JP4403625B2 - 流体加熱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料の燃焼によって得られた熱によって熱交換器に供給された被加熱流体を加熱する流体加熱装置に関するものであり、車両の暖房や車両部品の暖機などに用いて好適なものである。液体の被加熱流体を熱交換器で加熱し、その加熱した高温の流体によって暖房や暖機を行う技術に用いるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の流体加熱装置は、熱交換器内に被加熱流体(液体)を充填した状態で燃焼装置が燃焼を開始するように設けられており、始動時における熱容量を低減するために、加熱された被加熱流体の温度に基づいて流量を変更するものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の従来技術では、被加熱流体を熱交換器に充填した状態で燃焼装置の燃焼を開始しているため、熱容量の低減効果が小さく、高温の被加熱流体を得るのに時間がかかる不具合があった。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、高温の被加熱流体を素早く得ることのできる流体加熱装置の提供にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1〜7に記載の発明では、
燃焼装置が燃料の燃焼を開始する時、熱交換器内の被加熱流体が空(もしくは少量)であるため、燃焼装置によって加熱される熱容量が従来に比較して小さく、素早く高温になる。そして、所定時間が経過して高温に達した熱交換器に被加熱流体が供給されるため(もしくは、所定時間中に熱交換器内の少量の被加熱流体が加熱されるため)、従来に比較して熱交換器から高温の被加熱流体を素早く得ることができる。
【0005】
なお、請求項3に記載の発明のごとく、循環水温度センサあるいは熱交換器壁面温度センサの検出する始動時の熱交換器に流入する循環水温度、あるいは熱交換器の壁面温度に応じて初期供給速度を変更する構成を採用しても良い。このように設けることにより、始動時の循環水温度あるいは熱交換器壁面温度に応じた最適な初期供給速度が設定でき、始動時の循環水温度あるいは熱交換器壁面温度に応じた最短の起動時間を得ることができる。なお、本明細書における起動時間とは、燃焼装置が起動した後に高温の被加熱流体を熱交換器から得るまでの時間を言うものとする。
【0006】
また、請求項4に記載の発明のごとく、循環水温度センサあるいは熱交換器壁面温度センサの検出する始動時の熱交換器に流入する循環水温度、あるいは熱交換器の壁面温度に応じて所定時間を変更する構成を採用しても良い。このように設けることにより、始動時の循環水温度あるいは熱交換器壁面温度に応じた最適な所定時間が設定でき、始動時の循環水温度あるいは熱交換器壁面温度に応じた最短の起動時間を得ることができる。
【0007】
また、請求項5に記載の発明のごとく、熱交換器へ被加熱流体を供給した後、その供給速度を定常時の供給速度に向けて徐々に増加させる構成を採用しても良い。このように設けることにより、熱交換器内に供給された被加熱流体による熱容量の急激な増加が抑えられ、起動初期において高温の被加熱流体を安定して熱交換器から得ることができる。
【0008】
また、請求項6に記載の発明のごとく、循環水温度センサあるいは熱交換器壁面温度センサの検出する始動時の熱交換器に流入する循環水温度、あるいは熱交換器の壁面温度に応じて供給速度(増加速度)を変更する構成を採用しても良い。このように設けることにより、始動時の循環水温度あるいは熱交換器壁面温度に応じた最適な供給速度(増加速度)が設定でき、起動時の循環水温度あるいは熱交換器壁面温度に関係なく起動初期において高温の被加熱流体を安定して熱交換器から得ることができる。
【0009】
また、請求項7に記載の発明のごとく、燃焼装置の燃焼停止時に電磁開閉バルブを開いて、熱交換器内における被加熱流体を空にする構成を採用しても良い。このように設けることにより、燃焼装置の起動時には熱交換器内が空であるため、被加熱流体を抜くための時間が不要になり、結果的に起動時間を短縮できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
流体加熱装置は、液体燃料(例えば軽油など)の燃焼を行う燃焼装置1と、この燃焼装置1によって発生した燃焼ガスと被加熱流体(例えば車両用冷却水、以下、循環水)とを熱交換して循環水を加熱する熱交換器2とを備えるものである。
【0011】
燃焼装置1は、燃焼筒3の内部に軽油などの液体燃料を噴射する燃料噴射手段4(以下、インジェクタ)と、燃焼筒3内に燃焼用の空気を供給するエアポンプ5(燃焼空気供給手段に相当する)と、着火用のスパークプラグ6とを備える。
燃焼筒3は、断面が矩形あるいは円形の筒状を呈するものであり、一方(上流側)の端面はプレート3aによって塞がれており、他方は排気筒13(後述する)の内部に開放されている。プレート3aには、エアポンプ5によって燃焼筒3内に燃焼空気を供給するための1次空気供給口7が設けられている。また、燃焼筒3の上流側の周囲には、燃焼筒3との間に2次空気通路8を形成するためのハウジング9が固定されている。この2次空気通路8は、空気導入口9aから燃焼空気が供給されるものであり、2次空気通路8に供給された2次空気は燃焼筒3の途中に形成された2次空気供給口10から燃焼筒3内に供給されるように設けられている。
【0012】
インジェクタ4は、プレート3aの中心部に貫通した状態で固定されるものである。このインジェクタ4には、燃料ポンプ11が接続されており、この燃料ポンプ11が起動すると、燃料タンク12内に蓄えられた液体燃料が圧送されてインジェクタ4に送られる。また、インジェクタ4は、燃料ポンプ11から圧送された液体燃料を、中心軸から所定角度(30〜50度)を持って霧状に噴射する複数の噴射孔を備えるものであり、図2に示すような周知なものを用いたものである。
スパークプラグ6は、インジェクタ4から噴射される噴射燃料の噴射角内にスパーク部がくるように燃焼筒3およびハウジング9を貫通した状態で固定されたものである。
【0013】
熱交換器2は、燃焼筒3の下流側の開放口を覆う排気筒13と、その周囲を覆うウォータジャケット14とを備えるものであり、排気筒13とウォータジャケット14の間には循環水が流れる循環水通路15が形成される。
排気筒13の下流端部には、排気筒13を介して循環水通路15内の循環水と熱交換した燃焼ガスを外部へ放出するための排気口13aが設けられている。
ウォータジャケット14には、循環水通路15内へ循環水を供給するための循環水入口14aと、循環水通路15で加熱された循環水を外部へ導くための循環水出口14bとが設けられている。
循環水入口14aには、循環水タンク16内に蓄えられた循環水を熱交換器2の循環水通路15内へ供給するための循環水ポンプ17(被加熱流体供給手段に相当する)が接続されている。
【0014】
この熱交換器2には、循環水通路15内における循環水を空にするための流体排出手段が設けられている。この実施形態における流体排出手段は、循環水通路15の下部のウォータジャケット14に設けられた排出口14cに取り付けられた電磁開閉バルブ18であり、この電磁開閉バルブ18は後述する制御手段19によって制御される。
【0015】
制御手段19は、上述したインジェクタ4、エアポンプ5、スパークプラグ6、循環水ポンプ17および電磁開閉バルブ18を制御するものであり、図3に示すように、燃焼装置1の燃焼停止時(OFF )に電磁開閉バルブ18を開いて熱交換器2内を空にしておく。そして、制御手段19は、燃焼開始時(ON)に電磁開閉バルブ18を閉じて熱交換器2に循環水が供給可能な状態にするとともに、燃焼装置1のインジェクタ4、エアポンプ5、スパークプラグ6を制御して燃焼を開始し、その後、所定時間(ta)(この第1実施形態では以下、予熱時間と言う)が経過すると、循環水ポンプ17を起動して熱交換器2内へ循環水を供給するように設けられている。
【0016】
また、この実施形態では、制御手段19は車両の外気温度を検出するための外気温度センサ20を備えており、制御手段19は外気温度センサ20の検出する始動時の外気温度に応じて予熱時間(ta)を変更するように設けられている。具体的には、制御手段19は始動時の外気温度が低いほど予熱時間(ta)を長く設定し、逆に始動時の外気温度が高いほど予熱時間(ta)を短く設定するように設けられている。具体的な一例を示すと、外気温度が−30℃の時は予熱時間(ta)を10秒間と長く設定し、外気温度が20℃の時は予熱時間(ta)を5秒間と短く設定するように設けられている。
【0017】
次に、本実施形態にかかる流体加熱装置の特徴的作動を述べる。
流体加熱装置が起動されると(ON)、先ず燃焼装置1が起動する。具体的には、インジェクタ4から燃焼筒3内に液体燃料が霧状に噴射されるとともに、エアポンプ5が起動して燃焼筒3内に燃焼用空気が供給され、さらにスパークプラグ6が作動して燃焼筒3内に火炎が発生する。
【0018】
燃焼装置1の起動後、予熱時間(ta)が経過すると、循環水ポンプ17が起動して熱交換器2内に循環水が供給される。
予熱時間(ta)が経過する前は、熱交換器2内は空であるため、熱交換器2(排気筒13およびウォータジャケット14)が予熱時間(ta)内で素早く加熱されて高温になる。
そして、上述したように、予熱時間(ta)が経過すると、熱交換器2内に循環水が供給されるが、この時すでに熱交換器2が加熱されて高温になっているため、熱交換器2内に供給された循環水が急速に昇温する。この結果、起動時間が大変短くできる。
そして、熱交換器2で加熱された循環水は、循環水出口14bから車両の暖房用のヒータコアや、車両部品の暖機のための加熱器に導かれ、車両の暖房や車両部品の暖機を行う。
【0019】
次に、本実施形態における流体加熱装置の特徴を述べる。
本実施形態によれば、上述したように、燃焼装置1を起動してから予熱時間(ta)が経過するまでの間、熱交換器2内は空であるため熱容量が小さく、熱交換器2が素早く加熱されて高温になる。そして、予熱時間(ta)の経過後に熱交換器2内に供給された循環水は、高温の熱交換器2に加熱されて急速に昇温し、結果的に流体加熱装置の起動時間を短縮することができる。
また、この実施形態では、外気温度センサ20の検出する始動時の外気温度に応じた適切な予熱時間(ta)の設定により、始動時の外気温度に応じた最短の起動時間を得ることができる。
【0020】
(第2実施形態)
上記の第1実施形態では、予熱時間(ta)が経過した後に熱交換器2へ循環水を供給する例を示したが、この第2実施形態は、図4に示すように、燃焼装置1の起動から所定時間(tb)(この第2実施形態では、以下遷移時間と言う)が経過するまでの間、循環水ポンプ17による循環水の初期供給速度(q)を定常運転時の供給速度(例えば、324cc/min)よりも遅くするものである。
このように設けることにより、燃焼装置1の起動初期は、熱交換器2内における循環水の量が少量となるため熱容量が小さく、熱交換器2(排気筒13およびウォータジャケット14)とともに、熱交換器2内の循環水が素早く加熱され、結果的に流体加熱装置の起動時間を短縮することができる。
【0021】
また、この実施形態では、制御手段19は外気温度センサ20の検出する始動時の外気温度に応じて初期供給速度(q)を変更するように設けられている。具体的には、制御手段19は始動時の外気温度が低いほど初期供給速度(q)を遅くし、逆に始動時の外気温度が高いほど初期供給速度(q)を増すように設けられている。具体的な一例を示すと、外気温度が−30℃の時は初期供給速度(q)を0cc/minに設定し、外気温度が20℃の時は初期供給速度(q)を50cc/minに設定するように設けられている。
このように設けることにより、外気温度センサ20の検出する始動時の外気温度に応じた適切な初期供給速度(q)が設定でき、始動時の外気温度に応じた最短の起動時間を得ることができる。
【0022】
さらに、この実施形態では、熱交換器2に循環水の供給を開始した後、図4の遷移時間(tb)に示すように、循環水の供給速度を定常時の供給速度に向けて徐々に増加させるように設けられている。
このように設けることにより、熱交換器2に供給された循環水による熱容量の急激な増加が抑えられ、起動初期において高温の循環水を安定して熱交換器2から得ることができる。
【0023】
さらに、この実施形態では、外気温度センサ20の検出する始動時の外気温度に応じて増加速度を変更するように設けられている。具体的には、始動時の外気温度が低いほど増加速度を遅くし、逆に始動時の外気温度が高いほど増加速度を増すように設けられている。具体的な一例を示すと、外気温度が−30℃の時は増加速度を遅くして遷移時間(tb)が10秒間となるように設定し、外気温度が20℃の時は増加速度を増して遷移時間(tb)が5秒間となるように設けられている。
このように設けることにより、始動時の外気温度に応じた最適な増加速度が設定でき、始動時の外気温度に応じた最短の起動時間を得ることができる。
【0024】
(第3実施形態)
この第3実施形態は、図5に示すように、熱交換器2に流入する循環水の温度を、循環水入口14aに取り付けた循環水温度センサ21によって検出するものであり、制御手段19は第1、第2実施形態で示した外気温度に代えて、熱交換器2に流入する循環水の温度に基づき第1、第2実施形態で示した制御を行うものである。これによって、第1、第2実施形態で示した効果と同等の効果を得ることができる。
【0025】
(第4実施形態)
この第4実施形態は、図6に示すように、熱交換器2の壁面温度を、ウォータジャケット14に取り付けた熱交換器壁面温度センサ22によって検出するものであり、制御手段19は第1、第2実施形態で示した外気温度に代えて、熱交換器2の壁面温度に基づき第1、第2実施形態で示した制御を行うものである。これによって、第1、第2実施形態で示した効果と同等の効果を得ることができる。
【0026】
(他の実施形態)
上記の実施形態では、着火を行う手段としてスパークプラグ6を例に示したが、グロープラグなど、他の着火手段を用いても良い。
上記の実施形態では、燃焼装置1の燃料として軽油を例に示したが、灯油、ガソリン、メタノール類などの他の液体燃料を用いても良いし、ガスなどの気化燃料を用いても良い。
上記の実施形態では、被加熱流体として車両用冷却水を例に示したが、メタノールなどの揮発性溶液、あるいは揮発性溶液と水の混合液を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】流体加熱装置の概略断面図である(第1実施形態)。
【図2】インジェクタの断面図である。
【図3】流体加熱装置の運転例を示すタイムチャートである(第1実施形態)。
【図4】流体加熱装置の運転例を示すタイムチャートである(第2実施形態)。
【図5】流体加熱装置の概略断面図である(第3実施形態)。
【図6】流体加熱装置の概略断面図である(第4実施形態)。
【符号の説明】
1 燃焼装置
2 熱交換器
4 インジェクタ
5 エアポンプ
17 循環水ポンプ(被加熱流体供給手段)
18 電磁開閉バルブ(流体排出手段)
19 制御手段
20 外気温度センサ
21 循環水温度センサ
22 熱交換器壁面温度センサ
Claims (7)
- 燃料の燃焼を行う燃焼装置と、
この燃焼装置によって発生した燃焼ガスと液体の被加熱流体とを熱交換して、前記被加熱流体を加熱する熱交換器と、
この熱交換器内における前記被加熱流体を空にするための流体排出手段と、
前記被加熱流体を前記熱交換器へ供給する被加熱流体供給手段と、
少なくとも前記燃焼装置が燃料の燃焼を開始するまでに、前記流体排出手段によって前記熱交換器内の前記被加熱流体を空にしておき、
前記燃焼装置の燃焼が開始してから所定時間が経過した後に、前記熱交換器へ前記被加熱流体を供給する制御手段と、
を備える流体加熱装置。 - 燃料の燃焼を行う燃焼装置と、
この燃焼装置によって発生した燃焼ガスと液体の被加熱流体とを熱交換して、前記被加熱流体を加熱する熱交換器と、
この熱交換器内における前記被加熱流体を空にするための流体排出手段と、
前記被加熱流体を前記熱交換器へ供給する被加熱流体供給手段と、
少なくとも前記燃焼装置が燃料の燃焼を開始するまでに、前記流体排出手段によって前記熱交換器内の前記被加熱流体を空にしておき、
前記燃焼装置の燃焼が開始してから所定時間が経過するまでの間、前記熱交換器への前記被加熱流体の初期供給速度を定常運転時よりも遅くする制御手段と、
を備える流体加熱装置。 - 請求項2の流体加熱装置において、
前記制御手段は、
前記熱交換器に流入する循環水の温度を検出する循環水温度センサ、あるいは前記熱交換器の壁面温度を検出する熱交換器壁面温度センサを備え、
前記循環水温度センサあるいは前記熱交換器壁面温度センサの検出する始動時の循環水温度あるいは熱交換器壁面温度に応じて、前記初期供給速度を変更することを特徴とする流体加熱装置。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかの流体加熱装置において、
前記制御手段は、
前記熱交換器に流入する循環水の温度を検出する循環水温度センサ、あるいは前記熱交換器の壁面温度を検出する熱交換器壁面温度センサを備え、
前記循環水温度センサあるいは前記熱交換器壁面温度センサの検出する始動時の循環水温度あるいは熱交換器壁面温度に応じて、前記所定時間を変更することを特徴とする流体加熱装置。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかの流体加熱装置において、
前記制御手段は、
前記熱交換器へ前記被加熱流体を供給した後、その供給速度を定常時の供給速度に向けて徐々に増加させることを特徴とする流体加熱装置。 - 請求項5の流体加熱装置において、
前記制御手段は、
前記熱交換器に流入する循環水の温度を検出する循環水温度センサ、あるいは前記熱交換器の壁面温度を検出する熱交換器壁面温度センサを備え、
前記循環水温度センサあるいは前記熱交換器壁面温度センサの検出する始動時の循環水温度あるいは熱交換器壁面温度に応じて、前記供給速度を変更することを特徴とする流体加熱装置。 - 請求項1ないし請求項6のいずれかの流体加熱装置において、
前記流体排出手段は、前記熱交換器内における前記被加熱流体を空にするための電磁開閉バルブであり、
前記制御手段は、前記燃焼装置の燃焼停止時に前記電磁開閉バルブを開いて前記熱交換器内における前記被加熱流体を空にすることを特徴とする流体加熱装置。
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