JP4431329B2 - Mg含有アルミニウム合金ダイカスト材の溶接に用いる溶加材、溶接方法並びに溶接品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、Mgを含有するアルミニウム合金ダイカスト材を、レーザ溶接等により溶接する際に用いられる溶加材、及びこの溶加材を用いた溶接方法並びに溶接品に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車の燃費向上策として、車両の軽量化が非常に有効な手段の一つであることから、自動車の各種構成部品に、従来から使用されている鉄系材料に代えて、アルミニウム合金を適用する試みが活発に行われている。
【0003】
しかしながら、従来鉄系材料であった部材をただ単にアルミニウム合金へと置換するのみでは、部材の大幅なコスト増加を招く結果となる。
【0004】
そこで、アルミニウム合金製車体部材、シャシー部材あるいはサスペンション部材等の自動車用部材を低コストで実現するために、これら部材、例えばスペースフレームの継手やBピラー等に、アルミニウム合金ダイカスト材が使用され始めている。
【0005】
このようなアルミニウム合金ダイカスト材同士またはダイカスト材と他部材との接合方法としては、リベット等による機械的接合の他、レーザ溶接、電子ビーム溶接、アーク溶接(MIG溶接)等の高密度エネルギ熱源を用いた溶接が行われている。
【0006】
しかしながら、上記のようなアルミニウム合金ダイカスト材を含む被溶接部材を溶接すると、押出材や圧延材と比較して、溶接部に多量の気孔が発生し、強度が低下し易いという問題があった。この原因は、ダイカスト法の特徴により、ダイカスト材の内部に空気等の多量のガスを巻き込んでおり、このガスが溶接時に放出されることに主に起因するものであった。
【0007】
上気のような気孔の発生を防止するには、ダイカスト材のガス含有量を厳しく規制すればよいが、ダイカスト材の高品質化が必要となり、ひいては工数が増えコストが増大する。
【0008】
このような問題は、アルミニウム合金ダイカスト材を含む2個の被溶接部材を溶接する際に発生するだけでなく、被溶接部材を表面改質等を目的としてビードオン溶接等する場合にも、同様に生じるものであった。
【0009】
そこで、本出願人は、アルミニウム合金ダイカスト材からなる被溶接部材を溶接する際の気孔の発生をできるだけ抑制するために、特許文献1により、アルミニウム合金中の水素ガス含有量をXcc/100gAl、フィラー中に含有されるAl−K−F系フラックス材の含有量を質量比でY%としたときに、1.5X−1.5≦Y≦2.0X、かつY>0なる条件を満たすように、前記Al−K−F系フラックス材の含有量を調整したアルミニウム合金のレーザ溶接給線用のフィラーワイヤを提案した。
【0010】
さらには、特許文献2により、フィラー中に含有されるAl−K−F系フラックス材の含有量が質量比で0.05%以上1%未満であるアルミニウム合金のレーザ溶接給線用のフィラーワイヤを提案した。
【0011】
また、従来より、アルミニウム合金の表面改質のための溶接時の気孔発生を抑制した溶加材として、特許文献3には、ナトリウム5〜10%、カリウム40〜45%、酸素5%以下、硫黄5%以下、フッ素5〜10%、塩素35〜40%の成分量からなるフラックスを0.1〜8wt%の範囲で配合した溶接用アルミニウムワイヤが提案されている。また特許文献4には、C2Cl6粉末を0.05〜20wt%混合した溶接用アルミニウム溶加材が提案されている。
【0012】
【特許文献1】
特開2002−239782号公報
【0013】
【特許文献2】
特開2001−353591号公報
【0014】
【特許文献3】
特開平6−304780号公報
【0015】
【特許文献4】
特開平7−96396号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、アルミニウム合金ダイカスト材の車両用部材への適用に際してのより一層のコスト低減を目的として、力学的性質の調整のためのダイカスト後の熱処理を必要としない、非熱処理型のアルミニウム合金ダイカスト材が開発されてきている。
【0017】
この非熱処理型のアルミニウム合金ダイカスト材は、例えば、Al−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金またはAl−Mg−Si−Mn系合金のいずれか1種からなるものであり、Mgを含有している。
【0018】
しかるに、このような非熱処理型のアルミニウム合金ダイカスト材に対して、前述したような気孔抑制効果を有する溶加材を用いて溶接を行っても、所期するような気孔抑制効果を発揮させることはできなかった。この原因は、非熱処理型のアルミニウム合金ダイカスト材に含まれるMgが、溶接の際の溶融時に蒸発し、これが溶接部から抜けきらずに残存してしまうためである。
【0019】
この発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたものであって、Mgを含有するアルミニウム合金ダイカスト材を含む接合部材を溶接する際に、溶接部における気孔の発生を抑制して溶接部の強度を優れたものとすることができる溶加材を提供し、さらにはこの溶加材を用いた溶接方法並びに溶接品を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の手段を提供する。
(1)Mgを含有するアルミニウム合金ダイカスト材の溶接に用いられる溶加材であって、
ベースとなるアルミニウムまたはアルミニウム合金に、Al−K−F系フラックス材が溶加材全体に対して2〜4質量%含有されてなる溶加材。
(2)ベースとなるアルミニウムまたはアルミニウム合金が、Al−Mg系合金である前項1に記載のアルミニウム合金製溶加材。
(3)Al−K−F系フラックス材がKAlF4、 K2AlF5、K3AlF6、KFとAlF3との混合物または共晶組成物、及びフルオロアルミン酸カリウム錯体のうちのいずれか1種、または2種以上の混合物である前項1または2のいずれかに記載のアルミニウム合金製溶加材。
(4)アルミニウム合金ダイカスト材がAl−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金またはAl−Mg−Si−Mn系合金のいずれか1種からなる前項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム合金製溶加材。
(5)溶接がレーザ溶接であり、溶加材はワイヤに形成されている前項1〜4のいずれかに記載のアルミニウム合金製溶加材。
(6)前項1〜5のいずれかに記載の溶加材を用いて、Mg含有アルミニウム合金ダイカスト材を溶接することを特徴とする溶接方法。
(7)前項6に記載の溶接方法によって溶接された溶接品。
(8)溶接部のポロシティ面積率が10%以下である前項7に記載の溶接品。
【0021】
上気のように、この発明に係る溶加材は、ベースとなるアルミニウムまたはアルミニウム合金に、Al−K−F系フラックス材が含有されてなるものである。このAl−K−F系フラックス材は、1)脱酸作用、2)KFの優先蒸発によるH2ガスの分圧低下、3)溶融部の粘度低下(ガス抜けの向上)、の効果により、溶接部の気孔発生の抑止効果に寄与するものである。
【0022】
前述した特開2001−353591号公報に開示されたアルミニウム合金溶加材は、溶接対象合金がAl−Si系ダイカスト材であるため、溶加材中のAl−K−F系フラックス材の含有量を0.05〜1質量%とした。
【0023】
しかしながら、Mg含有アルミニウム合金ダイカスト材では、前述の通り、溶接時にMgが蒸発するため、この蒸発したMg蒸気を溶融部から抜けきらせるためには、溶融部の粘度をさらに低下させてガス抜け性を向上させる必要がある。溶加材中のAl−K−F系フラックス材の含有量が2質量%未満では、溶融部の粘度低下が不十分で、ガス抜け性を向上させることができず、気孔の発生を十分に抑制することができない。一方、Al−K−F系フラックス材の含有量が4質量%を超えると、フラックスに起因したAl−K−F系介在物の生成量が増加し、溶接部あるいは表面改質部の力学的性質が低下する。
【0024】
そこで、この発明では、溶加材中のAl−K−F系フラックス材の含有量を2〜4質量%とした。特に好ましいAl−K−F系フラックス材の含有量は2.5〜3.5質量%である。
【0025】
ここで、Al−K−F系フラックス材としては、一般式:KαAlFα+3(αは1以上の整数)で表されるKAlF4、K2AlF5、K3AlF6、及びKFとAlF3との混合物または共晶組成物、フルオロアルミン酸カリウム錯体のうちのいずれか1種、または2種以上の混合物であるフッ化物系フラックスが、前記気孔抑制効果に特に優れている点から挙げられる。フラックス粉末中の、KAlF4、 K2AlF5、K3AlF6の割合は、KAlF4を65〜95質量%とし、残りの35〜5質量%をK2AlF5、K3AlF6の1種または2種とするのが好ましい。
【0026】
前記溶加材のベースとなるアルミニウムまたはアルミニウム合金の組成は特に限定されることはなく、各種のものを用いれば良いが、好ましくはAl−Mg系合金を用いるのがよい。Al−Si系合金をベースにすると、このSiと母材であるアルミニウムダイカスト材に含まれるMgとが反応してMg−Si系金属間化合物が溶接部に多量に生成され、溶接部の靭性、延性が著しく低下する恐れがある。
【0027】
このため、溶接部における金属間化合物の生成がなく、母材であるMg含有アルミニウム合金ダイカスト材と同じくMgを含有するAl−Mg系合金、例えばAl−1.5質量%Mg合金やJIS5000系の各種Al−Mg系合金、あるいはこれらのうちの2種以上の混合物を用いるのが良いが、好ましくはMgの含有量が1.0〜5質量%であるのがよい。1.0質量%未満では、溶接金属の強度が低下するとともに割れが発生しやすくなり、5質量%を超えると、金属間化合物を生成し易くなり溶接部が脆くなってしまう。
【0028】
前記溶加材は各種の製造方法により製造しうるが、一例を挙げると、ベースとなるアルミニウム合金の粉末とAl−K−F系フラックス材の粉末とを所定配合比率で混合して加圧することにより、圧粉体に成形固形化した後、ワイヤ形状等に二次加工する方法がある。
【0029】
溶加材の形状も特に限定されることはなく、ワイヤ状、板状等各種形状に設定すればよいが、溶接時に連続供給可能であること等から、ワイヤ状が望ましい。
【0030】
被溶接部材であるアルミニウム合金ダイカスト材は、Mgを含有するものである。Mgを含有するものでなければ、この発明の適用意義が存在しないからであり、特にMg含有量が1.0〜5質量%である時に、この発明の効果をより有効に発揮させることができる。
【0031】
Mg含有アルミニウム合金ダイカスト材としては、Al−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金またはAl−Mg−Si−Mn系合金のいずれか1種からなるものを挙げることができる。
【0032】
前記Mg含有アルミニウム合金ダイカスト材に対して行う溶接の種類も特に限定されない。例えば、Mg含有アルミニウム合金ダイカスト材同士、またはMg含有アルミニウム合金ダイカスト材と他のアルミニウムまたはアルミニウム合金材とからなる被接合部材を接合するための溶接であっても良いし、表面改質等のためにMg含有アルミニウム合金ダイカスト材に行うビードオン溶接等であってもよい。
【0033】
また、溶接方法も特に限定されることはないが、レーザ溶接、電子ビーム溶接、アーク溶接(例えばMIG溶接)等の高密度エネルギ熱源を用いた溶接とするのが良く、特にパワー密度が高く極めて高速な溶接が可能であることから、レーザ溶接を用いるのが好ましい。
【0034】
前述した溶加材を用いて、Mg含有アルミニウム合金ダイカスト材を溶接する。溶接部の温度上昇により、ダイカスト材の中のMgが蒸発するが、前記溶加材中のAl−K−F系フラックス材の作用により、H2ガス等による気孔の発生が抑制されるのに加えて、溶融部の粘度低下によるガス抜け作用が発揮されて、前記蒸発したMgの溶融部からの抜け出しが促進される。このため、冷却凝固した溶接部における気孔が多数存在する程度を示すポロシティ面積率は低くなり、溶接部の強度が向上する。
【0035】
特に、ポロシティ面積率を10%以下に規制することにより、より優れた強度を得ることが可能となる。特に好適なポロシティ面積率は6%以下である。
【0036】
ここで、溶接部のポロシティ面積率は、溶接部のポロシティ体積率と等価であると考えられる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
(1)被溶接部材(母材)
本実施例では、Al-3.5質量%Mg-1.5質量%Si-1.3質量%Mn合金を使用した。その製造方法は次の通りである。
【0038】
上記組成の材料を、720℃の温度で溶解した後、介在物の除去と脱ガスを目的として、アルゴンガスによるバブリング処理を実施した。その後、真空ダイカスト鋳造法にて試料の作製を行なった。ダイカスト鋳造は、型締め力320トンの真空ダイカスト装置を使用し、金型に粉体離型材を塗布した後、鋳造圧力:60MPa、高速射出速度:4mで行った。鋳造時の溶湯温度は700℃であり、被溶接部材1の形状は図2に示すように、長さ130mm×幅50mm×厚さ2mmの平板形状である。
【0039】
このようにして製造した被溶接部材1のガス含有量は、1〜5cc/100gAlであった。なお、被溶接部材1中のガス含有量はランズレー法により測定した。
(2)溶加材(フィラーワイヤ材)
本実施例に使用した溶加材であるフィラーワイヤ材の組成を、 比較例と併せて表1に示す。
【0040】
フラックス材粉末入りのフィラーワイヤ材は、Al-1.5質量%Mgからなるアルミニウム合金粉末とフラックス材粉末とをそれぞれ混合した後、加圧することにより圧粉体に成形固化し、次いでこの圧粉体を二次加工し、1.2mm径のワイヤとすることにより製作した。フラックス材粉末が含有されていないものも同様にして製作した。
【0041】
フラックス材粉末は、KFの粉末を水に溶かして水溶液とし、この水溶液にAlF3の粉末を加え、ペースト状とした後、乾燥、粉砕して作成した。KFとAlF3の使用量は、質量比でKF:AlF3=45:55とした。
(3)溶接方法
ダイカスト材は、溶接に先立ち、ナイロンブラシによる表面研磨と、アルコールによる脱脂処理を行った。溶接には、Nd:YAGレーザを用い、図3(a)(b)に示すように、出力3kWと2kWのレーザ光L1、L2をビーム間距離:0.6mmにセットして、ビードオン溶接を行った。この時の溶接速度は5m/minであり、ワイヤ供給速度は5m/minとした。
(4)引張試験
ビードオン溶接を実施した被溶接部材1から、図4に示すように長さ130mm×幅35mmの形状の引張試験片2を切出し、引張試験に供した。なお、引張試験片2の作成時、溶接ビードの余盛りは板厚に合せて切削除去した。
【0042】
引張試験にはインストロン型の万能試験機を使用し、引張速度:6mm/minで実施した。
(5)溶接部のポロシティ画積率の測定
引張試験を終了した引張試験片2の破面について、画像解析により溶接部21のポロシティ面積率を測定した。ポロシティ面積率を測定した際の測定面積は約25mm2である。
引張試験および溶接部21のポロシティ面積率の測定結果を表1に示す。また、実施例4の試験片の溶接部の断面を図1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から理解されるように、フラックス材を2〜4質量%の範囲で含有するフィラーワイヤを用いることにより、溶接部のポロシティ面積率が少なく、強度、破断伸びともに優れていることがわかる。
【0045】
また、図5に、溶接部21の破面ポロシティ量と引張強さとの関係をグラフで示し、図6に、フィラーワイヤ中のフラックス含有量と破面ポロシティ面積率の関係をグラフで示す。
【0046】
表1及び図5から理解されるように、破面ポロシティ量の増加に伴い強度は低下する傾向にあるが、 破面ポロシティ量が10%以下であれば、強度の低下は小さいことがわかる。
【0047】
また、表1及び図6から理解されるように、フィラーワイヤ中のフラックス含有量が2〜4質量%の範囲であっても、ポロシティ面積率を10%以下とすることにより、さらに優れた強度が得られることがわかる。
【0048】
また、ポロシティ面積率が10%以下であっても、フィラーワイヤ中のフラックス含有量が4質量%を超える比較例11及び12については、溶接部のポロシティ面積率が10%以下であるにも関わらず、引張強さが250Mpa以下にまで低下した。このような結果となった比較例11の試料(フィラーワイヤ中のフラックス含有量5質量%)の引張試験後の破面SEM観察結果を図7に示す。
【0049】
図7に示すように、フラックス含有量5質量%のものでは、フラックスに起因したAl-K-F系の介在物(図7において、周囲が白色である円形の粒子) の生成が認められ、これにより、溶接部のポロシティ面積率は少ないにも関わらず、強度が低下したものと考えられる。
【0050】
次に、図8に、フィラーワイヤのべース材として、Al-10%Si合金を用いた場合と、Al-1.5質量%Mg合金を用いた場合のレーザ溶接部の硬さ測定を行った結果を比較して示す。
【0051】
ポロシティの影響により、硬さのばらつきは非常に大きいが、Al-10質量%Si材をべース材として使用したものの溶接部硬さがおおよそ100Hvであるのに対し、Al-1.5質量%Mg材をべース材として使用したものの溶接硬さは、およそ75Hvである。このように、Al-10質量%Si材をべース材として使用することで、溶接部の硬さは向上するが、一方で、引張試験時の破断伸びは5〜10%程度であり、母材の破断伸び(約20%)に対し大きく劣る。
【0052】
これは、ベース材としてAl-Si系の合金を使用した場合には、ダイカスト材中のMgとフィラーワイヤ中のSiによりMg-Si系の金属間化合物が多量に生成され、これの存在により溶接部の硬さは向上するものの、延性および靭性が著しく低下したものと考えられる。このような観点から、フィラーワイヤのべース材としては、Al-Mg系合金がより適していると考えられる。
【0053】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、Al−K−F系フラックス材を2〜4質量%含有するアルミニウム合金製溶加材であるから、Mgを含有するアルミニウム合金ダイカスト材を溶接した際に、ダイカスト材内部に巻き込まれているガスによる溶接部の気孔の発生を抑制できるのはもとより、蒸発したMgの溶融部からの抜け切りを促進して、Mgの蒸発に基づく溶接部の気孔の発生を抑制できるから、溶接部の強度を優れたものとすることができる。
【0054】
請求項2に係る発明によれば、ベースとなるアルミニウムまたはアルミニウム合金がAl−Mg系合金であるから、Al−Si系合金をベースとする場合のような溶接部における金属間化合物の生成がなく、このため溶接部の靭性、延性の低下を防止し得て、溶接部の優れた伸びを確保することができる。
【0055】
請求項3に係る発明によれば、Al−K−F系フラックス材がKAlF4、 K2AlF5、K3AlF6、KFとAlF3との混合物または共晶組成物、及びフルオロアルミン酸カリウム錯体のうちのいずれか1種、または2種以上の混合物であるから、Al−K−F系フラックス材による気孔抑制効果を確実に発揮させることができる。
【0056】
請求項4に係る発明によれば、アルミニウム合金ダイカスト材がAl−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金またはAl−Mg−Si−Mn系合金のいずれか1種からなるから、前記溶加材の使用により、これらMg含有アルミニウム合金ダイカスト材の溶接部を強度に優れたものとすることができる。
【0057】
請求項5に係る発明によれば、溶接に用いる熱源がレーザであり、溶加材はワイヤに形成されているから、ワイヤを供給しつつレーザ溶接によるMg含有アルミニウム合金ダイカスト材を溶接する場合の溶接部を強度に優れたものとすることができる。
【0058】
請求項6に係る発明によれば、上気のような溶加材を用いて、Mg含有アルミニウム合金ダイカスト材を溶接するから、溶接部における気孔の発生を抑制でき、強度に優れた溶接部を有する溶接品の提供が可能となる。
【0059】
請求項7に係る発明によれば、前記溶接方法によって溶接された溶接品における溶接部の強度が優れたものとなる。
【0060】
請求項8に係る発明によれば、溶接部のポロシティ面積率が10%以下であるから、さらに溶接部の強度を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例4の溶接部の断面を示す図である。
【図2】実施例で使用した被溶接部材の形状を示す平面図である。
【図3】実施例において実施したレーザ溶接の要領を示す概略図である。
【図4】実施例において引張試験に供した試験片の平面図である。
【図5】実施例における溶接部破面ポロシティ量と引張強さとの関係を示すグラフである。
【図6】実施例におけるフィラーワイヤ中のフラックス含有量と破面ポロシティ面積率の関係を示すグラフである。
【図7】比較例11の溶接部の断面を示す図である。
【図8】フィラーワイヤのべース材として、Al-10%Si合金を用いた場合と、Al-1.5%Mg合金を用いた場合の溶接部の硬さ測定を行った結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 被溶接部材
2 試験片
Claims (7)
- Mgを1.0〜5質量%含有する非熱処理型アルミニウム合金ダイカスト材の溶接に用いられる溶加材であって、
Mgを1.0〜5質量%含有するベースとなるAl−Mg系合金に、Al−K−F系フラックス材が溶加材全体に対して2〜4質量%含有されてなる溶加材。 - Al−K−F系フラックス材がKAlF4、 K2AlF5、K3AlF6、KFとAlF3との混合物または共晶組成物、及びフルオロアルミン酸カリウム錯体のうちのいずれか1種、または2種以上の混合物である請求項1に記載のアルミニウム合金製溶加材。
- アルミニウム合金ダイカスト材がAl−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金またはAl−Mg−Si−Mn系合金のいずれか1種からなる請求項1または2に記載のアルミニウム合金製溶加材。
- 溶接がレーザ溶接であり、溶加材はワイヤに形成されている請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム合金製溶加材。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の溶加材を用いて、Mgを含有する非熱処理型アルミニウム合金ダイカスト材を溶接することを特徴とする溶接方法。
- 請求項5に記載の溶接方法によって溶接された溶接品。
- 溶接部のポロシティ面積率が10%以下である請求項6に記載の溶接品。
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