JP4396363B2 - 石膏ボード - Google Patents

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Description

本発明は、建築資材等に用いられる石膏ボードに関する。
一般に、石膏ボードは、石膏からなる基材(以下石膏基材という)の表面に強度向上等のために表面材を貼り付けた構造となっており、その表面材には多くの場合不燃紙などの紙が使用されていた。しかし、石膏ボードを廃棄する場合、表面材が紙であるとこの紙が腐敗するので、管理型廃棄物として廃棄処理することが必要となり、安定型廃棄物として廃棄処理する場合に比べて処理費用が高くなる。
そこで、安定型廃棄物として廃棄処理可能とするため、表面材として、腐敗しにくいガラス繊維不織布を用いることが提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、ガラス繊維不織布は石膏基材との接着力が紙に比べて弱いので、結果として石膏ボード自体の強度が低下することがあるという問題がある。特に、軽量化のために石膏基材に気泡を混入させた場合、基材とガラス繊維不織布との接着力が一層低下し、石膏ボードの強度が低下する。
石膏基材に対するガラス繊維不織布の接着力を増加させるため、表面材として使用するガラス繊維不織布に多数の穿孔部を設けて石膏スラリーの浸透性を増加させる提案も知られている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法ではガラス繊維不織布に多数の穿孔部を設けるという余計な工程が必要となり、コスト高となる。また、表面材としてボード原紙を用いた石膏ボードにおいて石膏基材との接着力を増すため、ボード原紙にポリビニルアルコール(PVA)を含浸させておく提案が知られている(特許文献3参照)ので、これをガラス繊維不織布の表面材に適用して、ガラス繊維不織布にPVAを含浸させておくとか、或いはガラス繊維不織布におけるバインダーとしてPVAを用いることが考えられる。しかしながら、PVAは湿気を帯びやすく、この湿気による接着力や強度の低下を生じやすいという問題がある。
特開2001−20165号公報 特開2002−285677号公報 特開2000−110091号公報
本発明はかかる状況に鑑みてなされたもので、安定型廃棄物として取り扱うことができるよう表面材をガラス繊維不織布としながら、石膏基材と表面材との接着力が大きく、これによって、表面材としてボード原紙を用いた通常の石膏ボードと同程度以上の強度を持ち、しかも、高湿度の雰囲気下或いは湿潤状態であっても接着力や強度の低下が生じにくい石膏ボードを得ることを課題とする。
上記課題を解決すべくなされた本願請求項1に係る発明は、石膏基材と表面材とを有する石膏ボードにおいて、前記表面材として、ガラス繊維を主体とし、バインダーとしてポリビニルアセタールを含有するガラス繊維不織布を用いる構成としたものである。
請求項2に係る発明は、請求項1の石膏ボードにおいて、前記ポリビニルアセタールとしてポリビニルブチラールを用いる構成としたものである。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2の石膏ボードにおいて、前記ポリビニルアセタールが繊維の形態で前記ガラス繊維不織布内に含有される構成としたものである。
請求項4に係る発明は、請求項1又は2の石膏ボードにおいて、前記ポリビニルアセタールが粉粒体の形態で前記ガラス繊維不織布内に含有される構成としたものである。
請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれか1項記載の石膏ボードにおいて、前記ガラス繊維不織布内における前記ポリビニルアセタールの含有量を5〜50重量%としたものである。
請求項6に係る発明は、請求項1から5のいずれか1項記載の石膏ボードにおいて、前記石膏基材に気泡を混入させて軽量化する構成としたものである。
本発明の石膏ボードは、バインダーとしてポリビニルアセタールを含むガラス繊維不織布を表面材としたことにより、その表面材に対する石膏スラリーの浸透性が良く、このため石膏基材と表面材との接着力が大きく、石膏基材に気泡を混入させて軽量化した場合であっても石膏ボードに必要な大きい強度を確保でき、しかもポリビニルアセタールをバインダーとしているので湿気等の雰囲気下にあっても強度低下が小さいといった効果を有している。また、本発明の石膏ボードは腐敗する材料を用いていないので安定型廃棄物として廃棄処理することができるといった効果も有している。
本発明の石膏ボードに用いる表面材は、ガラス繊維を主体とし、バインダーとしてポリビニルアセタールを含むガラス繊維不織布である。ここで用いるガラス繊維としては、特に限定されず、Eガラス、Cガラス、耐アルカリガラス、高強度Tガラス等の各種のガラスが使用される。ガラス繊維の繊維長、繊維径も特に限定されないが、繊維長としては、あまり短くなると強度が低下するので10mm程度以上とすることが好ましい。また、ガラス繊維不織布を湿式で製造する場合には、繊維長があまり長くなると分散不良を生じやすくなるので、50mm程度以下とすることが好ましい。ガラス繊維の繊維径は、あまり小さいと製造が困難でコスト高となり、一方あまり大きいと毛羽立って作業者の皮膚刺激がひどくなるので、5〜20μm程度とすることが好ましい。
本発明に用いるガラス繊維不織布には、同一繊維長、同一繊維径のガラス繊維のみを用いても良いし、必要に応じ、繊維長や繊維径の異なるガラス繊維を混合して用いても良い。更に、必要に応じ、ガラス繊維に加えて、ガラス繊維以外の繊維、例えば、ポリエステル繊維、ビニロン繊維等を混合して用い、ガラス繊維不織布に所望の物性を確保できるようにしてもよい。ガラス繊維以外の繊維(ただし、バインダーとして混合する繊維は除く)の混合割合としては、30%程度を越えないようにすることが好ましい。また、必要に応じ、繊維以外の形態の材料、例えば、粒状、粉状等の充填材や添加材を混合させてもよい。
本発明で用いるガラス繊維不織布は、バインダーとしてポリビニルアセタールを含有している。このポリビニルアセタールは、バインダーとして作用するのみならず、ガラス繊維不織布に対する石膏スラリーの浸透性を向上させる作用も果たしている。すなわち、石膏ボードの成形に当たって、2枚のガラス繊維不織布の間に石膏スラリーを流し込んだ際に、ガラス繊維不織布内にポリビニルアセタールが存在していると、水に対する親和力によって石膏スラリー内の水をガラス繊維不織布内に引き込む作用を果たし、その水と共に石膏成分も引き込む。このため、ガラス繊維不織布に対する石膏スラリーの浸透性が向上し、得られた石膏ボードにおけるガラス繊維不織布と石膏基材との接着力を大きくでき、これによってガラス繊維不織布で石膏基材を効果的に補強できる。更に、ポリビニルアセタールをバインダーとして含有するガラス繊維不織布は、PVAをバインダーとして含有するガラス繊維不織布に比べて、伸びが大きく且つ柔軟であるので、石膏ボードの表面材として用いた時に、PVA含有ガラス繊維不織布を用いた場合に比べて、石膏ボードの曲げ強度を向上させることができる。かくして、ポリビニルアセタール含有ガラス繊維不織布を表面材として用いることで、石膏基材に対する接着力を向上させ且つ優れた補強効果を発揮することができ、石膏基材に気泡を混入させて軽量化した場合においても、石膏ボードに必要な強度を確保できる。しかも、ポリビニルアセタールはPVAに比べて湿潤状態とした時の強度低下が小さいので、ポリビニルアセタール含有ガラス繊維不織布を表面材として用いた石膏ボードは、高湿度の雰囲気下や湿潤状態とした場合でも強度低下を小さく抑えることができる。
ここで用いるポリビニルアセタールとしては、ポリビニルホルマール(PVF)、ポリビニルブチラール(PVB)等を挙げることができ、なかでも、ポリビニルブチラール(PVB)が、ガラス繊維不織布に対する石膏スラリーの浸透性を向上させる効果と、湿潤状態における強度低下を抑制する効果のバランスの点から好ましい。
ガラス繊維不織布内に含有させるポリビニルアセタールの形態としては、繊維状、粉粒体状、不定形(ガラス繊維不織布の糊剤とした形態)等任意であるが、繊維状或いは粉粒体状とすることが、ガラス繊維不織布の製造が容易となるので好ましい。繊維状或いは粉粒体状のポリビニルアセタールを用いる場合には、これらをガラス繊維と混合し、抄造してシート状とし、次いで、加熱してポリビニルアセタールを軟化温度以上に加熱し且つ全体を加圧してポリビニルアセタールの繊維或いは粉粒体をガラス繊維に接合させることで、ガラス繊維不織布を製造できる。なお、不定形のポリビニルアセタールを用いる場合には、ガラス繊維を抄造してシート状とした後、そのシートに、ポリビニルアセタールを溶剤に溶かした液をスプレーするなどして含浸させることでガラス繊維不織布を製造できる。
ガラス繊維不織布におけるポリビニルアセタールの含有量は、少なすぎるとポリビニルアセタールの効果が得られず、一方多すぎると、ガラス繊維による強度、寸法安定性などの効果が小さくなるので、通常は、5〜50重量%程度に選定し、好ましくは、10〜30重量%とする。
ガラス繊維不織布の目付量としては、30〜300g/m2 程度に選定される。目付量が30g/m2 より少ないと強度が不足する。一方、300g/m2 を越えると、強度は大きくなるものの、石膏ボードの補強に必要な強度を越えているため、強度を大きくしてもあまり意味がなく、しかもコストは増大するため得策とは言えない。このため上記の範囲とすることが好ましい。
ガラス繊維不織布の製造には、公知の方法を適宜採用できるが、容易に均一な不織布を製造しうる湿式製造方法を用いることが好ましい。ただし、繊維状或いは粉粒体状のポリビニルアセタールをバインダーとして用いる場合には、単に抄造しただけではガラス繊維とポリビニルアセタールとがほとんど接着していないので、抄造後のシートを加圧加熱して両者を接着させる工程が必要となる。
本発明の石膏ボードに用いる石膏基材には、従来の石膏ボードに用いている石膏材料を適宜用いればよい。また、軽量化を図る場合には、石膏に気泡を混入させたものを用いることもできる。上記した構成のガラス繊維不織布は石膏スラリーに対する浸透性が良く、石膏基材に対して強固に接着し、優れた補強効果を発揮できるので、石膏基材に気泡を混入させて軽量化を図った場合でも、強度の大きい石膏ボードを得ることができる。
本発明の石膏ボードの製造には、表面材として上記した構成の、すなわちポリビニルアセタールを含有するガラス繊維不織布を用いること以外は、従来と同様な方法を採用しうる。例えば、半水石膏を水に混合し、必要に応じ、発泡剤、整泡剤、減水剤、増強剤、凝結調整剤等も混合して石膏スラリーを作製し、この石膏スラリーを、コンベア等によって水平に搬送されている帯状のガラス繊維不織布の上に流し込み次いでその上に帯状のガラス繊維不織布をかぶせ、次いで加圧ローラ等によって一定厚さに調整し且つ乾燥、固化させ、その後所定の大きさの板状に切断するといった連続成形方法によって製造できる。この成形工程において、石膏スラリーの両面にガラス繊維不織布が接触した状態で石膏スラリーが乾燥、固化されることとなるが、その際、上記したようにガラス繊維不織布に含有されているポリビニルアセタールが石膏スラリーをガラス繊維不織布内に引き込む作用を果たし、石膏がガラス繊維不織布内に含浸した状態で固化する。このため、得られた石膏ボードでは、ガラス繊維不織布の石膏基材に対する接着力が大きく、しかもここに用いたガラス繊維不織布は伸びが大きく石膏ボードが多少湾曲しても破断しないため、石膏ボードの曲げ強度が大きい。また、ポリビニルアセタールをバインダーとしたガラス繊維不織布は湿潤状態としても強度低下が小さいので、得られた石膏ボードも湿潤状態で用いても強度低下が小さいといった特性を備えている。更に、得られた石膏ボードは腐敗する材料をほとんど用いていないので安定型廃棄物として廃棄処理することができ、管理型の廃棄処分が不要となることから廃棄処理に要する費用を削減できる利点も有している。
[実施例]
表面材として、下記仕様のPVB含有ガラス繊維不織布を用い、且つ下記組成の石膏スラリー(1)、(2)を用いて、表1に示す仕様の石膏ボードを製造した。
PVB含有ガラス繊維不織布:日鉄工業株式会社製、HG−40
目付量:40g/m2
ガラス繊維サイズ:繊維径13μm×繊維長25mm
バインダー材料:PVB
バインダー形態:繊維(ガラス繊維と混抄)
バインダー含有量:20重量%
石膏スラリー(1)組成(石膏基材密度600g/m3 用):
半水石膏: 100重量部
水 : 75重量部
発泡剤 : 2.5重量部〔ドデシルベンゼンスルホン酸(ライオン株式会社製、ライポンLH900)1%水溶液〕
増強剤(石膏層):5重量部〔デキストリン(日本コーンスターチ株式会社製、 HIDEX50)〕
石膏スラリー(2)組成(石膏基材密度800g/m3 用):
半水石膏: 100重量部
水 : 75重量部
発泡剤 : 1.25重量部〔ドデシルベンゼンスルホン酸(ライオン株式会社製、ライポンLH900)1%水溶液〕
増強剤(石膏層):5重量部〔デキストリン(日本コーンスターチ株式会社製、 HIDEX50)〕
[比較例]
表面剤として、下記仕様のPVA含有ガラス繊維不織布とボード原紙(坪量200g/m2 、厚さ0.25mm)を用い、且つ実施例と同じ石膏スラリー(1)、(2)を用いて、表1に示す仕様の石膏ボードを製造した。
PVA含有ガラス繊維不織布:オリベスト株式会社製、FBP−040
目付量:40g/m2
ガラス繊維サイズ:繊維径13μm×繊維長25mm
バインダー材料:PVA
バインダー形態:不定形
バインダー含有量:20重量%
得られた石膏ボードについて、密度、厚さ、曲げ強度を測定した。その結果も表1に示す。なお、曲げ試験は、JIS A 6301に準じた。試験体サイズは、幅50mm×支点間距離150mm×厚さ9.5とし、変位速度は、50mm/分で試験した。
Figure 0004396363
表1に示す結果より明らかなように、PVB含有ガラス繊維不織布を表面材として使った石膏ボード(実施例1、2)は、表面材のもつ柔軟さ、粘り強さ等により曲げに対して大きい抵抗力を備えており、PVA含有ガラス繊維不織布を表面材として使った石膏ボード(比較例1、2)に比べて大きい曲げ強度を備えていた。更に、表面材としてほぼ同じ厚さのボード原紙を用いた石膏ボード(比較例3、4)に比べても、実施例1、2の石膏ボードは大きい曲げ強度を備えていた。
表1に示す曲げ強度は乾燥状態のものであるが、PVB含有ガラス繊維不織布は、PVA含有ガラス繊維不織布よりも湿潤状態での強度低下が小さいので、実施例1、2の石膏ボードは湿潤状態においても、比較例1、2の石膏ボードよりかなり大きい曲げ強度を備えているものと思われる。この点を確認するため、表面材として用いるPVB含有ガラス繊維不織布(坪量40g/m2 、200g/m2 )と、PVA含有ガラス繊維不織布(坪量40g/m2 、200g/m2 )について、乾燥状態及び湿潤状態での引張強さ及び伸度を測定した。その結果を表2に示す。ここで、ガラス繊維不織布の乾燥状態及び湿潤状態の養生条件は次の通りとした。
乾燥状態:23℃、50%RHの雰囲気下に24時間以上静置。
湿潤状態:20℃の清水中に30分浸漬、浸漬後清水中より取り出し、ろ紙にて余剰水を拭き取る。
Figure 0004396363
表2に示す結果より明らかなように、PVB含有ガラス繊維不織布はPVA含有ガラス繊維不織布よりも乾燥時強度は少し小さい。湿潤時強度については、PVA含有ガラス繊維不織布ではかなりの強度低下になるが、PVB含有ガラス繊維不織布ではそれに比べて強度低下が小さく、湿潤時強度は逆転している。また、PVBを用いた場合の伸度はPVAを用いた場合に比べて、乾燥時、湿潤時共にかなり大きくなっており、機械的な歪(たわみ)に対してタフな素材であると考えられる。これらの特性により、PVB含有ガラス繊維不織布を用いた石膏ボードは、PVA含有ガラス繊維不織布を用いた石膏ボードに比べて、表1に示すように乾燥時の曲げ強度が大きくなっており、また、湿潤状態とした場合においては、一層その差が拡大するものと推定される。すなわち、PVB含有ガラス繊維不織布を表面材として用いた石膏ボードは、湿潤状態においても強度低下が小さく、かなりの強度を保持できるものと推定される。
以上に本発明の実施形態及び実施例を説明したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で種々変更しうることは言うまでもない。

Claims (6)

  1. 石膏基材と、該石膏基材の表面に接合された表面材を備え、該表面材が、ガラス繊維を主体とし、バインダーとしてポリビニルアセタールを含有するガラス繊維不織布であることを特徴とする石膏ボード。
  2. 前記ポリビニルアセタールとしてポリビニルブチラールを用いたことを特徴とする請求項1記載の石膏ボード。
  3. 前記ポリビニルアセタールが繊維の形態で前記ガラス繊維不織布内に含有されていることを特徴とする請求項1又は2記載の石膏ボード。
  4. 前記ポリビニルアセタールが粉粒体の形態で前記ガラス繊維不織布内に含有されていることを特徴とする請求項1又は2記載の石膏ボード。
  5. 前記ガラス繊維不織布内における前記ポリビニルアセタールの含有量が、5〜50重量%であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の石膏ボード。
  6. 前記石膏基材に気泡を混入させていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の石膏ボード。
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