JP4418490B2 - 製鋼スラグ中の地金回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶銑予備処理炉または転炉から1200℃以上の高温で排出される製鋼スラグ中に含まれる地金を、低コストで効率よく回収することができる製鋼スラグ中の地金回収方法に関するものである。
溶銑予備処理炉または転炉から排出された高温の製鋼スラグ中には、多量の鉄地金が含まれている。スラグを冷却するとともにスラグ中から地金を回収するために、従来から図1、図2に示すようなスラグ処理が行われている。
まずスラグは、貨車に搭載されたスラグパン1に収納され、屋外のスラグ処理場に運ばれる。スラグ処理場には散水装置4を備えた冷却ピット2が複数並んでおり、図1の(A)に示すようにそれらのうちの一つの冷却ピット2に高温スラグ3は排出される。この排出には約1時間を要する。こののち、水蒸気爆発を防止するために2〜4時間ほど放冷される。
水蒸気爆発の危険がなくなってから、冷却を進行させるために図1の(B)に示すように散水装置4から大量の冷却水5が散水される。この散水は短くても8時間以上、水の浸透しにくいスラグの場合には2〜3日間にわたって行われる。このため冷却ピット2は多数設置されて順繰りに使用されている。このようにして冷却されたスラグは、図1の(C)に示すように建設機械8により掘り起こされ、図1の(D)に示すようにダンプカー9により破砕工場に運ばれる。
破砕工場では、冷却されたスラグ7は図2に示すようにまずホッパー10に投入され、一次コンベヤ11により一次磁選機12を通過させて大塊地金13が分離される。次に一次破砕機14により破砕され、二次コンベヤ17上に落下する。二次コンベヤ17上には二次磁選機16が設けられており、中塊地金15が分離される。ここでスラグは一次振動篩18に掛けられたうえ、三次コンベヤ19により二次破砕機20により破砕される。破砕されたスラグは四次コンベヤ22により搬送される間に三次磁選機21により小塊地金23が分離され、二次振動篩24によって中塊分級スラグ25と小塊分級スラグ26とに分級される。
上記したように、スラグは何度も破砕機と磁選機を通過させることによって地金とスラグとに分離されるのであるが、固化したスラグはかなりの硬度を有しているために強力な破砕機を用いなければ十分に破砕することができない。またこのようにして得られた地金はスラグが十分に分離していないために鉄分含有率が低く、2段の破砕機を通しても70〜80%、3段の破砕機を通しても80〜90%の鉄分含有率しか得られないという問題がある。
なお特許文献1である特開平6−346161号公報には、製鋼スラグを水中でアトマイジング処理した後、スクリーン等で粒径により分類し、分類されたスラグを送風機流に投下して高重量スラグと低重量スラグとに選別し、高重量スラグは炉へ送出して地金を抽出する方法が開示されている。しかしアトマイズには多大な設備と費用を必要とし、かつ水蒸気爆発というトラブルが避けられない方法である。また得られたスラグ塊の粒径ばらつきが大きく、さらに機械破砕は風力選別が必要となる。しかも得られた地金も鉄分が50〜90%と品位が低いうえにバラツキが大きく、製鋼炉では使いにくい地金である。
特許文献2である特開2003−247786号公報には、製鋼スラグを容器にて徐冷して高温のスラグ大塊とし、破砕してスラグ小塊を製造する第1工程と、スラグ小塊をロータリークーラーに入れて急速冷却し、スラグの相変態を利用して粉化させる第2工程とからなる方法が開示されている。この過程でスクリーンにより粒径の大きいメタル分が回収できるとしているが、ロータリークーラーは圧力容器ではなく、アトマイズ機能や機械破砕工程がないために相変態による粉化現象は生じにくい。従って得られる地金に品位は特許文献1の方法よりもさらに低く、製鋼炉では使えない。また塩基度を限定することで適用スラグの範囲も限定され、一般的な方法とは言いがたい。
さらに特許文献3である特開平6−281363号公報には、製鋼スラグをスラグパン上で固化させ、これを機械的に破砕した高温粗破砕スラグを密閉圧力容器内に入れ、上方から冷却水を散水して発生させた水蒸気により圧力容器内部を所定の圧力条件とし、急冷と水和によるスラグ膨張を利用して破砕する方法が開示されている。得られた細粒スラグはそのまま、また粗粒部分は機械破砕して磁力選鉱し、製鋼原料とする。しかし、高温の圧力容器には多大な設備と費用を必要とし、かつ水蒸気爆発というトラブルが避けられない方法である。また得られたスラグ塊の粒径ばらつきが大きく、さらに機械破砕は風力選別が必要となり、地金も鉄分が50〜90%と品位が低いうえにバラツキが大きく、製鋼炉では使いにくいなど、特許文献1と同様の問題がある。
このように、様々な方法が提案されているものの上記理由により実用化されておらず、製鋼スラグは図1、図2に示された非効率でコストの高い方法により、世界中で処理されているのが実情である。なおこの従来法は、スラグパンから排出後の粉塵発生や、火の粉、火炎の発生が多く、設備の劣化も早いなどの多くの問題を残している。
特開平6−346161号公報 特開2003−247786号公報 特開平6−281363号公報
従って本発明の目的は、製鋼スラグに含まれる地金を、水蒸気爆発や火災を発生させることなく効率よく回収し、鉄分含有率の高い地金を得ることができる製鋼スラグ中の地金回収方法を提供することである。また本発明のその他の目的は、過大な設備やコストを要することなく、かつ粉塵飛散を抑制しつつ製鋼スラグに含まれる地金を回収することができる方法を提供することである。
上記の課題を解決するためになされた本発明の製鋼スラグ中の地金回収方法は、シェルの内面に突起を備えたロータリークーラーの内部に、溶銑予備処理炉または転炉から排出された製鋼スラグを500℃以上の高温状態で装入し、シェルを回転させることによって製鋼スラグに落下衝撃による破砕作用を10分間以上にわたって加えながら、シェルの中心部に設けられた冷却用送風管の枝管から製鋼スラグに向かって冷却風を吹付けて破砕し、製鋼スラグに含まれる地金を分離することを特徴とするものである。
なお請求項2のように、ロータリークーラーの内部に装入される製鋼スラグの温度を、700〜1000℃とすることが好ましく、請求項3のように、ロータリークーラーの内部における製鋼スラグの滞留時間を、10〜20分とすることが好ましい。
さらに請求項4のように、ロータリークーラーの入口部分にグリズリーを取付け、製鋼スラグ中の高温状態の大塊地金をロータリークーラーの前段で回収することが好ましく、請求項5のように、ロータリークーラーの出側に振動篩及び磁選機を設置し、ロータリークーラーの内部で破砕された製鋼スラグと地金とを分離回収することが好ましい。
本発明によれば、高温状態にあって硬度の低い溶銑予備処理炉または転炉から排出された製鋼スラグに対して、ロータリークーラーの内部において落下衝撃を10分間以上にわたって加えながら、シェルの中心部に設けられた冷却用送風管の枝管から製鋼スラグに向かって冷却風を吹付けて破砕する。これによりスラグはばらばらになり易く、従来のように数秒間で破砕機を通過させる方法よりも確実に破砕される。この結果、地金とスラグとの分離効率が高くなる。この破砕はロータリークーラーの内部において行われるから安全であり、火災発生や粉塵飛散のおそれがなく、高圧容器も不要であるから設備コストも安価となり、必要面積も縮小することができる。さらに従来のような広大な面積を必要とせず、スラグの運搬費用も削減することができる。
請求項2のように、ロータリークーラーの内部に装入される製鋼スラグの温度を700〜1000℃とすれば、冷却過程において製鋼スラグ及び鉄特有の相変態による体積変化を利用して破砕を起こさせることができる。このため落下衝撃による破砕作用と相変態による破砕作用とによって、より効率的に破砕を進行させることができる。
請求項3のように、ロータリークーラーの内部における製鋼スラグの滞留時間を10〜20分とすれば、品位の高い地金回収が可能となる。滞留時間を長くすれば破砕効果は向上するが、設備が大型化するとともに設備の損傷も大きくなり、修繕費等のランニングコストも上昇するので20分を越えることは好ましくない。
請求項5のように製鋼スラグ中の大塊地金をロータリークーラーの前段で回収するようにすれば、地金の回収効率が高まるとともに、大塊地金によりロータリークーラーが損傷することを防止することができる。
請求項6のようにロータリークーラーの出側に振動篩及び磁選機を設置すれば、破砕されたスラグ中から鉄地金を分離回収することができ、鉄分含有率の高い地金を得ることができる。
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図3は本発明の作業フロー図、図4は本発明の実施形態の説明図、図5はロータリークーラーの断面図である。
溶銑予備処理炉または転炉から排出された1300〜1500℃の高温の製鋼スラグは、スラグパン1により冷却ピット2に排出される。ここで高温スラグは溶融状態から高温固体となるまでの10〜30分程度の短期間静置され、大塊の地金があれば取り除かれる。従来は冷却ピット2において散水を行っていたが、本発明では散水は必ずしも行う必要がない。
固化した製鋼スラグは建設機械8により掘り起こされ、ホッパー28を介してロータリークーラー31に投入される。ホッパー28の入口にはグリズリー29と呼ばれる格子状の篩を設置し、製鋼スラグ中の大塊地金をロータリークーラー31の前段で回収することが好ましい。グリズリー29を通過した製鋼スラグは振動コンベヤ等の切り出し装置30により、500℃以上、より好ましくは700〜1000℃の高温状態でロータリークーラー31に装入される。
ロータリークーラー31は円筒形のシェル33を支持ローラー34により支持して、1〜10rpm程度の速度で回転させる構造であり、図4に示すようにシェル33の内面には多数の突起41が設けられている。入口カバー32の部分からシェル33の内部に装入された製鋼スラグはシェル33の回転に連れて持ち上げられては落下する動きを繰り返すが、これらの突起41はその落下衝撃効果を高める役割を持つ。突起41の形状は板状、角状、円筒状、丸棒状、軌条状、L状、H状など任意であり、さらにこれらを組み合わせた形状とすることもできる。
円筒形のシェル33の外部には外部散水管35が設けられており、シェル33を外部から冷却する。またシェル33の中心部には冷却用送風管40が固定されており、送風ファン39から冷却風が供給される。図5に示すように、冷却用送風管40は多数の枝管を備えており、その先端から製鋼スラグに向かって冷却風を吹付ける。その風量は例えば100〜400m/minである。このようにシェル33を回転させることによって製鋼スラグに落下衝撃による破砕作用を加えながら冷却風によって冷却する。冷却されたスラグとは異なり、シェル33に装入された500℃以上の製鋼スラグは硬度が低いため、破砕が進行する。
この急冷は冷却用送風管40のみによっても行うことができるが、この実施形態では冷却用送風管40の下方に冷却用送水管43を配置し、図5に示すようにその枝管から冷却水を散水して急冷効果を高めている。なお冷却水は高温の製鋼スラグとの接触により瞬時に蒸発し、自由水を生じることはない。
このようにして製鋼スラグは落下衝撃による破砕作用と相変態と収縮率の差による破壊効果とによって破砕され、出口シュート44からコンベヤ50上に排出される。本発明では、ロータリークーラー31の内部において製鋼スラグに落下衝撃による破砕作用を少なくとも10分は加える必要がある。しかしスラグの滞留時間が20分を越えるようにするには設備が大型化するとともに設備の損傷も大きくなり、修繕費等のランニングコストも上昇するので、10〜20分が適切である。
コンベヤ50の上部には磁選機51が設置されており、破砕物中から地金を分離する。磁選機51を通過したスラグは振動篩54により大粒スラグと小粒スラグとに分離される。本発明では製鋼スラグの破砕が十分に行われてスラグと地金との分離が進んでいるので、磁選機51により回収された地金は高品位であり、85%以上のレベルで安定した鉄分含有率となる。
このように本発明では製鋼スラグの破砕をロータリークーラー31の内部において行うので、水蒸気爆発や火災を発生させることがない。また圧力容器のような過大な設備やコストを要することなく、かつ粉塵飛散を確実に抑制することができる。なおロータリークーラー31の内部で発生する含塵ガスは排風ファン48によって吸引され、排気ダクト46を介してサイクロン集塵機47に導かれて浄化される。
本発明の利点を要約すると次のとおりである。
1 本発明では従来のジョークラシャーに代表される短時間通過型の破砕機とは異なり、長時間にわたり落下衝撃を加える方法を採用したので、スラグ塊をバラバラにすることができ、地金の回収効率及び回収された地金の鉄分含有率を向上させることができる。
2 本発明によればスラグ塊が粉化しにくく、土木利用に不向きな微粉発生量が少なくなる。
3 破砕機を必要としないので動力費用が少なく、また設備劣化が少ないので修繕費用も少なく、地金回収コストが安価となる。
4 アトマイザのような高価な設備が不要である。
5 騒音や粉塵によって周囲の環境を悪化させることがない。
6 炉から排出後、1時間以内に純度の高い地金を回収することができるため、速やかに炉へ再送して再使用することができる。
製鋼工程から排出される1000トンの製鋼スラグを用いて、本発明を実施した。
炉から排出されるスラグ温度は約1400℃の溶融状態であり、これを冷却ピットで従来のような冷却散水は行うことなく、20分間静置して固化させた。次にこのスラグをパワーショベルにより掘り起こし、ロータリークーラーに投入した。投入速度は10トン/hrであり、投入時のスラグ温度は約1000℃である。
ロータリークーラーのシェルは5rpmで回転され、その内部におけるスラグの滞留時間は20分間である。シェル内部には400m/minの冷却空気と、5m/hrの冷却水が供給された。シェルの内部には図5に示した突起が形成されており、スラグは落下衝撃による破砕作用と、急冷による破砕作用とによって破砕され、シェルから約100℃で排出された。排出物は磁選機に通し、地金を回収した。
この結果、150トンの地金が回収された。すなわち1トンのスラグから150kgの地金が回収されたこととなる。地金中の鉄分含有率は85%であり、全体で127.5トンの鉄が回収された。
一方、図1、図2に示した従来方法によっても1000トンの製鋼スラグの処理を行い、スラグ1トン当たり着磁量、スラグ1トン当たり微粉スラグ発生量、磁着物に含まれる純鉄分濃度、スラグ1トン当たり回収純鉄分量を本発明法と比較して表1に示した。このデータに示されるように、本発明によれば従来法よりも高純度の鉄分を大量に回収することができた。
Figure 0004418490
従来のスラグ処理法の説明図である。 従来のスラグ処理法の説明図(図1の続き)である。 本発明の工程を示すフロー図である。 本発明の実施形態の説明図である。 実施例に用いたロータリークーラーの断面図である。
符号の説明
1 スラグパン
2 冷却ピット
3 高温スラグ
4 散水装置
5 冷却水
8 建設機械
10 ホッパー
11 一次コンベヤ
12 一次磁選機
13 大塊地金
14 一次破砕機
15 中塊地金
16 二次磁選機
17 二次コンベヤ
18 一次振動篩
19 三次コンベヤ
20 二次破砕機
21 三次磁選機
22 四次コンベヤ
23 小塊地金
24 二次振動篩
25 中塊分級スラグ
26 小塊分級スラグ
28 ホッパー
29 グリズリー
30 切り出し装置
31 ロータリークーラー
32 入口カバー
33 シェル
34 支持ローラー
35 外部散水管
39 送風ファン
40 冷却用送風管
41 突起
43 冷却用送水管
46 排気ダクト
47 サイクロン集塵機
48 排風ファン
50 コンベヤ
51 磁選機
54 振動篩

Claims (5)

  1. シェルの内面に突起を備えたロータリークーラーの内部に、溶銑予備処理炉または転炉から排出される製鋼スラグを500℃以上の高温状態で装入し、シェルを回転させることによって製鋼スラグに落下衝撃による破砕作用を10分間以上にわたって加えながら、シェルの中心部に設けられた冷却用送風管の枝管から製鋼スラグに向かって冷却風を吹付けて破砕し、製鋼スラグに含まれる地金を分離することを特徴とする製鋼スラグ中の地金回収方法。
  2. ロータリークーラーの内部に装入される製鋼スラグの温度を、700〜1000℃とすることを特徴とする請求項1記載の製鋼スラグ中の地金回収方法。
  3. ロータリークーラーの内部における製鋼スラグの滞留時間を、10〜20分とすることを特徴とする請求項1記載の製鋼スラグ中の地金回収方法。
  4. ロータリークーラーの入口部分にグリズリーを取付け、製鋼スラグ中の高温状態の大塊地金をロータリークーラーの前段で回収することを特徴とする請求項1記載の製鋼スラグ中の地金回収方法。
  5. ロータリークーラーの出側に振動篩及び磁選機を設置し、ロータリークーラーの内部で破砕された製鋼スラグと地金とを分離回収することを特徴とする請求項1記載の製鋼スラグ中の地金回収方法。
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