすることは、好ましくは、受け側動脈2の特異性、受け側動脈2での動脈切開部の位置、および、移植片11の管腔直径に基づいて血管外科医によって決定される。移植片11は、好ましくは、動脈切開部を二またに分かれたフランジ12、14と、かかと領域17およびクロッチ角度16に、連続的な縫合部22を用いて受け側動脈2に吻合される。
図5は、受け側動脈2に吻合された本発明移植片10の第1の実施例の斜視図を現している。
図6は、受け側動脈2に吻合された管状のePTFEの移植片11の先端部における二またに分かれたフランジの種々のサイズと対象形を示している。
第1の移植片は、非対称の二またに分かれたフランジ30、40を有していて、フランジ30がフランジ40よりも大きい表面領域を持っていて、フランジ30が移植片11から横方向に、またフランジ付き移植片11を取り囲むように、フランジ40よりも大きな割合で延びている。第1の移植片のクロッチ角度41は、移植片11の中間線31に関して短い方のフランジ40の方へ向かってオフセットしている。フランジ30、40を有する第1の移植片の形状は、端側吻合に十分に適合していて、移植片11と受け側動脈2との間のなす角度は、短い方のフランジ40の側に傾斜していて、また長い方のフランジ30の側に鈍角である。
第2の移植片は、実質的に対称的な二またに分かれたフランジ34、36を有していて、クロッチ角度37は、移植片11の中間線31と実質的に一致する。両フランジ34と26とは、移植片11との関係において横方向に反対方向へ実質的に等しい長さ延びていて、フランジ34、36の円弧状の周りの外周縁部は、受け側動脈2の周りを取り巻くように実質的に等しい程度に延びている。対称的な二またに分かれたフランジ34、36を持った第2の移植片は、移植片11と受け側動脈2との間の端側吻合のなす角が実質的に垂直な箇所において特に便利である。
非対称的に二またに分かれたフランジ28、32によって表される第3の移植片は、非対称的に二またに分かれたフランジ30、40で示された第1の移植片と実質的に鏡面対称である。この第3の移植片において、フランジ32は、移植片11からフランジ28よりも大きく横方向に突出し、また移植片11の周りを取り巻くように延びている。第3の移植片のクロッチ角度33は、移植片11の中間線31に関し短い方のフランジ28に向かってオフセットしている。フランジ28、32を有する第3の移植片の形状は、端側吻合に十分に適合していて、移植片11と受け側動脈2との間のなす角度は、短い方のフランジ28の側に鋭角で、また長い方のフランジ32の側に鈍角である。
二またに分かれたフランジ移植片10の3つの好ましい実施例のそれぞれにおいて、二またに分かれたフランジは、好ましくは、ePTFEで形成されていて、ePTFEの管状の移植片11の、不連続な縫い目や重ね合わされた領域のない、連続的に、一体的に、乱れのない断面を形成している。
二またに分かれたフランジは、ePTFE形成の種々の方法で形成されても良く、それは、ePTFEチューブの部分をモールドし、ePTFEチューブの部分を選択的に拡張し、手動切断またはレーザ切断あるいは、本発明の移植片を製造する沢山の方法の1つを示すためにここで参照して取り込む、表題「端側吻合用バイパス移植片を製造するための装置と方法」として同時に出願したPCTインプラ国際出願の改良された方法によって切断または整形することを含む。
上述のように、当業者にとって、流入側移植片の長手方向の軸線が受け側動脈2との関係で鋭角をなすように配置されていて、血液流の方向との関係で、長い方のフランジが先端方向へ向けられ、短い方のフランジが近接する方へ向けられるようなフランジを持った移植片10に非対称的なフランジを使用することが、端側吻合にとって特に良く適合していることが理解できる。
寸法的には、各二またに分かれたフランジの長さを移植片の管腔の直径の1から5倍の間に組み立てるのが好ましい。従って、5mmの移植片用の短い方のフランジは、移植片の外表面からフランジのつま先領域の一番遠い点まで測定した長さが5mmよりも短くなく、長い方のフランジは、移植片の外表面からフランジのつま先領域の一番遠い点まで測定した長さが25mmよりも長くない長さでなければならない。周辺的には、各二またに分かれたフランジは、受け側動脈の周りに移植片の管腔の直径の1倍よりも大きくてはならない。このように、移植片が5mmの管腔直径を有している場合、移植片の中間線から円周的に最も遠いフランジの円弧状の終端まで測定して、二またに分かれたフランジは5mmよりも大きくてはならない。
このような寸法構造は、ePTFEの動脈接合に静脈パッチまたはカラーを使用できないePTFEの大腿膝下(femoro−infragenicular)バイパス移植片のための最適パラメータを呈するために見つけだされた。二またに分かれたフランジ移植片10の構造は、最適な幾何学と、移植片がないことによる内膜的過形成開発の減少可能性を有するために見つけだされた。本発明の二またに分かれたフランジ移植片10は、低流速度の領域に最小の存在または吻合部分での渦巻き形成が示されていて、端側吻合用に最適な血行流パターンを呈する。
普通の端側吻合は、吻合接合部において複雑な血行流パターンを呈する。流速と渦巻き形成を保留する低流速度の領域は、公知の端側吻合の実質的に全てのタイプにみられる。明らかに、詳細な血行の測定は生体内で得るのは困難である。脈流モデルは、本発明の大腿膝下バイパス移植片10の先端端側吻合における血行条件の模擬実験をして開発された。流れの閉鎖ループは、収縮血圧と弛緩血圧とに維持された2つのリザーバに接続して形成された。磁気バルブが、大腿動脈におけるのと同様の脈流を生ずるために使用された。血液アナログ流(蒸留水に重量で7.5%のデキストラン(Dextran))が使用された。ソノグラフの視覚化を強調するために、血液アナログ流は、40から120μのセファデックス(SEPHADEX)顆粒(スウェーデンのウプサラ市のファーマシア)、とともに接種された(1g/L)。
流れの視覚化と速度領域の測定は、直接染色注入と、ドップラー周波数が3.5MHZで開口寸法が3.8cmを有する5MHZのリニヤー配置トランスデューサを持ったリアルタイム超音波診断装置(アキューゾンの128XP/10)を使用してドップラーカラー流量測定によって達成された。ドップラーカラー流量測定画像は、S―VHSビデオカメラと、S―VHS高解像度ビデオカセットレコーダを使用して連続的に記録された。画像は、連続した1秒間隔内のフレームの各画素のピーク速度を描くピーク捕捉技術を用いて、脈動サイクルにおいて特定の間隔で得られた。流量速度測定は、上流または下流において、70°の角度でトランスデューサの面に搬送された超音波ビームを使用して検知された。
本発明の二またに分かれたフランジ移植片10は、脈動流量率が低い場合と高い場合の両方において、染色注入とドップラーカラー流量測定流可視化技術を使用して、リントンパッチとテーラーパッチに対する試験がなされた。リントンパッチとテーラーパッチの両方において、速度の輪郭は、流量率と独立して、各移植片の外壁に向かって曲げられている。流れの外壁に対する衝突は、高い流量状態における環状の流動動作を生ずるのに対し、低い流量条件において流れが停滞している領域は主容器の外壁と一致され、移植片の内壁と整列される。この点は、ある流れの傾向が支流の先端に移動し、ある流れの傾向が受け側動脈の支流の基端に移動し、流れの離れた領域をマークした。流れの渦は、リントンパッチとテーラーパッチが観測されたつま先の領域とかかとの領域において観測され、最小限の渦の形成が、本発明の移植片移植片10の吻合部分で観測された。本発明の二またに分かれたフランジ移植片10を通った流れの輪郭は、図9に示されている。
ドップラーカラー流量測定において、リントンパッチとテーラーパッチの両方は、次の血行輪郭を生成した:1)上流での反渦巻き流と下流での前方への流れとへの分流:2)ジェット流と吻合部分の下流の不均質な流のパターン;および3)流れが零または反対流の低流領域。これらの各血行現象の最初の位置は、移植片インレットとは反対であり、吻合部分のつま先から下流へ動脈の内壁に沿っている。収縮から弛緩への流れの波形の減速を持った流れのパターンの変化は、リントンパッチとテーラーパッチの両方の低流領域を増加する。これらの血行現象は、実質的に図9に示された層流パターンを呈する本発明の二またに分かれたフランジ移植片10を持った統計学上重大などのような程度においても観測されなかった。
臨床学において、本発明の二またに分かれたフランジ移植片10を用いた65の膝下バイパス移植片が、62人の患者になされた。18人の患者において、上流と下流の各方向の円周の動脈の抵抗を計算するために血流と血圧の測定用として、一時的な体外バイパスが、吻合部分の基端部と先端部との間に挿入された。本発明の開通性が追跡された。バイパス操作に先立って、全ての患者は、ドップラー超音波診断装置によるくるぶし動脈圧力測定と動脈造影法を受けた。移植片の開通性は、外科的試験によって追跡され、ドップラー超音波診断動脈圧力は、全ての患者に3ヶ月間隔で調査された。吻合部分の形態と構造は、術後血管造影によって、そして3ヶ月間隔でドップラーカラー流量測定で試験された。1年の最初の開通性の率は、60%で、2年目にわたる追跡においても一定に保たれた。1年の第2の開通性の率は、68%であるのに対し2年目の開通性の率は60%にしか落ちなかった。
図7と8とを見ると、識別のために動脈−静脈パッチ(AVP)プロテーゼ50として参照するバイパス移植片の第2の好ましい実施例が示されている。動脈−静脈パッチプロテーゼ50は、一般に、管状のePTFEの移植片部材52の外周の周りに延びた外方のフレアスカート部56を有した管状のePTFEの移植片部材52を備えている。フレアスカート部56は好ましくは、一般に楕円形の形状を有していて、管状のePTFEの移植片部材52の中心の長手方向の軸線53(中心軸線)からオフセットしている。そのオフセットは、楕円形状のフレアスカート部56の第1の焦点が、管状のePTFE移植片部材52の中心の長手方向の軸線53から、楕円形状のフレアスカート部56の第2の焦点よりも離れて設けられている。
さらに、フレアスカート部56は、管状のePTFE移植片部材52の中心の長手方向の軸線53に対して、先端部へ角度をなしてオフセットしている面55に存在する。管状のePTFE移植片部材52の中心の長手方向の軸線53に対して、先端部へ角度をなしてオフセットすることにより、フレアスカート部56は、管状のePTFE移植片部材52と、つま先角度62およびかかと角度60を成すように形成される。
動脈−静脈パッチプロテーゼ50の好ましい実施例によれば、つま先角度62は管状の移植片部材52の中心の長手方向の軸線53に対して90°より大きく、それに対し、かかと角度60は管状の移植片部材52の中心の長手方向の軸線53に対して90°より小さい。本発明の好ましい実施例によれば、つま先角度62は、管状のePTFEの移植片部材52の中心の長手方向の軸線53に対して、95°から160°の範囲であり、それに対し、かかと角度60は、管状のePTFE移植片部材52の中心の長手方向の軸線53に対して、20°から85°の範囲である。
フレアスカート部56は、つま先角度62においてePTFE管状部材52から外方へ突出したつま先部分67を有している。つま先部分67の長さは、製造中に予め定めても良く、または、吻合部分で開口動脈切開部に調節するために移植処置中に血管外科によって整頓しても良い。かかと部分69が、かかと角度60においてePTFE管状部材52から外方へ、また、つま先部分67と反対の方向へ突出している。フレアスカート部56の湾曲した外周縁部58は、180°の円弧に対置されていて、つま先部分67とかかと部分69とを連結する連続した表面を形成している。つま先部分67に求められる長さに応じて、湾曲した外周縁部58、及びフレアスカート部56がePTFE管状部材52に対して先端方向へ突出している延在距離71が、変わる。仮想線64、66は、フレアスカート部56の、代替となる他の湾曲した外周縁部64、66を表している。
フレアスカート部56は、好ましくは、ePTFEで形成されていて、ePTFE管状移植片部材52の連続した、一体的な、単体的部品として、中間的な縫い目や重なりがなく形成されている。
フレアスカート部56は、ePTFE形成の種々の方法で形成されても良く、それは、ePTFEのチューブの部分をモールドし、ePTFEのチューブの部分を選択的に拡張し、手動切断またはレーザ切断あるいは、本発明の移植片を製造する沢山の方法の1つを示すためにここで参照して取り込むために、表題「端側吻合用バイパス移植片を製造するための装置と方法」として同時に出願したPCTインプラ国際出願の改良された方法によって切断または整形することを含む。
図8に示したように、フレアスカート部56は、外周縁部58と動脈の外側の形状の周りとの間の縫合吻合部分を可能にするために、そのz軸に湾曲形状を成す。フレアスカート部56は、好ましくは、つま先領域67の頂面から、フレアスカート部56のつま先領域67の頂面から最も遠い外周縁部58に沿った点まで測定して、ePTFEの管状移植片部材52の管腔の直径よりも大きくない距離延びてなければならない。
AVPプロテーゼ50の好ましい実施例によると、つま先領域67は、かかと領域69よりも大きい長さを有していて、つま先領域67は、ePTFEの管状移植片部材52の中心の長手方向の軸線53から外方へ血流の方向へ突出している。上述したように、好ましくは、つま先領域67の長さは、つま先領域67に隣接したePTFEの管状移植片部材52の外壁表面からつま先領域67の外周縁部58の最も遠い点まで測定して、5から25mmの範囲で可変である。しかしながら、大腿端部バイパス吻合部分用として、かかと領域69に隣接したePTFEの管状移植片部材52の外壁表面から測定して、かかと領域69の長さを3mmの固定された長さに維持することが好ましいということがわかった。
本発明は、その好まし実施例に基づいて開示され説明されてきたが、当業者は、添付した請求の範囲によってのみ限定される本発明の目的から逸脱することなく、材料選択、寸法の変更、および構造を理解し判断するであろう。
2・・・動脈、3・・・大腿部動脈の閉塞部、4・・・ひかがみ動脈の閉塞部、5・・・ミラーカフ、7・・・テーラーパッチ、8・・・静脈パッチ、10・・・ePTFEの移植片、11・・・ePTFEの移植片、12,14・・・フランジ、16・・・クロッチ角度、17・・・かかと領域、18,20・・・外周縁部、19,21・・・つま先部分、22・・・縫合部、28,30,32,34,36,40・・・フランジ、31・・・中間線、33,37,41・・・クロッチ角度、50・・・動脈−静脈パッチプロテーゼ、52・・・ePTFEの移植片部材、53・・・中心の長手方向の軸線(中心軸線)、55・・・オフセットしている面、56・・・スカート部、58・・・外周縁部、60・・・かかと角度、62・・・つま先角度、64,66・・・外周縁部、67・・・つま先部分、69・・・かかと部分、71・・・延在距離。