JP4400939B2 - 光触媒被膜の形成方法および被膜形成装置 - Google Patents
光触媒被膜の形成方法および被膜形成装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光触媒被膜の形成方法およびこれに用いる装置に関し、特に、ホローカソード型の荷電粒子発生装置を用い、チタンなどの光触媒の材料となる物質をイオン化して被膜を形成するイオンプレーティング法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、酸化チタンなどの光触媒作用を利用した抗菌加工が普及しはじめている。酸化チタンなどは、光を照射することにより有機物の分解プロセスの触媒として作用する性質をもつことが知られている。このため、従来より、空気中の有害物質の除去、雑菌の抑制などを行うために、酸化チタンなどを触媒として用い、光を照射することにより有機物の分解を行う方法が利用されている。たとえば、建材用のタイルの表面に、酸化チタンの被膜を形成すれば、抗菌・防汚効果をもったタイルを得ることができる。あるいは、エアコンなどの空調設備のダクトの内壁に、酸化チタンの被膜を形成すれば、病原菌などによる汚染を防ぐことができ、人体や環境に安全な空調設備が実現できる。
【0003】
チタン自身を被覆対象とする場合、その表面に酸化チタンによる被膜を形成する方法として、チタン板を空気中で熱して表面を酸化させ、表面に酸化チタンの被膜を得る空気酸化法や、チタン板に電圧を印加しながら表面を酸化する陽極酸化法などが知られている。また、任意の担体を被覆対象とする場合は、電子ビーム蒸着法やCVD法などを用いて、酸化チタンを担体の表面に付着させて被膜を得る方法や、反応させると酸化チタンとなる有機化合物を含有する化合物を担体に付着させた後、各種処理を行い、担体表面に酸化チタンを含有する被膜を形成する方法などが知られている。ただ、これらの方法で形成された酸化チタンの被膜は、そのままの状態では光触媒としての反応効率が低いため、実用上、効率的な光触媒被膜とするために、300℃以上の高温で焼成して活性化する後工程が必要になる。
【0004】
一方、このような高温焼成を必要としない方法としては、酸化チタン膜をプラズマを用いて真空中で蒸着させる方法や、スパッタリングを用いて酸化チタン膜を形成する方法などが知られている。このような高いエネルギーを用いて膜形成を行えば、高温による焼成という後工程を行わなくても、十分に活性化した膜形成ができ、効率的な光触媒被膜が形成できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
まず、上述した高温焼成を行う光触媒被膜の形成方法は、金属やセラミックなど、耐熱性の高い担体に対しては適用可能であるが、プラスチックなど耐熱性の低い担体に対して適用すると、焼成時の熱により担体自体が変形あるいは変性してしまうという問題が生じる。また、金属やセラミックなど、耐熱性の高い担体に対して適用した場合であっても、形成した酸化チタンの被膜が熱応力で剥離しやすくなり、光触媒としての反応効率が低下するという問題が生じる。特に、ブラシを用いた洗浄などが頻繁に行われる製品について利用する場合、洗浄により被膜が担体から剥離して脱落する可能性があり、耐摩耗性の欠如という大きな問題が生じることになる。
【0006】
一方、高温焼成を必要としない光触媒被膜の形成方法では、焼成時の熱に基く問題は生じることがない。したがって、たとえば、プラスチック製品、人毛のかつら、テーブルクロス、といった耐熱性に欠ける担体の表面に対しても、酸化チタンの被膜を形成することが可能である。しかしながら、真空蒸着やスパッタリングという方法では、酸化チタンの成膜速度が遅いため、反応効率の高い厚い膜を形成しようとすると、非常に時間がかかり、生産性が低くなるという問題がある。また、これらの方法では、坩堝内の材料物質をチャンバ内に飛散させる手法を採るため、材料物質の成膜過程が方向性をもつことになり、担体の全表面にわたって均一な被膜を形成することが困難であるという別な問題も生じることになる。すなわち、坩堝に対して裏側に隠れた面については、圧力の低いチャンバ内では材料物質の回り込みがあまり起こらないため、被膜が形成されにくくなるのである。このため、坩堝に面した側とその裏側とでは、形成される被膜の厚みに差が生じてしまうことになる。したがって、人毛のかつらやテーブルクロスといった繊維状もしくは複雑な形状をした担体の全表面に均一に被膜を形成することは困難である。
【0007】
そこで本発明は、高温焼成を必要とせず、かつ、担体の全表面にわたって均一な被膜を高い生産性をもって形成させることができる光触媒被膜の形成方法および被膜形成装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、被覆対象となる担体の表面に、光触媒作用を有する被膜を形成する光触媒被膜の形成方法において、
チャンバ内に、光触媒の材料となる材料物質を入れた導電性の坩堝と、ホルダーに保持された担体と、不活性ガスとともに荷電粒子を放出するホローカソード型の荷電粒子発生装置と、をそれぞれ用意し、
荷電粒子発生装置内にチャンバ内のガスが流入しないように、チャンバ内を吸引して圧力を低下させた状態で、荷電粒子発生装置と坩堝との間に電圧を印加して荷電粒子発生装置で発生させた荷電粒子を坩堝内の材料物質に照射し、チャンバ内に材料物質をイオンとして放出させ、
チャンバ内の平均圧力よりも担体近傍の圧力が高くなるように、ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させながら、坩堝から放出させた材料物質のイオンを担体表面に付着させて、光触媒作用を有する被膜を形成するようにしたものである。
【0009】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る光触媒被膜の形成方法において、
光触媒の材料となる材料物質として、酸化チタンを坩堝に入れ、チャンバ内に酸化チタンのイオンを放出させるようにし、
ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させながら、酸化チタンのイオンを担体表面に付着させ、酸化チタンを主成分とする被膜を形成させるようにしたものである。
【0010】
(3) 本発明の第3の態様は、被覆対象となる担体の表面に、光触媒作用を有する被膜を形成する光触媒被膜の形成方法において、
チャンバ内に、光触媒による侵蝕作用に対する保護膜の材料となる第1の材料物質を入れた第1の坩堝と、光触媒の材料となる第2の材料物質を入れた第2の坩堝と、ホルダーに保持された担体と、不活性ガスとともに荷電粒子を放出するホローカソード型の荷電粒子発生装置と、をそれぞれ用意する準備段階と、
荷電粒子発生装置内にチャンバ内のガスが流入しないように、チャンバ内を吸引して圧力を低下させた状態で、荷電粒子発生装置で発生させた荷電粒子を第1の坩堝内の第1の材料物質に照射し、チャンバ内に第1の材料物質を第1のイオンとして放出させ、
チャンバ内の平均圧力よりも担体近傍の圧力が高くなるように、ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させながら、放出させた第1のイオンを担体表面に付着させ、担体表面に保護膜を形成する保護膜形成段階と、
荷電粒子発生装置内にチャンバ内のガスが流入しないように、チャンバ内を吸引して圧力を低下させた状態で、荷電粒子発生装置で発生させた荷電粒子を第2の坩堝内の第2の材料物質に照射し、チャンバ内に第2の材料物質を第2のイオンとして放出させ、
チャンバ内の平均圧力よりも担体近傍の圧力が高くなるように、ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させながら、放出させた第2のイオンを担体表面の保護膜上に付着させて光触媒被膜を形成する光触媒被膜形成段階と、
を行うようにしたものである。
【0011】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第3の態様に係る光触媒被膜の形成方法において、
第1の材料物質として酸化シリコンを第1の坩堝に入れ、保護膜形成段階において、チャンバ内に酸化シリコンのイオンを放出させるようにし、ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させながら、酸化シリコンを担体表面に付着させ、酸化シリコンを主成分とする保護膜を形成し、
第2の材料物質として酸化チタンを第2の坩堝に入れ、光触媒被膜形成段階において、チャンバ内に酸化チタンのイオンを放出させるようにし、ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させながら、酸化チタンを担体表面に付着させ、酸化チタンを主成分とする光触媒被膜を形成するようにしたものである。
【0012】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1〜第4の態様に係る光触媒被膜の形成方法において、
ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させる際に、坩堝から放出されたイオンの平均自由行程が、ホルダーによって支持されている担体の構造に適した値となるように、担体近傍の圧力を調整するようにしたものである。
【0013】
(6) 本発明の第6の態様は、被覆対象となる担体の表面に被膜を形成するための被膜形成装置において、
内部を所定の真空度にするための排気設備を備えたチャンバと、
被膜の材料となる材料物質を入れるために、チャンバ内に設けられた導電性の坩堝と、
被覆対象となる担体を保持するために、チャンバ内に設けられたホルダーと、
坩堝に向けて不活性ガスとともに荷電粒子を放出するホローカソード型の荷電粒子発生装置と、
チャンバ内の平均圧力よりも担体近傍の圧力が高くなるように、ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させる機能をもったガス噴出手段と、
を設け、荷電粒子発生装置と坩堝との間に電圧を印加して荷電粒子発生装置で発生させた荷電粒子を坩堝内の材料物質に照射し、チャンバ内に材料物質をイオンとして放出させ、ガス噴出手段から不活性ガスを吹き出させた状態において、担体表面にこの材料物質を主成分とする被膜を形成させるようにしたものである。
【0014】
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第6の態様に係る被膜形成装置において、
外面に担体を固定することができる中空構造体によってホルダーを構成し、このホルダーの少なくとも担体を固定する面に多数のガス噴出孔を形成し、この中空構造体の内部に不活性ガスを導入することにより多数のガス噴出孔から不活性ガスを噴出させる機構を形成し、この機構によりガス噴出手段を構成するようにしたものである。
【0015】
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第6または第7の態様に係る被膜形成装置において、
第1の坩堝および第2の坩堝が載置された移動テーブルをチャンバー内に設け、この移動テーブルを移動させることにより、荷電粒子発生装置から放出された荷電粒子を第1の坩堝内に衝突させる第1の状態と第2の坩堝内に衝突させる第2の状態とを切り替えることができるようにし、
第1の状態において担体表面に第1の坩堝内の材料物質を主成分とする第1の被膜を形成し、第2の状態において第1の被膜の表面に第2の坩堝内の材料物質を主成分とする第2の被膜を形成できるようにしたものである。
【0016】
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第6〜第8の態様に係る被膜形成装置において、
導電性材料からなる外側部とセラミック材料もしくはカーボン材料からなる内側部とによって坩堝を構成し、外側部に電圧を印加するとともに内側部に材料物質を収容した状態で被膜形成作業を行うことができるようにしたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施形態に基いて説明する。本願発明者は、高温焼成を必要とせずに高い生産性をもって光触媒被膜を形成させるために、反応性イオンプレーティング法を利用できる点に着目した。特に、ホローカソード型(Hollow-cathode type )の荷電粒子発生装置を用いた反応性イオンプレーティング法が、光触媒被膜の形成に最適であることを見出だした。電子を発生させる装置としては、フィラメントからの熱電子放出を利用した装置が広く利用されているが、大きなエネルギーを必要とする反応性イオンプレーティングでは、フィラメントを利用した装置は寿命が短くなるため、保守などの作業負担が重くなる。これに対して、ホローカソード型の荷電粒子発生装置は、LaB6などの金属からなる中空陰極(ホローカソード)内にグロー放電を生じさせ、この中空陰極内のガスを効率的にプラズマ化し、イオンや電子などからなるプラズマ粒子を照射する機能を有している。このため、高度に電離されたイオンを生成することができ、しかも、過酷な環境で使用した場合であっても、寿命が長く、保守が簡単であるという特性を有する。
【0018】
このように、ホローカソード型の荷電粒子発生装置を用いた反応性イオンプレーティング法を利用して、光触媒被膜を作成すれば、高温焼成を行うことなしに十分に活性化した光触媒被膜を得ることができる。しかも一般的な真空蒸着法やスパッタリング法を用いた場合に比べて成膜速度が速いため、かなり良好な生産性が得られる。
【0019】
本発明に係る光触媒被膜の形成方法は、真空チャンバ内で実施される。すなわち、チャンバ内に、光触媒の材料となる材料物質を入れた導電性の坩堝と、ホルダーに保持された担体と、不活性ガスとともに荷電粒子を放出するホローカソード型の荷電粒子発生装置と、をそれぞれ用意し、荷電粒子発生装置の中空陰極側が負、坩堝側が正となるように、両者に電圧を印加し、荷電粒子発生装置で発生させた荷電粒子をプラズマビームとして坩堝内の材料物質へと導く。こうして、坩堝内の材料物質に荷電粒子を照射すると、材料物質はイオン化してチャンバ内に放出されることになる。結局、チャンバ内には、荷電粒子発生装置から放出された荷電粒子(電子および不活性ガスのイオン)および坩堝から放出された材料物質のイオンとが混じり合ったプラズマが発生し、ホルダーに保持された担体の表面がイオンプレーティングを受け、材料物質の被膜が形成されることになる。
【0020】
なお、ホローカソード型の荷電粒子発生装置をチャンバ内で利用する場合、この荷電粒子発生装置の中空電極内にチャンバ内のガスが流入しないように、チャンバ内を吸引して圧力を低下させる必要がある。すなわち、チャンバ内を真空吸引することにより、荷電粒子発生装置内の中空電極内の圧力よりも、チャンバ内の圧力を下げる必要がある。ところが、チャンバ内の圧力を下げると、チャンバ内ガスを構成する粒子の平均自由工程が長くなるため、担体の全表面にわたって均一な被膜を形成させることができないという弊害が生じることになる。特に、人毛のかつらやテーブルクロスといった繊維状もしくは複雑な形状をした担体、多孔質の担体の場合、実用上十分な被膜形成を行うことができない。
【0021】
本願発明者は、ホローカソード型の荷電粒子発生装置を用いた場合のこのような欠点を克服するために、チャンバ内の平均圧力よりも担体近傍の局所的な圧力が高くなるように、担体のホルダーもしくはその近傍からガスを吹き出させながら、放出させたイオンを担体表面に付着させるという手法に想到した。担体のホルダーもしくはその近傍からガスを吹き出させると、担体近傍の圧力が部分的に高くなり、坩堝から放出されたイオンは、このガスの粒子と衝突するようになるため、平均自由行程が短くなる。したがって、繊維質、多孔質など複雑な形状を有する担体を用いた場合でも、イオン化された材料物質の粒子が担体表面に均一に付着しやすくなり、担体表面に均一な被膜を形成させることができるようになる。担体のホルダーもしくはその近傍から吹き出させるガスの量は、坩堝から放出されたイオンの平均自由行程が、ホルダーによって支持されている担体の構造に適した値となるように、適宜調整するようにすればよい。別言すれば、より細かく複雑な構造をもった担体に対しては、吹き出させるガスの量をより多くするようにすればよい。
【0022】
続いて、図を参照しながら、本発明の一実施形態を述べる。図1は、本発明の一実施形態に係る被膜形成装置の基本構成を示す側断面図である。チャンバ10は、内部を所定の真空度にするための排気設備(図示省略)を備えており、右方の排気管11を通じて外部への排気が行われる。チャンバ10の底部には、台座20が設けられており、この台座20の上には、移動テーブル25が設けられている。この実施形態では、この移動テーブル25の上に、第1の坩堝31と第2の坩堝32とが載置されている。これらの坩堝は、図の紙面に垂直な方向(奥行き方向)に細長い形状をしている。
【0023】
一方、チャンバ10の左方には、プラズマ導入管12が形成されており、このプラズマ導入管12の端部には、プラズマガン40(荷電粒子発生装置)が取り付けられている。プラズマガン40は、LaB6からなる中空陰極を有するホローカソード型のガンであり、この中空陰極(ホローカソード)の中にアルゴンガス(他の不活性ガスを用いてもよい)を導入し、アルゴンイオンおよび電子からなるプラズマ粒子をチャンバ内に放出する機能を有している。プラズマガン40から放出されたプラズマ粒子は、収束コイル41によって収束され、更に、上下一対の第1シート化磁石42および上下一対の第2シート化磁石43によってシート化(上下に押しつぶされ、図の奥行き方向に広がったシート状の形状)され、シート状のプラズマビームPを形成する(図が繁雑になるのを避けるため、図1では、第1シート化磁石42および第2シート化磁石43を支持する要素は図示を省略してある)。
【0024】
このとき、第1の坩堝31とプラズマガン40の中空陰極との間に、坩堝側が正となるように電圧が印加される。これにより、坩堝が陽極(アノード)として作用し、プラズマビームPは第1の坩堝31内へと照射されることになる。移動テーブル25の下に設置されたアノード磁石44は、プラズマビームPを第1の坩堝31内へと導く補助機能を果たす。上述したように、チャンバ10内は排気管11を介して排気されており、大気圧よりも低い状態に保たれているため、チャンバ10内のガスがプラズマガン40側へと流入することはない。第1の坩堝31内には、被膜の材料となる材料物質が入れられる。この材料物質には、上述したように、プラズマビームPが照射されるので、材料物質はイオン化し、第1の坩堝31からチャンバ10内へと放出されることになる。
【0025】
第1の坩堝31の上方には、ホルダー50が設けられており、このホルダー50の下面に、被覆対象となる担体100が固定される。第1の坩堝31から放出されたイオン状の材料物質は、担体100の表面に付着し、この担体100表面に、この材料物質を主成分とする被膜が形成されることになる。本発明に係る被膜形成装置の特徴は、この担体100表面への被膜形成時に、ホルダー50もしくはその近傍からガスを吹き出させる機能をもったガス噴出手段を付加した点にある。このように、ホルダー50もしくはその近傍からガスを吹き出させることにより、チャンバ10内の平均圧力よりも担体100近傍の圧力を高く保つことができるようになる。すると、第1の坩堝31から放出されたイオン状の材料物質は、担体100の周辺においてガス分子と衝突する確率が高くなり平均自由行程が短くなる。その結果、担体100に対する回り込み作用が大きくなり、繊維質、多孔質など複雑な形状を有する担体100を用いた場合でも、イオン化された材料物質の粒子が担体表面に均一に付着しやすくなり、担体表面に均一な被膜を形成させることができるようになる。
【0026】
図示の実施形態では、外面に担体100を固定することができる中空構造体によってホルダー50を構成し、このホルダー50の下面(担体100を固定する面)に多数のガス噴出孔を形成し、中空構造体の内部にガスを導入することにより多数のガス噴出孔からガスを噴出させる構造を用いている。すなわち、図2の側断面図に示すように、ホルダー50の本体は、中空構造体51から構成されており、この中空構造体51の下面層には、多数のガス噴出孔hが形成されている。一方、中空構造体51の内部には、ガス導入装置60から導入管61を介して所定のガスが導入され、このガスは、多数のガス噴出孔hから噴出する。その結果、担体100周辺の圧力が高まり、イオン化された材料物質の平均自由行程が短くなる。
【0027】
図3は、ホルダー50の下面図である。この実施形態では、ホルダー50は縦1m、横1.5m、厚み10mmほどの板状中空構造体によって構成されており、その下面に、縦横10mmピッチで、直径φ=1mm程度のガス噴出孔hが多数形成されている(図に示されている各部の寸法比やガス噴出孔hの数などは、図示の便宜上、実際のものとは異なる)。ガス噴出孔hのピッチは、ガス分子の平均自由行程を考慮し、所定ピッチ以下に設定するのが好ましい。たとえば、ホルダー付近の圧力を10−2torr(後述する実施例参照)程度に維持する場合、この圧力での分子の一般的な平均自由行程は10mm程度となる。そこで、ホルダー50上のいずれの点についても、最も近いガス噴出孔hまでの距離が10mm以下(平均自由行程以下)になるように、ガス噴出孔hを配置するようにするのが好ましい。具体的には、図3において、4つのガス噴出孔hからなる単位格子(4頂点にガス噴出孔hが位置する小さな正方形)を考えると、この単位格子の中心点(正方形の中心点)がガス噴出孔hから最も遠い点になるので、この中心点とガス噴出孔hとの距離が10mm以下になるように、別言すれば、格子間隔が「ルート200」mm以下になるように、ガス噴出孔hを格子状に配置すればよい(本実施形態では、格子間隔は10mmとなっており、この条件を満たしている)。なお、このホルダー50の下面には、担体100を保持するための固定具が用意されているが、図示は省略されている。人毛かつらや繊維製品など任意形状の製品を担体100として用いる場合であれば、たとえば、ホルダー50の下面にネットを張れるような構造にしておき、このネットで担体100を保持固定するようにすればよい。もちろん、ホルダー50の下面に担体100を固定することができれば、この他、どのような固定方法を採ってもかまわない。
【0028】
このような被膜形成装置を用いれば、担体100の表面に効率的に、かつ、均一に被膜形成を行うことができる。坩堝内に光触媒の材料となる材料物質を入れておけば、人毛のかつらやテーブルクロスといった複雑な形状をした担体100を用いた場合でも、その表面に均一な光触媒被膜を形成することが可能になる。具体的には、第1の坩堝31内にチタンを材料物質として入れ、プラズマビームPを照射すれば、チタンがイオン化してチャンバ10内に放出されることになる。一方、ガス導入装置60によって酸素ガスを導入し、導入管61を介してホルダー50の中空部分へと送り込めば、この酸素ガスは多数のガス噴出孔hから噴出し、担体100周辺の圧力が高まることになる。そこへイオン化したチタンが衝突し、結局、担体100の表面に酸化チタンの被膜が形成されることになる。なお、図1に示す装置は、ガス導入装置70から導入管71を介して任意のガスをチャンバ10内に導入する機能を有しているので、ホルダー50の下面から噴出させた酸素ガスだけでは反応が不十分である場合には、ガス導入装置70から導入管71を介して酸素ガスを補助的に導入するようにしてもかまわない。ただし、プラズマガン40側へガスが流入しないように、チャンバ10内の平均的な圧力は、プラズマガン40内の圧力よりも低く維持するように留意する必要がある。
【0029】
あるいは、第1の坩堝31内に、酸化チタンを材料物質として入れてもかまわない。この場合、酸化チタンがイオン化されてそのまま担体100の表面に付着し、被膜を形成することになるので、ガス導入装置60によって導入するガスは酸素ガスでなくてもかまわない。たとえば、不活性ガスをガス導入装置60から導入して、ホルダー50の下面から吹き出させるようにしてもよい。要するに、ホルダー50の下面からガスを吹き出させる目的は、担体100の周辺部分の圧力を局所的に高め、坩堝から放出された材料物質イオンの平均自由行程を短くするためであるので、ガス導入装置60から導入するガスは、被膜を構成する化合物の一部であってもかまわないし、被膜を構成する化合物とは無関係のガスであってもかまわない。
【0030】
また、酸化チタンは、紫外域に吸収帯を有しており、紫外線を照射した場合には十分な光触媒作用を果たすことができるが、可視域の光を照射した場合には十分な光触媒作用を果たすことができない。そこで、可視域の光に対しても光触媒作用を果たすことができるようにするためには、可視域に吸収帯をもった物質を酸化チタンに添加するようにするのが好ましい。この場合は、坩堝内にそのような添加物質を予め入れておくようにすればよい。
【0031】
ところで、図1に示す装置が、第1の坩堝31および第2の坩堝32なる2つの坩堝を備えているのは、2種類の被膜を順次形成させる機能を有しているためである。前述したように、第1の坩堝31および第2の坩堝32は、移動テーブル25の上に載置されている。ここで、移動テーブル25は、台座20上を図の左右方向に移動することができるテーブルである(移動テーブル25を移動させるための駆動系は、図示を省略してある)。図1に示す状態においては、プラズマビームPは第1の坩堝31内の材料物質に照射されているが、移動テーブル25を図の右方に移動させて、第2の坩堝32を、アノード磁石44の上方位置までもってくるようにすれば、今度は、プラズマビームPを第2の坩堝32内の材料物質に照射することが可能になる。坩堝サイドシールド45は、図1に示す状態において、待機中の第2の坩堝32内にプラズマビームPが落下することを防ぐ遮蔽板として機能する。
【0032】
結局、図1に示す装置では、図示のように、プラズマガン40から放出されたプラズマビームPを第1の坩堝31内に導く第1の状態と、第2の坩堝32内に導く第2の状態とを切り替えることができる。したがって、予め、第1の坩堝31内に第1の材料物質を入れ、第2の坩堝32内に第2の材料物質を入れておけば、まず、第1の状態(図1に示す状態)において、プラズマビームPを第1の坩堝31内へ導いて第1の材料物質をイオン化し、担体100の表面に、この第1の材料物質を主成分とする第1の被膜を形成した後、第2の状態(移動テーブル25を図の右方へと移動させて、アノード磁石44の上方に第2の坩堝32が位置するようにした状態)において、プラズマビームPを第2の坩堝32内へ導いて第2の材料物質をイオン化し、担体100の表面に形成された第1の被膜の更に表面に、この第2の材料物質を主成分とする第2の被膜を形成することが可能になる。
【0033】
このように、担体100の表面に2層構造を形成する手法は、担体100が光触媒作用により侵蝕を受ける物質であった場合に有益である。たとえば、担体100が人毛かつらのような有機物から構成されていた場合、その表面に酸化チタンのような光触媒被膜を直接形成すると、酸化チタンの光触媒作用により外側に付着した有機物が分解されるため、抗菌,防汚効果が得られるが、人毛かつら自身も光触媒による侵蝕作用を受けることになり好ましくない。このような場合、担体100の表面には、光触媒による侵蝕作用に対する保護膜(第1の被膜)を形成するようにし、更にその外側に光触媒被膜(第2の被膜)を形成するようにすればよい。第2の被膜として形成された光触媒被膜は、外側に付着した有機物を分解することにより、抗菌,防汚効果を呈するが、内側の担体100に対しては、第1の被膜として形成された保護膜の存在により、何ら悪影響を及ぼすことがない。
【0034】
具体的には、たとえば、第1の被膜として酸化シリコンからなる膜を形成する保護膜形成段階を行った後、第2の被膜として酸化チタンからなる膜を形成する光触媒被膜形成段階を行えば、上述した2層構造を得ることができる。この場合、まず、第1の材料物質としてシリコンもしくは酸化シリコンを第1の坩堝31に入れ、第2の材料物質としてチタンもしくは酸化チタンを第2の坩堝に入れておけばよい。前半の保護膜形成段階では、第1の坩堝31に対してプラズマビームPを照射し、チャンバ内にシリコンもしくは酸化シリコンのイオンを放出させるようにし、ホルダー50もしくはその近傍から酸素ガスを吹き出させながら、酸化シリコンを担体100の表面に付着させ、酸化シリコンを主成分とする保護膜を形成する。続いて、後半の光触媒被膜形成段階において、第2の坩堝32に対してプラズマビームPを照射し、チャンバ内にチタンもしくは酸化チタンのイオンを放出させるようにし、ホルダーもしくはその近傍から酸素ガスを吹き出させながら、酸化チタンを担体表面に付着させ、酸化チタンを主成分とする光触媒被膜を形成すればよい。
【0035】
ところで、本実施形態では、第1の坩堝31および第2の坩堝32として、特殊な坩堝を用いるようにしている。たとえば、第1の坩堝31は、図4の側断面図に示すように、導電性材料(この例では金属)からなる外側部33とセラミック材料(たとえば、BN,MgO,Al2O3など)もしくはカーボン材料からなる内側部34とによって構成されている。外側部33を導電性材料で構成するのは、カソードとしてのプラズマガン40に対して、アノードとして機能させる必要があるためであり、図示のように、外側部33に対しては正の電圧が印加されることになる。一方、内側部34をセラミック材料もしくはカーボン材料で構成するのは、坩堝内の材料物質Mの突沸を抑えるためである。一般に、チタンやシリコンなどを、単体として蒸発材料として用いると、溶融時に突沸を引き起こすことが知られている。坩堝の中で、このような突沸が生じると、成膜工程の安定性を阻害する要因になるとともに、突沸により坩堝から飛散した粒子が担体100に衝突すると、担体100自体に損傷を与えるおそれもある。セラミック材料やカーボン材料は、耐熱性および断熱性を有しているため、坩堝の内側部34をセラミック材料もしくはカーボン材料により構成しておくと、熱拡散によるエネルギー損失を抑えることができる。このため、比較的低いエネルギーのプラズマビームPを照射することにより、坩堝内部の材料物質を均一に融解させることができるようになる。このように、低エネルギーで坩堝内部の材料物質を均一融解させるようにすれば、突沸の発生を抑えることができる。なお、第2の坩堝32も全く同じ構造を有する。
【0036】
以上のとおり、本発明に係る光触媒被膜の形成方法によれば、高温焼成を必要とせず、かつ、担体の全表面にわたって均一な被膜を高い生産性をもって形成させることができるようになる。このため、担体100としては、70℃程度の温度に耐え得る材料であれば、どのようなものを用いてもかまわない。要するに、成膜工程の間、プラズマの輻射熱によって著しい変形や変性を受け、実用上、担体として機能しなくなってしまうような物に対しては、本発明を適用することはできないが、多少の変形や変性を受けるが、実用上、担体として機能することができるような物に対しては、本発明は十分に適用可能である。具体的には、本発明は、ステンレス、アルミニウムのような金属、多孔質セラミック、ポリプロピレン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABS樹脂のような高分子材料、あるいは上述したような人毛かつら、テーブルクロス、フィルターなどの繊維質材料など、種々の物を担体として広く適用可能である。
【0037】
【実施例】
最後に、本発明の実施例を述べる。まず、図1に示す被膜形成装置を用いて、第1の坩堝31内に保護膜を形成するための酸化シリコンを、ペレット(粒径2〜5mm程度)の状態で入れ、第2の坩堝32内に光触媒被膜を形成するためのチタンを、同じくペレット(粒径2〜5mm程度)の状態で入れて準備する。また、担体100としては、人毛かつらおよびPET繊維を用い、ホルダー50の下面に固定した。人毛かつらおよびPET繊維は、ホルダー50の下面にできるだけ広げるようにして緩く固定した。
【0038】
続いて、移動テーブル25を図1に示す状態に維持し、プラズマガン40内にアルゴンガスを20sccmの流量で導入しながら、放電電力8Wでプラズマガン40を動作させた。このとき、チャンバ10内の平均圧力が、1×10−3torr程度に維持されるように、排気管11からの排気を行った。一方、ガス導入装置60からは、酸素ガスを10sccmの流量で導入し、ホルダー50下面のガス噴出孔hから放出させた。これにより、ホルダー50下面付近の圧力は、上記平均圧力より高い1×10−2torr程度になった。上記条件で、担体100の表面に酸化シリコンからなる厚み80nm程度の保護膜を形成した。成膜レートは、5nm/sec程度である。担体100に対する加熱は特に行っていない。
【0039】
次に、移動テーブル25を図の右方へと移動させ、第2の坩堝32内の材料に対してプラズマビームPの照射を行った。このときも、プラズマガン40内にアルゴンガスを20sccmの流量で導入しながら、放電電力8Wでプラズマガン40を動作させた。やはり、チャンバ10内の平均圧力が、1×10−3torr程度に維持されるように、排気管11からの排気を行った。ガス導入装置60からは、酸素ガスを40sccmの流量で導入し、ホルダー50下面のガス噴出孔hから放出させた。これにより、ホルダー50下面付近の圧力は、上記平均圧力より高い1×10−2torr程度になった。上記条件で、担体100上に形成された酸化シリコン膜(保護膜)の表面に、酸化チタンからなる厚み80nm程度の光触媒被膜を形成した。成膜レートは、2nm/sec程度である。担体100に対する加熱は特に行っていない。
【0040】
こうして得られた加工後の人毛かつらおよびPET繊維について、アルデヒド除去率を測定し、光触媒作用を評価した。すなわち、加工後の人毛かつらおよびPET繊維を測定対象となる試料として、それぞれ密閉した石英ガラス製の容器に入れ、この容器内に、濃度50ppmのアセトアルデヒドを含有するガスを注入した。続いて、この試料に対して、10Wのブラックライト(紫外線)を30分間照射した後、容器内のガスをサンプリングして、ガスクロマトグラフィーを用いてアセトアルデヒド濃度を測定した。こうして、ブラックライト照射の前後におけるアセトアルデヒド濃度を比較したところ、照射後におけるアセトアルデヒド濃度の低下が十分に観測され、光触媒作用によってアセトアルデヒドが分解された事実が確認できた。
【0041】
また、ブラックライトを試料の一方の面(被膜形成時の下側面)に照射した場合と、試料の反対側の面(被膜形成時の上側面)に照射した場合とで比較を行った結果、いずれの場合もほぼ同じ光触媒効果が得られることが判明した。この結果から、人毛かつらやPET繊維などの複雑な形状をもった担体についても、ほぼ全表面に均一に光触媒被膜が形成されていることが確認できた。
【0042】
【発明の効果】
以上のとおり本発明に係る光触媒被膜の形成方法および被膜形成装置によれば、反応性の高いイオンプレーティング法を利用したため、高温焼成を行うことなしに、光触媒被膜を高い生産性をもって形成することが可能になる。したがって、耐熱性の低い種々の担体に光触媒被膜を形成することができる。また、形成した被膜の付着性が高いため、ブラシ洗浄による摩耗にも十分に耐え得る被膜形成が可能になる。更に、担体付近に堆積するイオンの平均自由行程を短くすることができるため、複雑な形状をした担体であっても、全表面にわたって均一な被膜を形成することが可能になる。また、保護層と光触媒被膜層との2層構造を採ることにより、担体に対する光触媒作用を防止することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る被膜形成装置の構成を示す側断面図である。
【図2】図1に示す装置におけるホルダー50の詳細な構造を示す側断面図である。
【図3】図1に示す装置におけるホルダー50の詳細な構造を示す下面図である。
【図4】図1に示す装置における第1の坩堝31の詳細な構造を示す側断面図である。
【符号の説明】
10…チャンバ
11…排気管
12…プラズマ導入管
20…台座
25…移動テーブル
31…第1の坩堝
32…第2の坩堝
33…外側部
34…内側部
40…プラズマガン(荷電粒子発生装置)
41…収束コイル
42…第1シート化磁石
43…第2シート化磁石
44…アノード磁石
45…坩堝サイドシールド
50…ホルダー
51…中空構造体
60…ガス導入装置
61…導入管
70…ガス導入装置
71…導入管
100…担体
h…ガス噴出孔
M…材料物質
P…プラズマビーム
Claims (9)
- 被覆対象となる担体の表面に、光触媒作用を有する被膜を形成する方法であって、
チャンバ内に、光触媒の材料となる材料物質を入れた導電性の坩堝と、ホルダーに保持された担体と、不活性ガスとともに荷電粒子を放出するホローカソード型の荷電粒子発生装置と、をそれぞれ用意し、
前記荷電粒子発生装置内にチャンバ内のガスが流入しないように、チャンバ内を吸引して圧力を低下させた状態で、前記荷電粒子発生装置と前記坩堝との間に電圧を印加して前記荷電粒子発生装置で発生させた荷電粒子を前記坩堝内の材料物質に照射し、チャンバ内に材料物質をイオンとして放出させ、
チャンバ内の平均圧力よりも前記担体近傍の圧力が高くなるように、前記ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させながら、放出させた前記材料物質のイオンを前記担体表面に付着させることを特徴とする光触媒被膜の形成方法。 - 請求項1に記載の形成方法において、
光触媒の材料となる材料物質として、酸化チタンを坩堝に入れ、チャンバ内に酸化チタンのイオンを放出させるようにし、
ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させながら、酸化チタンを担体表面に付着させ、酸化チタンを主成分とする被膜を形成させることを特徴とする光触媒被膜の形成方法。 - 被覆対象となる担体の表面に、光触媒作用を有する被膜を形成する方法であって、
チャンバ内に、光触媒による侵蝕作用に対する保護膜の材料となる第1の材料物質を入れた第1の坩堝と、光触媒の材料となる第2の材料物質を入れた第2の坩堝と、ホルダーに保持された担体と、不活性ガスとともに荷電粒子を放出するホローカソード型の荷電粒子発生装置と、をそれぞれ用意する準備段階と、
前記荷電粒子発生装置内にチャンバ内のガスが流入しないように、チャンバ内を吸引して圧力を低下させた状態で、前記荷電粒子発生装置で発生させた荷電粒子を前記第1の坩堝内の第1の材料物質に照射し、チャンバ内に第1の材料物質を第1のイオンとして放出させ、
チャンバ内の平均圧力よりも前記担体近傍の圧力が高くなるように、前記ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させながら、放出させた前記第1のイオンを前記担体表面に付着させ、前記担体表面に保護膜を形成する保護膜形成段階と、
前記荷電粒子発生装置内にチャンバ内のガスが流入しないように、チャンバ内を吸引して圧力を低下させた状態で、前記荷電粒子発生装置で発生させた荷電粒子を前記第2の坩堝内の第2の材料物質に照射し、チャンバ内に第2の材料物質を第2のイオンとして放出させ、
チャンバ内の平均圧力よりも前記担体近傍の圧力が高くなるように、前記ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させながら、放出させた前記第2のイオンを前記担体表面の前記保護膜上に付着させて光触媒被膜を形成する光触媒被膜形成段階と、
を有することを特徴とする光触媒被膜の形成方法。 - 請求項3に記載の形成方法において、
第1の材料物質として酸化シリコンを第1の坩堝に入れ、保護膜形成段階において、チャンバ内に酸化シリコンのイオンを放出させるようにし、ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させながら、酸化シリコンを担体表面に付着させ、酸化シリコンを主成分とする保護膜を形成し、
第2の材料物質として酸化チタンを第2の坩堝に入れ、光触媒被膜形成段階において、チャンバ内に酸化チタンのイオンを放出させるようにし、ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させながら、酸化チタンを担体表面に付着させ、酸化チタンを主成分とする光触媒被膜を形成することを特徴とする光触媒被膜の形成方法。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の形成方法において、
ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させる際に、坩堝から放出されたイオンの平均自由行程が、ホルダーによって支持されている担体の構造に適した値となるように、前記担体近傍の圧力を調整することを特徴とする光触媒被膜の形成方法。 - 被覆対象となる担体の表面に被膜を形成するための被膜形成装置であって、
内部を所定の真空度にするための排気設備を備えたチャンバと、
被膜の材料となる材料物質を入れるために、前記チャンバ内に設けられた導電性の坩堝と、
被覆対象となる担体を保持するために、前記チャンバ内に設けられたホルダーと、
前記坩堝に向けて不活性ガスとともに荷電粒子を放出するホローカソード型の荷電粒子発生装置と、
前記チャンバ内の平均圧力よりも前記担体近傍の圧力が高くなるように、前記ホルダーもしくはその近傍から不活性ガスを吹き出させる機能をもったガス噴出手段と、
を備え、前記荷電粒子発生装置と前記坩堝との間に電圧を印加して前記荷電粒子発生装置で発生させた荷電粒子を前記坩堝内の材料物質に照射し、チャンバ内に前記材料物質をイオンとして放出させ、前記ガス噴出手段から不活性ガスを吹き出させた状態において、前記担体表面に前記材料物質を主成分とする被膜を形成させる機能をもった被膜形成装置。 - 請求項6に記載の装置において、
外面に担体を固定することができる中空構造体によってホルダーを構成し、このホルダーの少なくとも前記担体を固定する面に多数のガス噴出孔を形成し、前記中空構造体の内部に不活性ガスを導入することにより前記多数のガス噴出孔から不活性ガスを噴出させる機構によりガス噴出手段を構成したことを特徴とする被膜形成装置。 - 請求項6または7に記載の装置において、
第1の坩堝および第2の坩堝が載置された移動テーブルをチャンバー内に設け、この移動テーブルを移動させることにより、荷電粒子発生装置から放出された荷電粒子を前記第1の坩堝内に衝突させる第1の状態と前記第2の坩堝内に衝突させる第2の状態とを切り替えることができるようにし、
前記第1の状態において前記担体表面に前記第1の坩堝内の材料物質を主成分とする第1の被膜を形成し、前記第2の状態において前記第1の被膜の表面に前記第2の坩堝内の材料物質を主成分とする第2の被膜を形成する機能を有することを特徴とする被膜形成装置。 - 請求項6〜8のいずれかに記載の装置において、
導電性材料からなる外側部とセラミック材料もしくはカーボン材料からなる内側部とによって坩堝を構成し、前記外側部に電圧を印加するとともに前記内側部に材料物質を収容した状態で被膜形成作業を行うことができるように構成したことを特徴とする被膜形成装置。
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