JP4433299B2 - 共重合ポリベンザゾール繊維 - Google Patents

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Description

本発明は、共重合ポリベンザゾール繊維に関する。さらに詳しくは、保存安定性に優れた高耐久性ポリベンザゾール系繊維に関するものである。
ポリベンザゾール繊維は、ポリベンゾオキサゾールやポリベンゾチアゾールポリマーと酸溶媒を含むドープを紡糸口金より押し出した後、凝固性流体(水、または水と無機酸の混合液)中に浸漬して凝固させ、さらに水洗浴中で徹底的に洗浄し溶媒を除去した後、無機塩基の水溶液槽を通し、糸中に残っている酸を中和した後、乾燥する方法によって製造されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、糸中の残存無機酸溶媒濃度を低減するためには、高温で長時間の洗浄が必要であり、工業レベルで製造することは容易ではなかった(例えば、特許文献2)。残存した無機酸は、ポリベンザゾール繊維の強度などの力学特性の耐久性に悪影響を及ぼすため、更なる改善が望まれており、特に、高温高湿度環境において優れた耐久性を有するポリベンザゾール系繊維の出現が期待されている。
特開平8−170222号公報 特開平8−60437号公報
本発明は、上記の事情に着目してなされたものであり、ポリベンザゾール分子鎖中に共重合成分を導入し、かつ繊維微細構造を制御することにより、ポリベンザゾール繊維本来の優れた強度や耐熱性を有しながら、糸中の酸溶媒残存量の低減化が容易であり、さらに、繊維の強度低下の誘引となる分子鎖切断が少なく、高温高湿度環境下において、より耐久性能を向上させたポリベンザゾール系繊維を工業的に提供しようとするものである。
すなわち、本発明は、以下の構成を採用するものである。
1.分子鎖中に下記一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位がランダムまたはブロック共重合され、かつ繊維軸に垂直な、(200)面の見かけの結晶サイズが49Å以下であることを特徴とする共重合ポリベンザゾール繊維。
Figure 0004433299
但し、nは、一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位の合計モル数に対する一般式(1)で表される繰り返し単位のモル分率であり、0.01≦n≦0.99の範囲で表される実数である。XはS、O原子またはNH基を、Zは、C−H基またはN原子を示す。アゾール環においてN原子とX原子/基はトランス位であってもシス位であってもよい。
2.繊維軸に垂直な(010)面の見かけの結晶サイズが25Å以下であることを特徴とする前記1に記載の共重合ポリベンザゾール繊維。
3.繊維軸方向の真の結晶サイズが120Å以下であることを特徴とする前記1又は2に記載の共重合ポリベンザゾール繊維。
本発明の共重合ポリベンザゾール繊維は、上記一般式(2)で表される繰り返し単位を分子鎖中に含有せしめない場合と比較して、繊維中の結晶サイズを小さくすることができ、結晶サイズを小さくすることにより、繊維の高温高湿度に対する耐久性が改善されることを見出したのである。
本発明によれば、ポリベンザゾール分子鎖中にピリジン環を共重合成分として導入することにより、酸溶媒の除去が容易になるとともに、酸溶媒の除去条件によって繊維微細構造の制御が容易になり、糸中の結晶サイズを小さくすることができ、分子鎖に対する残留応力や応力集中が抑制でき、繊維の強度低下の誘引となる分子鎖切断が少なく、高温高湿度環境下での耐久性が改善されたポリベンザゾール系繊維を提供することが可能になった。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るポリベンザゾール繊維とは、ポリベンザゾールポリマーよりなる繊維をいい、ポリベンザゾール(以下、PBZともいう)とは、ポリベンゾオキサゾール(以下、PBOともいう)、ポリベンゾチアゾール(以下、PBTともいう)、ポリベンズイミダゾール(以下、PBIともいう)から選ばれるポリマーを言い、分子鎖中に上記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位がランダムまたはブロック共重合したポリベンザゾールである。
具体的には下記の構造が挙げられるが、勿論本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 0004433299
Figure 0004433299
本発明における共重合ポリベンザゾールの合成方法としては、基本的には、例えばWolfeらの米国特許第4,533,693号明細書(1985.8.6)、Sybertらの米国特許第4,772,678号明細書(1988.9.22)、Harrisの米国特許第4,847,350号明細書(1989.7.11)、Gregoryらの米国特許第5,089,591号明細書(1992.2.18)などに記載されている方法を採用することができる。すなわち、好適なモノマーは、非酸化性で脱水性の酸溶液中で、非酸化性雰囲気下で高速撹拌及び高剪断条件のもと、約60℃から230℃までの段階的または一定昇温速度で温度を上げることで反応させられる。
ピリジン環を含有するポリベンザゾールは、下記の反応式に従って合成される。反応溶媒としては、一般にポリリン酸が用いられる。
Figure 0004433299
但し、nは、一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位の合計モル数に対する一般式(1)で表される繰り返し単位のモル分率であり、0.01≦n≦0.99の範囲で表される実数である。XはS、O原子またはNH基を、ZはC−H基またはN原子を示す。mは2または4を示す。アゾール環においてN原子とX原子/基はトランス位であってもシス位であっても良い。
ここで使用されるフェニレンジアミン誘導体は、そのままの形で用いても良いが、通常は安定化のために塩酸塩の形で使用される。まず、フェニレンジアミン誘導体と芳香族ジカルボン酸をポリリン酸中に添加し、窒素等の不活性ガス気流下で塩化水素ガスが完全に脱離するまで30〜130℃で加熱される。次に、130〜160℃に昇温して3〜20時間反応させ、IV=4〜8dL/gのオリゴマーが生成する。次に170〜250℃に昇温して重合反応を完結させ、IV=15dL/g以上の高分子量のポリベンザゾールが得られる。この重合反応で得られたポリマードープを水やアルコールのような溶媒で洗浄することによりポリリン酸を除去することができる。
重合時及び紡糸時のドープ中のポリマー濃度は、好ましくは少なくとも約7質量%であり、より好ましくは少なくとも10質量%、特に好ましくは少なくとも12質量%である。最大濃度は、例えばポリマーの溶解性やドープ粘度といった実際上の取り扱い性により決定されるが、ポリマー濃度は通常では25質量%を越えることはなく、通常は20質量%以下である。
共重合ポリベンザゾール繊維は、共重合ポリベンザゾールを含有するドープより製造されるが、当該ドープを調製するための好適な溶媒としては、クレゾールやそのポリマーを溶解しうる非酸化性の酸が挙げられる。好適な非酸化性の酸の例としては、ポリリン酸、メタンスルホン酸および高濃度の硫酸あるいはそれらの混合物などの無機酸類が挙げられる。中でもポリリン酸及びメタンスルホン酸が、特にポリリン酸が好適である。また、重合終了後、ベンザゾール共重合体を単離すること無く、そのまま紡糸用ドープとして使用することもできる。
このようにして得られるドープを紡糸口金から押し出し、空間で引き伸ばしてフィラメントが形成される。好適なフィラメントの製造法は、米国特許第5034250号明細書に記載されている方法を採用することができる。紡糸口金を出たドープは紡糸口金と洗浄バス間の空間に入る。この空間は一般にエアギャップと呼ばれているが、空気である必要はない。この空間は、溶媒を除去すること無く、かつ、ドープと反応しない溶媒で満たされている必要があり、例えば空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素等が挙げられる。
エアギャップで形成されたフィラメント状のドープ(以下、ドープフィラメント)は凝固・洗浄浴に導かれる。凝固・洗浄浴では、ポリベンザゾールを溶解している無機酸に対し相溶性であり、ポリベンザゾールに対して溶媒とならない液体にドープフィラメントを接触させ、ドープフィラメントから酸溶媒を除去する。これにより分子鎖が結晶化し、繊維微細構造が形成される。好適な抽出媒体としては、水や水と酸溶媒との混合物がある。次いで、適宜水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム等の無機塩基で中和され、ほとんどの溶媒は除去される。
発明者らは鋭意検討の結果、本発明に係る上記の共重合ポリベンザゾール繊維においては、上記した凝固・洗浄浴を1段ではなく2段に分けること、および各段の酸濃度と温度の管理することにより、溶媒除去が容易で、かつ繊維微細構造の制御が可能であることを見出した。
すなわち、所望の繊維微細構造の主要部を形成する1段目の凝固・洗浄浴と、形成された繊維微細構造を保持しつつ溶媒の酸を除去する2段目の浴を設けることが重要である。1段目の凝固・洗浄浴の酸濃度が概ね30%以下なら効果を発揮するが、あまり低すぎると抽出に使用した酸溶液中の酸回収効率が悪くなるので生産効率的に望ましくない。1段目の凝固・洗浄浴における最適な酸濃度は5〜30%が好ましく、さらに好ましくは5〜20%である。
1段目の凝固・洗浄浴温度も重要であり、好ましくは20〜80℃、さらに好ましくは30〜70℃である。浴温度が低すぎると、凝固・洗浄による結晶構造形成の速度が小さいため、表面における繊維構造の緻密化を誘い、酸の洗浄効果が落ちることになる。逆に、浴温が高いと結晶構造形成の速度は大きく、生成する結晶は小さくなるが、浴温が高すぎると今度は生成する結晶が小さすぎること、および、結晶構造形成速度が大きすぎることによって、分子鎖は安定なコンホメーション状態を取ることができなくなるので、繊維内部中に残留応力が生じ、分子鎖切断を誘発しやすく、繊維強度低下の誘引になるので好ましくない。
一方、2段目の凝固・洗浄浴では、1段目で形成された糸中の結晶構造をある程度保ったまま、溶媒の酸を除去することが重要である。従って2段目の凝固・洗浄浴の酸濃度は1段目の酸濃度と同等あるいは数%程度だけ下回る濃度にすること、および温度は抽出媒体が凍結しない範囲内で、できるだけ下げることが有効である。2段目における最適な酸濃度は(x−3)%(xは1段目の酸濃度)、最適な温度は5〜10℃である。
上記工程を経てフィラメントは、残留酸濃度(酸を構成する無機原子として)が8000ppm以下、好ましくは5000ppm以下、更に好ましくは3000ppm以下に洗浄される。この後、フィラメントは、乾燥、熱処理、巻取りなどが必要に応じて行われる。
本発明に係る上記のポリベンザゾール繊維は、望ましくは繊維中に残留する無機塩基と無機酸の化学量論比が0.8〜2:1であることである。繊維中に残留する無機塩基と無機酸の化学量論比が0.8未満であれば、糸内部のpHが極端に酸性となるため、ポリベンザゾールの加水分解が進行し、強度が低下しやすくなる。ピリジン環を共重合していないホモポリマーからなるポリベンザゾール繊維ではこの傾向がさらに顕著になり、高温かつ高湿度下に長時間暴露されることによる強度低下が大きくなる。一方、繊維中に残留する無機塩基と無機酸の化学量論比が2を超えると、糸内部のpHが極端に塩基性となるため、PBZ分子の加水分解が進行し、強度が低下しやすくなる。ピリジン環を共重合していないホモポリベンザゾール繊維ではその傾向が特に顕著になり、高温かつ高湿度下に長時間暴露されることによる強度低下が大きくなる。以上より、繊維中に残留する無機塩基と無機酸の化学量論比は0.8〜2:1であることが望ましく、より好ましくは1〜1.5:1であり、微視的に見たとき繊維中どの部分においても上記化学量論比を実現していることが望ましい。洗浄中での無機塩基による中和方法として、ガイドオイリング方式、シャワリング方式、ディップ方式などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
本発明に係る上記ポリベンザゾール繊維は、一般式(2)で示した成分が1〜99モル%、好ましくは5〜99モル%、より好ましくは10〜99モル%である。共重合成分が5モル%未満であれば、ピリジン環構造を繊維構造中に導入せしめることにより期待される効果、すなわち、高温高湿度環境下での強度低下抑制効果が小さくなる。共重合成分が5〜99モル%の範囲では、繊維の初期強度が低下することもなく、ピリジン環を含まないポリベンザゾールと同等の強度および弾性率を発現し、また、紡糸時の可紡性も良好であり、糸切れのない良好な操業性が可能である。
分子鎖中における一般式(2)で表される成分の作用については以下のように推察している。
すなわち、本発明に係る上記ポリベンザゾール系繊維は、ピリジン環構造を繊維構造中に有しないポリベンザゾール繊維に比べて、分子鎖中のベンゼン環の少なくとも一部がピリジン環に置き換わっているために、環部分の原子間距離が僅かに変化し、乱れの大きい結晶構造を形成することになる。従って、ピリジン環を繊維構造中に有するポリベンザゾール系繊維は、ピリジン環を繊維構造中に有しないポリベンザゾール繊維と比べて、繊維軸に垂直なa軸およびb軸方向の見かけの結晶サイズおよび繊維軸方向の真の結晶サイズが小さくなり、結晶サイズが小さくなると、繊維中の結晶と結晶の間に、非晶部分が短い間隔で頻繁に出現するようになる。
繊維の曲げに追随する部分は微視的に見ると非晶部分の分子鎖であると考えられるので、各結晶のサイズが小さく、非晶部分が短い間隔で多数存在することにより、繊維を曲げた時に、分子鎖は曲げに対して容易に追随すること可能になり、分子鎖切断は起きにくくなると考えられる。
一方、繊維中に切断された分子鎖が存在すると、高温高湿環境下での暴露によってさらなる分子鎖分解の起点となり、強度低下が進行する要因の一つになると考えられる。
ところで、繊維製造工程においては、紡糸工程中のローラー、オイリングガイド等との接触、回転部による曲げなど、製造過程で繊維は様々な応力を受け、分子鎖切断に至る可能性は避けられない。従って本発明では、繊維製造工程で加えられる応力に対して追随しやすい繊維構造を形成することにより、糸条の工程通過性を向上させ、分子レベルの小さな糸キズをも減少させることにより、分子鎖切断、ひいては分子鎖分解を抑制することができるため、耐久性の向上が可能になったものと考えられる。また、同様のメカニズムにより、撚りをかけた糸でも耐久性を向上させることができるものと考えられる。
勿論、繊維中の結晶部分は繊維の強度を発現させるのに重要な役割を果たすから、結晶サイズが小さすぎると所望の強度が発揮されないが、本発明では先に述べたように、凝固・水洗工程の条件を制御して繊維微細構造を制御することにより、繊維の強度を落とすことなく、結晶サイズを小さくすることを可能にしたのである。
本発明に係る上記共重合ポリベンザゾール繊維は、単糸の平均直径Dが5〜22μm、好ましくは10〜20μmである。なお、繊維径の測定は、光学的な手法、マイクロメーターのような機械的な手法のいずれであってもよいが、測定作業の簡便性から走査電子顕微鏡(SEM)や、レーザー式外径測定器等の光学的方法が好ましい。また、繊維母集団の全体像を反映させる為に、多くの単糸の測定することが好ましく、概ね50〜100本の単糸を測定するのが妥当である。
また、本発明の共重合ポリベンザゾール繊維の平均強度は、4.5GPa以上であるのが好ましく、5.0〜8.0GPaであるのがより好ましい。
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記の実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の主旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術範囲に含まれる。
(撚りかけ方法)
JIS−L1013に準じて、検ねん器を用い、つかみ間隔を50cmとして、下記の計算式から得られる所定荷重のもと、検ねん器に試料を取り付け、撚り係数30となるように撚りかけを行った。なお、撚りかけはS撚りとした。30秒放置した後、S撚りで撚り係数6になる撚り数まで解撚し、S撚りの撚り係数6のサンプル(撚り糸)を得た。なお、撚りをかける際の所定荷重(a)の計算式、および撚り係数(K)と撚り数(Tw)の関係式を下記に示す。
a=(1/10)D
K=0.124×Tw×D1/2
a:所定荷重(g)
Tw:撚数(回/inch)
D:フィラメント繊度(Dtex)
(高温高湿度処理法及び耐久性評価方法)
直径10cmの樹脂ボビンに糸サンプルを巻き付けた状態で、さらに、上記した撚りかけ方法により撚りをかけたサンプル(S撚りの撚り係数6の状態)を巻き付けた状態で、恒温恒湿器(ヤマト科学社製Humidic Chamber 1G43M)中に入れ、かつ恒温恒湿器中に光が入らないよう完全に遮光して、80℃、相対湿度80%の条件下で暴露処理を実施した。処理サンプルと未処理サンプルとを、JIS−L1013に準じて引張試験機(島津製作所製、型式AG−50KNG)で引張強度を測定した。
得られた測定値から、以下の引張強度保持率(%)を求めて、耐久性を評価した。
引張強度保持率(%)=(処理サンプル引張強度/未処理サンプル引張強度)×100
(a軸、およびb軸方向の見かけの結晶サイズの測定方法)
繊維構造中での(200)面に垂直な方向、および、(010)面に垂直な方向の見かけの結晶サイズ(以下、単にACSとする)は、赤道線方向への反射に現れる(200)回折および(010)回折由来の実測プロファイル半値幅βobsから次式を用いて算出した。
β=(βobs2−β02)1/2
ACS=(0.9 λ)/(β cosθ)
ここで、β0は測定に供した入射X線の拡がり(半値幅)、λはX線の波長、2θは回折角を表わす。
(繊維軸方向の真の結晶サイズの測定方法)
繊維構造中での繊維軸方向の真の結晶サイズDは、Hosemannプロットの切片により求めた。すなわち、広角X線回折の(00m)面から得られる各子午線ピークの積分幅δβから、以下の式を用いて算出した:
δβ=δβ0+(πgm)2/c
D=1/δβ0
ここで、δβ0は繊維軸方向の真の結晶サイズのみで決まる積分幅、πは円周率、gは結晶格子のオーダーパラメータ、mは子午線回折ピークの指数、cは(001)面の面間隔である。すなわち、m2を横軸にとり、そのmに対応する子午線回折ピークの積分幅δβを縦軸にプロットすることにより、プロットした点について直線近似すれば、その切片でδβ0を求めることができる。
(広角X線回折)
リガク社製リント2500回折装置(銅対電極、出力40kV、200mA)を用い、対象透過法で測定した。
(フィラメント中の残留酸濃度及びナトリウム濃度)
試料をペレット状に固めて走査型蛍光X線分析装置(株式会社リガク ZSX 100e)を用いて、残留リン濃度(ppm)および残留ナトリウム濃度(ppm)を測定した。
(繊維径)
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率5000倍で単糸直径を測定した。
(実施例1−4、比較例1−3)
窒素気流下、4,6−ジアミノレゾルシノール二塩酸塩381.6g、テレフタル酸29.8g、2,5−ピリジンジカルボン酸269.4g、116%ポリリン酸1880.8g、五酸化二リン570.1gを60℃で1時間攪拌した後、ゆっくりと昇温して135℃で25時間、150℃で5時間、170℃で40時間反応せしめた。得られたポリマーは、30℃のメタンスルホン酸溶液で測定した固有粘度が22dL/gであった。得られたポリマードープ2.0kgを用いて、単糸フィラメント径が11.5μmになるような条件で紡糸を行った。
すなわち、紡糸温度175℃で孔径0.18mm、孔数166のノズルから紡糸ドープを押し出してドープフィラメントとし、適当な位置で収束させてマルチフィラメントにするために配置された第1段目の凝固・洗浄浴に浸漬して凝固させ、引き続き第2段目の凝固・洗浄浴に浸漬して洗浄した。
なお、第1段目及び第2段目の凝固・洗浄のリン酸濃度及び温度は表1に記載した条件で行い、また、紡糸ノズルと第1段目の凝固・洗浄浴の間のエアギャップには、より均一な温度でフィラメントが引き伸ばされるようにクエンチチャンバーを設置し、クエンチ温度は65℃とした。
洗浄したフィラメントは、乾燥させずに巻取り速度200m/分で樹脂ボビンに巻き取った。
巻き取ったフィラメント糸は、1%NaOH水溶液で10秒間中和し、その後15秒間水洗した後、80℃で4時間乾燥し、撚り無し糸を作製した。撚り無し糸及び上記した方法で撚りをかけた撚り糸のそれぞれについて、高温高湿度環境下における耐久性の評価を実施した。また、撚り無し糸について、広角X線回折結果からACSおよび繊維軸方向の真の結晶サイズを算出した。これらの測定結果及び評価結果を表1及び2に示す。
(実施例4)
窒素気流下、4,6−ジアミノレゾルシノール二塩酸塩381.6g、テレフタル酸148.8g、2,5−ピリジンジカルボン酸149.7g、116%ポリリン酸1880.8g、五酸化二リン570.1gを60℃で1時間攪拌した後、ゆっくりと昇温して135℃で25時間、150℃で5時間、170℃で20時間反応せしめた。得られたポリマーは、30℃のメタンスルホン酸溶液で測定した固有粘度が25dL/gであった。得られたポリマードープ2.0kgを用いて、単糸フィラメント径が11.5μmになるように、紡糸温度175℃で孔径0.18mm、孔数166のノズルから紡糸ドープを押し出してドープフィラメントとし、適当な位置で収束させてマルチフィラメントにするために配置された第1段目の凝固・洗浄浴に浸漬して凝固させ、引き続き第2段目の凝固・洗浄浴に浸漬して洗浄した。なお、第1段目及び第2段目の凝固・洗浄のリン酸濃度及び温度は表1に記載した条件で行い、また、紡糸ノズルと第1段目の凝固・洗浄浴の間のエアギャップには、クエンチ温度が65℃になるようにクエンチチャンバーを設置した。
洗浄したフィラメントは、乾燥させずに巻取り速度200m/分で樹脂ボビンに巻き取り、巻き取った糸は、1%NaOH水溶液で10秒間中和、15秒間水洗した後、80℃で4時間乾燥し、撚り無し糸を作製した。撚り無し糸及び上記した方法で撚りをかけた撚り糸のそれぞれについて、高温高湿度環境下における耐久性の評価を実施した。また撚り無し糸について、広角X線回折結果からACSおよび繊維軸方向の真の結晶サイズを算出した。これらの繊維の分析結果、測定結果及び評価結果を表1及び2に示す。
(実施例5)
窒素気流下、4,6−ジアミノレゾルシノール二塩酸塩381.6g、テレフタル酸208.3g、2,5−ピリジンジカルボン酸89.8g、116%ポリリン酸1880.8g、五酸化二リン570.1gを60℃で1時間攪拌した後、ゆっくりと昇温して135℃で25時間、150℃で5時間、170℃で20時間反応せしめた。得られたポリマーは、30℃のメタンスルホン酸溶液で測定した固有粘度が25dL/gであった。
得られたポリマードープを用いて、実施例4と同様にして、共重合ポリベンザゾール繊維を製造し、実施例4と同様にして、繊維の分析、測定及び評価を実施した。得られた結果を表1及び2に示す。
(実施例6)
窒素気流下、4,6−ジアミノレゾルシノール二塩酸塩381.6g、テレフタル酸238.1g、2,5−ピリジンジカルボン酸59.9g、116%ポリリン酸1880.8g、五酸化二リン570.1gを60℃で1時間攪拌した後、ゆっくりと昇温して135℃で25時間、150℃で5時間、170℃で20時間反応せしめた。得られたポリマーは、30℃のメタンスルホン酸溶液で測定した固有粘度が26dL/gであった。
得られたポリマードープを用いて、実施例4と同様にして、共重合ポリベンザゾール繊維を製造し、実施例4と同様にして、繊維の分析、測定及び評価を実施した。得られた結果を表1及び2に示す。
(実施例7)
窒素気流下、4,6−ジアミノレゾルシノール二塩酸塩381.6g、テレフタル酸267.8g、2,5−ピリジンジカルボン酸30.0g、116%ポリリン酸1880.8g、五酸化二リン570.1gを60℃で1時間攪拌した後、ゆっくりと昇温して135℃で25時間、150℃で5時間、170℃で20時間反応せしめた。得られたポリマーは、30℃のメタンスルホン酸溶液で測定した固有粘度が27dL/gであった。
得られたポリマードープを用いて、実施例4と同様にして、共重合ポリベンザゾール繊維を製造し、実施例4と同様にして、繊維の分析、測定及び評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
(比較例4)
窒素気流下、4,6−ジアミノレゾルシノール二塩酸塩334.5g、テレフタル酸260.8g、122%ポリリン酸2078.2gを60℃で1時間攪拌した後、ゆっくりと昇温して135℃で25時間、150℃で5時間、170℃で20時間反応せしめた。得られたポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)は、30℃のメタンスルホン酸溶液で測定した固有粘度が29dL/gであった。
得られたポリマードープを用いて、実施例4と同様にして、ポリベンザゾール繊維を製造し、実施例4と同様にして、繊維の分析、測定及び評価を実施した。得られた結果を表1及び2に示す。
Figure 0004433299
Figure 0004433299
表1より、比較例と比べ、実施例の共重合ポリベンザゾール繊維は、(200)面及び(010)面のACS、および繊維軸方向の見かけの結晶サイズが小さく、高温高湿度環境下における耐久性が良好であることがわかる。表2より、応力が加えられ、微細な切断した分子鎖をも含む可能性がある撚り糸においても、高い強度保持性が得られることがわかる。
本発明の共重合ポリベンザゾール繊維は、酸溶媒の残存量の低減化が容易で、工業的製造が容易である。さらに、繊維の強度低下の誘引となる分子鎖切断が少なく、高温高湿度環境下に長時間暴露されるような場合であっても、強度を充分に維持することができる。
このため、産業用資材として、より実用性を高めることができ、利用分野を拡大する効果が絶大である。即ち、織物、編物、組紐、ロープ、コードなどに加工される用途、すなわち、ケーブル、電線や光ファイバー等のテンションメンバー、ロープ、等の緊張材、耐弾性等の耐衝撃吸収用部材、手袋等の耐切創用部材、ベルト、タイヤ、靴底、ロープ、ホース、等のゴム補強材、等広範囲にわたる用途に使用可能である。

Claims (3)

  1. 分子鎖中に下記一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位がランダムまたはブロック共重合され、かつ繊維軸に垂直な、(200)面の見かけの結晶サイズが49Å以下であることを特徴とする共重合ポリベンザゾール繊維。
    Figure 0004433299
    但し、nは、一般式(1)および(2)で表される繰り返し単位の合計モル数に対する一般式(1)で表される繰り返し単位のモル分率であり、0.01≦n≦0.99の範囲で表される実数である。XはS、O原子またはNH基を、Zは、C−H基またはN原子を示す。アゾール環においてN原子とX原子/基はトランス位であってもシス位であってもよい。
  2. 繊維軸に垂直な(010)面の見かけの結晶サイズが25Å以下であることを特徴とする請求項1に記載の共重合ポリベンザゾール繊維。
  3. 繊維軸方向の真の結晶サイズが120Å以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の共重合ポリベンザゾール繊維。
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