JP4406875B2 - リニアモータ用通電制御回路 - Google Patents

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本発明は、電子部品などの搬送手段として使用されるリニアモータの通電制御を行うリニアモータ用通電制御回路に関する。
半導体デバイスや各種ディスプレイの製造設備においては、高精度の位置決めを必要とする部品の移動手段として、3相の可動コイル型又は可動磁石型ブラシレスリニアモータが使用されている。可動コイル型ブラシレスリニアモータは、例えば、固定子として相隣る磁極が交互に異なる極性となるように複数の界磁磁石を可動子の移動方向に配置し、電気角で2π/3ずつ位相をずらした3相のコイルを正弦波状の磁束密度分布を有する磁気空隙を介して界磁磁石に対向配置し、各コイルにホール素子を配置した基本構造を有する。ホール素子は界磁磁石の磁束の大きさと向きを検出し、それに対応する大きさと向きの正弦波駆動電流を各コイルに通電する。これにより、120°(2π/3)ずつ位相のずれた電流がコイルに入力されるので、一定の推力が得られる。また可動磁石型ブラシレスリニアモータは、例えばリニアスケールによって可動子(磁石)の磁極を検出し、駆動回路によって固定子(コイル)を所定の極性に磁化させ可動子(磁石)を直線運動させるものである。
上述したブラシレスリニアモータは、直流電流を通電制御回路を構成するインバータ回路に入力しそこで数KHz〜数10KHzのスイッチング周波数でパルス幅変調(PWM)が行われ(パルス幅及び極性が制御されたゲート信号が各スイッチ素子に与えられ各スイッチ素子のオン・オフ制御が行われる)、所定の正弦波電流が可動コイル又は固定コイルに出力されることにより駆動される。リニアモータの高性能化のためには、通電制御回路から出力される電流のリップルを低減し、また周波数特性を向上することが必要であり、そのためにはインバータ回路のスイッチング周波数を高めることが必要とされる。しかるに、通電制御回路と負荷を接続するケーブルや負荷に高周波電流が流れると、ケーブルや負荷から外部に輻射するノイズが発生するので、スイッチ素子と出力端子との間に平滑回路を設けることが行われている。
例えば特許文献1には、2組のスイッチング素子を交互にオン・オフ制御することによりPWMパルスを発生するスイッチ回路と負荷が接続される出力端子との間に平滑回路を設けると共に、平滑回路は各出力端子とスイッチ回路のGNDとの間に接続することが記載されている。
この他にも、ノイズ低減を図るために、図8に示す通電制御回路が提案されている。この通電制御回路においては、直流電源E1に、例えばNPN型トランジスタからなる2つのスイッチ素子S1、S2を含むスイッチ回路1が接続され、スイッチ素子S1のエミッタとスイッチ素子S2のコレクタとの間に、インダクタL5とコンデンサC2からなる平滑回路5と、出力端子4a、4bが接続され、出力端子4a、4b間には負荷(例えば可動コイル)6が接続されるとともに、負荷6とGND間に直流電源E2が接続されている。各スイッチ素子S1、S2のベースは、スイッチ制御回路2を介してフィードバック回路3に接続され、フィードバック回路3は電流検出器7を介して負荷6に接続されている。各スイッチ素子S1、S2のコレクタとエミッタ間には、スイッチ素子を保護するためにダイオードD1、D2が接続されている。図8の回路構成によれば、スイッチ素子S1、S2の中点と出力端子4a、4b間に平滑回路5が設けられているので、スイッチ素子S1、S2の中点と出力端子4間の輻射ノイズを低減することができる。
しかしながらスイッチ素子S1、S2で使用する電界効果型トランジスタ(MOSFET)などに内蔵されているダイオードは逆回復時間により、例えばスイッチ素子S1がオンからオフに切り替わる時にインダクタL5に蓄積された電気エネルギーは、ダイオードD1により電源側に回生される。この時スイッチ素子S2がオンすることにより、おおよそ逆回復時間分、ダイオードD1とスイッチ素子S2との間に短絡電流が流れ、大きな電力損失やノイズが発生する。これによりスイッチ素子の破損や不安定動作を招来するという欠点がある。そこで、図9に示すように、図8の回路構成に加えて、直流電源E1とスイッチ素子S1との間にインダクタL6とダイオードD5を並列に接続し、短絡電流の発生を防止することが提案されている。しかしながら、図9の通電制御回路によれば、インダクタL6とダイオードD5には出力電流と略同等の電流が流れるので、ここでの電力損失が生ずるという別の問題が発生する。
さらに、PWM制御を行う通電制御回路では、消費電力を低減するために、2つのスイッチ素子の間に接続されたコイル(負荷)に蓄積された電気エネルギーを放電させる回生ダイオードを設け、コイルに流れる負荷電流が目標値よりも小さい時は、コイルより下流側のスイッチング素子を強制的に導通状態にして、コイルに蓄積された電気エネルギーを、そのスイッチング素子と回生ダイオードとコイルからなる閉回路に循環流通させることが提案されている(特許文献2参照)。
特開2003−88170号公報(第2〜3頁、図1、図2) 特開2002−112536号公報(第3〜4頁、図1)
特許文献2に記載された回路構成によれば、消費電力を低減することはできるが、負荷電流の値が目標値よりも小さい時にコイルの下流側のスイッチング素子を強制的に導通状態にするための転流経路制御回路とそこから出力された制御信号をスイッチング素子に入力するためのOR回路が必要となる。このように従来のPWM制御を行うインバータ回路は、消費電力の低減は可能であるが、回路が大型化し、またコストの増大を伴うので、実用性の点で難点がある。
従って本発明の目的は、コストの増大及び大型化を伴わずに、輻射ノイズと消費電力を低減することができるリニアモータ用通電制御回路を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明のリニアモータ用通電制御回路は、コレクタ側が直流電圧源に接続される2つのスイッチ素子と各スイッチ素子に並列に接続されたダイオードを有するスイッチ回路と、前記スイッチ回路と端子間に負荷が接続される一対の出力端子との間に接続される平滑回路であって、磁気的に結合されかつ前記スイッチ素子のオン・オフの切り替え時に見掛け上漏れインダクタが形成される結合度を有する2つのインダクタと前記2つのインダクタの結線部に前記負荷と並列になるように接続されたコンデンサを含み、一方の前記インダクタは一方の前記スイッチ素子のエミッタ側に接続され、他方の前記インダクタは他方の前記スイッチ素子のコレクタ側に接続され、かつ前記2つのスイッチ素子と前記インダクタとが直列回路を構成する平滑回路と、一方の前記スイッチ素子のコレクタと他方の前記スイッチ素子のコレクタとの間及び一方の前記スイッチ素子のエミッタと他方の前記スイッチ素子のエミッタとの間にそれぞれ接続された回生用ダイオードと、前記スイッチ素子を交互にオン・オフ制御することによりPWMパルスを発生するスイッチ制御回路と、前記一対の出力端子のうちGND側の出力端子と前記コンデンサのGND側端子との間に接続された直流電源を備え、前記スイッチ素子のオン・オフの切り替え時に、一方の漏れインダクタにより前記ダイオードの逆回復時間に起因する短絡電流が阻止されるか、あるいは前記各インダクタ及び漏れインダクタに蓄積された電気エネルギーが前記直流電圧源又は前記直流電源に回生されることを特徴とするものである。
本発明のリニアモータ用通電制御回路は、前記直流電圧源と前記スイッチ回路との間に平滑用コンデンサが接続されていることが好ましい。
本発明によれば、PWMパルスを発生するスイッチ回路と出力端子との間に、磁気結合されたインダクタを含む平滑回路が設けられているので、スイッチング周波数を高周波化することによる輻射ノイズを低減することができる。さらに磁気結合されたインダクタの漏れインダクタにより、スイッチ素子を保護するためのダイオードの逆回復時間に起因する短絡電流を阻止し、電力損失を低減することができる。しかも本発明によれば、インダクタンス、コイル及びダイオードといった受動部品を付加するだけなので、小型でかつ低コストのリニアモータ用通電制御回路を実現することができる。
以下本発明の詳細を添付図面により説明する。
図1は本発明のリニアモータ用通電制御回路の構成を示す図である。通電制御回路は、平滑コンデンサC1を介して直流電源E1に接続された、2個のスイッチ素子S1、S2とダイオードD1、D2を含むスイッチ回路1と、スイッチ回路1の駆動を制御するスイッチ制御回路2と、電流検出器7を介してスイッチ制御回路2に制御信号を供給するフィードバック回路3と、各スイッチ素子S1、S2と出力端子4a、4bとの間に接続される平滑回路5と、出力端子4a、4b間に接続される負荷6と、出力端子4bとGND間に接続される直流電源E2と、スイッチ素子S1のコレクタとスイッチ素子S2のコレクタの間に接続された回生ダイオードD3と、スイッチ素子S1のエミッタとスイッチ素子S2のエミッタの間に接続された回生ダイオードD4を有している。直流電源E1は、例えば商用交流電流を直流に変換するスイッチングレギュレータ(図示を省略)に接続されている。図1では、各スイッチ素子として、例えばNPN型トランジスタを使用した例を示す。
上記の通電制御回路によれば、スイッチ素子S1とスイッチ素子S2を交互にオン・オフすることにより、図2に示す原理でPWM制御が行われる。図2は、50%の振幅変調を行った場合のタイミングチャートである。直流電源E1から所定の電圧を入力すると、スイッチ素S1とスイッチ素子S2は、所定の周波数(fs)で同期して交互にオン・オフを繰り返す。ここで、デューティー比D=Ta/Tb(Ta:時間幅、Tb:周期)とすると、出力電圧の平均値はデューティー比Dに比例するので、時間幅Taを制御することにより、出力電圧を調整することができる。スイッチング周波数(fs)は、1/Tbで与えられ、通常数KHz〜数100KHzの間に設定される。従って、t0−t1間では、スイッチ素子S1のデューティー比(Da)はスイッチ素子S2のデューティー比(Db)に等しくなる。t1−t2及びt2−t3間でのデューティー比の大小関係は、Da>Dbとなる。t3−t4、t4−t5及びt5−t6間のデューティー比の大小関係は、Da<Dbとなる。
出力端子4aとGND間の出力電圧をVoとすると、t0〜t6の間で、出力端子4aとGND間の電圧波形から直流電源E2の電圧波形[1/2・Vi]を差し引いた電圧波形を有する電流が出力端子4a、4b間に流れる。従って、t0−t1間ではスイッチ素子S1のデューティー比Daとスイッチ素子S2のデューティー比DbがDa=Dbの関係にあるため、出力電圧(Vo)は入力電圧の1/2の値[1/2・Vi]となり負荷6には電流は流れない。Da>Dbの時は、Vo>1/2・Viとなり、一方Da<Dbの時はVo<1/2・Viとなる。
スイッチ回路1と出力端子4a、4bの間に設けられた平滑回路5は、磁気的に結合された2つのインダクタL1、L2とコンデンサC2を含む。この平滑回路5を設けることにより、出力端子4a、4b間の電圧はGNDレベルに対して平滑化され、各スイッチ素子S1、S2を高周波でオン・オフ制御しても輻射ノイズの発生を低減することができる。
図1に示す通電制御回路によれば、スイッチ素子S1とスイッチ素子S2を交互にオン・オフすることにより、図3及び図4に示すような電流の流れが生じる。すなわちスイッチ素子S1、S2のデューティー比がDa<Dbの場合は、スイッチ素子S1がオフでスイッチ素子S2がオンすると、図3に示すように、直流電源E2から負荷6→インダクタL2→スイッチ素子S2→GNDと流れる電流Ia(図3に実線で示す)が発生する。ここで、例えばダイオードD1に流れる電流の向きが切り替わる時に、例えば100ns程度の逆回復時間が発生するので、ダイオードD1に短絡電流が流れようとする。この時、磁気結合されたインダクタL2からインダクタL1へ誘導される起電力は、これらの結合度に応じて見掛け上形成される漏れインダクタL3により阻止され、ダイオードD1の逆回復時間に起因する短絡電流を阻止することができる。次に、スイッチ素子S1がオンで、スイッチ素子S2がオフの場合は、インダクタL1、L2及び漏れインダクタL3、L4に蓄積された電気エネルギーは、回生ダイオードD3→直流電源E1と流れる電流Ib(図3に破線で示す)が発生するので、電源側に回生され、もって電力損失を低減することができる。
一方、スイッチ素子S1、S2のデューティー比がDa>Dbの場合は、スイッチ素子S1がオンで、スイッチ素子S2がオフすると、図4に示すように、直流電源E1からスイッチ素子S1→インダクタL1→負荷6→インダクタL2→直流電源E2と流れる電流Ic(図4に実線で示す)が発生する。この時、磁気結合されたインダクタL1からインダクタL2へ誘導される起電力は、これらの結合度に応じて見掛け上形成される漏れインダクタL4に阻止され、ダイオードD2の逆回復時間に起因する短絡電流を阻止することができる。次に、スイッチ素子S1がオフで、スイッチ素子S2がオンの場合は、インダクタL1、L2及び漏れインダクタL3、L4に蓄積された電気エネルギーは、インダクタL1→直流電源E2→GNDと流れる電流Id(図4に一点鎖線で示す)が発生するので、負荷側に回生され、もって電力損失を低減することができる。
なおダイオードの逆回復時間は、ダイオードに流れる電流が、順方向(I)から逆方向に切り替わると、一瞬大きな逆回復電流Iが流れることにより発生する。ここで順方向電流をdi/dtの電流変化でターンオフさせる場合の電流波形を模式的に示すと図5で表される。図5において、逆回復電流Iの90%と50%の2点で回復時のdi/dtを決定し、di/dtと時間軸との交点tとtとの差を求めるとその値が逆回復時間trrとなる。
図1に示す通電制御回路と図8に示す通電制御回路のスイッチ素子S2の電圧波形(VD−S)、電流波形(I)及び電力損失(VD−S*I)を比較した結果を図6及び図10により説明する。電圧波形、電流波形及び電力損失は、入力電圧(E1)=DC180V、出力を1Aとして測定した結果を表す。図7から、図1に示す通電制御回路においては、回生ダイオードを設けることにより、出力電流の極大値は小さく、短絡電流が確実に阻止され、その結果電力損失も僅かであることがわかる。一方、図7に示す通電制御回路によれば、出力電流の極大値は大きな値を示し、大きな短絡電流が流れ、よって電力損失が増大することがわかる。したがって図7と図10との比較から、本発明によれば消費電力を低減できることがわかる。
図7は本発明の他の実施の形態に係わるリニアモータ用通電制御回路を示す回路図である。この通電制御回路は、図1に示す、直流電源E1、コンデンサC1、スイッチ回路1、スイッチ制御回路2、フィードバック回路3、回生ダイオードD3、D4、平滑回路5を含む回路ブロック10を3組備え、各回路ブロック10に負荷6a、6b、6c(Y型結線されたコイル)を接続し、各負荷に直流電源E2を接続することにより構成されている。この通電制御回路によれば、図1の回路と同様に、PWMパルスを発生する3つのスイッチ回路1と出力端子との間に、各々磁気結合されたインダクタを含む平滑回路5が設けられているので、スイッチング周波数を高周波化することによる輻射ノイズを低減することができる。さらに磁気結合されたインダクタL1、L2の漏れインダクタL3、L4により、スイッチ素子S1、S2のダイオードD1、D2の逆回復時間に起因する短絡電流が阻止され、電力損失を低減することができる。この通電制御回路は、3相ブラシレスリニアモータの通電を制御する回路に好適である。
本発明の実施の形態に係わるリニアモータ用通電制御回路を示す回路図である。 図1の通電制御回路のタイミングチャートを示す図である。 図1の通電制御回路の電流モードを示す図である。 図1の通電制御回路の電流モードを示す図である。 ダイオードの逆回復時間が発生する時の電流波形を模式的に示す図である。 図1の通電制御回路におけるスイッチ素子の電圧波形、電流波形及び電力損失を示す図である。 本発明の他の実施の形態に係わるリニアモータ用通電制御回路を示す回路図である。 従来のリニアモータ用通電制御回路の一例を示す回路図である。 従来のリニアモータ用通電制御回路の他の例を示す回路図である。 従来の通電制御回路におけるスイッチ素子の電圧波形、電流波形及び電力損失を示す図である。
符号の説明
1:スイッチ回路
2:スイッチ制御回路
3:フィードバック回路
4a、4b:出力端子
5:平滑回路
6、6a、6b、6c:負荷
7:電流検出器
10:回路ブロック
E1、E2:直流電源
S1、S2:スイッチ素子
L1、L2:インダクタ、L3、L4:漏れインダクタ
C1、C2、C3、C4、C5、C6:コンデンサ
D1、D2:ダイオード
D3、D4:回生ダイオード

Claims (2)

  1. コレクタ側が直流電圧源に接続される2つのスイッチ素子と各スイッチ素子に並列に接続されたダイオードを有するスイッチ回路と、前記スイッチ回路と端子間に負荷が接続される一対の出力端子との間に接続される平滑回路であって、磁気的に結合されかつ前記スイッチ素子のオン・オフの切り替え時に見掛け上漏れインダクタが形成される結合度を有する2つのインダクタと前記2つのインダクタの結線部に前記負荷と並列になるように接続されたコンデンサを含み、一方の前記インダクタは一方の前記スイッチ素子のエミッタ側に接続され、他方の前記インダクタは他方の前記スイッチ素子のコレクタ側に接続され、かつ前記2つのスイッチ素子と前記インダクタとが直列回路を構成する平滑回路と、一方の前記スイッチ素子のコレクタと他方の前記スイッチ素子のコレクタとの間及び一方の前記スイッチ素子のエミッタと他方の前記スイッチ素子のエミッタとの間にそれぞれ接続された回生用ダイオードと、前記スイッチ素子を交互にオン・オフ制御することによりPWMパルスを発生するスイッチ制御回路と、前記一対の出力端子のうちGND側の出力端子前記コンデンサのGND側端子との間に接続された直流電源を備え、前記スイッチ素子のオン・オフの切り替え時に、一方の漏れインダクタにより前記ダイオードの逆回復時間に起因する短絡電流が阻止されるか、あるいは前記各インダクタ及び漏れインダクタに蓄積された電気エネルギーが前記直流電圧源又は前記直流電源に回生されることを特徴とするリニアモータ用通電制御回路。
  2. 前記直流電圧源と前記スイッチ回路との間に平滑用コンデンサが接続されていることを特徴とする請求項1記載のリニアモータ用通電制御回路。
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