JP4423001B2 - 電界放出素子および電界放出ディスプレイ - Google Patents

電界放出素子および電界放出ディスプレイ Download PDF

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Description

本発明は、電界放出素子および電界放出ディスプレイに関する。
現在、ディスプレイとしては、たとえば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、電界放出ディスプレイ、陰極線管ディスプレイなどが知られている。これらの中でも、電界放出ディスプレイは、薄型化、平面化および大型化が可能であり、視野角が広く、発色性および応答性に優れることから、家庭用、産業用の各種電子・電気機器用のディスプレイとして注目を集めている。特に、モバイル・ウェアラブル機器のプラットフォーム、平面ディスプレイ、屋外設置用の大型ディスプレイなどとしての開発が進められている。
図4は、従来の電界放出ディスプレイの構造を簡略化して示す模式図である。電界ディスプレイ20は、陰極用基板2と、陰極用基板2の表面2aに形成された陰極3と、陰極3の表面3aに形成されたゲート電極4と、陰極3の表面3aに円錐形状のマイクロチップとして形成されて図示しない電界放出素子を含有する電界放出層15と、陰極用基板2に平行に配置された陽極用基板6と、陽極用基板6の陰極用基板2に対向する面6aに形成された陽極7と、陽極7の陰極3に対向する表面7aに形成された蛍光体8とを含んで構成される。電界ディスプレイ20においては、陰極3およびゲート電極4に図示しない電源から電圧が印加されると、陰極3とゲート電極4との間の電圧差によって、電界放出層15から図示しない電子が放出される。この電子は、陽極7の方向、すなわち矢符9の方向に進み、陽極7の表面7aに形成された蛍光体8に衝突し、可視光10を発生させる。可視光10は陽極7および陽極用基板6を透過し、図示しないスクリーン表面に視認可能な画像が表示される。電界ディスプレイ20の内部は、電界放出層15に水素などが付着すると電子放出特性が変化し、一定のディスプレイ性能が得られないので、真空状態に保たれる。
従来の電界放出ディスプレイにおいて、電界放出層に含まれる電界放出素子としては、Moチップ、Siチップ、各種金属繊維、ダイヤモンドなどが挙げられる。このうち、
Moチップ、Siチップ、金属繊維などはたとえば円錐形状のマイクロチップに成形され、またダイヤモンドは薄膜状に形成されてそれぞれ使用される。
しかしながら、前述のような電界放出素子を含む電界放出層を用いて、スクリーンに視認可能な画像を表示するには、非常に高い作動電圧が必要になるけれども、非常に高い作動電圧の印加は種々の欠点を生み出す原因になる。たとえば、電界放出ディスプレイの消費電力が大きくなり、その実用性が損なわれる。また、大きな動作電圧をかけるので、電界放出素子が破損し易くなるとともに、高い動作電圧に耐えることができる構造が必要になり、構造上の制約を受ける。さらに、高い動作電圧を印加しても、スクリーンにおける輝度が不充分になり、表示画像が、視認性の低い、不鮮明なものになることがある。加えて、陰極用基板上にダイヤモンド薄膜を形成する場合には、高温下での化学処理が必要になるので、陰極用基板が破損するという問題がある。
従来の電界放出素子の欠点に鑑み、電界放出素子としてカーボンナノチューブを用いることが提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)。特に、特許文献5および特許文献6の従来技術には、カーボンナノチューブを、その繊維の伸長方向が蛍光体の陰極を臨む面に対して垂直になるように、陰極表面に成長させた電界放出素子が記載されている。
高純度のカーボンナノチューブは優れた電子放出性を有するので、作動電圧を低くすることができ、また安定な物質であるので、電界放出ディスプレイ内部の真空度を低くすることができるといった好ましい特性を有する。しかしながら、高純度のカーボンナノチューブは実験室レベルでは製造可能であるけれども、工業的規模で一定の高純度品を製造することは現状では非常に困難である。ましてや、特許文献5および特許文献6の従来技術のように、陰極表面に一定の特性を有するカーボンナノチューブを成長させることは、工業的には不可能である。このように、高純度カーボンナノチューブの工業的な安定供給が不可能な現状において、電界放出素子としてカーボンナノチューブを用いた電界放出ディスプレイは、実用化されるには至っていない。
さらに、カーボンナノチューブを電界放出素子として用いた電界放出ディスプレイの試作品では、スクリーンの輝度は、従来の電界放出素子を用いたディスプレイに比べて向上しているけれども、さらなる向上が望まれる。
一方、膨張化炭素繊維は、公知の物質である(たとえば、特許文献7参照)。しかしながら、特許文献7の従来技術では、膨張化炭素繊維が油分などの吸着剤として使用できることが記載されているのみであり、これを電界放出素子として用いることについては一切開示がない。
特開平9−221309号公報 特開平10−12124号公報 特開平10−149760号公報 特開2001−48509号公報 特開2001−167721号公報 特開2001−176431号公報 特開2001−207376号公報
本発明の目的は、カーボンナノチューブと同程度またはそれ以上の優れた電界放出性を有し、製造が容易で、工業的規模の安定供給が可能な電界放出素子および、該電界放出素子を用いた電界放出ディスプレイを提供することである。
本発明は、小繊維の集合体である膨張化炭素繊維、小繊維の集合体でありかつその表面に鱗片状の小片が欠落して形成される凹所を有する膨張化炭素繊維および膨張化炭素繊維の表面から欠落した鱗片状小片から選ばれる1種または2種以上を含有してなることを特徴とする電界放出素子である。
さらに本発明の電界放出素子は、前述の小繊維の繊維径が10〜150nm(10nm以上150nm以下)であることを特徴とする。
さらに本発明の電界放出素子は、前述の膨張化炭素繊維が、炭素繊維の層間化合物を加熱することにより製造されることを特徴とする。
また本発明は、電界放出素子を含んで形成され電圧の印加により電子を発生する電界放出層から発生する電子を蛍光体に衝突させ、この衝突による発光をスクリーンに表示する電界放出ディスプレイにおいて、電界放出素子が、前述のうちのいずれかの電界放出素子であることを特徴とする電界放出ディスプレイである。
さらに本発明の電界放出ディスプレイは、電界放出層が、前述のうちのいずれかの電界放出素子と導電性材料とを含んで形成され、電界放出層中に電界放出素子が一定方向に配向したことを特徴とする。
さらに本発明の電界放出ディスプレイは、電界放出層中の電界放出素子を、その繊維の伸長方向が蛍光体の電界放出層を臨む面に対して垂直になるように配向させたことを特徴とする。
本発明によれば、電界放出性に優れた電界放出素子として、小繊維の集合体である膨張化炭素繊維、小繊維の集合体でありかつその表面に鱗片状の小片が欠落して形成される凹所を有する膨張化炭素繊維、および膨張化炭素繊維の表面から欠落した鱗片状小片が提供される。
本発明者の研究によれば、小繊維の集合体である膨張化炭素繊維、および、小繊維の集合体でありかつその表面に鱗片状の凹所を有する膨張化炭素繊維は、繊維の伸長方向の先端面に電界が集中し易いので、比較的低い電圧を印加しても、主に該先端面から多量の電子が放出され、高電流密度が実現されることが見出された。
このような特性を有する膨張化炭素繊維を電界放出素子として用いる場合には、カーボンナノチューブと同等またはそれ以上の優れた電界放出性が発揮され、従来の電界放出ディスプレイにおける作動電圧よりも著しく低い作動電圧で、輝度が高くかつ鮮明な画像をスクリーンに表示するのに充分な量の電子を放出することができる。特に、画像の輝度は、カーボンナノチューブを用いて形成される画像の輝度よりもさらに高く、画像品位の向上は著しい。
また膨張化炭素繊維は、一般に市販され多量入手が可能な炭素繊維を原料とし、簡易な方法により製造できるので、工業的規模での安定供給が可能であり、画像輝度の向上以外にも、カーボンナノチューブに対して有利な点を持つ。
さらに膨張化炭素繊維は、優れた耐久性を有し、長期間にわたって電圧の印加を受けても、ほとんど劣化することがないので、その電界放出性を高水準で維持することができる。
したがって、膨張化炭素繊維を電界放出素子として含む電界放出ディスプレイは、高輝度の高品位画像を長期間にわたって表示することができ、作動電圧ひいては消費電力を低くすることができる。また、膨張化炭素繊維を電界放出素子として含む電界放出ディスプレイは、作動電圧を低く抑えることができるので構造上の制約がなく、かつ膨張化炭素繊維が容易に製造できることから、構造の簡略化が可能であり、かつ低い製造コストで、工業的規模の生産が可能である。
さらに本発明者の研究によれば、膨張化炭素繊維の表面から欠落した鱗片状小片についても、膨張化炭素繊維ほどではないけれども、良好な電界放出性を示し、電界放出素子として有用であることが確認された。
本発明によれば、小繊維の集合体である膨張化炭素繊維の中でも、繊維径が10〜150nmであるナノサイズの小繊維の集合体である膨張化炭素繊維が好ましい。該膨張化炭素繊維は、繊維の伸長方向の先端面がナノサイズの微細な断面の集合体になっているので、先端面への電界の集中がさらに顕著になり、電界放出性が一層向上する。したがって、輝度を一層向上させること、印加電圧をさらに低下させることなどが容易になる。
本発明によれば、本発明の電界放出素子に用いる2種の膨張化炭素繊維は、炭素繊維の層間化合物を加熱するという、特別な装置を必要としない非常に簡単でかつ低コストの方法で製造できるので、特に工業的に有利である。
本発明によれば、2種の膨張化炭素繊維の原料になる炭素繊維として、メゾフェーズピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維および気相成長系炭素繊維から選ばれる1種または2種以上を好ましく使用でき、これらの炭素繊維は市販され、大量に入手可能な材料であるため、本発明の電界放出素子を工業的に大量供給する上で有利である。
本発明によれば、本発明の電界放出素子を含む電界放出層を備える電界放出ディスプレイが提供される。該電界放出ディスプレイは、電界放出ディスプレイが本来有する好ましい特性(平面化、薄型化、大型化が容易で、視野角が広く、発色性および応答性に優れるという特性)を有するとともに、作動電圧を低くすることができるので、消費電力が小さく、構造を簡略化することができる。また、電界放出素子が安価に供給されるので、電界放出ディスプレイ自体の製造が容易であり、製造コストも低くすることができる。さらに、電界放出素子の電子放出量が大きく、スクリーンにおける輝度が著しく高く、カーボンナノチューブを電界放出素子に用いる場合よりも輝度が高いので、非常に視認性の良い鮮明な高品位画像を表示することができる。
本発明によれば、本発明電界放出素子と導電性材料とを含んで形成される電界放出層において、本発明電界放出素子を同一方向に配向させることによって、蛍光体に対して充分量の電子が均一に放出されるので、スクリーンに表示される画像の輝度および鮮明度を一層向上させることができる。
本発明によれば、本発明の電界放出素子と導電性材料とを含んで形成される電界放出層において、本発明電界放出素子を、繊維の伸長方向が蛍光体の電界放出層を臨む面に対して垂直になるように配向させることによって、電界放出素子から放出される電子量がさらに増加し、スクリーンに表示される画像の輝度および鮮明度の顕著な向上を図ることができる。
本発明の電界放出素子は、小繊維の集合体である膨張化炭素繊維、小繊維の集合体でありかつその表面に鱗片状の小片が欠落して形成される凹所を有する膨張化炭素繊維および膨張化炭素繊維の表面から欠落した鱗片状小片から選ばれる1種または2種以上を含んで構成される。
これらの中でも、電界放出性能を考慮すれば、小繊維の集合体である膨張化炭素繊維および小繊維の集合体でありかつその表面に鱗片状の小片が欠落して形成される凹所を有する膨張化炭素繊維が好ましく、小繊維の集合体である膨張化炭素繊維が特に好ましい。
小繊維の集合体である膨張化炭素繊維は、たとえば、特開2001−207376号公報に記載の方法に従い、炭素繊維から炭素繊維層間化合物を合成し、この炭素繊維層間化合物を膨張化処理することにより製造できる。
炭素繊維としては、たとえば、メゾフェーズピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、気相成長系炭素繊維などを使用できる。このような炭素繊維は、市販されているので、容易に入手できる。炭素繊維の繊維径および繊維長は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できる。たとえば、メゾフェーズピッチ系炭素繊維の繊維径は通常2〜20μm(2μm以上20μm以下)、好ましくは5〜10μm(5μm以上10μm以下)である。PAN系炭素繊維の繊維径は通常2〜20μm(2μm以上20μm以下)、好ましくは4〜14μm(4μm以上14μm以下)である。このように、繊維径が2〜20μmである炭素繊維を好ましく使用できる。また繊維長は特に制限は無いけれども通常0.05mm〜10cm(0.05mm以上10cm以下)である。
炭素繊維層間化合物の合成は、たとえば、炭素繊維を電解液中で電気化学処理することにより、炭素繊維層間化合物を製造することができる。電解液としては、たとえば、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸、蟻酸、酢酸、クエン酸などの有機酸などの水溶液を使用できる。これらの中でも、無機酸の水溶液が好ましい。電解液中の酸濃度は特に制限されず、炭素繊維の種類および量、酸の種類、得ようとする層間化合物の形成次数などに応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、通常は0.01〜30モル/リットル、好ましくは0.1〜20モル/リットルとすればよい。より具体的には、たとえば、硝酸は0.1〜20モル/リットル、好ましくは10〜15モル/リットルの濃度で用いるのがよく、硫酸は0.1〜18モル/リットル、好ましくは0.5〜9モル/リットルの濃度で用いるのがよい。
電気化学処理は、炭素繊維を電解液中に浸漬し、電解液に通電することにより行われる。通電は、通常0.1〜5A程度の定電流を30分〜2時間程度流し、電荷量が800〜1500クーロン程度に達するまで行われる。これにより、炭素繊維層間化合物が得られる。
炭素繊維層間化合物の中でも、後述する膨張化処理による膨張の度合いの大きさなどを考慮すると、ステージ1、2、3のものが好ましく、ステージ1、2のものが特に好ましい。ステージ1とは、炭素繊維中の黒鉛層毎に層間化合物が形成されたものを指す。ステージ2とは、炭素繊維中の黒鉛層一層おきに層間化合物が形成されたものを指す。ステージ3とは、炭素繊維中の黒鉛層二層おきに層間化合物が形成されたものを指す。
次いで、炭素繊維層間化合物に膨張化処理を施す。膨張化処理は、たとえば、炭素繊維層間化合物を加熱することにより行われる。加熱は、通常、空気雰囲気中で、200℃以上、好ましくは200〜1200℃程度の温度下に行われ、5秒〜2分程度で終了する。加熱装置としては公知のものを使用でき、たとえば、管状炉などが挙げられる。加熱によって、炭素繊維層間化合物の層間に挿入された化合物が分解され、それに伴って層と層との間が押し拡げられ、炭素繊維層間化合物は膨張する。膨張の度合いは、炭素繊維の層間に挿入される層間化合物の種類および量、膨張化処理時の加熱温度および加熱時間などを適宜選択することによって調整することができる。この処理によって、炭素繊維層間化合物は、ナノサイズの微細な繊維径を有する炭素繊維、いわゆる小繊維に分離して膨張する。
このようにして、本発明の電界放出素子として使用する膨張化炭素繊維が得られる。膨張化炭素繊維は、その繊維径が原料炭素繊維の繊維径の2〜20倍(2倍以上20倍以下)に膨張したものである。
上記の製造法において、原料である炭素繊維としてメゾフェーズピッチ系炭素繊維を用いると、主に、繊維径がナノサイズである小繊維(小炭素繊維)の集合体である膨張化炭素繊維を得ることができる。小繊維の繊維径は特に制限されないけれども、通常は10〜150nmであり、好ましくは30〜100nmである。
上記の製造法において、原料である炭素繊維としてPAN系炭素繊維を用いると、主に、繊維径がナノサイズである小繊維の集合体でありかつその表面に鱗片状小片が欠落して形成される凹所(窪み)を有する膨張化炭素繊維および鱗片状小片を得ることができる。鱗片状小片の剥落は、膨張化処理の際に起こる。この膨張化炭素繊維における小繊維の繊維径は特に制限されないけれども、通常は10〜150nmであり、好ましくは30〜100nmである。また鱗片状小片の粒径は数十nm〜数μm程度である。PAN系炭素繊維を用いる場合は、膨張化処理の加熱条件により、鱗片状小片の欠落が起こらないこともある。
原料である炭素繊維の繊維長は、電気化学処理および膨張化処理を施しても、ほぼ元の繊維長に維持される。したがって、得られる膨張化炭素繊維の繊維長は、原料の炭素繊維の繊維長とほぼ同じである。
本発明の電界放出素子は、後述する電界放出ディスプレイに使用できるだけでなく、たとえば、マイクロ波パワー増幅用クライストロン、進行波管、イオンガン、電子ビームリソグラフィ、エネルギー加速器、自由電子レーザ、電子顕微鏡、電子マイクロプローブなどにも適用できる。
本発明の電界放出ディスプレイは、電界放出層に電圧を印加することにより発生する電子を蛍光体に衝突させ、この衝突による発光をスクリーンに表示する電界放出ディスプレイにおいて、電界放出層が、本発明の電界放出素子を含むことを特徴とする。
すなわち本発明の電界放出ディスプレイは、電界放出層が本発明の電界放出素子である膨張化炭素繊維を含む以外は、従来の電界放出ディスプレイと同様の構成を有する。
図1は本発明の実施の一形態である電界放出ディスプレイ1の構成を簡略化して示す模式図である。電界放出ディスプレイ1は、電界放出層5が本発明の電界放出素子5aを含んで形成されること以外は、図4に示す従来の電界放出ディスプレイ20と同様の構成を有するので、同一の構成部分については、同一の参照符号を付して説明を簡略化する。
電界放出ディスプレイ1は、陰極用基板2と、陰極用基板2の表面2aに形成された陰極3と、陰極3の上に支持層4aを介して積層されたゲート電極4と、陰極3の表面3aに形成された電界放出層5と、陰極用基板2に平行に配置された陽極用基板6と、陽極用基板6の陰極用基板2に対向する面6aに形成された陽極7と、陽極7の陰極2に対向する面7aに形成された蛍光体8とを含んで構成される。
陰極用基板2としては公知のものを使用でき、たとえば、ガラス、石英、シリコン、アルミナなどからなる基板が挙げられる。
陰極用基板2の表面2aに形成される陰極3としては、たとえば、クロム膜、チタニウム膜、タングステン膜、アルミニウム膜などが挙げられる。
ゲート電極4としては、たとえば、クロム膜、チタニウム膜、パラジウム膜などが挙げられる。
陰極3の表面3aには、本発明の電界放出素子5aを含む電界放出層5が形成される。電界放出層5は、たとえば、陰極3の表面3aに本発明の電界放出素子5aを物理的または化学的にボンディングすることによって形成することができる。たとえば、陰極3の表面3aに導電性材料を塗布し、この導電性材料により電界放出素子5aを固定化することによって、電界放出層を形成することができる。このとき、電界放出素子5aを、繊維の伸長方向が蛍光体8の陰極3を臨む面に垂直になるように配向して配置することにより、高い電界放出特性を有する電界放出層5が形成される。ここで導電性材料としては、電界放出素子5aを固定化できるものであれば特に制限はないけれども、銀ペーストなどが挙げられる。
また、本発明の電界放出素子5aは繊維状の形状を有するので、これを適当な導電性材料とともに熱可塑性樹脂に配合して成形すると、本発明の電界放出素子5aが一定方向に配向した樹脂成形体が得られる。この樹脂成形体を電界放出層5として用いることもできる。この樹脂成形体を陰極3の表面3aに配置する場合には、電界放出素子5aの繊維伸長方向(配向方向)が、蛍光体8の電界放出層5を臨む面に対して垂直になるように配置するのが好ましい。ここで導電性材料としては公知のものを使用でき、たとえば、導電性金属粒子などが挙げられる。
さらに、電界放出層5は、本発明の電界放出素子5aを、好ましくは適当な導電性材料とともに、水、アルコールその他の有機溶媒などの適当な溶媒に分散懸濁させ、得られる懸濁液をスプレーコート、スピンコート、ゾルゲル法、電気泳動などの方法で陰極表面に塗布し、乾燥させることにより形成できる。本発明の電界放出素子5a、導電性材料およびバインダ樹脂を適当な溶媒に分散させてスラリーまたはペーストを調製し、このスラリーまたはペーストを前述の方法と同様にして基板表面に塗布するかまたはスクリーン印刷することによって電界放出層5を形成することもできる。さらに、陰極3の表面3aに、本発明の電界放出素子5aを主に含む円柱状、円錐状などの任意形状のマイクロチップである電界放出層5を複数個形成することもできる。
陽極用基板6としては、陰極用基板と同様のものを使用できる。
陽極用基板6の表面6aに形成される陽極7としては公知のものを使用でき、たとえば、インジウム酸化物、インジウム−錫酸化物などからなる透明導電性膜などが挙げられる。
陽極7の上に形成される蛍光体8には、この分野で常用されるものをいずれも使用できる。通常は、赤色、緑色、青色の発光を起こす3種類の蛍光物質が使用される。
本発明の電界放出ディスプレイにおいては、たとえば、陰極3およびにゲート電極4に電圧を印加し、電界放出層5に数十V〜2.0kV程度の電圧差を与えることによって、充分な量の電子(電流密度に換算すると1000〜10000μA/dm)が陽極7に向かって放出され、陽極7の上に形成された蛍光体8に衝突して発光し、図示しないスクリーン上に極めて輝度の高い鮮明な画像が形成される。
本発明の電界放出ディスプレイにおいては、本発明の電界放出素子の好ましい特性を損なわない範囲で、本発明の電界放出素子とともに、従来から電界放出素子として用いられるMo、Si、各種金属繊維、ダイヤモンド粒子、カーボンナノチューブなどを併用することができる。
以下に製造例、実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
(製造例1)
メゾフェーズピッチ系炭素繊維(繊維径6μm、繊維長1〜5mm、商品名:YSH−50A、日本グラファイトファイバー(株)製)90mgを、テフロンテープで白金電極(陽極、20mm×10mmの白金板)の下端に固定し、炭素繊維のみを13モル/リットル硝酸水溶液に浸漬した。陽極の電圧変化を調べるために、陽極の横に塩化銀参照電極を取り付け、陰極には前記と同様の白金電極を用いた。
電気分解処理は、定電流0.5Aを40分間流し、電荷量が1200クーロンに達するまで行った。電気化学処理後、炭素繊維を陽極から取り外し、ドラフト内で3日間風乾し、引き続き1000℃に保持された電気管状炉内に入れ、5秒間急速加熱し、膨張化を行った。
得られた膨張化炭素繊維は繊維径が60μmであり、処理前よりも10倍膨張していた。なお、繊維長については、いずれも処理前の繊維長を維持していた。
この処理によって、繊維径60μmおよび繊維長1〜5mmの膨張化炭素繊維を製造した。
(製造例2)
PAN系炭素繊維(繊維径6μm、繊維長1〜5mm、商品名:TR50s、三菱レイヨン(株)製)100mgを、テフロンテープで白金電極(陽極、20mm×10mmの白金板)の下端に固定し、炭素繊維のみを9モル/リットル硫酸水溶液に浸漬した。陽極の電圧変化を調べるために、陽極の横に塩化銀参照電極を取り付け、陰極には前記と同様の白金電極を用いた。
電気分解処理は、定電流0.8Aを流し、電荷量が1500クーロンに達するまで行った。電気化学処理後、炭素繊維を陽極から取り外し、100℃の恒温器内で乾燥し、引き続き1100℃に保持された電気管状炉内に入れ、3秒間急速加熱し、膨張化を行った。
この処理によって、繊維径18μmかつ繊維長1〜5mmの膨張化炭素繊維を製造した。
(実施例1)
タングステンヘアピン(径1mm、長さ2cm、純度99.9%以上)の先端に、製造例1で得られた膨張化炭素繊維を銀ペースト(商品名:スリーボンド3350C)で固定化し、電界放出層とした。タングステンヘアピンを陰極とした。
陽極(20mm×10mmの白金板)の面が、膨張化炭素繊維の繊維伸長方向に垂直に交わるように、陽極を配置した。電極間に電圧(kV)を印加し、電界放出層から放出される電子量を、電流密度(μA/dm)として測定した。結果を図2に示す。
(比較例1)
膨張化炭素繊維に代えてカーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブ、繊維径0.5〜1.8nm)を用いる以外は、実施例1と同様にして陰極であるタングステンヘアピンの先端に電界放出層を形成し、陰極に印加される電圧(kV)と、陰極と陽極との間の電流密度(μA/dm)との関係を調べた。結果を図2に示す。
図2において、○は繊維径60μmおよび繊維長5mmの膨張化炭素繊維を用いた場合の結果、●は繊維径60μmおよび繊維長3mmの膨張化炭素繊維を用いた場合の結果、△は繊維径60μmおよび繊維長1mmの膨張化炭素繊維を用いた場合の結果、ならびに■はカーボンナノチューブを用いた場合の結果をそれぞれ示す。
図2から、膨張化炭素繊維を用いると、カーボンナノチューブを用いた場合に比べ、著しく大きい電流密度が得られ、電子の放出量が多いことが明らかである。また、膨張化炭素繊維の中でも、繊維長が大きいほど、電流密度が大きくなることが判る。膨張化炭素繊維は、細長く突き出た形状を有し、その端面が露出し、繊維先端に電圧が集中し易いので、低い印加電圧でカーボンナノチューブよりも大きい電流密度が得られるものと推測される。
(実施例2)
製造例1の膨張化炭素繊維に代えて製造例2の膨張化炭素繊維を用いる以外は、実施例1と同様にして、陰極であるタングステンヘアピンの先端に電界放出層を形成し、陰極への印加電圧と、電界放出層から放出される電子量の指標である電流密度との関係を調べた。結果を図3に示す。
図3において、○は繊維径18μmおよび繊維長5mmの膨張化炭素繊維を用いた場合の結果、●は繊維径18μmおよび繊維長3mmの膨張化炭素繊維を用いた場合の結果、ならびに△は繊維径18μmおよび繊維長1mmの膨張化炭素繊維を用いた場合の結果をそれぞれ示す。なお、図3には、比較のために、比較例1のカーボンナノチューブの測定結果を■で示す。
図3から、本発明の電界放出素子が、カーボンナノチューブよりも、低い電圧でいっそう高い電界放出性を示し、電界放出素子として非常に有用であることが明らかである。
本発明の一実施形態である電界放出ディスプレイの構成を簡略化して示す模式図である。 電界放出素子に電圧を印加した時の、印加電圧と電流密度との関係を示すグラフである。 電界放出素子に電圧を印加した時の、印加電圧と電流密度との関係を示すグラフである。 従来技術における電界放出ディスプレイの一形態の構造を簡略化して示す模式図である。
符号の説明
1 電界放出ディスプレイ
2 陰極用基板
2a 陰極用基板の表面
3 陰極
3a 陰極表面
4 ゲート電極
4a 支持層
5 電界放出層
5a 電界放出素子
6 陽極用基板
6a 陽極用基板の表面
7 陽極
7a 陽極表面
8 蛍光体
9 矢符
10 可視光
15 電界放出層

Claims (6)

  1. 小繊維の集合体である膨張化炭素繊維、小繊維の集合体でありかつその表面に鱗片状の小片が欠落して形成される凹所を有する膨張化炭素繊維および膨張化炭素繊維の表面から欠落した鱗片状小片から選ばれる1種または2種以上を含有してなることを特徴とする電界放出素子。
  2. 小繊維の繊維径が10〜150nmであることを特徴とする請求項1記載の電界放出素子。
  3. 膨張化炭素繊維が、炭素繊維の層間化合物を加熱することにより製造されることを特徴とする請求項1記載の電界放出素子。
  4. 電界放出素子を含んで形成され電圧の印加により電子を発生する電界放出層から発生する電子を蛍光体に衝突させ、この衝突による発光をスクリーンに表示する電界放出ディスプレイにおいて、電界放出素子が、請求項1〜のうちのいずれかの電界放出素子であることを特徴とする電界放出ディスプレイ。
  5. 電界放出層が、請求項1〜のうちのいずれかの電界放出素子と導電性材料とを含んで形成され、電界放出層中に電界放出素子が一定方向に配向したことを特徴とする請求項記載の電界放出ディスプレイ。
  6. 電界放出層中の電界放出素子を、その繊維の伸長方向が蛍光体の電界放出層を臨む面に対して垂直になるように配向させたことを特徴とする請求項記載の電界放出ディスプレイ。
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