JP4431419B2 - アルキルボラジン化合物およびその製造方法 - Google Patents

アルキルボラジン化合物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルキルボラジン化合物に関する。アルキルボラジン化合物は、例えば半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層、エッチストッパー層を形成するために用いられる。
情報機器の高性能化に伴い、LSIのデザインルールは、年々微細になっている。微細なデザインルールのLSI製造においては、LSIを構成する材料も高性能で、微細なLSI上でも機能を果たすものでなければならない。
例えば、LSI中の層間絶縁膜に用いられる材料に関していえば、高い誘電率は信号遅延の原因となる。微細なLSIにおいては、この信号遅延の影響が特に大きい。このため、層間絶縁膜として用いられ得る、新たな低誘電材料の開発が所望されていた。また、層間絶縁膜として使用されるためには、誘電率が低いだけでなく、耐湿性、耐熱性、機械的強度などの特性にも優れている必要がある。
かような要望に応えるものとして、分子内にボラジン環骨格を有するボラジン環含有化合物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ボラジン環骨格を有する化合物は分子分極率が小さいため、形成される被膜は低誘電率である。その上、形成される被膜は、耐熱性にも優れる。
ボラジン環含有化合物としては、これまでに種々の化合物が提案されている。例えば、ホウ素部位がアルキル基で置換されたアルキルボラジン化合物は、低誘電材料として非常に優れた特性を有する(例えば、特許文献2参照)。ホウ素部位がアルキル基で置換されたアルキルボラジン化合物は、出発物質としてB,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリアルキルボラジンなどのハロゲン化ボラジン化合物を原料として、グリニャール試薬を用いて該化合物の塩素原子をアルキル基で置換することによって合成されうる(例えば、非特許文献1参照)。
特開2000−340689号公報 特開2003−119289号公報 D.T.HAWORTH and L.F.HOHNSTEDT,J.Am.Chem.Soc.,82,3860(1960)
合成されたアルキルボラジン化合物は、昇華精製や蒸留精製といった手法で精製されうる。しかしながら、本発明者らは、精製されたアルキルボラジン化合物中に、トリアルキルボランが副生し、このトリアルキルボランによって問題が生じる可能性があることを見出した。
トリアルキルボランは、不安定な化合物であり、発火性が高い。また、トリアルキルボランは、目的物であるアルキルボラジン化合物に比べて沸点が低く、揮発しやすいため、雰囲気中に拡散したトリアルキルボランによって、発火する虞がある。どの程度の量のトリアルキルボランが雰囲気中に存在すると自然発火が生じるかについては、今のところ明らかではなく、また、従来の技術によって製造されたアルキルボラジン化合物が危険な化合物であるわけではない。しかしながら、作業者や施設の安全性を考慮すると、このような化合物は極力除去されることが好ましい。
そこで、本発明の目的は、アルキルボラジン化合物中に含まれるトリアルキルボランを除去する方法を提供することである。また、本発明の目的は、トリアルキルボランの含有量が少ない、アルキルボラジン化合物を提供することである。
本発明は、化学式1:
Figure 0004431419
(式中、Rは、同一または異なっていてもよく、アルキル基であり、Xはハロゲン原子である)
で表されるハロゲン化ボラジン化合物と、グリニャール試薬とを反応させて、化学式2:
Figure 0004431419
(式中、Rは、同一または異なっていてもよく、アルキル基であり、Rは、同一または異なっていてもよく、アルキル基である)
で表されるアルキルボラジン化合物を合成する段階と、合成されたアルキルボラジン化合物を、少なくとも2回減圧下で蒸留精製する段階とを含む、アルキルボラジン化合物の製造方法である。
本発明によって、アルキルボラジン化合物中に含まれるトリアルキルボランが除去され、安全性の高いアルキルボラジン化合物が提供される。
トリアルキルボランの生成メカニズムは、定かではないが、以下のメカニズムが推測される。
前記化学式2で表されるアルキルボラジン化合物は、前記化学式1で表されるハロゲン化ボラジン化合物と、グリニャール試薬との反応によって合成される。しかし、ハロゲン化ボラジン化合物とグリニャール試薬との反応は、一般にそれほど収率が高くないため、反応後の溶液中には、ある程度の量のグリニャール試薬が残存する。そして、残存するグリニャール試薬が、合成されたアルキルボラジン化合物と反応し、トリアルキルボランが形成されてしまう。精製のためにアルキルボラジン化合物および残存するグリニャール試薬を含む組成物が加熱されると、アルキルボラジン化合物とグリニャール試薬との反応は、より激しく進行し、より多くのトリアルキルボランが生成してしまう。
アルキルボラジン化合物とグリニャール試薬との反応を抑えることのみを目的とすれば、グリニャール試薬の使用量を減少させればよいかもしれない。しかしながら、一般に、原料であるハロゲン化ボラジンの沸点と、目的物であるアルキルボラジン化合物の沸点とは近いため、未反応のハロゲン化ボラジンが残存していると、精製が困難になる。したがって、未反応のハロゲン化ボラジンを極力減らすために、ある程度のグリニャール試薬を使用せざるをえない。
本発明においては、アルキルボラジン化合物を、少なくとも2回、蒸留精製することによって、効果的にトリアルキルボランが除去される。
グリニャール反応後の組成物中には、目的物であるアルキルボラジン化合物、および未反応のグリニャール試薬が含まれる。まず、この組成物を蒸留精製する。1回目の蒸留精製によって、グリニャール試薬が除去される。しかしながら、前述の通り、未反応のグリニャール試薬とアルキルボラジン化合物とが反応し、トリアルキルボランが生成してしまう。特に、蒸留精製の際には熱が加えられるため、トリアルキルボランの生成反応が進行しやすい。
本発明の製造方法においては、蒸留精製した後に、少なくとも1回蒸留精製が繰り返れる。通常、蒸留精製は、一度行われるのみであり、2回以上蒸留精製が繰り返されることはない。本発明者らは、トリアルキルボランの除去に着目して検討した結果、2回目の蒸留精製がトリアルキルボランの除去に有効であることを見出した。1回目の蒸留精製によって、グリニャール試薬は除去される。しかしながら、前述の通り、生成したアルキルボラジン化合物と残存するグリニャール試薬との反応によってトリアルキルボランが生成し、蒸留後の組成物中には、ある程度のトリアルキルボランが含まれてしまう。本発明においては、2回目の蒸留精製によって、蒸留後の組成物中に含まれるトリアルキルボランが除去される。その結果、2回目の蒸留精製後の組成物中には、安全性低下の原因となりうるトリアルキルボランの含有量が極めて少ない、安全性の高いアルキルボラジン化合物が提供される。
本発明の製造方法においては、2回以上、蒸留精製が繰り返されるが、上述のように、1回目の蒸留精製と、2回目の蒸留精製とは、意義が異なる。1回目の蒸留精製は、グリニャール試薬などの不純物を除去するための精製であり、2回目の蒸留精製は1回目の蒸留精製に伴い発生するトリアルキルボランを除去するための精製である。つまり、反応における主な成分の推移について簡単に説明すると、「ハロゲン化ボラジン化合物+グリニャール試薬」(原料)→「アルキルボラジン化合物+残存グリニャール試薬」(グリニャール反応後)→「アルキルボラジン化合物+トリアルキルボラン」(1回目蒸留精製後)→「アルキルボラジン化合物」(2回目蒸留精製後)である。ただし、上記成分は、説明の都合上、主な成分について列挙しただけであり、他の成分を含む実施形態を、本発明の技術的範囲から除外するわけではない。
次に、本発明の第1について、詳細に説明する。
まず、原料として用いられる、化学式1で表されるハロゲン化ボラジン化合物を準備する。
Figure 0004431419
はアルキル基である。Rは、同一であっても異なっていてもよい。合成反応の収率や取り扱いの容易性を考慮すると、Rは好ましくは同一のアルキル基である。アルキル基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよい。アルキル基の有する炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1個である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これら以外のアルキル基が用いられてもよい。
ハロゲン化ボラジン化合物としては、B,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリメチルボラジン、B,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリエチルボラジン、B,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリ(n−プロピル)ボラジン、B,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリ(iso−プロピル)ボラジン、B,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリ(n−ブチル)ボラジン、B,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリ(sec−ブチル)ボラジン、B,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリ(iso−ブチル)ボラジン、B,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリ(tert−ブチル)ボラジン、B,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリ(1−メチルブチル)ボラジン、B,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリ(2−メチルブチル)ボラジン、B,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリ(neo−ペンチル)ボラジン、B,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリ(1,2−ジメチルプロピル)ボラジン、B,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリ(1−エチルプロピル)ボラジン、B,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリ(n−ヘキシル)ボラジン、B,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリシクロヘキシルボラジンが挙げられる。B,B’,B”−トリフルオロ−N,N’,N”−トリメチルボラジン、B,B’,B”−トリブロモ−N,N’,N”−トリメチルボラジン、B,B’,B”−モノクロロジフルオロ−N,N’,N”−トリメチルボラジンなど、他のハロゲン元素によって、置換されていてもよい。
ハロゲン化ボラジン化合物の入手方法については、特に限定されない。ハロゲン化ボラジン化合物を合成する際には、公知の知見が適宜参照されうる。例えば、D.T.HAWORTH,Inorganic Syntheses,10,43(1971)に記載されている合成方法が採用されうる。自ら合成するのであれば、例えば、三塩化ホウ素(BCl)および下記化学式3で表されるアミン化合物を反応させる。三塩化ホウ素とアミン化合物との反応は、溶媒中に懸濁させたアミン化合物に、三塩化ホウ素を添加する態様が好ましい。溶媒としては、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、モノクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼンなどが用いられうる。反応溶液周辺の雰囲気については、特に限定されないが、好ましくは窒素やアルゴンといった不活性ガスで、反応溶液周辺の雰囲気が置換される。
Figure 0004431419
化学式3で表されるアミン化合物において、Rはアルキル基である。アルキル基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよい。アルキル基の有する炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1個である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これら以外のアルキル基が用いられてもよい。Xはハロゲン原子、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子である。原料の入手しやすさや、反応性の高さを考慮すると、好ましくは、Xは塩素原子である。
準備されたハロゲン化ボラジン化合物は、グリニャール試薬と反応させられ、その結果、化学式2で表されるアルキルボラジン化合物が合成される。ハロゲン化ボラジン化合物とグリニャール試薬との反応により、ハロゲン化ボラジン化合物のハロゲン原子を、アルキル基で置換する反応は、非特許文献1などに開示されている通り公知の反応であるので、以下簡単に説明する。
MgX(Rはアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す)型に代表されるグリニャール試薬によって引き起こされるグリニャール反応は、所定の化合物に含まれるハロゲン原子をグリニャール試薬に含まれるアルキル基で置換する。ハロゲン化ボラジン化合物に関して言えば、ホウ素に直接結合しているハロゲン原子が、グリニャール試薬に含まれるアルキル基で置換される。
グリニャール試薬としては、CHMgI、CHCHMgBr、CHCHCHMgIなど、種々のグリニャール試薬が用いられうる。グリニャール試薬は、これらに限定されないことは勿論である。
グリニャール試薬とハロゲン化ボラジン化合物との反応条件は、特に限定されない。例えば、窒素雰囲気下、所定のハロゲン化ボラジン化合物および溶媒としてのジエチルエーテルを反応容器に供給する。反応溶液を撹拌しながら、反応溶液にグリニャール試薬であるCHMgIを徐々に滴下する。
ハロゲン化ボラジン化合物およびグリニャール試薬の添加量は、量論比よりもハロゲン化ボラジン化合物の使用量を多くすれば、反応後に残存するグリニャール試薬を減少させることが可能である。しかしながら、ハロゲン化ボラジン化合物の沸点と、アルキルボラジン化合物の沸点とは近接しているため、蒸留が困難になる虞がある。一方、量論比よりもグリニャール試薬の使用量を多くすれば、反応後に残存するハロゲン化ボラジン化合物を減少させることが可能である。しかしながら、多量に残存するグリニャール試薬によって、トリアルキルボランの生成が促進される虞がある。また、グリニャール試薬に由来するマグネシウムやハロゲンが、不純物として多く含まれる虞がある。これらを考慮すると、ハロゲン化ボラジン化合物の使用量を1としたときに、量論比で0.7〜1.3の範囲のグリニャール試薬が用いられることが好ましい。グリニャール試薬の使用量をこのような範囲にすることによって、BrやClなどのハロゲン元素や、Mg等の金属元素など、アルキルボラジン化合物中のグリニャール試薬に由来する不純物を、効果的に減少させうる。
製造されるアルキルボラジン化合物は、化学式2で表される構造を有する。なお、本願において「アルキルボラジン化合物」とは、特段の断りのない限り、化学式2で表される化合物を意味する。
Figure 0004431419
はアルキル基である。アルキルボラジン化合物中のRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。Rは、化学式1におけるRに由来する基である。Rについては、化学式1のRについて説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
はグリニャール試薬に起因するアルキル基である。グリニャール試薬が、RMgXで表される場合には、RはRに由来する。アルキルボラジン化合物の構造については、特に限定されないが、半導体材料として使用された際の物性を考慮すると、好ましくはRおよびRはいずれもアルキル基である。つまり、アルキルボラジン化合物は、好ましくは、ヘキサアルキルボラジンである。
ヘキサアルキルボラジンの具体例としては、ヘキサメチルボラジン、ヘキサエチルボラジン、ヘキサ(n−プロピル)ボラジン、ヘキサ(iso−プロピル)ボラジン、ヘキサ(n−ブチル)ボラジン、ヘキサ(sec−ブチル)ボラジン、ヘキサ(iso−ブチル)ボラジン、ヘキサ(tert−ブチル)ボラジン、ヘキサ(1−メチルブチル)ボラジン、ヘキサ(2−メチルブチル)ボラジン、ヘキサ(neo−ペンチル)ボラジン、ヘキサ(1,2−ジメチルプロピル)ボラジン、ヘキサ(1−エチルプロピル)ボラジン、ヘキサ(n−ヘキシル)ボラジン、ヘキサシクロヘキシルボラジン、B,B’,B”−トリメチル−N,N’,N”−トリエチルボラジン、B,B’,B”−トリメチル−N,N’,N”−トリ(n−プロピル)ボラジン、B,B’,B”−トリメチル−N,N’,N”−トリ(iso−プロピル)ボラジン、B,B’,B”−トリエチル−N,N’,N”−トリメチルボラジン、B,B’,B”−トリエチル−N,N’,N”−トリ(n−プロピル)ボラジン、B,B’,B”−トリエチル−N,N’,N”−トリ(iso−プロピル)ボラジン、B,B’,B”−トリ(iso−プロピル)−N,N’,N”−トリメチルボラジン、B,B’,B”−トリ(iso−プロピル)−N,N’,N”−トリエチルボラジンなどが挙げられる。
ハロゲン化ボラジン化合物とグリニャール試薬との反応によって合成されたアルキルボラジン化合物を含む組成物は、少なくとも2回、蒸留精製される。蒸留精製することによって、トリアルキルボランの含有量が非常に少ない、安全性の高いアルキルボラジン化合物が得られる。
蒸留精製によって除去されるトリアルキルボランは、化学式4で表される化合物である。
Figure 0004431419
は、アルキル基である。トリアルキルボランのRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。アルキル基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これら以外のアルキル基が用いられてもよい。トリアルキルボランの具体例としては、トリメチルボラン、トリエチルボラン、トリプロピルボラン、エチルジメチルボランなどが例示できる。実際に生成するトリアルキルボランは、用いられるグリニャール試薬の種類によって影響される。例えば、グリニャール試薬としてCHCHMgBrが用いられた場合には、トリエチルボラン((CHCHB)が生成する。
アルキルボラジン化合物中に混入しているトリアルキルボランは、ガスクロマトグラフ−質量分析装置(GC−MS)を用いて測定されうる。測定装置の種類や測定条件については、統計学的に一定の確実性を有するデータが得られるのであれば、特に限定されない。なお、用いる装置や測定条件によって値が異なる場合には、実施例に記載されている方法で測定された値を、トリアルキルボラン含有量として採用する。
蒸留精製の手法については、目的物であるハロゲン化ボラジン化合物と、グリニャール試薬およびトリアルキルボランとを分離可能であれば、特に限定されない。本発明の効果を得るためには、1回目の蒸留精製において、少なくともハロゲン化ボラジン化合物とグリニャール試薬との分離が可能であり、2回目の蒸留精製において、少なくともハロゲン化ボラジン化合物とトリアルキルボランとの分離が可能であればよい。蒸留精製に先立って、有機合成の分野で一般的な処理が行なわれてもよい。例えば、反応溶液は、濾過され、エバポレータを用いて濃縮される。
蒸留精製装置の大きさや種類は、本発明が適用される環境や規模に応じて決定されればよい。例えば、大量の組成物を処理するのであれば、工業的規模の蒸留塔が用いられうる。少量の組成物を処理するのであれば、蒸留管を用いた蒸留精製が用いられうる。例えば、少量の組成物を処理する蒸留装置の具体例としては、3つ口フラスコにクライゼン型の連結管でリービッヒ冷却管を取り付けた蒸留装置が用いられうる。ただし、このような蒸留装置を用いる実施形態に、本発明の技術的範囲が限定されるわけではない。
本発明の製造方法を用いることによって得られるアルキルボラジン化合物は、好ましくは蒸留精製が終了した後における、アルキルボラジン化合物中のトリアルキルボランの含有量が、1ppm以下である。トリアルキルボランの含有量を1ppm以下にまで減少させれば、安全性を非常に高いレベルにまで向上させうる。トリアルキルボランの含有量は、アルキルボラジン化合物の質量を基準として算出される。トリアルキルボラン含有量の下限値については特に限定されない。一般には、少ないほど好ましい。
蒸留精製が終了した後のアルキルボラジン化合物中には、トリアルキルボラン以外にも、ハロゲン元素や金属元素などの不純物が含まれうるが、これらの不純物の含有量も、できるだけ少ないことが好ましい。
アルキルボラジン化合物中に混入しているハロゲン元素は、イオンクロマトグラフィーを用いて測定されうる。イオンクロマトグラフィーの種類や測定条件については特に限定されない。用いる装置や測定条件によって値が異なる場合には、以下の測定方法によって測定された値をハロゲン元素含有量として採用する。
ハロゲン元素量は、日本ダイオネクス株式会社製DX−500を用いて測定される。カラムは、分離カラムとしてIonPacAS4A−SC、ガードカラムとしてIonPacAG4A−SCがそれぞれ用いられる。溶離液は、1.8mmol/リットルのNaCO溶液、および1.7mmol/リットルのNaHCO溶液がそれぞれ用いられる。溶離液の流量は、1.5ml/minである。試料の注入量は、25μリットルである。
アルキルボラジン化合物中に混入している金属元素は、高周波プラズマ発光分析装置(ICP)を用いて測定されうる。高周波プラズマ発光分析装置(ICP)の種類や測定条件については特に限定されない。用いる装置や測定条件によって値が異なる場合には、以下の測定方法によって測定された値を金属含有量として採用する。
金属元素含有量は、セイコー電子工業株式会社製SPS4000を用いて測定される。測定は、試料をメタノールで10倍に希釈したサンプルについて行われる。装置の設定値は、測定波長が279.553nm、高周波出力が1.80kW、キャリアガス(Ar)の流量が0.6リットル/minである。
本発明の第2は、本発明の第1の製造方法によって得られるアルキルボラジン化合物である。本発明の製造方法によって得られるアルキルボラジン化合物は、トリアルキルボランの含有量が極めて少ない。具体的には、本発明のアルキルボラジン化合物は、前述の通り、好ましくはトリアルキルボラン含有量が1ppm以下である。
製造されたアルキルボラジン化合物は、特に限定されないが、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層、エッチストッパー層などの形成に用いられうる。その際には、アルキルボラジン化合物が用いられてもよいし、アルキルボラジン化合物に改変を加えた化合物が用いられてもよい。アルキルボラジン化合物またはアルキルボラジン化合物の誘導体を重合させた重合体を、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層またはエッチストッパー層の原料として用いてもよい。
重合体は、ボラジン環骨格を有する化合物をモノマーとして用いて形成されうる。重合方法や重合形態は特に限定されない。重合方法は、ボラジン環に結合している官能基によって、選択される。例えば、アミノ基が結合している場合には、縮重合によって重合体が合成されうる。ボラジン環にビニル基またはビニル基を含む官能基が結合している場合には、重合開始剤を用いたラジカル重合によって、重合体が形成されうる。重合体は、ホモポリマーであってよく、2以上のモノマーユニットからなる共重合体であってもよい。共重合体の形態は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などのいずれでもよい。他のモノマーと結合を形成しうる官能基を3つ以上有するモノマーを用いれば、モノマーがネットワーク状に結合した重合体を得ることも可能である。
続いて、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層またはエッチストッパー層を形成する方法について説明する。なお、以下の説明においては、「アルキルボラジン化合物」、「アルキルボラジン化合物の誘導体」および「これらに起因する重合体」をまとめて、「ボラジン環含有化合物」と称する。
ボラジン環含有化合物を用いて、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層またはエッチストッパー層を形成するには、ボラジン環含有化合物を含む溶液状またはスラリー状の組成物を調製し、これを塗布することによって、塗膜を形成する手法が用いられうる。その際に用いられる、ボラジン環含有化合物を溶解または分散させる溶媒は、ボラジン環含有化合物や、必要に応じて添加される他の成分を溶解し得るものであれば特に制限されない。溶媒としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジグライム、テトラグライムなどが用いられ得る。これらは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を混合して用いてもよい。スピンコーティングを用いて成膜する場合には、ジグライムが好ましい。ジグライムまたはその誘導体を溶媒として用いると、製造される膜の均一性が向上する。また、膜の白濁が防止されうる。ボラジン環含有化合物を溶解または分散させる溶媒の使用量は、特に制限されるべきものではなく、低誘電材料の製造手段に応じて決定すればよい。例えば、スピンコーティングにより成膜する場合には、スピンコーティングに適した粘度になるよう、溶媒および溶媒量を決定すればよい。
ボラジン環含有化合物を含む組成物は、所望する部位に供給され、乾燥することにより、固化される。例えば、半導体用層間絶縁膜を形成するには、スピンコーティングにより、基板上に塗布し、乾燥させればよい。一度のコーティングおよび乾燥では所望する厚さの被膜が得られない場合には、コーティングおよび乾燥を、所望の厚さになるまで繰り返しても良い。スピンコーターの回転数、乾燥温度および乾燥時間などの成膜条件は、特に限定されない。
基板への塗布は、スピンコーティング以外の手法を用いてもよい。例えば、スプレーコーティング、ディップコーティングなどが用いられ得る。
その後、塗膜を乾燥する。塗膜の乾燥温度は、通常、100〜250℃程度である。ここでいう乾燥温度とは、乾燥処理をする際の温度の最高温度を意味する。例えば、乾燥温度を徐々に上昇させ、100℃で30分維持し、その後、冷却した場合の乾燥温度は100℃である。焼成温度は熱電対を用いて測定されうる。乾燥した被膜の乾燥時間については、特に限定されない。得られる低誘電材料についての、誘電率、耐湿性等の特性を考慮して、適宜決定すればよい。
<比較例1>
3L5つ口丸底フラスコに、モノメチルアミン塩酸塩、およびクロロベンゼンを入れた。このフラスコ内に、三塩化ホウ素をガスボンベから直接取り出し、−70℃で液化させながら、20時間かけて滴下した。滴下後、125〜135℃で60時間熟成し、ハロゲン化ボラジン化合物であるB,B’,B”−トリクロロ−N,N’,N”−トリメチルボラジン(TCTMB)の合成反応を終了させた。反応溶液が25℃になった後、反応溶液を濾過し、濾紙に残存する沈殿物を洗浄した。濾液をナスフラスコに移し、エバポレータを用いて溶媒を留去し、TCTMBからなる固形物を得た。
窒素雰囲気下で、得られたTCTMB(175g)、および溶媒としてジエチルエーテル(300ml)を、2L5つ口フラスコに仕込んだ。反応系の内温が20〜25℃から外れないようにコントロールしながら、グリニャール試薬であるエチルマグネシウムブロマイドのジエチルエーテル溶液(3M、800ml)を5時間かけて滴下した。その後、還流し3時間熟成し、B,B’,B”−トリエチル−N,N’,N”−トリメチルボラジン(TETMB)の合成反応を進行させた。反応溶液の温度が室温にまで低下した後、反応溶液を濾過し、エバポレータを用いて濾液からエーテルのみを除去して濃縮した。
残った溶液について、減圧蒸留を1回行い、TETMBを得た(118g、収率73.5%)。1回減圧蒸留を行った後のTETMBの中のトリアルキルボランの含有量を調査したところ、トリエチルボランが0.5質量%含まれていた。結果を表1に示す。
なお、TETMB中のトリアルキルボランの含有量の測定には、ガスクロマトグラフ−質量分析装置(GC−MS)を用いた。測定装置および測定条件は、以下の通りである。
・GC型式:島津製作所株式会社製GC−17A
・GC測定条件
カラム DB−1(J&W GC Column)、長さ30m×I.D.0.25mm×膜厚0.25μm
試料室:250℃
検出器:280℃
昇温条件 初期50℃ 5分保持→昇温20℃/分→到達温度250℃ 15分保持→終了
・MS型式:島津製作所株式会社製QP−5000
・イオン化方法:電子衝撃(EI)法
<実施例1>
減圧蒸留をさらにもう1回、つまり、合計で減圧蒸留を2回行った以外は、比較例1と同様にして、TETMBを得た(107g、収率65.7%)。2回減圧蒸留を行った後のTETMBの中のトリアルキルボランの含有量を調査したところ、トリエチルボラン含有量は、GC−MSの検出限界(1ppm)以下であった。結果を表1に示す。
Figure 0004431419
<評価>
比較例1および実施例1に示すように、本発明の製造方法によって、トリアルキルボラン含有量の極めて少ないアルキルボラジン化合物が得られる。
蒸留精製が1回行われる場合(比較例1)においては、生成したトリエチルボランがある程度含まれている。これに対し、蒸留精製を2回行った場合(実施例1)においては、トリエチルボランが激減している。

Claims (2)

  1. 化学式1:
    Figure 0004431419
    (式中、Rは、同一または異なっていてもよく、アルキル基であり、Xはハロゲン原子である)
    で表されるハロゲン化ボラジン化合物と、グリニャール試薬とを反応させて、化学式2:
    Figure 0004431419
    (式中、Rは、同一または異なっていてもよく、アルキル基であり、Rは、同一または異なっていてもよく、アルキル基である)
    で表されるアルキルボラジン化合物を合成する段階と、
    合成されたアルキルボラジン化合物を、少なくとも2回減圧下で蒸留精製する段階と、
    を含む、アルキルボラジン化合物の製造方法。
  2. 蒸留精製が終了した後における、アルキルボラジン化合物中のトリアルキルボランの含有量が、1ppm以下である、請求項1に記載のアルキルボラジン化合物の製造方法。
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