JP4400852B2 - アクリルフィルム及び該フィルムを積層した積層品 - Google Patents
アクリルフィルム及び該フィルムを積層した積層品 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材の表面加飾等に有用であり、艶消し外観を有する加工性、耐水白化性、耐候性に優れたアクリルフィルム、ならびにこのフィルムを表面に有する積層品に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル樹脂、特にメチルメタクリレート系樹脂は優れた透明性と耐候性を併せ持つ樹脂として知られており、キャスト成型品、押出成形品等に広く使用されている。しかし、これらのメチルメタクリレート系樹脂は一般的に脆く、フィルム・シート用素材としては不適当であった。このため、柔軟性を向上させフィルム・シート用素材として使用可能とする試みとして、例えば特許文献1にみられるような多層構造重合体を用いる方法、特許文献2にみられるアクリルゴムとのブレンド物が開発されている。
【0003】
また、更に柔軟性を向上し、曲率半径の小さな曲げ加工、変形速度の大きい速い曲げ加工等にも使用できる加工性良好なアクリルフィルムが特許文献3に開示されている。
【0004】
特許文献4には、低温加工特性に優れたアクリルフィルムが開示されている。
【0005】
ドア材、窓枠材、外壁材、雨戸などの外装用建材として、亜鉛鋼板、SUS板、アルミニウム板などに樹脂を積層した化粧鋼板がある。化粧鋼板の製造方法としては各種鋼板にプライマー塗料を塗布し、次に塩化ビニル塗料を塗布した後シルクスクリーン印刷を施し、最後に艶消し塗装をする方法、あるいは、あらかじめ表面保護層/印刷層/基体樹脂層を基本構造とするシートを作っておき、このシートを鋼板に貼り合わせる方法がある。後者の方法において、表面保護層に用いられる素材としては塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂が通常である。
【0006】
このようなドア材、窓枠材、外壁材、雨戸などの外装用建材の表皮材に求められる性能として耐水白化性がある。具体的には、熱可塑性樹脂層を表皮材として積層した積層体を玄関ドア、樹脂サッシ、窓枠、外壁材等の屋外用途に用いる場合、降雨に対する外観変化が小さいことが必要であり、特に積層体表面に水が付着した状態で直射日光を受け、積層体表面の温度が上昇した時に、発生する白化が少ないこと(耐水白化性)が重要となる。
【0007】
積層体表面の熱可塑性樹脂層に残留する積層時の引っ張り応力あるいは積層体を曲げ加工、延伸加工した際に残留する引っ張り応力等、水付着時に直射日光を受け上昇する積層体表面の温度を考慮すると、0.02MPaの引っ張り応力下で100℃の温水に曝露した際の耐水白化性が重要である。
【0008】
すなわち、このような引っ張り応力下での耐水白化性試験を実施した際、熱可塑性樹脂層の白色度(LabW)の試験前後の変化が25%以下である場合は、これを積層した積層体を例えば外壁材、樹脂サッシ等の屋外建材に使用することができる。
【0009】
【特許文献1】
特公昭62−19309号公報
【0010】
【特許文献2】
特公平6−45737号公報
【0011】
【特許文献3】
特開平11−80487号公報
【0012】
【特許文献4】
特開2002−241445号公報
【0013】
特許文献3に記載のアクリルフィルムは引張破断伸度(JIS Z 1702に順ずる)が大きいので、加工性が非常に良好であり、比較的耐水白化性に優れたものである。しかしながら、該フィルムでは、艶消し性が要求される用途には、艶消し剤として水酸基を有する直鎖状重合体を添加するが、該公報に開示された水酸基を有する直鎖状重合体では耐水白化性が低下する傾向があり、他の艶消し剤としてMMA架橋ポリマーが開示されているが、この場合は破断伸度、艶消し性、耐水白化性のバランスが前記水酸基を有する直鎖状重合体を添加したときと比較して劣る傾向があった。
【0014】
一方、特許文献4では、測定温度0℃での引張破断伸びに優れたアクリルフィルムを得る方法について開示されているが、外装用建材の表皮材に必要となる耐水白化性を得る方法について具体的に示唆されていない。
【0015】
また、該公報では、アクリルフィルムを外装用建材の表皮材として用いる場合に問題となる、積層シート状物の製造時(ラミネート法)や長期屋外使用後の表面光沢度の変化を抑制するための具体的方法についての記載がなく、また、実施例に記載された方法で得られるアクリルフィルムでは、エンボス加工等により形成した艶消し意匠面等が、光あるいは熱により変化しやすいため、外装用建材の表皮材としての工業的利用価値が低いものであった。
【0016】
特に艶消し性が必要であり、且つ耐水白化性が要求される、例えばドア材、窓枠材、外壁材、雨戸などの外装、準外装用途に用いるためには、更に耐水白化性を改善することが望まれていた。
【0017】
また、化粧鋼板でシート状物を鋼板にラミネートする用途で、表面保護層に用いられる塩化ビニル樹脂フィルムやポリオレフィン樹脂フィルムは加工性、耐水白化性は良好であるが、耐候性に難があった。
【0018】
一方、特許文献3に開示されているアクリルフィルムは優れた耐候性、艶消し性を有し、更に従来のアクリルフィルムと比較して加工性が良好であるが、上述のごとき耐水白化性が劣るため、特に降雨に曝露された際の外観変化が少ないことが必要な外装用化粧鋼板の保護層としては用いることができない。
【0019】
耐候性、艶消し性、易加工性と耐水白化性を同時に満足し、例えば外装用化粧鋼板の保護層に使用可能なアクリルフィルムの開発が望まれていた。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、優れた耐候性、艶消し性、易加工性、耐水白化性を同時に発現できるアクリルフィルムを提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨とするところは、引張破断伸度が180%以上であり、引っ張り応力0.02MPaの下で温水(100℃)に2時間浸漬後24時間室温で放置した前後の白色度差が25%以下であり、かつGs(60)が130%以下であることを特徴とするアクリルフィルム及び該アクリルフィルムを積層した積層品であり、アクリルゴム含有重合体(A)70〜95質量%とアクリル系熱可塑性重合体(B)5〜30質量%からなるアクリル樹脂組成物(I)100質量部に、水酸基を有する重合体(II)1〜40質量部を添加してなるアクリルフィルムである。
アクリルゴム含有重合体(A):アクリル酸アルキルエステル50〜99.9質量%、他の共重合可能なビニル単量体0〜49.9質量%および共重合可能な架橋性単量体0.1〜10質量%からなる弾性共重合体100質量部に、メタクリル酸エステル40〜100質量%と該メタクリル酸エステルに共重合可能なビニル単量体0〜60質量%とからなる単量体又はその混合物10〜400質量部の少なくとも10%以上が結合されているアクリルゴム含有重合体;
アクリル系熱可塑性重合体(B):炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸エステル50〜100質量%と、アクリル酸エステル0〜50質量%及び共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜50質量%とからなる熱可塑性重合体;
水酸基を含有する重合体(II):炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルまたはメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル1〜30質量%、炭素数1〜13のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル10〜99質量%、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル0〜10質量%及び共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜50質量部%からなる単量体組成物を重合して得られるガラス転移温度が80〜120℃である水酸基を有する重合体。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明のアクリルフィルムは、引張破断伸度が180%以上であることが必要である。引張破断伸度が180%以上の場合、該アクリルフィルムを積層した積層品を曲げ加工する際、アクリルフィルム積層部が白化し難い。特に建材用化粧鋼板の保護層として用いた場合、常温以下の雰囲気下で90°曲げ加工あるいは180°曲げ加工などの曲率半径が小さい条件で加工を施す際に、保護層が白化し難く、曲げ部の意匠性を損なわないため工業的利用価値が高い。
【0023】
なお、本発明の引張破断伸度はJIS Z 1702に準拠した引っ張り試験を、引っ張り速度50mm/min、チャック間距離50mm、試験片幅15mm、および測定温度23℃の条件にて実施した際の引張破断伸度である。
【0024】
本発明のアクリルフィルムは0.02MPaの引っ張り応力下で100℃の温水に2時間浸漬し、次に24時間室温で放置した後の白色度と試験前の白色度の差が25%以下であることが必要である。白色度差が25%以下の場合は、該アクリルフィルムを保護層に使用した外装用化粧鋼板において降雨に曝露された際の外観変化が小さく、化粧鋼板の意匠性を大きく損なわないため好ましい。なお、白色度は、JIS L 1015に準じて測定する。
【0025】
本発明のアクリルフィルムはJIS Z 8741に準じて測定した測定角60°での表面光沢度(Gs(60))が130%以下であることが必要である。Gs(60)が130%以下の場合は、アクリルフィルムを化粧鋼板にラミネートするためのシート状物に積層する際、シート状物を鋼板に積層する際などの2次加工時の艶戻り、あるいは長年の使用に伴う艶戻りが起こりにくいので、化粧鋼板の意匠性を損なわないため好ましい。
【0026】
本発明のアクリルフィルムを構成するアクリル樹脂組成物としては特に限定されるものではないが、特定のアクリルゴムを含有する重合体とアクリル系熱可塑性重合体を構成成分とするアクリル樹脂組成物が艶消し性、加工性、耐温水白化性、耐候性およびフィルム製膜性の観点より好ましい。
【0027】
アクリルゴム含有重合体としては以下に示すアクリルゴム含有重合体(A)が好ましい形態の一つである。
【0028】
このアクリルゴム含有重合体(A)は、樹脂組成物に優れた耐衝撃性および伸度を付与する作用を有し、アクリル酸アルキルエステルをゴムの主成分として含む2段以上の多層構造を有するグラフト共重合体である。
【0029】
本発明の好ましいアクリルゴム含有重合体(A)は、アクリル酸アルキルエステル50〜99.9質量%、他の共重合可能なビニル単量体0〜49.9質量%および共重合可能な架橋性単量体0.1〜10質量%からなる単量体混合物を少なくとも1段以上で(共)重合させて弾性共重合体を得、次いでその弾性共重合体100質量部存在下に、メタクリル酸エステル40〜100質量%と、これと共重合可能なビニル単量体0〜60質量%とからなる単量体又はその混合物10〜400質量部を少なくとも1段以上で重合させることにより得られる。弾性共重合体中の全アクリル酸アルキルエステルは50質量%以上あると、フィルムに十分な柔軟性を与えることができる。なお、弾性共重合体の内側に芯としてアクリル酸アルキルエステルが50質量%未満の層が存在しても、それを含めて弾性共重合体中のアクリル酸アルキルエステルが50質量%以上あれば差し支えない。架橋性単量体が0.1質量%以上で十分な架橋効果が得られ、また10質量%以下で良好な弾性的性質が得られる。
【0030】
ここで使用し得るアクリル酸エステルは、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルであり、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等が単独または混合して用いられる。なお、単独重合体のTgの低いモノマーが好ましいが、中でも、アクリル酸ブチルが好ましい。
【0031】
ここで用いるメタクリル酸エステルとしては、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等が単独または混合して用いられる。
【0032】
ここで用いうる共重合可能なビニル単量体としては、上記アクリル酸エステルに共重合するビニル単量体であれば公知のものが使用でき、例えば(メタ)アクリル酸高級アルキルエステル、(メタ)アクリル酸低級アルコキシエステル、(メタ)アクリル酸シアノエチルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸、フマル酸、ビニルトルエン等が挙げられるが、特に限定されない。
【0033】
架橋性単量体としては、特に限定する必要はないが、好ましくはエチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、マレイン酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルシンナメート等が挙げられ、これらを単独または2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0034】
アクリルゴム含有重合体(A)のなかでも、加工性の点で下記に示す多層構造重合体(AA)がさらに好ましい。
【0035】
本発明に用いられる多層構造重合体(AA)で使用されるモノマー組成を示す。
【0036】
最内層重合体(AA−a)を構成する炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルとしては、前出のものが単独または混合して用いられる。これら(メタ)アクリル酸アルキルエステル(AA−a1)は(AA−a1)〜(AA−a3)中、80〜100質量%の範囲で用いられる。また、これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルはその後多段階に統一して用いる場合が最も好ましいが、最終目的によっては2種以上の単量体を混合したり、他種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。
【0037】
ここで共重合可能な2重結合を有する単量体(AA−a2)としてはアクリル酸高級アルキルエステル、アクリル酸低級アルコキシエステル、アクリル酸シアノエチルエステル、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル性単量体が好ましく、(AA−a1)〜(AA−a3)中、0〜20質量%の範囲で用いられる。その他(AA−a)成分中20質量%を越えない範囲でスチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等も使用できる。
【0038】
多官能性単量体(AA−a3)としては、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1.3−ブチレングリコール、ジメタクリル酸1.4−ブチレングリコールおよびジメタクリル酸プロピレングリコールのごときジメタクリル酸アルキレングリコールエステルが好ましく、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼンおよびジアクリル酸アルキレングリコールエステル等も使用可能である。これらの単量体はそれが含まれる層自体を橋架けするのに有効に働き、他層との層間の結合には作用しない。多官能性単量体(AA−a3)は全く使用されなくてもグラフト交叉剤が存在する限り安定な多層構造体を与えるが、熱間強度等が厳しく要求される場合などその添加目的に応じて任意に用いられ、その使用範囲は(AA−a1)〜(AA−a3)中、0〜10質量%である。
【0039】
グラフト交叉剤(AA−a4)としては、共重合性のα、β−不飽和カルボン酸またはジカルボン酸のアリル、メタリルまたはクロチルエステル、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびフマル酸のアリルエステルが挙げられる。特にメタクリル酸アリルが優れた効果を有する。その他トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等も有効である。このようなグラフト交叉剤は主としてそのエステルの共役不飽和結合がアリル基、メタリル基またはクロチル基よりはるかに早く反応し、化学的に結合する。この間アリル基、メタリル基またはクロチル基の実質上かなりの部分は次層重合体の重合中に有効に働き、隣接二層間にグラフト結合を与えるものである。
【0040】
グラフト交叉剤(AA−a4)の使用量は極めて重要で上記成分(AA−a1)〜(AA−a3)の合計量100質量部に対して0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜2質量部の範囲である。0.1質量部以上の使用量では有効なグラフト結合が十分となり、また5質量部以下の使用量で2段目に重合形成される架橋弾性重合体(AA−b)との反応量が適度となり、2層弾性体構造からなる2層架橋ゴム弾性体は良好な弾性を示す。
【0041】
本発明の多層構造重合体(AA)中の最内層重合体(AA−a)の含有量は3〜35質量%、好ましくは5〜15質量%であり、架橋弾性重合体(AA−b)の含有量より低いことが好ましい。
【0042】
次に多層構造重合体(AA)を構成する架橋弾性体(AA−b)は該多層構造重合体にゴム弾性を与える主要な成分であり、これを構成する(AA−b1)〜(AA−b4)成分等は前述した最内層重合体(AA−a1)〜(AA−a4)で使用したものがそれぞれ用いられる。(AA−b1)成分は(AA−b1)〜(AA−b3)中、80〜100質量%、(AA−b2)成分は(AA−b1)〜(AA−b3)中、0〜20質量%、(AA−b3)成分は(AA−b1)〜(AA−b3)中、0〜10質量%、グラフト交叉剤(AA−b4)成分は(AA−b1)〜(AA−b3)の合計量100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲で使用される。
【0043】
本発明の多層構造重合体(AA)中の架橋弾性重合体(AA−b)の含有量は10〜50質量%の範囲が好ましく、前記最内層重合体(AA−a)の含有量より高いことが好ましい。
【0044】
本発明の多層構造重合体(AA)を構成する最外層重合体(AA−c)は該多層構造重合体に成形性、機械的性質を分配するのに関与するものであり、これを構成する(AA−c1)および(AA−c2)成分は、前述した(AA−a1)成分および(AA−a2)成分と同等のものが使用される。(AA−c1)成分は51〜100質量%、(AA−c2)成分は0〜49質量%の範囲でそれぞれ使用される。
【0045】
多層構造弾性重合体(AA)中の最外層重合体(AA−c)のガラス転移温度は65℃を越える温度であることが好ましい。65℃以上であると重合後の凝固時、及び乾燥時にブロッキングをおこし難く、通常の工業的且つ経済的な乾燥方法がとれる。なお、最外層重合体のガラス転移温度は、ゲルとなっていない溶剤可溶な重合体成分の組成から判定できる。
【0046】
本発明の多層構造弾性重合体(AA)中の最外層重合体(AA−c)の含有量は10〜80質量%、好ましくは40〜60質量%である。
【0047】
本発明の多層構造重合体(AA)は上記最内層重合体(AA−a)、架橋弾性重合体(AA−b)、および最外層重合体(AA−c)を基本構造とし、さらに該重合体(AA−b)層と該重合体(AA−c)層間に(AA−d1)〜(AA−d4)中10〜90質量%の炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、(AA−d1)〜(AA−d4)中90〜10質量%の炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル(AA−d2)、(AA−d1)〜(AA−d4)中0〜20質量%の共重合可能な2重結合を有する単量体(AA−d3)、(AA−d1)〜(AA−d4)中0〜10質量%の多官能性単量体(AA−d4)の合計100質量部に対して0.1〜5質量部のグラフト交叉剤(AA−d5)の組成から構成される中間層(AA−d)が、中間層(AA−d)のアクリル酸アルキルエステル量が架橋弾性重合体(AA−b)から最外層(AA−c)に向かって単調減少するように少なくとも一層配設されているものである。ここで(AA−d1)〜(AA−d4)の成分およびグラフト交叉剤(AA−d5)は最内層重合体(AA−a)に使用される各成分と同様のものである。なお、中間層(AA−d)では使用されるグラフト交叉剤(AA−d5)は各重合体層を密に結合させ優れた諸性質を得るのに必須である。
【0048】
本発明の多層構造重合体(AA)中の中間層(AA−d)の含有量は5〜35質量%であり、5質量%未満では中間層としての機能を失い、また35質量%を越えると最終重合体のバランスを崩すので好ましくない。中間層(AA−d)が5質量%以上あることにより、折曲加工時の白化を防ぐことができる。
【0049】
本発明における多層構造重合体(AA)のゲル含有量は60質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは70質量%以上である。この場合のゲル含有量とは1層以上の架橋ゴム弾性体自体と該架橋ゴム弾性体へのグラフト成分を含むものである。ここでゲル含有量とは、多層構造重合体の1質量%MEK溶液を調製し、25℃にて一昼夜放置した後、16000r.p.m.で90分間遠心分離をして得られる不溶分の質量%である。多層構造重合体(AA)のゲル含有量が60質量%以上であると、得られるフィルムの破断伸度が180%以上となる。
【0050】
また、得られるフィルム組成物のゲル含有量は50〜70質量%であることが好ましいが、多層構造重合体(AA)とアクリル系熱可塑性重合体(B)のブレンド比率に合わせてゲル含有量を調節することが好ましい。
【0051】
さらに、該多層構造重合体(AA)のグラフトゴム粒子径が0.08〜0.16μmであることが好ましい。グラフトゴム粒子径は、電子顕微鏡で観察することができる。グラフトゴム粒子径が0.08μm以上であると、フィルムが脆く無くなり破断伸度が180%を上回るようになる。また、粒子径が0.16μm以下で破断伸度が向上する。
【0052】
多層構造重合体(AA)の含有カルシウム量が50〜500ppmであることが好ましい。含有カルシウム量が50〜500ppmの範囲にあることでフィルムの耐水白化性が良好となる。
【0053】
本発明の多層構造重合体(AA)の製造方法としては、乳化重合法による逐次多段重合法が最も適した重合法であるが、特にこれに制限されることはなく、例えば、乳化重合後に最外層重合体の重合を懸濁重合系に転換させる乳化懸濁重合によっても行うことができる。
【0054】
本発明で用いられるアクリル系熱可塑性重合体(B)は、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸エステル50〜100質量%と、アクリル酸エステル0〜50質量%及び共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜50質量%とからなる熱可塑性重合体である。
【0055】
多層構造重合体(AA)を使用する場合、アクリル系熱可塑性重合体(B)のなかでも、以下に示す熱可塑性重合体(B−1)を使用することが好ましい。
【0056】
熱可塑性重合体(B−1)のガラス転移温度は65℃以下が好ましく、更に好ましくは60℃未満である。ガラス転移温度が65℃以下で、破断伸度が180%を上回るようになる。熱可塑性重合体(B−1)のガラス転移温度は低いほどフィルムの破断伸度向上には有効であるが、あまりに低いとフィルムの製造が困難となる。好ましいガラス転移温度は40℃以上60℃未満である。
【0057】
また、熱可塑性重合体(B−1)の質量平均分子量が、10万〜30万の範囲にあると、フィルム製膜時にフィルムが切れにくく好ましい。なお、熱可塑性重合体(B−1)は、多層構造重合体(AA)の最外層重合体のゲルとなっていない溶剤可溶な重合体成分とは異なる成分である。本発明のように別途重合し添加することによりガラス転移温度を低くしても乾燥等が容易に行えるようになる。
【0058】
熱可塑性重合体(B−1)で使用されるメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が使用できるが、メタクリル酸メチルが最も好ましい。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が使用できる。アクリル酸エステルは0〜50質量%の範囲、好ましくは0.1〜40質量%の範囲で使用される。共重合可能な他のビニル単量体としては公知の単量体が使用できる。
【0059】
熱可塑性重合体(B−1)の重合方法は、特に限定されないが、通常の懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の方法で行うことができる。なお、質量平均分子量を本発明で限定する範囲とするため、連鎖移動剤を使用する。連鎖移動剤としては公知のものが使用できるが、好ましくはメルカプタン類である。連鎖移動剤の量は、単量体の種類および組成により適宜決める。
【0060】
一方、アクリルゴム含有重合体(A)のなかでも、良製膜性を付与する点で下記に示す多層構造重合体(AB)がさらに好ましい。また、その際、アクリル系熱可塑性重合体(B)のなかでも、以下に示す熱可塑性重合体(B−2)を使用するのが好ましい。
【0061】
本発明に用いられる多層構造重合体(AB)で使用されるモノマー組成を示す。
【0062】
最内層重合体(AB−a)を構成する炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルとしては、前出のものが単独または混合して用いられる。これら(メタ)アクリル酸アルキルエステル(AB−a1)は、(AB−a1)〜(AB−a4)中、70〜100質量%の範囲で用いられる。また、これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルは目的に応じて2種以上の単量体を混合したり、他種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。
【0063】
ここで共重合可能な2重結合を有する単量体(AB−a2)としては(メタ)アクリル酸高級アルキルエステル、(メタ)アクリル酸低級アルコキシエステル、(メタ)アクリル酸シアノエチルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸等のアクリル性単量体が好ましく、(AB−a1)〜(AB−a4)中、0〜20質量%の範囲で用いられる。その他(AB−a3)成分として30質量%を越えない範囲でスチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等も使用できる。この場合、(AB−a1)〜(AB−a4)中5〜25質量%の範囲が好ましい。
【0064】
多官能性単量体(AB−a4)としては、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1.3−ブチレングリコール、ジメタクリル酸1.4−ブチレングリコールおよびジメタクリル酸プロピレングリコールのごときジメタクリル酸アルキレングリコールエステルが好ましく、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼンおよびジアクリル酸アルキレングリコールエステル等も使用可能である。これらの単量体はそれが含まれる層自体を橋架けするのに有効に働き、他層との層間の結合には作用しない。多官能性単量体(AB−a3)は全く使用されなくてもグラフト交叉剤が存在する限り安定な多層構造体を与えるが、熱間強度等が厳しく要求される場合などその添加目的に応じて任意に用いられ、その使用範囲は(AB−a1)〜(AB−a4)中、0〜10質量%である。
【0065】
グラフト交叉剤(AB−a5)としては、共重合性のα、β−不飽和カルボン酸またはジカルボン酸のアリル、メタリルまたはクロチルエステル、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびフマル酸のアリルエステルが挙げられる。特にメタクリル酸アリルが優れた効果を有する。その他トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等も有効である。このようなグラフト交叉剤は主としてそのエステルの共役不飽和結合がアリル基、メタリル基またはクロチル基よりはるかに早く反応し、化学的に結合する。この間アリル基、メタリル基またはクロチル基の実質上かなりの部分は次層重合体の重合中に有効に働き、隣接二層間にグラフト結合を与えるものである。
【0066】
グラフト交叉剤(AB−a4)の使用量は極めて重要で上記成分(AB−a1)〜(AB−a4)の合計100質量部に対して0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜2質量部の範囲である。0.1質量部以上の使用量では有効なグラフト結合が十分となり、また5質量部以下の使用量で2段目に重合形成される最外層重合体(AB−c)との反応量が適度となる。
【0067】
本発明の多層構造重合体(AB)中の最内層重合体(AB−a)の含有量は50〜80質量%、好ましくは60〜70質量%である。
【0068】
本発明の多層構造重合体(AB)を構成する最外層重合体(AB−c)は該多層構造重合体に成形性、機械的性質を分配するのに関与するものであり、これを構成する(AB−c1)および(AB−c2)成分は、前述した(AB−a1)成分および(AB−a2)成分と同等のものが使用される。(AB−c1)成分は51〜100質量%、好ましくは81〜100質量%であり、(AB−c2)成分は0〜49質量%、好ましくは0〜19質量%の範囲でそれぞれ使用される。
【0069】
多層構造弾性重合体(AB)中の最外層重合体(AB−c)のガラス転移温度は65℃を越える温度であることが好ましい。65℃以上であると重合後の凝固時、及び乾燥時にブロッキングをおこし難く、通常の工業的且つ経済的な乾燥方法がとれる。なお、最外層重合体のガラス転移温度は、ゲルとなっていない溶剤可溶な重合体成分の組成から判定できる。
【0070】
本発明の多層構造弾性重合体(AB)中の最外層重合体(AB−c)の含有量は20〜50質量%、好ましくは30〜40質量%である。
【0071】
本発明における多層構造重合体(AB)のゲル含有量は60質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは70質量%以上である。この場合のゲル含有量とは架橋ゴム弾性体(=最内層重合体(AB−a))自体と該架橋ゴム弾性体へのグラフト成分を含むものである。ゲル含有量の算出方法は、上述の通りである。多層構造重合体(AB)のゲル含有量が60質量%以上であると、得られるフィルムの破断伸度が180%以上となる。
【0072】
また、得られるフィルム組成物のゲル含有量は50〜70質量%であることが好ましいが、多層構造重合体(AB)と熱可塑性重合体(B−2)のブレンド比率に合わせてゲル含有量を調節することが好ましい。
【0073】
さらに、該多層構造重合体(AB)のグラフトゴム粒子径が0.08〜0.16μmであることが好ましい。グラフトゴム粒子径は、電子顕微鏡で観察することができる。グラフトゴム粒子径が0.08μm以上であると、フィルムが脆く無くなり破断伸度が180%を上回るようになる。また、粒子径が0.16μm以下で破断伸度が向上する。
【0074】
多層構造重合体(AB)の含有カルシウム量が50〜500ppmであることが好ましい。含有カルシウム量が50〜500ppmの範囲にあることでフィルムの耐水白化性が良好となる。
【0075】
本発明の多層構造重合体(AB)の製造方法としては、乳化重合法による逐次多段重合法が最も適した重合法であるが、特にこれに制限されることはなく、例えば、乳化重合後に最外層重合体の重合を懸濁重合系に転換させる乳化懸濁重合によっても行うことができる。
【0076】
多層構造重合体(AB)を使用する場合は、以下に示す熱可塑性重合体(B−2)を使用することが好ましい。
【0077】
本発明で使用される熱可塑性重合体(B−2)は、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル50〜99質量%と、アクリル酸アルキルエステル1〜50質量%と、これと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜50質量%とからなり、重合体の還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定)が0.1L/g以下である重合体である。
【0078】
熱可塑性重合体(B−2)で使用されるメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が使用できるが、メタクリル酸メチルが最も好ましい。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が使用できるが、アクリル酸メチルが最も好ましい。共重合可能な他のビニル単量体としては公知の単量体が使用できる。
【0079】
熱可塑性重合体(B−2)の重合方法は、特に限定されないが、通常の懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の方法で行うことができる。なお、質量平均分子量を本発明で限定する範囲とするため、連鎖移動剤を使用する。連鎖移動剤としては公知のものが使用できるが、好ましくはメルカプタン類である。連鎖移動剤の量は、単量体の種類および組成により適宜決める。
【0080】
アクリル樹脂組成物(I)中、アクリルゴム含有重合体(A)は70〜95質量%使用されるが、特に得られるフィルム中のゲル含有量が50〜70質量%となる量であることが好ましい。
【0081】
この場合のゲル含有量とは、アクリルゴム含有重合体(A)中の架橋ゴム弾性体自体と該架橋ゴム弾性体へのグラフト成分を含むものであり、アクリルフィルムの1質量%MEK溶液を調製し25℃にて一昼夜放置した後、16000r.p.m.で90分間遠心分離を施して得られる不溶分の質量%である。
【0082】
フィルム中のゲル含有量が50質量%以上であると、フィルムの破断伸度が180%を超え、曲げ加工時にフィルムの割れを抑制することができる。フィルム中のゲル含有量が70質量%以下で、フィルム製膜性が向上し、フィルムの厚みムラが小さくなる。フィルム中のゲル含有量を50〜70質量%とするために、アクリルゴム含有重合体(A)の使用量は70〜95質量%となる。
【0083】
アクリル樹脂組成物(I)中、アクリル系熱可塑性重合体(B)は、5〜30質量%使用される。使用量が5質量%以上で、フィルムの破断伸度が180%を越え、曲げ加工時にフィルムの割れを抑制することができる。また、30質量%以下で、得られるフィルムのゲル含有量が50質量%以上となるため好ましい。
【0084】
水酸基を含有する重合体(II)は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルまたはメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル1〜30質量%、炭素数1〜13のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル10〜99質量%、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル0〜10質量%及び共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜50質量%からなる単量体組成物を重合して得られるガラス転移温度が80〜120℃である水酸基を含有する重合体である。
【0085】
水酸基を含有する重合体(II)に用いる炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル等が挙げられる。中でも、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。この(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの使用量は、1〜30質量%の範囲である。この使用量が1質量%以上であると艶消し効果が十分となり、30質量%以下であるとフィルムの耐水白化性が良好となる。艶消し性と耐水白化性の点からは、この使用量は5〜25質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。
【0086】
水酸基を含有する重合体(II)に用いる炭素数1〜13のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等の低級メタクリル酸アルキルエステルが好ましく、中でもメタクリル酸メチルが最適である。このメタクリル酸アルキルエステルの使用量は10〜99質量%であり、耐水白化性の観点から50〜95質量%が好ましい。
【0087】
水酸基を含有する重合体(II)に炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルを用いることができる。具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等の低級アクリル酸アルキルエステルが好適である。アクリル酸アルキルエステルを用いなくともフィルムの艶消し性、耐水白化性は良好となるが、熱分解性の観点からアクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましい。また、フィルムの耐水白化性を良好なものとするためにはアクリル酸アルキルエステルは10質量%以下の範囲で用いる。アクリル酸アルキルエステルの使用量は、0〜10質量%であり、熱分解性、耐水白化性の観点から0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0088】
水酸基を含有する重合体(II)に共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜50質量%を用いることができる。具体的には、共重合可能な他のビニル単量体として、スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。特に、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドを用いると水酸基を有する重合体(II)のガラス転移温度を高めることができるので、フィルムの耐水白化性が更に良好となる。この共重合可能な他のビニル単量体の使用量は0〜50質量%である。
【0089】
水酸基を有する重合体(II)のガラス転移温度は80〜120℃であることが必要である。耐水白化性の観点からガラス転移温度は80℃以上であることが必要であり、90℃を越えることが好ましい。
【0090】
水酸基を有する重合体(II)の固有粘度は、0.05〜0.3L/gの範囲に調節することが、艶消し発現性、外観の点から好ましい。更に好ましくは0.06〜0.15L/gの範囲である。
【0091】
また、重合に際しては、分子量の調節のため、メルカプタン等の重合調節剤を用いることが好ましい。ここで用いうるメルカプタンとしては、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等を挙げることができる。ただし、これらのものに限定されず、従来から知られる各種のメルカプタンも使用できる。
【0092】
水酸基を有する重合体(II)の製造方法は、特に限定されないが、懸濁重合、乳化重合等が好ましい。懸濁重合の開始剤としては、従来から知られる各種のものが使用でき、具体的には、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。懸濁安定剤としては、従来から知られる各種のものが使用でき、具体的には、有機コロイド性高分子物質、無機コロイド性高分子物質、無機微粒子、およびこれらと界面活性剤との組み合わせ等が挙げられる。懸濁重合は、通常、懸濁安定剤の存在下にモノマー類を重合開始剤と共に水性懸濁して行う。それ以外にも、モノマーに可溶な重合物をモノマーに溶かし込んで使用し、懸濁重合を行うこともできる。
【0093】
水酸基を有する重合体(II)の添加量は、アクリル樹脂組成物(I)100質量部に対して1〜40質量部である。1質量部以上の添加量で十分な艶消し効果が発現する。さらに、良好な艶消し性を得るためには5質量部以上添加することが好ましい。また、良好な加工性、耐水白化性を得るためには40質量部以下の使用が必要で、好ましくは20質量部、更に好ましくは10質量部以下の使用が好ましい。
【0094】
艶消し剤として水酸基を含有する重合体(II)を添加したフィルムの60°表面光沢度(Gs(60))は、その意匠効果により適宜選択できるが、130%以下であることが必要である。Gs(60)が130%以下であると、加工時加熱された際に艶戻りが発生し難くなり、加工品の表面光沢を低く抑えることが可能となり、高級感のある意匠性を付与できる。好ましいGs(60)は70%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下である。
【0095】
本発明では、アクリル樹脂組成物(I)100質量部に対して、以下に示す重合体(C)0.1〜20質量部を配合して用いることも好ましい。
【0096】
重合体(C)は、メタクリル酸メチル50〜100質量%と、これと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜50質量%とからなり、還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定)が0.1L/gを超える熱可塑性重合体であり、フィルム製膜性を良好とする成分である。重合体(C)を使用することで、メルトテンションが高くなり、フィルムの厚みムラが小さくなり、製膜性が向上するので、これを使用することが好ましい。
【0097】
重合体(C)の還元粘度は重要であり、還元粘度が0.1L/g以上であると、厚み精度の良好なフィルムが得られる。使用される熱可塑性重合体(I)の還元粘度は、通常0.1〜2L/g、好ましくは、0.2〜1.2L/gである。
【0098】
本発明に用いられる重合体(C)において、メタクリル酸メチルと共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物等を使用することができる。重合は乳化重合法によるのが好ましく、通常の乳化重合法および後処理方法により、重合体を粉末状で回収することができる。
【0099】
本発明において、重合体(C)は使用しなくてもフィルム製膜は可能であるが、充分なフィルム成形性を得るためには、アクリル樹脂組成物(I)100質量部に対し、0.1〜20質量部使用することが好ましい。20質量部以下で樹脂組成物の粘度が適度となり、フィルム製膜性が向上する。
【0100】
本発明のアクリルフィルムは、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤等を含むことができる。特に好ましい添加剤は、ポリアルキレングリコール、紫外線吸収剤である。
【0101】
本発明においてはポリアルキレングリコールが、アクリル樹脂組成物(I)100質量部に対し、0.5〜10質量部添加されていること好ましい。ポリアルキレングリコールが添加されることによりフィルムの加工性、耐水白化性が改善される。使用されるポリアルキレングリコールとしては公知のものが使用できるが、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はこれらのアルキルエーテル類が挙げられる。これらの中で最も好ましいものはポリエチレングリコールである。ポリアルキレングリコールの分子量は特に限定されないが、数千〜数万のものが取り扱い性、経済性の点より好ましい。
【0102】
紫外線吸収剤は、基材保護の点で耐候性を付与するため添加することが好ましい。紫外線吸収剤の添加量は、アクリル樹脂組成物(I)100質量部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましい。添加量が0.1質量部以上であると単位面積当たりの紫外線吸収剤量が十分となり耐候性付与効果が得られる。5質量部以下の添加が経済的で、通常1.0〜3.0質量部の添加が推奨される。使用される紫外線吸収剤の分子量は300以上であることが好ましく、特に好ましくは400以上である。分子量が300より大きな紫外線吸収剤を使用すると、フィルム製膜時、又はフィルム加工時に揮発し難くなり、ロール等を汚染する可能性が低くなり、耐候性も良好になる。紫外線吸収剤の種類は、特に限定されないが、分子量300以上のベンゾトリアゾール系または分子量300以上のトリアジン系のものが特に好ましく使用でき、前者の具体例としては、チバガイギー社のチヌビン234、チヌビン329、旭電化工業社のアデカスタブLA−31、後者の具体例としては、チバガイギー社のチヌビン1577等が挙げられる。
【0103】
また、艶消し性、耐水白化性の観点から、アクリル樹脂組成物(I)100質量部に対し、リン系の抗酸化剤を0.01〜1質量部の割合で配合することが好ましい。0.01質量部以上の添加量で艶消し性が良好となり、1質量部以下の使用が耐水白化の観点から好ましい。更に好ましい配合量は0.1〜1質量部の範囲である。
【0104】
リン系の抗酸化剤の中では、艶消し発現性、および後品種への置き換わり性の観点からホスファイト系化合物、あるいはホスフェート系化合物が好ましい。ホスファイト系化合物の中で、ホスファイト基周辺にバルキーな置換基が無いものが、艶消し発現性の観点からより好ましい。逆に、ホスファイト基周辺にバルキーな置換基があるものは、艶消し発現性が悪くなる傾向がある。艶消し性および後品種への置き換わり性の観点から、旭電化工業社のアデカスタブ1500、アデカスタブ329K、アデカスタブ260、アデカスタブ1178、PEP8Fが好ましい。また、ホスフェート系化合物では、城北化学工業社のJP−212、JP508等が好ましい。
【0105】
本発明で用いられるアクリルフィルムの製造法としては、溶融流延法や、Tダイ法、インフレーション法などの溶融押出法、カレンダー法等のいずれの方法を用いてもよいが、経済性の点からTダイ法が好ましい。
【0106】
アクリルフィルムの厚みは通常300μm以下であり、好ましくは30〜300μmである。30μmより厚いと、良好な二次加工性が得られる。また、300μmより薄いと、剛性が小さくなるためラミネート性、二次加工性等が良好となる。
【0107】
本発明で得られるアクリルフィルムの耐水白化性はフィルムにかかる応力が0.02MPaの条件下で、100℃の温水に2時間浸漬し、次に24時間室温で放置した後の白色度と試験前の白色度の差が25%以下であることが必要である。好ましくは10%以下である。試験前後の白色度差が25%以下であれば、試験前フィルムと試験後フィルムの見た目に大きな違いがなく、試験前後の白色度差が10%以下であれば、試験前フィルムと試験後フィルムの見た目はほとんど違わない。この様なアクリルフィルムは、特に耐水白化性が要求される屋外用途での使用にも耐え、工業的利用価値が著しく高まる。
【0108】
本発明のアクリルフィルムは、各種樹脂シート、紙、本木、金属シートなどにラミネートして使用される。これらのアクリルフィルムがラミネートされる基材については特に限定されないが、ポリオレフィン又はこれを主成分とする樹脂、ABS又はこれを主成分とする樹脂、ポリカーボネート又はこれを主成分とする樹脂、ポリ塩化ビニル又はこれを主成分とする樹脂、ポリウレタン又はこれを主成分とする樹脂、ポリエステル又はこれを主成分とする樹脂のシートが特に好ましく用いられる。これらの樹脂シートは、印刷されたもの、又は印刷されないものが使用でき、アクリルフィルムに印刷を施し使用することもできる。
【0109】
具体的使用例を挙げると、木目などの印刷が施された樹脂シートに接着剤を使用して、又は使用せずに本発明のアクリルフィルムをラミネートし、これをさらに樹脂成型品、木工製品、金属成型品などに張り合わせられ、車輌内装、家具、ドア材、巾木等の建材用途に使用される。特に耐候性が良好なため建材用途に好適である。
【0110】
本発明のアクリルフィルムは、艶消し性、耐水白化性、耐候性に優れているため、建材用途の中でも艶消し外観が必要で且つ耐水性が要求される外装、準外装用途に特に好適である。具体的に、窓枠、玄関扉、雨戸、外壁に用いることができる。
【0111】
また、本発明のアクリルフィルムは破断伸度が180%以上あるため、各種シートなどの基材にラミネートされた後の折曲加工、延伸張り付け加工等にもフィルムが破断せず、複雑な形状への追従性に優れる。
【0112】
また、本発明の艶消し性、耐水白化性、耐候性、加工性に優れたアクリルフィルムは、従来のアクリルフィルムでは適用が困難であった外装用鋼板へのフィルムラミネート用途に用いることができる。
【0113】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。なお実施例中「部」とあるのは「質量部」を表す。また、実施例中の略号は以下のとおりである。
【0114】
メチルメタクリレート MMA
メチルアクリレート MA
ブチルアクリレート BA
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート BDM
アリルメタクリレート AMA
スチレン St
エチルアクリレート EA
2−ヒドロキシエチルメタクリレート HEMA
クメンパイドロパーオキサイド CHP
t−ブチルハイドロパーオキサイド TBH
n−オクチルメルカプタン NOM
なお、得られたアクリルゴム含有重合体(A)(多層構造重合体(AA)および(AB))、アクリル系熱可塑性重合体(B)(熱可塑性重合体(B−1)および(B−2))、重合体(C)、水酸基を含有する重合体(II)およびフィルムは以下の試験法により諸物性を測定した。
【0115】
1)アクリルゴム含有重合体(A)の粒子径
乳化重合にて得られたアクリルゴム含有重合体(A)のポリマーラテックスの最終粒子径を大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700を用い、動的光散乱法で測定した。
【0116】
2)アクリル系熱可塑性重合体(B)、アクリルゴム含有重合体(A)の最外層、及び水酸基を含有する重合体(II)のガラス転移温度
FOXの式(T.G.Fox,Bull. Am. Phys. Soc.,1,123(1956))に準じて計算した。
【0117】
3)アクリル系熱可塑性重合体(B)の質量平均分子量
GPCカラムがKF−805L(昭和電工社製)を3本連結したものをセットしたGPCシステムShimadzu LC−6A(島津製作所社製)を使用し、溶媒THFにて、ポリスチレン換算で測定した。
【0118】
4)重合体(C)、及び水酸基を含有する重合体(II)の還元粘度、固有粘度自動粘度計AVL−2C(サン電子工業社製)を使用し、クロロホルム溶媒にて、25℃で測定した。なお、還元粘度は、クロロホルム100mLにサンプル0.1gを溶かして測定した。
【0119】
5)フィルム、積層品、耐候性試験後積層品の表面光沢(Gs(60))
フィルムの表面光沢はJIS Z 8741に順じ、グロスメーター(ムラカミカラーリサーチラボラトリー社製 GM−26D型)を用い、60゜での表面光沢を測定した。
【0120】
6)フィルムの引張破断伸度の測定
厚み75μmのフィルムについて、JIS Z 1702に準拠して、引っ張り速度50mm/min、チャック間距離50mm、試験片幅15mm、および測定温度23℃の条件下で引張破断伸度を測定した。
【0121】
7)フィルムの耐水白化性
まず、JIS L 1015に従って、厚み75μmのフィルムの白色度(LabW)を、白色度計(スガ試験機(株)製、SM−4)にて測定した。次いで、このフィルムを0.02MPaの引っ張り応力条件下で、を100℃温水中に2時間浸漬し、取り出した後常温で24時間乾燥し、再び白色度(LabW)を測定した。これら温水浸漬試験の前後の白色度の差をもとめ、耐水白化性とした。
【0122】
8)アクリル積層品の曲げ試験
アクリル積層品を用いて、10℃雰囲気下で、90°曲げを行った。具体的には積層品を7cm×7cmの大きさに切り出し、曲率半径が1mmとなるように、2秒間で折り曲げた。目視により下記の3段階評価を行った。
【0123】
×:フィルム切れが発生した。
【0124】
△:折曲部が白化した。
【0125】
○:切れ、白化が無く良好。
【0126】
9)アクリル積層品の耐候性
サンシャインウェザオメータ(スガ試験機(株)製、WEL−SUN−DC)を用いて、63℃、雨有りの条件で2000時間試験した。目視により下記の3段階評価を行った。
【0127】
×:白く変色が見られた。
【0128】
△:わずかに変色が見られた。
【0129】
○:変色はなかった。
【0130】
10)多層構造重合体、フィルムのゲル含有率の測定
多層構造重合体は乾燥後の粉を用い、フィルムについてはフィルム状に成形する前のアクリル樹脂ペレットを用いた。それぞれMEKに溶解して1質量%MEK溶液を調製し、25℃にて一昼夜放置し、その後16000r.p.m.で90分間遠心分離を施し、その上澄み液を除き、乾燥した後の不溶分の質量%をゲル含有率とした。
【0131】
11)フィルムの製膜性
Tダイ法で製膜したときにMD方向に測定した厚みムラが10μm以下であるものを○、10μmを超えるものを△とした。
【0132】
参考例1 多層構造重合体(AA−1)の製造
反応容器に下記(イ)および(ロ)を仕込み、窒素雰囲気下75℃で60分間、撹拌を行いながら重合し、最内層重合体(AA−a)を得た。
【0133】
続いて下記(ハ)を窒素雰囲気下75℃で60分間、撹拌を行いながら滴下し、重合させ、架橋弾性重合体層(AA−b)を形成させた。
【0134】
(ハ)
MMA 3部
BA 40.5部
BDM 1.5部
AMA 0.5部
CHP 0.3部
引き続き下記(ニ)を窒素雰囲気下75℃で30分間、撹拌を行いながら滴下し重合させ、中間層(AA−d)を形成させた。
【0135】
(ニ)
MMA 7部
BA 3部
AMA 0.08部
CHP 0.01部
最後に下記(ホ)を窒素雰囲気下75℃で60分間、撹拌を行いながら滴下し、滴下終了後更に75℃で120分間攪拌し重合を完結させた。
【0136】
(ホ)
MMA 36部
BA 4部
TBH 0.1部
NOM 0.13部
得られた多層構造重合体(AA−1)の粒子径は0.11μmであった。また、アクリルゴム含有重合体(AA−1)の最外層のガラス転移温度は、68℃であった。
【0137】
得られたラテックスに、塩化カルシウムを添加し、を凝析・凝集し、固化後、ろ過水洗、乾燥して、多層構造重合体(AA−1)を粉状で得た。得られた多層構造重合体(AA−1)のゲル含有量は75質量%であり、カルシウム含有量は180ppmであった。
【0138】
参考例2 多層構造重合体(AB−1)の製造
窒素雰囲気下、還流冷却器付き反応容器に脱イオン水 310部を入れ80℃に昇温し、以下に示す(イ)を添加し、撹拌を行いながら以下に示す原料(ロ)(最内層重合体(AB−a)用原料)を連続的に添加し、その後さらに120分間重合を行い、最内層重合体(AB−a)のラテックスを得た。なお、最内層重合体(AB−a)単独のTgは−35℃であった。
【0139】
そのラテックスに、引き続いて、脱イオン水 10部およびソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.15部を加え、15分間保持し、撹拌を行いながら、窒素雰囲気下80℃で、以下に示す原料(ハ)(最外層重合体(AB−c)用原料)を100分間にわたって連続的に添加し、その後さらに80℃で60分間連続して重合を行うことにより最外層重合体(AB−c)を形成し、多層構造重合体(AB−1)のラテックスを得た。なお、最外層重合体(AB−c)単独のTgは99℃であった。得られた多層構造重合体(AB−1)の重量平均粒子径は0.12μmであった。
【0140】
この多層構造重合体(AB−1)ラテックスに対して、酢酸カルシウムを用いて凝析、凝集、固化反応を行い、ろ過、水洗後乾燥して多層構造重合体(AB−1)を得た。得られた多層構造重合体(AB−1)のゲル含有量は84%であり、カルシウム含有量は480ppmであった。
【0141】
参考例3 熱可塑性重合体(B−1)の製造
反応容器に窒素置換したイオン交換水 200部、MMA 77部、BA 23部、過酸化ジベンゾイル 3部、NOM 0.12部、懸濁安定剤としてMMAとメタクリル酸カリウムの共重合体水溶液(3.3%)32部、懸濁安定助剤として硫酸マンガン 0.004部を仕込み、攪拌しながら70℃で重合を行った。重合ピークを確認した後、さらに攪拌下90℃で30分間熱処理を行った。その後冷却し、得られた球状粒子を洗浄、乾燥して、熱可塑性重合体(B−1)を得た。
【0142】
得られた熱可塑性重合体(B−1)のガラス転移温度は51℃(計算値)であり、質量平均分子量は20万であった。
【0143】
参考例4 重合体(C)の製造
反応容器に窒素置換したイオン交換水 200部を仕込み、乳化剤としてオレイン酸カリウム 1部、過硫酸カリウム 0.3部を仕込んだ。続いてMMA 40部、BA 10部、NOM 0.005部を仕込み、窒素雰囲気下65℃にて3時間撹拌して、重合を完結させた。引き続いてMMA 48部、BA 2部からなる単量体混合物を2時間にわたり滴下し、その後2時間65℃に保持し、重合を完結させた。得られたラテックスを0.25%硫酸水溶液に添加し、重合体を酸凝析した。その後、脱水、水洗、乾燥し、粉体状で重合体(C)を回収した。得られた重合体(C)の還元粘度は0.38L/gであった。
【0144】
参考例5 水酸基を有する直鎖状重合体(II−1)の製造
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入口等の付いた反応容器に下記(へ)を仕込んだ。容器内を十分に窒素ガスで置換した後、上記混合物の混合物を撹拌しながら75℃まで加熱し、窒素ガス気流中で重合を進めた。2時間後に90℃に昇温して、さらに45分保持して重合を完了し、脱水、乾燥して水酸基を有する直鎖状重合体(■−1)を得た。
【0145】
【0146】
なお、得られた直鎖状重合体(II−1)のガラス転移温度は93℃であり、固有粘度は0.076L/gであった。
【0147】
参考例6 水酸基を有する直鎖状重合体(II−2)の製造
参考例5において、モノマー組成をMMA/MA/HEMA=89/1/10に変更し、更にNOMの量を0.11部に変更する以外は参考例5と同様にして、水酸基を有する直鎖状重合体(II−2)を調製した。固有粘度は、0.09L/gであった。また、ガラス転移温度は98℃であった。
【0148】
参考例7 水酸基を有する直鎖状重合体(II−3)の製造
参考例5において、NOMの量を0.09部に変更しては参考例5と同様にして、水酸基を有する直鎖状重合体(II−3)を調製した。固有粘度は、0.11L/gであった。また、ガラス転移温度は93℃であった。
【0149】
参考例8 水酸基を有する直鎖状重合体(II−4)の製造
参考例5において、モノマー組成をMMA/MA/HEMA=60/20/20に変更し、更にNOMの量を0.08部とする以外は参考例5と同様にして、水酸基を有する直鎖状重合体(II−4)を調製した。固有粘度は、0.11L/gであった。また、ガラス転移温度は71℃であった。
【0151】
参考例9 水酸基を有する直鎖状重合体(II−5)の製造
参考例5において、モノマー組成をMMA/MA/HEMA=49/1/50に変更し、更にNOMの量を0.19部にする以外は参考例5と同様にして、水酸基を有する直鎖状重合体(II−5)を調製した。固有粘度は、0.06L/gであった。また、ガラス転移温度は77℃であった。
【0152】
実施例1
a)アクリルフィルムの製造
多層構造重合体(AA−1)80部、熱可塑性重合体(B−1)20部、重合体(C)4部、水酸基を有する直鎖状重合体(II−1)6部、ポリエチレングリコールPEG20000(三洋化成製)2部、チヌビン234(チバガイギー製)1.5部およびアデカスタブ1500(旭電化製)0.2部をヘンシェルミキサーにて混合した。次いで65mmφのスクリュー型押出機(L/D=32)を用い、シリンダー温度200〜230℃、ダイ温度250℃で溶融混練し、ペレットを得た。
【0153】
得られたペレットを70℃で一昼夜除湿乾燥し、1200mmTダイを取り付けた85mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=32)を用い、シリンダー温度200〜240℃、Tダイ温度250℃で厚み75μmのフィルムを製膜した。
【0154】
重合体の配合組成を表1に、また、アクリルフィルムの諸物性を表2に示した。
【0155】
b)アクリル積層品の製造
100μmのポリプロピレンフィルムの両面にポリウレタン系のプライマーを施し、その片面にシルクスクリーン印刷を施した。この印刷フィルムの印刷面側にアクリルフィルムをエンボスロールにてラミネートし、積層シートを得た。この積層シートをアクリルフィルム面が表層となるように、ポリウレタン系接着剤を用いて、0.5mm厚の鋼板と貼り合せ、表層にアクリルフィルム層を有する積層品を得た。
【0156】
得られた積層品の評価結果を表3に示す。
【0157】
実施例2、3、比較例1〜2
実施例1において、水酸基を有する直鎖状重合体(II−1)のかわりに、水酸基を有する直鎖状重合体(II−2)(実施例2)、(II−3)(実施例3)、(II-4)(比較例1)または(II−5)(比較例2)を用いる以外は、実施例1と同様にして、アクリルフィルムおよび積層品を得た。
【0158】
重合体の配合組成を表1に、アクリルフィルムの諸物性を表2に、また、積層品の評価結果を表3に示した。
【0159】
実施例4、5
実施例1において、アデカスタブ1500の代わりにアデカスタブPEP8F(旭電化製)(実施例4)またはアデカスタブHP10(旭電化製)(実施例5)を用いる以外は実施例1と同様にして、アクリルフィルムおよび積層品を得た。
【0160】
重合体の配合組成を表1に、アクリルフィルムの諸物性を表2に、また、積層品の評価結果を表3に示した。
【0161】
実施例6、7
実施例1において、水酸基を有する直鎖状重合体(II−1)の配合量を表1に示す通りに変更する以外は、実施例1と同様にして、アクリルフィルムおよび積層品を得た。
【0162】
重合体の配合組成を表1に、アクリルフィルムの諸物性を表2に、また、積層品の評価結果を表3に示した。
【0163】
実施例8
実施例1において、アデカスタブ1500の配合量を0.6部に変更する以外は、実施例1と同様にして、アクリルフィルムおよび積層品を得た。
【0164】
重合体の配合組成を表1に、アクリルフィルムの諸物性を表2に、また、積層品の評価結果を表3に示した。
【0165】
実施例9
実施例6において、アデカスタブ1500の配合量を0.6部に変更する以外は、実施例6と同様にして、アクリルフィルムおよび積層品を得た。
【0166】
重合体の配合組成を表1に、アクリルフィルムの諸物性を表2に、また、積層品の評価結果を表3に示した。
【0167】
実施例10
実施例7において、アデカスタブ1500の配合量を0.6部に変更する以外は、実施例7と同様にして、アクリルフィルムおよび積層品を得た。
【0168】
重合体の配合組成を表1に、アクリルフィルムの諸物性を表2に、また、積層品の評価結果を表3に示した。
【0169】
実施例11
実施例1において、重合体(C)を全く添加しない以外は、実施例1と同様にして、アクリルフィルムおよび積層品を得た。
【0170】
重合体の配合組成を表1に、アクリルフィルムの諸物性を表2に、また、積層品の評価結果を表3に示した。
【0171】
実施例12〜14
a)アクリルフィルムの製造
多層構造重合体(AB−1)、熱可塑性重合体(B−1)および(B−2)であるメタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=90/10,ηsp/c=0.05L/g)、重合体(C)、水酸基を有する直鎖状重合体(II−1)からなる表1記載配合組成の重合体、およびその他の配合物として、ポリエチレングリコールPEG20000(三洋化成製)6部、チヌビン234(チバガイギー製)2.7部およびPEP8F(旭電化製)0.6部をヘンシェルミキサーにて混合した。次いで65mmφのスクリュー型押出機(L/D=32)を用い、シリンダー温度200〜230℃、ダイ温度250℃で溶融混練し、ペレットを得た。
【0172】
得られたペレットを70℃で一昼夜除湿乾燥し、1200mmTダイを取り付けた85mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=32)を用い、シリンダー温度200〜240℃、Tダイ温度250℃で厚み75μmのフィルムを製膜した。
【0173】
また、アクリルフィルムの諸物性を表2に示した。
【0174】
b)アクリル積層品の製造
100μmのポリプロピレンフィルムの両面にポリウレタン系のプライマーを施し、その片面にシルクスクリーン印刷を施した。この印刷フィルムの印刷面側にアクリルフィルムをエンボスロールにてラミネートし、積層シートを得た。この積層シートをアクリルフィルム面が表層となるように、ポリウレタン系接着剤を用いて、0.5mm厚の鋼板と貼り合せ、表層にアクリルフィルム層を有する積層品を得た。
【0175】
得られた積層品の評価結果を表3に示す。
【0176】
比較例3、4
実施例1において、アクリル樹脂組成物(I)の配合割合を表1に示す通りに変更する以外は、実施例1と同様にして、アクリルフィルムおよび積層品を得た。
【0177】
重合体の配合組成を表1に、アクリルフィルムの諸物性を表2に、また、積層品の評価結果を表3に示した。
【0178】
比較例5
実施例1において、水酸基を有する直鎖状重合体(II−1)を全く添加しない以外は、実施例1と同様にして、アクリルフィルムおよび積層品を得た。
【0179】
重合体の配合組成を表1に、アクリルフィルムの諸物性を表2に、また、積層品の評価結果を表3に示した。
【0180】
【表1】
【表2】
【表3】
実施例、比較例より以下のことが判明した
【0181】
1)実施例1〜10、12〜14のアクリルフィルムは良好な製膜性、耐水白化性、易加工性、耐候性を示す。
【0182】
2)比較例1〜2のアクリルフィルムは、良好な製膜性と易加工性を有するものの耐水白化性、及び耐候性試験後の白色度上昇が著しく屋外用途の建築材料としては不適であり工業的利用価値が低い。
【0183】
3)比較例3、4のアクリルフィルムは、良好な艶消し性、耐水白化性、耐候性を有するものの、引張破断伸度が小さいために、曲げ試験を実施したときに白化し、易加工性が劣り、工業的利用価値が低い。
【0184】
4)比較例5のアクリルフィルムは、良好な耐水性、易加工性を有するものの、耐候性試験後に艶戻りが発生するために、屋外用途の建築材料としては不適であり、工業的利用価値が低い。
【0185】
【発明の効果】
本発明によって、良好な艶消し性、耐水白化性を有し、速度の速い曲げ加工等を行ってもフィルムが切れず、良好な加工性を有するアクリルフィルムが得られ、これを積層接着することにより意匠性良好な建材、その他に使用しうるアクリル積層品を得ることができる。
【0186】
艶消し性、加工性、耐候性、耐水白化性が良好であるので、特に、従来アクリルフィルムが適用できなかった外装用化粧鋼板の表皮材として有用である。
Claims (8)
- 引張破断伸度が180%以上であり、引っ張り応力0.02MPaの下で温水(100℃)に2時間浸漬後24時間室温で放置した前後の白色度差が25%以下であり、かつGs(60)が130%以下であり、アクリルゴム含有重合体(A)70〜95質量%とアクリル系熱可塑性重合体(B)5〜30質量%からなるアクリル樹脂組成物(I)100質量部に、水酸基を有する重合体(II)1〜40質量部を添加してなるアクリルフィルム:
アクリルゴム含有重合体(A):アクリル酸アルキルエステル50〜99.9質量%、他の共重合可能なビニル単量体0〜49.9質量%および共重合可能な架橋性単量体0.1〜10質量%からなる弾性共重合体100質量部に、メタクリル酸エステル40〜100質量%と該メタクリル酸エステルに共重合可能なビニル単量体0〜60質量%とからなる単量体又はその混合物10〜400質量部の少なくとも10%以上が結合されているアクリルゴム含有重合体;
アクリル系熱可塑性重合体(B):炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸エステル50〜100質量%と、アクリル酸エステル0〜50質量%及び共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜50質量%とからなる熱可塑性重合体;
水酸基を含有する重合体(II):炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルまたはメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル1〜30質量%、炭素数1〜13のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル10〜99質量%、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル0〜10質量%及び共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜50質量部%からなる単量体組成物を重合して得られるガラス転移温度が80〜120℃である水酸基を有する重合体。 - アクリル樹脂組成物(I)100質量部に対して、さらにアクリル系熱可塑性重合体(B)とは異なる重合体(C)0.1〜20質量部を添加した請求項1記載のアクリルフィルム。
重合体(C):メタクリル酸メチル50〜100質量%と、これと共重合可能な他のビニル単量体0〜50重量%とからなり、還元粘度(重合体0.1gをクロロホルム100mLに溶解し、25℃で測定)が0.1L/gを超える熱可塑性重合体。 - アクリル樹脂組成物(I)100質量部に対して、さらにポリアルキレングリコール0.5〜10質量部を添加した請求項1または2記載のアクリルフィルム。
- 請求項1〜3の何れかに記載のアクリルフィルムを基材に積層した積層品。
- アクリルフィルムに印刷が施したものである請求項4記載の積層品。
- 基材が熱可塑性樹脂シートに印刷を施した加飾シートである請求項4記載の積層品。
- 請求項1〜3の何れかに記載のアクリルフィルムを基材に積層したアクリルフィルム積層外装用建材。
- 基材が鋼板である請求項7記載のアクリルフィルム積層外装用鋼板。
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