以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1に概略的に示した機関本体1は筒内噴射型火花点火式内燃機関を示す。しかしながら、本発明を別の火花点火式内燃機関や圧縮自着火式内燃機関に適用してもよい。
図1に示したように、本発明の第1の実施形態では機関本体1はシリンダブロック2と、シリンダブロック2内で往復動するピストン3と、シリンダブロック2上に固定されたシリンダヘッド4とを具備する。ピストン3とシリンダヘッド4との間には燃焼室5が形成される。シリンダヘッド4には各気筒毎に吸気弁6と、吸気ポート7と、排気弁8と、排気ポート9とが配置される。さらに、図1に示したようにシリンダヘッド4の内壁面の中央部には点火プラグ10が配置され、シリンダヘッド4内壁面周辺部には燃料噴射弁11が配置される。またピストン3の頂面には燃料噴射弁11の下方から点火プラグ10の下方まで延びるキャビティ12が形成されている。
各気筒の吸気ポート7は下流側の吸気管13を介してサージタンク14に連結され、サージタンク14は上流側の吸気管15を介してエアクリーナ16に連結される。吸気管15内にはステップモータ17によって駆動されるスロットル弁18が配置される。一方、各気筒の排気ポート9は排気管19に連結され、この排気管19は排気浄化装置20に連結される。排気通路(排気ポート、排気管等)と吸気通路(吸気ポート、吸気管)とは排気再循環通路(以下、「EGR通路」と称す)21を介して互いに連結され、この排気再循環通路21内には排気再循環通路を通る排気ガスの流量を調整するための制御弁(以下、「EGR弁」と称す)22が配置される。
電子制御ユニット(ECU)31はディジタルコンピュータからなり、双方向性バス32を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)33、ROM(リードオンリメモリ)34、CPU(マイクロプロセッサ)35、入力ポート36および出力ポート37を具備する。吸気管13には、吸気管内の吸気ガス(新気およびEGRガス)の圧力を検出するための吸気管内圧力センサ40が設けられており、吸気管内圧力センサ40は吸気管内圧力に比例した出力電圧を発生し、この出力電圧が対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
また、スロットル弁18の開度を検出するためのスロットル弁開度センサ43と、内燃機関の周囲の大気の圧力、または吸気管15に吸入される空気の圧力(吸気圧)を検出するための大気圧センサ44と、内燃機関の周囲の大気の温度、または吸気管15に吸入される空気の温度(吸気温)を検出するための大気温センサ45が設けられ、これらセンサの出力電圧は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。また、アクセルペダル46にはアクセルペダル46の踏込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ47が接続され、負荷センサ47の出力電圧は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。クランク角センサ48は例えばクランクシャフトが30度回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスが入力ポート36に入力される。CPU35ではこのクランク角センサ48の出力パルスから機関回転数が計算される。一方、出力ポート37は対応する駆動回路39を介して点火プラグ10、燃料噴射弁11、ステップモータ17およびEGR弁22に接続される。
なお、EGR弁22の開度については、EGR弁22へ送信されたステップ信号の累積値(ステップ数)に基づいてCPU35において計算により求められる。
ところで、内燃機関の制御装置として、燃焼室において燃焼される混合気の空燃比を目標空燃比にするために、吸気弁が閉じたときに燃焼室内に充填されている吸気ガスの量(筒内充填ガス量)Mcを推定し、推定された筒内充填ガス量Mcに基づいて混合気の空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射弁によって噴射する燃料の量(以下、「燃料噴射量」と称す)を定めるものが公知である。そしてこのような場合、内燃機関の燃焼室において燃焼される混合気の空燃比を正確に目標空燃比とするためには、筒内充填ガス量Mcを正確に推定する必要がある。
通常、このような筒内充填ガス量Mcは、流量センサ(エアフローメータ)等の多数のセンサ、およびこれらセンサからの出力値を引数とした多数のマップから推定されるが、このようにマップを用いて筒内充填ガス量Mcを推定する場合、推定される筒内充填ガス量Mcの値をより正確なものにするためには、必要なマップの数およびその引数の数が多くなる。このようにマップの数が多くなると、マップを保存するためのECUのROMを記憶容量の大きいものにしなければならず、内燃機関の制御装置の製造コストが高くなってしまう。さらに、各マップを作成するにはマップが搭載される車種毎に適合を行わなければならないため、マップの数およびその引数の数が多くなると適合を行う際の労力が多大となってしまう。
そこで、マップを用いずに様々なモデルを用いて、数値計算により筒内充填ガス量Mcを算出する内燃機関の制御装置が検討されている。このような制御装置では、数値計算を多用することにより必要なマップの数を極力減らすようにしており、これにより適合作業を行う際の工数を大幅に削減しながらも、筒内充填ガス量Mcを正確に算出することができる。このような制御装置のうち本願出願人により提案されたものの一つに、図2に示した吸入ガス量モデルM20を搭載した制御装置がある(特願2001−316350号)。図示した吸入ガス量モデルM20はEGR機構を装備していない内燃機関に適用される最も単純なモデルであるが、モデルを用いた内燃機関制御(より詳細には筒内充填ガス量Mcの算出)の一例として以下でこの吸入ガス量モデルM20について説明する。
吸入ガス量モデルM20は、図2に示したようにスロットルモデルM21、吸気管モデルM22、吸気弁モデルM23を備える。スロットルモデルM21には、スロットル弁開度センサによって検出されたスロットル弁の開度(スロットル弁開度)θtと、大気圧センサによって検出された内燃機関周囲の大気圧(または、吸気管に吸入されるスロットル弁上流側の空気の圧力)Paと、大気温センサによって検出された内燃機関周囲の大気温度(または、吸気管に吸入される空気の温度)Taと、後述する吸気管モデルM22において算出された吸気管内の圧力(吸気管内圧力)Pmとが入力され、これら入力された各パラメータの値を後述するスロットルモデルM21のモデル式に代入することで、単位時間当たりにスロットル弁を通過する空気の流量(以下、「スロットル弁通過空気流量mt」と称す)が算出される。スロットルモデルM21において算出されたスロットル弁通過空気流量mtは、吸気管モデルM22へ入力される。
吸気管モデルM22には、スロットルモデルM21において算出されたスロットル弁通過空気流量mtと、以下で詳述する単位時間当たりに燃焼室内に流入する吸気ガスの流量(以下、「筒内吸入ガス流量mc」と称す。なお、筒内吸入ガス流量mcの定義については、吸気弁モデルM23において詳述する)とが入力され、これら入力された各パラメータの値を後述する吸気管モデルM22のモデル式に代入することで、吸気管内に存在する吸気ガスの圧力、すなわち吸気管内圧力Pmと吸気管内に存在する吸気ガスの温度、すなわち吸気管内温度Tmとが算出される。吸気管モデルM22において算出された吸気管内圧力Pmと吸気管内温度Tmは共に吸気弁モデルM23へ入力され、さらに吸気管内圧力PmはスロットルモデルM21にも入力される。
吸気弁モデルM23には、吸気管モデルM22において算出された吸気管内圧力Pmおよび吸気管内温度Tmの他に大気温度Taが入力され、これら入力された各パラメータの値を後述する吸気弁モデルM23のモデル式に代入することで、筒内吸入ガス流量mcが算出される。算出された筒内吸入ガス流量mcは、筒内充填ガス量Mcに変換され、この筒内充填ガス量Mcに基づいて燃料噴射弁からの燃料噴射量が決定される。また、吸気弁モデルM23において算出された筒内吸入ガス流量mcは吸気管モデルM22に入力される。
図2から分かるように、吸入ガス量モデルM20ではあるモデルにおいて算出されたパラメータの値が別のモデルへの入力値として利用されるので、吸入ガス量モデルM20全体では、実際に入力される値はスロットル弁開度θt、大気圧Pa、および大気温度Taの三つのパラメータのみであり、これら三つのパラメータから筒内充填ガス量Mcが算出される。
次に、吸入ガス量モデルM20の各モデルM21〜M23について説明する。
スロットルモデルM21では、大気圧Pa、大気温度Ta、吸気管内圧力Pm、スロットル弁開度θtから、下記数2に基づいてスロットル弁通過空気流量mtが算出される。ここで、数2におけるμはスロットル弁における流量係数で、スロットル弁開度θtの関数であり、図3に示したようなマップから定まる。また、Atはスロットル弁の開口断面積(以下、「スロットル開口面積」と称す)を示し、スロットル弁開度θtの関数である。なお、これら流量係数μおよび開口断面積Atをまとめたμ・Atをスロットル弁開度θtから一つのマップで求めるようにしてもよい。また、Raは気体定数に関連する定数であり、気体定数Rを1mol当たりの空気の質量Maで除算した値である(Ra=R/Ma)
また、Φ(Pm/Pa)は下記数3に示した関数であり、この数3におけるκは比熱比(κ=Cp(等圧比熱)/Cv(等容比熱)であり、一定値とする)である。この関数Φ(Pm/Pa)は図4に示したようなグラフに表すことができるので、このようなグラフをマップとしてECUのROMに保存し、実際には数3を用いて計算するのではなくマップからΦ(Pm/Pa)の値を求めるようにしてもよい。
これらスロットルモデルM21の数2および数3は、スロットル弁18上流の気体の圧力を大気圧Pa、スロットル弁18上流の気体の温度を大気温度Ta、スロットル弁18を通過する気体の圧力を吸気管内圧力Pmとして、図5に示したようなスロットル弁18のモデルに対して、質量保存則、エネルギ保存則および運動量保存則を適用し、さらに気体の状態方程式、比熱比の定義式、およびマイヤーの関係式を利用することによって得られる。
吸気管モデルM22では、スロットル弁通過空気流量mt、筒内吸入ガス流量mc、および大気温度Taから、下記数4および数5に基づいて吸気管内圧力Pmおよび吸気管内温度Tmが算出される。なお、数4および数5におけるVmはスロットル弁から吸気弁までの吸気管等の部分(以下、「吸気管部分」と称す)13´の容積に等しい定数である。
ここで、吸気管モデルM22について図6を参照して説明する。吸気管部分13´の総気体量(総吸気ガス量)をMとすると、総気体量Mの時間的変化は、吸気管部分13´に流入する気体の流量、すなわちスロットル弁通過空気流量mtと、吸気管部分13´から流出する気体の流量、すなわち筒内吸入ガス流量mcとの差に等しいため、質量保存則により下記数6が得られ、この数6および気体の状態方程式(Pm・Vm=M・Ra・Tm)より、数4が得られる。
また、吸気管部分13´の気体のエネルギM・Cv・Tmの時間的変化量は、吸気管部分13´に流入する気体のエネルギと吸気管部分13´から流出する気体のエネルギとの差に等しい。このため、吸気管部分13´に流入する気体の温度を大気温度Ta、吸気管部分13´から流出する気体の温度を吸気管内温度Tmとすると、エネルギ保存則により下記数7が得られ、この数7および上記気体の状態方程式より、数5が得られる。
吸気弁モデルM23では、吸気管内圧力Pm、吸気管内温度Tm、および大気温度Taから、下記数8に基づいて、筒内吸入ガス流量mcが算出される。なお、数8におけるa、bは、機関回転数NEから、さらに吸気弁の位相角(バルブタイミング)および作用角を変更できる可変動弁機構を備えた内燃機関の場合には吸気弁6の位相角、作用角から定まる適合パラメータである。
上述した吸気弁モデルM23について図7を参照して説明する。一般に、吸気弁6が閉じたときに燃焼室5内に充填されている吸気ガスの量である筒内充填ガス量Mcは、吸気弁6が閉弁するとき(吸気弁閉弁時)に確定し、吸気弁閉弁時の燃焼室5内の圧力に比例する。また、吸気弁閉弁時の燃焼室5内の圧力は吸気弁上流の気体の圧力、すなわち吸気管内圧力Pmと等しいとみなすことができる。したがって、筒内充填ガス量Mcは、吸気管内圧力Pmに比例すると近似することができる。
ここで、単位時間当たりに吸気管部分13´から流出する全吸気ガスの量を平均化したもの、または単位時間当たりに吸気管部分13´から全ての燃焼室5に吸入される吸気ガスの量を一つの気筒の吸気行程に亘って(後述するように本実施形態ではクランク角180°分)平均化したものを筒内吸入ガス流量mc(以下で詳述する)とすると、筒内充填ガス量Mcが吸気管内圧力Pmに比例することから、筒内吸入ガス流量mcも吸気管内圧力Pmに比例すると考えられる。このことから、理論および経験則に基づいて、上記数8が得られる。なお、数8における適合パラメータaは比例係数であり、適合パラメータbは排気弁閉弁時において燃焼室5内に残存している既燃ガス量に関連する値(以下で説明する)である。また、実際の運転では過渡時に吸気管内温度Tmが大きく変化する場合があるため、これに対する補正として理論および経験則に基づいて導かれたTa/Tmが乗算されている。
ここで、筒内吸入ガス流量mcについて、図8を参照して内燃機関が4気筒である場合について説明する。なお、図8は横軸がクランクシャフトの回転角度、縦軸が単位時間当たりに吸気管部分13´から燃焼室5に実際に流入する吸気ガスの量である。図8に示したように、4気筒の内燃機関では、吸気弁6が例えば1番気筒、3番気筒、4番気筒、2番気筒の順に開弁し、各気筒に対応する吸気弁6の開弁量に応じて吸気管部分13´から各気筒の燃焼室5内へ吸気ガスが流入する。吸気管部分13´から各気筒の燃焼室5内に流入する吸気ガスの流量の変位は図8に破線で示した通りであり、これを総合して吸気管部分13´から全気筒の燃焼室5に流入する吸気ガスの流量は図8に実線で示した通りである。また、例えば1番気筒への筒内充填ガス量Mcは図8に斜線で示した部分に相当する。
これに対して、実線で示した吸気管部分13´から全ての気筒の燃焼室5に流入する吸気ガスの量を平均化したものが筒内吸入ガス流量mcであり、図中に一点鎖線で示されている。そして、この一点鎖線で示した筒内吸入ガス流量mcに、4気筒の場合にはクランクシャフトが180°(すなわち、4ストローク式内燃機関において1サイクル中にクランクシャフトが回転する角度720°を気筒数で割った角度)回転するのにかかる時間ΔT180°を乗算したものが筒内充填ガス量Mcとなる。したがって、吸気弁モデルM23で算出された筒内吸入ガス流量mcにΔT180°を乗算することで、筒内充填ガス量Mcを算出することができる(Mc=mc・ΔT180°)。より詳細には、筒内充填ガス量Mcは吸気弁閉弁時の圧力に比例することから、吸気弁閉弁時の筒内吸入ガス流量mcにΔT180°を乗算したものが筒内充填ガス量Mcとされる。なお、以上の説明からも明らかなように、数8における値bにΔT180°を乗算し、更にTa/Tmを乗算すると、排気弁8閉弁時において燃焼室5内に残存している既燃ガス量が得られると考えられる。
次に、上記吸入ガス量モデルM20を内燃機関の制御装置に実装して、実際に筒内充填ガス量Mcを算出する場合について説明する。筒内充填ガス量Mcは吸入ガス量モデルM20を用いて、上記数2、数4、数5、および数8を解くことにより表される。この場合、ECUで処理するために、これらの式を離散化する必要がある。時刻t、計算間隔Δtを用いて数2、数4、数5、および数8を離散化すると、それぞれ下記数9、数10、数11、および数12が得られる。なお、吸気管内温度Tm(t+Δt)は、数10および数11によってそれぞれ算出されたPm/Tm(t+Δt)およびPm(t+Δt)から、数13によって算出される。
このようにして実装された吸入ガス量モデルM20では、スロットルモデルM21の数9で算出された時刻tにおけるスロットル弁通過空気流量mt(t)と、吸気弁モデルM23の数12で算出された時刻tにおける筒内吸入ガス流量mc(t)とが、吸気管モデルM22の数10および数11に代入され、これにより時刻t+Δtにおける吸気管内圧力Pm(t+Δt)および吸気管内温度Tm(t+Δt)が算出される。次いで、算出されたPm(t+Δt)およびTm(t+Δt)は、スロットルモデルM21および吸気弁モデルM23の数9および数12に代入され、これにより時刻t+Δtにおけるスロットル弁通過空気流量mt(t+Δt)および筒内吸入ガス流量mc(t+Δt)が算出される。そして、このような計算を繰り返すことによって、スロットル弁開度θt、大気圧Pa、および大気温度Taから、任意の時刻tにおける筒内吸入ガス流量mcが算出され、算出された筒内吸入ガス流量mcに上記時間ΔT180°を乗算することで、任意の時刻tにおける筒内充填ガス量Mcが算出される。
なお、内燃機関の始動時には、すなわち時刻t=0においては、吸気管内圧力Pmは大気圧と等しい(Pm(0)=Pa)とされ、吸気管内温度Tmは大気温度と等しい(Tm(0)=Ta)とされて、各モデルM21〜M23における計算が開始される。
なお、上記吸入ガス量モデルM20では、大気温度Taおよび大気圧Paが一定であるとしているが、時刻によって変化する値としてもよく、例えば、大気温度を検出するための大気温センサによって時刻tにおいて検出された値を大気温度Ta(t)、大気圧を検出するための大気圧センサによって時刻tにおいて検出された値を大気圧Pa(t)として上記数9、数11、および数12に代入するようにしてもよい。
ところで、以上で説明した吸入ガス量モデルM20は、上述したようにEGR機構を備えていない内燃機関に適用される最も単純なモデルであり、これをそのまま図1に例示したようなEGR機構を備えた内燃機関に適用すると十分な精度が得られず制御上の不都合が生じてしまう。その原因の一つは、EGRガスの導入の影響で吸気管内温度Tm及び圧力Pmが上昇し、吸気管部分13´内への新気流入量であるスロットル弁通過空気流量mtがEGRガスの導入がない場合とは大きく異なるためであると考えられる。
そこで本発明のスロットル弁通過空気流量算出装置では、EGRガスの導入がある場合においてもスロットル弁通過空気流量が正確に算出できるように、以下で説明するような方法でスロットル弁通過空気流量を算出する。これによって、モデルを用いた内燃機関制御における制御精度の向上を図ることが可能となる。
すなわち、本発明のスロットル弁通過空気流量算出装置においては、下記の数14に基づいてスロットル弁通過空気流量mtが算出される。
ここで、Pmegrは、その時点での機関回転数NE、スロットル弁開度θt及びEGR弁開度STPを保持した場合に収束する吸気管内圧力、すなわち排気ガス再循環中の定常運転時における吸気管内圧力を示しており、機関回転数NE、スロットル弁開度θt及びEGR弁開度STPに基づいて定められる(Pmegr=f1(NE,θt,STP))。e、d、rは適合パラメータを示しており、これらについては後述する。また、Φ(Pm/Pa)は数3で示された関数と同様の関数であり、Φ(Pmegr/Pa)は数3で示された関数のPmにPmegrを代入したものである。
次に、数14の導出過程について説明する。一般にスロットル弁通過空気流量mtは上述した数2によって求めることができるが、数2に基づいて定常運転時におけるスロットル弁通過空気流量mtTAを求めると、定常運転時における吸気管内圧力はPmegrであるので以下の数15のようになる。
そして更に、数2の各辺をそれぞれ数15の対応する各辺で除して変形すると以下の数16が得られる。
一方、EGRガスが導入される場合の定常運転時における筒内吸入空気流量mcaは、以下の数17で表すことができる(数17の導出過程については後述する)。
ここで、eは機関回転数NEとEGR弁開度STPに基づいて定まる適合パラメータ(e=f2(NE,STP))を示し、dは機関回転数に基づいて定まる適合パラメータ(d=f3(NE))を示し、rは機関回転数とEGR弁開度STPに基づいて定まる適合パラメータ(r=f4(NE,STP))を示す。そして適合パラメータeについては、より詳細には、以下の数18で示されるように、吸気管内圧力Pmと適合パラメータdとの大小関係によって異なる値をとる。
すなわち、適合パラメータeは機関回転数NEとEGR弁開度STPによって上記e1またはe2の何れかの値をとることが定められ、吸気管内圧力Pmと適合パラメータdとの大小関係によって最終的に上記e1またはe2のうちの何れの値をとるかが定められる。
ここで、数17は定常運転時に関して示していることを考慮すると、定常運転時においては、筒内吸入空気量mcaはスロットル弁通過空気流量mtTAと等しくなり、吸気管内圧力Pmは定常運転時における吸気管内圧力Pmegrとなるので、数17より以下の数19が得られる。
この時、上記数18に対応して適合パラメータeは以下の数20のように示される。
そしてこの数19を数16に代入することによって、上述の数14が得られる。
本実施形態のスロットル弁通過空気流量算出装置においては、定常運転時における吸気管内圧力Pmegrは、機関回転数NE、スロットル弁開度θt及びEGR弁開度STPの関数(Pmegr=f1(NE,θt,STP))として予め実験等によって求められ、マップの形でROM34に記憶されている。同様に適合パラメータeは、機関回転数NEとEGR弁開度STPの関数(e=f2(NE,STP))として予め実験等によって求められると共に、Pmegrと適合パラメータdとの大小関係をも加味して一つの値が定められるようにマップの形でROM34に記憶されている。適合パラメータdは、機関回転数NEの関数(d=f3(NE))として予め実験等によって求められ、マップの形でROM34に記憶されている。適合パラメータrは、機関回転数NEとEGR弁開度STPの関数(r=f4(NE,STP))として予め実験等によって求められ、マップの形でROM34に記憶されている。
本実施形態のスロットル弁通過空気流量算出装置では、上述の各マップから機関回転数NE、スロットル弁開度θt及びEGR弁開度STP等に基づいてPmegr及び適合パラメータe、d、rが定められ、吸気管内圧力センサ40の検出値に基づいて吸気管内圧力Pmが求められて、数14に基づいてスロットル弁通過空気流量mtが算出される。なお、吸気管内圧力Pmは他の手段によって推定もしくは算出されてもよく、例えば、スロットル弁開度θtに基づいて、あるいはエアフローメータを有している場合にはその検出値に基づいて算出されてもよい。
以上の説明から明らかなように、数14に基づいて算出されるスロットル弁通過空気流量mtは、EGRガスの導入の影響、例えばEGRガスの導入に伴う吸気管内温度Tm及び圧力Pmの上昇を加味したものとなる。また、数14は過渡状態におけるスロットル弁通過空気流量mtを求めるものであるので、数14に基づいてスロットル弁通過空気流量mtを求める本実施形態のスロットル弁通過空気流量算出装置によれば、EGRガスの導入がある場合における過渡状態のスロットル弁通過空気流量が正確に算出できる。
なお、スロットル弁18の形状が複雑であることや脈動の影響があるために、数14において関数Φから得られる値の精度が低下し、数14から得られるスロットル弁通過空気流量mtの精度が低下する場合が考えられるが、このような場合であっても、定常運転時におけるスロットル弁通過空気流量は正確に算出することができる。これは、定常運転時においてはPm=Pmegrとなるために、数14は以下の数21のようになり、関数Φが式中から無くなるためである。
次に本発明の別の実施形態のスロットル弁通過空気流量算出装置について説明する。このスロットル弁通過空気流量算出装置は、上述した実施形態のスロットル弁通過空気流量算出装置と比較して、数14において用いられる定常運転時における吸気管内圧力Pmegrの求め方のみが異なっているので、以下では主にこの点について説明する。
上述した実施形態のスロットル弁通過空気流量算出装置においては、数14において用いられるPmegrは、予め作成されてROM34に記憶されたマップから求められる。そして、このマップは機関回転数NEと、スロットル弁開度θtと、EGR弁開度STPとに基づいてPmegrが定められるようになっている。
これに対し、本実施形態のスロットル弁通過空気流量算出装置においては、Pmegrがマップに基づいて求められる点では同様であるが、Pmegrを定めるためのマップの引数は三つから二つに低減されている。
そして、このようなマップに関しては、その引数の数によって、マップ作成時の適合工数や制御負荷等が大きく異なり、例えば引数の数が一つ増えるだけで、適合工数が何十倍にも増加してしまう場合がある。したがって、マップの引数は一般に少ない方が好ましい。しかしながら、引数の数を減らすとマップから得られるパラメータの値の正確性が低下する場合もあるため、引数の数を減らす場合にはこの点を考慮する必要がある。
ところで、上述した実施形態のスロットル弁通過空気流量算出装置においては、Pmegrは機関回転数NEと、スロットル弁開度θtと、EGR弁開度STPとに基づいて定められていたが、これはPmegrが主にスロットル弁18を介して吸気管部分13´に流入する空気量と、EGR弁22を介して吸気官部分13´に流入するEGRガス量と、吸気弁6を介して吸気管部分13´から燃焼室5内へ流出していくガス(空気とEGRガスの混合ガス)の量とのバランスによって定まるためである。概略的には、機関回転数NEが吸気弁6を介した流出ガス量に対応し、スロットル弁開度θtがスロットル弁18を介した流入空気量に対応し、EGR弁開度STPがEGR弁22を介した流入EGRガス量に対応すると考えられる。
一般に、弁を通過する気体の量は、弁の開度(より詳細には、開口面積)と、弁の上流側及び下流側の圧力により決定される。上述した吸気管部分13´への流入空気量と流入EGRガス量について考えてみると、流入空気量についてはスロットル弁開度θtと大気圧Pa及び吸気管内圧力Pmによって、流入EGRガス量についてはEGR弁開度STPと排気圧Pe及び吸気管内圧力Pmによって決定される。
ここで、EGRガスの導入が行われるのは、通常、低負荷の運転状態であり、このような場合、排気圧Peは大気圧Paとほぼ同じである。したがって、スロットル弁18とEGR弁22の上下流の圧力は共に同じであると考えられ、各弁における開口面積の増減は吸気管部分13´に流入するガス(空気またはEGRガス)の量の増減に対してほぼ同様の効果があると考えられる。このためEGR弁開度STPを相当するスロットル弁開度に換算し、その開度をもとのスロットル弁開度θtに加えることで、二つの弁を一つの弁とみなし、モデルを単純化することが可能であると考えられる。
本実施形態のスロットル弁通過空気流量算出装置は、このような考えにより、Pmegrを求めるマップの引数を機関回転数NEとEGR弁開度分を含めたスロットル弁開度θtの二つのみとするものであり、この引数の低減に起因して、得られるパラメータの値、すなわちPmegrの正確性が低下することは殆どないと考えられる。
また、本実施形態のスロットル弁通過空気流量算出装置においては、Pmegrは機関回転数NE及びスロットル弁開度θtの関数(Pmegr=f5(NE,θt))として予め実験等によって求められ、マップの形でROM34に記憶されているが、このマップはEGR機構を備えていない内燃機関の場合の機関回転数NE及びスロットル弁開度θtから定常運転時における吸気管内圧力PmTAを求めるマップと同様のものとなる。
以下、EGR弁開度STPをスロットル弁開度に換算する具体的な方法について説明する。
第1の方法では、まず、図9に示すように、ある機関回転数NEに対してEGR弁開度STPが種々の開度である場合におけるスロットル弁開度θtとPmegrとの関係が測定される。図9の例では、全閉(0)の場合を含めステップ数で表された7種類のEGR弁開度STPに対するスロットル弁開度θtとPmegrとの関係が示されている。そして、所定の基準スロットル弁開度(好ましくは、アイドリング時に相当するスロットル弁開度とする。)θtrにおける各EGR弁開度STPの場合のPmegr(以下、Pmegrbと称する)が求められ、次いで、EGR弁開度STPを全閉とした場合に、その各Pmegrbとなる相当スロットル弁開度θtbがそれぞれ求められる。
そして、各EGR弁開度STPの場合について上記相当スロットル弁開度θtbと上記基準スロットル弁開度θtrとの差が求められ、図10で示すようなEGR弁開度STPをスロットル弁開度(すなわち、換算スロットル弁開度θtc1)に換算するマップが作成される。図10のマップは横軸がEGR弁開度STPを示し、縦軸がEGR弁開度STPに相当する換算スロットル弁開度θtc1を示している。例えば、図10の例においてEGR弁開度STPが10ステップである場合にはスロットル弁開度の2.5°分に相当し、換算スロットル弁開度θtc1は2.5°であるので、もとのスロットル弁開度に2.5°を加えれば、EGR弁開度10ステップ分を含めたスロットル弁開度が求められる。
このようにして、図10に示したような換算マップを各機関回転数NEについて予め作成しておけば、スロットル弁開度θtと、EGR弁開度STPと、機関回転数NEが与えられた場合に、EGR弁開度STPをスロットル弁開度に換算し、それに基づいてEGR弁開度分を含めたスロットル弁開度が求められる。そしてそのスロットル弁開度と機関回転数NEに基づいて、上述したようなPmegrを機関回転数NE及びスロットル弁開度θtの関数として示したマップ、すなわちEGR機構を備えていない内燃機関の場合の定常運転時における吸気管内圧力PmTAを求めるマップからPmegrを求めることが可能になる。
そして、このようにして求められたPmegrを用いて、第1の実施形態のスロットル弁通過空気流量算出装置と同様に、数14からスロットル弁通過空気流量mtが求められる。
次にEGR弁開度STPをスロットル弁開度に換算する第2の方法について説明する。この方法は、基本的に上述した第1の方法と同様であるが、スロットル弁開度θtとスロットル弁開口面積Atとの間の非線形な関係を考慮している点で異なっており、これによりEGR弁開度STPをスロットル弁開度に換算する精度が向上される。
すなわち、通常、スロットル弁では、スロットル弁開度θtとスロットル弁開口面積Atとの間に非線形な関係があり、例えば、図11に示すように開度の小さいところにおいては開度の中程度以降のところに比べ、同じ開度増加に対する開口面積Atの増加が少なくなっている。このような場合にEGR弁開度分を、その時のスロットル弁開度にかかわらず同様にスロットル弁開度に換算すると、その換算スロットル弁開度では意図するスロットル弁での開口面積Atの増加が得られない場合がある。
より具体的には、例えば、上述した図10のマップを使用する場合、このマップの作成において基準とした上記基準スロットル弁開度θtrよりもその時のスロットル弁開度が小さい時には図10のマップで得られる換算スロットル弁開度θtc1をその時のスロットル弁開度に加えたスロットル弁開度としても意図する開口面積には足りず、逆に上記基準スロットル弁開度θtrよりもその時のスロットル弁開度が大きい時には図10のマップで得られる換算スロットル弁開度θtc1をその時のスロットル弁開度に加えたスロットル弁開度とすると意図する開口面積よりも大きくなってしまう。
この方法では、以下で説明するような方法で図10のマップで得られる換算スロットル弁開度θtc1を補正することにより、スロットル弁開度θtとスロットル弁開口面積Atとの間の非線形な関係を考慮し、EGR弁開度STPを精度良くスロットル弁開度に換算する。
すなわち、図12は図11のスロットル弁開度θtの小さい範囲について拡大したものであるが、まずここで図10のマップの作成において基準とした上記基準スロットル弁開度θtrにおける傾きSbを求める。そして、この傾きSbを図11のスロットル弁開度θtに対するスロットル開口面積Atを示す曲線の傾きSで除して各スロットル弁開度θtに対するSb/Sを求めマップとする。こうして求めたマップが図13の実線で示されるものであり、この値が原則として各スロットル弁開度θtに対する補正係数Ccとなる。
ここで、図11に示されているようにスロットル弁開度θtの極めて大きな部分では、スロットル弁開度θtが大きくなってもスロットル開口面積Atはそれ以上大きくならない部分があり、この部分のSb/Sを求めると、Sが零になるために無限大になってしまう。一方、このようなスロットル弁開度θtが極めて大きい部分においては、スロットル弁開度θtが変わってもPmegrは殆ど変化せず、また、EGR弁開度STPが変化してもPmegrは殆ど変化しないことがわかっているので、実質的にはEGR弁開度分をスロットル弁開度に換算して加える必要のない部分である。このようなことから、本実施形態においては、スロットル弁開度θtの大きな部分における補正係数Ccを図13に点線で示したように単純なSb/Sとは異なる値とし、制御上の不都合を回避すると共に制御の連続性を維持し、且つ、実際の現象に合致するようにしている。つまり、図13において補正係数Ccは、スロットル弁開度θtの大きい部分以外では実線で、スロットル弁開度θtの大きい部分では点線で示された値となる。
このような図13のマップから得られる補正係数Ccを図10から得られる換算スロットル弁開度θtc1に乗ずることにより、スロットル弁開度θtとスロットル弁開口面積Atとの間の非線形な関係を考慮した換算スロットル弁開度θtc2が得られる。
そして、上述した実施形態の場合と同様に、この換算スロットル弁開度θtc2に基づいてEGR弁開度分を含めたスロットル弁開度が求められ、そのスロットル弁開度と機関回転数NEに基づいて、上述したようなPmegrを機関回転数NE及びスロットル弁開度θtの関数として示したマップからPmegrを求めることが可能になる。そして、このようにして求められたPmegrを用いて、第1の実施形態のスロットル弁通過空気流量算出装置と同様に、数14からスロットル弁通過空気流量mtが求められる。特に本実施形態においては、換算スロットル弁開度θtc2が精度良く求められるので、最終的に算出されるスロットル弁通過空気流量mtの精度も向上する。
最後に、上述した数17の導出過程について説明する。
EGR弁22が開弁されしたがってEGRガスが供給されているときには、各気筒の筒内に新気とEGRガスとの混合ガスが吸入される。したがって、吸気弁7が開弁し次いで閉弁したときに各気筒の筒内に充填されているEGRガスの量を筒内充填EGRガス量Mcegrと称すると、筒内充填ガス量Mcは筒内充填新気量Mcaと筒内充填EGRガス量Mcegrとの和で表されることになる(Mc=Mca+Mcegr)。また、同様に、筒内吸入ガス流量mcは、そのうちの新気分である筒内吸入空気流量mcaとEGRガス分である筒内吸入EGRガス流量mcegrとの和で表される(mc=mca+mcegr)。
ところで、上述したように、筒内充填ガス量Mcは吸気弁7が閉弁したときの吸気管内圧力Pmに比例し、したがってその一次式で表すことができる。また、同様に筒内吸入ガス流量mcも吸気管内圧力Pmに比例し、したがってその一次式で表すことができる。そしてEGRガスが供給されていないときには筒内に新気のみが充填されるので、筒内充填新気量Mca及び筒内吸入空気流量mcaを吸気管内圧力Pmの一次式で表すことができる。
ところが、EGRガスが供給されているときには状況が全く異なり、筒内には新気だけでなくEGRガスも充填される。このため、従来では、筒内充填新気量Mcaや筒内吸入空気流量mcaを吸気管内圧力Pmの一次式で表すことは到底できないと考えられていたのである。
ここで、筒内吸入EGRガス流量mcegrを吸気管内圧力Pmの一次式で表すことができるならば、筒内吸入ガス流量mcを吸気管内圧力Pmの一次式で表すことができること、筒内吸入ガス流量mcが筒内吸入空気流量mcaと筒内吸入EGRガス流量mcegrとの和であることを考えれば、筒内吸入空気流量mcaを吸気管内圧力Pmの一次式で表すことができる。
しかしながら、従来では、筒内吸入EGRガス流量mcegrも吸気管内圧力Pmの一次式で表すことができないと考えられていたのである。このことを図14を参照しながら説明する。
まず、図14(A)に示されるように、EGR弁22上流のEGRガス圧力が排気管19内の排気圧Peであり、EGR制御弁上流のEGRガス温度が排気管19内の排気温Teであり、EGR弁22を通過するEGRガスの圧力が吸気管内圧力Pmであると考えると、EGR弁22を通過するEGRガスの流量であるEGR弁通過ガス流量megrは、上述した数2の場合と同様にして以下の数22により表すことができる。
ここで、μはEGR弁22における流量係数を、AeはEGR弁22における開口断面積を、Reは気体定数Rに関する定数を、Φ(Pm/Pe)はPm/Peの関数を、それぞれ表している。なお、流量係数μおよび開口断面積AeはEGR弁22の開度STPによって定まる値であり、定数Reは気体定数Rを1mol当たりの排気ガスないしEGRガスの質量Meで除算した値である(Re=R/Me)。
また、関数Φ(Pm/Pe)は、上述した数3と同様に、比熱比κを用いて以下の数23により表される。
ここで、計算を簡単にするために排気圧Peが大気圧Paであるとすると、数22により表されるEGR弁通過ガス流量megrは図14(B)のようになる。すなわち、EGR弁通過ガス流量megrは吸気管内圧力Pmが小さいときにはほぼ一定に維持され、吸気管内圧力Pmが高くなると図14(B)においてNRで示されるように吸気管内圧力Pmに対し非線形性を示しながら大気圧Paに向けて減少する。なお、この非線形性部分NRは数22のうちPe/√Teの部分及び関数Φ(Pm/Pe)によるものである。
したがって、EGR弁通過ガス流量megr、とりわけ非線形性部分NRを吸気管内圧力Pmの一次式により表すことはできないものと考えられていたのである。
ところが、本願発明者らによれば、EGR弁通過ガス流量megrを吸気管内圧力Pmの二つの一次式で表すことができ、したがって筒内吸入空気量mcaを吸気管内圧力Pmの二つの一次式で表すことができることが判明したのである。
すなわち、まず、図15に示されるように、排気温Teは吸気管内圧力Pmの増大に対し、排気圧Peが増大するよりも大幅に増大し、その結果Pe/√Teを吸気管内圧力Pmの一次式で表すことができるのである。
また、関数Φ(Pm/Pe)も吸気管内圧力Pmの一次式で表すことができる。これについて図16を参照して説明する。排気圧Peが一定の大気圧Paに維持されるのではなく、吸気管内圧力Pmに応じて変動することを考慮すると、図16(A)に示されるように、吸気管内圧力PmがPm1のときの関数Φ(Pm/Pe)は大気圧Paに収束する曲線Ca上にあるのではなく、排気圧Pe1に収束する曲線C1上にあり、これがプロット(○)で表されている。同様に、Pm=Pm2(>Pm1)のときのΦ(Pm/Pe)は排気圧Pe2(>Pe1)に収束する曲線C2上にあり、Pm=Pm3(>Pm2)のときのΦ(Pm/Pe)は排気圧Pe3(>Pe2)に収束する曲線C3上にある。
このようにして得られるプロットは図16(B)に示されるように、直線L2で結ぶことができる。したがって、関数Φ(Pm/Pe)は吸気管内圧力Pmが小さいときには直線L1に相当する吸気管内圧力Pmの一次式により、吸気管内圧力Pmが大きいときには直線L2に相当する吸気管内圧力Pmの一次式により表すことができ、斯くして吸気管内圧力Pmの二つの一次式で表すことができることになる。すなわち、EGR弁通過ガス流量megrを吸気管内圧力Pmの二つの一次式で表すことができるのである。
そうすると、定常運転時にはEGR弁通過ガス流量megrが筒内吸入EGRガス流量mcegrに等しいことを考慮すれば、定常運転時の筒内吸入EGRガス流量mcegrを吸気管内圧力Pmの一次式で表すことができるということになる。
したがって、定常運転時の筒内吸入空気流量mcaを吸気管内圧力Pmの二つの一次式で表すことができるということになり、これが基本的な考え方となる。
図17には、機関回転数NE及びEGR弁開度STPがそれぞれ一定であるときの、定常運転時の筒内吸入空気流量mcaを表す吸気管内圧力Pmの二つの一次式の一例が示されている。図17に示されるように、筒内吸入空気流量mcaは、勾配が互いに異なりかつ接続点CPにおいて連続している、吸気管内圧力Pmの二つの一次式により表される。すなわち、吸気管内圧力Pmが小さいときには勾配e1の一次式により、吸気管内圧力Pmが高いときには勾配e2の一次式により、筒内吸入空気流量mcaが表される。
ここで、一次式の勾配をeとし、接続点CPにおける吸気管内圧力及び筒内吸入空気流量をそれぞれd、rとすると、これら二つの一次式は以下の数24により表すことができる。
そして、これらをひとまとめにして表すと上述の数17及び数18が得られる。