JP4414636B2 - 超伝導磁石装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は超伝導磁石装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の超伝導磁石装置は、超伝導コイルと、この超伝導コイルに給電するための励磁電源部と、超伝導コイルを冷却するための冷却装置を備えている。図4に従来の常時電源供給タイプの超伝導磁石装置における励磁電源部の一例を示す。超伝導コイル30は、励磁電源部40から電力を供給されて磁場を発生する。励磁電源部40は、商用電源からの電圧を所定の電圧値まで降圧するための変圧部41と、変圧部41からの電圧を整流するための整流部42と、超伝導コイル30への電流を制御するための電流制御部43とから成る。
【0003】
このような励磁電源部40において、停電が発生した場合には、冷却装置は勿論のこと、超伝導コイル30への電力供給が停止し、コイル通電電流は急激に減少する。そのため、超伝導コイル30に交流損失による熱が発生し、超伝導コイル30にクエンチ現象が発生する。このため、コイル温度が急上昇し、停電が復旧したとしても冷却装置によりコイル温度が通電可能な温度に下がるまでの時間(典型的な例で1日)は超伝導コイル30への通電ができなくなってしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
停電対策として、励磁電源部40と冷却装置の全ての電力をまかなう無停電電源(Uninterrup Power System)(以下、UPSと略称する)装置を設置するとなると、大電力容量のUPS装置が必要となり、装置が大型化し高価になるという欠点がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、停電が発生しても所定時間、磁場発生を継続できる超伝導磁石装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の超伝導磁石装置は、励磁電源部から電力を供給される超伝導コイルを冷凍機で冷却するようにした、磁場発生用の超伝導磁石装置において、前記励磁電源部は、バッテリを内蔵して停電発生時に前記励磁電源部における構成要素の制御電源のバックアップを行うUPS装置と、前記励磁電源部の出力を短絡・開放するためのスイッチ回路と、前記UPS装置から電力供給を受けて前記スイッチ回路を、停電発生時には短絡状態にする一方、復電時には開放状態にする出力短絡・解除回路と、商用電源からの電圧を所定の電圧値まで降圧するための変圧部と、該変圧部からの電圧を整流するための整流部と、該整流部に接続されて前記超伝導コイルへの電流を制御するための電流制御部と、前記スイッチ回路と前記超伝導コイルとの間の電源ラインに設けられて前記超伝導コイルを流れる電流を検出する検出手段と、前記UPS装置から電力供給を受けると共に、前記検出手段で検出された電流値を受けて、前記電流制御部における電流値を前記復電時に検出された電流値に一致させるための復電時電流制御回路とを備える。
【0007】
本超伝導磁石装置の他の態様によれば、前記超伝導コイルが真空断熱容器に収容されて前記冷凍機の冷凍ステージと熱的に結合されていることにより冷却されるものである場合、前記真空断熱容器内には更に、蒸発潜熱により冷却を行う冷却媒体を収容した保冷容器を前記超伝導コイルと熱的に結合させるように配置して停電が発生した際の冷却を行うように構成されても良い。
【0010】
なお、上記のいずれの態様においても、前記冷凍機にはGM冷凍機を使用し、前記冷却媒体にはヘリウムを使用することが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1、図2を参照して、本発明の実施の形態について説明する。はじめに、図2を参照して、本発明が適用される常時電源供給タイプの超伝導磁石装置における超伝導コイル30とその冷却装置20について説明する。
【0012】
冷却装置20は、真空断熱容器21とその内部に配置された熱輻射シールド容器22とを有し、熱輻射シールド容器22内に超伝導コイル30が配置される。真空断熱容器21内の冷却はGM冷凍機23により行われる。つまり、GM冷凍機23の第1段冷凍ステージが熱輻射シールド容器22の一部に熱的に結合され、第2段冷凍ステージが伝熱板24に熱的に結合されている。超伝導コイル30はその巻枠31が伝熱板24に熱的に結合されている。なお、超伝導コイル30や熱輻射シールド容器22の支持構造については図示を省略している。
【0013】
真空断熱容器21内にはまた、熱輻射シールド容器22を通してその中心軸部に真空断熱容器21外と連通する室温空間25が形成され、室温空間25内で超伝導コイル30の発生する強磁場を利用する。
【0014】
真空断熱容器21には更に、伝熱板24上に液体ヘリウムを貯蔵するための保冷容器26を配置している。保冷容器26には、真空断熱容器21外から液体ヘリウムまたはガスヘリウムを供給するための供給管27と、安全弁28用の配管とが接続されている。ガスヘリウムが供給される場合には、超伝導コイル30の初期冷却時に共に冷却されてガスヘリウムが液化される。
【0015】
停電発生により冷却装置が停止した後の真空断熱容器21内への熱侵入分を保冷容器26内の液体ヘリウムの蒸発潜熱で吸収することによって超伝導コイル30の温度上昇を抑えることが可能である。
【0016】
一般に、冷却装置が停止した後の超伝導コイル30への侵入熱量は数W以下である。超伝導コイル30の交流損失による発熱が無いものと仮定すれば、十数分程度以内の停電、冷却装置停止に伴う侵入熱量を吸収するために必要な液体ヘリウムの量は、数リットル程度で十分である。そして、保冷容器26内に収容された液体ヘリウムは、冷却装置が運転されている状態では蒸発することはないので、運転中の定期的な補給は必要無く、停電が終わって復電した後の補給で十分である。
【0017】
次に、図1を参照して、本発明の実施の形態による励磁電源部10について説明する。励磁電源部10は、商用電源からの電圧を所定の電圧値まで降圧するための変圧部11と、変圧部11からの電圧を整流するための整流部12と、超伝導コイル30への電流を制御するための電流制御部13に加えて、以下の構成要素を有する。
【0018】
つまり、励磁電源部10は、超伝導コイル30に流れる電流を検出するための電流計14、バッテリを内蔵し変圧部11に接続されたUPS装置15、UPS装置15に接続された出力短絡・解除回路16及び復電時電流制御回路17、電流制御部13の出力ライン間に接続され出力短絡・解除回路16によって電流制御部13の出力側を短絡するためのスイッチ回路18を有する。
【0019】
UPS装置15は、停電発生時に励磁電源部10内部の各要素を動作させるためのものであるので、バッテリ容量は前に述べたUPS装置の電力容量に比べて十分に小さいもので良い。出力短絡・解除回路16は、停電発生時にはスイッチ回路18をオンとして電流制御部13の出力、言い換えれば超伝導コイル30の入力側を短絡し、復電時にはスイッチ回路18をオフとして電流制御部13の出力側の短絡を解除する。復電時電流制御回路17は、停電中に超伝導コイル30に流れる電流値を電流計14から受け、復電時の電流制御部13における出力電流を、復電時に超伝導コイル30に流れていた電流値に一致させる。
【0020】
以下に、保冷容器26の液体ヘリウム及び励磁電源部10の作用について説明する。
【0021】
通常状態(非停電時)の動作は、以下の通りである。
【0022】
(1)保冷容器26は液体ヘリウムを溜めた状態にある。
【0023】
(2)UPS装置15は通常給電状態にある。
【0024】
(3)出力短絡・解除回路16は、スイッチ回路18を開放状態にしている。
【0025】
一方、停電発生及び停電中の動作は、以下の通りである。
【0026】
(4)UPS装置15は変圧部11の電圧が所定値以下になると、内蔵のバッテリによるバックアップ状態に入る。
【0027】
(5)出力短絡・解除回路16はUPS装置15から供給されるバックアップ電力で稼動し、変圧部11の出力が無くなるとスイッチ回路18を短絡状態にする。
【0028】
(6)停電中は、保冷容器26内の液体ヘリウムの蒸発潜熱によりコイル温度の上昇が抑えられる。
【0029】
(7)復電時電流制御回路17は、励磁電源部10における電流制御部13の出力電流値を、電流計14から得られた電流値に設定するように動作している。
【0030】
復電時の動作は、以下の通りである。
【0031】
(8)停電が復旧すると、復電時電流制御回路17は、励磁電源部10における電流制御部13の出力電流値を、復電時に得られた電流計14からの電流値に設定する。
【0032】
(9)出力短絡・解除回路16は、変圧部11の電圧が回復すると、スイッチ回路18を開放状態にする。これにより、電流制御部13からは復電時に超伝導コイル30に流れていた値と同じ値の電流が超伝導コイル30に流れることになり、通常の状態に戻る。
【0033】
(10)UPS装置15は変圧部11の電圧が回復すると、上記(2)の給電状態にもどる。
【0034】
図3に負帰還型の電流制御部13の基本構成の一例を示す。トランジスタTr1のコレクタが整流部12に接続され、エミッタには電流検出用の抵抗器R1の一端側が接続されている。トランジスタTr1のベースには演算増幅器OP1の出力が接続されている。演算増幅器OP1の反転入力端子には抵抗器R1の一端側が接続されている。抵抗器R1の他端側はスイッチ回路18に至ると共に、抵抗器R2を介して演算増幅器OP1の非反転入力端子に接続されている。抵抗器R2の両端には復電時電流制御回路17からの信号電圧Vが接続されている。なお、本回路は、復電時電流制御回路17と電流制御部13との接続関係の一例を説明するための必要最小限の構成を示したに過ぎない。
【0035】
以上のようにして、本形態の超伝導磁石装置によれば、停電が継続している間もUPS装置15におけるバッテリの許容時間内であれば超伝導コイル30による磁場発生を継続できる。
【0036】
本発明を好ましい実施の形態を例示して説明したが、本発明は上記の実施の形態に制限されるものでは無い。つまり、上記の実施の形態では、電流計14、UPS装置15、出力短絡・解除回路16、復電時電流制御回路17、スイッチ回路18、液体ヘリウムを収容した保冷容器26のすべてを備えた場合である。これは、停電の継続時間が十数分程度あっても対応可能であり、しかも復電時の超伝導コイル30への電流供給を安定にするために必要な構成である。しかしながら、要求される仕様が、数秒というような短時間の停電のみに対応可能であれば良いという場合には、UPS装置15と出力短絡・解除回路16及びスイッチ回路18とを備えるだけで良い。つまり、数秒程度の停電の場合には、スイッチ回路18により超伝導コイル30の電流経路を閉ループにして電流を循環させるようにすれば良い。
【0037】
あるいはまた、復電時の超伝導コイル30への電流供給の安定化を無視できる場合、UPS装置15、出力短絡・解除回路16、スイッチ回路18、液体ヘリウムを収容した保冷容器26だけを備えた構成でも良い。
【0038】
【発明の効果】
本発明による超伝導磁石装置は、停電により励磁電源部への電力供給が無くなり、冷却装置が停止した場合でも、所定の時間内は超伝導コイルによる磁場発生を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による超伝導磁石装置における励磁電源部の実施の形態を示した構成図である。
【図2】本発明による超伝導磁石装置のうちの超伝導コイルの冷却装置の構成を示した図である。
【図3】図1に示された電流制御部の一例を示した回路図である。
【図4】従来の超伝導磁石装置における励磁電源部の構成を示した図である。
【符号の説明】
18 スイッチ回路
20 冷却装置
21 真空断熱容器
22 熱輻射シールド容器
23 GM冷凍機
24 伝熱板
25 室温空間
26 保冷容器
27 供給管
28 安全弁
30 超伝導コイル

Claims (3)

  1. 励磁電源部から電力を供給される超伝導コイルを冷凍機で冷却するようにした、磁場発生用の超伝導磁石装置において、
    前記励磁電源部は、バッテリを内蔵して停電発生時に前記励磁電源部における構成要素の制御電源のバックアップを行うUPS装置と、
    前記励磁電源部の出力を短絡・開放するためのスイッチ回路と、
    前記UPS装置から電力供給を受けて前記スイッチ回路を、停電発生時には短絡状態にする一方、復電時には開放状態にする出力短絡・解除回路と
    商用電源からの電圧を所定の電圧値まで降圧するための変圧部と、
    該変圧部からの電圧を整流するための整流部と、
    該整流部に接続されて前記超伝導コイルへの電流を制御するための電流制御部と、
    前記スイッチ回路と前記超伝導コイルとの間の電源ラインに設けられて前記超伝導コイルを流れる電流を検出する検出手段と、
    前記UPS装置から電力供給を受けると共に、前記検出手段で検出された電流値を受けて、前記電流制御部における電流値を前記復電時に検出された電流値に一致させるための復電時電流制御回路とを備えたことを特徴とする超伝導磁石装置。
  2. 請求項1に記載の超伝導磁石装置において、
    前記超伝導コイルは真空断熱容器に収容されて前記冷凍機の冷凍ステージと熱的に結合されていることにより冷却され、
    前記真空断熱容器内には更に、蒸発潜熱により冷却を行う冷却媒体を収容した保冷容器を前記超伝導コイルと熱的に結合させるように配置して停電が発生した際の冷却を行うことを特徴とする超伝導磁石装置。
  3. 請求項1又は2に記載の超伝導磁石装置において、
    前記冷凍機はGM冷凍機であり、前記冷却媒体はヘリウムであることを特徴とする超伝導磁石装置。
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