JP4400013B2 - 金属端子と導電性樹脂体との接合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、回路部品と一体化されたリードとしての金属端子と導電性樹脂体との接合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、特開2001−111204号公報に示される如く、金属端子と導電性樹脂体との接合物及びその接合方法は知られている。該接合方法では、図20に示す如く、熱可塑性の導電性樹脂体1の金属端子4と接合すべき部位の温度を同導電性樹脂体1の軟化点以上に加熱し、該加熱された部位に同金属端子4を押圧して融着するものである。
【0003】
この場合、図20(a)に示す如く、導電性樹脂体1は絶縁性基板7に形成された溝状部8内で成形されており、図20(b)に示す如く、同導電性樹脂体1の露出した表面が部分的に外部加熱(β)され、図20(c)に示す如く、同外部加熱(β)されて軟化した導電性樹脂体1の表面上には、電子部品9にリードとして突設された対の金属端子4の端部が各々押圧融着される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術にあっては、導電性樹脂体1へ直接に熱融着するものであり、熱によって境界付近で同導電性樹脂1の樹脂成分が劣化されるため、接合強度の長期信頼性には悪影響を及ぼす可能性があった。又、一度接合した箇所は、再度溶融させて金属端子4を再接合する等の繰り返し使用が困難であった。
【0005】
ところで、特開2000−106227号公報には、金属端子を金型内に設置し射出成形にて一体化する方法が示されている。該方法では金属端子付きの電子回路部品をそのまま金型内に設置して導電性樹脂を射出成形することになり、この場合、金型温度によって同電子回路部品は熱破壊する可能性がある。又、金型内に設置する部品数によっては金型構造が複雑になり、接合形態も同金型構造で制限されてその自由度は少なくなる。
【0006】
具体的には、図21(a)に示す如く、固定側金型Xに金属端子4付きの電子部品9を設置し、図21(b)に示す如く、可動側金型Yを可動させ型閉じして絶縁性基板7に形成された溝状部8内に導電性樹脂を射出成形し、図21(c)に示す如く、可動側金型Yを可動させ型開きして導電性樹脂体1と電子部品9とが一体化された成形品を取り出し、図21(d)に示す如く、絶縁性基板7の溝状部8内に成形された導電性樹脂体1と電子部品9の金属端子4とが一体化された接合物製品を得るものである。この場合には、固定側金型Xに絶縁性基板7を収容する凹所X1を必要とし、可動側金型Yに電子部品9を収容する凹所Y1を必要とし、金型構造が複雑化する。
【0007】
本願発明は上記従来の技術における問題を悉く解決するためになされたものであり、その課題は、接合部位付近における導電性樹脂体の熱劣化が防止され、機械的密着強度や電気的接合信頼性も向上され、金属端子の再接合が可能で、金型構造も複雑化しない金属端子と導電性樹脂体との接合物を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願請求項1記載の発明に係る金属端子と導電性樹脂体との接合物は、導電性フィラーを含有した熱可塑性の複合導電性樹脂でなる導電性樹脂体と、該導電性樹脂体にインサート成形されてその表面が露出する金属部材と、該金属部材の表面に低融点金属を介して融着接合された金属端子とでなり、金属部材の導電性樹脂体と接触する面に導電性フィラーの主成分と同じ主成分の導電層が形成され、導電層と導電性フィラーの主成分同士がインサート成形時の溶融熱によって化学的に結合されていることを特徴とする。
【0009】
したがって、この場合、金属端子と金属部材との接合になるので、接合境界部位付近の導電性樹脂体が熱劣化し難く、同金属端子と金属部材とは低融点金属を介して融着接合されるため、該低融点金属を再度溶融させることで同金属端子の再接合が可能となる。しかも、導電性樹脂体に埋設される金属部材の同導電性樹脂体との接触面積が多く確保されてその分、該導電性樹脂体との機械的密着強度は向上し、接触抵抗が低減されて電気的接合信頼性も向上される。又、導電性樹脂体の成形前に電子部品を金型内に設置しておく必要もなく、金型構造が複雑化しない。また、金属部材の導電性樹脂体と接触する面に導電性フィラーの主成分と同じ主成分の導電層が形成されているので、該導電層と導電性フィラーの主成分同士はインサート成形時に同導電性樹脂体の溶融する熱によって化学的に結合され、同金属部材と導電性樹脂体との間の電気的接合信頼性がより向上される。
【0010】
本願請求項2記載の発明に係る金属端子と導電性樹脂体との接合物は、上記請求項1記載の金属端子と導電性樹脂体との接合物において、金属部材の表面に凹部が形成され、該凹部に収容される低融点金属を介して金属端子が融着接合されていることを特徴とする。
【0011】
したがって、この場合は特に、凹部に収容される低融点金属を介して金属端子が融着接合されるので、同低融点金属は溶融した際に溢れ難く、同金属端子の融着接合が位置ズレも少なくなって容易且つ確実に行われるものとなる。
【0012】
本願請求項3記載の発明に係る金属端子と導電性樹脂体との接合物は、上記請求項2記載の金属端子と導電性樹脂体との接合物において、凹部の内径が深さ方向に拡大していることを特徴とする。
【0013】
したがって、この場合は特に、凹部の内径が深さ方向に拡大しているので、該凹部に収容される固化した低融点金属は逆勾配構造となって抜け外れ難く、金属部材と同低融点金属との間の引っ張り強度が高められる。
【0016】
本願請求項4記載の発明に係る金属端子と導電性樹脂体との接合物は、上記請求項1又は2記載の金属端子と導電性樹脂体との接合物において、金属部材の外径がインサート深さ方向に拡大していることを特徴とする。
【0017】
したがって、この場合は特に、金属部材の外径がインサート深さ方向に拡大しているので、導電性樹脂体に埋設される同金属部材は逆勾配構造となって振動等に対しても抜け外れ難く、該金属部材と導電性樹脂体との間の引っ張り強度が高められて、耐震性と共に機械的接合信頼性もより向上される。
【0018】
本願請求項5記載の発明に係る金属端子と導電性樹脂体との接合物は、上記請求項1又は2記載の金属端子と導電性樹脂体との接合物において、金属部材の外周面が凹凸状に形成されていることを特徴とする。
【0019】
したがって、この場合は特に、金属部材の外周面が凹凸状に形成されているので、導電性樹脂体に埋設される同金属部材はアンダーカット構造となって振動等に対しても抜け外れ難く、該金属部材と導電性樹脂体との間の引っ張り強度が高められて、耐震性と共に機械的接合信頼性もより向上される。しかも、金属部材と導電性樹脂体との間の接触面積が増大されて、電気的接合信頼性はより向上される。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1は、第1の参考実施形態を示し、該実施形態の金属端子と導電性樹脂体との接合物は、導電性フィラー(図2に導電性フィラー1bを示す)を含有した熱可塑性の複合導電性樹脂でなる導電性樹脂体1と、該導電性樹脂体1にインサート成形されてその表面が露出する金属部材2と、該金属部材2の表面に低融点金属3を介して融着接合された金属端子4とでなる。この場合、金属部材2の表面に凹部5が形成され、該凹部5はインサート成形後に開口して露出しているもので、同凹部5に収容される低融点金属3を介し金属端子4が融着接合されているものである。
【0025】
又、該実施形態の金属端子と導電性樹脂体との接合方法は、導電性フィラーを含有した熱可塑性の複合導電性樹脂(導電性樹脂体1)に金属部材2をその表面が露出するようにインサート成形し、該金属部材2の表面に低融点金属3を介して金属端子4を融着接合する方法である。該方法としても、金属部材2の表面には凹部5が形成されており、該凹部5はインサート成形後に開口して露出し、同凹部5に収容される低融点金属3を介して、金属端子4が融着接合されるものである。
【0026】
該実施形態の金属端子と導電性樹脂体との接合方法では、図1(a)に示す如く、導電性樹脂体1が絶縁性基板7に形成された溝状部8内で成形されるものであり、その際、同導電性樹脂体1には金属部材2がインサート成形され、該金属部材2の凹部5は表側に露出される。次に、図1(b)に示す如く、金属部材2の凹部5内に低融点金属3が充填され、該低融点金属3は加熱溶融されて、図1(c)に示す如く、同溶融した低融点金属3に電子部品9にリードとして突設された対の金属端子4の端部が各々融着接合される。
【0027】
金属部材2は金属端子4と低融点金属3を介して融着接合可能な材質であれば良く、例えば、銅や銀、真鍮、ニッケル、アルミニウム、錫、クロム、亜鉛等を主成分とした金属、或いは、これらの合金でなる。又、表面に前記金属や合金をメッキしてあれば主体が絶縁物で形成されていても良いものであり、例えば、セラミックス等でなる主体の表面に銅メッキやニッケルメッキを施した金属部材2であっても良い。
【0028】
該実施形態では、図2に示す如く、導電性樹脂体1を構成する熱可塑性樹脂がPBT(ポリブチレンテレフタレート)であり、該PBTはマトリクス樹脂1aとなってその中に、錫を主成分とした合金でなる導電性フィラー1bが網目状に分散されており、同導電性樹脂体1内には通電ネットワークが形成されている。具体的には、熱可塑性樹脂であるPBT中に低融点金属でもある錫合金を、体積比率で40〜60vol %混入して混練することで、樹脂中を合金が網目状に分散して、1×10e-4 から1×10e-5 Ωcmオーダーの安定した体積固有抵抗を有する複合導電性樹脂となり、該複合導電性樹脂でなる導電性樹脂体1内には通電ネットワークが形成されるものである。
【0029】
この場合、マトリクス樹脂1aとしてPBTを使用していることで、PPやABS等をマトリクスとする導電性樹脂よりも耐熱性に優れる。なお、本願発明において、複合導電性樹脂とはマトリクス樹脂1aとしての熱可塑性樹脂中に導電性フィラー1bを含有している構成のものであり、次のような熱可塑性樹脂或いは導電性フィラー1bが使用可能である。
【0030】
すなわち、マトリクス樹脂1aとなる熱可塑性樹脂としては汎用の樹脂が使用可能であり、例えば、前記PBTの他、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PA(ポリアミド)、PC(ポリカーボネート)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)や、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド等、或いは、これ等の共重合体、ポリマーアロイ等を使用することができる。
【0031】
又、導電性フィラー1bとしては、金属粉末やカーボン粉末等が使用可能で、金属粉末では前記錫合金が最適であり、例えば、Sn-Cu,Sn-Zn,Sn-Al,Sn-Ag,Sn-Ni,Sn-Pb 等の錫合金を使用すれば好適である。単一金属としては、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、鉛(Pb)等が使用可能である。又、導電性フィラー1bとして、前記金属粉末やカーボン粉末等を複数種類含有させたものを使用しても構わない。
【0032】
又、本願発明における低融点金属3とは、融点が金属部材2及び金属端子4の融点と同等かそれ以下の金属であり、融着時にその熱により同金属部材2を通して導電性樹脂体1に熱劣化が起きない程度の融点を有する金属であって、該実施形態では錫合金が粉末状にして使用されている。本願発明における低融点金属3としては、錫或いは錫を基とした合金が好ましいもので、例えば、 Sn-Cu系、 Sn-Zn系、 Sn-Ag系、 Sn-Pb系の合金等が好適に使用される。
【0033】
ここで、該実施形態におけるより具体的な接合例を、図3、4に基づいて説明する。図3(a)に示す如く、絶縁性基板7には一対の溝状部8が並設されており、両溝状部8には各々導電性樹脂体1が充填成形されている。該充填成形に際しては、両溝状部3の拡大した端部付近において、導電性樹脂体1に金属部材2が各々一体にインサート成形される。導電性樹脂体1は、マトリクス樹脂1aとしてPBTが、導電性フィラー1bとして錫合金(Sn-Cu-Ni-At-150;福田金属箔粉工業(株)製)及び銅粉(FCC-SP-77;福田金属箔粉工業(株)製)が、各々使用されて構成され、ここでは、PBT中を錫合金が網目状に分散した構造(通電ネットワーク構造)となる。金属部材2は銅製で、有底円筒形状(L:φ3)に形成されて接合部となる表面に凹部5を有している。
【0034】
次に、図3(b)に示す如く、前記金属部材2の凹部5に低融点金属3が埋め込み溶融され、該溶融された低融点金属3には電子部品9(抵抗)にリードとして突設された一対の金属端子4の端部が各々融着接合され、両金属端子4の端部は同金属部材2の凹部5内に強固に収容固定される。この場合、低融点金属3は Sn-Pb共晶ハンダ粉(融点:183℃)であり、導電性樹脂体1中に含有されるPBT及び錫合金の融点がいずれも 230℃付近にあるため、同低融点金属3を溶融させる温度にまで加熱しても支障はない。
【0035】
図4(a)〜(d)は、前記接合例の各接合工程を示している。図4(a)は初期状態を示し、ここでは、絶縁性基板7に形成された溝状部8内で導電性樹脂体1を成形し、その際、同導電性樹脂体1に金属部材2を一体にインサート成形している。図4(b)に示す工程では、金属部材2の凹部5内に粉状の低融点金属3を充填している。図4(c)に示す工程では、低融点金属3に熱源10を近接させて、該低融点金属3を溶融させている。図4(d)に示す工程では、電子部品9に突設される金属端子4の端部を凹部5内に挿入し、該金属端子4の端部を低融点金属3に融着接合させている。
【0036】
そして、冷却され低融点金属3が固化されると、図1(c)に示す如く、電子部品9の金属端子4は同低融点金属3及び金属部材2を介して導電性樹脂体1に固着一体化され、接合物製品が得られる。該接合物製品と金属端子4を直接導電性樹脂中に融着させた従来の比較品とでは、同接合物製品の方が明らかに引っ張り強度は高くなっていた。
【0037】
なお、絶縁性基板7としては、導電性樹脂体1を成形するための溝状部8を形成した汎用の絶縁物が使用される。例えば、熱可塑性樹脂の他、熱硬化性樹脂であっても良く、セラミックスやガラス、木材であっても良い。熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド、ケイ素樹脂等が挙げられる。又、絶縁性基板7としては、熱負荷時等に生じる熱応力を低減するために、導電性樹脂体1とほぼ同程度の線膨張率である材質のものを選定することが好ましい。又、導電性樹脂体1との密着強度を高めるためには、該導電性樹脂体1にマトリクス樹脂1aとして含有される熱可塑性樹脂と同じ主成分となる樹脂を絶縁性基板7に使用することが望まれる。
【0038】
又、前記具体的な接合例では、低融点金属3を溶融させるのに熱源10を近接さる方法を示したが、本願発明においては、図5〜8に示す方法で、同低融点金属3を溶融させることも可能である。図5に示す方法では、金属端子4を予め低融点金属3が溶融される温度にまで加熱しておいて、該低融点金属3に同金属端子4を接触させている。図6に示す方法では、低融点金属3の接触部にレーザーや赤外線等を単独で或いは組み合わせて照射(α)し、同低融点金属3を溶融させている。図7に示す方法では、金属端子4と低融点金属3との接触部に通電させることにより、該接触部でジュール発熱させて、同低融点金属3を溶融させている。
【0039】
図8に示す方法は、低融点金属3の融点が導電性樹脂体1中の導電性フィラー1bの融点よりも低い場合に実施可能な方法である。この場合、図8(a)(b)に示す如く、導電性樹脂体1にインサート成形された金属部材2の凹部5(該凹部5はインサート成形後に開口して露出している)に固体状態の低融点金属3を配置し、図8(c)に示す如く、高温炉11内に入れて全体を加熱すると低融点金属3のみが溶融し、図8(d)に示す如く、溶融した低融点金属3に電子部品9のリードとなる金属端子4の端部を融着接合させて高温炉11から取り出し冷却すると、前記と同様に、図1(c)に示す如く、一体化された接合物製品が得られる。
【0040】
したがって、該実施形態の金属端子と導電性樹脂体との接合物及びその接合方法では、金属端子4と金属部材2との低融点金属3を介した接合になるので、接合境界部位付近の導電性樹脂体1が熱劣化し難い。又、金属端子4と金属部材2とは低融点金属3を介して融着接合されるため、融着過程で熱応力が発生し難く、後工程で電子部品9の融着は容易となり、同低融点金属3を再度溶融させることで同金属端子4の再接合も可能となる。
【0041】
しかも、導電性樹脂体1に埋設される金属部材2の同導電性樹脂体1との接触面積が多く確保されるので、その分、該導電性樹脂体1との機械的密着強度は向上し、接触抵抗が低減されて電気的接合信頼性も向上される。更には、凹部5に収容される低融点金属3を介して金属端子4が融着接合されるので、同低融点金属3は溶融した際に溢れ難く、同凹部5内における金属端子4の融着接合が位置ズレも少なくなって容易且つ確実に行われる。又、導電性樹脂体1の成形前に電子部品9を金型内に設置しておく必要もなくて、金型構造が複雑化しない。
【0042】
図9は、第2の参考実施形態を示し、該実施形態の金属端子と導電性樹脂体との接合方法では、金属端子4の金属部品2との接合部位に予め低融点金属3を付設している。この場合、まず、上記実施形態におけると同様に、図9(a)に示す如く、絶縁性基板7に形成された溝状部8内で導電性樹脂体1を成形し、その際、同導電性樹脂体1に金属部材2を一体にインサート成形しており、該金属部材2は凹部5を有し、該凹部がインサート成形後に開口して露出されている。次に、図9(b)に示す如く、電子部品9のリードとなる金属端子4の端部外周面に予め層状に形成された低融点金属3を溶融させ、該溶融状態のままで同金属端子4を金属部材2の凹部5に挿入する。そして、図9(c)に示す如く、低融点金属3が固化すると、導電性樹脂体1と金属端子4とは同低融点金属3及び金属部材2を介して接合一体化される。
【0043】
したがって、該実施形態の金属端子と導電性樹脂体との接合方法では、上記実施形態の接合方法における金属部材2の表面に低融点金属3を配置する作業工程が省略され、接合工程は短縮化される。なお、それ以外、例えば、導電性樹脂体1、金属部材2、低融点金属3、金属端子4等の組成、絶縁性基板7や電子部品9の形状、同低融点金属3を溶融させる方法等については、上記第1の参考実施形態と同様で、該第1の参考実施形態におけると同様の作用効果が奏される。
【0044】
図10は、本発明に係る実施形態を示し、該実施形態の金属端子と導電性樹脂体との接合物及びその接合方法では、金属部材2の導電性樹脂体1と接触する面に導電性フィラー1bの主成分と同じ主成分の導電層6が形成され、該導電層6と導電性フィラー1bの主成分同士がインサート成形時の溶融熱によって化学的に結合されている。又、金属部材2は凹部5を有し、インサート成形後に同凹部5が開口して露出している。この場合、図10(a)に示す如く、金属部材2の外面に予め導電層6が形成され、図10(b)に示す如く、インサート成形時に、導電性樹脂体1が溶融する熱により導電層6は一時的に溶融して固化し、その際、該導電層6と同導電性樹脂体1に含有される導電性フィラー1bの主成分同士が化学的に結合され、図10(c)に示す如く、導電性樹脂体1と金属部材2とは導電層6を介して強固に固着一体化される。
【0045】
なお、導電層6が溶融しない場合には、インサート成形後に金属部材2を一時的に加熱して同導電層6を再溶融させても良い。又、導電性樹脂体1は、マトリクス樹脂1aとなる熱可塑性樹脂のPBTと、導電性フィラー1bとなる錫を主成分とした合金と、で形成されていて、導電層6が錫を主成分とした合金層で形成されている。導電層6は導電性樹脂体1中の導電性フィラー1bよりも低融点である方が好ましいもので、そうであると同導電層6は溶融し易くなる。すなわち、溶融した導電性樹脂が金型内を流れる際に該金型で熱を奪われ、金属部材2の表面に到達した際には温度が下がってしまって導電層6は溶融し難くなり、これが防止されるのである。
【0046】
したがって、該実施形態の金属端子と導電性樹脂体との接合物及び接合方法では、金属部材2の導電性樹脂体1と接触する面に導電性フィラー1bの主成分と同じ主成分の導電層6が形成されているので、該導電層6と導電性フィラー1bの主成分同士はインサート成形時に同導電性樹脂体1の溶融する熱によって化学的に結合され、同金属部材2と導電性樹脂体1との間の機械的接合信頼性だけでなく電気的接合信頼性がより向上される。図11は、金属部材2表面の錫合金でなる導電層6が溶融し再度固化して、導電性樹脂体1中の導電性フィラー1bとなる錫合金と結合した状態を示している。
【0047】
なお、それ以外、例えば、導電性樹脂体1、金属部材2、低融点金属3、金属端子4等の組成、絶縁性基板7や電子部品9の形状、同低融点金属3を溶融させる方法等については、上記第1の参考実施形態と同様で、該第1の参考実施形態におけると同様の作用効果が奏される。又、該実施形態においては、上記第2の参考実施形態と同様の接合方法を採用することもできる。
【0048】
ところで、本願発明では、図12(a)(b)に示す如く、金属部材2が有底角筒形状であっても良く、この場合に、図12(a)に示す如く、金属部材2は全体が導電性樹脂体1内に埋設されても、図12(b)に示す如く、一部が突出されても良い。又、図12(c)に示す如く、金属部材2が厚板状でその一部を導電性樹脂体1から突出させても、或いは、図12(d)に示す如く、金属部材2が薄板状で全体を導電性樹脂体1内に埋設させても良い。ただ、いずれの場合でも、導電性樹脂体1にインサート成形される際に、金属部材2の接合部位となる凹部5が形成された表面は同導電性樹脂体1から露出される。
【0049】
又、本願発明では、図13(a)に示す如く、金属部材2の凹部5内に粉末状或いは塊状の低融点金属3を充填してこれを溶融しても良く、図13(b)に示す如く、最初から溶融状態にある低融点金属3を同凹部5内に注入しても良いものである。又、図13(c)に示す如く、金属部材2が板状である場合には、該金属部材2の表面上に、シート状に形成された低融点金属3を設置してこれを溶融しても良いものである。
【0050】
又、本願発明では、図14に示す如く、金属部材2が板状である場合には、金属端子4の端部を同金属部材2の形状に対応するよう板状に形成し、該板状の端部を同金属部材2の平坦な表面に低融点金属3を介して融着接合させても良いものである。又、この場合、図14(a)に示す如く、円形板状の金属部材2であっても、或いは、図14(b)に示す如く、矩形板状の金属部材2であっても良く、いずれの場合でも、金属端子4の端部は同金属部材2に対応するように形成されるものである。
【0051】
又、本願発明では、図15に示す如く、金属部材2の表面に形成される凹部5の内径を深さ方向に拡大させることが好ましいものである。この場合は、請求項3に対応する実施形態となり、凹部5に収容される固化した低融点金属3が逆勾配構造となって抜け外れ難く、金属部材2と同低融点金属3との間の引っ張り強度は高められる。なお、それ以外は、上記第1の参考実施形態と同様で、該第1の参考実施形態におけると同様の作用効果が奏される。又、この場合、上記第2の参考実施形態と同様の接合方法を採用することも可能である。
【0052】
又、本願発明では、図16に示す如く、金属部材2をリング状(貫通筒状)に形成し、該リング状の上端開口を凹部5となしても良い。この場合も、それ以外は、上記第1の参考実施形態と同様で、該第1の参考実施形態におけると同様の作用効果が奏されるものである。又、この場合でも、図17に示す如く、凹部5の内径を深さ方向に拡大させることは可能であり、そうすることで、上記図15に示したものと同様の作用効果が奏される。
【0053】
又、本願発明では、図18に示す如く、金属部材2の外径をインサート深さ方向に拡大させることが好ましいものである。この場合は、請求項4に対応する実施形態となり、導電性樹脂体1に埋設される金属部材2が逆勾配構造となって振動等に対しても抜け外れ難く、該金属部材2と導電性樹脂体1との間の引っ張り強度は高められ、耐震性と共に機械的接合信頼性がより向上される。なお、それ以外は、上記第1の参考実施形態と同様で、該第1の参考実施形態におけると同様の作用効果が奏されるものであり、又、上記第2の参考実施形態と同様の接合方法を採用することも可能なものである。
【0054】
又、本願発明では、図19に示す如く、金属部材2の外周面を凹凸状に形成することが好ましいものである。ここに示す例では、有底円筒形状の金属部材2の外周面に、インサート深さ方向と略垂直な方向の螺旋状の溝が数ターンから十数ターン刻設されており、これによって同金属部材2の外周面は凹凸状に形成されている。ここでは、凹凸状が周方向の条として金属部材2の外周面でインサート深さ方向と略垂直な方向に形成され、導電性樹脂体1から同金属部材2は抜け外れることがない。
【0055】
この場合は、請求項5に対応する実施形態となり、導電性樹脂体1に埋設される金属部材2がアンダーカット構造となって振動等に対しても抜け外れ難く、該金属部材2と導電性樹脂体1との間の引っ張り強度は高められ、耐震性と共に機械的接合信頼性がより向上される。しかも、金属部材2と導電性樹脂体1との間の接触面積が増大することで、電気的接合信頼性はより向上される。なお、それ以外は、上記第1の参考実施形態と同様で、該第1の参考実施形態におけると同様の作用効果が奏されるものであり、又、上記第2の参考実施形態と同様の接合方法を採用することも可能なものである。
【0056】
上述の如く、本願請求項1記載の発明に係る金属端子と導電性樹脂体との接合物においては、接合部付近の導電性樹脂体の熱劣化が低減され、金属端子を再接合できて後工程での電子部品の融着も容易となり、しかも、機械的密着強度や電気的接合信頼性は向上され、又、金型構造が複雑化することもない。又、導電層と導電性フィラーの主成分同士がインサート成形時の溶融熱によって化学的に結合され、金属部材と導電性樹脂体との間の電気的接合信頼性はより向上される。
【0057】
又、本願請求項2記載の発明に係る金属端子と導電性樹脂体との接合物においては、特に、低融点金属が溶融した際に溢れ難く、金属端子の融着接合は位置ズレも少なくなって容易且つ確実に行われるものとなる。
【0058】
又、本願請求項3記載の発明に係る金属端子と導電性樹脂体との接合物においては、特に、凹部に収容される低融点金属が逆勾配構造となって抜け外れ難く、金属部材と同低融点金属との間の引っ張り強度は高められる。
【0060】
又、本願請求項4記載の発明に係る金属端子と導電性樹脂体との接合物においては、特に、導電性樹脂体に埋設される金属部材が逆勾配構造となって振動等に対しても抜け外れ難く、該金属部材と導電性樹脂体との間の引っ張り強度は高められ、耐震性と共に機械的接合信頼性がより向上される。
【0061】
又、本願請求項5記載の発明に係る金属端子と導電性樹脂体との接合物においては、特に、導電性樹脂体に埋設される金属部材がアンダーカット構造となって振動等に対しても抜け外れ難く、該金属部材と導電性樹脂体との間の引っ張り強度は高められ、耐震性と共に機械的接合信頼性がより向上され、同金属部材と導電性樹脂体との接触面積増大によって電気的接合信頼性もより向上される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の第1の参考実施形態である金属端子と導電性樹脂体との接合物の要部を示し(a)(b)(c)その接合方法における各接合工程での断面図。
【図2】同金属端子と導電性樹脂体との接合物における導電性樹脂体を示す概念図。
【図3】同金属端子と導電性樹脂体との接合方法での主要工程を示す(a)(b)各々その各接合工程での斜視図。
【図4】同金属端子と導電性樹脂体との接合方法での具体例を示す(a)(b)(c)(d)各々その各接合工程での断面図。
【図5】同金属端子と導電性樹脂体との接合方法における別の融着方法を例示する断面図。
【図6】同金属端子と導電性樹脂体との接合方法における更に別の融着方法を例示する断面図。
【図7】同金属端子と導電性樹脂体との接合方法における更に別の融着方法を例示する断面図。
【図8】同金属端子と導電性樹脂体との接合方法における更に別の融着方法を例示する(a)(b)(c)(d)各々その各融着過程での断面図。
【図9】本願発明の第2の参考実施形態である金属端子と導電性樹脂体との接合物の要部を示し(a)(b)(c)その接合方法における各接合工程での断面図。
【図10】本願発明の本発明に係る実施形態である金属端子と導電性樹脂体との接合物の要部を示し(a)(b)(c)その接合方法における各接合工程での概略断面図。
【図11】同金属端子と導電性樹脂体との接合物における接合状態を示す要部概念図。
【図12】本願発明における金属部材の形状及び埋設状態を例示する(a)(b)(c)(d)各々異なる形態のものの平面図と断面図。
【図13】本願発明における金属部材及びこれに融着される低融点金属を例示する(a)(b)(c)各々異なる形態のものの平面図と断面図。
【図14】本願発明における金属部材と金属端子との一融着状態を例示する(a)は断面図、(b)(c)は同融着状態で使用され得る異なった金属部材を各々示す平面図と断面図。
【図15】本願発明における金属部材と金属端子との一融着状態を例示する(a)は断面図、(b)は同融着状態で使用される金属部材を示す平面図と断面図。
【図16】本願発明における金属部材と金属端子との一融着状態を例示する(a)は断面図、(b)は同融着状態で使用される金属部材を示す平面図と断面図。
【図17】本願発明における金属部材と金属端子との一融着状態を例示する(a)は断面図、(b)は同融着状態で使用される金属部材を示す平面図と断面図。
【図18】本願発明における金属部材と金属端子との一融着状態を例示する(a)は断面図、(b)は同融着状態で使用される金属部材を示す平面図と断面図。
【図19】本願発明における金属部材と金属端子との一融着状態を例示する(a)は断面図、(b)は同融着状態で使用される金属部材を示す平面図と断面図。
【図20】従来技術である金属端子と導電性樹脂体との接合物を示し(a)(b)(c)その接合方法における各接合工程での斜視図。
【図21】従来技術の別例である金属端子と導電性樹脂体との接合物を示し(a)(b)(c)(d)その接合方法における各接合工程での斜視図。
【符号の説明】
1 導電性樹脂体
1a マトリクス樹脂
1b 導電性フィラー
2 金属部材
3 低融点金属
4 金属端子
5 凹部
6 導電層
7 絶縁性基板
8 溝状部
9 電子部品
Claims (5)
- 導電性フィラーを含有した熱可塑性の複合導電性樹脂でなる導電性樹脂体と、該導電性樹脂体にインサート成形されてその表面が露出する金属部材と、該金属部材の表面に低融点金属を介して融着接合された金属端子とでなり、前記金属部材の導電性樹脂体と接触する面に導電性フィラーの主成分と同じ主成分の導電層が形成され、該導電層と導電性フィラーの主成分同士がインサート成形時の溶融熱によって化学的に結合されていることを特徴とする金属端子と導電性樹脂体との接合物。
- 金属部材の表面に凹部が形成され、該凹部に収容される低融点金属を介して金属端子が融着接合されていることを特徴とする請求項1記載の金属端子と導電性樹脂との接合物。
- 凹部の内径が深さ方向に拡大していることを特徴とする請求項2記載の金属端子と導電性樹脂体との接合物。
- 金属部材の外径がインサート深さ方向に拡大していることを特徴とする請求項1又は2記載の金属端子と導電性樹脂体との接合物。
- 金属部材の外周面が凹凸状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の金属端子と導電性樹脂との接合物。
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