JP4404590B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、負極、正極および非水電解質を備えた非水電解質二次電池に関する。
近年、携帯用電源および自動車用電源として二次電池の研究開発が活発になされている。その中でもリチウムイオンを活物質とするリチウムイオン二次電池の研究は盛んである。
一方で、エネルギー密度という観点からカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属またはアルミニウム等の軽金属を負極活物質として用いる研究が行われている。
従来より、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属またはアルミニウム等の軽金属を負極活物質とする負極を用いた電池が提案されてきた。しかし、実際に、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属のイオンを活物質として用いた二次電池を実現した例は少ない。
カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属を負極活物質負として用いた二次電池の実現を困難にしているのは、これらの金属上または負極上に生成するSEI(固体電解質界面)被膜が原因であると考えられている。このSEI被膜は、一般的にリチウムイオン電池において利用可能であると考えられている。
リチウムイオン等の1価のイオンは、SEI被膜中を伝導しやすいが、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の2価のイオンは、SEI被膜中を伝導しにくいため、析出または挿入が困難であると報告されている(非特許文献1参照)。
The Electrochemical Behavior of Calcium Electrodes in a Few Organic Electrolytes, D.Aurbach, R.Skaletsky, and Y.Gofer, J.Electrochem. Soc., Vol.138, 3536 (1991). Prototype systems for rechargeable magnesium batteries, D.aurbach, et al. Nature, 407, 724 (1991).
上記のように、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属上または負極上に生成されるSEI被膜のために、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属を用いた二次電池の実現が困難であった。
ところが、近年、オーバッハらは、電解液中にGrignard(グリニヤール)試薬を添加することにより、マグネシウム金属上にマグネシウムが析出することを明らかにし、マグネシウムイオン電池の実現の可能性を示唆した(非特許文献2参照)。しかしながら、Grignard試薬は取り扱いが困難であり、また危険性も高い。
一方、これまで、非水溶媒(有機溶媒)に溶解するカルシウム塩の候補として、過塩素酸カルシウム(Ca(ClO4 2 )等が挙げられてきた。これは、過塩素酸カルシウム(Ca(ClO4 2 )以外に十分に非水溶媒に溶解する塩が見出されていなかったからである。
しかし、過塩素酸塩は、強熱または衝撃を与えたり、可燃性物質の存在下で磨砕すると爆発する危険がある。このため、非水電解質二次電池の非水電解質として用いるには危険が伴い、実用化には大きな障壁があった。
本発明の目的は、カルシウムの溶解および析出を可逆的に行うことが可能な非水電解質二次電池を提供することである。
本発明の他の目的は、カルシウムを活物質として備えるとともに安全性の高い非水電解質二次電池を提供することである。
負極がカルシウム(Ca)を含む場合、非水電解質中でカルシウムの析出が困難であるのは、非水電解質の非水溶媒とカルシウムとの反応により負極の表面に被膜が形成されるためである。この被膜は、リチウムイオン(Li+)のような1価のイオンを通すが、カルシウムイオン(Ca2+)のような2価のイオンは通しにくい。このため、カルシウムイオンが透過する被膜を形成する非水溶媒を用いることができれば、カルシウムの溶解および析出が可逆的に行われると考えられる。
そこで、本発明者は、種々の非水溶媒について検討した結果、プロピオン酸メチル等のエステル系溶媒を非水電解質の非水溶媒に用いることにより、カルシウムの充放電を可逆的に行うことができることがわかった。
本発明に係る非水電解質二次電池は、正極と、カルシウムを吸蔵および放出可能な材料を含む負極と、エステル系溶媒を含む非水電解質とを備えたものである。
本発明に係る非水電解質二次電池においては、負極がカルシウムを吸蔵および放出可能な材料を含み、非水電解質がエステル系溶媒を含むことにより、カルシウムの溶解および析出が可能となる。それにより、充放電反応を可逆的に行うことが可能となる。
正極がカルシウムを吸蔵および放出可能な材料を含んでもよい。それにより、正極でカルシウムが吸蔵および放出されることにより、放電および充電が行われる。
エステル系溶媒は鎖状エステルを含んでもよい。それにより、カルシウムの溶解および析出が容易に行われる。
鎖状エステルはプロピオン酸メチルを含んでもよい。それにより、カルシウムの溶解および析出がさらに容易に行われる。
非水電解質はカルシウム塩を含んでもよい。この場合、非水電解質中のカルシウムイオンがカルシウムとして負極に析出することにより充電が行われ、負極のカルシウムが非水電解質中に溶解することにより放電が行われる。
カルシウム塩はイミド塩およびスルホン酸塩のうち少なくとも1種を含んでもよい。イミド塩およびスルホン酸塩は、化学的に安定であるため、非水電解質の溶質として用いることにより、安全性の高い非水電解質二次電池が実現される。
イミド塩はアルキルスルホン酸イミド塩を含んでもよい。アルキルスルホン酸イミド塩は、化学的に安定であるため、非水電解質の溶質として用いることにより、安全性の高い非水電解質二次電池が実現される。
アルキルスルホン酸イミド塩はビストリフルオロメタンスルホニルイミドカルシウム(Ca[(CF3 SO2 2 N]2 )を含むことが好ましい。ビストリフルオロメタンスルホニルイミドカルシウム(Ca[(CF3 SO2 2 N]2 )は、高い導電性を有するので、充放電電流を増加させることが可能となる。
スルホン酸塩はアルキルスルホン酸塩を含んでもよい。アルキルスルホン酸塩は、化学的に安定であるため、非水電解質の溶質として用いることにより、安全性の高い非水電解質二次電池が実現される。
非水電解質は塩化アルミニウム(AlCl3 )を含んでもよい。それにより、カルシウムの析出が容易になる。
カルシウムを吸蔵および放出可能な材料は、カルシウム金属、カルシウム合金、カルシウム酸化物、ケイ素、炭素およびフッ化炭素よりなる群から選択された少なくとも1つを含んでもよい。
この場合、カルシウムが容易に吸蔵および放出されることにより、充放電が行われる。
本発明によれば、負極がカルシウムを吸蔵および放出可能な材料を含み、非水電解質がエステル系溶媒を含むことにより、カルシウムの溶解および析出が可能となる。それにより、充放電反応を可逆的に行うことが可能となる。
また、非水電解質がカルシウム塩としてイミド塩およびスルホン酸塩のうち少なくとも1種を含むことにより、安全性の高い非水電解質二次電池が実現される。
本発明の一実施の形態に係る非水電解質二次電池について説明する。
本実施の形態に係る非水電解質二次電池は、負極、正極および非水電解質により構成される。
負極としては、例えば、カルシウム金属、カルシウム合金、カルシウム酸化物等が用いられる。
負極として、カルシウムを吸蔵および放出可能な黒鉛等の炭素材料、フッ化炭素、ケイ素(シリコン:Si)等を用いてもよい。例えば、表面を電解処理した銅箔等の集電体上に非晶質シリコン薄膜(アモルファスシリコン膜膜)または微結晶シリコン膜を形成する。非晶質シリコンおよび微結晶シリコンが混在した薄膜を用いてもよい。成膜方法としては、スパッタ法、プラズマCVD法(化学蒸着法)等を用いることができる。特に、特開2001−266851号公報および特開2002−83594号公報に提案される容量の大きなシリコンを用いることが好ましい。それにより、高いエネルギー密度の非水電解質二次電池を得ることができる。
正極としては、負極と同様に、例えば、カルシウム金属、カルシウム合金、カルシウム酸化物等が用いられる。正極として、カルシウムを吸蔵および放出可能な黒鉛等の炭素材料、フッ化炭素、ケイ素等を用いてもよい。
非水電解質の非水溶媒(有機溶媒)としては、プロピオン酸メチルを用いることが好ましい。それにより、安全性が高い非水電解質二次電池が実現される。
非水電解質の非水溶媒(有機溶媒)として、プロピオン酸メチル以外にもRCOOH系またはRCOOR’系の鎖状エステル系溶媒を用いてもよい。ここで、RおよびR’はそれぞれアルキル基である。
RCOOH系の鎖状エステル系溶媒としては、ギ酸メチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル等が挙げられる。
RCOOR’系の鎖状エステル系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、2−エチルブチルアセタート、2−エチルヘキシルアセタート、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソペンチル、イソ酪酸イソブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸イソペンチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ペンチル等が挙げられる。
上記の鎖状エステル系溶媒を用いた場合にも、同様の効果があると考えられる。
上記の鎖状エステル系溶媒のうち1種を用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非水電解質は、カルシウム塩からなる溶質を含む。非水電解質に加えるカルシウム塩としては、イミド塩を用いることができる。
イミド塩としては、一般式Ca[(Cx 2x+1SO2 2 N]2 (x=1〜8)で表されるアルキルスルホン酸イミド塩等が挙げられる。この中でもx=1〜2が好ましい。
アルキルスルホン酸イミドの中でも、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドカルシウム(Ca[(CF3 SO2 2 N]2 )を用いることがより好ましい。ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドカルシウム(Ca[(CF3 SO2 2 N]2 )は、反応性が低く安全性が高いため、非水電解質の溶質に用いることにより、安全性の高い非水電解質二次電池が得られる。
非水電解質に加えるカルシウム塩として、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドカルシウム(Ca[(CF3 SO2 2 N]2 )以外のイミド塩を用いてもよい。
他のイミド塩として、Ca[(C4 9 SO2 )(CF3 SO2 )N]2 、Ca[(C6 5 SO2 )(CF3 SO2 )N]2 、Ca[(C8 17SO2 )(CF3 SO2 )N]2 、Ca[(CF3 CHOSO2 2 N]2 、Ca[(CF3 CF2 CH2 OSO2 2 N]2 、Ca[(HCF2 CF2 CH2 OSO2 2 N]2 、Ca[((CF3 2 CHOSO2 2 N]2 等が挙げられる。
これらのイミド塩も、反応性が低く安全性が高いため、非水電解質の溶質に用いることにより、安全性の高い非水電解質二次電池が得られる。
非水電解質に加えるカルシウム塩として、スルホン酸塩を用いてもよい。スルホン酸塩として、一般式Ca(Cx 2x+1SO3 2 (x=1〜8)で表されるアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
アルキルスルホン酸塩としては、トリフルオロメタンスルホン酸カルシウム(Ca(CF3 SO3 2 )等が挙げられる。他のスルホン酸塩としては、Ca(CH3 SO3 2 、Ca(C6 5 SO3 2 、Ca(C6 5 SO3 2 等が挙げられる。
これらのスルホン酸塩も、反応性が低く安全性が高いため、非水電解質の溶質に用いることにより、安全性の高い非水電解質二次電池が得られる。
上記のイミド塩およびスルホン酸塩のうち1種を用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、上記のイミド塩およびスルホン酸塩のうち、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドカルシウム(Ca[(CF3 SO2 2 N]2 )は、トリフルオロメタンスルホン酸カルシウム(Ca(CF3 SO3 2 )に比べて高い導電率を有するので、非水電解質の溶質としてより好ましい。
非水電解質に塩化アルミニウム(AlCl3)を添加することが好ましい。それにより、カルシウムの析出が容易になる。
本実施の形態に係る非水電解質二次電池では、カルシウムを吸蔵および放出可能な負極およびカルシウムを吸蔵および放出可能な正極を用い、鎖状エステル系溶媒にカルシウム塩としてイミド塩またはスルホン酸塩を溶解させた非水電解質を用いることにより、安全性が高く、かつ可逆的な反応が可能になる。
(導電率の測定)
ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドカルシウム(Ca[(CF3 SO2 2 N]2 )およびトリフルオロメタンスルホン酸カルシウム(Ca(CF3 SO3 2 )の導電率を以下の方法で測定した。
ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドカルシウム(Ca[(CF3 SO2 2 N]2 )をプロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、およびエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との混合溶媒(体積比EC:DMC=50:50)にそれぞれ溶解させた非水電解質を調製し、それらの導電率を測定した。
また、トリフルオロメタンスルホン酸カルシウム(Ca(CF3 SO3 2 )をプロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、およびエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との混合溶媒(体積比EC:DMC=50:50)にそれぞれ溶解させた非水電解質を調製し、それらの導電率を測定した。
導電率の測定結果を表1に示す。
Figure 0004404590
表1に示すように、Ca[(CF3 SO2 2 N]2 の導電率は、Ca(CF3 SO3 2 の導電率に比べて高くなった。したがって、非水電解質の溶質として(Ca[(CF3 SO2 2 N]2 )を用いることが好ましい。
参考例1)
(試験セルの作製)
参考例1では、図1に示す試験セルを作製し、サイクリックボルタンメトリーを測定した。
図1に示すように、作用極1、対極2および参照極3として、カルシウム金属を成形してそのまま使用した。
非水電解質5としては、プロピオン酸メチルに1モル/lの濃度でCa[(CF3 SO2 2 N]2 を溶解させたものを用いた。
作用極1と対極2との間にはセパレータ4を挿入し、セル容器10内に作用極1、対極2および参照極3を配置し、非水電解質5に浸漬させた。
(サイクリックボルタンメトリーの測定条件)
上記のように作製した試験セルを使用し、参照極3に対する作用極1の電位走査範囲を+1〜−1V(vs.Ca/Ca2+)、電位走査速度を1mV/sにし、参照極3に対する作用極1の初期の電位である0V(vs.Ca/Ca2+)から酸化方向に走査させた後、還元方向に走査させる操作を行った。
参考例1の試験セルにおけるサイクリックボルタンメトリーの測定結果を図2に示す。
図2に示すように、作用極1の電位が正となる酸化方向への走査において電流が流れ、酸化ピークが確認された。作用極1の電位が+1Vでの電流は15μAとなった。それにより、作用極1のカルシウム金属が非水電解質中にカルシウムイオン(Ca2+)として溶解していると考えられる。
作用極1の電位が負となる還元方向への走査において電流が流れ、還元ピークが確認された。作用極1の電位が−1Vでの電流は−25μAとなった。それにより、非水電解質中のカルシウムイオン(Ca2+)がカルシウム金属として作用極1に析出していると考えられる。
上記の結果から、実施例1の試験セルでは、カルシウム金属が可逆的に反応していると考えられる。
(実施例2)
実施例2では、非水電解質5として、プロピオン酸メチルに1モル/lの濃度でCa[(CF3 SO2 2 N]2 および2モル/lの濃度でAlCl3 を溶解させたものを用い、それ以外については、上記の実施例1と同様の試験セルを作製し、上記と同様のサイクリックボルタンメトリーを測定した。
実施例2の試験セルにおけるサイクリックボルタンメトリーの測定結果を図3に示す。
図3に示すように、作用極1の電位が正となる酸化方向への走査において電流が流れ、酸化ピークが確認された。作用極1の電位が+1Vでの電流は2mAとなった。それにより、作用極1のカルシウム金属が非水電解質中にカルシウムイオン(Ca2+)として溶解していると考えられる。
作用極1の電位が負となる還元方向への走査において電流が流れ、還元ピークが確認された。作用極1の電位が−1Vでの電流は−1mAとなった。それにより、非水電解質中のカルシウムイオン(Ca2+)がカルシウム金属として作用極1に析出していると考えられる。
上記の結果から、実施例2の試験セルでは、カルシウム金属が可逆的に反応しているものと考えられる。また、非水電解質にAlCl3 を添加することにより、電流が増大することがわかる。
(実施例3)
実施例3では、非水電解質5として、プロピオン酸メチルに0.5モル/lの濃度でCa[(CF3 SO2 2 N]2 および1モル/lの濃度でAlCl3 を溶解させたものを用い、それ以外については、上記の実施例1と同様の試験セルを作製し、上記と同様のサイクリックボルタンメトリーを測定した。
実施例3の試験セルにおけるサイクリックボルタンメトリーの測定結果を図4に示す。
図4に示すように、作用極1の電位が正となる酸化方向への走査において電流が流れ、酸化ピークが確認された。作用極1の電位が+1Vでの電流は2mAとなった。それにより、作用極1のカルシウム金属が非水電解質中にカルシウムイオン(Ca2+)として溶解していると考えられる。
作用極1の電位が負となる還元方向への走査において電流が流れ、還元ピークが確認された。作用極1の電位が−1Vでの電流は−2mAとなった。それにより、非水電解質中のカルシウムイオン(Ca2+)がカルシウム金属として作用極1に析出していると考えられる。
上記の結果から、実施例3の試験セルでは、カルシウム金属が可逆的に反応しているものと考えられる。また、非水電解質にAlCl3 を添加することにより、電流が増大することがわかる。さらに、酸化時の電流および還元時の電流が対称になっている。
(実施例4)
実施例4では、非水電解質5として、プロピオン酸メチルに1モル/lの濃度でCa[(CF3 SO2 2 N]2 および1モル/lの濃度でAlCl3 を溶解させたものを用い、それ以外については、上記の実施例1と同様の試験セルを作製し、上記と同様のサイクリックボルタンメトリーを測定した。
実施例4の試験セルにおけるサイクリックボルタンメトリーの測定結果を図5に示す。
図5に示すように、作用極1の電位が正となる酸化方向への走査において電流が流れ、酸化ピークが確認された。作用極1の電位が+1Vでの電流は2.5mAとなった。それにより、作用極1のカルシウム金属が非水電解質中にカルシウムイオン(Ca2+)として溶解していると考えられる。
作用極1の電位が負となる還元方向への走査において電流が流れ、還元ピークが確認された。作用極1の電位が−1Vでの電流は−1mAとなった。それにより、非水電解質中のカルシウムイオン(Ca2+)がカルシウム金属として作用極1に析出していると考えられる。
上記の結果から、実施例4の試験セルでは、カルシウム金属が可逆的に反応しているものと考えられる。また、非水電解質にAlCl3 を添加することにより、電流が増大することがわかる。
(比較例)
比較例では、非水電解質5として、プロピレンカーボネートに1モル/lの濃度でCa[(CF3 SO2 2 N]2 を溶解させたものを用い、それ以外については、上記の実施例1と同様の試験セルを作製し、上記と同様のサイクリックボルタンメトリーを測定した。
比較例の試験セルにおけるサイクリックボルタンメトリーの測定結果を図6に示す。
図6に示すように、作用極1の電位が正となる酸化方向への走査において電流が流れ、酸化ピークが確認された。作用極1の電位が+1Vでの電流は0.47mAとなった。それにより、作用極1のカルシウム金属が非水電解質中にカルシウムイオン(Ca2+)として溶解していると考えられる。
しかしながら、作用極1の電位が負となる還元方向への走査においては、電流はほとんど流れず、還元ピークが確認されなかった。これは、SEI被膜のために非水電解質中のカルシウムイオン(Ca2+)がカルシウム金属として作用極1に析出できないためであると考えられる。
上記の結果から、比較例の試験セルでは、カルシウム金属が可逆的に反応しないものと考えられる。
なお、酸化ピークは多くの非水溶媒で確認されるが、還元ピークは確認できない。
(評価)
実施例1〜4と比較例との比較から、正極および負極にカルシウム金属を用い、非水電解質としてプロピオン酸メチルにCa[(CF3 SO2 2 N]2 を溶解させたものを用いることにより、可逆反応が可能な非水電解質二次電池が実現されることがわかる。
実施例1と実施例2〜4との比較から、非水電解質中にAlCl3 を添加することにより、電流値を増大させることが可能であることがわかる。また、非水電解質中のCa[(CF3 SO2 2 N]2 およびAlCl3 の濃度を適切に調整することにより、酸化時の電流および還元時の電流を対称にすることができることがわかる。
本発明に係る非水電解質二次電池は、携帯用電源、自動車用電源等の種々の電源として利用することができる。
参考例1、実施例2〜4および比較例において作製した試験セルの概略図である。 実施例1の試験セルにおけるサイクリックボルタンメトリーの測定結果を示す図である。 実施例2の試験セルにおけるサイクリックボルタンメトリーの測定結果を示す図である。 実施例3の試験セルにおけるサイクリックボルタンメトリーの測定結果を示す図である。 実施例4の試験セルにおけるサイクリックボルタンメトリーの測定結果を示す図である。 比較例の試験セルにおけるサイクリックボルタンメトリーの測定結果を示す図である。
符号の説明
1 作用極
2 対極
3 参照極
4 セパレータ
5 非水電解質
10 セル容器

Claims (9)

  1. 正極と、カルシウムを吸蔵および放出可能な材料を含む負極と、エステル系溶媒を含む非水電解質とを備えた非水電解質二次電池において、前記非水電解質は、前記エステル系溶媒としての鎖状エステルと、カルシウム塩としてのイミド塩およびスルホン酸塩のうち少なくとも1種と、前記カルシウム塩に対して1〜2倍の濃度の塩化アルミニウムとを含むことを特徴とする非水電解質二次電池。
  2. 前記鎖状エステルはプロピオン酸メチルを含むことを特徴とする請求項記載の非水電解質二次電池。
  3. 前記イミド塩はアルキルスルホン酸イミド塩を含むことを特徴とする請求項記載の非水電解質二次電池。
  4. 前記イミド塩はアルキルスルホン酸イミド塩を含むことを特徴とする請求項記載の非水電解質二次電池。
  5. 前記アルキルスルホン酸イミド塩はビストリフルオロメタンスルホニルイミドカルシウムを含むことを特徴とする請求項記載の非水電解質二次電池。
  6. 前記アルキルスルホン酸イミド塩はビストリフルオロメタンスルホニルイミドカルシウムを含むことを特徴とする請求項記載の非水電解質二次電池。
  7. 前記スルホン酸塩はアルキルスルホン酸塩を含むことを特徴とする請求項記載の非水電解質二次電池。
  8. 前記スルホン酸塩はアルキルスルホン酸塩を含むことを特徴とする請求項記載の非水電解質二次電池。
  9. 前記カルシウムを吸蔵および放出可能な材料は、カルシウム金属、カルシウム合金、カルシウム酸化物、ケイ素、炭素およびフッ化炭素よりなる群から選択された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
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