JP4403571B2 - 能動ガイドワイヤ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、脳内血管等の複雑かつ細い血管に挿入して診断又は治療などに利用するカテーテルを目的の部位に導くための能動ガイドワイヤ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、血管内に挿入したカテーテルを目的の患部に導くために、ガイドワイヤをカテーテル内に挿入し、ガイドワイヤの先端を目的の方向に曲げることによってカテーテルの挿入方向の制御を行っている。
図11はカテーテルの挿入方向の制御を模式的に示した図である。図に示すようにカテーテル111の先端自体に曲げ駆動機構を取り付けるのが理想的であるが、図12に示したように、カテーテル111にガイドワイヤ112を挿入し、ガイドワイヤ112の先端に曲げ駆動機構を取り付けても同様の作用効果が得られる。ガイドワイヤ112の先端の曲げ駆動機構は、単純に一方向のみの曲げ機構であっても、図に示したように、ガイドワイヤの手元部分の捻り操作113と組み合わせることにより、任意の方向への挿入が可能となる。
脳血管などの複雑、かつ微細な管路に沿ってカテーテルを自由に導くためには、0.5mmφ以下のガイドワイヤが必要であり、また、先端部を必要に応じて曲げたり真っ直ぐに復元したりできる能動的駆動機能が必要である。さらに、脳動脈瘤の血管壁や狭窄等の病変部の血管壁は極めて脆い場合があり、ガイドワイヤがこれらの病変部や血管壁を傷つけないように、ガイドワイヤの横剛性及び長さ方向の剛性は極めて小さくなければならない。
医療現場においては、病変脳血管などのような、複雑、微細、かつ脆い血管に沿ってカテーテルを自由に導くことが必要とされており、径が細く、かつ剛性の低い能動ガイドワイヤが実現できれば、既存の種々のカテーテルと組み合わせて用いることにより、大きな効果が期待できる。
【0003】
従来の能動的駆動機構を有するガイドワイヤは、例えば、本発明者らによる特願平10−355170号(特開2000−233027号公報)に開示された構造のものがある。
この能動ガイドワイヤは、図13に示すように、半径rのコイル状のバイアスコイルスプリング131とバイアスコイルスプリング131に固設したアクチュエータ132とからなっている。このアクチュエータ132は形状記憶合金ワイヤをコイル状にしてコイルの長さ方向に大きなストロークで伸縮するように形状記憶させたものであり、アクチュエータ132を通電加熱することにより、長さ方向に縮むようになっている。
この構成によれば、アクチュエータ132を通電加熱することによりアクチュエータ132が縮んで収縮力Fが発生し、曲げモーメントMは、M=F×rにより能動ガイドワイヤの先端が曲がる。通電を停止すると、バイアスコイルスプリング132の復元力により能動ガイドワイヤの先端が直線形状に復元する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この構成で径(=2r)の小さい能動ガイドワイヤを形成すると、バイアスコイルスプリング131の半径rが小さくなるので曲げモーメントMが小さくなり、能動ガイドワイヤの先端を十分に曲げることができなくなる。
能動ガイドワイヤの先端を十分に曲げるために必要なMを保つためには、アクチュエータ132の収縮力Fを大きくしなければならず、Fを大きくするには形状記憶合金からなるコイル状ワイヤ132の線径を太くする必要があり、線径を太くすると、横方向及び長さ方向の剛性が大きくなる。
また、この構成では、アクチュエータ132がバイアスコイルスプリング131の軸方向に収縮するため、アクチュエータ132の収縮によって能動ガイドワイヤ全体が収縮したり座屈したりしないように、バイアスコイルスプリング131は軸方向に一定値以上の剛性を有する必要がある。
このようにこの構成では、脳内血管等の複雑でかつ細い血管に挿入して診断又は治療などに利用するカテーテルを目的の部位に導くための能動ガイドワイヤに必要な、能動ガイドワイヤの径及び病変血管壁を傷つけない剛性を実現することは困難である。
【0005】
また、能動ガイドワイヤの他の例には、本発明者らによる特願2000−092209号明細書に開示された構成のものがある。この能動ガイドワイヤは、上記の特開2000−233027号公報に開示された構成と比べると、長手方向にジグザグ形状を有する板状の形状記憶合金からなるアクチュエータを使用する点が異なる。このアクチュエータは通電加熱することにより長手方向に大きなストロークで縮むように形状記憶されている。
しかしながらこの構成では、上記の特開2000−233027号公報記載の技術の場合と同様に、径を細くすると、アクチュエータの剛性が大きくならざるをえず、また、バイアスコイルスプリングの軸方向の剛性は一定値以上が必要であるため、脳内血管等の複雑かつ細い血管に挿入して診断又は治療などに利用するカテーテルを目的の部位に導くための能動ガイドワイヤに必要な能動ガイドワイヤの径及び病変血管壁を傷つけない剛性を実現することは困難である。
このように、従来の能動ガイドワイヤは、大動脈、腎動脈といった比較的血管が太く、血管壁が比較的厚い部位に用いれば極めて有用であるが、脳血管、病変血管に用いた場合には、血管壁を傷つける恐れがある。
【0006】
上記課題に鑑み本発明は、脳内血管等の複雑かつ細い血管に挿入して診断又は治療などに利用するカテーテルを目的の部位に導くために必要な能動ガイドワイヤの径、及び病変血管壁を傷つけない剛性を有する能動ガイドワイヤを提供することを目的とする。また、その製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の能動ガイドワイヤは、導電性及び低剛性を有する弾性部材からなるバイアスコイルスプリングと、高分子ポリマの溶液をバイアスコイルスプリングに塗布し乾燥することでバイアスコイルスプリングを高分子ポリマの皮膜で覆って蛇腹構造とした高分子ポリマからなりかつ外壁となるアウターチューブと、このアウターチューブに挿入され固定された平板形状記憶合金アクチュエータと、バイアスコイルスプリングの先端部と平板形状記憶合金アクチュエータの先端部とを電気的に接続しかつ固定する導電性スペーサと、平板形状記憶合金アクチュエータとバイアスコイルスプリングとが互いに接触しないように所定の間隔で配置した複数の非導電性スペーサと、平板形状記憶合金アクチュエータの基端部に接続される通電用導線とを有し、平板形状記憶合金アクチュエータは、その軸方向にジグザグ形状を有していて軸方向及び横方向の剛性が低く、かつ、この軸の垂直方向に湾曲するように形状記憶されて一方向曲げ機構を有しており、バイアスコイルスプリングの基端部と通電用導線とに平板形状記憶合金アクチュエータを湾曲させるための電圧が印加され、平板形状記憶合金アクチュエータを平板の厚み方向に湾曲させることを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、通電用導線とバイアスコイルスプリングの基端部に電圧を印加することによって、バイアスコイルスプリングと導電性スペーサとを介してアクチュエータに電流が流れ、アクチュエータが通電加熱されて形状記憶合金の変態点温度に達して湾曲し、能動ガイドワイヤが湾曲する。電圧を非印加にすれば、アクチュエータの温度が形状記憶合金の変態点温度未満に下がり、アクチュエータは湾曲力を失い、能動ガイドワイヤはバイアスコイルスプリングの復元力によってもとの直線形状に復帰する。
平板形状記憶合金アクチュエータが、平板の厚み方向に湾曲するように形状記憶されているので、アクチュエータの軸に垂直方向に、かつ平板全面にわたって湾曲力が発生するので、バイアスコイルスプリングの径の大きさによらずに能動ガイドワイヤを湾曲させることができる。従って、バイアスコイルスプリングの径が0.5mmφ以下であっても、平板形状記憶合金の厚みを増加させること無しに、能動ガイドワイヤを湾曲させることができるので、アクチュエータの剛性を低くできる。さらに、平板形状記憶合金アクチュエータが、アクチュエータの長手方向にジグザグの形状を有しているので横方向及び長手方向の剛性が極めて低い。
さらに、平板形状記憶合金アクチュエータは平板の厚み方向に湾曲するので、バイアスコイルスプリングの軸方向に収縮することがないため、能動ガイドワイヤ全体が収縮したり座屈したりすることがなく、バイアスコイルスプリングの剛性も低くできる。
これらの効果により、能動ガイドワイヤの径を細くでき、かつ、横方向及び長手方向の剛性を低くすることができ、脆い血管壁に衝突しても血管壁を傷つけることがない。
また、バイアスコイルスプリングは導電性の弾性部材で構成されるから、電流を流すことができると共に、所定のコイル径、所定の剛性を有するバイアスコイルスプリングを作製できる。例えば、ステンレス細線を用いれば、脳血管に用いることができる微細径、低剛性のバイアスコイルスプリングを作製することができる。
また、アウターチューブは、例えばポリウレタンからなるポリマ被覆チューブであるから、生体適合性が良く、人体の血管に用いることができる。
さらに、アクチュエータとバイアスコイルスプリングとは、先端部が電気的に接続され、中間部及び基端部が電気的に絶縁されているので、アクチュエータとバイアスコイルスプリングとが直列回路を形成し、電気回路を構成するための複雑な部材を必要とせずにアクチュエータを通電加熱することができる。
【0009】
本発明の上記構成の能動ガイドワイヤの製造方法は、平板形状記憶合金アクチュエータと導電性スペーサと非導電性スペーサと通電用導線電用導線とからアクチュエータ・スペーサ構造体を作製する第1の工程と、バイアスコイルスプリングと高分子ポリマとなる液体高分子とからアウターチューブを作製する第2の工程と、第1の工程で作製したアクチュエータ・スペーサ構造体第2の工程で作製したアウターチューブに挿入して能動ガイドワイヤを作製する第3の工程とからなることを特徴とする。
前記構成において、好ましくは、第1の工程では、平板形状記憶合金アクチュエータの先端部にパイプ状の導電性スペーサを嵌入し、中間部に所定の間隔をおいてパイプ状の非導電性スペーサを複数嵌入し、基端部には通電用導線を含んで非導電性スペーサを嵌入し、先端部と基端部のスペーサの中空部には常温硬化型の導電性エポキシ樹脂を埋め込み、中間部のスペーサの中空部には常温硬化型の非導電性エポキシ樹脂を埋め込み、常温で硬化させる。この構成によれば、アクチュエータを電気的かつ機械的に、容易にアウターチューブに結合することができる。
【0010】
また、第2の工程は、好ましくは、バイアスコイルスプリングにシリコンチューブを挿入し、液体高分子、例えばポリウレタンを塗布し、乾燥し、ポリウレタンポリマで被覆されたシリコンチューブの端のポリマを除去し、シリコンチューブの端とポリマ被覆部分との間に力を加えてシリコンチューブを引き抜いて作製する。この構成によれば、バイアスコイルスプリングが均一かつ適切な厚みのポリマで被覆された、蛇腹状のアウターチューブが作製できる。
【0011】
また、第3の工程は、好ましくは、第1の工程で作製したアクチュエータ・スペーサ構造体を第2の工程で作製したアウターチューブに挿入し、導電性スペーサとアウターチューブを常温硬化型の導電性エポキシ樹脂でアウターチューブに固定し、非導電性スペーサ部分のポリマを除去し、露出した非導電性スペーサとバイアスコイルスプリングを常温硬化型の非導電性エポキシ樹脂でアウターチューブに固定し、アクチュエータ・スペーサ構造体の固定されたアウターチューブの全面に液体高分子、例えばポリウレタンを塗布し、乾燥する。
この構成によれば、アクチュエータ・スペーサ構造体とアウターチューブとを容易に、かつ正確に組み立てることができる。また、アウターチューブの全面に液体高分子を塗布するので、平滑なアウターチューブ表面が得られると共に電気的絶縁性が完全になる。
また、上記の製造方法によれば、形状記憶合金の変態点温度未満で製造できるから、アクチュエータが製造中に湾曲すると言ったことが生じず、従って、極めて微細な構造を有する能動ガイドワイヤを信頼性良く、また低コストで製造することが可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、NiTi合金からなる形状記憶合金(SMA)シート(0.035mm厚)から作製した平板形状記憶合金アクチュエータ(曲げアクチュエータ、SMAアクチュエータと称する。)と、ポリウレタンをバイアスコイルスプリングに被覆してなる蛇腹状のアウターチューブとを組み合わせて、シンプルな1方向曲げ機構を有する外径が約0.5mmφの能動ガイドワイヤを創作した。
【0013】
実施例を例にとって本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の能動ガイドワイヤの構成と動作を示す一部透過図である。
図1(a)は能動ガイドワイヤ1の構成及び非駆動状態を示し、図1(b)は先端を曲げた駆動状態を示す。
能動ガイドワイヤ1は、ポリウレタン2を導電性のバイアスコイルスプリング3に被覆してなる蛇腹状のアウターチューブ4に、SMAアクチュエータ5がガラスパイプ6(非導電性スペーサ)を介して固定され、アクチュエータ5の先端部が真鍮パイプ7(導電性スペーサ)を介してバイアスコイルスプリング3に固定され、かつSMAアクチュエータ5の基端部8が通電用導体9に接続されており、バイアスコイルスプリング3と通電用導体9を通じてSMAアクチュエータ5を直接通電加熱することが出来るようになっている。
そして、通電加熱(例えば75℃に加熱)によりSMAアクチュエータ5が曲がって能動ガイドワイヤ1の先端が図1(b)のように曲がり、通電を切るとバイアスコイルスプリング3のバイアス力により能動ガイドワイヤ1の先端が図1(a)のように元の状態に戻る。即ち、この能動ガイドワイヤ1は、1方向曲げ機構を有している。
【0014】
次に、SMAアクチュエータについて説明する。
図2はSMAアクチュエータの作製プロセスフローを示す図である。
図2(a)に示すように、35μm厚のSMAシート21に熱処理によりφ2.5mmのロール形状を記憶させた。次に、図2(b)に示すように、このSMAシート21を常温で平板状に引き延ばし、フォトリソグラフィと電解エッチングにより加工する。ロール形状への変形を防ぐために、以後の工程はSMAの変態点温度(約70℃)以下の低温工程で行う。
図2(c)及び図3に拡大して示したように、SMAシート21の裏面に中間層としてそれぞれ0.1μmのNi層22及びCu層23からなるCu/Niスパッタ積層膜24を形成し、さらにその上に導電ダミー層として10μmより厚いCuメッキ層25を常温で形成した。Cuメッキ層25の密着性はNiメッキ層(成膜温度45℃)に劣るが、Cu/Niスパッタ積層膜24を中間層として用いているので、十分な密着強度を得ることができる。
【0015】
次に、SMAシート21上にフォトリソグラフィを行う。
図4はフォトリソグラフィの工程フローを示す図である。図4に示したように、SMAシート21の表面にレジスト(東京応化(株)のOMR83)を約1.5μm厚で塗布した後、25℃で12時間の乾燥を行い、SMAアクチュエータの形状を有するマスクを使用して紫外線露光し、現像、洗浄して図2(d)に示した形状のSMAアクチュエータのレジストパターン26を形成する。その後、100mW/cm2 ,15分間の紫外線硬化を行い、さらに25℃で12時間の乾燥を行う。
【0016】
次に、レジストパターン26をマスクにして全体を硫酸・メタノール電解液中に浸漬して、SMAシート21を貫通してCuメッキ層25に達するまで片面から電解エッチングを行う。常温で形成されたレジストパターン26は、完全には重合していないと思われるが、電解エッチングに対しては十分な耐性を有している。
【0017】
次に、図2(e)に示したように、全体を濃硝酸に浸漬して、Cuメッキ層25,Cu/Niスパッタ積層膜24及びレジストパターン26を除去する。最後に、SMAシート21のエッチングパターン脱落防止枝を切り離し、図2(f)に示したようにSMAアクチュエータ5を取り出す。
【0018】
作製したSMAアクチュエータ5を、図5(a)の全体図と、図5(b)の要部拡大図に示す。
SMAアクチュエータ5は、血管壁に能動ガイドワイヤーが接触したときに血管壁を傷つけないように、図5に示すようなジグザグ形状のパターンにして長手方向(z)の圧縮や横方向(x)の曲げに対する剛性を極力小さくしている。このジグザグ形状は、周期が340μm、振幅が60μmのサインカーブを成している。
【0019】
次に、アウターチューブ4の作製方法を説明する。
図6は、本発明のアウターチューブ作製工程を示す図である。
アウターチューブ4は、図6(a)に示したように、例えばコイル外径0.46mm、素線径0.05mmのステンレススチールのコイル3に、図5(b)に示したように、コアとなるシリコンチューブ61を挿入し、図6(c)に示したように、全体に液状のポリウレタン2を塗布し、図6(d)に示したように、ポリウレタン2を乾燥し、その両端をカットした後、図6(e)に示したように、シリコンチューブ61を引き抜いて、コイル3がポリウレタン被膜2で覆われた蛇腹構造のチューブを形成する。なお、アウターチューブ4の構造を図7に拡大して示す。
【0020】
次に、能動ガイドワイヤ1の組み立て製造工程を説明する。
図8は、本発明の能動ガイドワイヤの組み立て手順を示す部分透過図である。
図8(a)に示したように、SMAアクチュエータ5の先端部を真鍮パイプ7に挿入し、常温硬化型の導電性エポキシ樹脂81を真鍮パイプ7に埋め込んでアクチュエータ5の先端部と真鍮パイプ7を電気的に接続しかつ固定する。
次に、ガラスパイプ6,6をSMAアクチュエータ5に嵌入し、中間部82,82に配置して、常温硬化型絶縁性エポキシ樹脂83をガラスパイプ6,6に埋め込んでSMAアクチュエータ5の中間部82,82とガラスパイプ6,6とを固定する。
続いて、ガラスパイプ6をSMAアクチュエータ5に嵌入し、基端部8に配置すると共に、φ0.07mmエナメル線からなる通電用導線9をガラスパイプ6に挿入し、常温硬化型の導電性エポキシ樹脂81をガラスパイプ6に埋め込んでSMAアクチュエータ5の基端部8と通電用導体9とを電気的に接続しかつ固定し、基端部8とガラスパイプ6とを固定する。
そして、図8(b)に示したように、上記のスペーサ及び通電用導線を固定したアクチュエータ5をアウターチューブ4に挿入する。
【0021】
その後、図8(c)に示したように、ガラスパイプ6,6,6上のポリウレタン被膜を電熱線84により溶融除去して窓部85,85,85を形成する。そして、図8(d)に示したように、窓部85,85,85に常温硬化型絶縁性エポキシ樹脂83を埋め込んでバイアスコイルスプリング3とガラスパイプ6,6を固定し、先端の真鍮パイプ7は常温硬化型の導電性エポキシ樹脂81でバイアスコイルスプリング3に固定し、かつ電気的に接続する。
最後に、図8(e)に示したようにポリウレタン溶液2を全面に塗布してアウターチューブ4の表面を平滑化すると共に、バイアスコイルスプリング3を完全に被覆して絶縁性を確保する。
【0022】
次に、上記工程で作製した能動ガイドワイヤの特性を示す。
図9は、本発明の能動ガイドワイヤの37℃の水中における曲げ駆動の様子を示す図である。駆動電流は120mAである。
図10は、25℃の大気中及び37℃の水中での通電量と曲げ角度の関係を示す図である。図において縦軸は能動ガイドワイヤ先端の曲がり角度を示し、横軸は印加した電流を示し、□は空気中で通電した場合、■は空気中で非通電にした場合、△は水中で通電した場合、及び▲は水中で非通電にした場合の曲がり角を示す。
図から明らかなように、能動ガイドワイヤ1の先端部は、大気中駆動では通電量50mA程度で60°以上まで曲がった。水中駆動では、水の冷却効果のために大気中駆動に比べ大きな通電量が必要であったが、通電量を増加することにより60°まで曲げることが可能であった。
また、空気中及び水中のいずれの場合にも、非通電によってほぼ元の状態に復元することがわかる。
【0023】
また、素線径φ0.025μmの銅コンスタンタン熱電対を能動ガイドワイヤ6に貼り付けてその表面温度を測定したところ、大気中では通電量50mAで80℃近くまで温度が上昇したのに対して、水中では水の冷却効果のため42℃であった。したがって、血管内では血流による同様の冷却効果が期待され、人体内での能動ガイドワイヤ1の使用は十分可能であることが分かった。
また本発明の能動ガイドワイヤは、外力に対して非常に強いことが分かった。例えば、外力を加えて60度以上の曲げを多数回加えても特性が変化することがなかった。このことは、本発明の平板形状記憶合金アクチュエータは平板の厚み方向に湾曲するので、バイアスコイルスプリングの軸方向に収縮することがなく、バイアスコイルスプリングが座屈することがないためと考えられる。
【0024】
【発明の効果】
上記説明から理解されるように、本発明によれば、脳血管等の複雑でかつ細い血管に挿入して診断又は治療などに利用するカテーテルを目的の部位に導くために必要な、能動ガイドワイヤの径及び病変血管壁を傷つけない剛性を有する能動ガイドワイヤを提供することができる。
病変脳血管などのような、複雑、微細、かつ脆い血管に沿ってカテーテルを自由に導くことが必要とされる医療現場において、既存の種々のカテーテルと組み合わせて用いることにより、大きな効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の能動ガイドワイヤの構成と動作を示す一部透視図で、(a)は能動ガイドワイヤの構成及び非駆動状態を、(b)は先端を曲げた駆動状態を示す。
【図2】SMAアクチュエータの作製プロセスフローを示す図である。
【図3】SMAシート裏面の中間層とCuメッキ層の拡大図である。
【図4】フォトリソグラフィの工程フローを示す図である。
【図5】作製したSMAアクチュエータの形状を示す図であり、(a)は全体を示し、(b)は要部を拡大して示す図である。
【図6】本発明のアウターチューブの製造方法の各工程を示す図である。
【図7】アウターチューブの構造を拡大して示す図である。
【図8】本発明の能動ガイドワイヤの組み立て手順を示す部分透視図である。
【図9】本発明の能動ガイドワイヤの37℃の水中における曲げ駆動の様子を示す図である。
【図10】本発明の能動ガイドワイヤの25℃の大気中及び37℃の水中での通電量と曲げ角度の関係を示す図である。
【図11】従来の能動カテーテルの使用方法を示す概略図である。
【図12】従来の他の能動ガイドワイヤの使用方法を示す概略図である。
【図13】従来の能動ガイドワイヤの作用を示す図である。
【符号の説明】
1 能動ガイドワイヤ
2 ポリウレタン
3 バイアスコイルスプリング
4 アウターチューブ
5 SMAアクチュエータ
6 ガラスパイプ
7 真鍮パイプ
8 SMAアクチュエータの基端部
9 通電用導体
21 SMAシート
22 Ni層
23 Cu層
24 Cu/Niスパッタ積層膜
25 Cuメッキ層
26 レジストパターン
61 シリコンチューブ
81 常温硬化型導電性エポキシ樹脂
82 中間部
83 常温硬化型絶縁性エポキシ樹脂
84 電熱線
85 窓部

Claims (5)

  1. 導電性及び低剛性を有する弾性部材からなるバイアスコイルスプリングと、
    上記バイアスコイルスプリングにシリコンチューブを挿入し全体に高分子ポリマの溶液を塗布し乾燥させ、上記シリコンチューブを引き抜くことで該バイアスコイルスプリングを該高分子ポリマの皮膜で覆って蛇腹構造とした高分子ポリマからなりかつ外壁となるアウターチューブと、
    このアウターチューブに挿入され固定された平板形状記憶合金アクチュエータと、
    上記バイアスコイルスプリングの先端部と上記平板形状記憶合金アクチュエータの先端部とを電気的に接続しかつ固定する導電性スペーサと、
    上記平板形状記憶合金アクチュエータとバイアスコイルスプリングとが互いに接触しないように所定の間隔で配置した複数の非導電性スペーサと、
    上記平板形状記憶合金アクチュエータの基端部に接続される通電用導線とを有し、
    上記平板形状記憶合金アクチュエータは、その軸方向にジグザグ形状を有していて軸方向及び横方向の剛性が低く、かつ、平板の厚み方向に湾曲するように形状記憶されて一方向曲げ機構を有しており、
    上記バイアスコイルスプリングの基端部と上記通電用導線とに上記平板形状記憶合金アクチュエータを湾曲させるための電圧が印加され、該平板形状記憶合金アクチュエータを平板の厚み方向に湾曲させることを特徴とする、能動ガイドワイヤ。
  2. 導電性及び低剛性を有する弾性部材からなるバイアスコイルスプリングと、
    高分子ポリマからなり上記バイアスコイルスプリングを被覆しかつ外壁となるアウターチューブと、
    このアウターチューブに挿入され固定された平板形状記憶合金アクチュエータと、
    上記バイアスコイルスプリングの先端部と上記平板形状記憶合金アクチュエータの先端部とを電気的に接続しかつ固定する導電性スペーサと、
    上記平板形状記憶合金アクチュエータとバイアスコイルスプリングとが互いに接触しないように所定の間隔で配置した複数の非導電性スペーサと、
    上記平板形状記憶合金アクチュエータの基端部に接続される通電用導線とを有し、
    上記平板形状記憶合金アクチュエータは、その軸方向にジグザグ形状を有していて軸方向及び横方向の剛性が低く、かつ、平板の厚み方向に湾曲するように形状記憶されて一方向曲げ機構を有しており、
    上記バイアスコイルスプリングの基端部と上記通電用導線とに上記平板形状記憶合金アクチュエータを湾曲させるための電圧を印加することで、該平板形状記憶合金アクチュエータを平板の厚み方向に湾曲させる能動ガイドワイヤの製造方法であって、
    平板形状記憶合金アクチュエータと導電性スペーサと非導電性スペーサと通電用導線とからアクチュエータ・スペーサ構造体を作製する第1の工程と、
    バイアスコイルスプリングにシリコンチューブを挿入し全体に高分子ポリマの溶液を塗布し乾燥させ、上記シリコンチューブを引き抜くことで該バイアスコイルスプリングを該高分子ポリマの皮膜で覆って蛇腹構造のアウターチューブを作製する第2の工程と、
    第1の工程で作製したアクチュエータ・スペーサ構造体を上記第2の工程で作製したアウターチューブに挿入して能動ガイドワイヤを作製する第3の工程とからなることを特徴とする、能動ガイドワイヤの製造方法。
  3. 前記第1の工程は、前記平板形状記憶合金アクチュエータの先端部にパイプ状の導電性スペーサを嵌入し、中間部に所定の間隔をおいてパイプ状の非導電性スペーサを複数嵌入し、通電用導線を配した基端部に非導電性スペーサを嵌入し、上記先端部と基端部のスペーサの中空部には常温硬化型の導電性エポキシ樹脂を埋め込み、上記中間部のスペーサの中空部には常温硬化型の非導電性エポキシ樹脂を埋め込み、常温で硬化させることを特徴とする、請求項2に記載の能動ガイドワイヤの製造方法。
  4. 前記第2の工程は、前記バイアスコイルスプリングにシリコンチューブを挿入し、液体高分子を塗布して乾燥し、この液体高分子のポリマで被覆されたシリコンチューブの端のポリマを除去し、シリコンチューブの端とポリマ被覆部分との間に力を加えてシリコンチューブを引き抜いて作製することを特徴とする、請求項2に記載の能動ガイドワイヤの製造方法。
  5. 前記第3の工程は、前記第1の工程で作製したアクチュエータ・スペーサ構造体を前記第2の工程で作製したアウターチューブに挿入し、前記導電性スペーサとアウターチューブを常温硬化型の導電性エポキシ樹脂で前記アウターチューブに固定し、前記非導電性スペーサ部分のポリマを除去し、この露出した非導電性スペーサと前記バイアスコイルスプリングを常温硬化型の非導電性エポキシ樹脂で上記アウターチューブに固定し、このアクチュエータ・スペーサ構造体が固定されたアウターチューブ全面に液体高分子を塗布し、乾燥することを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の能動ガイドワイヤの製造方法。
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