JP4409758B2 - 研磨シートの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体基板上の配線形成面を効率よくかつ高精度に平坦化でき、研磨材ブロックをスライスして作製される研磨シートの研磨効率および研磨面の平坦性が当該ブロック内でのバラツキが少ない研磨材組成物、研磨シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
昨今の情報産業の急激な進展に伴い、パソコン等に使用されるLSI需要は急激に増加しており、LSIの大容量化、多層配線化、高速化が要求されて来ており、高度のLSI平坦化技術が不可欠となっているが、従来のエッチング等の平坦化技術では不十分であり、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法と呼ばれる化学機械的研磨法が、既に米国で大々的に適用されつつある。
【0003】
CMP法に供される研磨材としては、優れた機械強度及び弾性を有するポリウレタン樹脂が有力視されている。既に、特表平8−500622号公報においてイソシアネート末端プレポリマーと4,4’−メチレン−ビス[2−クロロアニリン]からなるジアミン化合物とを混合撹拌し、反応硬化する際に、膨張済の微小中空球体を同時に添加混合させたすることを特徴とする研磨基材が提案されている。
【0004】
また、特開平11−322877号公報においては、イソシアネート末端プレポリマーと前記公報と同一化学種のジアミン化合物と両者の反応硬化の際の熱によって熱膨張する微小体とを混合撹拌し、反応硬化させた研磨材ブロックが開示されている。さらに、特開平11−322878号公報においては、微小体として既膨張のスチレンビーズ又はイソシアネート末端プレポリマーと特定のジアミン化合物とが反応硬化するの際の反応熱によって熱膨張するスチレンビーズを用いた研磨材が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示されたイソシアネート末端プレポリマーとジアミン化合物を用いても、得られる研磨材ブロック内の密度や硬度のバラツキが大きく、当該ブロックを所定厚みに裁断した研磨シートの研磨効率および研磨面の平坦性がブロック内研磨シート間でバラツキが大きいという問題があった。本発明の目的は、研磨材ブロック内で均一な研磨材組成物を提供し、研磨効率及び研磨面の平坦性が研磨材ブロック内の研磨シート間でバラツキのない研磨材シートを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、研磨材ブロック内の密度及び硬度のバラツキがブロック内の分散させた微小体(c)の偏在によるもので有ることを見出し、微小体を均一に分散させた状態のままイソシアネート末端プレポリマーとジアミン化合物を反応硬化させる手法について検討を加えた。
【0007】
本発明者らは、反応イソシアネート末端プレポリマー(a)とジアミン化合物(b)、特に4,4’−メチレン−ビス[2−クロロアニリン]を主成分とするジアミン化合物(b)との反応硬化特性を詳細に検討したところ、当該化合物中に含まれる3量体が反応硬化性に大きく影響することを突き止め、4,4’−メチレン−ビス[2−クロロアニリン]を主成分としその3量体を7〜11重量%含有するジアミン化合物を用いることにより、均一組成の研磨材ブロックが得られ、研磨効率および研磨面の平坦性が研磨材ブロック内でブレの無い研磨組成物および研磨シートが作製できることを見出すことによって、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、研磨効率および研磨面の平坦性を安定させるためには、研磨材ブロックの組成が均質であることが必要であるが、このためには、イソシアネート末端プレポリマー(a)とジアミン化合物(b)と微小体(c)が、均一に撹拌、分散するのに十分な時間が必要である一方、均一に分散した微小体(c)が液((a)と(b)の混合液)との比重差により当該研磨材ブロックの上層部又は下層部に偏在する前に反応硬化することが必要である。
【0009】
上記条件を満たす反応硬化をさせるのに最適なジアミン化合物(b)が、4,4’−メチレン−ビス[2−クロロアニリン]を主成分とし、その3量体を7重量%以上11重量%以下含有するジアミン化合物であり、これを用いることにより得られた研磨材ブロックを所定厚みに裁断して得られる研磨シートは、研磨材ブロックからの採取位置によらず組成が均一であり、研磨特性のバラツキが少ない。
【0010】
本発明における3量体は、4,4’−メチレン−ビス[2−クロロアニリン](化1参照)を構成する2−クロロアニリンがホルムアルデヒドによって3個縮合したものをいう(化2参照)。通常4,4’−メチレン−ビス[2−クロロアニリン]の合成は、触媒にNaOHを用いて、2−クロロアニリンとホルムアルデヒドとを縮合させるが、2量体に相当する主成分4,4’−メチレン−ビス[2−クロロアニリン]の他に上記3量体等が副成する。これらを分離するには多大のコストを要するため、工業上は通常、混合物で有機合成試薬として供される。
【0011】
【化1】
Figure 0004409758
【0012】
【化2】
Figure 0004409758
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に使用するイソシアネート末端プレポリマー(a)は、イソシアネート化合物と活性水素基含有化合物とを、イソシアネート基(NCO)と活性水素基(H* )の当量比NCO/H* が1.6〜2.6、好ましくは1.8〜2.2の範囲で加熱反応して製造されるNCO基末端のオリゴマーである。
【0014】
イソシアネート化合物としては、特に限定されず、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ジイソシアネート化合物、水素添加4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI、商品名ハイレン−W、ヒュルス社製)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物等が挙げられる。上記の化合物は単独使用してもよく、併用してもよい。
【0015】
また、上記ジイソシアネート化合物の他に3官能以上の多官能ポリイソシアネート化合物も使用可能である。多官能性のイソシアネート化合物としては、デスモジュール−N(バイエル社)や商品名デュラネート(旭化成工業製)として一連のジイソシアネートアダクト体化合物が市販されている。これらの3官能以上のポリイソシアネート化合物は、単独で使用するとプレポリマー合成に際してゲル化しやすいために、ジイソシアネート化合物に添加して使用することが好ましい。
【0016】
活性水素基含有化合物としては、特に限定はないが、少なくとも2以上の活性水素原子を有する有機化合物であり、ポリウレタンの技術分野において通常ポリオール化合物、鎖延長剤と称される化合物を用いることができる。活性水素基とはイソシアネート基と反応する水素を含む官能基であり、水酸基、第1級もしくは第2級アミノ基、チオール基(SH)などが例示される。
【0017】
ポリオール化合物とは、末端基定量法による分子量が500〜10000程度のオリゴマーであり、以下のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールの1種又は2種以上にプロピレンオキサイドを付加して得られるポリオキシプロピレンポリオール類、エチレンオキサイドを付加して得られるポリオキシエチレンポリオール類、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等を付加して得られるポリオール類、および、前記多価アルコールにテトラヒドロフランを開環重合により付加して得られるポリオキシテトラメチレンポリオール類が例示できる。上述の環状エーテルを2種以上使用した共重合体も使用可能である。
【0019】
ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールあるいはその他の低分子量多価アルコールの1種又は2種以上とグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸あるいはその他の低分子ジカルボン酸やオリゴマー酸の1種又は2種以上との縮合重合体、プロピオラクトン、カプロラクトン、バレロラクトン等の環状エステル類の開環重合体等のポリオール類が例示できる。
【0020】
鎖延長剤とは、分子量が500程度以下の化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン等に代表される脂肪族系低分子グリコールやトリオール類、メチレンビス−o−クロルアニリン(MOCA)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の芳香族ジアミン類、1,4−ビスヒドロキシエトキシベンゼン(キュアミンH(イハラケミカル社製))、m−キシリレンジオール(三菱ガス化学社製)等の芳香族系ジオール類等が挙げられる。
【0021】
本発明に使用するジアミン化合物(b)は、4,4’−メチレン−ビス[2−クロロアニリン]を主成分とし、その3量体を7.5〜11重量%含有するジアミン化合物である。主成分が4,4’−メチレン−ビス[2−クロロアニリン]のものを用いるのは、イソシアネート末端プレポリマー(a)との反応硬化特性が均一な研磨材組成物の作製に適しているからである。即ち、均一な研磨材組成物の作製に当たっては、(a)、(b)及び未または既膨張の微小体(c)を撹拌し均一に分散できるに足る十分な時間と、均一に分散した(c)が(a)と(b)の混合液との比重差により混合液の上層部又は下層部に偏在してしまう前に硬化させることの2つの要件が必要であるところ、4,4’−メチレン−ビス[2−クロロアニリン]を主成分とするジアミン化合物(b)は、イソシアネート末端プレポリマー(a)との撹拌混合後反応開始までの時間が、含有する3量体の含有量によって変わり、一旦反応硬化が始まると急激に反応が進み極めて短時間に硬化するため、上記2つの要件を満たすことができ、均一な研磨材組成物が作製できる。
【0022】
ここで、本発明者は反応硬化特性の検討により、4,4’−メチレン−ビス[2−クロロアニリン]主成分とするジアミン化合物中の3量体の存在は、イソシアネート末端プレポリマーとの反応を抑制する方向に働くことに注目した。
【0023】
本発明におけるジアミン化合物(b)中の3量体の含有量は、7〜11重量%である。3量体の含有量が7重量%未満であると、撹拌混合後直ちに反応が開始し、微小体を均一に分散させるに十分な混合撹拌時間を確保できない。一方、3量体の含有量が11重量%を越えると、均一分散のために十分な混合撹拌時間は確保できるが、反応開始後の迅速な反応硬化が阻害され、撹拌によって均一に分散した微小体が硬化物の上層部又は下層部に偏在してしまう。上記観点から、より均一な研磨材組成物を作成するためには、本発明におけるジアミン化合物(b)中の3量体の含有量は、7.5〜10.5重量%がより好ましい。なお、上記ジアミン化合物中の3量体の含有量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析による通常の方法により同定できる。
【0024】
本発明に用いる微小体(c)は、研磨材組成物中に微小セルを形成するものであれば特に限定されず、混合前に予め膨張して所望のセル径を有しているものであっても、混合時には未膨張であるが反応硬化の際の反応熱によって膨張し所望のセル径を有するものであっても構わない。具体的には、既又は未膨張のスチレンビーズ、アクリルビーズ、塩化ビニリデンとアクリロニトリルとの共重合体ビーズ等が挙げられる。また膨張後の(c)の粒径は、研磨シート表面での均一な研磨性能の発現の観点から、平均粒径で150μm以下が好ましい。特に好ましくは100μm以下である。
【0025】
本発明におけるイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(a)とジアミン化合物(b)、即ち、4,4’−メチレン−ビス[2−クロロアニリン]との配合比率は、それぞれに含有されるイソシアネート基とアミノ基とのモル比により決定される。その比率はNH2/NCO=0.8〜1.1であることが好ましい。特に好ましくは0.8〜1.0である。
【0026】
また、微小体(c)の添加量は、(a)+(b)からなる組成物100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましい。特に好ましくは2〜5重量部である。
【0027】
なお、本発明において、(a)+(b)+(c)からなる組成物に対して、混合、硬化までの任意の時点で、必要に応じて酸化防止剤等の安定剤、滑剤、顔料、充填剤、帯電防止剤その他の添加剤を加えることができる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
アジプレンL−325(イソシアネート末端プレポリマー、NCO=9.25%、ユニロイヤル社製)100重量部に、エクスパンセル551DE(既膨張微小体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体のビーズ、日本フィライト社製)3.2重量部を、プライマリーミキサーで混合したものを減圧脱泡する。このプレポリマー混合物を70℃に温度調節した後、120℃に温度調節したイハラキュアミンMT(イハラケミカル社製:3量体7.5%を含有)25重量部を添加し、プライマリーミキサーで撹拌混合後金型へ注型して反応硬化させた後、さらにオーブンで120℃で5時間キュアをして研磨材ブロックを得た。当該ブロックを1.3mm厚みに裁断して研磨シートを作製した。当該研磨シート12枚について、シリコンウエハの研磨試験(ウエハ荷重300g/cm2、プラテン回転数60rpm、研磨時間120秒)を行った。その結果を表1に示す。ここで、各研磨シートの面内均一性は、研磨試験終了後のウエハ膜厚の測定から下式によって算出した。
面内均一性(%)=(最大膜厚−最小膜厚)/(2×平均膜厚)×100研磨速度のバラツキは1280〜1370Å/min(標準偏差:25.9)、面内均一性のバラツキは3〜8%の範囲内にあった。
【0030】
(実施例2)
イハラキュアミンMTに替えて3量体10.5%含有物を用いた以外は、実施例1と同様にして研磨材ブロックを作製し、当該ブロックから12枚の研磨シートを作製し、シリコンウエハの研磨試験を行ったところ、研磨速度のバラツキは1230〜1310Å/min(標準偏差:25.5)、面内均一性のバラツキは4〜8%の範囲内にあった(表1参照)。
【0031】
(比較例1)
イハラキュアミンMTに替えて3量体13%含有物を用いた以外は、実施例1と同様にして研磨材ブロックを作製したが、微小体が上層部に偏在した。当該ブロックから12枚の研磨シートを作製し、シリコンウエハの研磨試験を行ったところ、研磨速度のバラツキは1130〜1490Å/min(標準偏差:120.9)、面内均一性のバラツキは5〜15%と大きいものであった(表1参照)。
【0032】
(比較例2)
イハラキュアミンMTに替えて3量体3%含有物を用いた以外は、実施例1と同様にして研磨材組成物を作製しようとしたが、ポットライフが短く、金型に流し込むための十分な時間が得られず、良好な研磨材ブロックが作製できなかった。
【0033】
【表1】
Figure 0004409758
【0034】
【発明の効果】
上述のように、イソシアネート末端プレポリマー(a)とジアミン化合物(b)と微小体(c)とを混合反応させて得られる研磨材ブロックをスライスして得られる研磨シートにおいて、前記(b)として4,4’−メチレン−ビス[2−クロロアニリン]を主成分とし、その3量体を7重量%以上11重量%以下含有するジアミン化合物を用いることにより、研磨効率および研磨面の平坦性が研磨材ブロック内でのバラツキが少ない研磨シートが提供できる。

Claims (1)

  1. イソシアネート末端プレポリマー(a)と、スチレンビーズ、アクリルビーズ、及び塩化ビニリデンとアクリロニトリルとの共重合体ビーズからなる群より選択される少なくとも1種の既又は未膨張の微小体(c)とを混合し、減圧脱泡してプレポリマー混合物を調製する工程、前記プレポリマー混合物に、4,4’−メチレン−ビス[2−クロロアニリン]を主成分とし、その3量体を7重量%以上11重量%以下含有するジアミン化合物(b)を添加し、混合後金型へ注型して反応硬化させて研磨材ブロックを作製する工程、及び前記研磨材ブロックを裁断する工程を含み、
    既又は膨張後の前記微小体(c)の平均粒径は150μm以下であり、
    前記微小体(c)の添加量は、イソシアネート末端プレポリマー(a)及びジアミン化合物(b)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部であり、かつ
    イソシアネート末端プレポリマー(a)とジアミン化合物(b)の配合比は、それぞれに含有されるイソシアネート基とアミノ基とのモル比(NH /NCO)にて0.8〜1.1であることを特徴とする研磨シートの製造方法。
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