JP4428075B2 - 伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主にメンバー、ロッカー等の自動車の構造部品に使用される、伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に関する。
近年、自動車の衝突安全性能を高める(自動車が走行中に物体と衝突した際、衝撃に対する部材のエネルギー吸収能を高め、乗員への衝撃負荷を低減させることで乗員の生命の安全性を高める)ためや、排気ガス規制に伴う燃費向上を目的とした車体軽量化を図る目的で、メンバー、ロッカー等の各種自動車部品に高強度鋼板の適用化が進められている。
一方で、自動車マーケットのグローバル化に伴い、より腐食環境の厳しい地域での防錆性能も要求されることから、表面処理鋼板、主に溶融亜鉛めっき鋼板の適用が必要とされる。高強度の溶融亜鉛めっき鋼板としては開発が進められており、590MPa級の引張強度を有する鋼板については製品化され、自動車部品への適用も増加してきている。
しかし、590MPa級以上の鋼板については、延性の低下さらには穴拡げ性の低下による伸びフランジ成形性の劣化が課題であり、特に780MPa級以上では重要である。ところが、フェライト単相鋼は伸びフランジ成形性に優れるものの、590MPa級以上の高強度化は難しい。それは、固溶強化元素を増加させても、めっき性が劣化してしまうこと、また、析出強化量を増加させても、降伏強度の上昇によりプレス成形性が低下してしまうからである。
一方、複合組織鋼においては、軟質相と硬質相の混合組織であるため、降伏強度は低いものの、伸びフランジ成形時に両相間がクラックの起点となりやすく、伸びフランジ成形性に劣る。そのため、複合組織鋼において、伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板の開発は非常に困難なものとなっている。
複合組織鋼において、伸びフランジ成形性を向上させる知見として、特許文献1にはフェライト分率を高め、かつ、組織を微細化する方法が開示され、特許文献2には組織を均一微細化する方法が開示され、特許文献3,4にはSi添加によりベイナイト中のセメンタイトを微細化する手法が開示され、さらに特許文献5にはDual Phase鋼においてマルテンサイトを微細化する手法が開示されている。
しかし、これらの技術ではいずれも、伸びフランジ成形性を示す指標である穴拡げ率λは80%程度であり、顕著な効果とは言い難い。
特開平4―350号公報 特開平4−173946号公報 特開平4−293758号公報 特開平5−78753号公報 特開2003−213369号公報
そこで、本発明では、TiおよびMnを有効活用し、Ti,C,Mnのバランスおよび焼鈍温度を最適化することにより、複合組織鋼で良好なプレス成形性を有しながら、伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を見出した。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、λ≧80%の非常に優れた伸びフランジ成形性を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題は次の発明により解決される。
(1)化学成分が質量%でC:0.03〜0.20%、Mn:1.5〜3.0%、P:≦0.05%、S:≦0.01%、Al:≦0.15%、N:≦0.01%、Ti:0.05〜0.25%、B:≦0.0015%を含有し、さらにTi=Ti−(48/14)N−(48/32)Sで定義するTiとCの原子比(Ti/48)/(C/12)が0.15〜0.80を満たし、
さらにA=(Ti/2C)+1.7−Mnで定義するAがA≧0を満たし、
残部が鉄および不可避的不純物からなり、鋼板組織がフェライトおよびオーステナイトの低温変態相からなることを特徴とする伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(2) 化学成分としてさらに、質量%でNb:≦0.25%を含有し、さらにTi =Ti−(48/14)N−(48/32)Sで定義するTi及びNbとCの原子比(Nb/93+Ti/48)/(C/12)が0.15〜0.80を満たし、さらにA=(48Nb+93Ti)/186C+1.7−Mnで定義するAがA≧0を満たすことを特徴とする上記(1)に記載の伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(3)化学成分としてさらに、質量%で、Si:≦0.5%を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(4)化学成分としてさらに、質量%で、Cr:0.05〜0.5%、V:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%のうち1種または2種以上を含有し、Mn’=Mn+2.5Mo+1.07Cr+2.5VにおいてA=(48Nb+93Ti)/186C+1.7−Mn’で定義されるAがA≧0を満たすことを特徴とする、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(5)上記(1)乃至(4)いずれかに記載の成分をもつスラブを熱間圧延した後、650℃以下で巻き取って熱延鋼板を得る工程と、酸洗、冷間圧延した後、温度が(0.7Ac3+0.3Ac1)℃〜(1.4Ac3−0.4Ac1)℃で、時間が5〜240秒の再結晶焼鈍を施した後、10℃/s以下の速度で冷却する工程と、溶融亜鉛めっきを施した後、合金化処理を施す工程とを具備することを特徴とする伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
この発明は、伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板を得るために、鋭意検討を重ねた結果見出された知見に基づいてなされた。即ち、本発明者らは、TiおよびMnを有効活用し、Ti,C,Mnのバランスおよび焼鈍温度の最適化により、複合組織鋼において、フェライトを微細炭化物で析出強化すると同時に、第2相をベイナイト主体とし、いわゆるDual Phase鋼の第2相(マルテンサイト)よりも軟質化することで、フェライト−第2相間硬度差の効果的な減少が可能であることを見出した。その結果、複合組織鋼でありながら、伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法について知見を見出し、ここに開示するものである。
本発明に係る高強度溶融亜鉛めっき鋼板では、以下の構成要件を必須とする。
以下に、本発明の鋼成分の添加理由、成分限定範囲、組織形態、引張特性および製造条件の限定理由について説明する。なお、以下の%は質量%を示す。
(1)鋼成分の範囲
C:0.03〜0.20%
Cは鋼の強化に有効な元素である。固溶強化に寄与し、Ti、Nb等と結合し炭化物を形成することで、析出強化にも寄与する。本発明では、析出強化をより活用することで鋼強化しているのが特徴で、十分な強化能を得るためには0.03%以上のCの添加を必要とする。しかし、C量が0.20%を超えると、スポット溶接における十字引張強度の低下が顕著となることから、C量は0.03〜0.20%の範囲とする。但し、本発明の伸びフランジ成形性向上の効果を得るためには、同時に、以下に記述するTiおよびNbとの原子比:0.15〜0.80を満たすことが必要である。
Mn:1.5〜3.0%
Mnは鋼の焼入れ強化に有効な元素である。ここで、Mn量が1.5%未満の場合、焼入れ性が低下し、比較的冷却速度の遅い溶融亜鉛めっきラインでは、延性を劣化させるパーライトが冷却段階で形成され易くなる。また、Mn量が3.0%を超えると、溶製された鋼をスラブに鋳造する際、スラブ表面やコーナー部に割れが発生し易くなる。さらに、スラブを熱間圧延し、更に、冷間圧延および焼鈍を施して得られた鋼板では、表面欠陥が顕在化する。このため、Mn量は1.5〜3.0%の範囲とする。但し、本発明の伸びフランジ成形性向上の効果を得るためには、同時に、以下に記述するA≧0を満たすことが必要である。
P≦0.05%
Pは鋼の強化に有効な元素であり、適宜添加することができる。但し、P量が0.05%を超えると、溶融亜鉛めっき後の合金化反応性が低下し、焼けムラと呼ばれる表面外観不良を引き起こしたり、スポット溶接性が低下する。従って、P量は0.05%以下の範囲とする。
Al≦0.15%
Alは焼鈍時に、めっき性を阻害する表層へのMn、Si系の酸化物の形成を抑制し、めっき表面外観を向上させる効果がある。材質的にはAc3変態点を上昇させ、フェライト+オーステナイト2相域を拡大することで、適正焼鈍温度範囲を拡大する効果もある。しかし、Al量が0.15%を超えると、Ac3点が上昇し過ぎ、連続溶融亜鉛めっきラインでは製造不能となる。従って、Al量は0.15%以下の範囲とする。
S≦0.01%
Sは鋼中に過剰に存在すると、スラブ加熱時にオーステナイトの結晶粒界に偏析し、熱間圧延の際、鋼板表層部から赤熱脆性が起こり易くなる。特に、S量が0.01%を超えると、この悪影響が懸念される。このため、S量は0.01%以下とするが、スポット溶接における十字引張強度確保の観点から、0.005%以下がより好ましい。
N≦0.01%
Nは鋼中に過剰に存在すると、鋳造時にスラブ表面に割れが発生するばかりか、溶融亜鉛めっきを施す場合に亜鉛めっき後の鋼板の延性も劣化する。しかし、0.01%以下であれば、そのような悪影響は及ぼさない。このため、N量は0.01%以下とする。
Ti:0.05〜0.25%、(Ti/48)/(C/12):0.15〜0.8
Tiは本発明において重要な元素である。Tiは鋼中で微細炭化物を形成することにより、フェライトを析出強化し、鋼を強化する。その効果を得るには0.05%以上必要である。一方、Tiが0.25%を超えると鋼板表面品質が低下するため、Ti量は0.05〜0.25%とする。
ところで、Ti炭化物は熱延時に生成するが、冷延後の高温焼鈍により溶解し、固溶Cがオーステナイトへ濃化する。その後の冷却、溶融めっき、合金化の工程により、第2相がベイナイト主体の組織となることが必要である。しかし、そのためには、(Ti/48)/(C/12)は0.15以上必要であり、逆に0.8を超えると固溶Cが減少し、そのような組織の形成が困難になる。そのため、(Ti/48)/(C/12)は0.15〜0.8の範囲とする。なお、鋼中Tiは、スラブ加熱〜熱延の比較的高温域において、炭化物より先にTiN、TiSを形成するため、炭化物形成に消費されうるTiは、Ti
Ti−(48/14)N−(48/32)Sで定義される。
A≧O
Aは、Ti添加の場合はA=(Ti/2C)+1.7−Mn’、Ti+Nb添加の場合はA:(48Nb+93Ti)/186C+1.7−Mn’で表される、本発明において重要な項目である。なお、Mn’は鋼の焼入れ易さを表す指標であり、Cr,V,Mo添加の場合はMn’=Mn+2.5Mo+1.07Cr+2.5V、Cr,V,Mo未添加の場合はMn’=Mnである。
Aが0未満になると、フェライトの析出強化効果が低下し、逆にマルテンサイト生成による組織強化が顕著になることで、フェライトと第2相の間の強度差が増し、伸びフランジ成形性が劣化する。そのため、A≧0の範囲とする。
また、本発明では、必要に応じて、Nb,Si,B,Cr,V,Moを以下の範囲で添加することができる。
Nb≦0.25%、(Nb/93+Ti/48)/(C/12):0.15〜0.8
NbもTi同様、炭化物形成元素であり、固溶強化、析出強化に加え、焼入れ性を高めることで、組織強化にも寄与する元素であり、添加しても本発明のTiの効果を妨げることは一切無い。但し、Nb量が0.25%を超えると、焼鈍時にフェライトの再結晶温度が上昇するため、焼鈍後の鋼板組織に加工組織が残留し易くなり、得られた鋼板の延性が著しく劣化する。従って、Nbを添加する場合、この添加量は0.25%以下の範囲とする。
また、本発明において有効なベイナイト主体の第2相の形成には、(Nb/93+Ti/48)/(C/12)は0.15以上必要であり、逆に0.8を超えると固溶Cが減少し、本発明において有効なベイナイト主体の第2相の形成が困難になる。そのため、(Nb/93+Ti/48)/(C/12)は0.15〜0.8の範囲とする。
Si≦0.5%
Siは鋼の強化および強度延性バランスを向上させるのに有効な元素であり、適宜添加することができる。しかし、Si量が0.5%を超えると、溶融亜鉛めっきにおける不めっきの発生や合金化処理時の反応性低下を助長するため、表面性状や防錆性能が劣化する。そのため、Si量は0.5%以下とする。
B:≦0.0015%
Bは粒界偏析元素で、焼鈍時にオーステナイト粒界に偏析し、オーステナイトの粒成長を抑制すると同時に、冷却時のフェライト析出も抑制するため、最終的に微細な組織を得ることが出来る。結果的に、鋼の高強度化や第2相の微細分散による伸びフランジ成形性の向上にも寄与する。しかし、B量が0.0015%を超えると、細粒化効果が飽和するばかりか、フェライト析出温度がより低温化することで、TiCがフェライトヘの変態前に析出し、十分な析出強化が得られなくなってしまう。さらに、溶融亜鉛めっき後の合金化反応性が低下し、焼けムラと呼ばれる表面性状不良を引き起こす。このため、Bを添加する場合、この添加量は0.0015%以下の範囲とする。
Cr:0.05〜0.5%
Crは、特に連続溶融亜鉛めっきラインのように焼鈍後の冷却速度が遅くマルテンサイトが生成しにくいプロセスにおいては、鋼の焼入れ強化に非常に有効な元素である。この効果を得るには、0.05%以上の添加を必要とする。しかし、Cr量が0.5%を超えるとこの効果は飽和し、一方で表面品質を著しく低下させる。このため、Cr量は0.05〜0.5%の範囲とする。
V:0.05〜0.5%
Vは鋼の強化に有効な元素であり、また、Vと形成される窒化物は焼鈍板組織の細粒化に寄与する。これらの効果を得るには、Vは0.05%以上の添加を必要とする。しかし、Vの添加量が0.5%を超えると、これらの効果は飽和する。このため、Vを添加する場合、この添加量は0.05〜0.5の範囲とする。
Mo:0.05〜0.5%
Moは鋼の焼入れ強化に有効な元素であり、この効果を得るには、0.05%以上の添加を必要とする。しかし、Mo量が0.5%を超えると、この効果は飽和する。このため、Moを添加する場合、添加量は0.05〜0.5%の範囲とする。
また、上記鋼成分以外の化学成分については、特に過剰に添加しなければ本発明の効果を損なうことはない。なお、この発明で残部が実質的に鉄というのは、その他の合金元素あるいは不可避的不純物についても本発明の目的とする特性に悪影響を及ぼさない限り、含有しても良いことを意味する。
(2)鋼板組織形態
本発明鋼の鋼板組織は、フェライトおよび第2相がベイナイトを主体とするオーステナイトの低温変態相で構成される。第2相の面積分率は、強度、延性バランスを確保するため、5〜98%、好ましくは10〜90%である。また、ベイナイト主体とは、伸びフランジ性を確保するため、第2相中で50%以上、好ましくは70%以上の体積分率で構成されることを表し、ベイナイトの他、マルテンサイト、パーライト、ベイニティックフェライト、残留オーステナイトを含んでも良い。
(3)鋼板の製造方法
前述の化学成分の鋼を溶製して鋳造した後、鋳造する工程と粗圧延および仕上圧延を施す熱間圧延工程において、巻き取り温度が650℃を超えると、析出した炭化物が粗大化し、冷延焼鈍時に溶解または縮小しきらずに、粗大なまま残存してしまう。従って、十分な析出強化が得られず、伸びフランジ成形性の低下のみならず強度の低下を引き起こしてしまう。そのため、巻き取り温度は650℃以下とする。
冷延後の焼鈍過程においては、昇温〜均熱過程において起こるフェライトからオーステナイトへの変態の際に、熱延巻き取り時に生成した炭化物が溶解あるいは縮小する。そして、冷却時にオーステナイトからフェライトへの変態の際に再析出あるいはわずかなオストワルド成長により、結果的に微細炭化物として存在すると考えている。
焼鈍温度が(0.7Ac3+0.3Ac1)℃未満では、オーステナイトヘの変態が十分進まず、微細炭化物が十分析出しないこと、(1.4Ac3−0.4Ac1)℃を超えると、オーステナイトヘのC濃化が十分ではなくなり、延性を劣化させるパーライト等の生成を助長するため、焼鈍温度は(0.7Ac3+0.3Ac1)℃〜(1.4Ac3−0.4Ac1)℃の範囲とする。
また、その温度域に滞留する時間は、5秒未満では再結晶しないため十分な延性が得られないこと、一方、240秒を超えても、生産性の低下に繋がるため、滞留時間は5〜240秒とした。好ましくは15〜120秒である。さらに、焼鈍後の冷却速度については、10℃/sを超えると炭化物の生成に要する時間が短くなり、析出物量が減少し、十分な析出強化が得られないことから、10℃/s以下とした。
その後、通常の溶融亜鉛めっき工程により製造するものである。なお、焼鈍工程前に酸洗および脱脂処理等の表面清浄工程を通しても構わず、溶融亜鉛めっき後、合金化処理を行なっても良い。その場合、合金化めっき層中のFe含有率が9〜12%となるように実施するのが好ましい。
また、亜鉛めっき後の鋼帯には、形状矯正、表面粗度等の調整のために、10%以下の調質圧延を加えてもよく、さらに得られた鋼板に化成処理などの表面処理を施しても所望の特性に何ら悪影響を及ぼすことはない。以上の製造工程を経て、本発明の意図する伸びフランジ成形性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
本発明によれば、鋼の化学成分を規定するとともに、原子比(Ti/48)/(C/12)および(Nb/93+Ti/48)/(C/12)が0.15〜0.80、A=(Ti/2C)+1.7−Mn’および(48Nb+93Ti)/186C+1.7−Mn’を0以上とし、さらに、熱延時の巻き取り温度を650℃以下、冷延後の焼鈍を温度が(0.7Ac3+0.3Ac1)℃〜(1.4Ac3−0.4Ac1)℃の範囲で、時間が5〜240秒の範囲で行なった後、10℃/s以下の速度で冷却し、溶融亜鉛めっきおよびその後に合金化処理を施すことにより、鋼板組織がフェライトおよびオーステナイトの低温変態相の複合組織から成る、伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板の安定製造が可能となることから、自動車業界における利用価値は大きい。
以下、本発明の基礎となった研究結果について述べる。実験に用いた鋼板は、化学成分が質量%でC:0.04〜0.12%、Mn:1.69〜3.39%、P:0.006%、S:0.001%、Al:0.04〜0.10%、N:0.0028〜0.0062%、Nb:0〜0.05%、Ti:0〜0.15%、B:0〜0.0006%、のスラブ(板厚:30mm)に粗圧延および仕上圧延を施して得られた熱延板(板厚3.2mm)を板厚1.6mmまで冷間圧延した後、供試材をソルトバスにて実機連続溶融亜鉛めっきラインを模したヒートサイクルによって、焼鈍、溶融亜鉛めっきおよび合金化処理相当の熱処理を施した。その内容は、最高温度850℃で180秒焼鈍した後、5℃/sの速度にて冷却し、次いで溶融亜鉛めっきおよび合金化処理相当温度の550℃で90秒保持した後、空冷にて冷却するものである。
また、鋼成分については、Ti=Ti−(48/14)N−(48/32)Sで計算されるTiについて、原子比(Nb/93+Ti/48)/(C/12)を計算した。焼入れ性を示す指標として、Mn’=Mn+2.5Mo+1.07Cr+2.5Vを計算したが、上記供試鋼ではCr,V,Mo無添加なので、Mn’=Mnとした。
さらに、引張試験により鋼板の降伏強度と引張強度を測定し、その比(降伏強度/引張強度×100)を降伏比YRとして求めた。YRが高くなると,プレス成形時の寸法精度の低下、シワ等による表面精度の低下によるプレス成形性の劣化が起き、特に90%以上で顕著に認められる。
また、伸びフランジ成形性を表す指標として、穴拡げ試験により穴拡げ率λを求めた。試験は、以下の鉄鋼連盟規格で定められた方法で実施した。即ち、試験片にクリアランス12.5%で10mmφの穴を打ち抜き、バリ側を表面にセットした後、試験片を保持しながら打ち抜き穴を先端部角度60°の円錐ポンチで裏面から押し拡げ、穴縁に貫通割れが発生した時点で停止する。その時の穴径Dhについて、元の穴径からの穴拡げ率λ1を、λ1={(Dh−10)/10)×100で定義する。試験を3回実施し、λ1、λ2、
λ3を求め、その平均値をλとした。
以下に、これらの結果について示す。図1に原子比(Nb/93+Ti/48)/(C/12)とYRの関係を示した。原子比の上昇と共にYRが上昇し、原子比0.8を超えると顕著に上昇することが分かる。これは組織がフェライト単相化することと、TiCおよびNbCのピン止め効果増大による粒成長抑制効果すなわち組織微細化が要因と考えられる。そのため、(Nb/93+Ti/48)/(C/12)≦0.8が必要であることが明らかとなった。
図2に原子比(Nb/93+Ti/48)/(C/12)とMn’の関係において、λ≧100%を◎、100%>λ≧80%を○、λ<80%を×としてプロットした結果を示す。その結果、Mn’=(48Nb+93Ti)/186C+1.7で示される直線を境界線として、下の領域がλ≧80%、上の領域がλ<80%であること、即ち、A=(48Nb+93Ti)/186C+1.7−Mn’≧0の条件で、λ≧80%となることが明確となった。さらに、原子比<0.15では全てλ<80%となることも明らかとなった。総合すると、原子比(Nb/93+Ti/48)/(C/12)は0.15〜0.80の範囲が必要であることが明確となった。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものである。
以下に本発明の実施例を示す。
まず、下記表1−1,1−2に示す成分の鋼(鋼番1〜46)を実験室にて溶製した後、鋳造して、板厚50mmのスラブを作製した。次に、このスラブを板厚30mmまで分塊圧延した後、大気炉にて1270℃で1hr加熱して、熱間圧延に供した。つづいて、粗圧延および仕上圧延を経て板厚4.0mmの熱延板を作製した。なお仕上温度は860℃とした。圧延後、平均20℃/sの冷却速度で鋼板を冷却し、575〜680℃×1hrの巻取相当の熱処理を施した。次に、この熱延板を酸洗し、板厚1.6mmまで冷間圧延した。その後、供試材をソルトバスにて実機連続溶融亜鉛めっきラインに即したヒートサイクルによって、焼鈍、溶融亜鉛めっきおよび合金化処理相当の熱処理を施した。その内容は、最高温度780〜920℃で2〜250秒焼鈍した後、5〜15℃/sの速度にて冷却し、次いで溶融亜鉛めっきおよび合金化処理相当温度の550℃で90s保持した後、空冷にて冷却するものである。
Figure 0004428075
Figure 0004428075
得られた鋼板は、伸長率0.5%にて調質圧延して、引張試験および穴拡げ試験により、降伏強度(YP)、引張強度(TS)、降伏比(YR)、全伸び(EI)、穴拡げ率(λ)を測定した。引張試験は圧延方向について日本工業規格JISZ2201に記載の5号試験片を用いて行った。穴拡げ試験は前述の方法にて実施し、穴拡げ率λを求めた。また、供試材の圧延方向に平行な断面のミクロ組織をSEMにて観察し、その合金相の内訳をフェライト(F)、ベイナイト(B)、マルテンサイト(M)、パーライト(P)で示した。下記表2−1,2−2に製造条件と試験結果を示す。
Figure 0004428075
Figure 0004428075
本発明に従って得られた溶融亜鉛めっき鋼板は、λ≧80%の優れた伸びフランジ成形性を有することが分かる。また、YR≦90%でありプレス成形性に優れることが分かる。
原子比とYRの関係を示す図。 原子比とMn’の関係におけるλを示す図。

Claims (5)

  1. 化学成分が質量%でC:0.03〜0.20%、Mn:1.5〜3.0%、P:≦0.05%、S:≦0.01%、Al:≦0.15%、N:≦0.01%、Ti:0.05〜0.25%、B:≦0.0015%を含有し、さらにTi=Ti−(48/14)N−(48/32)Sで定義するTiとCの原子比(Ti/48)/(C/12)が0.15〜0.80を満たし、
    さらにA=(Ti/2C)+1.7−Mnで定義するAがA≧0を満たし、
    残部が鉄および不可避的不純物からなり、鋼板組織がフェライトおよびオーステナイトの低温変態相からなることを特徴とする伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 化学成分としてさらに、質量%でNb:≦0.25%を含有し、さらにTi=Ti−(48/14)N−(48/32)Sで定義するTi及びNbとCの原子比(Nb/93+Ti/48)/(C/12)が0.15〜0.80を満たし、さらにA=(48Nb+93Ti)/186C+1.7−Mnで定義するAがA≧0を満たすことを特徴とする請求項1に記載の伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 化学成分としてさらに、質量%で、Si:≦0.5%を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. 化学成分としてさらに、質量%でCr:0.05〜0.5%、V:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜0.5%のうち1種または2種以上を含有し、Mn’=Mn+2.5Mo+1.07Cr+2.5VにおいてA=(48Nb+93Ti)/186C+1.7−Mn’で定義されるAがA≧0を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 請求項1乃至4いずれかに記載の成分をもつスラブを熱間圧延した後、650℃以下で巻き取って熱延鋼板を得る工程と、酸洗、冷間圧延した後、温度が(0.7Ac3+0.3Ac1)℃〜(1.4Ac3-0.4Ac1)℃で、時間が5〜240秒の再結晶焼鈍を施した後、10℃/s以下の速度で冷却する工程と、溶融亜鉛めっきを施した後、合金化処理を施す工程とを具備することを特徴とする伸びフランジ成形性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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