JP4423470B2 - ロールの製造方法及びロール - Google Patents
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そこで、例えば、特許文献1のように、ロール胴部の表層部が硬質の金属(高速度鋼系多合金白鋳鉄)で構成された製品ロールが開示されている。この製品ロールは、芯材の外周に硬質の金属層を形成したロール用素材から、ロール胴部とこのロール胴部の軸方向両側部に設けられる軸部とが一体となったロールを削り出した後、このロールを所定の調質処理及び加工処理を施すことで製造されている。
これにより、従来使用したダクタイル鋳鉄やアダマイト鋳鉄で構成される製品ロールと比較して、耐摩耗性、耐肌荒れ性に優れ、数倍の寿命を有する製品ロールとして、製造される圧延材の品質や生産性の向上に大きく寄与している。
例えば、ロール用素材から軸部が長いロールを削り出す場合、削り出し時における余分な削り代が多くなり、製造時間を現状より短縮することが困難であった。また、削り代の増加に伴って削り刃等のランニングコストがかかるため経済的でなかった。
また、このようにロールの軸部が長い場合、1つのロール用素材から複数本のロールを取り出すことが困難になるため、例えば、複数本のロールを製造する必要がある場合は、新たにロール用素材を製造する必要があり、製品ロールの納期短縮や製造コストの削減を図ることが難しかった。
前記ロール胴部の軸方向端部中心に凹部を形成し、前記軸部の軸方向端部中心に凸部を形成して、前記ロール胴部の前記凹部に前記軸部の前記凸部を挿入し、前記ロール胴部に対する前記軸部の位置決めを行った後、前記ロール胴部と前記軸部との間に形成される前記開先を溶接し、前記開先の溶接は、ガスシールドアーク溶接で行い、かつ溶接トーチに対し、前記ロール胴部及び前記軸部をその軸心を中心として回転させながら行い、更に、前記開先の溶接は、前記ロール胴部と前記軸部との接合金属上に生成するスラグを除去しながら行われる。
請求項1記載のロールの製造方法において、製造されたロールは、使用目的に応じた所定の加工処理が施された後、例えば、製鉄圧延設備における圧延用ロール、矯正用ロール等の製品ロールに使用されるものである。
また、ロール胴部の両側部に設けられる各開先は、例えば、H形となっている。
請求項2記載のロールの製造方法において、ロール胴部の両側部にそれぞれ設けられる各軸部は、その一方側が溶接して接合され、他方側が例えば従来の方法を用いてロール胴部と一体的に削り出される。このような製造方法を適用する場合としては、例えば、一方側の軸部の長さと比較して他方側の軸部の長さが短い(例えば、長さの長い軸部の1/5〜3/4倍程度)場合等がある。なお、長さの長い軸部をロール胴部に接合し、長さの短い軸部をロール胴部と一体的に削り出すことが好ましい。
請求項3記載のロールの製造方法において、ロール用素材は、例えば、上記した連続注入クラッド法とも呼ばれるCPC(Continuous Pouring process for Cladding)法により製造されるので、熱の集中度が極めて小さく、従来の溶接肉盛法では溶接不可能な材質、例えば、過共晶材等で構成される鋳掛け肉盛層の形成が可能になる。
請求項4記載のロールの製造方法において、スラグ除去部は他方側に錘が配置されたてこ部材に設けられているので、スラグ除去部が錘によって接合金属の表面に所定の押圧力で接触した状態を維持できる。また、開先の溶接の進行に伴って、接合金属の厚みが増加していくため、スラグ除去部もロールの半径方向外側に移動しながら、接合金属上に生成したスラグを除去できる。
また、ロール胴部と軸部とを接合する高張力鋼は、ハイテンとも呼ばれ、引張強さを向上させると共に溶接性にも優れ、接合部の強度を高めることが可能な材質である。
20N/mm2、伸びが12〜22%、及び絞りが52〜62%である。ロール胴部と軸部との接合部の耐力が580N/mm2未満、伸びが12%未満、又は絞りが52%未満の場合、製造されたロールの品質が低下する。一方、接合部の耐力、伸び、又は絞りが高くなれば、ロールの品質を更に高めることができるが、必要以上に高めればロールの製造コストがかかり不経済である。
従って、ロール胴部と軸部との接合部の耐力の下限を580N/mm2、好ましくは590N/mm2にし、上限を620N/mm2、好ましくは610N/mm2にする。また、接合部の伸びの下限を12%、好ましくは15%にし、上限を22%、好ましくは19%にする。そして、接合部の絞りの下限を52%、好ましくは55%にし、上限を62%、好ましくは59%にする。
また、ロール胴部と各軸部とを接合してロールを製造するので、ロールの使用目的に応じて、ロール胴部と軸部とを同一材質又は異材質で構成することができる。
また、例えば、複数本のロールが必要な場合でも、従来のように、新たにロール用素材を製造することなくロールを製造できるので、納期短縮や製造コストの削減を図ることができる。
また、ロール胴部に軸部の一部を挿入しておくことで、接合部分の曲げに対する強度を高めることができる。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係るロールの製造方法を使用して製造したロール及び製品ロールの説明図、図2(A)は同ロールの製造方法に使用されるロール用素材製造用の組み合わせモールドの説明図、(B)はロール用素材の説明図、図3は同ロールの製造方法で使用する溶接装置の説明図、図4は同ロールの製造方法の説明図、図5は同ロールの製造方法に使用するスラグ除去装置の説明図である。
ロール用素材18は、例えば、特開2000−158020号公報に開示された方法等で製造できる。
この方法は、図2(A)に示すように、電磁誘導加熱コイル19が内部に配置された中空環状の耐火枠20を備えた耐火性加熱型21と、耐火性加熱型21の下部に配置され、これと同軸の内孔を有する冷却型22とを、一体的に配置した組み合わせモールド23を使用する。なお、組み合わせモールド23の下部には、油圧シリンダーなどの昇降手段(図示しない)によって上下させることができ、上部に配置された中実又は中空の芯材24を徐々に降下させる昇降装置25を備えている。
なお、芯材24はクロム−モリブデン鋼からなり、溶湯27は高速度鋼系多合金白鋳鉄(高速度鋼の一例)で構成されている。
これにより、図2(B)に示すようなロール用素材18が製造される。
そして、機械加工によって、ロール胴部12の軸方向両端部に、その軸方向に突出し、軸方向に観て円形となる接合部34、35を形成する。
また、このロール胴部12の軸方向両端部に設ける軸部13、14も、クロム−モリブデン鋼からなる軸部用素材(図示しない)を機械加工によって研削し、製品形状よりも外形を大きく造った後、更に軸部13、14の軸方向一端部に、ロール胴部12の接合部34、35と同一形状となった接合部36、37を形成する。
これにより、ロール胴部12の各凹部38、39に、軸部13、14の凸部40、41をそれぞれ挿入し、ロール胴部12に対する軸部13、14の位置決めを行う。このとき、ロール胴部12の接合部34、36と軸部13、14の接合部35、37によってH形の開先16、17(例えば、深さが70〜150mm程度)が形成される。なお、この開先16、17の隙間(例えば、最大拡幅部が10〜30mm程度)は、ロール15の軸心から外周方向へ向かって拡幅している。
この溶接には、例えば、図3に示す溶接装置42を使用できる。
溶接装置42は、溶接ワイヤ43を案内すると共に溶接電流を供給するコンタクトチップ44が先側に設けられた溶接トーチ(溶接ノズルともいう)45を有している。この溶接トーチ45の外径は、例えば、5〜10mm程度(本実施の形態では8mm)、長さは、例えば、200〜300mm程度(本実施の形態では250mm)となっており、比較的長尺なものである。
また、溶接装置42は、溶接ワイヤ43が溶融した溶融池付近に配置される2本の偏平ノズル(図示しない)と、開先16、17上方に配置されるボックス型ノズル(図示しない)を有し、各ノズルからアルゴンや炭酸ガス等のシールドガスを流して、溶接部を周囲の大気から保護している。
このとき、溶接トーチ45は、溶接時に検出される溶接電流及びアーク電圧のいずれか一方又は双方により、開先16、17と溶接トーチ45の揺動中心とのずれが検出される。このため、例えば、モニターなどによって溶接電流の変化に対応したリサージュ波形を検出し、このリサージュ波形が対称性を有するずれのない波形になるように、開先16、17に対する溶接トーチ45の軸を移動させ修正して、自動的に溶接線倣いを行う。
そして、アーク49の高速回転は、溶接ワイヤ43先端の溶滴に回転遠心力が働いて横方向に飛ぶと共に、アーク49もそれに引きずられる形で横に広がり、その結果、開先16、17の溶け込み形成能力を増すことができる。これにより、ワイヤ溶融現象を良好な状態にできる。
なお、溶接時には、図4に示すように、ロール胴部12と軸部13、14とを枠材50によってシールドしているので、溶接部分への外気(酸素)の侵入を抑制、更には防止した状態で、溶接を実施できる。
また、溶接時には、ロール胴部12と軸部13、14との接合金属51上に生成するスラグを除去しながら行う。
スラグ除去装置53は、一方側に接合金属51の上面に当接するスラグ除去部54が設けられ、他方側に錘55が設けられたてこ部材56と、てこ部材56を上下方向に回動可能に支持する支持部材57とを有している。
支持部材57の下端部には、支持部材57に対して所定の角度θ(例えば、30〜50度の範囲内、好ましくは35〜45度の範囲内)に傾斜した状態でガイド部58が設けられ、このガイド部58に、先部にスラグ除去部54が設置されたスライド部59が設けられている。なお、ガイド部58の側部には長手方向に2個の突起部60、61が設けられ、スライド部59にはこの2個の突起部60、61がそれぞれ装入可能で、スライド部59の長手方向に設けられた2個の長孔62、63が設けられている。
これにより、ガイド部58の長手方向に渡ってスライド部59を往復移動、即ちガイド部58及びスライド部59の全体の長さを伸縮させることができる。
これにより、スラグ除去部54を接合金属51の表面に連続的に当接させながら、接合金属51の厚みの増加に伴って、自動的にスラグ除去部54をロール15の半径方向外側に移動させて、スラグの除去を行うことができる。従って、接合金属にスラグを巻き込ませることを抑制、更には防止することができる。
そして、調質処理されたロール15を、圧延用ロール、矯正用ロール等に使用可能な製品形状(図1の二点鎖線)に機械加工(仕上げ加工)して、製品ロール68を製造する。
製品ロールの使用時においては、ロール胴部と軸部との接合部分の耐久性が問題となるため、継手の評価試験「JIS Z 3040」に基づき、接合部分の健全性についての評価試験を行った。なお、引張試験は「JIS Z 3121」の4号試験片を適用し、表曲げ試験は「JIS Z 3122」の突合わせ溶接継手の曲げ試験方法を適用して評価した。
引張試験は、本発明の実施例として、高張力鋼(780N/mm2級)で溶接したものと、従来例として、現状使用している溶接による接合がないものとを用いて行った。この結果を表1に示す。
なお、上記したように、溶接により接合した部分には欠陥が生じ易い。そこで、この欠陥の影響について、表曲げ試験を用いて説明する。
この結果を表2に示す。
以上のことから、ロール胴部と軸部とを溶接し接合したロールから製造された製品ロールは、耐荷重性の面において、従来の一体型の製品ロールと比較しても問題ない品質を備えるという結果が得られた。
また、前記実施の形態においては、ロール胴部と、このロール胴部の軸方向両側部にそれぞれ設けられる軸部とを、溶接により接合した場合について説明した。しかし、ロール胴部の軸方向の一側部に設けられる軸部のみを溶接により接合し、他方側の軸部を従来の削り出しにより、ロール胴部と一体的に製造することもできる。
そして、前記実施の形態においては、ロール用素材を、組み合わせモールドを使用して製造した場合について説明したが、ロール用素材を他の方法、例えば、従来公知の他の鋳掛け肉盛法によって形成することも可能である。
Claims (7)
- クロム−モリブデン鋼からなる芯材と、該芯材の外周に硬質の鋳掛け肉盛層が形成されたロール胴部と、
該ロール胴部の芯材の両側部にそれぞれ設けられると共に、クロム−モリブデン鋼からなる軸部とを有し、
前記ロール胴部の芯材の両側部にそれぞれ開先を設けて前記軸部を配置し、前記開先を溶接して前記芯材と前記軸部とを接合するロールの製造方法であって、
前記ロール胴部の軸方向端部中心に凹部を形成し、前記軸部の軸方向端部中心に凸部を形成して、前記ロール胴部の前記凹部に前記軸部の前記凸部を挿入し、前記ロール胴部に対する前記軸部の位置決めを行った後、前記ロール胴部の芯材と前記軸部との間に形成される前記開先を溶接し、
前記開先の溶接は、ガスシールドアーク溶接で行い、かつ溶接トーチに対し、前記ロール胴部及び前記軸部をその軸心を中心として回転させながら行い、
更に、前記開先の溶接は、前記芯材と前記軸部との接合金属上に生成するスラグを連続的に除去しながら行う
ロールの製造方法。 - クロム−モリブデン鋼からなる芯材と、該芯材の外周に硬質の鋳掛け肉盛層が形成されたロール胴部と、
該ロール胴部の芯材の両側部にそれぞれ設けられると共に、クロム−モリブデン鋼からなる軸部とを有し、
前記ロール胴部の芯材の一側部に開先を設けて前記軸部を配置し、前記開先を溶接して前記芯材と前記軸部とを接合するロールの製造方法であって、
前記ロール胴部の軸方向端部中心に凹部を形成し、前記軸部の軸方向端部中心に凸部を形成して、前記ロール胴部の前記凹部に前記軸部の前記凸部を挿入し、前記ロール胴部に対する前記軸部の位置決めを行った後、前記ロール胴部の芯材と前記軸部との間に形成される前記開先を溶接し、
前記開先の溶接は、ガスシールドアーク溶接で行い、かつ溶接トーチに対し、前記ロール胴部及び前記軸部をその軸心を中心として回転させながら行い、
更に、前記開先の溶接は、前記芯材と前記軸部との接合金属上に生成するスラグを連続的に除去しながら行う
ロールの製造方法。 - 前記スラグの除去は、一方側に前記接合金属の上面に当接するスラグ除去部が設けられ、他方側に錘が設けられたてこ部材と、該てこ部材を上下方向に回動可能に支持する支持部材とを有するスラグ除去装置を用い、前記スラグ除去部を前記接合金属の表面に連続的に当接させながら、前記スラグ除去部を半径方向外側に移動させて行う
請求項1または請求項2に記載のロールの製造方法。 - 前記芯材の外周に形成される硬質の鋳掛け肉盛層は高速度鋼からなる
請求項1、請求項2または請求項3に記載のロールの製造方法。 - 前記芯材と前記軸部とを接合する金属は高張力鋼からなる
請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載のロールの製造方法。 - 前記芯材と前記軸部とを接合して製造したロールを、粗加工して調質処理を施し、更に仕上げ加工を施して製品ロールにし、しかも、前記調質処理後の前記芯材と前記軸部との接合部は、耐力が580〜620N/mm2、伸びが12〜22%、及び絞りが52〜62%である
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5に記載のロールの製造方法。 - 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のロールの製造方法によって製造された
ロール。
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