JP4399634B2 - 増大した可溶性発現および/または低下した一酸化窒素の排出を伴うヘモグロビン変異体 - Google Patents

増大した可溶性発現および/または低下した一酸化窒素の排出を伴うヘモグロビン変異体 Download PDF

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Description

本発明は、低下した一酸化窒素の排出および増大した可溶性発現を含む、1つ以上の所望の機能を有する新規のヘモグロビン変異体に関する。本発明はさらに、過剰のヘムの添加による組換えヘモグロビンの可溶性発現を増大させる方法に関する。
ヘモグロビン(Hb)は、赤血球(erythrocyte)または赤血球細胞(redblood cell)として知られる小さな脱核細胞である、血流内を循環する血液の酸素保有成分である。これは、ヘムとして知られる補欠分子族を有する、4つの会合したポリペプチド鎖から構成されるタンパク質である。ヘモグロビンの構造は周知であり、そして非特許文献1ならびに非特許文献2に記載されている。
天然に存在するおよび天然には存在しないグロビン変異を含む、種々の組換えヘモグロビンの発現が達成されている。このような発現方法には、例えば、米国特許第5,028,588号に記載されているような個々のグロビン発現、ならびにWO 90/13645およびLookerら、Nature 356:258-260(1992)に記載されているような、偽四量体ヘモグロビン分子を産生するために、単一のβグロビン遺伝子の発現に結合させた遺伝子融合体を介してグリシンリンカーで2つのαグロビンを連結させることによって作製したジ-αグロビンの発現が挙げられる。他の組換え改変ヘモグロビンが、PCT公開WO96/40920に開示されている。E. coli中で発現される他の異種タンパク質と同様に、組換えヘモグロビンは、N末端メチオニンを有し、これはいくつかの組換えヘモグロビンにおいて天然のN末端バリンを置き換え得る。
組換えヘモグロビンを産生するプロセスのコストは、可溶性タンパク質の収量によって影響を受ける。E. coli中での異種タンパク質の経済的な産生は、タンパク質が可溶性でなくそして機能的ではないだけではなく、組換えヘモグロビンとして複数のサブユニットから構成される場合に、特にやりがいがある。さらに、組換えヘモグロビンは、補充または増大した内因性の産生によるヘムおよびフラビンのような必須の補因子(補欠分子族)の増強された存在を必要とする。E.coliにおいて、組換えヘモグロビンの可溶性の蓄積は、ヘムの補充、δ-ALA(ヘム前駆体)の添加なしが、ヘムおよびタンパク質の蓄積を増大するという事実によって示されるように、ヘムの利用性によって制限される。結果として、可溶性の量を増大させる方法が非常に所望されている。しかし、本発明の以前には、可溶性E.coli発現における変異の影響は研究されていないだけではなく、可溶性の量の決定因子も全く理解されていない。従って、組換えヘモグロビンの可溶性の量を増大させる方法についての必要性が存在する。
細胞外ヘモグロビンによって一酸化窒素(「NO」)の排出を低下させる方法についての必要性もまた、存在する。穏やかな高血圧症が、しばしば、特定の細胞外ヘモグロビン溶液の投与後に観察されている。高血圧症は、一酸化窒素(「NO」)に対するデオキシヘモグロビンの既知の高親和性に一部基づく、血管壁中のNOの除去によると、多くの研究者によって考えられている(Schultzら、J.Lab. Clin. Med. 122:301-308(1993);Thompsonら、J. Appl. Physiol. 77:2348-2354(1994);Rooneyら、Anesthesiology79:60-72(1993))。内皮細胞または組織間腔空間中のヘモグロビンの血管外漏出は、NOの有意な消費を生じ得る(Gouldら、World J.Surg. 20:1200-1207(1996))。最近の研究はまた、オキシヘモグロビンの結合したO2とのNOの酸化反応が、Eichら、Biochemistry35:6976-6983(1996)に報告されているような鉄原子への単純な結合よりも、インビボではるかに有意であり得ることを示唆する。Eichらは、結合した酸素に隣接するアミノ酸の置換によって導入された立体的な障害が、NOによって誘導される酸化の速度を顕著に低下させ得ることを示した。
一酸化窒素は、神経刺激伝達、炎症、血小板の凝集、ならびに胃腸および血管平滑筋の緊張度の調節を含む、多くの重要なインビボでのプロセスの制御において化学的なメッセンジャーとして作用する。一酸化窒素の生物学的作用は、可溶性のグアニリルシクラーゼへの結合およびその活性によって媒介され、これは、種々の組織特異的応答を生じる生化学的カスケードを開始する(Feldmanら、Chem. Eng. News Dec:26-38(1993))。
一酸化窒素の機能を解明することは、NO生成酵素である一酸化窒素合成酵素の阻害に大きく依存する。ヘモグロビン非含有細胞の影響についてのほとんどの結論は、NO合成酵素インヒビターおよび/またはNOドナーを含む実験に基づいて導かれている。
デオキシヘモグロビンへの一酸化窒素の迅速な高親和性結合は周知であるが、NOとオキシヘモグロビンとの間の酸化反応の重要性は、広くは認識されていない。この反応において、NO分子はヘムには結合しないが、HbO2複合体の結合した酸素と直接反応してメトヘモグロビンおよび硝酸塩を形成する(Doyleら、J.Inorg. Biochem. 14:351-358(1981))。この化学は、溶液中での遊離のスーパーオキシドとのNOの迅速な反応と類似している(Huieら、FreeRad. Res. Comms. 18:195-199(1993))。ヘム鉄および一酸化窒素の両方が、結合した酸素原子によって酸化され、そしてこの反応は、NOによるO2の置換が観察されないほど迅速に起こる(Eichら、前出)。
一酸化窒素が、連続的な基本原理に基づいて産生され、そして消費されるので、インビボにおいてNOの自然の代謝回転が存在する。ヘモグロビン非含有細胞が投与される場合、NOの産生と消費との間のバランスは、ヘモグロビンとの反応によって変更される。オキシヘモグロビンによるNOの排出について最も関連するパラメーターは、NOとの反応速度であり、Hbアロステリック(R/T)平衡の位置ではない。酸化反応は不可逆的であり、そしてデオキシヘモグロビンに対するNOの結合は、生理学的な時間の尺度に対して効果的に不可逆的である。なぜなら、ニトロシルヘモグロビンの解離についての半減期は5〜6時間であるからである(Mooreら、J.Biol. Chem. 251:2788-2974(1976)。
一旦、NO分子がオキシヘモグロビンまたはデオキシヘモグロビンと反応すると、これは、特定の逆の条件を生じるシグナル分子のプールから排除される。例えば、ヘモグロビンは、血管の弛緩の予防を生じそして高血圧症を導く可能性のある一酸化窒素に結合し得、これはしばしば、特定の細胞外ヘモグロビン溶液の投与後に観察される。さらに、オキシヘモグロビンを酸化してペルオキシ亜硝酸塩(peroxynitrite)およびメトヘモグロビンを生じるNOの能力はまた、NOの低い解離能力であり得、そして高血圧症を導く。
一酸化窒素はまた、特定の炎症性応答を媒介するために必要とされる。例えば、内皮によって産生される一酸化窒素は、血小板の凝集を阻害する。結果として、一酸化窒素がヘモグロビン非含有細胞によって結合されるので、血小板の凝集が増大され得る。血小板が凝集すると、これらは、トロンボキサンA2、およびセロチニンのような潜在的な血管収縮性の化合物を放出する。これらの化合物は、ヘモグロビンの排出によって引き起こされる低下した一酸化窒素レベルとともに相乗的に作用し得、有意な血管収縮を生じる。
血小板の凝集を阻害することに加えて、一酸化窒素はまた、細胞壁に対する好中球の付着を阻害する。これは次いで、細胞壁の損傷を導き得る。内皮細胞壁の損傷は、特定のヘモグロビン溶液の灌流を用いて観察されている(Whiteら、J. Lab. Clin. Med. 108:121-181(1986))。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
BunnおよびForget編、Hemoglobin: Molecular, Genetic and Clinical Aspects(W.B.Saunders Co., Philadelphia, PA:1986) FermiおよびPerutz、「Hemoglobin and Myoglobin」PhillipsおよびRichards、Atlasof Molecular Structures in Biology(Clarendon Press:1981)
従って、減少したNO排出を有するが、有効な酸素保有因子としてなお機能する新規のヘモグロビン変異体についての必要性が、存在する。本発明は、この必要性および組換えヘモグロビンの増大した可溶性収量についての必要性を満たす。
(発明の要旨)
本発明は、特定の所望される機能(例えば、増大した可溶性のHbの収量および低下したNO排出)を付与するヘモグロビン変異に関する。ヘモグロビン変異は、これらの機能を別々に、または組み合わせて含むように設計され得る。
従って、1つの局面において、本発明は、未改変のタンパク質と比較して可溶性の組換えヘモグロビンの収量を増大させるための、組換えヘモグロビンの1つ以上のβおよび/またはαサブユニットに変異を導入することに関する。この方法は、以下の工程によって達成される:
(a)組換えヘモグロビンの高可溶性発現を指向する少なくとも1つの変異を有するグロビンをコードする遺伝子を含むベクターを、宿主細胞中に取りこむ工程:
(b)可溶性の組換えヘモグロビンを発現する宿主細胞を誘導する工程;および
(c)可溶性の組換えヘモグロビンを精製する工程。
βサブユニットにおける有用な変異として、D73I、D73M、D73E、D73T、D73Y、K82D、K82E、K82G、K82P、K82Q、K82S、K82N、N102A、およびN102Vが挙げられる。
あるいは、または上記の方法との組み合わせにおいて、可溶性のヘモグロビンの高い発現レベルは、過剰なヘミン、好ましくは、少なくとも2.5倍のモル過剰のへミンの添加によって得ることができる。
別の局面において、本発明はさらに、一酸化窒素との低下した反応速度を有する新規のヘモグロビン変異体に関する。所望される反応速度を有するαサブユニットにおける変異として、以下が挙げられる:
E11(Val→Leu)
B10(Leu→Trp)+E7(His→Gln)
B10(Leu→Trp)+E11(Val→Phe)
B10(Leu→Trp)+E11(Val→Leu)+G8(Leu→Trp)
B10(Leu→Trp)+E11(Val→Phe)+G8(Leu→Trp)
B10(Leu→Trp)+E11(Val→Phe)+G8(Leu→Ile)
B10(Leu→Trp)+E7(His→Gln)+E11(Val→Leu)+G8(Leu→Trp)
B10(Leu→Trp)+E11(Val→Trp)+G8(Leu→Trp)
E11(Val→Leu)+G8(Leu→Phe)
E11(Val→Leu)+G8(Leu→Trp)
B13(Met→PheまたはTrp)
G12(Leu→PheまたはTrp)、および
B14(Phe→Trp)。
所望される反応速度を有するβサブユニットにおける変異として、以下が挙げられる:
E11(Val→Leu)
B13(Leu→PheまたはTrp)
G12(Leu→PheまたはTrp)
B14(Leu→PheまたはTrp)
G8(Leu→Phe)+G12(Leu→Trp)
E11(Val→Leu)+G8(Leu→Trp)
E11(Val→Trp)+G8(Leu→Met)
E11(Val→Leu)+G8(Leu→Phe)
E11(Val→Leu)+G8(Leu→Met)
E11(Val→Phe)+G8(Leu→Ile)
E11(Val→Phe)+G8(Leu→Phe)
E11(Val→Phe)+G8(Leu→Trp)
E11(Val→Phe)+G8(Leu→Met)
E11(Val→Met)+G8(Leu→Trp)
E11(Val→Met)+G8(Leu→Trp)+E7(His→Gln)
E11(Val→Trp)+G8(Leu→Ile)
E7(His→Gln)
E7(His→Gln)+E11(Val→Trp)
E7(His→Gln)+E11(Val→Leu)
E7(His→Gln)+E11(Val→Phe)
E7(His→Gln)+E11(Val→Phe)+G8(Leu→PheまたはTrp)
E7(His→Gln)+E11(Val→LeuまたはTrp)+G8(Leu→PheまたはTrp)
E7(His→Phe)
E11(Val→TrpまたはPhe)+G12(Leu→TrpまたはMet)
E11(Val→TrpまたはPhe)+B13(Leu→TrpまたはMet)
B10(Leu→Trp)+B13(Leu→TrpまたはMet)
B10(Leu→Phe)+B13(Leu→Trp)
B10(Leu→TrpまたはPhe)+G12(Leu→Trp)
B10(Leu→Phe)+G12(Leu→Met)
E11(Val→Phe、Met、またはLeu)+G8(Leu→Trp、Met、またはPhe)
G8(Leu→Phe)+G12(Leu→Trp)
G8(Leu→Trp)+G12(Leu→TrpまたはMet)、および
G8(Leu→Phe)+B13(Leu→TrpまたはMet)。
好ましくは、このような変異体は、25μM-1s-1未満、より好ましくは、12から15μM-1s-1との間、そして最も好ましくは、5μM-1s-1未満の、オキシヘモグロビンとのNOの反応についての速度定数を有する。
従って、本発明は以下を提供する:
(項目1) 組換え改変ヘモグロビンの高可溶性発現の方法であって、以下の工程:
(a)機能的に改変されたヘモグロビンの形成に関与し得るグロビンをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを宿主細胞に取り込ませる工程であって、ここで、該ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの高可溶性発現変異、または以下の群より選択される変異の組み合わせを有するβグロビンをコードする、工程:
D73I;
D73M;
D73E;
D73T;
D73K;
D73L;
K82E;
K82G;
K82P;
K82Q;
K82S;
K82N;
K82H;
N102A;
N102V
K82D(Providence)+D73G(Tilberg);および
K82D(Providence)+D73Y(Vancouver);
(b)可溶性の組換え改変ヘモグロビンを発現するように宿主細胞を誘導する工程;ならびに
(c)宿主細胞から可溶性の組換え改変ヘモグロビンを精製する工程、
を包含する、方法。
(項目2) 以下からなる群より選択されるβグロビン中の変異を含む、組換え改変ヘモグロビン:D73I、D73M、D73E、D73T、D73K、D73L、K82E、K82G、K82P、K82Q、K82S、K82N、K82H、N102A、およびN102V。
(項目3) 以下からなる群より選択される高可溶性発現変異を含むβグロビンをコードする、組換えDNA分子:D73I、D73M、D73E、D73T、D73K、D73L、K82E、K82G、K82P、K82Q、K82S、K82N、K82H、N102A、およびN102V。
(項目4) 以下からなる群より選択される変異の組み合わせを含む、組換え高可溶性発現変異ヘモグロビン:
βV67W+D73E;
βV67W+D73I;
βV67W+D73Y(Vancouver);
βV67W+D73E+K82D(Providence);
βV67W+D73I+K82D(Providence);
βV67W+D73Y(Vancouver)+K82D(Providence);
βV67W+K82E;
βV67W+K82G;
βV67F+K82D(Providence)+N108K(Presbyterian);
ジαL29F,H58Q/βL106W+K82D(Providence)+N102Y(St.Mande);
ジαL29F,H58Q/βL106W+K82D(Providence)+N108K(Presbyterian);
ジ-ジαL29F,H58Q/βL106W+K82D(Providence)+N102Y(St.Mande);
ジ-ジαL29F,H58Q/βL106W+K82D(Providence)+N108K(Presbyterian);
ジαL29F,H58Q/βV67W+K82D(Providence);
ジαL29W,H58Q/βV67W+K82D(Providence);
ジαL29W,H58Q/βV67W+K82D(Providence)+N108K(Presbyterian);
ジ-ジαL29W,H58Q/βV67W+K82D(Providence);および
ジ-ジαL29W,H58Q/βV67W+K82D(Providence)+N108K(Presbyterian)。
(項目5) 機能的に改変されたヘモグロビンの形成に関与し得るグロビンをコードする、組換えDNA分子であって、ここで、該DNA分子は、以下からなる群より選択される変異の組み合わせを有するαおよびβグロビンをコードする、分子:
βV67W+D73E;
βV67W+D73I;
βV67W+D73Y(Vancouver);
βV67W+D73E+K82D(Providence);
βV67W+D73I+K82D(Providence);
βV67W+D73Y(Vancouver)+K82D(Providence);
βV67W+K82E;
βV67W+K82G;
βV67F+K82D(Providence)+N108K(Presbyterian);
ジαL29F,H58Q/βL106W+K82D(Providence)+N102Y(St.Mande);
ジαL29F,H58Q/βL106W+K82D(Providence)+N108K(Presbyterian);
ジ-ジαL29F,H58Q/βL106W+K82D(Providence)+N102Y(St.Mande);
ジ-ジαL29F,H58Q/βL106W+K82D(Providence)+N108K(Presbyterian);
ジαL29F,H58Q/βV67W+K82D(Providence);
ジαL29W,H58Q/βV67W+K82D(Providence);
ジαL29W,H58Q/βV67W+K82D(Providence)+N108K(Presbyterian);
ジ-ジαL29W,H58Q/βV67W+K82D(Providence);および
ジ-ジαL29W,H58Q/βV67W+K82D(Providence)+N108K(Presbyterian)。
(項目6) 低下した一酸化窒素との反応速度を有し、以下からなる群より選択されるαグロビン中の変異または変異の組み合わせを含む、組換えヘモグロビン変異体:
E11(Val→Leu)およびE7(His→Gln);
E11(Val→Trp)およびE7(His→Gln);
E11(Val→PheまたはTrpまたはLeu)およびE7(His→Gln)およびG8(Leu
→PheまたはTrp);
B10(Leu→Phe)およびE4(Val→Leu);
B10(Leu→Trp)およびE4(Val→Leu);
B10(Leu→Trp)およびE7(His→Gln);
B10(Leu→Phe)およびE7(His→Gln);
B10(Leu→Phe)およびE7(His→Gln)およびG8(Leu→Trp);
B10(Leu→Trp)およびE11(Val→Phe);
B10(Leu→Trp)およびE11(Val→Trp);
B10(Leu→Trp)およびE11(Val→Leu)およびG8(Leu→Trp);
B10(Leu→Trp)およびE11(Val→Leu)およびG8(Leu→Phe);
B10(Leu→Trp)およびE11(Val→Phe)およびG8(Leu→Trp);
B10(Leu→Trp)およびE11(Val→Phe)およびG8(Leu→Ile);
B10(Leu→Trp)およびE7(His→Gln)およびE11(Val→Leu)およびG8(Le
u→Trp);
B10(Leu→Trp)およびE11(Val→Trp)およびG8(Leu→Trp);
E11(Val→Leu)およびG8(Leu→Phe);
E11(Val→Leu)およびG8(Leu→Trp);
G12(Leu→PheまたはTrp);ならびに
B14(Phe→Trp)。
(項目7) 一酸化窒素との低下した反応速度を有し、以下からなる群より選択されるβグロビン中の変異または変異の組み合わせを含む、組換えヘモグロビン変異体:
E11(Val→Trp)およびG10(Asn→Lys)(Presbyterian);
E11(Val→Phe)およびG4(Asn→Tyr)(St.Mande);
G8(Leu→Trp)およびG4(Asn→Tyr)(St.Mande)およびEF6(Lys→Asp)
(Providence);
G8(Leu→Trp)およびEF6(Lys→Asp)(Providence)およびG10(Asn→Ly
s)(Presbyterian);
E11(Val→Trp)およびEF6(Lys→Asp)(Providence);
G12(Leu→PheまたはTrp);
B10(Leu→Phe)およびE4(Val→Leu);
B10(Leu→Trp)およびE4(Val→Leu);
B14(Leu→PheまたはTrp);
G8(Leu→Phe)およびG12(Leu→Trp);
E11(Val→Leu)およびG8(Leu→Trp);
E11(Val→Trp)およびG8(Leu→Met);
E11(Val→Leu)およびG8(Leu→Phe);
E11(Val→Leu)およびG8(Leu→Met);
E11(Val→Phe)およびG8(Leu→Ile);
E11(Val→Phe)およびG8(Leu→Phe);
E11(Val→Phe)およびG8(Leu→Trp);
E11(Val→Phe)およびG8(Leu→Met);
E11(Val→Met)およびG8(Leu→Trp);
E11(Val→Met)およびG8(Leu→Met);
E11(Val→Met)およびG8(Leu→Phe);
E11(Val→Met)およびG8(Leu→Trp)およびE7(His→Gln);
E11(Val→Trp)およびG8(Leu→Ile);
E7(His→Tyr)およびG8(Leu→Trp);
E7(His→Phe)およびG8(Leu→Trp);
E7(His→Gln)およびE11(Val→Trp);
E7(His→Tyr)およびE11(Val→Trp);
E7(His→Phe)およびE11(Val→Trp);
E7(His→Gln)およびE11(Val→Leu);
E7(His→Gln)およびE11(Val→Phe)およびG8(Leu→PheまたはTrp);
E7(His→Gln)およびE11(Val→Leu、Met、またはTrp)およびG8(Leu→
PheまたはTrp);
E11(Val→TrpまたはPhe)およびG12(Leu→TrpまたはMet);
E11(Val→TrpまたはPhe)およびB13(Leu→TrpまたはMet);
B10(Leu→Trp)およびB13(Leu→TrpまたはMet);
B10(Leu→Phe)およびB13(Leu→Trp);
B10(Leu→TrpまたはPhe)およびG12(Leu→Trp);
B10(Leu→Phe)およびG12(Leu→Met);
G8(Leu→Trp)およびG12(Leu→TrpまたはMet);
G8(Leu→Phe)およびG12(Leu→TrpまたはMet);
G8(Leu→Trp)およびB13(Leu→TrpまたはMet);ならびに
G8(Leu→Phe)およびB13(Leu→TrpまたはMet)。
(項目8) 以下からなる群より選択される変異の組み合わせを含む、組換えヘモグロビン変異体:
αB10(Leu→Trp)、αE7(His→Gln)およびβE11(Val→Trp);ならびに
αB10(Leu→Phe)、αE7(His→Gln)およびβG8(Leu→Trp)。
(項目9) 以下からなる群より選択される変異または変異の組み合わせを含むαグロビンをコードする、組換えDNA分子:
E11(Val→Leu)およびE7(His→Gln);
E11(Val→Trp)およびE7(His→Gln);
E11(Val→PheまたはTrpまたはLeu)およびE7(His→Gln)およびG8(Leu
→PheまたはTrp);
B10(Leu→Phe)およびE4(Val→Leu);
B10(Leu→Trp)およびE4(Val→Leu);
B10(Leu→Trp)およびE7(His→Gln);
B10(Leu→Phe)およびE7(His→Gln);
B10(Leu→Phe)およびE7(His→Gln)およびG8(Leu→Trp);
B10(Leu→Trp)およびE11(Val→Phe);
B10(Leu→Trp)およびE11(Val→Trp);
B10(Leu→Trp)およびE11(Val→Leu)およびG8(Leu→Trp);
B10(Leu→Trp)およびE11(Val→Leu)およびG8(Leu→Phe);
B10(Leu→Trp)およびE11(Val→Phe)およびG8(Leu→Trp);
B10(Leu→Trp)およびE11(Val→Phe)およびG8(Leu→Ile);
B10(Leu→Trp)およびE7(His→Gln)およびE11(Val→Leu)およびG8(Le
u→Trp);
B10(Leu→Trp)およびE11(Val→Trp)およびG8(Leu→Trp);
E11(Val→Leu)およびG8(Leu→Phe);
E11(Val→Leu)およびG8(Leu→Trp);
G12(Leu→PheまたはTrp);ならびに
B14(Phe→Trp)。
(項目10) 以下からなる群より選択される変異または変異の組み合わせを含むβグロビンをコードする、組換えDNA分子:
E11(Val→Trp)およびG10(Asn→Lys)(Presbyterian);
E11(Val→Phe)およびG4(Asn→Tyr)(St.Mande);
G8(Leu→Trp)およびG4(Asn→Tyr)(St.Mande)およびEF6(Lys→Asp)
(Providence);
G8(Leu→Trp)およびEF6(Lys→Asp)(Providence)およびG10(Asn→Ly
s)(Presbyterian);
E11(Val→Trp)およびEF6(Lys→Asp)(Providence);
G12(Leu→PheまたはTrp);
B10(Leu→Phe)およびE4(Val→Leu);
B10(Leu→Trp)およびE4(Val→Leu);
B14(Leu→PheまたはTrp);
G8(Leu→Phe)およびG12(Leu→Trp);
E11(Val→Leu)およびG8(Leu→Trp);
E11(Val→Trp)およびG8(Leu→Met);
E11(Val→Leu)およびG8(Leu→Phe);
E11(Val→Leu)およびG8(Leu→Met);
E11(Val→Phe)およびG8(Leu→Ile);
E11(Val→Phe)およびG8(Leu→Phe);
E11(Val→Phe)およびG8(Leu→Trp);
E11(Val→Phe)およびG8(Leu→Met);
E11(Val→Met)およびG8(Leu→Trp);
E11(Val→Met)およびG8(Leu→Met);
E11(Val→Met)およびG8(Leu→Phe);
E11(Val→Met)およびG8(Leu→Trp)およびE7(His→Gln);
E11(Val→Trp)およびG8(Leu→Ile);
E7(His→Tyr)およびG8(Leu→Trp);
E7(His→Phe)およびG8(Leu→Trp);
E7(His→Gln)およびE11(Val→Trp);
E7(His→Tyr)およびE11(Val→Trp);
E7(His→Phe)およびE11(Val→Trp);
E7(His→Gln)およびE11(Val→Leu);
E7(His→Gln)およびE11(Val→Phe)およびG8(Leu→PheまたはTrp);
E7(His→Gln)およびE11(Val→Leu、Met、またはTrp)およびG8(Leu→
PheまたはTrp);
E11(Val→TrpまたはPhe)およびG12(Leu→TrpまたはMet);
E11(Val→TrpまたはPhe)およびB13(Leu→TrpまたはMet);
B10(Leu→Trp)およびB13(Leu→TrpまたはMet);
B10(Leu→Phe)およびB13(Leu→Trp);
B10(Leu→TrpまたはPhe)およびG12(Leu→Trp);
B10(Leu→Phe)およびG12(Leu→Met);
G8(Leu→Trp)およびG12(Leu→TrpまたはMet);
G8(Leu→Phe)およびG12(Leu→TrpまたはMet);
G8(Leu→Trp)およびB13(Leu→TrpまたはMet);ならびに
G8(Leu→Phe)およびB13(Leu→TrpまたはMet)。
(発明の詳細な説明)
本発明は一般に、ヘモグロビン変異に関する。これは、増大した可溶物の発現または低下したNO排出を、別々にまたは組み合わせて付与される。従って、1つの局面において、本発明は、宿主細胞中の組換えヘモグロビンの高可溶物の発現を生じる方法に関する。現在、組換えヘモグロビン(「rHb」)の高可溶物の発現が、過剰のヘムの添加と別々に、または組み合わせて、グロビンサブユニットへ特定の変異を導入することによって得られ得ることが発見されている。本明細書中で使用される場合、用語「高可溶物の発現」は、可溶物の発現を改良する変更および/または少なくとも約2.5倍モル過剰のへミンの添加を伴わずに得られる発現レベルよりも大きい、組換えヘモグロビンの可溶物の発現レベルを意味する。好ましくは、高可溶物の発現レベルは、少なくとも5%、より好ましくは、少なくとも10%、そしてなおさらに好ましくは少なくとも50%の増大を含む。
本発明の方法は、一般に以下の工程によって達成される:
(a)組換えヘモグロビンの高可溶物の発現を指向する少なくとも1つの変異を有するグロビンをコードする遺伝子を、宿主細胞中に取りこむ工程:
(b)可溶性の組換えヘモグロビンを発現させるために、宿主細胞を過剰のへミンの添加を用いて、または用いないで培養する工程;および
(c)可溶性の組換えヘモグロビンを精製する工程。
本発明の1つの実施態様において、所望のヘモグロビンまたはヘモグロビン様分子は、その可溶物の量を増強するために1つ以上の変異を含むように変更または改変され得る。好ましくは、非改変ヘモグロビンは、ヒトヘモグロビンである。しかし、他の種(例えば、霊長類、ウシ、ニワトリ、魚、サメ、および他の無脊椎動物(例えば、Artemia、ミミズ、ヤツメウナギ、軟体動物、および海洋性ミミズ)を含む)に由来するヘモグロビンもまた、増大した可溶物の発現についての候補である。
増大した可溶物の発現についての適切な組換えヘモグロビンの候補として、完全なまたは部分的な野生型ヘモグロビンが挙げられる。別の実施態様において、組換えヘモグロビンは、例えば、本明細書中で参考として援用されている米国特許5,028,588号に記載されているような、αおよび/またはβグロビン中に変異を含む、天然に存在するかまたは天然には存在しないヘモグロビン変異体であり得る。このような変異は、可溶物の発現の増強に加えて、他の所望の特性(例えば、高もしくは低酸素親和性または共作用性、安定性およびアセンブリ速度の増大、低下したヘムの欠損速度または自己酸化速度、あるいはタンパク質分解性の分解および凝集に対する耐性)を付与し得る。
増大した可溶物の発現に適切な他の組換えヘモグロビンとして、米国特許第5,449,759号および同第5,545,727号(両方とも、本明細書中で参考として援用されている)に開示されているヘモグロビン様分子(偽四量体)が挙げられる。米国特許第5,599,907号およびWO96/40920およびWO 97/23631(全て、本明細書中で参考として援用されている)に記載されている変異体および改変されたヘモグロビンもまた、増強された可溶物の発現についての適切な標的タンパク質である。
高い可溶物の発現を指向する変異体は、αおよび/またはβグロビンに見られ得る。任意の特定の理論によって束縛されることは望まないが、ヘモグロビンを安定化させるかまたはアセンブリもしくは折り畳み速度を増大させる変異もまた、改良された可溶物収量を導き得ると考えられている。従って、αへリックスを安定化させる変異(例えば、アラニン置換)、または例えば、疎水性アミノ酸で内部親水性アミノ酸を置換することによる、疎水性核パッキングを増大する変異が、本発明の方法について一般的に有用な変異である。他の一般的に有用な変異として、以下が挙げられる:(1)α1β2界面を安定化させる変異、例えば、天然に存在する変異体Hb Kansas;(2)表面部位での荷電したアミノ酸との置換、例えば、天然に存在する変異体Hb Vancouver;および(3)ジホスホグリセレート結合部位での極性アミノ酸または荷電したアミノ酸との置換。アスパラギン酸とリジンとの間での容量を有するβ表面部位D73でのアミノ酸置換もまた、一般的に有用な変異である。このようなアミノ酸として、アスパラギン酸、バリン、アスパラギン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、メチオニン、グルタミン酸、ヒスチジン、およびリジンが挙げられる。
例えば、天然に存在するProvidence変異は、ヘモグロビン四量体中の2つのβサブユニット間のDPG結合開裂中の鍵となる残基(K82DまたはLys82→Asp)で生じる。このアニオン結合開裂は、少なくとも6つの正に荷電した残基、各βグロビンに由来する3つ(His2、His143、およびLys82)に沿って並んでいる。DPGまたはイノシトール六リン酸の非存在下において、例えば、E.coli中のrHbの蓄積の間に、これらの残基間の静電気的な反発が、βグロビン構造を不安定化させるかまたは部分的に変成さえさせ得る。天然に存在する正に荷電したリジンの、負に荷電したアスパラギン酸による置換は、DPGポケットに対イオンを導入し、これは、His143との静電気的な相互作用を形成し得、β鎖を安定化するようである。この置換は、82位で野生型リジンを含むrHb0.1に対するrHb9.1の改良された可溶物の蓄積を説明し得る。電荷の置換はまた、この領域中での静電気的反発を減少させることによって、ヘモグロビンのアセンブリ速度を増大させ得る。ヒトにおける安定なヘモグロビン変異体の蓄積における差異は、サブユニットアセンブリ速度における差異と大きく相関するようである。
同じLys82→Asp(Providence)置換が、他の組換えヘモグロビン分子を安定化し、そして可溶物の蓄積を改善するようである。なぜなら、全てが、DPGの存在をともなわずに局所的に発現されるからである。これは、ジ-α変異体rHb、Lys158→Cysで観察され、ここでProvidence(「Prov」)は二倍以上の可溶物を蓄積する。rHb9+1.1を作製するためのrHb1.1へのProvidence変異の付加によって、可溶物の発現において2倍以上の増大が達成された。これによって野生型レベルまで可溶物の発現を回復させることによって、Presbyterian変異をレスキューする。可溶物の蓄積を改善することに加えて、rHb変異体はまた、全グロビンの蓄積を増大させ、これは、可溶性のヘモグロビンが不溶性のタンパク質よりも安定であることを暗示する。この結果は、不溶性のグロビンが可溶性のグロビンよりもはるかに短い半減期を有することが観察された、パルスチェイス実験と一致する。従って、より多い量のグロビンが可溶性の形態で維持され、より多い全蓄積が期待される。なぜなら、不溶性のグロビンはより迅速に除去されるからである。
高可溶物の発現についての有用なβ変異として、例えば、D73I、D73M、D73E、D73T、D73Y、K82D、K82E、K82G、K82P、K82Q、K82S、K82N、N102A、およびN102Vが挙げられる。多数のこれらの変異は、標的変異部位で野生型のアミノ酸を有する対応する組換えヘモグロビンよりも大きな、可溶物の発現量を産生する。特定の変異について参照するために使用される命名法によって、野生型アミノ酸を最初に同定し、続いて残基番号、そして最後に置換アミノ酸を同定する。例えば、D73Iは、残基番号73でアスパラギン酸がイソロイシンに置換されていることを意味する。
変異の組み合わせもまた、高可溶物の発現に有用である。有用なβグロビン変異の組み合わせの例を、表1および2に列挙する。表2において、特定の株およびそれらの説明が、有用なβ変異体で変更され得る基本的な株についての情報を提供するために列挙される。例えば、SGE3011は、いくつかの他のものに加えて、SGE3010を産生するために使用される基本株である。
本発明は、さらに、表16に同定されるいくつかの可溶物の発現を増強する所望された変異体をコードする新規のDNA配列を提供する。例えば、最終的にProvidence変異を生じるDNAはK82Nであるが、この残基は、インビボでは加水分解を受けてK82Dを生じる。従って、アスパラギン酸を直接コードするDNAは新規である。
一般に、当業者は、当該分野で周知の技術によって組換えヘモグロビンの高可溶物の発現を指向する、少なくとも1つの変異を有する変異体グロビンをコードする遺伝子を構築し得る。これは、完全なDNA合成によるかまたは標準的な組換えDNA法(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: ALaboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY.(1989)を参照のこと)によることを含む。所望される変異を取りこむための方法は当該分野で周知であり、例えば、部位特異的変異誘発が挙げられる。ランダム変異誘発もまた、特定の部位で多数の変異を生成するために有用である。例えば、米国特許第5,028,588号、米国特許第5,545,727号、米国特許第5,599,907号、PCT公開WO 96/40920、およびWO 97/04110(全てが、本明細書中で参考として援用される)に記載されているような他の組換え技術もまた、公知である。
従来の方法に従って、または本明細書中で参考として援用されているWO 96/40920に記載されているように、遺伝子が、適切な宿主細胞に挿入されるプラスミドを構築するために使用され得る。任意の適切な宿主細胞が、新規のポリペプチドを発現するために使用され得る。適切な宿主細胞として、例えば、細菌、酵母、哺乳動物、植物、および昆虫細胞、ならびにトランスジェニック動物が挙げられる。E.coli細胞は、所望される組換えヘモグロビンを発現するために特に有用である。
次いで、形質転換された宿主細胞は、可溶性のヘモグロビンが精製のために収集されるまで、培養されるかまたは発酵させられる。可溶性の画分の精製は、本明細書中に参考として援用されているWO 95/14038に記載されている方法を使用して、または以下の実施例に提供される指針に従って達成され得る。
本発明のさらなる実施態様において、過剰のへミンが、組換えヘモグロビンの高可溶物の発現を得るために添加され得る。本明細書中で使用される場合、「過剰のヘム」は、ヘモグロビン中のヘム結合部位に対する、少なくとも2.5倍モル過剰のへミンを意味する。
発酵物中の不溶性タンパク質含量の測定は、可溶性のヘモグロビンの減少が不溶性のグロビンへの転換に起因したことの証拠をもたらした。ヘムの損失は、不溶性のグロビンへの可溶性のヘモグロビンの代謝回転の機構である。これは、MitrakiおよびKing、Bio/Tch.、7:690-697(1989)に記載されているように十分に特徴付けられてきた。代謝回転の速度は、E.coliのフラスコ培養物中のrHb1.1の11時間の半減期と一致し(WeickertおよびCurry、Arch. Biochem. Biophys.、348:337-346(1997))、ヘムが制限される(必要とされる化学量論レベル以下に低下する)場合に、可溶物の蓄積が停止し、そしてrHbの代謝回転がヘムの欠損によって最初に駆動され、続いて不溶物の凝集が駆動されるという可能性を生じる。
封入体中でインビボで見出される多くの不安定な変異体ヒトHbは、変異体Hbのインビトロで熱沈殿させた形態と同様にヘムを含む(Rachmilewitz、Seminars inHematology、11:441-462(1974))。ヘムは、不溶性の凝集物中でもなおいくらかのグロビン構造を安定化し得、そしてその4つのヘモグロビンサブユニットの1つ以上の欠損によって、不溶性に導かれ得、そしてサブユニットの迅速な代謝を導き得る(WeickertおよびCurry、前出)。グロビンはそれが真核生物細胞を含まない翻訳系においてリボソームから放出される前にヘムを受容し得るが、このことが細菌中で起こるかどうかは明らかではない。真核生物中とは異なり、グロビンはおそらく、それがE.coliのリボソームから放出されるまでそのネイティブな構造を完全に折り畳むことはできない(NetzerおよびHartl、Nature、388:343-349(1997))。従って、ヘムを伴わずに、アポ-グロビンは捕捉された折り畳み中間体にたとえられ得る。
以下の実施例に記載される実験において、発現株およびプラスミドは同一であり、発酵および誘導条件も同一であった。従って、ほぼ同じ量のタンパク質合成が、各rHb変異体について生じた。細胞の増殖における有意な差異は観察されなかった。このことは、rHb変異体が細胞に対して異なる毒性効果は有さず、これは可溶性のrHbとして蓄積する可溶性のタンパク質の割合における差異を説明し得る。
細胞外ヘム濃度が、細胞内ヘム濃度に対する影響を研究するために操作された。同一の発現株の使用は、同じヘム輸送(拡散)および各rHb変異体を発現する細胞の生合成能力を課される。E. coli株は、ヘムタンパク質rHb9.1が細胞中の可溶性タンパク質のほぼ40%を蓄積することを可能にするように、十分にヘム透過性であった。rHbの非常に高い可溶物の発現が、ヘムの2.5倍より多いモル過剰を必要とするので、この過剰は、グロビンとのヘムの二分子反応を駆動するに十分に高い細胞内ヘム濃度を維持するために、細胞膜を通過する十分な拡散を必要とすると考えられている。ヘムを補充しなかった発酵物は、ヘミンを補充した場合に達成されるわずかに約12〜15%の可溶性のrHb0.1を蓄積し、このことは、ヘムの生合成が可溶性のグロビンに対して、従って細胞中のヘムのプールに対してほとんど寄与していないことを示す。
別の局面において、本発明はまた、一酸化窒素との反応速度またはNO排出を有意に減少させた、新規の変異体ヘモグロビンに関する。このように、本発明のこの局面の変異体ヘモグロビンはまた、「NO変異体」と本明細書中で呼ばれる。
NO変異体は、ヘムポケットに、またはその周辺に1つ以上の変異を有する。ヘムは、ヘモグロビン、ミオグロビン、およびチトクロームのようなタンパク質において補欠分子族として作用する、鉄含有ポルフィリンである。ヘモグロビンにおいて、ヘムは、グロビンサブユニット中のEおよびFへリックス間の開裂中に見られる。ヘム鉄は、「近位の」F8ヒスチジンのイミダゾール窒素に共有結合されており、一方、遠位のE7ヒスチジンおよびE11バリンは、ヘムポケットへの酸素の接近の付近に見られる。ヘムポケットの残基には、ヘム部分の、6オングストローム以内の最接近原子〜最接近原子基準、および好ましくは4オングストローム以内で存在する残基が含まれる(Fermiら(1984)J.Mol. Biol. 175:159-174))。αグロビンについてヘムポケットの残基として以下が挙げられる:
遠位の残基:
第1殻 第2殻
B10Leu B13Met
CE1Phe CE3His
E7His CE4Phe
E11Val E10Lys
G8Leu E14Ala
G12Leu
B14Phe
近位の残基:
第1殻 第2殻
F8His C7Tyr
F4Leu
F7Leu
FG3Leu
FG5Val
G4Asn
G5Phe
H15Val
H19Leu
そしてβグロビンについては、以下が挙げられる:
遠位の残基:
第1殻 第2殻
B10Leu B13Leu
CD1Phe CD3Ser
E7His B14Leu
E11Val CD4Phe
G8Leu E10Lys
E14Ala
G12Leu
近位の残基:
第1殻 第2殻
F8His C7Phe
F4Leu
F7Leu
FG3Leu
FG5Val
G4Asn
G5Phe
G12Leu
H15Val
H19Leu
第1殻の残基は、閉鎖した残基であるか、またはヘム鉄原子および/もしくは結合リガンドとと直接接触している残基であり、一方、第2殻は、ヘム、または結合リガンドと直接は接触していないアミノ酸であるが、これは、第1殻の残基と直接接触している。用語「ヘムポケットの残基」は、これらの第1殻および第2殻の残基を含む。
種々の用語が、本発明のこの局面を記載することにおいて本明細書中で使用される。他に記載されない限りは、本明細書中で使用される全ての技術および科学的用語は、当業者に通常理解されているものと同じ意味を有する。
本発明の目的のために、「天然に存在するヒトヘモグロビン」、「天然のヘモグロビン」、「野生型ヘモグロビン」、または「通常のヘモグロビン」は、ヒトヘモグロビンA0をいう。そのαおよびβグロビンアミノ酸配列は、本明細書中で参考として援用されている米国特許第5,028,588号の図1に与えられている。グロビンサブユニットのへリックスセグメントを文字によって同定すること、例えば、α鎖またはβ鎖の近位のヒスチジンがF8(ヘリックスFの残基8)と呼ばれることが慣習的であることに注目。非へリックスセグメントは、それらが結合するヘリックスセグメントを示す文字の対(例えば、非へリックスセグメントBCはヘリックスBおよびヘリックスCに結合する)によって同定される。αおよびβグロビンについてのヘリックスの表記法および対応するアミノ酸は、本明細書中で参考として援用されている米国特許第5,028,588号の表4に示されている。
「組換えヘモグロビン」は、天然であるかまたは変異体であるかどうかにかかわらず、α様グロビンタンパク質および/またはβ様グロビンタンパク質を含むヘモグロビンを意味する。この少なくとも1つは、ヘモグロビン遺伝子および/またはヘモグロビンタンパク質が天然に見出される細胞以外の細胞中の組換えDNA分子によって保有されるグロビン遺伝子の発現によって得られる。言い換えれば、ヘモグロビン遺伝子は、それが発現される宿主に対して異種である。例えば、ヒト血液細胞以外の任意の細胞中での任意のヒトヘモグロビン遺伝子の発現は、組換えヘモグロビンであると考えられる。
本明細書中で使用される場合、「αグロビン」は、天然のヒトαグロビンとの少なくとも約75%の配列同一性を有する。しかし、より少ない配列同一性のポリペプチドがなお、天然のヒトαグロビンと実質的に相同であると考えられ得、従って、それが偶然から予想されるよりも高い配列同一性を有し、そして天然のヒトαグロビンの特徴的な高次構造および類似の生物学的活性をもまた有する場合に、αグロビンであり得る。同様に、「βグロビン」は、天然のヒトβグロビンとの少なくとも約75%の配列同一性を有する。しかし、より少ない配列同一性のポリペプチドがなお、天然のヒトβグロビンと実質的に相同であると考えられ得、従って、それが偶然から予想されるよりも高い配列同一性を有し、そして天然のヒトβグロビンの特徴的な高次構造および類似の生物学的活性をもまた有する場合に、βグロビンであり得る。
「リガンド化ヘモグロビン」は、リガンドがヘム基に結合されているヘモグロビンを意味する。一般的な好ましいリガンドとして、O2、CO、NOなどが挙げられるが、これらに限定されない。
「オキシヘモグロビン」は、酸素分子が各サブユニット中の機能的な酸素結合部位に結合しているヘモグロビンを意味する。
「デオキシヘモグロビン」または「非リガンド化ヘモグロビン」は、αグロビン、βグロビン、および/または任意の機能的なヘム補欠分子族にリガンドが結合していない任意のヘモグロビンを意味する。
「メトヘモグロビン」または「酸化ヘモグロビン」は、鉄が第二鉄状態に酸化されている任意のヘモグロビンを意味する。
「R状態ヘモグロビン」は、ヘモグロビンの高親和性状態であり、そしてリガンドがヘムポケットで結合している場合に、ヘモグロビンの優性な形態である。リガンドは代表的には酸素であり、従ってこの状態は、「オキシ」または「R」(弛緩した(relaxed)の)状態として知られる。R状態において、内部サブユニットの距離は、T状態ヘモグロビンにおける距離と比較して増大している。
「T状態ヘモグロビン」は、ヘモグロビンの低親和性状態であり、そしてそれが脱酸素化された(「デオキシ」または「tense(緊張した)」の「T」)場合に、ヘモグロビンの優勢な形態である。
「ヘムポケット」は、周辺の残基によって記載される各グロビンサブユニットのヘムの周辺に形成されるポケットを意味し、そしてこれは、ヘム部分の約6Å内の残基を含むことおよび上記に記載される残基を含むことを意味する。
「遠位のヘムポケット」は、リガンド分子が鉄原子と可逆的に結合し得、そしてこれがヒスチジンE7およびバリンE11のような残基を含む場合に、鉄の遊離の配位部位を含むヘムの平面より上のヘムポケットの部分を意味する。同様に、ヘムポケットの近位の部位は、ヘムの平面より下のこのような残基によって記載され、そして部位F8での近位のヒスチジンのような残基を含む。
「酸化」は、第一鉄(Fe2+)から第二鉄形態(Fe3+)への、ヘモグロビン四量体を形成する任意のまたは全てのサブユニットのヘム中の鉄の酸化を意味する。自己酸化は、外因性の酸化剤の添加を伴わずに自発的に生じるが、酸化は、外因性の酸化試薬(最も顕著には、NOおよび過酸化水素)の存在によって誘導され得る。
「変異」は、1つ以上のアミノ酸から天然に存在するヒトヘモグロビンを構成するアミノ酸配列への、置換、欠失、または付加である。
「親和性」は、ヘモグロビンへのリガンドの平衡状態の結合を意味し、そして熱力学的平衡定数Keqによって記載される。親和性は、リガンド会合速度とヘモグロビン−リガンド解離速度の比であり、従って、会合速度、解離速度、または両方の変化によって、リガンド親和性における変化を導き得る。
「変更された親和性」は、同じ測定条件下での同じ気体状リガンドについて、天然に存在するヒトヘモグロビンの親和性とは少なくとも10%異なる気体状リガンドに対する組換えヘモグロビンの親和性を意味する。
本発明のNO変異体の設計において、2つの独立したタンパク質操作ストラテジーが、酸素親和性および硝酸との反応速度を変化させるために使用された:(1)サブユニットの遠位のポケット中に新規の置換を作成することによる、NOおよびO2それぞれの内因性の速度論および親和性の操作、ならびに(2)Olsonら、Art.Cells, Blood Subs., and Immob. Biotech. 25:227-241(1997)に記載されているようなヘム基から離れた鍵となる位置での、変異とのアロステリックR/T平衡の部位の調節。ヘモグロビンのアロステリー効果の変化は、酸素結合速度論および親和性について特異的である。一方、R/T平衡は、NOの排出に対して全く影響を有さない。遠位のポケット置換は、立体的な障害および水素結合を変化させることによって、NOおよびO2の進入および流出速度に影響を与える(Olsonら、前出)。
従って、本発明のNO変異体を同定するための一般的なストラテジーを、以下に示す:
a)αおよびβグロビンサブユニットの遠位のヘムポケット中に1つ以上のアミノ酸置換を生じる変異を作製する工程;
b)適切な発現ベクターにこれらの変異を含むDNAフラグメントを取りこませる工程、次いで、適切な宿主細胞にこのベクターを導入する工程;
c)宿主細胞を培養する工程、続いて、可溶性のヘモグロビンを発現する宿主細胞を同定するために、ヘモグロビンに対する抗体を用いるスクリーニングアッセイ(例えば、ELISA)を行う工程;
d)可溶性のヘモグロビンを発現する宿主細胞を培養する工程、続いて、ヘモグロビンを精製する工程;
e)必要な場合は、NOの排出活性における減少および酸素送達の維持を確認するために、インビトロ試験を行う工程;
f)適切なβ変異と対となる適切なα変異を選択する工程;
g)必要な場合は、P50またはO2の解離速度を調節するために他の変異を選択する工程;ならびに
h)O2の送達および血液動態力学データについてのインビボ試験を行う工程。
このストラテジーに従って、変異体αサブユニットは野生型βサブユニットと、およびその逆で、最初に対にされる。αおよびβグロビン中の変異の組み合わせによって形成されるさらなる変異体もまた、構築された。
本明細書中で記載される任意の変異体は、当該分野で公知の多数の方法によって達成され得る。変異体は、所定のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列の変更によってコドンレベルで作製され得る。タンパク質中の任意の所定の部位でのアミノ酸の置換は、特定のアミノ酸についてコドンを変更することによって達成され得る。この置換は、例えば、以下を使用する部位特異的変異誘発によって達成され得る:(1)Taylorら、Nucl. Acids Res.(1985)13:8749-8764;Taylorら、(1985)Nucl. AcidsRes. 13:8764-8785;NakamayeおよびEckstein(1986)Nucl. Acids Res. 14:9679-9698;およびDenteら、DNACloning、Glover編、IRL Press(1985)791-802頁の方法に基づく、Amersham技術(Amersham変異誘発キット、Amersham,Inc.、Cleveland, Ohio)(2)Promegaキット(Promega Inc.、Madison, Wisconsin)、または(3)Kunkel(1985)Proc.Natl. Acad. Sci. USA 82:488;Kunkelら(1987)Meth. Enzymol. 154:367;Kunkel、米国特許第4,873,192号の方法に基づく、Bioradキット(BioradInc.、Richmond, California)。これはまた、変異誘発を達成するために変異オリゴヌクレオチドを使用する部位特異的変異誘発の技術、または以下の実施例に記載されるような技術を包含する、他の一般的に利用可能な手段または一般的ではない手段によっても達成され得る。
部位特異的変異誘発はまた、Zhengbinら、205-207頁、PCR Methods and Applications, Cold Spring HarborLaboratory Press、New York(1992);JonesおよびHoward(1990)Bio Techniques 8(2):178(1990);JonesおよびHoward、BioTechniques 10:62-66(1991)に記載されているような、または以下の実施例に記載されているような変異誘発に基づくPCRを使用して達成され得る。部位特異的変異誘発はまた、当業者に公知である技術とともにカセット変異誘発を使用して達成され得る。
任意の適切な宿主細胞が、当業者に公知の方法によるか、または以下の実施例に記載されるように、所望される変異(単数または複数)を含むプラスミドで形質転換され得る。適切な宿主細胞として、例えば、細菌、酵母、植物、哺乳動物、および昆虫細胞が挙げられる。E. coli細胞が、新規の変異体ヘモグロビンを発現させるために特に有用である。好ましくは、複数のサブユニットが細菌中で発現される場合、WO93/09143に記載されるように、サブユニットが多シストロン性である同じ細胞中で同時に発現されることが所望されるが、これは必要ではない。所望のタンパク質をコードする遺伝子の発現を駆動する単一のプロモーターを使用することが、E.coli中では好ましい。
変異体のオキシヘモグロビン形態とのNOの反応によって、しばしば、ヘモグロビン四量体中の2つのサブユニット型の異なる反応性に起因して、ニ相性の反応の時間経過が生じた。2つの指数関数にこれらの反応の時間経過を合わせることによって、野生型および変異体サブユニットの両方の反応速度が得られた。多数の変異体構築物についてこのプロセスを繰り返すことによって、各サブユニット型における多数の変異体が同定され、このことは、NO反応性(k’NO,ox)について広範な速度定数が得られたことを示す。多数の変異体の精製およびスクリーニング後、以下のαおよびβグロビン変異体、ならびにそれらの組み合わせを、従来のヘモグロビンと比較して減少したNO反応性を有するとして同定した:
αグロビン変異体:
E11(Val→Leu)
E11(Val→Leu)+E7(His→Gln)
E11(Val→PheまたはTrp)+E7(His→Gln)
E11(Val→PheまたはTrpまたはLeu)+E7(His→Gln)+G8(Leu→PheまたはT
rp)
B10(Leu→Trp)+E7(His→Gln)
B10(Leu→Trp)+E11(Val→Phe)
B10(Leu→Trp)+E11(Val→Trp)
B10(Leu→Trp)+E11(Val→Leu)+G8(Leu→Trp)
B10(Leu→Trp)+E11(Val→Leu)+G8(Leu→Phe)
B10(Leu→Trp)+E11(Val→Phe)+G8(Leu→Trp)
B10(Leu→Trp)+E11(Val→Phe)+G8(Leu→Ile)
B10(Leu→Trp)+E7(His→Gln)+E11(Val→Leu)+G8(Leu→Trp)
B10(Leu→Trp)+E11(Val→Trp)+G8(Leu→Trp)
E11(Val→Leu)+G8(Leu→Phe)
E11(Val→Leu)+G8(Leu→Trp)
B13(Met→PheまたはTrp)
G12(Leu→PheまたはTrp)
B14(Phe→Trp)
βグロビン変異体:
E11(Val→Leu)
B13(Leu→PheまたはTrp)
G12(Leu→PheまたはTrp)
B14(Leu→PheまたはTrp)
G8(Leu→Phe)+G12(Leu→Trp)
E11(Val→Leu)+G8(Leu→Trp)
E11(Val→Trp)+G8(Leu→Met)
E11(Val→Leu)+G8(Leu→Phe)
E11(Val→Leu)+G8(Leu→Met)
E11(Val→Phe)+G8(Leu→Ile)
E11(Val→Phe)+G8(Leu→Phe)
E11(Val→Phe)+G8(Leu→Trp)
E11(Val→Phe)+G8(Leu→Met)
E11(Val→Met)+G8(Leu→Trp)
E11(Val→Met)+G8(Leu→Trp)+E7(His→Gln)
E11(Val→Trp)+G8(Leu→Ile)
E7(His→Gln)
E7(His→Gln)+E11(Val→Trp)
E7(His→Gln)+E11(Val→Leu)
E7(His→Gln)+E11(Val→Phe)
E7(His→Gln)+E11(Val→Phe)+G8(Leu→PheまたはTrp)
E7(His→Gln)+E11(Val→LeuまたはTrp)+G8(Leu→PheまたはTrp)
E7(His→Phe)
E11(Val→TrpまたはPhe)+G12(Leu→TrpまたはMet)
E11(Val→TrpまたはPhe)+B13(Leu→TrpまたはMet)
B10(Leu→Trp)+B13(Leu→TrpまたはMet)
B10(Leu→Phe)+B13(Leu→Trp)
B10(Leu→TrpまたはPhe)+G12(Leu→Trp)
B10(Leu→Phe)+G12(Leu→Met)
G8(Leu→Trp)+G12(Leu→TrpまたはMet)
G8(Leu→Trp)+B13(Leu→TrpまたはMet)
E11(Val→Phe、Met、またはLeu)+G8(Leu→Trp、Met、またはPhe)
G8(Leu→Phe)+G12(Leu→Trp)。
代表的なNO変異体の上記のリストは、全てを含むことは意図しない。変異体を参照するために使用される命名法は、ヘリックスを最初に同定し、次いでヘリックス中の残基番号を同定し、続いて野生型アミノ酸および置換されたアミノ酸を同定する。例えば、E11(Val→Leu)は、野生型バリンがロイシンで置換されている、Eへリックスの11番目の残基を意味する。
所望される場合は、所望の特性を得るために、任意の上記のαグロビン変異体が、任意の上記のβグロビン変異体と組み合わされ得るか、または任意の上記のαグロビンが既知のβグロビンと組み合わされ得るか、もしくはその逆であり得る。さらに、他の変異体が、酸素親和性を調節するために添加され得る。例えば、以下の組み合わせが、所望のNO反応速度論を有した:
1.αB10(Leu→Phe)+βE11(Val→Trp)+βPresbyterian(pres)
2.αE11(Val→Leu)+βE11(Val→Phe)+St.Mande
3.αB10(Leu→Phe)+αE7(His→Gln)+βG8(Leu→Trp)+St.Mande+βProvidence(Prov)
4.αB10(Leu→Phe)+αE7(His→Gln)+βG8(Leu→Trp)+βprov+βpres
5.αB10(Leu→Trp)+αE7(His→Gln)+βE11(Val→Trp)
6.αB10(Leu→Trp)+αE7(His→Gln)+αE11(Val→Leu)+αG8(Leu→Trp)+βE7(His→Gln)+βE11(Val→Met)+βG8(Leu→Trp)
7.αB10(Leu→Trp)+αE11(Val→Leu)+αG8(Leu→Trp)+βE7(His→Gln)+βE11(Val→Met)+βG8(Leu→Trp)
8.αB10(Leu→Trp)+αE11(Val→Phe)+αG8(Leu→Trp)+βE11(Val→Leu)+βG8(Leu→Trp)
9.αB10(Leu→Trp)+αE11(Val→Phe)+βE11(Val→Met)+βG8(Leu→Trp)
10.αB10(Leu→Trp)+αE11(Val→Phe)+βE7(His→Gln)+βE11(Val→Met)+βG8(Leu→Trp)
11.αB10(Leu→Trp)+αE11(Val→Phe)+αG8(Leu→Ile)+βE11(Val→Leu)+βG8(Leu→Trp)
12.αB10(Leu→Trp)+αE11(Val→Phe)+αG8(Leu→Ile)+βE11(Val→Met)+βG8(Leu→Trp)
13.αB10(Leu→Phe)+αE7(His→Gln)+βG8(Leu→Trp)
14.αB10(Leu→Phe)+αE7(His→Gln)+βE11(Val→Trp)
15.αB10(Leu→Phe)+αE7(His→Gln)+αG8(Leu→Trp)+βE11(Val→Trp)
16.αB10(Leu→Phe)+αE7(His→Gln)+βG8(Leu→Trp)
17.αB10(Leu→Trp)+αE7(His→Gln)+βE11(Val→Trp)+βprov
18.αB10(Leu→Phe)+αE7(His→Gln)+βG8(Leu→Trp)
ジ-α構築物中に以下の変異が導入されたが、記載される組合せが、同様にモノ-α構築物中に配置され得る:
ジα構築物(両方のαサブユニット中での置換):
1.αB10(Leu→Trp)+αE7(His→Gln)+βE7(His→Tyr)+βG8(Leu→Trp)
2.αB10(Leu→Trp)+αE7(His→Gln)+βE7(His→Phe)+βG8(Leu→Trp)
3.αB10(Leu→Trp)+αE7(His→Gln)+βE7(His→Tyr)+βE11(Val→Trp)
4.αB10(Leu→Trp)+αE7(His→Gln)+βE7(His→Phe)+βE11(Val→Trp)
5.αB10(Leu→Trp)+αE7(His→Gln)+βE11(Val→Trp)[3011]
6.αB10(Leu→Trp)+αE7(His→Gln)+βG8(Leu→Trp)[3012]
7.αB10(Leu→Trp)+αE7(His→Gln)+βE11(Val→Met)+βG8(Leu→Trp)[3017]
8.αB10(Leu→Trp)+αE7(His→Gln)+βE7(His→Gln)+βE11(Val→Met)+βG8(Leu→Trp)[3019]
9.αB10(Leu→Trp)+βE11(Val→Trp)
10.αB10(Leu→Phe)+αE7(His→Gln)+βG8(Leu→Trp)[2821]
11.αB10(Leu→Phe)+αE7(His→Gln)+βE11(Val→Trp)
12.αB10(Leu→Phe)+βE11(Val→Trp)[3001]
13.αE11(Val→Phe)+βE11(Val→Phe)+βG8(Leu→Ile)[3002]
14.αE11(Val→Leu)+βE11(Val→Phe)[3004]
以下のβグロビン置換を含むジ-α構築物:
B10(Leu→Phe)+B13(Leu→Trp)
B10(Leu→Phe)+B13(Leu→Met)
B10(Leu→Phe)+G12(Leu→Trp)
B10(Leu→Phe)+G12(Leu→Met)
B13(Leu→Trp)+E11(Val→Phe)
B13(Leu→Trp)+E11(Val→Trp)
B13(Leu→Met)+E11(Val→Phe)
B13(Leu→Met)+E11(Val→Trp)
E11(Val→Phe、Met、またはLeu)+G8(Leu→Trp、Met、またはPhe)
G8(Leu→Phe)+B13(Leu→Met)
G8(Leu→Phe)+B13(Leu→Trp)
G8(Leu→Phe)+G12(Leu→Met)
G8(Leu→Phe)+G12(Leu→Trp)
G8(Leu→Trp)+B13(Leu→Met)
G8(Leu→Trp)+B13(Leu→Trp)
G8(Leu→Trp)+G12(Leu→Met)
G8(Leu→Trp)+G12(Leu→Trp)
E11(Val→PheまたはTrp)+G12(Leu→MetまたはTrp)。
これらの変異体の組み合わせはまた、1つ以上の四量体(例えば、ジ-ヘモグロビン(ジ-ジα構築物)のような)を有するより大きな大きさのヘモグロビン中に配置され得る。
一般に、αおよびβグロビンの遠位のヘムポケット中の鍵となる部位でのより大きな疎水性残基の置換は、NOによって触媒される酸化(NOの排出)の速度を実質的に低下させ得る。しかし、この一般的な観察の例外が存在する。例えば、αサブユニットのLeu-B10でのTrpおよびPheの置換は、NO排出速度を非常に低下させた(約20倍遅くした)が、β中のLeu-B10でのTrpおよびPhe置換は、NO排出速度を測定可能には変化させなかった。
逆に、Leu-G8でのTrpおよびPheの置換は、β中でのNO排出速度を有意に低下させた(Trpについて6倍遅く)が、αにおいてはNO排出速度に検出可能な効果は有さなかった。さらに、Val-E11での置換はαおよびβサブユニットの両方について低下したNO排出速度を生じ、この結果は、置換されたアミノ酸の大きさと厳密には一致しなかった(表3)。
αサブユニットにおいて、最も小さいアミノ酸(ロイシン)は、NO排出速度において最も大きい減少を生じる。βサブユニットにおいては、結果は、増大する大きさおよび疎水性がNO排出速度を低下させるという予想とより一致する。
変異体ライブラリーから得られるアミノ酸置換はまた、一般的に、NO排出速度の低下を促進する大きな疎水性残基の主題と一致した。有意に低下したNOによって触媒される酸化速度を有するとしてこのスクリーニングにおいて同定された変異体の中に、Trp、Phe、Leu、Met、Val、およびIleのような多数の置換が存在した。しかし、Thr、Ser、Tyr、およびHisのような通常ではない親水性残基を含むいくつかの変異体ヘムポケットもまた、実質的に低下したNO排出速度を有することが観察された。このような置換は、迅速な自己酸化によって不安定な分子へと導くことが予想され得るが、これらの分子のいくつかは、新規であり、そして有用な特性を示し得る可能性がある。
本発明のNO変異体は、従来のヘモグロビンよりも低い、オキシヘモグロビンとのNOの反応についての速度定数(k’NO,ox)を有するはずであり、好ましくは、約0.1μM-1s-1から約60μM-1s-1未満の範囲である。好ましくは、速度定数は、25μM-1s-1未満であり、より好ましくは、12から15μM-1s-1の間であり、そして最も好ましくは、5μM-1s-1未満である。
インビボで試験したNO変異体産物の結果は、インビボとインビトロとのNO排出速度の昇圧効果の大きさの間の直線的な相関関係を実証する。例えば、ヘム基のNO反応性の低下は、意識があるラットにおいて昇圧応答の大きさを有意に減少させた。
従って、このデータは、細胞外ヘモグロビンに対する昇圧応答が、血管を内層する内皮細胞および平滑筋細胞の領域における、NOの定常状態レベルにおける減少に起因するという仮説を支持する。NO濃度における減少は、グアニリルシクラーゼのより低い活性を生じ、これは最終的に、血管の平滑筋の緊張度を増大させる。ヘモグロビン非含有細胞の投与後に、グアニリルシクラーゼと鉄オキシ-およびデオキシヘモグロビンとの間の利用可能なNOについての競合(内皮へまたはそれを介するヘモグロビンの血管外漏出が必要とされ得る)が存在すると考えられている。NOとの反応のより低下した速度を有するこれらの組換えヘモグロビンは、一酸化窒素について強力ではない競合因子である。結果として、本発明のNO変異体は、種々の適用について有用である。なぜなら、それらの内因性の低い反応性に起因して、これらは一酸化窒素の天然の代謝においてほとんど摂動を生じないかまたは全く摂動を生じないが、依然として酸素を結合しそして送達し得るからである。
結果はまた、NO排出を減少させるために使用したアミノ酸置換が、酸素の送達について所望されない影響を有する場合に、P50およびO2の解離速度が、他の戦略的に配置されるアミノ酸置換によって「修正」され得ることを、実証した。O2速度論および平衡は、アロステリック平衡の位置を変化させることによって、またはサブユニットの内因性の結合速度論および親和性を変更することによって操作され得る。遠位のヘムポケットから離れた変異は、高親和性「R」および低親和性「T」アロステリック状態の相対的な安定性を変化させるために使用され得る。ヘモグロビンアロステリーは、酸素の結合について有意な影響を有するが、NOによる酸化については影響を有さない。
各サブユニットの内因性のO2結合特性は、鉄原子の付近の立体障害の程度を変化させることによって、またはE7残基と結合した酸素との間の水素結合の長さを変化させることによって、改変され得る。立体障害は、ヘムポケットへおよびヘムポケットからの酸素の進入および流出を変更することによって、会合および解離速度定数に影響を与える。同様に、立体障害はまた、NOによる酸化の速度にも影響を与える。E7ヒスチジンは、水素結合相互作用によって結合した酸素を安定化する。E7ヒスチジンの置換は、結合した酸素の安定性の程度を減少させ得、そして酸素解離速度論を増強し得る。E7の置換はまた、HbとのNOの反応にも影響を与え得る。
結果はさらに、ヘモグロビン分子の大きさを増大する有益な効果を実証する。これは、図11に示されるように、NO排出を減少させるために使用されるアミノ酸置換の効果に対して付加的である。
本発明の組換えヘモグロビンは、多数のインビトロまたはインビボでの適用に使用され得る。このようなインビトロの適用として、例えば、インビトロでの酸素レベルを維持することによる、細胞培養における細胞増殖の増強のための、本発明の組成物による酸素の送達(DiSorboおよびReeves、PCT公開WO 94/22482、本明細書中で参考として援用されている)が挙げられる。さらに、本発明のヘモグロビンは、酸素の除去を必要とする溶液から酸素を除去するために(BonaventuraおよびBonaventura、米国特許第4,343,715号、本明細書中で参考として援用されている)、および分析的アッセイおよび機器についての参照標準として(Chiang、米国特許第5,320,965号、本明細書中で参考として援用されている)、ならびに当業者に公知の他のこのようなインビトロでの適用に使用され得る
さらに、組換えヘモグロビンは、種々の治療的適用における使用のために処方され得る。本発明の組換えヘモグロビンについて適切な例示的な処方物が、Milneら、WO 95/14038およびGerberら、WO 96/27388(両方とも、本明細書中で参考として援用されている)に記載されている。薬学的組成物は、例えば、皮下、静脈内、または筋肉内注射、局所もしくは経口投与、大量の非経口溶液、吸入、経皮もしくは粘膜吸収などによって、投与され得る。
例えば、本発明の組換えヘモグロビンは、赤血球細胞が使用される任意の適用において、または酸素の送達が所望される任意の適用のために、赤血球細胞の置換物として有用な組成物中で使用され得る。組換えヘモグロビンはまた、酸素保有治療薬として処方され得、そして血液容量が不足し、そして液体容量もしくは酸素保有能力のいずれか、または両方が置き換えられなければならない、出血、外傷、および外科手術の処置のために使用され得る。さらに、本発明の組換えヘモグロビンが薬学的に受容可能であり得るので、これらは、酸素を送達する血液置換物としてだけではなく、大きいヘモグロビンタンパク質分子の存在に起因する膨張圧を提供する単純な容量エキスパンダーとしても使用され得る。
さらなる実施態様において、本発明の組換えヘモグロビンは、当該分野で公知の方法によって架橋され得、そしてヘモグロビンに基づく血液置換物の血管外漏出を制限するため、またはコロイド浸透圧を低下させるために所望される状況において、使用される。従って、組換えヘモグロビンは、過剰な血管外漏出に関連し得る逆の影響を減少させながら、赤血球細胞置換物として酸素を輸送するように作用し得る。
酸素送達試薬としての組換えヘモグロビンの代表的な用量は、患者の体重1キログラムあたり2mgから5gのヘモグロビンであり得る。従って、ヒト患者についての代表的な用量は、数グラムから350グラム以上までであり得る。各投与量形態の個々の用量に含まれる有効成分の単位含量が、それ自体が有効量を構成することは必要ではないと理解される。なぜなら、必要な有効量は、多数回投与の投与によって到達され得るからである。投与量の選択は、利用される投与量形態、処置される状態、および当業者の決定に従って達成される特定の目的に依存する。
組換えヘモグロビンの投与は、ヘモグロビン利用法の目的に依存して数秒から数時間までの時間で行われ得る。例えば、酸素のキャリアとしては、通常の投与時間経過は、可能な限り迅速である。酸素治療薬としての代表的なヘモグロビン溶液の注入速度は、約100mlから3000ml/時間までであり得る。
さらなる実施態様において、本発明のヘモグロビンは、貧血を処置するために、貧血を罹患している患者にさらなる酸素保有能力を提供することによって、および/または本明細書中で参考として援用されているPCT公開WO 95/24213に記載されているように造血を刺激することによっての両方で、使用され得る。造血を刺激するために使用される場合、投与速度はゆっくりであり得る。なぜなら、ヘモグロビンの投与量は、出血を処置するために必要とされ得るよりもはるかに少ないからである。従って、本発明の組換えヘモグロビンは、少量の本発明のヘモグロビンのみが投与される状況と同様に、高容量のヘモグロビンの患者への投与を必要とする適用に使用され得る。
細胞外ヘモグロビンの血管系における分布は、赤血球細胞の大きさによって制限されないので、本発明のヘモグロビンは、赤血球細胞が浸透し得ない領域に酸素を送達するために使用され得る。これらの領域は、赤血球細胞の流れに対して障害の下流に配置される任意の組織領域(例えば、血栓、鎌状細胞閉塞、動脈閉塞、血管形成バルーン、外科手術機器の下流領域、酸素の枯渇を罹患しているかまたは低酸素症(hypoxic)である任意の組織など)を含み得る。さらに、全ての型の組織虚血が、本発明のヘモグロビンを使用して処置され得る。このような組織虚血として、例えば、発作、新たに出現した発作、一時的な虚血性の発作、心筋のスタニングおよび冬眠療法、急性または不安定性狭心症、新たに出現した狭心症、梗塞などが挙げられる。組換えヘモグロビンはまた、ガンの処置のための補助的な放射線療法または化学療法としても使用され得る。
体内での広範の分布のために、本発明の組換えヘモグロビンはまた、本明細書中で参考として援用されている、WO 93/08842に記載されているように、薬物を送達するため、およびインビボでの画像化にも使用され得る。
組換えヘモグロビンはまた、患者の血液が取り出され、そして外科手術の最後および回復の間での再注入のために保存される外科手術手順の間に取り出される血液の置換物として、使用され得る(急性の正常出血量の血液希釈または血液増強)。さらに、本発明の組換えヘモグロビンは、与えられる酸素保有能力のいくらかを置き換えるように作用することによって、外科手術の前に予め与えられ得る血液の量を増大するために使用され得る。
以下の実施例は、本発明を説明するように意図されるが、制限することは意図されない。実施例1〜16は、E. coli中で発現される組換えヘモグロビンの可溶物の収量を増大させることに関する研究であり、一方、実施例17〜22は、低下したNO排出を有するヘモグロビン変異体に関する研究である。
(実施例1:遺伝子構築物)
PCRに基づくカセット変異誘発を使用して、所望のアミノ酸置換を組み込ませた。種々のコドンのDNA配列は、Sharpら、Nucl.Acids Res., 16:8207-8211(1988)に記載されるように、E. coli中で高度に発現されるタンパク質において使用されるコドンに基づいた。一般に、株をChungら、Proc.Natl. Acad. Scil USA, 86,:2172-2175(1989)またはHanahan, DNA Cloning: A PracticalApproach, V. 1, 109-135頁(IRL Press, 1985)の手順を使用して、プラスミドを欠如するE. coli株へのプラスミドDNAの形質転換によって構築した。
表4および5に列挙される株を含む、種々のE. coli株を使用した。これらの株(特に、異なるオリゴマー化変異体またはドメインを含む)の構築物は、WO 97/04110に記載され、本明細書中に参考として援用される。表4および5は、これらの分子の発現のために使用された株のバックグラウンドおよびプラスミドの骨格を要約する。プラスミドコピー数もまた可溶性発現量に影響を及ぼすことが示されている。中程度のコピープラスミドpSGE705は、試験した分子のいくつかについての基準として作用する。プラスミドpSGE715およびpSGE720は高コピー数であり、そしてこれらのプラスミドからの発現はpSGE705ベースプラスミドから観察される発現を上回るべきである。pSGE720は、pUC高コピー数の複製起点を有するテトラサイクリン耐性プラスミドにおけるtacプロモーターから転写されるジ-α-グロビン遺伝子およびβPresbyterian-グロビン遺伝子からなる合成オペロンを含む(WeickertおよびCurry,Arch. Biochem, Biophys, 348:337-346 (1997))。
(実施例2:β変異体の構築物)
pSGE728を、pSGE720のXhoI消化およびpSGE720からの1つのαサブユニットおよびジ-αグリシンリンカーの欠失により構築した。得られたプラスミドpSGE726は、ジ-α遺伝子ではなく単一のα遺伝子を含む(rHb1.0)。βにおけるPresbyterian変異を、BglIIおよびHindIIIでの消化、および野生型βを導入するための連結によって置換し、そしてpSGE728を作製した(rHb0.0)。pSGE720のβ遺伝子におけるPresbyterian変異を、pSGE728についてのように消化および連結によって置換して野生型βを導入し、そしてpSGE733を作製した(ジ-αおよび野生型β;rHb0.1)。
Providence変異(βLys82→Asp)をrHb1.1バックグラウンドに導入し、rHb9+1.1を作製した。Lys82→Asp変異を、Lys82の代わりにAspコドンを含むオリゴヌクレオチドを使用して、βグロビン遺伝子の部分のPCR増幅によって作製した。CBG124(BspEI部位の近くの野生型βコード配列5'プライマー)およびCBG119(Asp718部位の下流のβK82D変異を含む3’プライマー)を使用して、テンプレートとしてpSGE761からの小DNAフラグメントを増幅した。
CBG119 5’AGC GAA GGT ACC GTC CAG GTT(配列番号1)
CBG124 5’CCT GAC TCC GGA AGA AAA ATC C(配列番号2)
PCR産物およびベクターをBspEIおよびAsp718で消化し、そして連結した。形質転換体から単離したプラスミドのDNA配列決定を、Sequenase(登録商標)キット試薬およびプロトコル(UnitedStates Biochemical, 33P(Amersham, Inc.))、およびApplied Biosystems 380BDNA合成機を使用して合成したプライマーを使用して行った。配列決定は、ProvidenceおよびPresbyterian変異を確認し、そしてプラスミド(pSGE767)をSGE1675に形質転換してSGE2782を産生した。
Providence変異をrHb0.1バックグラウンドに導入し、rHb9.1を作製した。pSGE767からのBamHI/Asp718フラグメントを単離し、そして消化したpSGE733に連結した(rHb0.1)。配列決定は変異を確認し、そしてプラスミド(pSGE768)をSGE1675に形質転換してSGE2784を産生、またはSGE3138を形質転換してSGE3261を産生した。同様の工程を、Providence(asp)およびProvidence(asp)とPresbyterianとの組み合わせを、ジ-αLys158→Cys変異を有するプラスミドに導入するために使用した(表5:SGE3083、SGE3084、およびSGE3172)。
(実施例3)
(A.細菌増殖および溶解手順)
各試験された単離物を、テトラサイクリンを補充したLBプレート上でパッチとして37℃で一晩増殖させた。接触材料を、滅菌爪楊枝で0.75mlアリコートの新鮮なDM-1培地(Lookerら、(1992)、前出に記載されるように、滅菌12mm(前出)のホウケイ酸塩管において、15μg/mlのテトラサイクリン、0.1MIPTG(Sigma)および0.05mg/mlヘミン(Ameresco)を含む)に移した。培養物を、New Brunswick Series 25Incubator Shaker中で、30℃で18時間、350rpmで振盪しながらインキュベートした。0.2mlのアリコートを96ウェルの平底マイクロタイタープレートに移した(DynatechからのImmunlon4)。各ウェルの吸作製度を、SpectralDynamicsマイクロタイタープレートリーダーおよびSoftmaxソフトウェアパッケージを使用して、650nmで記録した。細胞を、マイクロプレートの底に3000rpm、4℃で10分間、BeckmanRK6遠心分離機、3.7ローター、およびマイクロプレートアダプターバケットを使用してベレット化した。使用済みの培地を除去し、そして細胞をマイクロプレートの軽いボルテックスで0.1ml25mM Borax中で再懸濁した。マイクロプレートをパラフィルムで覆い、そして-80℃で一晩所蔵し、次いで水浴インキュベーター中でちょうど解けるまで30℃で解凍した。リゾチーム(Ameresco超純級)を0.05MNaClを含有する1mg/mlのストックから0.17mg/ml最終容量まで添加した。サンプルをマイクロプレートの軽いボルテックスによって混合し、蓋をして室温で30分間インキュベートした。7.5mM CaCl2および75mM MgCl2を含有する0.1mg/ml DNAaseストックから、DNAase I(Boehinger Mannheim II級、ウシ膵臓由来)を0.02mg/mlまで添加した。サンプルをマイクロプレートの軽いボルテックスによって混和し、蓋をして室温で15分間インキュベートした。マイクロプレートにパラフィルムで蓋をして、-80℃で90分間〜20時間貯蔵し、次いでちょうど溶解するまで水インキュベーター中で30℃に配置した。細胞破片を、BeckmanRK6遠心分離機、3.7ローター、およびマイクロプレートアダプターバケットを使用して10分間4℃で3000rpmで、マイクロプレートの底にペレット化した。透明の溶解物を新鮮なマイクリプレートのウェルに移し、そして4℃で約12時間貯蔵した。
(B.ELISA)
明澄化した溶解物を、1:800または1:1600で、0.1%(w/v)カゼインおよび1.08%(w/v)Tween 80を含有するPBS中に希釈した。組換えジ-αヘモグロビン(rHb)標準をこの緩衝液中に系列的に希釈して、そして標準曲線を作製するための手順で使用した。以下の手順について、他に示さない限り、全ての試薬を0.1mlアリコート中で添加した。ホウ酸緩衝化生理食塩水における5μg/mlヤギアフィニティー精製抗-rHb1.1のアリコートを使用して、Immulon4マイクロプレート(Dynatech)のウェルを18時間4℃でコートした。次いでウェルを、カゼインブロッカー(Pierce)で短時間、完全に満たし、非特異的結合をブロックした。ELISA洗浄緩衝液でプレートを3回洗浄した後、次いで希釈したサンプルおよび標準を添加し、そしてプレートを37℃で60分インキュベートした。プレートを上記のように洗浄し、そして1%カゼイン(SouthernBiotechnology Associates)を含有するPBS中のビオチン標識化ヤギ抗-rHb1.1抗体を50ng/mlで各ウェルに添加した。プレートに蓋をして、37℃で60分間インキュベートし、そして上記のように洗浄した。ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼの1:10,000希釈をPBS中の0.1%カゼインへ調製し、そして分注し、そしてプレートに蓋をして37℃で20分間インキュベートし、そして上記のように洗浄した。作業用TMBペルオキシダーゼ基質溶液Bを製造業者(Kiekegaard)説明書に従って調製し、そして迅速に添加した。10分後、1Mのリン酸を各ウェルに添加し、反応を消失させた。λ450-650nmでの吸収を各ウェルについて測定した。次いで値を標準曲線に対して正規化し、そして650nmでの希釈および元々の培養吸光度について調整した。
(実施例4:発酵)
Lookerら、「Expressionof Recombinant Human Hemoglobin in Escherichia coli.」Meth. Enzymol.231:364-374(1994)に一般に記載されるように、記載されていることを除いて、16時間28℃での誘導によって、グルコース過剰(BAR)条件下でDM59(60)培地を使用して、15LBiolaffite発酵器中で規定培地中で、発酵を行った。収量結果に対する日毎および発酵器毎の変動の寄与を最小化するために、各セットの発酵は、列ごとにコントロールを含み、そして株を、可能であれば、一回よりも多く同じ発酵器に割り当てないように、いくつかの実験は発酵器および発酵のセットの間で株と分配した。発現の誘導を、約30のO.D.600の細胞密度を達成するために10μMと200μMとの間のIPTGの添加によって達成した。誘導後インキュベーションを16時間継続し、そしてヘミンを10、13、17、17、および17mlの5つのショットに、誘導の0、3、6、9および12時間後でそれぞれ添加し、0.37g/Lの総濃度のヘミンを送達した。1mlの発酵サンプルを誘導の4、8、12、14および16時間で回収し、そして可溶性rHb1.1についてアッセイした。他の研究において、ヘミンを各25mlで5つのショットに添加し、12、14、および16時間で回収した。
(実施例5:可溶性および不溶性rHbのパーセントの決定)
可溶性および不溶性rHbの蓄積を、試験した条件当たり、少なくとも2、そして通常は少なくとも3の独立した発酵物から測定した。1mlのサンプルを、適切な誘導後の時間まで、1.7mlのエッペンドルフチューブに回収した。これらの1mlのサンプルを3分間エッペンドルフ遠心機で遠心分離し、そして上清を除去した。ペレットをアッセイするまで80℃で貯蔵した。可溶性および不溶性rHbを、SDS-PAGE電気泳動後にrHbを銀染色またはウェスタンブロットのいずれかによって検出したことを除いて、記載された(Weickerら、Appl.Environ. Micro., 63:4313-4320(1997))(10)ように決定した。ゲルを、Daiichi Pure Chemicals Co.,Ltd(Tokyo, Japan)の試薬およびプロトコルを使用して銀染色した。
(実施例6:ヘミン濃度評価)
発酵ブロス中のヘミン濃度を以下のように評価した:発酵ブロスのサンプルを遠心分離し、そして上清のアリコートを、ヘミンの濃度が50μMを超えないように、50mM tris pH7.5中の300μMヒト血清アルブミン(HSA, Baxter)の溶液に添加した。Beavenら、Eur.J. Biochem., 41:539-456(1974)に記載されるように、過剰のHSAの存在下で、ヘミンは良好に規定された吸収スペクトルを有する1:1複合体を形成し、そしてヘミン濃度を625nmでの吸収から評価した。前のサンプルからの新規のヘミン濃度を減ずることにより、細胞によって結合または細胞から採取されたヘミン量を、rHb蓄積の全時間経過の間計算した。
(実施例7:Presbyterianβと野生型βとの比較)
野生型βを含むHbと比較して、Presbyterianβを含むヘモグロビンの発現は、E.coliにおける可溶性ヘモグロビンの量の約半分しか産生しない。この差はβにおけるPresbyterian変異の存在に起因するに違いない。従って、組換えヘモグロビン発現の改良は、従って、βグロビンにおける改良によって達成され得る。βPresbyterianによるより低い発現は、インビボ実験において示されるように、Presbyterian変異のasn108→lys変化による分子折りたたみ経路の破壊、またはβグロビンの一般的な不安定化に起因し得る。表6は、Presbyterianβと野生型βとの間の比較の結果を示す。
可溶性発現を、野生型βグロビンでのモノ-αの発現に対して正規化した。
(実施例8:天然に存在するβ改変体)
11の天然に存在するβ改変体を、野生型βグロビンと比較した場合、報告された、より低い酸素親和性に起因して選択し、そしてジ-αグロビンと同時発現されるrHb発現プラスミドにクローン化した。これらの改変体のいくつかが、可溶性産物を含まない所望の酸素親和性を有すると考えられる。株を発酵させそして発現を測定した。結果を表7に報告する。
*可溶性発現を、野生型βグロビンとのジ-αの発現に対して正規化した。
組換えヘモグロビンKansas、Vancouver、およびProvidenceは、野生型βグロビンの可溶性発現と同じかまたはそれよりも大きい可溶性発現を有する。組換えヘモグロビンOkaloosaおよびCheverly(これらは赤血球において少し不安定であることが報告されている(CarverおよびKutlow,International Hemoglobin Information Center Variant List, Hemoglobin19:37-149(1995))は、より低い発現を有した。単離されたPresbyterianβサブユニットは、インビトロで沈殿することが観察されており、そして他のβサブユニットと比較してより低い安定性であると考えられている。
βにおけるPresbyterian変異の効果は、可溶性におけるより低い十分な効果を有する別の変異が有用であることを示唆する。Providence(Asp)変異、βLys82→Aspは、ヘモグロビンの酸素親和性減少させる(Bonaventura,J.,ら、1976. J. Biol. Chem. 251:7563-7571)が、タンパク質安定性における効果は報告されていない。他の安定な天然に存在する変異がPresbyterianβと等価な機能特性(減少した酸素親和性)を提供し得るか否かの試験として、発現結果なしに、PresbyterianβではなくProvidence(Asp)を使用してrHb1.1のバージョンを作製した。以前の改変体命名法に従って、この分子をrHb9.1と称した。Providence(Asp)およびPresbyterian変異体と組合わせたさらなるβ改変体分子もまた作製した。これらの分子の発現を、15L発酵におけるrHb1.1およびrHb0.1の発現と比較し、次いでこれらのβを多くの他のrHbと合わせた。
(実施例9:ジ-α構築物におけるβ変異の効果)
遺伝的に融合されたジ-αを含む、またはジ-αrHbをオリゴマー化するために働き得るドメインを有する、多くの異なるヘモグロビンの発現を、Providenceβグロビンおよび/またはPresbyterianβで試験した。ヘモグロビン発現レベルを、15L発酵物から得た細胞について測定した。
Presbyterian(N108K)βの存在は、可溶性rHbを、モノおよびジ-αヘモグロビンの両方について2倍を超えて減少させた(表6)。この減少は可溶性rHbのような発酵を通して明らかである。別のβサブユニットは可溶性ジ-αrHb収量における十分な効果を有した(表4)。より低い酸素親和性として知られる変異であるProvidence(Asp)β(K82D)は、Presbyterian変異を含むβよりも遥かに高い可溶性rHb収量を生じた(表8)。
ピーク平均をrHb0.1に対して正規化する。
PresbyterianおよびProvidence(Asp)変異の組合わせは、Presbyterian変異単独よりも約2倍高い可溶性rHb蓄積を生じ、このことは、Providence(Asp)が少なくとも部分的に、Presbyterian変異と関連する不安定性を「レスキュー」することを示す。可溶性Hb蓄積における効果は、表9に示されるように、可溶性rHb蓄積として発酵を通して明らかである。表9は、ジ-αを伴ういくつかの変異βグロビンの発酵の間に可溶性rHbの蓄積に関するデータを報告する。Providence(Asp)βグロビンを含むrHbは、最も高いレベルまで蓄積した。βにおけるPresbyterianとのProvidence(Asp)の組合わせは、部分的に、Presbyterianβ(この可溶性蓄積は、試験した全ての分子の中で最も低かった)を含むrHbの発現を「レスキュー」した。
ジ-α(rHb9.1)と同時発現した場合、Providence変異は、rHbの可溶性発現を、可溶性細胞タンパク質の47%を改善して25.3±5.4%とし、そして総グロビン発現は44.4±12.4%まで増加した(表10)。
この改良は、発酵における全誘導期間を通して明らかであり(表11)、3.1±0.7g/Lの平均可溶性収量を生じた。 rHb9.1の可溶性および総蓄積は、同一の条件下で、rHb0.1の可溶性および総蓄積よりも有意により良好であった(P<0.05;多重範囲検定)(表11)。表11は、誘導後16時間までの4つの改変体の可溶性蓄積に関するデータを報告する。ヘム補充は、インキュベーションの0、3、6、9、および12時間後であり、最終濃度0.63mMであった。
Presbyterianβ-グロビンサブユニット(rHb9+1.1)へのProvidence変異の添加は、Presbyterianサブユニット単独と比較して、可溶性蓄積において116%の増加を生じた(表10および11)(P<0.02;平均値のT検定)。これは、rHb1.1可溶性発現を、野生型rHb0.1から統計学的に区別がつかないレベルまでレスキューした(表10)。より高いレベルまで蓄積した分子は、部分的にそうであった。なぜなら、細胞内のタンパク質蓄積のより大きな割合が可溶性のままであったからである(表12)。表12において、総グロビンを、表11に同定されるサンプルからウェスタンブロットによって測定した。より高い可溶性発現を有するrHbは、より高い総グロビンと相関し(R二乗=0.99)、そして可溶性rHbとして存在する総グロビンのより高い割合を有する(R二乗=0.97)。
これらのβグロビン変異の存在は、ジ-αにおけるLys158→Cysを有する組換えヘモグロビンの可溶性蓄積における類似の効果を有した。Providence(asp)の存在は、Presbyterianβでの11.3%の最大から24.4%まで、可溶性発現を改良した(図1)。βにおけるProvidence(asp)とPresbyterian変異との組合わせは、最大16.4%の可溶性グロビン蓄積を伴う発現の中間レベルを生じた(図1)。
表13は、異なるβサブユニットと共に同時発現される種々のジ-α分子の平均ピークrHb収量を示す。試験されたジ-αおよび3つの他の改変されたα分子について、Providence(Asp)サブユニットとの同時発現は、最高の可溶性蓄積を生じた。野生型βは常に2番目に最高であり、そしてPresbyterianβは最低であった。
表14は、多くの他の組換えヘモグロビン分子の発現におけるProvidnce(Asp)βの効果を示す。これらのα-ベースオリゴマーの可溶性蓄積は、Providence(Asp)βとの同時発現により実質的に改良された。
*BLOD=検出限界未満。
表15は、{rovidence(Asp)βと同時発現されたさらなるα-ベースオリゴマーの可溶性蓄積を示す。Providence(Asp)βの使用は、トリ-およびテトラ-ジ-αを含む、さらなる組換えヘモグロビン分子の実質的な蓄積を生じた。
(実施例10:ELISAおよび発酵槽における相対的発現の比較)
βD73、K83、およびN102でいくつかの天然に存在する改変体を用いて得られる見込みのある結果に基づいて、これらの3つの位置の各々で20個全てのアミノ酸を有する3つの複雑性の低いライブラリーを作製した。ライブラリーを実施例3のELISAによって予めスクリーニングし、そして引き続いて発現を15リットルの発酵槽において評価した。発現の結果を表16に示す。これらの3つの位置での他の改変体は、低い発現を有することをELISAによって報告され、そして発酵されなかった。発酵の結果は、一般に、13の試験された改変体のうち10において、ELISAによって予想されたものと整合した。発酵槽における発現の相対標準偏差(RSD)は、一般に、20%よりも低く、一方ELISAのRSDは、約40%である。
発現は、培養物のOD600、およびジαおよび野生型βを有するrHbに対して測定された可溶性レベルに対して正規化された。示された値は、少なくとも2つのアッセイの平均値である。
発現は、培養物のOD600、およびジαおよび野生型βを有するrHbに対して測定された可溶性レベルに対して正規化された。示された値は、少なくとも2つの発酵槽の平均であり、同時に使用された野生型コントロールに対して相対的である。
(実施例11:ヘミンの添加による可溶性rHb0.0蓄積の改善)
rHb発現を誘導するための15μMIPTGを使用する30℃の発酵槽において、rHb0.0は、rHb1.1よりも高い可溶性レベル、平均10.0±1.1%の可溶性細胞タンパク質(これに対し、rHb1.1については6.5±1.6%)まで10時間で定常的に蓄積した。28℃で、100μMIPTGを用いて、可溶性rHb0.0は、平均14.1±0.4%まで蓄積し、一方rHb1.1は、類似の大きさで9.2±2.8%まで増加した。誘導時間を10〜16時間まで延長することによって、rHb1.1の可溶性の蓄積は、可溶性細胞タンパク質の10.9±1.9%まで改善したが、rHb0.0の可溶性の収率は、誘導後8時間の16.5±0.3%から、誘導後14時間の11.0±0.3%まで減少した。総グロビンは、8時間での23.9±5.1%と14時間での22.5%±4.0%との間で比較的定常なままであった。
さらなるヘム補充が連続した可溶性rHb0.0蓄積を支持し得るという可能性を、誘導後9時間と12時間で、最終濃度85%に、0.34から0.63mMまで増加させて、さらに2つのヘミン添加を含めることによって試験した。これらの添加は、以前の発酵の後期において観察された可溶性のrHb0.0の減少を防止した。可溶性rHb0.0は、可溶性細胞タンパク質の平均19.2±2.1%まで、および総グロビン蓄積は、可溶性細胞タンパク質の28.4±8.5%まで蓄積した。誘導後16時間での可溶性ヘモグロビン蓄積におけるこの75%の増加は、高度に有意であった(P=0.0005;平均のTテスト)。
(実施例12:より高いヘミン補充を使用する4つのrHbの発現の比較)
28℃で15L発酵槽においてrHb0.0について樹立したより高いヘミン濃度(0.63mM)を使用して、4つの異なる組換えヘモグロビンの可溶性発現を、平行発酵において試験した(表17)。4つ全ての株は、2つのグロビン遺伝子差異:(1)ジαを形成するための共有結合および/または(2)βプレスビテリアン(Presbyterian)(Asn108→Lys)変異の存在、を除いて同一の高コピープラスミドで同遺伝子型であった。
可溶性発現の有意な増加が、βプレスビテリアンではなく野生型βグロビンサブユニットを発現する2つの株について観察された(P<0.05;多範囲(Multiple Range)試験)。可溶性rHbにおける平均の増加は、可溶性細胞タンパク質の約10%から約20%以上までの約2倍であった(表17)。可溶性蓄積におけるわずかな増加(約7〜17%)は、ジαサブユニットの発現と相関し、野生型およびβプレスビテリアンサブユニットの両方と相関した。
(実施例13:ヘミン添加による可溶性rHb9.1蓄積の改善)
ヘミン補充における1.07mMまでの69%の増加は、可溶性rHb9.1蓄積の割合を有意に増大させ(図2A;P=0.001)、そして35.6±2.5%の可溶性細胞タンパク質の平均は、可溶性rHb9.1であった。これらの発酵は、より低いヘム濃度で達成された3.1±0.3g/Lのほとんど2倍である平均の可溶性収量6.0±0.3g/LrHb9.1を達成した(表18)。総rHb9.1グロビン蓄積は、可溶性細胞タンパク質の平均55.6±6.9%であり、そして16時間発酵からの総グロビン収量は、9.4g/Lであった。可溶性細胞タンパク質の39%までのrHb9.1の最大の可溶性蓄積、および65%までの最大総グロビン蓄積は、個々の発酵から観察された。発酵からの細胞溶解物の可溶性および不溶性画分の銀染色ゲルは、これらの溶解物画分の各々における主要なタンパク質を構成する顕著なジαおよびβプロビデンスバンドを明らかにする。
誘導時間を24時間まで延長し、そして3時間毎にヘミンの添加を続けることにより、6.0±0.3から6.4±0.2g/Lまでの平均の可溶性rHb9.1収量におけるわずかな増大が生じたが、可溶性%または総rHb9.1におけるいかなる増大も生じなかった(表18)。しかし、個々の発酵から可溶性rHb9.1の6.8g/Lの最も高い収量を生じた。誘導の際に添加することの可溶性rHb9.1の蓄積に対する効果、代表的な発酵における使用されたヘミン添加の和に等しいヘミンの単一のボーラスが試験された。可溶性rHb9.1蓄積における有意な差異は、このストラテジーでは存在しなかった。
(実施例14:rHb9.1化学量論に対するヘム)
添加されたヘミンのモル濃度を、ヘム1つあたりベースで可溶性rHb9.1のモル蓄積と比較した。可溶性rHb9.1のモル濃度は、可溶性収量から計算した。供給されたヘミンのモル濃度は、添加したヘミンの公知の質量から計算した。ヘモグロビンの各モルは、各々1つのヘム基を含有するグロビンサブユニットの4モル(rHbあたり、2α+2β)を含有し、それゆえヘモグロビンの各モルは、4モルのヘムを含有する。可溶性rHb9.1の蓄積は、約1mMヘミンまで明らかに線形の関係を有して供給されたヘミンの量と強力に相関した(図3A)。ヘミンの濃度>1mMまでの添加は、可溶性rHb9.1の蓄積を改善しなかった。これは、これらの条件下で限定的でないことを示す(図3A)。供給されたmMヘミンとの可溶性rHb9.1サブユニット(mM)の蓄積の相関は、この初期濃度範囲にわたって非常に強力であった(図3A;R二乗=0.90;50サンプル)。比較は、約3倍のモル過剰のヘミンが、ある範囲の濃度までのrHb9.1の可溶性の蓄積に必要であったことを示した(図2の太線)。70の試験されたサンプルの中で、2.5倍より少ないモル過剰のヘミンを伴ったサンプルは1つも存在しなかった。それゆえ、これは、最大の可溶性rHb蓄積のために必要とされるヘミン過剰の下限であるとみなされた。
時間の蓄積およびヘミン濃度の相対的な重要性を決定するために、蓄積の間の異なる時点でのヘミンのほとんど同一の濃度を生じる2つの異なるヘミン補充ストラテジーから2つのセットのデータを比較した。1つは、誘導後6時間までに合計0.64mMのヘミンの添加を生じ、そして2つめは、誘導後12時間までに0.63mMヘミンの添加を生じた。可溶性rHb9.1の濃度を、最初の条件について誘導後ヘムあたりベースで8時間後に比較し、そして誘導後14および16時間で二番目の条件について比較した。誘導後の時間にかかわらず、可溶性rHb9.1蓄積は、区別できなかった(それぞれ、0.22±0.02mMおよび0.19±0.04mM)。これは、これらの条件下で、高可溶性収量を達成するにおいて蓄積の時間よりもヘミンが重要であることを示唆する。
培地からのヘムの損失は、15Lの発酵において試験され、28℃で増殖し、そこでrHb1.1発現は、100μM IPTGの添加により誘導され、そして可溶性rHbの蓄積と相関していた。ほぼ化学量論的な関係を観察し、これは可溶性rHb蓄積を支持するために必要とされるヘムのみが培地から消失したことを示す(図3)。
(実施例15:ヘムを含まない発酵におけるrHb0.1の可溶性蓄積)
rHb0.1が、発酵においてヘミン補充なしでrHb1.1より高い可溶性レベルまで蓄積するか否かを試験するために研究を行った。100μMIPTGで誘導された28℃での2つの発酵は、Verderberら、J. Bacteriol., 179:4583-4590 (1997)においてrHb1.1で観察されたものと類似する、ちょうど2.5±0.2%の可溶性細胞タンパク質の平均の可溶性rHb0.1収量を生じた。誘導のために10μMIPTGを使用して、平均1.6±0.3%の可溶性細胞タンパク質が、可溶性rHb0.1であった。ヘミンの存在下での蓄積でヘミンの非存在下で可溶性rHb0.1蓄積を除算することによって、ヘミンの存在下での最大12〜15%の蓄積は、E.coliヘム生合成に起因し得るという概算をした。
(実施例16:rHbの機能性)
組換えヘモグロビンの6つの改変体のサンプルを精製した。2つの機能性のパラメータである酸素結合親和性(P50)および協同性(nMax)を測定した(表19)。予想されたように、ヘモグロビン変異は、組換え分子において、天然のヘモグロビン分子においてそれらがなしたのとほぼ同程度まで酸素結合に影響を及ぼした。2つの機能性パラメータの間の相関および可溶性発現レベルとの間の各々の相関を試験した。2つの機能性パラメータは、互いに相関しなかった(R2=0.04;P=0.69)。これにもかかわらず、両方は、パーセント可溶性発現と等しく相関した(P50についてR2=0.046(P=0.14)、およびnMaxについてR2=0.47)(P=0.13)。P値が0.1より大きいので、より高い発現との低いP50および/またはnMaxの相関は、統計学的に有意ではなかった。さらに、3.7g/Lを生じる発酵からの可溶性rHb9.1のサンプルは、ノルバリン置換について試験された。これは、rHb1.1において以前に観察された(19、20)。ノルバリンのレベルは、定量限度よりも低かった。これは、高いレベルの可溶性発現が、このアミノ酸の誤取り込みのレベルを必ずしも増大させないことを示す。
(実施例17:NO変異体の遺伝子構築)
変異は、一般にInnisら、PCRProtocols: A Guide to Methods and Applications (1990)(本明細書中で参考として援用される)によって記載される部位特異的PCRベースの変異誘発を介してクローン化ヒトαおよびβ遺伝子に導入された。一般に、所望の変異は、AppliedBiosystems 392 DNA合成機上で、製造業者の説明書に従って合成された合成DNAオリゴヌクレオチド中に導入された。標準的な脱ブロック化手順に従って、オリゴヌクレオチドを真空遠心分離によって乾燥させ、所望の緩衝液において再懸濁し、そして滅菌水で10〜50pmol/μlまで希釈した。
これらのオリゴヌクレオチドを、PCR反応におけるプライマーとして使用した。PCR反応では、クローン化野生型αおよびβ遺伝子を保有する組換えプラスミド(例えば、pSGE728(図4))をテンプレートDNAとして使用した。
これらの変異原性オリゴヌクレオチドプライマーを、変異が導入される部位および近傍の制限エンドヌクレアーゼ認識部位にわたるように選択して、目的の変異を保有して生じるPCR産物のクローニングを容易にした。第二のオリゴヌクレオチドプライマーもまた、DNA増幅を可能にするためにPCR反応において必要とされた。このプライマーはまた、グロビン遺伝子変異を含有するように設計され得るか、またはαグロビンまたはβグロビン遺伝子の近傍の領域からの野生型グロビン遺伝子配列からなり得る。この第2のプライマーはまた、生じるPCR産物が、変異αまたはβグロビンの引き続く発現のための適切に消化されたpSGE728中にクローン化されるように、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含有するように選択された。pSGE728からのαおよびβ遺伝子の部分制限マップを図5および6に示す。
変異原性オリゴヌクレオチドの長さを、変異されるべき部位と、オリゴの5’末端と変異されるべき部位との間の位置で変異原性オリゴヌクレオチド中に組み込まれ得る最も近い制限部位との間の距離によって決定した。変異原性オリゴは、代表的には30〜45ヌクレオチド長であり、そして1つまたは2つのコドンに影響を与える変異を含有していたが、所望であれば、より多くの位置がまた潜在的に改変され得る。PCR反応のプライマーアニーリング工程の間の潜在的な問題を回避または最小化するように、変異したDNA配列を、オリゴの3’末端から実行可能な限り遠くに配置することが一般に所望される。変異したヌクレオチドを、一般に変異原性プライマーの3’末端の5〜10ヌクレオチド上流に配置した。変異原性オリゴヌクレオチドの5’末端の近くに組み込んだグロビン遺伝子制限部位は、一般に、PCR産物の引き続く消化を容易にするために、5’末端の5〜12ヌクレオチド下流に配置した。PCRにおけるプライマーとしてのみ利用したオリゴヌクレオチド(すなわち、変異を含んでいなかった)は、代表的には、24〜36ヌクレオチド長であり、そしてオリゴヌクレオチドの5’末端の6〜12ヌクレオチド下流に一般に位置するグロビン遺伝子制限部位を含んでいた。
PCR反応は、AppliedBiosystems GeneAmp 9600において一般に行われた。PCR反応条件を経験的に決定した:変性を代表的には95℃で15〜60秒で、一般的には45〜60℃の範囲のアニーリング温度で15〜30秒間であり、多くの反応はアニーリングについて50〜55℃の範囲で行い、そして伸張は、72℃で15〜120秒で行った。
いくつかの場合において、アニーリング温度を、反応経過の間に上昇させた:(例えば、反応は、45℃のアニーリング温度で5回、その後アニーリング温度60℃で20回からなった)。代表的には、反応は、合計25〜30サイクルからなった。反応は、代表的には、10mMTris-HCl(pH8.3)、50mM KCl、1.5mM MgCl2、0.2mM dNTP (Pharmacia)、および0.001%ゼラチンにおいて行った。オリゴヌクレオチドプライマーを、通常0.5〜1.0μMの濃度で添加した。pSGE728のような精製したプラスミドDNA(反応あたり約0.1〜10ng)を、一般に、テンプレートとして使用した。AmpliTaq(登録商標)DNAポリメラーゼ(PerkinElmer)を、代表的には反応あたり1〜10ユニットで使用して、そして反応容量は20〜100μlの範囲であった。
PCR反応の後に、QIAquickPCR精製キット(QIAGEN Inc. Santa Clarita, CA)を使用して反応産物を精製した。次いで、精製した産物を、適切な酵素での制限エンドヌクレアーゼ消化に供し、同様に切断したpSGE728中へのクローニングに適切なDNAフラグメントを生成した。制限消化を、供給元のプロトコルに従って行った。
消化したPCRフラグメントは、直接クローニングし得るか、または最初にアガロースゲル電気泳動に供し、そしてアガロースゲルから精製した。ゲルの組成および電気泳動条件を、DNAフラグメントのサイズに基づいて選択した。多くのフラグメントは、約60〜250塩基対長であり、そしてこれらのフラグメントについてゲル電気泳動における解像度は、3%NuSeiveアガロースまたは4%Metaphorアガロースゲルのようなゲル(両方が、FMCBioProducts(Rockland, ME)から入手可能であり、そして供給元のプロトコルに従って使用した)で最適である。電気泳動の後、DNAフラグメントを、供給元に従って、QIAEXIIゲル抽出キット(QIAGEN Inc. Santa Clarita, CA)アガロースゲルスライスから精製した。ベクターpSGE728をまた、目的の変異誘発されたPCRフラグメントをクローニングすることについての適切な酵素で消化し、そしてより従来的な電気泳動に従って同様にゲル精製した。
消化および精製した変異誘発されたPCRフラグメントを、供給元のプロトコルに従って、T4 DNAリガーゼ(New England BioLabs Beverly, MA)を使用して消化および精製したpSGE728ベクターフラグメントで連結し、そして連結産物を使用して、Ecoliを形質転換した。コンピテント細胞としてPromega (Madison, WI)から入手したE coli.株JM109を、しばしば、この目的のために使用したが、Ecoliの他の株、ならびにコンピテント細胞の調製のための他の種々の方法もまた利用され得る(Sambrookら、Molecular Cloning: ALaboratory Manual (Cold Springs Harbor, 1989))。形質転換体を、テトラサイクリン耐性について選択し、そして引き続いて配列決定して、目的の変異を同定し得、そして変異誘発されたクローン化PCRセグメントの配列を確認した。プラスミドテンプレートを、QIAprepSpin Miniprep Kit (QIAGEN)を使用して調製し、そして供給元のプロトコルに従って、AmpliCycleTMSequencing Kit (Perkin Elmer, Forster City, CA)を使用して配列決定した。いくつかの配列決定を、Sequenase(UnitedStates Biochemical, Cleveland, OH)を使用して手動で行ったが、好ましい方法は、供給元のプロトコルに従って配列決定反応を行うためにAmpliCycleTMSequencing Kit (Perkin Elmer, Foster City, CA)を使用する自動化配列決定、およびABI Prism 377 DNASequencer (Applied Biosystems Division of Perkin Elmer, Foster City, CA)での解析である。
この手順のバリエーションは、変異されるべき部位が、pSGE728に独特である制限部位の十分近くに位置していない場合に、ときどき使用された。その場合、いわゆる「ヘルパー」DNAフラグメントは、クローニング工程を容易にするために利用され得る。例えば、α遺伝子において(図5)、そのタンパク質のV62位についてのコドンは、いくらか独特の制限部位から離れており、そのためその図に示されるMaeIII部位(これは、プラスミドにとって独特ではないが、BamHI部位からV62コドンまでのセグメントにとって独特である)。それゆえ、V62コドンは、α遺伝子のMae IIIからMlu IセグメントまでにわたるPCRフラグメント上で変異され、そしてMaeIII消化に続くこのフラグメントは、pSGE728のゲル精製Bam HI〜MaeIIIフラグメントに連結された。この連結産物は、Bam HIおよびMluI(この両方が、pSGE728内の独特の切断酵素)で消化され、そしてBamHI-Mlu Iフラグメントを、ゲル精製し、そしてpSGE728のBam HI-、Mlu I-、およびゲル-精製したベクターフラグメントに連結した。あるいは、V62変異体は、MluIのような独特の部位にわたるより長いオリゴヌクレオチド中に組み込まれ得る。
2〜4アミノ酸が本質的にランダムに同時に変異された変異ヘモグロビンの大きなライブラリーの構築のために、変異誘発オリゴヌクレオチド設計、PCR反応、およびクローニング工程について類似する手順を続けた。しかし、特定の変異誘発オリゴからの制限部位を省略し、そして代わりにこの特定の変異誘発オリゴと部分的に重複し、そして有用な制限部位に及ぶプライマーを用いてさらなるPCR増幅を介してpSGE728にクローニングするために必要な制限部位を取り込むことがときに所望された。これらの増幅は、野生型グロビン配列(例えばpSGE728)およびグロビン配列を有する他の組換えプラスミドの環境夾雑物を厳密に除外するように設計された条件下で行われることが必要とされた。これらの種類の環境夾雑物は、この後者の型の増幅において潜在的に優先的にプライムされ得る。なぜなら、それらは、これらのオリゴプライマーの全長にアニールし得るが、標的テンプレートであるPCRフラグメントは、このようなプライマーのほんの少しの部分にしかアニールしないからである。
いくつかの場合において、2つ以上の変異誘発したPCRセグメントを一緒に連結して、適切に消化したpSG728ベクターにクローニングする前に4つもの変異誘発した部位を含むセグメントを作製した。適切な大きさにした連結産物を同定し、続いてアガロースゲル電気泳動によって精製した。いくつかの場合において、精製工程の前、または後に目的の連結産物を特異的に増幅するプライマーを用いるPCR増幅を行った。
目的の位置において広範な範囲のアミノ酸置換を生成するために、変異誘発オリゴを、目的の位置で縮重さを伴って合成した。所定の位置の「ランダム化」のために、2つの縮重オリゴを合成した。このうち一方は、配列N(T/A/C)Tをランダム化すべきコドンに含むが、他方は配列(A/T)(T/G)(T/G)を同位置に含んだ。これらの2つのオリゴは、PCRの前にプールされ得るが、より通常には、このような対を用いる2つの独立のPCR反応を使用して、そしてPCR産物を、ゲル電気泳動後の可視化により、(AlphaInnotech Corp San Leandro、CAからのAlphaImagerTM2000 Documentation &AnalysisSystemを用いて)おおまかに定量した。一旦定量したら、およその等量の各フラグメントを次のクローニング工程のためにプールし得る。この「ランダム化」は、16の異なるアミノ酸置換を生成する20の異なるコドンをもたらした:F、I、L、およびSについて各2コドン;D、R、N、A、T、P、C、V、M、H、W、およびYについては1コドン存在する。アミノ酸E、K、W、およびGは、これらのライブラリーにおける「ランダム化」位置には存在しない。
pSGE728ベクターへの連結およびE.coliへの形質転換の後、多数(代表的には、24〜28)の独立の形質転換体を拾い、そして各々にクローニングした変異誘発したPCRセグメントを、配列決定した。プラスミドテンプレートを、QIAprepSpin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いて調製し、そしてAmpliCycleTM SequencingKit(Perkin Elmer、Foster City、CA)を販売者のプロトコルに従って配列決定した。配列を、ABI Prism377 DNASequencer(Applied Biosystems Division of Perkin Elmer、Foster City、CA)において決定し、そして分析した。配列を分析して、所定のライブラリー内のアミノ酸置換の分布、およびDNA配列におけるPCR誘導および合成オリゴ誘導の誤りの頻度を評価した。続いて、ライブラリーからのクローンを拾い、そして以下に記載のように分析した。
(実施例18:αおよびβ変異体(ジαおよびジジα)の構築)
いくつかの研究について、αおよびβサブユニットの両方において変異された組換えヘモグロビンを生成することが所望された。この目的のために、αおよびβの変異を、pSGE728の誘導体において合わせ得る。代表的に、このような結合(combination)は、αおよびβ配列を分離する適切な制限エンドヌクレアーゼを用いてpSGE728の変異誘導体を切断すること、pSGE728の変異β誘導体のβ遺伝子を含む制限フラグメントをゲル精製すること、変異α誘導体のα遺伝子を含む制限フラグメントをゲル精製すること、これら2つのフラグメントを互いに連結すること、E.coliを形質転換すること、および得られた形質転換体を分析してαおよびβ変異の両方の存在を確認することによって達成され得る。
残基b10、E11、G8、およびE7でのαおよびβ変異について、このような組合せを、pSGE728の変異誘導体を、テトラサイクリン耐性遺伝子内部を切断するBspHI、およびベータ遺伝子内でβコード配列の開始から約28塩基対を切断するSacII、で消化することによって作製し得る。販売者のプロトコルに従うSacIIおよびBspHI(NewEngland BioLabs,Beverly,MA)での消化は、2つのDNAフラグメントをもたらした:テトラサイクリン耐性についての遺伝子の一部およびβ遺伝子のほとんどすべて含み、そしてアミノ酸残基B10、E11、G8およびE7についてのコドンを含む937bp長である一方のフラグメント、ならびにテトラサイクリン耐性についての遺伝子の一部およびα遺伝子のすべてを含む第二の2318bp長についてのコドンを含む。これらの消化産物は、製造者のプロトコルに従うSeaKem(登録商標)GTG(登録商標)アガロース(FMCBioProducts、Rockland、ME)を用いた(0.6〜1.0%)のアガロースゲルでの電気泳動によって容易に分離され得る。続いて、pSGE728のβ変異誘導体に由来する937bpフラグメントは、アガロースゲルから切り出され得、そしてQIAEXII Gel Extraction Kit(QIAGEN Inc.,Santa Clarita、CA)を販売者のプロトコルに従って用いて切り出され得る。
同様に、α変異を有するpSGE728誘導体由来の2318bpフラグメントはまた、ゲルから切り出され得、そして精製され得る。これらの2つの精製されたフラグメントは、T4DNAリガーゼ(NewEngland BioLabs Beverly,MA)を販売者のプロトコルに従って用いて互いに連結され得、そして連結産物を用いてE.coliを形質転換した。Promega(Madison,WI)からコンピテント細胞として得たE.coliJM109株は、この目的に使用され得るが、E.coliの他の株およびコンピテント細胞の調製のための他の種々の方法(Sambrookら、前出)もまた、使用され得る。テトラサイクリン耐性形質転換体についての選択は、テトラサイクリン耐性遺伝子の再構成について選択し、そしてこれは、SacII部位でβ遺伝子の再構成をほとんど常にともなう。従って、得られた個々の形質転換体を、αおよびβ遺伝子のDNA配列およびプラスミド構造全体を決定することによって分析する場合、90%超がαおよびβ変異の両方を有する所望の組換え体であることが見い出される。配列分析について、プラスミドテンプレートをQIAprepSpin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いて調製し得、そしてAmpliCycleTMSequencing Kit(Perkin Elmer、FosterCity、CA)を販売者のプロトコルに従って用いて配列決定し得る。配列決定は、ABI Prism 377 DNA Sequencer(AppliedBiosystems Division of Perkin Elmer、Foster City、CA)にて実行し、そして分析した。
いくつかの研究について、αおよびβ両方においてアミノ酸置換を有する組換えヘモグロビンを産生することが所望され、そしてここでαサブユニットは、グリシン(またはいくつかの他のアミノ酸)リンカーによって遺伝子融合されている。このような「ジα」融合の構築についての方法は、Lookerら、Nature 356:258−260(1992)に記載されており、そしてこれらの方法を適用してジα版の任意の変異α遺伝子を構築し得る。このようなジα変異体は、上記に記載のように目的の任意のβ変異体と、容易に合わせられ得る。
いくつかの研究について、ジαおよびβの両方においてアミノ酸置換を有し、そしてジαサブユニットが「ジヘモグロビン」または「ジジα」分子が産生されるようにペプチドリンカーによって遺伝子融合された組換えヘモグロビンを産生されることが所望される。このような「ジジα」融合体を構築してジヘモグロビンを産生するための方法はWO96/40920(これは、本明細書において参考として援用する)に記載されており、そしてこれらの方法を適用して、ジジα版の任意の変異体α遺伝子を構築し得る。このようなジジα変異体は、上記に記載のように目的の任意のβ変異体と、容易に合わせられ得る。
(実施例19:インビトロ速度反応アッセイのための小規模産生)
多量の改変体ヘモグロビンにおける速度反応測定について、改変体ヘモグロビンをコードする組換えプラスミド(例えば、pSGE728の誘導体)を含むヘモグロビン変異体E.coli株を、代表的に、通常約50mlの容積で振盪フラスコ中で増殖させた。約0.2%酵母抽出物を補充した一般的に規定された培地を、細胞増殖について用い、そしてテトラサイクリンを、一般的に15μg/mlで添加して、組換えプラスミドの維持について選択した。ヘモグロビン遺伝子の発現を、通常100μMの濃度でのIPTGの添加により誘導し、ヘミンを、一般的に誘導時に50μg/mlの最終濃度で添加した。細胞を、一般的に28℃で増殖および誘導した。定常期まで増殖した細胞(例えば、代表的に飽和した一晩培養物)は、IPTGおよびヘミンを含む培地に(一般的に1/50〜1/1000の範囲の希釈で)直接接種し得るか、またはこのような培養物は、IPTGおよびヘミンを欠く培地へ接種し得、対数増殖期にまで増殖させ(例えば、A600で0.4〜0.7OD)、次いでヘミンを代表的に誘導時に培養物に添加しながらIPTGを添加して誘導した。培養物は、一般的に一晩(約14〜20時間)の誘導条件下で増殖したが、より短い時間(例えば、約6時間)もまた使用し得た。この時間の最後に、細胞を、遠心分離によってペレット化し、そしてペレット化した細胞を、−80℃で凍結および保存するか、またはすぐに処理するかのいずれかを行った。
組換えヘモグロビンを、Fast Flow Zn-Chelating Sepharose (Pharmacia)を用いて小規模カラムクロマトグラフィーによって精製した。精製の間、細胞、溶解物、すべての緩衝液、および溶離したヘモグロビンを氷上で可能な限り維持した。代表的に、50ml培養物のペレットを、1.0mlの氷冷25mM四ホウ酸ナトリウムを用いて再懸濁し、そして1.7mlのエッペンドルフチューブに移した。細胞を、通常、超音波処理によって溶解したが、リゾチームによる酵素溶解もまた使用し得た。超音波処理した溶解物を遠心分離(一般的に約14,000×gで15から20分間、4℃)続いて20μlの20mM酢酸Znの添加によって明澄化した。上清を、以下のように予め平衡化した約150〜200μlカラムにロードした:
2〜10カラム容量の0.5MNaOH
0℃で、6〜10カラム容量の0.5MNaCl、20mM Tris-HCl pH8.1
3〜10カラム容量の20mM酢酸Zn
0℃で、6〜10カラム容量の0.5MNaCl、20mM Tris-HCl pH8.1。
ロード後、カラムを、少なくとも9カラム容量の0.5M NaCl、20mM Tris-HCl pH8.1、0℃に続いて少なくとも3カラム容量の0.05M NaCl、20mMTris-HCl pH8.1、0℃で洗浄し、次いで、30mM EDTAを含む所望の緩衝液(例えば、0.1M リン酸Na、pH7.0)を約1.0ml用いて溶出した。ヘモグロビンは、代表的に、約200〜400μlの容量に回収された。これらのサンプルを、NO酸化およびO2解離のような速度反応アッセイに用いた。すぐに使用しない場合、サンプルを−80℃で凍結および保存した。
(実施例20:ヘムポケット変異体の精製)
すべての分子、モノマーおよびダイマーをまず、固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)によって捕捉し、そしてさらに、WO96/15151(これは、本明細書におって参考として援用する)に記載されるように処理した。次いで、ヘモグロビン溶液を、さらなる精製のために、適切なロード緩衝液にダイア濾過(diafiltration)した。モノマーヘモグロビンについて、適切なロード緩衝液は、アニオン交換カラム(QSepharose FF、Pharmacia、Uppsala、Sweden)へのロードについては20mM Tris(pH9.0)であった。カラムに15g/Lでロードしたタンパク質を、3カラム容量の12.5mMTris(pH 7.8)で洗浄した。次いで、このタンパク質を、2〜3カラム容量の12.3mM Tris(pH7.6)に溶出するか、またはタンパク質のpIが7.5未満の場合は、適切なpHでのBis-Tris緩衝液中で溶出する。pIを用いて、モノマーおよびダイマーの両方の各タンパク質についての適切な洗浄条件および溶出条件を決定した。ヘムポケット変異体のいくつかの表面上の特定の変異が、この値をもたらすことが見い出された。ダイマーヘモグロビンについて、適切なロード緩衝液は、セラミックヒドロキシアパタイト(CHT)カラム(BioRad)へのロードについて10mM KPi(pH 7.0)、または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラム(BioRad)へのロードについては20mM Tris(pH8.0)であった。タンパク質を、20g/LでCHTカラムにロードし、次いで、カラムを8カラム容量の30〜40mMKPi(7.0)を用いて洗浄する。5カラム容量の85〜90mM Kpi(pH7.0)を使用して、カラムからタンパク質を溶出する。HICカラムを使用する場合、タンパク質を、15g/Lでロードし、次いでカラムを5カラム容量の1.2M硫酸アンモニウム/20mM Tris(pH8.0)を用いて洗浄する。タンパク質を、3カラム容量の1M硫酸アンモニウム/20mM Tris(pH8.0)を用いて溶出する。CHTおよびHICカラムの両方の洗浄工程を、ジヘモグロビンおよびより大きな分子をカラムに結合させたままモノマーヘモグロビンが溶出されることが可能なように開発した。いずれかのカラムからのプールをダイア濾過して、アニオン交換カラムへのロードのために調製する。アニオン交換工程をジヘモグロビンから残りのモノマーヘモグロビンが洗い流されるように設計して、サイズに基づいて98%純粋であるジヘモグロビンプールを得る。アニオン交換カラムは、SuperQ650M(TosoHaas)である。カラムを20mM Tris(pH9.0)で平衡化し、そして15g/Lタンパク質でカラムにロードした。次いで、カラムを、3カラム容量の10〜15mMTris(pH 7.6〜7.8)で洗浄し、そしてタンパク質を、3カラム容量の15〜30mM Tris(pH7.6〜7.8)を用いて溶出するか、またはpHが7.3〜7.6の間の場合には、Bis-Tris緩衝液を使用する。この点から、タンパク質を、WO96/15151に記載されるように扱う。
(実施例21:オキシHbとNOとの間の反応の測定)
一酸化窒素ガスをNaOHペレットのカラムに通し、そしてこれを用いて圧力計を完全にフラッシュした。嫌気性緩衝液(0.1Mリン酸ナトリウム、pH7.4)を圧力計に注入し、そしてNOと平衡化してストック溶液を作製した。ストック溶液の希釈を、嫌気性緩衝液を含むガラスシリンジ中で行った。オキシヘモグロビンのNOとの反応の時間経過を、420nmおよび402nmで、AppliedPhotophysics ストップトフロー(stopped-flow)装置を用いて収集した。温度は20℃であった。データを、AppliedPhotophysicsによって供給されるソフトウェアプログラム!SX.17MVを用いて収集および分析した。
ほぼ等価な値のk'NO,oxを有する置換されたαおよびβサブユニットを、動物モデルにおける使用のために、テトラマーヘモグロビン構築物へと合わせた。これらの「対の変異体」rHb(例えば、rHb2、rHb3、およびrHb4;表20)を、遺伝子融合した変異したジαサブユニットを用いて構築して、上記に記載のようにα/βダイマーへのヘモグロビンの解離を防止した。表2では、変異を、例えば、βN108Kと命名する。これは、野生型Asn(N)をLys(K)で置換したネイティブヒトβグロビン配列残基番号108を意味する。
得られた組換えオキシヘモグロビンは、一酸化窒素とは1相的反応(図7)を有し、これは、1つの速度定数のみを考慮することによってインビボ実験の解釈を単純化する。rHb2、rHb3、およびrHb4についてのk'NO,ox値は、それぞれ、24、15、および2μM-1S-1である。組換えヘモグロビンrHb1.1、rHb0,1(desval、ジα)、rHb0.0(des val、野生型)、およびrHb Bethesdaは、低親和性T状態四次構造を形成する異なる傾向に起因して、広範なP50値(それぞれ32、10、15、および2.7mmHg)を有する。しかし、後者の4つのタンパク質は、ヘムポケットに野生型アミノ酸、および同一の高い値のNO誘導酸化の速度(約60μM-1S-1)を有する。このデータは、アロステリックな(R/T)平衡の位置にかかわらず、ヘムポケット内の置換のみがオキシヘモグロビンのNO反応性に影響を与えることを示唆する。
3つすべての対の変異体ヘモグロビンは、rHb1.1と比較して有意に左方シフトしている酸素解離曲線を有する(表20)。低い値のP50は、デオキシヘモグロビンの形成を最小化することによって血圧実験の解釈を単純化する。最高の投与負荷および赤血球の正常な補完を用いる実験において、これらの高親和性のヘモグロビンは、循環を通じてほぼ100%の酸素飽和のままである。従って、NOとのオキシヘモグロビンの反応のみを考慮することが必要である。rHb1.1について、デオキシヘモグロビンに対するNO結合の速度は、オキシヘモグロビンとのNO反応速度に類似し、そのためrHb1.1の2つの形態は、同様のNOを除去する能力を有する。一般に、NO誘導酸化の速度は、ミオグロビンおよびヘモグロビンのデオキシ形態に対するNO結合の速度に非常に類似する。なぜなら、両方のプロセスにおける律速段階が遠位ポケットへのリガンドの進入であるからである(Eichら、前出)。
表21および22は、種々の変異ヘモグロビンについてのさらなるNO結合データを提供する。
表21において、k'nox.ox(μM-1S-1)およびKO2(S-1)についての値は、いくつかの場合、2つの値(例えば、2/6)として表す。これは、これらの変異の組合せの分析の間に時折得られた結果の範囲を反映する。
「w.t.」は、変異体がrHb0.0から識別可能ではなかったことを示す。
(実施例22:血流力学的データ)
ヘモグロビン投与に対する血流力学的応答を、意識のある拘束を受けていないラットにおいて得た。雄性Sprague-Dawleyラットに、実験の少なくとも48時間前に、内在性の動脈カテーテルおよび静脈カテーテルを、長期的に備え付けた。最高負荷用量である350mg/kgのrHb溶液(5g/dl)を、別個の群のラットに、0.5ml/分の速度で静脈注入を介して投与した。ヒト血清アルブミン(HSA、5g/dl)を容量コントロールとしての別の群のラットに投与した。動脈圧を、投与前30分および投与後90分にわたって連続的にモニターした。すべてのデータを平均±標準誤差として示す。rHB1.1と他のヘモグロビンまたはHSAとの間の統計学的比較を反復観測分散解析によって行い、p値≦0.05を有意とみなした。
rHb1.1および3つの対の変異体rHbの各々によって惹起された平均動脈圧(MAP)応答を、意識のあるラットにおいて決定した(図8)。昇圧応答の程度は、NO除去についての速度定数が減少するにつれて減少した。低速のNO酸化において、昇圧応答は、等量の5%ヒト血清アルブミン(HSA)の投与後に観察された値とほぼ同じ低さであった。これらの効果は図9に示すように、単に、遠位ポケット変異体についての低いP50値に起因しているのではなかった。rHb1.1の昇圧効果(p50=32mmHg)は、rHbBethesdaのそれと同一であった。これは、この研究において他のどのヘモグロビンよりも低いP50値(2.7mmHg)を有した。
これらの結果(表20、図8および9)は、動脈平滑筋または実質組織へのO2送達が、観察された昇圧効果の機構ではないようであることを示唆する。rHbBethesdaのP50が充分に低く、そして正常成分の赤血球ヘモグロビンが存在し、そして正常組織pO2レベルを維持する最高負荷の実験において、このヘモグロビンが正常組織への酸素を本質的に送達し得ない。しかし、rHbBethesdaは、rHb1.1の昇圧応答と同一の昇圧応答を誘発し、これは高いP50を有し、そして酸素送達し得る。rHb0.1は、同様の昇圧効果および中間のP50を有する(表20)。この結果は、昇圧応答の機構が一酸化窒素の欠失であり、動脈に対して過剰な酸素送達ではないことを示す。血圧の変化はNO誘導酸化の速度と相関するが酸素親和性とは相関しない(表20)。
各ヘモグロビンの自己酸化速度を決定して、NO除去がメトヘモグロビンによって媒介されるという仮説(Alayashら、Mol.Med.Today 1:122-127(1995);Alayashら、Arch.Biochem.Biophys.303:332-338(1993))を検証した。自己酸化速度と昇圧応答との間には相関はなく(表20)、これは、メトヘモグロビンの産生(またはスーパーオキシドラジカルの付随する生成)が、血圧の上昇を担っている可能性を低くさせる。すべての自己酸化速度は、狭い範囲内に入り、最大値は最小値よりほんの約2倍大きいだけである。rHb4は、血圧の最小効果を有するが、中間の自己酸化速度を有する。さらに、自己酸化のプロセスは非常に遅く、インビトロの半減期は37℃で6時間より大きい一方、昇圧応答はたった5〜10分間で最大に達する。
図8における各時間経過について、注入後の血圧データを平均し、そして結果を、NO誘導酸化の値に対してプロットした。図10に示すように、昇圧応答の程度と一酸化窒素酸化の速度との間に直接の関係が存在する。このグラフは、一酸化窒素除去活性が、細胞外ヘモグロビンの昇圧応答のほぼすべての原因であり得ることを示す。アルブミン容積コントロールについて得られた値を、最低限と設定する場合、NO誘導酸化の速度が0と推測される場合に、残留する昇圧応答は非常に少ない。これらの結果は、昇圧応答の基本的な機構が、オキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンの遠位ヘムポケットにおける一酸化窒素の反応であることを強く示唆する。
従って、ヘモグロビンの一酸化窒素との反応の速度が、ネイティブ遠位ヘムポケットの残基を、より大きな疎水性のアミノ酸で置換することによって有意に減少され得ることが示された。NOのαおよびβサブユニットの両方に対する反応性は、この戦略によって制御され得る。対照的に、ヘムポケットの領域の外側のアミノ酸置換は、そのいくつかが酸素親和性に影響し、そしてNOとの酸化反応には効果を有さないようである。同様に、ヘモグロビンのテトラマー形態を安定化させるためのαサブユニットの融合は、NO反応性には効果を有さない。なぜなら、rHb0.0についてのNO誘導酸化の値が、rHb0.1およびrHb1.1についての値と同じであるからである。
本発明の上記の説明は、例示および説明の目的のための例示である。変更および改変が本発明の精神および範囲から逸脱することなく可能であることは当業者には明白である。以下の請求の範囲は、そのようなすべての変更および改変を包含すると解釈されることが意図される。
図1は、誘導後の16時間までの、ジ-αK158C変異体を有する可溶性のrHbの3つの改変体について可溶性のヘモグロビン(Hb)の蓄積を示す。これらは、rHbジ-αK158C/βN108K(SGE3083;丸)、rHbジ-α K158C/βK82D(SGE3084;四角)、およびrHbジ-α K158C/βN108K、K82D(SGE3172;三角)の誘導後16時間の蓄積である。ヘムの補充を、誘導後0、3、6、9、および12時間に行い、ヘミンの最終濃度を0.63mMにした。各記号は、2つの平均であるSGE3083データを除いて、4つの発酵からの平均を示す。 図2は、可溶性のrHb9.1の蓄積(全ヘム濃度として示す)を、発酵に供給されたヘミンの関数として示す。黒丸は、70個の個々のサンプルのそれぞれを示す。1つのヘム部位は、各αおよびβサブユニット中に存在し、これによってヘモグロビン分子あたり4つ生じる。太線は、ヘモグロビン中のヘム結合部位へのヘミンの3倍モル過剰を示す。点線は、へミンの2.5倍モル過剰を示す。 図3は、へミンの取りこみおよびヘモグロビン産生を示す。黒四角は、rHb分子あたり4ヘム分子と仮定される、rHb蓄積の各レベルについて必要とされるヘミンのμモルにおける発酵培養液からのヘムの損失の個々の測定を示す。 図4は、特定の変異誘発および発現実験に使用されたプラスミドpSGE728を示す。 図5は、pSGE728に挿入されたα遺伝子の部分的な制限マップを示す。 図6は、pSGE728に挿入されたβ遺伝子の部分的な制限マップを示す。 図7は、組換えオキシヘモグロビンのNO誘導性の酸化の規準化した時間経過を示す。組換えヘモグロビン構築物rHb0.0、rHb0.1、rHb1.1、およびrHbBethesdaは全て、それらのヘムポケットに野生型アミノ酸、および60μM-1s-1のNO酸化速度定数を有する。遠位のヘムポケット変異体rHb2、rHb3、およびrHb4は、それぞれ、24、15、および2μM-1s-1の速度定数を有する。混合後の条件は、0.2μMのオキシヘモグロビン(ヘム)、1.0μMのNO、20℃であった。rHb2におけるヘムポケットの置換は、αE11(Val→Phe)、βE11(Val→Phe)、βG8(Leu→Ile)である。rHb3において、置換は、αE11(Val→Leu)、βE11(Val→Phe)であり、そしてrHb4においては、これらはαB10(Leu→Phe)、βE11(Val→Trp)である。 図8は、組換えヘモグロビンおよびヒト血清アルブミン(HSA)の昇圧効果を示す。予備投与値からの平均の動脈圧の変化を、投与からの時間に対してプロットする。全てのヘモグロビンは、αβダイマーへの解離を防ぐために遺伝的に融合されたジαサブユニットを含んだ。各rHbとの一酸化窒素の反応についての速度定数を、各データセットの横に記す。HSAは、5%のHSAを容量コントロールとして投与された場合に、回収された昇圧データを示す。タンパク質用量は、各rHbについて350mg/kgであった。rHb1.1(●、n=6)、rHb2(□、n=6)、rHb3(■、n=6)、rHb4(○、n=6)、5%のHSA(▲、n=9)。 図9は、rHb1.1およびrHbBethesdaに対する昇圧応答を示す。両方の分子が、α/βダイマーへの解離を防ぐために遺伝的に融合されたジアルファサブユニットを含んだ。平均の動脈圧データを、投与からの時間に対してプロットする。rHb1.1は、32mmHgのP50を有し、rHbBethesdaは、2.7mmHgのP50を有する。両方のヘモグロビンが、NOの酸化の速度k’NO,oxについて約60μM-1s-1の値を有する。丸(●)は、rHb1.1(n=6)のデータを示し、そして四角(■)はrHbBethesda(n=6)のデータを示す。2つのヘモグロビンは、NOとの同一の反応速度を有するが、有意に異なるP50を有する。 図10は、昇圧応答の大きさとNO酸化の速度との間の直接的な関係を示す。昇圧応答の大きさは、図8のそれぞれの時間経過についての注入後の値を平均することによって計算し、そして対応するヘモグロビンについてのk’NO,oxの測定値に対してプロットした。y-インターセプトでのデータ点を、等容量の5%のHSAの投与後に収集した。 図11は、組換えヘモグロビンに対する平均の全末梢性耐性(TPR)応答を示す。平均のTPRを、開始20分および投与後の最後の90分で収集したデータから計算した。各場合において使用した用量は、350mgHb/kg体重であった。「モノHb」は、単一の四量体Hb種(MW約64,000)をいい、そして「ジHb」は、遺伝的に融合された2つのHbテトラマー(MW約128,000)を示す。各rHbのNO酸化の速度定数を、横軸に示す。 図12は、3つの組換えヘモグロビンに対するTPR応答を示す。TPRにおける変化を、投与からの時間に対して前投与の割合の値としてプロットする。全てのヘモグロビンは、αβ二量体への解離を妨げるための、遺伝的に融合されたジαサブユニットを含んだ。各rHbとの一酸化窒素の反応についての速度定数を、各データセットの横に記す。ヘモグロビン用量は、常に350mg/kgであった。 図13は、GI運動性の胃を空にするモデルの結果を示す。一酸化窒素の排出または一酸化窒素の合成の阻害が大きければ大きいほど、胃を空にすることが減少する。各タンパク質について使用した用量は、750mgHb/kg体重(10%溶液)であり、そしてL-NAMEについての用量は、10mg/kgであった。
(配列表)

Claims (3)

  1. 以下のαグロビン変異:
    B10(Leu→Trp)およびE7(His→Gln)、
    を含むヒトヘモグロビン;ならびに、
    以下のβグロビン変異:
    G8(Leu→Phe)およびG12(Leu→Trp);
    G8(Leu→Phe)およびG12(Leu→Met);
    E11(Val→Trp)およびE7(His→Gln);
    E11(Val→Leu)およびG8(Leu→Trp);
    E11(Val→Met)およびG8(Leu→Trp);または
    E11(Val→Met)およびG8(Leu→Phe)、
    を含むヒトヘモグロビンより、選択されるヒトヘモグロビン変異体。
  2. 請求項1に記載のヒトヘモグロビン変異体であって、以下のグロビン変異:
    αB10(Leu→Trp)、αE7(His→Gln)およびβE11(Val→Trp)、
    を含むヒトヘモグロビン変異体。
  3. 以下の変異:
    B10(Leu→Trp)およびE7(His→Gln)、
    を含むヒトαグロビンをコードする組換えDNA分子;ならびに、
    以下の変異:
    G8(Leu→Phe)およびG12(Leu→Trp);
    G8(Leu→Phe)およびG12(Leu→Met);
    E11(Val→Trp)およびE7(His→Gln);
    E11(Val→Leu)およびG8(Leu→Trp);
    E11(Val→Met)およびG8(Leu→Trp);または
    E11(Val→Met)およびG8(Leu→Phe)、
    を含むヒトβグロビンをコードする組換えDNA分子より、選択される組換えDNA分子。
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