JP4414811B2 - 耐熱ばね用ステンレス鋼線、及びそれを用いた耐熱ばね - Google Patents

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Description

本発明は、自動車や航空機、発電設備等のエンジン吸排気系統(例えば排気管接続のボールジョイント)のような高温環境で使用される耐熱ばね用のステンレス鋼線、及びそれを用いた耐熱ばねに関し、更に詳しくは特に高温環境での熱へたり性と耐食性を改良した耐熱ばね用のステンレス鋼線、及びそれを用いた耐熱ばねに関する。
自動車エンジンでの吸気系や排気系には種々形状や形態のばね部品が使用されており、その設置部位や使用環境等に応じて、例えばステンレス鋼線やピアノ線、あるいはニッケル合金などが用いられている。
特に、排気系では高温のエンジン排ガスが通過することから、その内部は数100度と非常に高い環境温度となり、こうした高温環境にあっても機能低下の少ないニッケル合金などの耐熱材料が選択されており、一方ばね強度が求められる部分ではSUS304やピアノ線などの高強度線材によるばねが用いられている。
ところで、このようなばね製品、とりわけ耐熱用として用いられるものにあっては、熱による耐へたり性が重要な特性とされ、例えば特許文献1では、重量でC:0.02〜1.00及びN:0.02〜1.00を含み、かつ0.15≦C+N≦1.00で、さらにMn:0.02〜2.0、Cr:12〜25、Ni:8.0〜15.0、及びMo:0.1〜4.0を含有し、かつNb:0.1〜3.0、Si:1.0〜3.5、Ti:0.1〜2.0、W:0.1〜4.0よりなる群から選択された少なくとも1 種を含有し、残部が実質的にFe及び不可避不純物からなる耐熱ばね用ステンレス鋼線を開示している。
また同時に前記特許文献1は、重量でC:0.02〜1.00及びN:0.02〜1.00を含み、かつ0.15≦C+N≦1.00で、さらにMn:4.0〜25.0、Cr:12〜25、Ni:0.1〜6.0を含有し、かつMo:0.1〜4.0、Nb:0.1〜3.0、Si:1.0〜3.5、Ti:0.1〜2.0、W:0.1〜4.0よりなる群から選択された少なくとも1 種を含有し、残部が実質的にFe及び不可避不純物からなる耐熱ばね用ステンレス鋼線も併せて開示している
特開平2000−239804号公報
ところで、前記特許文献1では耐へたり性の評価として、ばね製品を350℃×24Hrの連続条件で行った場合の残留剪断ひずみが0.03〜0.06であったとしているが、例えば自動車用エンジンなど実用環境では起動や停止が繰返し行なわれるのが通例であり、したがって、ばねは常に加熱と冷却を繰返して受けることとなる。また、近年のエンジンは高出力と高効率、また窒素酸化物などの環境問題への対応要請を受けて、エンジン排気系温度はますます上昇する傾向にあり、前記特許文献1のステンレス鋼線では未だ十分とは言い難い。
例えば、図4は、前記文献1による線ばねに550MPaの応力を加えた状態で、所定温度での加熱と冷却を4 回繰返して行った場合のばね荷重の減少率を示したものであって、加熱温度が高くなるほど荷重減少率が大きくなり、例えば温度400℃では約10%の荷重損失、すなわち" ばねヘタリ" が発生したものとなっている。
なお" ばねヘタリ" とは、弾性限度内の低い応力が加わった状態で、塑性ひずみが発生する現象と定義することができ、このことは、例えば可動転位と言われるような容易に動くことができる転位の移動によって発生するものと説明されている。特に本発明が対象とするエンジンの排気系に用いるような高温環境下では、このような転位の移動が生じやすく、現状ではばねヘタリの発生を完全になくするまでには至っていない。
また、このような排気系で用いられる例えばボールジョイント用ばねは、排気管の外部に付設されることから、熱腐食や外気環境腐食に耐える耐食性、耐酸化性とともに、更に加熱と冷却を繰返す場合の耐食性を考慮する必要もあり、このような繰返し使用時でも十分な特性を備えた材料が求められている。
そこで本発明は、実際の使用状態に則し、所定の締付け応力を付加した状態で加熱と冷却を繰返した場合にもヘタリが少なく、また耐食性にも優れた耐熱ばね用ステンレス鋼線の提供と、それによる耐熱ばねの提供を目的とする。
前記課題を解決する手段として、本願請求項1の発明は、質量で、C:0.08〜0.15%、Si≦2.0%、Mn≦2.0%、Ni:5.0〜8.0%、Cr:20.0〜23.0%、N:0.25〜0.40%、Mo≦1.0%を含んで残部がFeと不可避不純物でなり、かつ次式(1)のA値=6.5〜12.0%、及び次式(2)のB値=23.0〜28.0%を満足し、しかも線の一方を固定し他方側を下記の速度で回転させながらねじり応力を負荷して破断までにおける最大トルク(Tmax)から次式(3)によって求めるねじり強さ800〜1300MPaの特性を有することを特徴とする高温耐へたり性と耐食性に優れた耐熱ばね用ステンレス鋼線である。
A値=10N(Mn+Cr)/Ni …(1)
B値=Cr+3.3Mo+16N …(2)
ねじり強さ(τ B )=12Tmax/πd 3 …(3)
ただし、d:線径、
ねじり速度:1回転/Min、
標点間距離:線径×100、及び
軸荷重:引張破断荷重の1%とする。
また、請求項2に係る発明では、上記元素に加え、さらに任意元素として0.8%以下のTi、Nb、Al、B(ボロン)、Ca又はVの1種以上を含むことができる。
また、請求項3に係わる発明は、前記ステンレス鋼線は、質量で、C:0.08〜0.12%、Si:0.8〜1.8%、Mn:0.5〜1.6%、Ni:7.2〜7.8%、Cr:20.0〜23.0%、N:0.25〜0.42%を含む前記記載の耐熱ばね用のステンレス鋼線であり、請求項4に係わる発明は、前記ステンレス鋼線が、C+Nが0.35〜0.40%とするものであり、さらに請求項5に係わる発明は、前記ステンレス鋼線の次式に示すMd30が−100℃以下とする前記耐熱ばね用のステンレス鋼線である。
Md30=413−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−13.7Cr−9.5Ni−18.5Mo
また、請求項6の発明は、前記各請求項のいずれかに記載のステンレス鋼線が、該鋼線の直径(d)の3〜15倍の巻径(D)、かつ巻ピッチ(P)が(1/10〜3/2)Dの比率でコイル巻成形されてなる耐熱ばねであり、請求項7の発明は、前記耐熱ばねが、自動車排気管継手ボールジョイントのフランジ部を押圧用として用いられるものである。
本発明の耐熱ばね用ステンレス鋼線は、高温での熱へたり性と耐食性を備えた特性とする為に、各種構成元素の含有量調整とともに、10N(Mn+Cr)/Niと、Cr+3.3Mo+16Nを各々所定範囲にするものであって、さらにねじり強さを800〜1300MPaにしたものでは特にコイルばね用として優れた熱へたり性を備えることができる。
しかも、このような組成のステンレス鋼は耐食性にも優れていることから、仮に加熱状態で外気に触れるとしても耐食性や耐酸化性を向上でき、ボールジョイント用ばねとして優れた品質を発揮する。
発明に係わる耐熱ばね用ステンレス鋼線は、その組成として、質量でC:0.08〜0.15%、Si≦2.0%、Mn≦2.0%、Ni:5.0〜8.0%、Cr:21.0〜23.0%、N:0.25〜0.40%、Mo≦1.0%を少なくとも含むものとしており、残部をFeとするステンレス鋼であって、若干の不可避不純物を含有できる。
なお本発明で、例えば時効処理後の材料硬度を高める為に前記各組成に加えて、第三元素として例えばTi,Nb,Al,B,CaあるいはVの各上限を0.8%としてそのいずれか1 種以上を含むことを許容し、また不可避不純物としては、例えばO,S又はPなどを挙げることができ、その分量は各上限0.03%とするのがよく、また、特に熱間加工性を向上させる場合、前記Sを0.01%以下に規制することが有効である。なお、上記Moは、耐食性向上の為に有効な元素である。
ここで、本発明で各元素の含有量を前記範囲に規定する理由は以下による。
C:Cはオーステナイト生成元素であって、高温で生成するδフェライトの制御、加工硬化や高温強度などの点で有効であり、また結晶格子間に侵入して強化させることもできることから、少なくとも0.08%以上の添加としている。しかし、0.15%を越えるような多量添加は、炭化物の発生を招き、耐食性を低下されることから、より好ましくは0.08〜0.12%とする。
Si:Siは脱酸剤として機能し、固溶することで耐熱特性を高める効果があるが、過度に添加してもその効果はあまり望めず、逆に加工性を低下させることが予想されることからその上限を2.0%とし、より好ましくは0.8〜1.8%、さらに好ましくは1.3〜1.6%とする。
Mn:Mnも前記Siと同様に脱酸剤として用いられるもので、母材オーステナイト鋼のγ相の相安定元素として有効である。しかし、2.0%を越える添加は高温環境での組識安定性、耐酸化性に弊害をもたらすこととなり、より好ましくは0.5〜1.6%、さらに好ましくは0.8%以上1.2%未満とする。
Ni:Niは高温及び室温でのオーステナイト相を得る為に必須の元素であり、高温強度を高めることとなるが、5%より低いものではδフェライト相が生成する。したがって、5.0%以上の添加とするが、Niは高価であることからその上限は8.0%とし、より好ましくは、7.2〜7.8%とする。
Cr:Crは鋼線に耐食性と耐酸化性を付与する上で必須の元素であり、耐熱ばねとして高温環境での使用に耐え、かつ所定の耐食性を持たせる必要から、その下限を20.0%とし、一方、上限は靭性劣化を考慮して23.0%とした。より好ましくは、20.5〜22.0%とする。
N:NはCと同様にオーステナイト生成元素であるとともに、オーステナイト相を硬化するのに有効である。またCに比して析出物を形成しにくい為に耐久性の点でも好ましく、その効果は0.25%以上で顕著となるが0.40%を越える程多量に添加すると溶解や鋳造での品質を低下させることとなり、また生産性の面からも前記範囲とするが、より好ましくは0.26〜0.32%とする。
なお、本発明ではこのように組成の中で、さらに高温での耐へたり性と耐食性を兼備するばね用のものとする為に下記2つの関係式で定義されるA値、及びB値を満足し、かつ所定の強度を有するものを対象としている。
A値=10N(Mn+Cr)/Ni=6.5〜12.0%
B値=Cr+3.3Mo+16N =23.0〜28.0%
すなわち前記ヘタリ性を改良するには、材料内部での可動転位を動きにくい固着転位に変えることが有効であり、その手段として侵入型の固溶元素C,Nを積極的に添加することで、コットレル雰囲気を作るようにするのが望ましい。しかし、これら元素は他の元素とのバランスを見ながら行うことが必要であり、本発明では、Cr,Mnを増加させつつ、固溶量を減少させるNiを低減させることで、より多くのNが固溶でき、それによってばねの高温環境下でのヘタリ性が向上することを見出したものである。その関係を規定するものとして、前記A値を設けており、この値が6.5%を下回るものではヘタリ性の大幅向上が期待できず、また逆に12.0%を越える程大きいものでは靭性を低下させ、例えばコイリング成形時での加工性に影響を及ぼすなど好ましくない。
一方、B値は該ステンレス鋼線における耐食性あるいは耐酸化性の面から規定するものであって、ボールジョイント用ばねは例えば400℃の高温となることもあり、こうした高温環境下での熱腐食、すなわち耐酸化性とともに、外気に露出した状態で装着されるものでもあることから、外気環境での耐食性も同時に備える必要がある。したがって、こうした両耐食性を満足する為には、前記式のB値を少なくとも23.0%以上に調整する必要があるが、一方、28.0%より高くしようとすると成分バランスを困難にして、生産性低下などの問題が生ずることとなる。
本発明は、このように調整されたステンレス鋼において、その用途が耐熱ばね用として例えば圧縮や引張りコイルばねとして使用されることを基本とし、その場合、線自体が受ける応力がねじり応力であることから、その強度としてねじり強さを規定し、その値を800〜1300MPaにしている。なお「ねじり強さ」については種々刊行物に記載されているが、例えばprandtle法による、線の一方を固定し他方側を所定速度で回転させながらねじり応力を負荷して破断までにおける最大トルク(Tmax)から次式によって求めることができ、測定の具体的条件は以下による。
ねじり強さ(τB )=12Tmax/πd3
(d:線径)
ねじり速度 1回転/Min
標点間距離 線径×100
軸荷重 引張破断荷重の1%
そして、ねじり強さ(τB )が、少なくとも800MPa未満のものではばね用としての働きを期待できず、一方、1300MPaを越える程大きいものでは繰返し使用に伴うヘタリ率が大きくなって長寿命が得られず、締付け不良の原因となる。なお、ねじり強さは、例えば前記成分及び冷間加工時の加工率との関係で任意に調整することができ、予め求めたこれら条件を考慮しながら種々範囲で処理される。より好ましくは1000〜1250MPaとする。
また、こうして調整されたステンレス鋼の中で、さらに前記コットレル雰囲気を作りやすくする為には前記C+Nを0.35〜0.42%にすることが好ましい。また、ステンレス鋼は通常、伸線加工などの塑性加工に伴って加工硬化することとなるが、必要以上に加工硬化を大きくしたものではばね加工時でのかじりや靭性低下をもたらして折損等の誘発を招くこととなる。こうしたことからすると、ステンレス鋼線材の0.2%耐力を、例えば1200〜1800MPa(好ましくは1300〜1700MPa)程度にすることが好ましく、また前記塑性加工で発生する加工誘起マルテンサイト量を例えば10%未満に制限して耐熱性を高めることも有効であり、こうした特性を把握するものとして、前記Md30での値が−100℃以下となるようにするのがよい。
Md30=413−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−13.7Cr−9.5Ni−18.5Mo
このように調整してなるステンレス鋼線は、例えば図1に示すような自動車排気管継手ボールジョイント用のコイル状圧縮ばねとして用いられる。ボールジョイント継手1については、例えば実用新案第2598461号及び特開平10−176777号公報などにも見られているように、フランジ部10Aを持つ一方の配管Aと、該配管Aに接続されるもう一方の配管Bとの間にシール部材11を配置して、ネジ12にばね部材13を嵌め入れて締付けすることで該ばね部材13に弾性力を発生させ、シール部材11を所定応力で押し付けながら接続するものであって、前記ばね部材13として前記ステンレス鋼線による圧縮コイルばねを用いるものである。
この場合、コイルばねとしては、例えば線の表面にニッケルメッキを施してコイリング成型され、さらに300〜550℃程度の条件で低温焼きなまし処理がなされたものが用いられる。このような熱処理によって、線の機械的特性を向上し、同時に内部歪を開放させることができ、ボールジョイント継手用としての好ましいばね形態は、例えばコイル中心径Dを該線の径(d)の3〜15倍、またコイル巻ピッチ(P)を該コイル中心径(D)の1/10〜3/2倍程度とする。
巻ピッチについては、{ばね自由長−線径×(座巻+1)/有効巻数}によって求められ、巻ピッチがコイル中心径の1/10以下ではボールジョイント用ばねとして必要なストロークが得られず、また3/2以上ではたわみ量に対する線材へのねじり応力が大きくなることから、熱影響によるヘタリが発生しやすくなり望ましくないことによる。より好ましくは、D/d:5〜12、P/D:1/10〜2/3とする。
また本発明による前記耐熱ばね用ステンレス鋼線は、その断面形状を円形以外に楕円や薄帯状としたり、またばねの形態についても圧縮や引張り用として用いる前記コイルばね以外に、例えばねじりや曲げを対象とするトーションばねなどとして用いることもできる。
以下、本発明による前記ステンレス鋼及びそれによる耐熱ばねの効果について、さらに次の実施例で検証した。まず、高周波溶解炉で溶製し熱間圧延して線径5.5mmとした表1の化学成分を有する実施例線材(実施例1〜11)、比較例材として同表の示す比較例1〜9の各線材を供試材とした。そして、これら各線材に各々冷間伸線加工と熱処理を行い、最終加工率40〜90%を考慮した中間径線径にした後、温度1100℃で連続熱処理を行ない、得られた軟質線を出発材料とした。
Figure 0004414811
(試験1)
次に、この軟質線にスルファミン酸ニッケル浴でのニッケルメッキを施して、その表面に0.2〜5μm の厚さのNi層を形成し、これを潤滑剤として冷間伸線加工を行ない、目標線径2.0mmの鋼線を得た。その機械的特性を表2に一覧する。
Figure 0004414811
この結果に見られるように、各実施例鋼線はいずれも0.2%耐力:1500〜1700MPaの高強度であり、さらにこの線のねじり強度について、精密ねじり試験機(高千穂製作所製)によりねじり速度1回転/minの条件で行った結果、1000〜1100MPaの結果が得られた。
そこで、各種供試材についてさらにばね特性を評価する為の次の試験を行った。
(試験2)時効処理温度に伴うねじり特性の影響
図2は、本発明によるステンレス鋼線の時効処理温度を300〜650℃の範囲で変化させた場合のねじり強度とねじり降伏強さ(τ0.3 )を、比較例材と比較したものであり、特に実施例材については温度500〜550℃の範囲で特性の大幅な向上が見られており、その最大強度は、時効前の特性に比してねじり応力で15〜20%、ねじり降伏強さでは20〜30%も向上していることが確認された。
これに対して、比較例線ではねじり降伏強さは15〜25%程度に留まるものであったことから、本発明によるステンレス鋼線はねじり現象に対して強い抵抗(トルク)を有し、コイルばねあるいはねじりばねに好適するものであることが分かった。
なお、ねじり降伏強さについては、図5に示すねじり特性の線図から、引張試験の場合と同様に永久ひずみγ=0.3%を与えるときのねじり角θを{2・1γ0.3 /D}式より求めることとし、比例域(線OD)と平行に第1平行線(イ線)を引き、曲線との交点(点Y)とその垂線(点B)とを求める。そして、点Yを通る接線(線ST)を引いて、さらにこの線STと平行にかつトルク0点を通る第二平行線(ロ線)から点Cを求める。
以上の操作から求めたトルク値Y及び同Cの値を次式に代入してτ0.3 のねじり応力が算出される。
τ=4(3Y+θ・dT/dθ)/πD3
すなわち、τ0.3 (N/mm2 )=4(3Y+c)/πD3 で示される。
(試験3)ばねの熱へたり試験
図3は、本発明による耐熱ばねをボールジョイント用として用いる場合の評価として、使用環境温度300〜400℃における熱へたりの特性を調べたもので、用いたばねは、実施例材1及び2と、比較例材5〜7を各々選定し、これら各線材をコイル中心径18.5mm,有効巻数4.5、ばね長さ47mm、ピッチ9.1mmの圧縮コイルばねを製作した。なお、この時の低温焼きなまし処理条件は、実施例材は500℃×30min.であり、一方比較材については、比較例5、6は400℃×30min、比較例7は475℃×60min.とした。
そして、これら各ばねに550MPaの圧縮負荷応力を加えた状態で、各温度毎に24時間の加熱⇒常温冷却⇒加熱を合計4 回繰返した場合の特性である。この結果に見られるように、比較例材いずれも環境温度の上昇に伴ってへたり率を示す残留剪断歪が急激に増加し、比較例6、7では温度350℃から急増し、温度400℃では0.3%まで達しているものの、本発明による実施例1、2は、非常に安定していることが理解される。したがって、実際の使用状態として加熱と冷却を繰返す繰返し試験でのへたりに対して優れているものである。
(試験4)耐食性試験
耐食性試験として、実施例1、2及び比較例5、7を選定し、JIS−G0577に基づいて孔食電位の測定を行った。掃引速度は20mV/min.で参照電極にはカロメル電極を用いた。結果を表3に示す。実施例1、2は、比較例より極めて高い孔食電位を示し、大幅に耐食性が優れていることがわかる。
Figure 0004414811
これら結果から明かなように、本発明による耐熱ばね用のステンレス鋼線は、SUS304,SUS631J1など従来のステンレス鋼線に比して、特にねじり特性、耐食性に優れ、また伸線加工性やコイリング性などにおいても何ら問題ないものである。
ボールジョイント継手の断面図である。 低温焼なまし温度に伴うねじり耐力の変化を示す線図である。 耐熱ばねの環境温度に伴う熱へたり特性の変化を示す線図である。 一般的な耐熱ばねの熱へたり特性の変化を示す線図である。 ねじり降伏強さを説明する線図である。
符号の説明
A,B 配管
1 ボールジョイント
11 シール部材
12 接続ネジ
13 ばね

Claims (7)

  1. 質量で、C:0.08〜0.15%、Si≦2.0%、Mn≦2.0%、Ni:5.0〜8.0%、Cr:20.0〜23.0%、N:0.25〜0.40%、Mo≦1.0%を含んで残部がFeと不可避不純物でなり、かつ
    次式(1)のA値=6.5〜12.0%、及び次式(2)のB値=23.0〜28.0%を満足し、
    しかも線の一方を固定し他方側を下記の速度で回転させながらねじり応力を負荷して破断までにおける最大トルク(Tmax)から次式(3)によって求めるねじり強さ800〜1300MPaの特性を有することを特徴とする高温耐へたり性と耐食性に優れた耐熱ばね用ステンレス鋼線。
    A値=10N(Mn+Cr)/Ni …(1)
    B値=Cr+3.3Mo+16N …(2)
    ねじり強さ(τ B )=12Tmax/πd 3 …(3)
    ただし、d:線径、
    ねじり速度:1回転/Min、
    標点間距離:線径×100、及び
    軸荷重:引張破断荷重の1%とする。
  2. 質量で、C:0.08〜0.15%、Si≦2.0%、Mn≦2.0%、Ni:5.0〜8.0%、Cr:20.0〜23.0%、N:0.25〜0.40%、Mo≦1.0%を少なくとも含むとともに、任意元素として0.8%以下のTi、Nb、Al、B(ボロン)、Ca又はVの1種以上を含んで残部がFeと不可避不純物でなり、かつ
    次式(1)のA値=6.5〜12.0%、及び次式(2)のB値=23.0〜28.0%を満足し、
    しかも線の一方を固定し他方側を下記の速度で回転させながらねじり応力を負荷して破断までにおける最大トルク(Tmax)から次式(3)によって求めるねじり強さ800〜1300MPaの特性を有することを特徴とする高温耐へたり性と耐食性に優れた耐熱ばね用ステンレス鋼線。
    A値=10N(Mn+Cr)/Ni …(1)
    B値=Cr+3.3Mo+16N …(2)
    ねじり強さ(τ B )=12Tmax/πd 3 …(3)
    ただし、d:線径、
    ねじり速度:1回転/Min、
    標点間距離:線径×100、及び
    軸荷重:引張破断荷重の1%とする。
  3. 前記ステンレス鋼線は、質量で、C:0.08〜0.12%、Si:0.8〜1.8%、Mn:0.5〜1.6%、Ni:7.2〜7.8%、Cr:20.0〜23.0%、N:0.25〜0.40%を含む請求項1又は2に記載の耐熱ばね用ステンレス鋼線。
  4. 前記ステンレス鋼線は、C+Nが0.35〜0.42%である請求項3に記載の耐熱ばね用ステンレス鋼線。
  5. 前記ステンレス鋼線は、次式に示すMd30が−100℃以下である請求項4に記載の耐熱ばね用ステンレス鋼線。
    Md30=413−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−13.7Cr−9.5Ni−18.5Mo
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のステンレス鋼線が、該鋼線の直径(d)の3〜15倍のコイル中心径(D)、かつ巻ピッチ(P)が(1/10〜3/2)Dの比率でコイル巻成形されてなる耐熱ばね。
  7. 自動車排気管継手ボールジョイントのフランジ部の押圧用として用いられる請求項6の耐熱ばね。
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