以下、図面に基づいて、本発明を実施するための形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態である電子内視鏡システムの外観図である。また、図2は、この電子内視鏡システムを概略的に示す構成図である。この電子内視鏡システムは、電子内視鏡10,光源プロセッサ装置20,及び、モニタ30を、備えている。
図2には、電子内視鏡10の詳細な形状が図示されていないが、電子内視鏡10は、体腔内に挿入するための可撓管状の挿入部10aを、備えている。この挿入部10aの先端には、湾曲部が組み込まれ、その基端には、操作部10bが備えられており、その操作部10bには、湾曲部の湾曲量及び湾曲方向を操作するためのアングルノブや各種のスイッチが、備えられている。
また、挿入部10aの先端面には、3つの貫通孔(図9参照)が穿たれており、そのうちの一対の貫通孔には、配光レンズ11及び対物レンズ12がそれぞれ嵌め込まれている。
残りの1つの貫通孔は、鉗子口13として利用される。挿入部10a内には、この鉗子口13と操作部10bに穿たれた鉗子口とを結ぶ細管14が、引き通されている。この細管14は、鉗子や剪刀や凝固電極などの処置具を挿入するための鉗子チャネルとして機能する。
さらに、挿入部10a内には、ライトガイド15が引き通されている。ライトガイド15は、可撓な多数の光ファイバからなり、その先端面は、配光レンズ11に対向している。また、ライトガイド15の基端は、操作部10bの側面から延びた可撓管10c内に、引き通されており、さらに、その可撓管10cの先端に設けられたコネクタCの先端に、固定されている。
さらに、挿入部10a内には、撮像素子16が組み込まれている。撮像素子16は、二次元配列された多数の画素により構成される撮像面を有する単板のエリアイメージセンサであり、その撮像面上には原色系カラーフィルタがオンチップされている。この撮像素子16は、対物レンズ12の光軸上に配置されており、その撮像面は、ほぼ、対物レンズ12の像面に位置している。
この撮像素子16には、少なくとも2本の信号線16a,16bが接続されている。一方の信号線16aは、この撮像素子16の駆動信号を伝送するための電線であり、他方の信号線16bは、この撮像素子16から出力される画像信号を伝送するための電線である。
これら信号線16a,16bは、挿入部10a内及び可撓管10c内に順に引き通されており、一方の信号線16aは、コネクタC内のドライバ17に接続され、他方の信号線16bは、コネクタCの先端に固定されている。ドライバ17は、撮像素子16の駆動信号を生成してその撮像素子16へ出力する回路である。
光源プロセッサ装置20は、タイミングコントロール部21,システムコントロール部22,第1光源部23,第2光源部24,及び、画像処理部25を、備えている。
なお、光源プロセッサ装置20の筐体の側面には、上記コネクタCを嵌め込み可能なコネクタ受けが、備えられている。このコネクタ受けにコネクタCが嵌め込まれると、コネクタC内のドライバ17が図示せぬ信号線を介してタイミングコントロール部21に接続され、電子内視鏡10の操作部10b上の各種スイッチが図示せぬ信号線を介してシステムコントロール部22に接続され、ライトガイド15の基端が第2光源部24に入り込み、信号線16bが画像処理部25に接続される。
タイミングコントロール部21は、各種基準信号を生成してその信号の出力を制御するコントローラであり、光源プロセッサ装置20とコネクタC内のドライバ17とにおける各種処理は、この基準信号に従って進行する。なお、光源プロセッサ装置20では、基準信号が示す各タイミングの二個一組を一周期(例えば1/30秒)として、各部22〜25が処理を進行する。
システムコントロール部22は、光源プロセッサ装置20全体を制御するコントローラである。また、このシステムコントロール部22は、電子内視鏡10の操作部10bに設けられている各種のスイッチや図示せぬ操作盤上のスイッチに接続されており、これらスイッチを通じて入力を受け付けると、その入力に応じた処理を実行する。
また、このシステムコントロール部22は、電子内視鏡10の操作部10b上のスイッチSWが押下されたときにそのスイッチSWから出力される信号を受信すると、後述の度数分布データを画像処理部25から取得し、取得した度数分布データに基づいて、通常観察モード,及び、第1乃至第3特殊観察モードの何れか1つに、観察モードを切り替える。
第1光源部23及び第2光源部24は、何れも、ライトガイド15の基端面に導入する光を射出するためのユニットである。図3は、これら第1及び第2光源部23,24を概略的に示す構成図である。
第1光源部23は、可視光ランプ231,電源回路232,第1回転板233,第1モータ234,ステージ機構235,第2モータ236,移動用ドライバ237,及び、同期用ドライバ238を、備えている。
可視光ランプ231は、約400nm乃至700nmの可視帯域全域の波長成分を持つ可視光をライトガイド15の基端面に向けて発する光源である。電源回路232は、システムコントロール部22からの指示を受けて、可視光ランプ231へ電力を供給し、又はその供給を停止する回路である。
第1回転板233は、幾つかの貫通孔が穿たれている円板と何れかの貫通孔に嵌め込まれた光学フィルタとからなる。図4は、この第1回転板233の正面図である。この第1回転板233の中心とその外周縁との間の輪帯状の領域を、半円弧状の2つの領域に区分して順に説明する。
一方の半円弧状の領域には、1つの貫通孔が穿たれている。この貫通孔は、四分円弧の弓形に湾曲した帯の形状に形成されており、その四分円弧の中心は、第1回転板233の中心に一致している。また、この貫通孔は、この半円弧状の領域を半分に区分したときの片側を、占めている。そして、この貫通孔には、可視光透過フィルタ233aが嵌め込まれている。この可視光透過フィルタ233aは、約400nm乃至700nmの波長帯域の光を透過させる光学フィルタである。
他方の半円弧状の領域には、2つの貫通孔が穿たれている。これら2つの貫通孔は、半円弧の弓形に湾曲した帯の形状に形成されており、それらの半円弧の中心は、何れも、第1回転板233の中心に一致している。また、これら2つの貫通孔は、この半円弧状の領域を占めており、さらに、この領域を径方向において二等分している。そして、これら2つの貫通孔には、第1回転板233の外側から中心に向かう順に、それぞれ、第1及び第2励起光透過フィルタ233b,233cが嵌め込まれている。
第1及び第2励起光透過フィルタ233b,233cは、何れも、生体組織を励起させるための励起光を上記可視光の中から取り出すための光学フィルタである。但し、各フィルタ233b,233cが可視光から取り出せる励起光の波長帯域は、それぞれ異なっている。具体的には、第1励起光透過フィルタ233bは、約400nm乃至450nmの第1波長帯域の光のみを透過させ、第2励起光透過フィルタ233cは、約450nm乃至500nmの第2波長帯域の光のみを透過させる。
第1モータ234は、上述した第1回転板233を回転させるためのアクチュエータであり、その駆動軸は、第1回転板233の中心軸と同軸な状態で、この第1回転板233の中心に固定されている。
ステージ機構235は、ステージ上に設置された物体を一方向にのみ平行移動させるための機構であり、そのステージ上には、第1モータ234が設置されている。このステージ機構235が正逆に駆動されると、第1モータ234の駆動軸に固定された第1回転板233が、可視光ランプ231から射出される可視光の光路に対し、垂直に挿抜される。
第2モータ236は、このステージ機構235を駆動するためのアクチュエータであり、移動用ドライバ237は、システムコントロール部22からの指示を受けて、この第2モータ236の駆動を制御するための回路である。
なお、ステージ機構235には、ステージの位置を検出するための位置センサ237aが取り付けられており、システムコントロール部22は、この位置センサ237aから得られる信号に基づいてステージの移動量を検出し、ステージが所定の位置に達するまで第2モータ236を駆動するように移動用ドライバ237に指示する。
より具体的には、システムコントロール部22は、観察モードを通常観察モードに切り替えた際には、移動用ドライバ237を通じて第2モータ236を制御して、可視光の光路から第1回転板233が引き抜かれるまでステージ機構235を駆動する。
また、このシステムコントロール部22は、観察モードを第1特殊観察モードに切り替えた際には、移動用ドライバ237を通じて第2モータ236を制御して、第1回転板233の回転中に第1励起光透過フィルタ233bが可視光の光路内に繰り返し挿入される位置にこの第1回転板233が配置されるまで、ステージ機構235を駆動する。
また、このシステムコントロール部22は、観察モードを第2特殊観察モードに切り替えた際には、移動用ドライバ237を通じて第2モータ236を制御して、第1回転板233の回転中に第2励起光透過フィルタ233cが可視光の光路内に繰り返し挿入される位置にこの第1回転板233が配置されるまで、ステージ機構235を駆動する。
同期用ドライバ238は、基準信号に従って第1モータ234の駆動を制御するための回路である。なお、第1回転板233の外周縁近傍には、この第1回転板233の回転位相を検出するための光センサ238aが配置されており、同期用ドライバ238は、この光センサ238aから出力される信号に基づいて、第1回転板233の回転位相を基準信号の示すタイミングに同期させる。但し、第1回転板233の回転位相を検出する手段は、光センサ238aではなく、例えば、第1モータ234に組み付けられる検出器(センサー)でも構わない。
この同期用ドライバ238は、第1特殊観察モードの時には、上記一周期中の第1のタイミングに合わせて、第1回転板233の可視光透過フィルタ233aを可視光の光路に挿入し、第2のタイミングに合わせて、第1励起光透過フィルタ233bを可視光の光路に挿入する。
また、同期用ドライバ238は、第2特殊観察モードの時には、第1のタイミングで可視光透過フィルタ233aを可視光の光路に挿入し、第2タイミングで第2励起光透過フィルタ233cを可視光の光路に挿入する。
一方、第2光源部24は、白色光ランプ241,電源回路242,ミラー243,第2回転板244,第3モータ245,ステージ機構246,第4モータ247,移動用ドライバ248,及び、同期用ドライバ249を、備えている。
白色光ランプ241は、約350nm乃至700nmの波長帯域全域の波長成分を持つ白色光を発する光源である。つまり、白色光ランプ241は、可視光と紫外光とを同時に射出する。電源回路242は、システムコントロール部22からの指示を受けて、白色光ランプ241へ電力を供給し、又はその供給を停止する回路である。ミラー243は、白色光ランプ241が発する白色光の光路を直角に折り曲げるための反射板である。
第2回転板244は、貫通孔が穿たれている円板とその貫通孔に嵌め込まれた光学フィルタとからなる。図5は、この第2回転板244の正面図である。この第2回転板244の中心とその外周縁との間の輪帯状の領域を、半円弧状の2つの領域に区分して順に説明する。
一方の半円弧状の領域には、1つの貫通孔が穿たれている。この貫通孔は、四分円弧の弓形に湾曲した帯の形状に形成されており、その四分円弧の中心は、第2回転板244の中心に一致している。また、この貫通孔は、この半円弧状の領域を半分に区分したときの片側を、占めている。そして、この貫通孔には、可視光透過フィルタ244aが嵌め込まれている。この可視光透過フィルタ244aは、約400nm乃至700nmの波長帯域の光を透過させる光学フィルタである。
他方の半円弧状の領域にも、1つの貫通孔が穿たれている。この貫通孔は、半円弧の弓形に湾曲した帯の形状に形成されており、その半円弧の中心は、第2回転板244の中心に一致している。また、この貫通孔は、この半円弧状の領域を占めている。そして、この貫通孔には、第3励起光透過フィルタ244bが嵌め込まれている。この第3励起光透過フィルタ244bは、生体組織を励起させるための励起光を上記白色光の中から取り出すための光学フィルタであり、具体的には、約350nm乃至400nmの第3波長帯域の光のみを透過させる。
第3モータ245は、上述した第2回転板244を回転させるためのアクチュエータであり、その駆動軸は、第2回転板244の中心軸と同軸な状態で、この第2回転板244の中心に固定されている。
ステージ機構246は、ステージ上に設置された物体を一方向にのみ平行移動させるための機構であり、そのステージ上には、白色光ランプ241,ミラー243,及び、第3モータ245が、設置されている。このステージ上では、白色光ランプ241から射出される光の光路内にミラー243が挿入されており、また、第3モータ245の駆動軸に固定されている第2回転板244が白色光ランプ241とミラー243との間の光路に垂直に挿入されている。そして、このステージ機構246が正逆に駆動されると、ミラー243が、第1光源部23の可視光ランプ231とライトガイド15との間の光路に対し、挿抜される。
第4モータ247は、このステージ機構246を駆動するためのアクチュエータであり、移動用ドライバ248は、システムコントロール部22からの指示を受けて、この第4モータ247の駆動を制御するための回路である。
なお、ステージ機構246には、ステージの位置を検出するための位置センサ248aが取り付けられており、システムコントロール部22は、この位置センサ248aから得られる信号に基づいてステージの移動量を検出し、ステージが所定の位置に達するまで第4モータ247を駆動するように移動用ドライバ248に指示する。
より具体的には、システムコントロール部22は、観察モードを通常観察モード並びに第1及び第2観察モードに切り替えた際には、移動用ドライバ248を通じて第2モータ247を制御して、可視光の光路からミラー243が引き抜かれるまでステージ機構246を駆動する。従って、ライトガイド15の基端面には、通常観察モードでは、可視光が常時入射され、第1特殊観察モードでは、可視光と第1波長帯域の励起光が交互に入射され、第2特殊観察モードでは、可視光と第2波長帯域の励起光が交互に入射される。
また、このシステムコントロール部22は、観察モードを第3特殊観察モードに切り替えた際には、移動用ドライバ248を通じて第4モータ247を制御して、ミラー243が可視光の光路内に挿入されるまで、ステージ機構246を駆動する。可視光の光路にミラー243が挿入された際には、可視光ランプ231が射出する可視光は、ミラー243によって遮られ、白色光ランプ241が射出して第2回転板244の何れかのフィルタ244a,244bを透過した光が、ミラー243によって垂直に反射されてライトガイド15の基端面に入射する。
同期用ドライバ249は、基準信号に従って第3モータ245の駆動を制御するための回路である。なお、第2回転板244の外周縁近傍には、この第2回転板244の回転位相を検出するための光センサ249aが配置されており、同期用ドライバ249は、この光センサ249aから出力される信号に基づいて、第2回転板244の回転位相を、基準信号の示すタイミングに同期させる。但し、第2回転板244の回転位相を検出する手段は、光センサ249aではなく、例えば、第3モータ245に組み付けられる検出器(センサー)でも構わない。
この同期用ドライバ249は、第3特殊観察モードの時には、上記一周期中の第1のタイミングに合わせて、可視光透過フィルタ244aを白色光の光路に挿入し、第2のタイミングに合わせて、第3励起光透過フィルタ244bを白色光の光路に挿入する。従って、第3特殊観察モードでは、ライトガイド15の基端面に可視光と第3波長帯域の励起光が交互に入射される。
画像処理部25は、撮像素子16から送られてくる画像信号に各種の処理を施してモニタ30へ出力するユニットである。具体的には、この画像処理部25は、図2に示されるように、初段処理回路251,赤色成分用メモリ252r,緑色成分用メモリ252g,青色成分用メモリ252b,輝度成分生成回路253,第1輝度成分用メモリ254a,第2輝度成分用メモリ254b,患部画像データ生成回路255,スイッチ回路256,加算器257,後段処理回路258,及び、ヒストグラム生成回路259を、備えている。
初段処理回路251は、撮像素子16から送られてくる画像信号に所定の処理を施すための回路である。この初段処理回路251が画像信号に施す処理としては、高周波成分除去,増幅,ブランキング,クランピング,ホワイトバランス,ガンマ補正,アナログデジタル変換,及び、色分離がある。この初段処理回路251は、上述した処理を画像信号に施すことにより、赤色(R),緑色(G),青色(B)の各色成分の画像データを生成する。
なお、この初段処理回路251は、上記一周期中の第1のタイミングで生成した各色成分の画像データを、各色成分用メモリ252r,252g,252bへ出力し、第2のタイミングでは、各色成分用メモリ252r,252g,252bへは出力しない。また、この初段処理回路251は、その一周期中の第1及び第2のタイミングで順次生成した各色成分の画像データを、何れも輝度成分生成回路253へ出力する。
各色成分用メモリ252r,252g,252bは、初段処理回路251から出力されるRGBの各色成分画像データを一旦格納するためのメモリである。これら各メモリ252r,252g,252bは、基準信号に従ったタイミングにて、各色成分画像データを出力する。但し、R成分画像データは、加算器257へ出力されるが、G成分画像データ及びB成分画像データは、後段処理回路258へ出力される。
輝度成分生成回路253は、初段処理回路251から出力されるRGBの各色成分画像データに基づいて、YCrCbの色空間における輝度成分(Y成分)の画像データを生成する回路である。つまり、この輝度成分生成回路253は、概念的には、RGBの各色成分画像データにおける互いに同じ位置にある画素の階調値(R,G,B)をY=0.30R+0.59G+0.11Bの式に代入して演算することにより、その位置の画素の輝度値Yを算出する処理を行う。
なお、この輝度成分生成回路253は、上記一周期中の第1のタイミングで初段処理回路251から出力された各色成分画像データに基づくY成分画像データを、第1輝度成分用メモリ254aへ出力し、第2のタイミングで初段処理回路251から出力された各色成分画像データに基づくY成分画像データを、第2輝度成分用メモリ254bへ出力する。
各輝度成分用メモリ254a,254bは、何れも、Y成分画像データを一旦格納するためのメモリである。これら各メモリ254a,254bは、基準信号に従ったタイミングにて、各Y成分画像データを患部画像データ生成回路255へ出力する。
患部画像データ生成回路255は、各輝度成分用メモリ254a,254bから出力される各Y成分画像データに基づいて患部画像データを生成する回路である。より具体的には、この患部画像データ生成回路255は、先ず、両Y成分画像データの階調幅を等しくさせる正規化処理をした後、両Y成分画像データにおける互いに同じ位置にある画素の階調値の差分の絶対値を算出し、各画素の差分の絶対値がそれ自身の階調値とされた画像データを患部画像データとして生成する。
スイッチ回路256は、患部画像データ生成回路255と加算器257との間を開閉するための回路である。このスイッチ回路256は、システムコントロール部22によって制御されることにより、通常観察モードの時には、患部画像データを加算器257へ出力させず、第1乃至第3特殊観察モードの時には、患部画像データを加算器257へ出力させる。
加算器257は、患部画像データが入力されたときのみ、この患部画像データをR成分画像データに加算する回路である。つまり、この加算器257は、通常観察モードの時には、R成分画像データをそのまま後段処理回路258へ素通りさせ、第1乃至第3特殊観察モードの時には、患部画像データを加算したR成分画像データを後段処理回路258へ送る。
後段処理回路258は、加算器257から出力されるR成分画像データと、G成分用メモリ252g及びB成分用メモリ252bからそれぞれ出力されるG成分画像データ及びB成分画像データとを、モニタ出力用の画像信号に変換するための回路である。この後段処理回路258において各色成分画像データに施される処理としては、デジタルアナログ変換,エンコーディング,及び、インピーダンスマッチングなどがある。この後段処理回路258は、上述した処理を各色成分画像データに施すことにより、セパレートビデオ信号や複合ビデオ信号を生成し、モニタ30へ出力する。
モニタ30は、光源プロセッサ装置20から出力されるビデオ信号を受信すると、そのビデオ信号に基づいてカラー画像を表示する。
ヒストグラム生成回路259は、度数分布データを生成するための回路である。具体的には、このヒストグラム生成回路259は、システムコントロール部22からの要求を受けて、第2輝度成分用メモリ254bからY成分画像データを取得し、取得したY成分画像データについて、同じ階調値を持つ画素の個数を例えば0乃至255の階調値毎に計数することにより、度数分布データを生成する。
ところで、このシステムコントロール部22は、操作部10b上のスイッチSWからの信号を受信すると、所定の励起光が試験的に挿入部10aの先端から射出されるように第1及び第2光源部23,24を制御するとともに、その励起光の射出中に、上記のヒストグラム生成回路259に対して度数分布データを要求して受け取る処理を、実行する。
具体的には、システムコントロール部22は、まず、第2光源部24の移動用ドライバ248を制御して、ミラー243を可視光の光路から引き抜くとともに、第1光源部23の移動用ドライバ237及び同期用ドライバ238を制御して、第1回転板233の可視光透過フィルタ233aと第1励起光透過フィルタ233bとを可視光の光路に交互に挿入させる。
すると、ライトガイド15の基端面には、可視光と第1波長帯域の励起光とが交互に導入されるため、配光レンズ11からは、可視光と第1波長帯域の励起光が射出される。このとき、撮像素子16は、光が入射すると否とに拘わらず、画像信号を生成し続ける。
一方、ライトガイド15の基端面への可視光と第1波長帯域の励起光の導入を開始した後、システムコントロール部22は、画像処理部25内のヒストグラム生成回路259に度数分布データの送信を要求する。
ヒストグラム生成回路259は、この要求を受けて、第2輝度成分用メモリ254bからY成分画像データを或るタイミングで取得する。但し、第1輝度成分用メモリ254aからはY成分画像データを取得しない。従って、ヒストグラム生成回路259は、挿入部10aの先端から励起光が射出されたときに撮像素子16によって生成された画像データに対して、処理を行い、可視光が射出されたときのそれに対しては、処理を行わない。
このヒストグラム生成回路259は、Y成分画像データを取得すると、取得したY成分画像データに基づいて度数分布データを生成する。図6及び図7は、この度数分布データに基づいて作成された線グラフを示す。図6は、50よりも低い側の階調値にピークを持つ線グラフの例を示しており、図7は、50よりも高い側の階調値にピークを持つ線グラフの例を示している。そして、ヒストグラム生成回路259は、このような度数分布データを生成すると、それをシステムコントロール部22へ送信する。
システムコントロール部22は、度数分布データを取得すると、第1光源部23の移動用ドライバ237及び同期用ドライバ238を制御して、可視光と第1波長帯域の励起光のライトガイド15への導入を停止させる。
続いて、システムコントロール部22は、取得した度数分布データにおける最大の画素数(ピーク)を持つ階調値が閾値を超えているか否かを判別する。なお、本実施形態では、閾値は50に設定されている。従って、システムコントロール部22は、図6の線グラフに示されるような度数分布データを取得した場合には、最大画素数を持つ階調値が閾値を超えていないと判別し、図7の線グラフに示されるような度数分布データを取得した場合には、最大画素数を持つ階調値が閾値を超えていると判別する。
このシステムコントロール部22は、最大画素数を持つ階調値が閾値を超えていないと判別したときには、図示せぬRAM内に記憶されている第1試験光フラグを“0”に切り替え、最大画素数を持つ階調値が閾値を超えていると判別したときには、第1試験光フラグを“1”に切り替える。
次に、システムコントロール部22は、第1光源部23の移動用ドライバ237及び同期用ドライバ238を制御して、第1回転板233の可視光透過フィルタ233aと第2励起光透過フィルタ233cとを可視光の光路に交互に挿入させる。
すると、ライトガイド15の基端面には、可視光と第2波長帯域の励起光とが交互に導入されるため、配光レンズ11からは、可視光と第2波長帯域の励起光が射出される。このとき、撮像素子16は、光が入射すると否とに拘わらず、画像信号を生成し続ける。
一方、ライトガイド15の基端面への可視光と第2波長帯域の励起光の導入を開始した後、システムコントロール部22は、画像処理部25内のヒストグラム生成回路259に度数分布データの送信を要求する。このヒストグラム生成回路259は、この要求を受けて、第1波長帯域の励起光を射出したときと同様に、第2輝度成分用メモリ254bからY成分画像データを或るタイミングで取得し、このY成分画像データに基づいて度数分布データを生成し、これをシステムコントロール部22へ送信する。
システムコントロール部22は、度数分布データを取得すると、第1光源部23の移動用ドライバ237及び同期用ドライバ238を制御して、可視光と第1波長帯域の励起光のライトガイド15への導入を停止させ、続いて、取得した度数分布データにおける最大の画素数(ピーク)を持つ階調値が閾値を超えているか否かを判別する。
そして、システムコントロール部22は、図6のように最大画素数を持つ階調値が閾値を超えていないと判別したときには、図示せぬRAM内に記憶されている第2試験光フラグを“0”に切り替え、図7のように最大画素数を持つ階調値が閾値を超えていると判別したときには、第2試験光フラグを“1”に切り替える。
システムコントロール部22は、このようにして、第1波長帯域及び第2波長帯域の励起光を試験光として射出することによって、第1試験光フラグ及び第2試験光フラグを決定した後、この第1及び第2試験光フラグの組み合わせに基づいて、観察モードを切り替える。
図8は、第1及び第2試験光フラグの組み合わせと観察モードとの関係を示す表である。図8に示されるように、システムコントロール部22は、第1及び第2試験光フラグの組み合わせが“0”と“0”であった場合には、観察モードを通常観察モードに切り替え、“0”と“1”であった場合には、観察モードを第1特殊観察モードに切り替え、“1”と“0”であった場合には、観察モードを第2特殊観察モードに切り替え、“1”と“1”であった場合には、観察モードを第3特殊観察モードに切り替える。
システムコントロール部22は、このようにして観察モードを切り替えた後、第1及び第2光源部23,24を制御して、観察モードに応じた光をライトガイド15の基端面に導入させる。
具体的には、システムコントロール部22は、通常観察モードに切り替えた時には、各移動用ドライバ237,248を制御して、第1回転板233とミラー243を可視光の光路から引き抜く。
また、システムコントロール部22は、第1特殊観察モードに切り替えたときには、各移動用ドライバ237,248を制御して、ミラー243を可視光の光路から引き抜くとともに第1回転板233をその光路に挿入し、その後、同期用ドライバ238を制御して、可視光透過フィルタ233aと第1励起光透過フィルタ233bとを可視光の光路に交互に挿入させる。
また、システムコントロール部22は、第2特殊観察モードに切り替えたときには、各移動用ドライバ237,248を制御して、ミラー243を可視光の光路から引き抜くとともに第1回転板233をその光路に挿入し、その後、同期用ドライバ238を制御して、可視光透過フィルタ233aと第2励起光透過フィルタ233cとを可視光の光路に交互に挿入させる。
また、システムコントロール部22は、第3特殊観察モードに切り替えたときには、移動用ドライバ248を制御して、ミラー243を可視光の光路に挿入し、その後、同期用ドライバ249を制御して、可視光透過フィルタ244aと第3励起光透過フィルタ244bとを白色光の光路に交互に挿入させる。
システムコントロール部22は、このようにして、観察モードに応じた光のライトガイド15の基端面への導入を開始した後、図示せぬ操作盤に観察モード切替終了の旨を表示する。
上述した電子内視鏡システムには、電子内視鏡10の挿入部10aの先端に着脱自在に装着するための3つのキャップが、用意されている。これら3つのキャップは、互いに異なる光学特性を持つ光学フィルタをそれぞれ有しているが、何れも、同じ形状に形成されている。そこで、以下では3つのキャップを区別することなく、それらキャップ及びその装着構造について説明する。
図9は、このキャップ40及びその装着構造を説明するための斜視図である。また、図10は、このキャップ40の背面図であり、図11は、図10のA−A線に沿って切断されたキャップ40を図10の下方から見たときの断面側面図であり、図12は、挿入部10aの先端へのキャップ40の装着方法を説明するための説明図である。
電子内視鏡10の挿入部10aは、円柱状に形成されている。但し、図9に示されるように、挿入部10aの先端から操作部10bに向かった所定幅の部分10dは、それ以外の部分より若干量だけ外径が細くなるように、形成されている。以下、外径が細くなっている部分10dを、“細径突出部”と表記する。
この細径突出部10dは、図9に示されるように、Dカット形状に形成されており、その外周面のうち、平坦な部分(Dカット形状におけるカット面)10p以外には、その周方向に沿って、断面半円状の一本のキー溝10kが形成されている。なお、配光レンズ11が嵌め込まれた貫通孔の口,対物レンズ12が嵌め込まれた貫通孔の口,及び、鉗子口13は、細径突出部10dの先端面に形成されている。
これに対し、キャップ40は、扁平な有底の略円筒状に形成されており、挿入部10aの外径とほぼ同じ外径を有している。但し、キャップ40の内周面は、円柱状では無く、図10に示されるように、Dカット形状に形成されている。また、図11に示されるように、キャップ40の内周面のうち、平坦な部分(Dカット形状におけるカット面)40p以外には、その周方向に沿って、断面半円状の一本のキー40kが突出形成されている。そして、キャップ40本体は、外力により僅かに変形され得る樹脂などの材料によって製造されている。
また、キャップ40の底部には、3つの貫通孔が穿たれており、そのうちの一対の貫通孔には、光学フィルタ41,42が嵌め込まれている。一方の光学フィルタ41は、約350nm乃至700nmを含む全ての波長帯域の光を透過させる透過フィルタである。他方の光学フィルタ42は、所定の波長帯域の光だけを除去する除去フィルタである。残りの1つの貫通孔43には、何も嵌め込まれていない。
以上のように挿入部10aの先端とキャップ40とが構成されるので、キャップ40を挿入部10aの先端に装着する際には、以下のようにすればよい。すなわち、挿入部10aの細径突出部10dにおける平坦面10pと、キャップ40の内側の平坦面40pとが接触するようにして、図12に示されるように、挿入部10aの細径突出部10dをキャップ40の内側に嵌め込めば良い。
細径突出部10dをキャップ40の奥まで押し込むと、キャップ40のキー40kが細径突出部10dのキー溝10kに嵌り込み、キャップ40が挿入部10aの先端に堅牢に固定される。
そして、このようにキャップ40が挿入部10aの先端に固定された場合、配光レンズ11の前方に透過フィルタ41が位置し、対物レンズ12の前方に除去フィルタ42が位置し、鉗子口13の前方に貫通孔43が位置する。このとき、挿入部10aをその前方から見ると、透過フィルタ41は配光レンズ11と重なり、除去フィルタ42は対物レンズ12と重なり、貫通孔43は鉗子口13と重なっている。
なお、キャップ40の内周面と細径突出部10dとは、ともにDカット形状であることから、キャップ40が細径突出部10dに固定された際には、キャップ40は回転不能となっている。従って、挿入部10aをその前方から見たときに、透過フィルタ41が配光レンズ11からずれた位置に存在していたり、除去フィルタ42が対物レンズ12からずれた位置に存在していたり、貫通孔43が鉗子口13からずれた位置に存在していたりすることがない。
挿入部10aの先端とキャップ40とがこのように構成されているため、配光レンズ11を通過した光は、必ず、透過フィルタ41を透過することとなり、また、対物レンズ12へ入射しようとする光は、必ず、除去フィルタ42を透過することとなる。
なお、キャップ40の底部の内面において、除去フィルタ42の嵌め込まれた貫通孔の縁には、筒状の突出部44が、キャップ40と一体に形成されている。そして、細径突出部10dがキャップ40の奥まで押し込まれると、この突出部44の先端面は、細径突出部10dの先端面に当接し、この突出部44は、除去フィルタ42と対物レンズ12とに挟まれた空間を密閉する。これにより、配光レンズ11から射出される光が除去フィルタ42と対物レンズ12との間に侵入することが、防止されている。
電子内視鏡システムに用意される3つのキャップは、何れも、上述した形状に形成されており、透過フィルタ41が透過させる光の波長帯域は、3つのキャップとも共通しているが、除去フィルタ42が除去する励起光の波長帯域は、キャップ毎に異なっている。
第1のキャップの除去フィルタは、第1特殊観察モードの時に第1光源部23から射出される励起光(400nm〜450nm)と同じ第1波長帯域の光を除去する。第2のキャップの除去フィルタは、第2特殊観察モードの時に第1光源部23から射出される励起光(450nm〜500nm)と同じ第2波長帯域の光を除去する。第3のキャップの除去フィルタは、第3特殊観察モードの時に第2光源部24から射出される励起光(350nm〜400nm)と同じ第3波長帯域の光を除去する。
なお、上述したように、3つのキャップ40は、何れも同じ形状に形成されているが、このように同形状のキャップが3つ用意されていると、操作者が、キャップの外観から、除去フィルタの波長特性を区別できない虞がある。そこで、図9に示されるように、各キャップの側面には、それらを個別に識別するための識別情報が記載されている。
本実施形態の電子内視鏡システムが、以上のように構成されるので、この電子内視鏡システムの操作者は、以下に示されるような手順により、体腔内を観察することができる。
まず、操作者は、電子内視鏡10と光源プロセッサ装置20とモニタ30とを接続し、光源プロセッサ装置20とモニタ30の電源を投入する。続いて、操作者は、電子内視鏡10の挿入部10aの先端からキャップ40を取り外した状態で、この挿入部10aの先端を何にも対向させずに、操作部10bのスイッチSWを押下する。
すると、配光レンズ11からは、可視光と第1波長帯域の励起光が試験光として交互に射出される。しかし、挿入部10aの先端は何にも対向していないことから、対物レンズ12に入射する光が殆ど無く、撮像素子16にも光が殆ど入射しない。そのため、低い側の階調値にピークを持つ図6のような度数分布データが、ヒストグラム生成回路259からシステムコントロール部22へ引き渡される。これにより、システムコントロール部22は、最大の画素数を持つ階調値が閾値を超えていないと判別し、第1試験光フラグを“0”に切り替える。
この後、配光レンズ11からは、可視光と第2波長帯域の励起光が試験光として交互に射出される。しかし、挿入部10aの先端は何にも対向していないことから、やはり、対物レンズ12に入射する光が殆ど無く、撮像素子16にも光が殆ど入射しない。そのため、低い側の階調値にピークを持つ図6のような同数分布データが、ヒストグラム生成回路259からシステムコントロール部22へ引き渡される。これにより、システムコントロール部22は、最大の画素数を持つ階調値が閾値を超えていないと判別し、第2試験光フラグを“0”に切り替える。
この結果、システムコントロール部22は、第1及び第2試験光フラグが共に“0”であることに基づいて、観察モードを通常観察モードに切り替え(図8参照)、電子内視鏡10の挿入部10aの先端からは、可視光が連続的に射出されるようになり、図示せぬ操作盤には、観察モード切替終了の旨が、表示される。
このようにして観察モードが通常観察モードに切り替えられた後、操作者が、挿入部10aを体腔内に挿入すると、その体腔内が照明される。そして、体腔壁の表面で反射された照明光のうち、対物レンズ12を透過した光は、撮像素子16の撮像面に入射する。このとき、この撮像面には、体腔内の像(通常像)が、対物レンズ12によって形成される。
撮像面上に形成された通常像は、撮像素子16によって撮像され、画像信号が画像処理部25へ出力される。画像処理部25では、初段処理回路251が画像信号に所定の処理を施してRGBの各色成分の画像データを生成する。これら各色成分画像データは、患部画像データが加算されることなく、後段処理回路258へ出力され、後段処理回路258においてモニタ出力用の画像信号であるビデオ信号に変換される。そして、そのビデオ信号がモニタ30に出力される。
このため、モニタ30には、通常像が、カラーの通常観察画像として表示される。操作者は、この通常観察画像を見ながら、体腔壁の状態を観察することができる。
さらに、操作者は、モニタ30上の通常観察画像の観察を通じて選択した部位に対して、第1波長帯域の励起光を利用して得られる特殊観察画像の観察を行う。具体的には、操作者は、電子内視鏡10の挿入部10aを一旦体腔外に引き抜き、挿入部10aの先端に第1のキャップを装着し、蛍光を発することのない白い紙に挿入部10aの先端を対向させ、操作部10bに設けられているスイッチSWを操作する。
すると、配光レンズ11からは、可視光と第1波長帯域の励起光とが試験光として交互に射出される。これら可視光と第1波長帯域の励起光は、透過フィルタ41を透過して、白い紙に交互に照射される。
そして、この白い紙で反射された第1波長帯域の励起光のうちの除去フィルタ42に入射した励起光は、その除去フィルタ42によって約400nm乃至450nmの波長成分を除去される。つまり、第1波長帯域の励起光は、この除去フィルタ42において完全に除去される。
このため、撮像素子16には、第1波長帯域の励起光が入射しないので、低い側の階調値にピークを持つ図6のような度数分布データが、ヒストグラム生成回路259からシステムコントロール部22へ引き渡される。これにより、システムコントロール部22は、最大の画素数を持つ階調値が閾値を超えていないと判別し、第1試験光フラグを“0”に切り替える。
この後、配光レンズ11からは、可視光と第2波長帯域の励起光が試験光として交互に射出される。これら可視光と第2波長帯域の励起光は、透過フィルタ41を透過して、白い紙に交互に照射される。
そして、この白い紙で反射された第2波長帯域の励起光のうちの除去フィルタ42に入射した励起光は、その除去フィルタ42によって約400nm乃至450nmの波長成分を除去される。つまり、第2波長帯域の励起光は、この除去フィルタ42を素通りする。
このため、撮像素子16には、第2波長帯域の励起光が入射するので、高い側の階調値にピークを持つ図7のような度数分布データが、ヒストグラム生成回路259からシステムコントロール部22へ引き渡される。これにより、システムコントロール部22は、最大の画素数を持つ階調値が閾値を超えていると判別し、第2試験光フラグを“1”に切り替える。
この結果、システムコントロール部22は、第1試験光フラグが“0”であって第2試験光フラグが“1”であることに基づいて、観察モードを第1特殊観察モードに切り替え(図8参照)、電子内視鏡10の挿入部10aの先端からは、可視光と第1波長帯域の励起光とが交互に射出されるようになり、図示せぬ操作盤には、観察モード切替終了の旨が、表示される。
このようにして観察モードが第1特殊観察モードに切り替えられた後、操作者が、再度、挿入部10aの先端を体腔内に挿入し、操作部10bに備えられているアングルノブを操作して、モニタ30上の通常観察画像の観察を通じて選択した部位に対し、挿入部10aの先端を対向させる。
体腔内に照射された可視光は、体腔内を照明する。そして、体腔壁の表面で反射された照明光の一部が、第1のキャップの除去フィルタ42へ向かうが、その除去フィルタ42に入射した照明光は、その除去フィルタ42によって第1波長帯域の波長成分を除去された後、対物レンズ12を介して撮像素子16の撮像面へ入射する。このとき、この撮像面には、体腔内の像(通常像)が、対物レンズ12によって形成される。
一方、体腔内に照射された第1波長帯域の励起光は、体腔壁下の生体組織を励起するとともに、体腔壁の表面で反射される。そして、体腔壁下の生体組織が発した蛍光と体腔壁の表面で反射された励起光とを含む光の一部が、第1のキャップの除去フィルタ42へ向かうが、その除去フィルタ42に入射した光は、その除去フィルタ42によって第1波長帯域の波長成分を除去される。つまり、この除去フィルタ42を蛍光だけが透過する。図13は、第1のキャップの除去フィルタ42を透過し得る波長帯域を示す分光図である。この除去フィルタ42を透過した蛍光は、対物レンズ12を介して撮像素子16の撮像面へ入射する。このとき、この撮像面には、体腔内の像(蛍光像)が、対物レンズ12によって形成される。
撮像面上に交互に形成された通常像と蛍光像は、撮像素子16によって撮像され、それらの画像信号が画像処理部25へ順次出力される。画像処理部25では、初段処理回路251が画像信号に所定の処理を施し、第1のタイミングでは、通常像に基づく各色成分画像データ(通常画像データ)を各色成分用メモリ252r,252g,252bと輝度成分生成回路253へ出力し、第2のタイミングでは、蛍光像に基づく各色成分画像データ(蛍光画像データ)を輝度成分生成回路253へ出力する。
輝度成分生成回路253は、通常像に基づく各色成分画像データを第1のタイミングで取得すると、輝度成分画像データに変換して第1輝度成分用メモリ254aへ出力し、蛍光像に基づく各色成分画像データを第2のタイミングで取得すると、輝度成分画像データに変換して第2輝度成分用メモリ254bへ出力する。そして、第1及び第2輝度成分用メモリ254a,254b内の輝度成分画像データに基づいて、患部画像データ生成回路255が、患部画像データを生成する。
そして、通常像に基づく各色成分画像データ中のR成分画像データにその患部画像データが加算された後、各色成分画像データが、後段処理回路258においてモニタ出力用の画像信号であるビデオ信号に変換され、このビデオ信号がモニタ30に出力される。
このため、モニタ30には、通常像と蛍光像とに基づいて生成された特殊像が、カラーの特殊観察画像として表示される。操作者は、この特殊観察画像を見ながら、体腔壁の輪郭や凹凸を特定できるとともに、その画像の中において斑点状や塊状として赤色にて示された部分により、相対的に弱い蛍光を発する生体組織の集合体、すなわち、腫瘍や癌などの病変が生じている可能性の高い部位を、認識することができる。
さらに、操作者は、必要がある場合に、体腔内に照射する励起光の波長帯域を第2波長帯域に変更して、特殊観察画像の観察を行う。具体的には、操作者は、電子内視鏡10の挿入部10aを一旦体腔外に引き抜き、挿入部10aの先端から第1のキャップを取り外して第2のキャップをその先端に装着し、蛍光を発することのない白い紙に挿入部10aの先端を対向させ、操作部10bに備えられているスイッチSWを押下する。
すると、可視光と第1波長帯域の励起光が、試験光として、挿入部10aの先端から白い紙に交互に照射され、白い紙で反射された第1波長帯域の励起光の一部が、第2のキャップの除去フィルタ42を素通りして、撮像素子16に入射する。このため、図7のような度数分布データが、ヒストグラム生成回路259からシステムコントロール部22へ引き渡され、第1試験光フラグが、“1”に切り替わる。
その後、可視光と第2波長帯域の励起光が、試験光として、挿入部10aの先端から白い紙に交互に照射され、白い紙で反射された第2波長帯域の励起光の一部が、第2のキャップの除去フィルタ42に除去され、撮像素子16には光が入射しない。このため、図6のような度数分布データが、ヒストグラム生成回路259からシステムコントロール部22へ引き渡され、第2試験光フラグが、“0”に切り替わる。
この結果、システムコントロール部22は、第1試験光フラグが“1”であって第2試験光フラグが“0”であることに基づいて、観察モードを第2特殊観察モードに切り替え(図8参照)、電子内視鏡10の挿入部10aの先端からは、可視光と第2波長帯域の励起光とが交互に射出されるようになり、図示せぬ操作盤には、観察モード切替終了の旨が、表示される。
このようにして観察モードが第2特殊観察モードに切り替えられた後、操作者が、再度、挿入部10aの先端を体腔内に挿入し、操作部10bに備えられているアングルノブを操作して、モニタ30上の通常観察画像の観察を通じて選択した部位に対し、挿入部10aの先端を対向させる。
体腔内に照射された可視光は、体腔内を照明する。そして、体腔壁の表面で反射された照明光の一部が、第2のキャップの除去フィルタ42へ向かうが、その除去フィルタ42に入射した照明光は、その除去フィルタ42によって第1波長帯域の波長成分を除去された後、対物レンズ12を介して撮像素子16の撮像面へ入射する。このとき、この撮像面には、体腔内の像(通常像)が、対物レンズ12によって形成される。
一方、体腔内に照射された第2波長帯域の励起光は、体腔壁下の生体組織を励起するとともに、体腔壁の表面で反射される。そして、体腔壁下の生体組織が発した蛍光と体腔壁の表面で反射された励起光とを含む光の一部が、第2のキャップの除去フィルタ42へ向かうが、その除去フィルタ42に入射した光は、その除去フィルタ42によって第2波長帯域の波長成分を除去される。つまり、この除去フィルタ42を蛍光だけが透過する。図14は、第2のキャップの除去フィルタ42を透過し得る波長帯域を示す分光図である。この除去フィルタ42を透過した蛍光は、対物レンズ12を介して撮像素子16の撮像面へ入射する。このとき、この撮像面には、体腔内の像(蛍光像)が、対物レンズ12によって形成される。
この結果、撮像面には、通常像と蛍光像とが交互に形成される。そして、励起光の波長帯域が第1波長帯域である場合と同様の処理が、画像処理部25内で行われた後、カラーの特殊観察画像が、モニタ30に表示される。これにより、操作者は、励起光の波長帯域を第2波長帯域へ変更したときの特殊観察画像を観察することができる。
さらに、操作者は、必要がある場合に、体腔内に照射する励起光の波長帯域を第3波長帯域に変更して、特殊観察画像の観察を行う。具体的には、操作者は、電子内視鏡10の挿入部10aを一旦体腔外に引き抜き、挿入部10aの先端から第2のキャップを取り外して第3のキャップをその先端に装着し、蛍光を発することのない白い紙に挿入部10aの先端を対向させ、操作部10bに備えられているスイッチSWを押下する。
すると、可視光と第1波長帯域の励起光が、試験光として、挿入部10aの先端から白い紙に交互に照射され、白い紙で反射された第1波長帯域の励起光の一部が、第2のキャップの除去フィルタ42を素通りして、撮像素子16に入射する。このため、図7のような度数分布データが、ヒストグラム生成回路259からシステムコントロール部22へ引き渡され、第1試験光フラグが、“1”に切り替わる。
その後、可視光と第2波長帯域の励起光が、試験光として、挿入部10aの先端から白い紙に交互に照射され、白い紙で反射された第2波長帯域の励起光の一部が、第2のキャップの除去フィルタ42を素通りして、撮像素子16に入射する。このため、図7のような度数分布データが、ヒストグラム生成回路259からシステムコントロール部22へ引き渡され、第2試験光フラグが、“1”に切り替わる。
この結果、システムコントロール部22は、第1及び第2試験光フラグが共に“1”であることに基づいて、観察モードを第3特殊観察モードに切り替え(図8参照)、電子内視鏡10の挿入部10aの先端からは、可視光と第3波長帯域の励起光とが交互に射出されるようになり、図示せぬ操作盤には、観察モード切替終了の旨が、表示される。
このようにして観察モードが第3特殊観察モードに切り替えられた後、操作者が、再度、挿入部10aの先端を体腔内に挿入し、操作部10bに備えられているアングルノブを操作して、モニタ30上の通常観察画像の観察を通じて選択した部位に対し、挿入部10aの先端を対向させる。
体腔内に照射された可視光は、体腔内を照明する。そして、体腔壁の表面で反射された照明光の一部が、第3のキャップの除去フィルタ42へ向かうが、その除去フィルタ42に入射した照明光は、その除去フィルタ42によって第3波長帯域の波長成分を除去された後(つまり素通りした後)、対物レンズ12を介して撮像素子16の撮像面へ入射する。このとき、この撮像面には、体腔内の像(通常像)が、対物レンズ12によって形成される。
一方、体腔内に照射された第3波長帯域の励起光は、体腔壁下の生体組織を励起するとともに、体腔壁の表面で反射される。そして、体腔壁下の生体組織が発した蛍光と体腔壁の表面で反射された励起光とを含む光の一部が、第3のキャップの除去フィルタ42へ向かうが、その除去フィルタ42に入射した光は、その除去フィルタ42によって第3波長帯域の波長成分を除去される。つまり、この除去フィルタ42を蛍光だけが透過する。図15は、第3のキャップの除去フィルタ42を透過し得る波長帯域を示す分光図である。この除去フィルタ42を透過した蛍光は、対物レンズ12を介して撮像素子16の撮像面へ入射する。このとき、この撮像面には、体腔内の像(蛍光像)が、対物レンズ12によって形成される。
この結果、撮像面には、通常像と蛍光像とが交互に形成される。そして、励起光の波長帯域が第1波長帯域である場合と同様の処理が、画像処理部25内で行われた後、カラーの特殊観察画像が、モニタ30に表示される。これにより、操作者は、励起光の波長帯域を第3波長帯域へ変更したときの特殊観察画像を観察することができる。
以上に説明したように、本実施形態の電子内視鏡システムによれば、操作者は、3つのキャップ40の中から1つを選んで、電子内視鏡10の挿入部10aの先端にそのキャップ40を装着し、白い紙をその先端に対向させ、操作部10b上のスイッチSWを押下するだけで、観察モードを特殊観察モードに切り替えることができる。然も、挿入部10aの先端に装着されているキャップを取り外して、そのキャップとは別のキャップを挿入部10aの先端に装着し、白い紙をその先端に対向させ、操作部10b上のスイッチSWを押下するだけで、観察モードを別の特殊観察モードに切り替えることができる。従って、操作者は、特殊観察に使用される励起光の波長帯域を簡単に変更することができる。
また、このようにして観察モードが何れかの特殊観察モードに切り替えられると、挿入部10aの先端からは、挿入部10aの先端に装着されているキャップ40の有する除去フィルタが除去できる光の波長帯域と同じ波長帯域の励起光が、射出される。そのため、撮像素子16へ向かう光の中からは、励起光の波長帯域と同じ波長帯域の光が、必ず除去される。従って、どのキャップ40が挿入部10aの先端に装着されても、体腔壁の表面で反射された励起光により形成される体腔内の像(迷光像)が蛍光像に混ざることが防止されることとなる。
また、本実施形態の電子内視鏡システムによれば、励起光の波長帯域に拘らない場合には、3つのキャップ40の中から識別情報を見ずに適当に選択した1つのキャップ40を挿入部10aの先端に装着するだけで済む。このようにキャップ40を適当に選択した場合でも、そのキャップ40に対応する波長帯域の励起光が使用される特殊観察モードに切り替えられる。従って、操作者にとっては、電子内視鏡システムの操作に気を取られることなく、体腔内の観察に集中することができる。
さらに、本実施形態の電子内視鏡システムによれば、操作者は、電子内視鏡10の挿入部10aの先端からキャップ40を取り外して操作部10b上のスイッチSWを押下するだけで、観察モードを通常観察モードに簡単に切り替えることができる。