JP4390239B2 - エアバッグカバー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に乗員を座席側に拘束して操縦装置や計器盤等との二次衝突から保護するように設計されたエアバック装置の収納カバーに関する。
【0002】
【従来の技術】
エアバッグシステムは原理的には高速移動体の衝突を関知する衝突感知装置とエアバッグ装置とで構成され、後者のエアバッグ装置はエアバッグ、エアバッグを膨張させるガスを発生させるガス発生器、エアバッグとガス発生器を収納する収納カバー及びガス発生器と収納カバーを取付ける取付具(リテーナー)からなる。
【0003】
エアバッグ装置は高速移動体中の乗員の前面に取り付けられ、衝突事故等によって衝突検知装置が作動すると、ガス発生器から瞬間的にガスが発生し、ガス発生器、収納カバー及び取付具によって囲まれて形成される空間内に折り畳まれて収納されているエアバッグにガスが充填され、エアバッグに充填されたガスの圧力により収納カバーが展開し、展開によって得た開口部からエアバッグが乗員の前面に向けて瞬間的に放出、膨張することにより、乗員を座席側に拘束し、その結果乗員が操縦装置や計器盤等に衝突して負傷することを防ぐことが出来る。
【0004】
従って、エアバッグ装置の収納カバーは衝突事故等が発生しガス発生器が動作した際には、乗員を傷つける危険性のある破片を飛散することなく確実に展開しバッグを瞬間的に放出するものでなくてはならない。かかるエアバッグ装置の収納カバーとしては特開昭50−127336号公報、特開昭55−110643号公報、特開昭52−116537号公報、特開平1−202550号公報或いは特開平5−038996号公報等に各種提案されている。
【0005】
特開昭50−127336号公報や特開昭55−110643号公報にはウレタン樹脂や弾性材料から形成されており、しかも破断予定部分以外の部分には繊維ネットや金属網等の補強材が埋め込まれた構造の収納カバーが提案されている。これらの提案では使用される樹脂材料が脆弱であるので、エアバッグ装置が動作したときの破片飛散防止のために補強材を埋め込む構造を採らざるを得ず、収納カバーを製造するとき補強材をセットするのに手間がかかり、また精度良く予定位置に補強材が埋め込まれている成形体を得ることが難しく、更にまた、反応射出成形によるウレタン樹脂の場合型内で十分に反応が進むための時間をとらなくてはならず、低生産速度、低生産収率である欠点を有する。
【0006】
特に、自動車の生産台数は年間一千万台にも及び、生産速度、生産収率が低いことは致命的である。特開昭52−116537号公報には、脆化温度−50℃以下、曲げ剛性1,000〜3,000kg/cm2の熱可塑性エラストマーから形成され、破断予定部分を脆弱構造にした収納カバーが提案されている。この提案によれば、補強材を埋め込まない構造であるので生産性は改善されているが、材料の曲げ剛性が1,000〜3,000kg/cm2と高いため、特に低温領域での性能が十分ではなく、低温で展開した場合破断予定部以外で破壊してしまい、カバーの飛散が起こり乗員を傷つける恐れが有る。
【0007】
特開平1−202550号公報には、JISK6301−A型硬度が30〜70である軟質樹脂からなる表層と弾性を有する硬質樹脂からなるコア層とが一体成形され、コア層にカバー開裂用スリットが設けられた構造の収納カバーが提案されている。この提案の収納カバーは乗員に適度に軟らかい感触を与えるものであるが、コア層と表層の二層成形が必須であり、そのために射出機構を二式持った複雑で高価な成形機を必要とする大きな欠点がある。
【0008】
特開平5−038996号公報には、内側にエアバッグ収納用凹部を有すると共に脆弱な構造の破断予定部分を有し、水素添加スチレン−共役ジエンブロック共重合体、ゴム用可塑剤、オレフィン系樹脂及び添加剤からなり、JISK6301A型硬度が60以上85以下である熱可塑性エラストマー組成物の射出成形体であるエアーバッグ装置の収納カバーが提案されている。この提案の収納カバーは乗員に適度に軟らかい感触を与え、生産性も高いが、低温下での曲げ剛性が比較的大きく、場合によっては低温で脆化して展開性能の確実性を失う可能性もある。さらに、表面の耐傷付性が必ずしも良好でなく、硬質ウレタン塗装が必要であり、必ずしもコスト的に有利ではない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
エアバッグ装置の収納カバーが具備すべき要件の第一は、確実に展開すると共に安全性を有することである。即ち、エアバッグ装置が動作した際に収納カバーは乗員を傷つける危険性のある破片を飛散することなく展開し、バッグを瞬間的に放出しなくてはならない。
【0010】
第二は広い温度範囲での適応性である。自動車の場合、使用される地域、季節、状態により収納カバーの温度は往々−40℃〜90℃になるが、低温で脆化して確実性を失ったり、高温で軟質変形したりしてはならない。第三は熱や光に対する耐久性である。自動車の場合、収納カバーはフロントガラスを通して入射する太陽光に照射される部位に往々取り付けて使用されるため、光劣化し確実性を失ってはならない。
【0011】
第四は高い生産性と安い生産コストである。この要件は大量に生産される自動車用エアバッグ装置では特に重要である。特に、材料コストを低減するためにはカバーの薄肉化が重要であり、そのためには剛性のある程度高い材料が望まれる傾向に有る。第五は感触である。乗員が収納カバーに触れたときに適度に軟らかい感触を与え、ひいては安全運転に重要な心理的安らかさを醸し出す効果の大きいものが好ましい。第六は外観上の問題で、表面の傷付難さである。
【0012】
すなわち、本発明の課題は安全確実性、広い温度範囲での適応性、耐久性、好ましい感触を有し、高生産性と低コスト(薄肉化)を実現でき、しかも表面が傷つきにくい収納カバーを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、内側にエアバッグ収納用凹部を有すると共に脆弱な構造の破断予定部を有し、ショアD硬度が20〜70である特定の熱可塑性エラストマーを射出成形法により成形して得られる収納カバーが、前記課題を解決するものであることを見い出し本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、
内側にエアバッグ収納用凹部を有すると共に脆弱な構造の破断予定部を有する熱可塑性エラストマーの射出成形体からなるエアバッグ装置の収納カバーであって、該熱可塑性エラストマーが次の(A)及び(B)成分からなる、ショアD硬さ20〜70の熱可塑性エラストマー組成物であり、
(A)ポリウレタンエラストマー:100重量部
(B)
(B−1)ポリプロピレン系重合体(プロピレンを85重量%以上含む):10〜60重量%
(B−2)エチレン−プロピレン系共重合体ゴム(プロピレンを75重量%以下含む):40〜90重量%
の混合物であって、該混合物中のエチレン−プロピレン系共重合体ゴムの平均分散粒径が2μm以下、該混合物の曲弾性率が20〜700MPa、ショアD硬さが20〜60であるポリプロピレン混合物:5〜900重量部
かつ、(A)成分のポリウレタンエラストマーが次の(a)、(b)及び(c)成分を共重合してなるポリウレタンエラストマーであることを特徴とする、エアバッグ装置の収納カバー。
(a)下記式(2)、及び(3)の繰り返し単位からなり、末端基が水酸基である脂肪族ポリカーボネートジオールを含み、上記(2)と(3)の割合が(2)/(3)=10/90〜90/10(モル比)である高分子量ポリオール(但し、式中nは炭素数4または5の整数のいずれか一方)。
【化1】
(b)ポリイソシアネート
(c)ポリイソシアネートと反応しうる活性水素を2個有する鎖延長剤
【0016】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
本発明の(a)成分であるポリウレタンエラストマー(以下TPUと略記)としては、使用する直鎖ポリオールに対応して分類され、ポリエステル系(カプロラクトン系、アジペート系)、ポリカーボネート系、ポリエーテル系、のいずれも使用可能である。これらの内で、機械的強度が高く、耐熱老化性及び耐加水分解性のバランスのとれているポリカーボネート系が望ましい。
【0017】
ポリカーボネート系ポリウレタンエラストマーとしては、次の(a)、(b)及び必要に応じて(c)成分を共重合してなる、ショアD硬さ20〜70のポリウレタンエラストマーが好ましい。
【0018】
(a)下記式(1)の繰り返し単位からなり、末端基が水酸基であるポリカーボネートジオール(但し、式中Rは炭素数2〜10の脂肪族または脂環族炭化水素基を表す)。
【0019】
【化4】
【0020】
(b)ポリイソシアネート
(c)ポリイソシアネートと反応しうる活性水素を2個有する鎖延長剤
【0021】
本発明のポリウレタンエラストマーの(a)成分に使用されるポリカーボネートジオールは、Schell著、Polymer Review 第9巻、第9〜20ページ(1964年)に記載された種々の方法により脂肪族および/または脂環式ジオールから合成される。
【0023】
特に、本発明のエアバッグカバーに好適なポリカーボネートジオールとしては、1,4−ブタンジオールまたは1,5−ペンタンジオールのいずれか一方と、1,6−ヘキサンジオールから合成される共重合ポリカーボネートジオールが、得られるエアバッグカバーの低温特性に優れるので好ましい。ポリマー中の繰り返し単位である、1,4−ブタンジオールまたは1,5−ペンタンジオールのいずれか一方と、1,6−ヘキサンジオールの割合は、10/90〜90/10、好ましくは、20/80〜80/20、さらに好ましくは30/70〜70/30である。
【0024】
本発明に用いられるポリカーボネートジオールの平均分子量の範囲は、通常数平均分子量で500〜5000であり、好ましくは、1000〜3000、さらに好ましくは1500〜2500のものが使用され、そのポリマー末端は、実質的にすべてヒドロキシル基であることが望ましい。
【0025】
本発明においては、先に示したジオールの他に、1分子に3個以上のヒドロキシル基を持つ化合物、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、等の少量を用いる事により多官能化したポリカーボネートを用いたポリウレタンも含まれる。
【0026】
次に、本発明のポリウレタンエラストマーの(b)成分に使用されるポリイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、及びその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、粗製TDI、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、粗製MDI等の公知の芳香族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレンジイソシアネート等の公知の芳香脂環族ジイソシアネート;4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水添XDI)等の公知の脂肪族ジイソシアネート、及びこれらのイソシアネート類のイソシアヌレート化変性品、カルボジイミド化変性品、ビウレット化変性品等である。
【0027】
又、本発明のポリウレタンエラストマーの共重合成分(c)として必要により用いられる適当な鎖延長剤としては、ポリウレタン業界における、常用の鎖延長剤が包含される。岩田敬治監修最近ポリウレタン応用技術CMC1985年第25〜27ページ記載の、公知の水、低分子ポリオール、ポリアミン等が含まれる。本発明に用いられる脂肪族ポリカーボネートと共に、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリウレタンの用途に応じて、公知のポリオールを併用してもよい。公知のポリオールとして、今井嘉夫、ポリウレタンフオーム高分子刊行会1987年第12〜23ページに記載の公知のポリエステル、ポリエーテルカーボネート等のポリオールがある。
【0028】
具体的には、低分子ポリオールとしては通常分子量が300以下のジオールが用いられる。例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオールが挙げられる。
【0029】
また、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン等、が挙げられる。好適には、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールが用いられる。
【0030】
本発明のポリウレタンエラストマーを製造する方法としては、ポリウレタン業界で公知のウレタン化反応の技術が用いられる。例えば、該ポリオールと有機ポリイソシアネートを常温から200℃で反応させることにより、NCO末端のポリウレタンプレポリマーが生成する。
【0031】
又、該ポリオールとポリイソシアネート及び必要に応じて鎖延長剤を用いて、熱可塑性のポリウレタンエラストマーを製造する事が出来る。これらの製造に於いては三級アミンや錫、チタンなどの有機金属塩等に代表される公知の重合触媒「例えば、吉田敬治著(ポリウレタン樹脂)日本工業新聞社刊第23−32頁(1969年)に記載」を用いる事も可能である。又、これらの反応を溶媒を用いておこなってもよく、好ましい溶剤として、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、エチルセルソルブ等がある。
【0032】
又、本発明のポリウレタンエラストマー製造に当り、イソシアネート基に反応する活性水素を一つだけ含有する化合物、例えばエチルアルコール、プロピルアルコール等の一価アルコール、及びジエチルアミン、ジnプロピルアミン等の二級アミン等を末端停止剤として使用することができる。
【0033】
本発明の、ポリカーボネートポリオールを使用したポリウレタンエラストマーは、他のポリウレタンエラストマーに比べて、柔軟性、弾性回復に優れるばかりではなく、加水分解性が極めて良好であるため、常時手に触れるエアバッグカバーに使用した場合、耐汗性が優れるのため好適である。
【0034】
次に、本発明の(B)成分であるポリプロピレン混合物は、例えば少なくとも二段以上の逐次重合により得られるプロピレン共重合体混合物である。第一工程においてプロピレンの単独重合体またはプロピレンとα−オレフィンの共重合体(プロピレンを85重量%以上含む)またはエチレンプロピレン共重合体(プロピレンを85重量%以上含む)を重合して成分(B−1)を生成し、次の工程以降においてエチレン−プロピレン(プロピレンを75重量%以下含む)またはエチレン−プロピレン−α−オレフィン(少量のジエンを含んでも良い)共重合体(プロピレンを75重量%以下含む)を重合して成分(B−2)を生成する。
【0035】
第一工程のプロピレンの重合は、得られるポリプロピレンのアイソタクチック指数が80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上であるような量のエチレンまたはα−オレフィン、例えばブテン−1、ペンテン−1、4−メチル−ペンテン−1,ヘキセン−1、およびオクテン−1またはそれらの組み合わせの存在下で行うことができる。
【0036】
第二工程以降のエチレン−プロピレン共重合体またはエチレン−プロピレン−αオレフィン共重合体を重合するために使用するモノマーはプロピレンとエチレンおよび/またはα−オレフィン(例えばブテン−1、ペンテン−1、4−メチル−ペンテン−1,ヘキセン−1、およびオクテン−1またはそれらの組み合わせ)である。第二工程以降の共重合体の重合は、共役または共役でないジエン、例えば、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、およびエチレデン−ノルボルネン−1の存在下で行うことができる。ジエンは存在する時には典型的には第二工程以降に使用する全モノマーの重量に対して0.5〜10重量%である。
【0037】
成分(B)のポリプロピレン組成物中の(B−1)の量は10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%、(B−2)の量は40〜90重量%、好ましくは50〜85重量%である。
【0038】
また、成分(B)のポリプロピレン混合物中に共重合された全エチレン量は15〜60重量%、好ましくは17〜45重量%、さらに好ましくは20〜35重量%である。また(B)のポリプロピレン混合物中に共重合された全α−オレフィンの量は0〜30重量%、好ましくは3〜20重量%、さらに好ましくは5〜10重量%である。
【0039】
混合物(B)は、示差走査熱量分析法(DSC)で測定すると、120℃よりも高い温度、好ましくは140℃よりも高い温度において存在する少なくとも1個の溶融ピークを示す。さらに、混合物(B)は曲げ弾性率20〜700MPa、好ましくは50〜300Mpa、さらにこのましくは70〜200MPaである。また、混合物(B)のショアD硬さは20〜60、好ましくは30〜50である。
【0040】
また混合物(B)のメルトフローレイト(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重に従って測定した値。以下MFRと略記する)は10〜60g/10分、好ましくは12〜50g/10分、さらに好ましくは15〜40g/10分である。MFRが10g/10分未満ではエラストマー組成物の溶融粘度が高く、エラストマー組成物の成形加工性(流動性)が低下し、また成形品の外観が悪化する(フローマークの発生)ので好ましくない。また、MFRが10g/10分未満では、エラストマー組成物の耐スクラッチ性も低下するので好ましくない。一方、MFRが60g/10分を超えるとエラストマー組成物の強度、耐熱性が低下するので好ましくない。
【0041】
混合物(B)中に分散する、エチレン−プロピレン系共重合体ゴムの平均分散粒径は2μm以下、好ましくは1.5μm以下である。ゴムの平均分散粒径が2μmを越えると、エラストマー組成物の耐スクラッチ性が極端に低下するので好ましくない。
【0042】
成分(B)のポリプロピレン混合物の重合に使用する触媒は、チーグラー・ナッタ型触媒である。好ましい触媒は塩化マグネシウム上に担持されたチタン化合物および電子供与体化合物(内部供与体)を含有する固体触媒成分とトリアルキルアルミニウム化合物および電子供与体化合物(外部供与体)との反応生成物である。触媒の調整方法、成分(B)の重合方法としては、例えば、特開平3−205439号公報、特開平6−25367号公報、特開平6−25489号公報等が挙げられる。
【0043】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中の成分(B)のポリプロピレン混合物の配合量は、TPU成分(A)100重量部に対し、5〜900重量部、好ましくは15〜500重量部、さらに好ましくは30〜200重量部である。成分(B)のポリプロピレン混合物の配合量が900重量部を越えるとゴム弾性が低下し、また低温特性が悪化するので好ましくない。また、成分(B)のポリプロピレン混合物の配合量が5重量部未満では、熱可塑性エラストマー組成物の高温特性が低下し、また成形外観が悪化する(フローマークが発生する)ので好ましくない。
【0044】
なお、本発明し用いる成分(B)のポリプロピレン混合物としては、Adflex、Hifax(Montell社製、Catalloy TPOシリーズ)等の名称で容易に入手することができる。
【0045】
また、本発明のエラストマー組成物には、必要に応じてポリオレフィン系樹脂を添加することができる。具体的に添加できるポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等があげられる。ポリエチレン樹脂としては低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体等があげられる。エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体の場合、共重合体中のα−オレフィンとしてはプロピレン、ブテン−1、イソブテン、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1等があげられる。また、α−オレフィンの割合は30重量%以下のものが用いられる。
【0046】
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレン単独重合体またはプロピレンと炭素数2〜8のα−オレフィンとの共重合体である(以下プロピレン系樹脂と略記する)。プロピレンと炭素数2〜8のα−オレフィンとの共重合体の場合、共重合体中のα−オレフィンとしてはエチレン、ブテン−1、イソブテン、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1等があげられる。また、α−オレフィンの割合は30重量%以下のものが用いられる。これらのプロピレン系樹脂は、従来公知の方法で合成することができ、例えばチーグラー・ナッタ型触媒を用いて合成されるプロピレン単独重合体、またはランダムあるいはブロックのプロピレンとα−オレフィンとの共重合体があげられる。
【0047】
本発明に用いられる添加剤としては少なくとも酸化防止剤、光安定剤及び熱安定剤が用いられることが望ましい。これらの酸化防止剤としては燐酸、亜燐酸、の脂肪族、芳香族又はアルキル基置換芳香族エステルや次亜燐酸誘導体、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;フェノール系誘導体特にヒンダードフェノール化合物、チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステル等のイオウを含む化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物を用いることができる。
【0048】
これらは単独で用いても2種以上組み合わせて用いても構わない。これら安定剤の添加量はポリエーテルエステルブロック共重合体100重量部に対し、0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.2〜2重量部が望ましい。通常、酸化防止剤は一次、二次、三次老化防止剤に分けることが出来る。特に一次老化防止剤としてのヒンダードフェノール化合物としてはIrganox1010(商品名:チバガイギー社製)、Irganox1520(商品名:チバガイギー社製)等が好ましい。二次老化防止剤としての燐系化合物はPEP−36、PEP−24G、HP−10(いずれも商品名:旭電化(株)製)Irgafos168(商品名:チバガイギー社製)が好ましい。さらに三次老化防止剤としての硫黄化合物としてはジラウリルチオプロピオネート(DLTP)、ジステアリルチオプロピオネート(DSTP)等のチオエーテル化合物が好ましい。
【0049】
また紫外線吸収剤・光安定剤としてはベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。光安定剤としてはヒンダードアミン化合物のようなラジカル捕捉型光安定剤が好適に用いられる。
【0050】
また必要に応じて得られる組成物に可塑剤の添加を行なっても良い。かかる可塑剤の例としてジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジエチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジイソノニルフタレート等のフタル酸エステル類:トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリメチルヘキシルホスフェート、トリス−クロロエチルホスフェート、トリス−ジクロロプロピルホスフェート等の燐酸エステル類:トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸エステル類、ジペンタエリスリトールエステル類、ジオクチルアジペート、ジメチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジオクチルアゼレート、ジオクチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、メチルアセチルリシノケート等の脂肪酸エステル類:ピロメリット酸オクチルエステル等のピロメリット酸エステル:エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル等のエポキシ系可塑剤:アジピン酸エーテルエステル、ポリエーテル等のポリエーテル系可塑剤:液状NBR、液状アクリルゴム、液状ポリブタジエン等の液状ゴム:プロセスオイル等を挙げることが出来る。
【0051】
これら可塑剤は単独、あるいは2種以上組み合わせて使用することが出来る。可塑剤の添加量は要求される硬度、物性に応じて適宜選択されるが、組成物100重量部当り0〜50重量部が好ましい。
【0052】
また、物性を損なわない範囲でカオリン、シリカ、マイカ、二酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、クレー、カオリン、ケイソウ土、アスベスト、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維等の充填剤や補強材:ステアリン酸亜鉛やステアリン酸ビスアマイドのような滑剤ないしは離型剤:着色のためのカーボンブラック、群青、チタンホワイト、亜鉛華、べんがら、紺青、アゾ顔料、ニトロ顔料、レーキ顔料、フタロシアニン顔料等の染顔料:オクタブロモジフェニル、テトラブロモビスフェノールポリカーボネート等の難燃化剤:発泡剤:エポキシ化合物やイソシアネート化合物等の増粘剤:シリコーンオイルやシリコーン樹脂等、公知の各種添加剤を用いることが出来る。
【0053】
本発明の熱可塑性エラストマーのショアD硬さは好ましくは20〜70、さらに好ましくは25〜50の範囲である。ショアD硬さが20未満では、高温での展開性能、耐スクラッチ性が劣るので好ましくない。また、ショアD硬さが70を越えると、得られるエアバッグカバーの低温展開性能、ソフト感が不足するので好ましくない。
【0054】
また、本発明の熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(230℃、2.16kg加重の値、以下MFRと略記)は0.5〜100g/10分、好ましくは5〜50g/10分、さらに好ましくは10〜30g/10分である。MFRが0.5g/10分未満では、射出成形性に劣り、ショートショットとなってしまうので好ましくない。また、MFRが100g/10分を越えると、機械物性(破断強度、破断伸び等)や摩耗性、等に劣るばかりではなく、展開性能も悪化するので好ましくない。
【0055】
本発明のエアバック装置の収納カバーを構成する熱可塑性エラストマー組成物は、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、さらにこれらを組み合わせたもの等により、溶融混練後、造粒することにより容易にペレットの形態で得られる。この熱可塑性エラストマー組成物を一般の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーの成形に使用される汎用の単純な射出成形機で成形することにより高い生産性で収納カバーを得ることが出来る。
【0056】
次に、図に従って、本発明の収納カバーの構造を具体的に説明する。図1は本発明による運転席用エアバッグ装置の収納カバーの一例を示す斜視図である。図5は本発明による助手席用エアバッグ装置の収納カバーの一例を示す斜視図である。図8は本発明による助手席用エアバッグ装置の収納カバーの他の例を示す図6と同様の断面を示す模式図である。図9は図8に示す収納カバーの図7と同様の断面を示す模式図である。
【0057】
収納カバーの天面は、図1に示すようなH字状、図5に示すようなコの字状、その他X字状、放射状、円弧状、U字状等に設定できる。また、収納カバーの側壁は、図8、9に示すように設定することが出来る。脆弱な構造の破断予定部分は、収納カバーの設定された破断予定線に沿った部分にV字状溝、U字状溝、コの字状溝、その他の断面形状の溝を設けたり他の部分の肉厚より薄くしたり、スリットや切込みを断続的に設けることにより実現できる。また、収納カバー表面をシボ加工することにより表面の耐傷付性をさらに改善することが出来る。
【0058】
【実施例】
以下に実施例、比較例に基づき本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
<評価方法>
はじめに実施例及び比較例において用いられた物性評価項目と、その評価方法について以下に説明する。
【0059】
〔メルトフローレート(MFR)〕
各熱可塑性エラストマー組成物のペレット約5gを、真空乾燥器にて70℃で約12時間真空乾燥させた後、直ちに、直径2.090mm、長さ8mmのオリフィスにより、荷重2.16kg、測定温度230℃のL条件でMFRを測定した。
【0060】
〔表面硬度〕
ショアD硬度を25℃で測定した。
【0061】
〔曲げ弾性率(MPa)〕
JISK7203に従って、長さ125mm×幅12.5mm×長さ3mmの射出成形試験片を用い、曲げ速度2mm/分の条件で、−50℃、−40℃、−25℃、0℃、23℃、100℃の各温度において曲げ弾性率を測定した。
【0062】
〔破断強度(MPa)、破断伸び(%)〕
JISK6301に従って、長さ20mm×幅3mm×厚さ2mmの射出成形試験片を用い、25℃で、ヘッドスピード20mm/分の条件で引張試験を行うことにより測定した。
【0063】
〔表面耐傷付性〕
荷重を340gとして鉛筆硬度(9B〜9H)にて評価した。
【0064】
〔耐汗性〕
射出試験片を人工汗液(人工汗液組成;NaCl7g、メチルアルコール500cc、尿素1g、乳酸4g、蒸留水500cc)に常温にて30日間浸漬した。試験片を取り出し、磨耗試験を行った後の外観(JIS K7204磨耗輪による試験後の外観)を3等級で評価した。
3;磨耗輪による傷が全く認められない
2;磨耗輪による傷がわずかに認められる
1;磨耗輪による傷が明らかに認められる
【0065】
〔収納カバーの展開性能〕
鉄製の取付金具(リテーナー)にエアバッグと収納カバーを取り付け、更にガス発生器を取り付けてエアバッグ装置を組み立てる。次にこのエアバッグ装置を展開温度(−40℃、室温あるいは90℃)の空気恒温槽に入れ、内温が安定してから更に2時間放置した後エアバッグを取り出し、架台に取付け通電し展開する(空気恒温槽からエアーバッグ装置を取り出してから一分以内に通電する。)。収納カバーが破断片を発生することなく破断予定部分で開裂しエアバッグが展開すれば収納カバーの展開性は○、一部破断予定部以外に亀裂が発生した場合を△、破断片を発生した場合を×とした。
【0066】
〔成形加工性〕
射出成形機にて、長さ150mm、幅100mm、厚み2mmの平板を下記の条件にて成形した。その成形体を目視にてフローマーク、艶等の外観を観察し、良好なものを○、やや不良なものを△、不良なものを×とした。シリンダー温度C1:200℃、C2:210℃、C3:210℃、ノズル温度:200℃、射出速度:低速、金型温度:40℃
脂肪族コポリカーボネートジオールの合成方法を下記に参考例として示す。
【0067】
参考例1
デイクソンパッキン3φを充填した直径10mm、長さ300mmの蒸留塔及び温度計、攪拌機付きの3リットルフラスコに、エチレンカーボネート(EC)970g(11モル)、1,6−ヘキサンジオール(HDL)650g(5.5モル)、1,5−ペンタンンジオール(PDL)570g(5.5モル)を加え20torrの減圧下に加熱攪拌し、内温が150℃になるようにコントロールした。蒸留塔の塔頂より共沸組成のECとエチレングリコール(以下EGと略す)を溜出させながら20時間反応を行った。次に蒸留塔を取り外して、減圧度を7torrにして、未反応のECとジオールを回収した。未反応物の溜出の終了後に内温を190℃にし、その温度を保ったままジオールを溜出させることにより自己縮合反応を行い分子量を上昇させた。4時間後、GPC分析により分子量2000のポリマーを得た。収量は740gであり水酸基価は56mgKOH/gであった。このポリマーをpc−aと略す。
【0068】
参考例2、3
ジオールとして1,4−ブタンジオール(BDL)、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールを用い、表1に示した各量とした以外は、参考例1と同様な方法で脂肪族コポリカーボネートジオール(pc−b、pc−c)を得た。各々の分子量を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
実施例および比較例にて使用した原材料、および評価方法は以下のとおりである。
1.ポリウレタンエラストマー(以下TPUと略記)成分
(A)−1(TPU−1):
参考例1で得たpc−a200g、ヘキサメチレンジイソシアネート67.2gを攪拌装置、温度計、冷却管の付いた反応器に仕込み、100℃で4時間反応し末端NCOのプレポリマーを得た。該プレポリマーに鎖延長剤の1,4−ブタンジオール30g、触媒としてジブチルスズジラウリレート0.006gを加えてニーダー内蔵のラボ用万能押出機((株)笠松化工研究所製LABO用万能押出機KR−35型)で140℃で60分反応後、押出し機にてペレットとした。ウレタンエラストマーのショアD硬さは39、MFRは24であった。
【0071】
(A)−2(TPU−2):
ポリカーボネートジオールとしてpc−bを用いた以外は、TPU−1の合成方法と同様に重合しウレタンエラストマーを得た。得られたウレタンエラストマーのショアD硬さは40、MFRは20であった。
【0072】
(A)−3(TPU−3):
ポリカーボネートジオールとしてpc−cを用いた以外は、TPU−1の合成方法と同様に重合しウレタンエラストマーを得た。得られたウレタンエラストマーのショアD硬さは43、MFRは23であった。
【0073】
(A)−4(TPU−4):
ポリカーボネートジオールの替わりに、ポリカプロラクトンポリオール(ダイセル製、プラクセル220、分子量2,000)を用いた以外は、TPU−1の合成方法と同様の方法で合成した。得られたウレタンエラストマーのショアD硬さは45、MFRは27であった。
【0074】
(A)−5(TPU−5):
ミラクトラン E190(日本ミラクトラン社製、MDI/アジペート系TPU)、ショアD硬さ45、MFR;28
【0075】
成分(B):
固体触媒の調整;MgCl2が完全に溶解するまで無水MgCl2および無水エタノール49.5g、ワセリン油100mlおよびシリコンオイル100mlを120℃にて窒素雰囲気化にて攪拌した。次いで、この混合物を、ワセリン油150mlおよびシリコンオイル150mlを予め入れた1500mlのオートクレーブ中に移した後、120℃、3000rpmにて3分間攪拌した。この混合物を冷却されたn−ヘプタン1000ml中、攪拌下にて添加し、MgCl2・3EtOHの球状固体を析出させた(平均粒径30〜150μm)。さらに得られた固体を窒素雰囲気下にて50℃から100℃に昇温しながら乾燥し、EtOH/MgCl2モル比1.27に調整した。得られた固体は多孔度0.139cc/g、表面積9.1m2/g、嵩密度0.564g/ccを有した。
【0076】
この固体(担体)25gを、TiCl4625ccを予め入れた攪拌付きオートクレーブ中に、0℃、窒素雰囲気下にて添加した。さらにこのオートクレーブを1時間かけて100℃に昇温した。昇温課程において温度が40℃になった時に、ジイソブチルフタレートをマグネシウムの1/8倍モル比添加した。100℃で2時間攪拌後、同温度にて静置し固体を沈殿させた。上澄み液をサイホンにて吸引し除去した。TiCl4550mlを新たに添加し120℃にて1時間攪拌後静置した。上澄み液をサイホンにて吸引除去後、残った固体を無水ヘキサン200mlを用い60℃にて6回、室温にて3回洗浄した。真空にて乾燥後、成分(B)の重合用触媒として使用した。
【0077】
成分(B)−1、成分(B)−2を下記方法により重合した。重合は一つの反応器から次の反応器へ順次移送する装置を備えた、一連の反応器中で連続的に行った。22リットルの攪拌付きオートクレーブ中に、20℃にて液体プロピレンを16リットル、および前述の固体触媒約0.15gとトリエチルアルミニウム10%のヘキサン溶液75mlとシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMMS)との混合物よりなる重合触媒(Al/CMMSモル比7.5)を添加し、20℃で24分間重合させた。次いでこのプレポリマーを気相中の第一の反応器に送り、そこでプロピレンの単独重合を行った。さらにこの重合体を第二反応器へ移し、そこでエチレンとプロピレンとの共重合を行った。第一および第二反応器の重合条件および得られた最終生成物の性状を表2に示した。
【0078】
【表2】
【0079】
成分(B)−3:
モンテル社製、キャタロイAdflex KS−084P、MFR30g/10分。曲げ弾性率108MPa、ショアD硬さ44、ゴムの平均分散粒径0.4μm。
【0080】
成分(B)−4:
モンテル社製、キャタロイAdflex KS−359P、MFR12g/10分。曲げ弾性率83MPa、ショアD硬さ41、ゴムの平均分散粒径0.6μm。
【0081】
実施例1〜5
TPUとして(A)−1、(A)−2、(A)−3、(A)−4、(A)−5を用い、ポリプロピレン混合物として(B)−1を用い、熱可塑性エラストマー成分100重量部に対し、カーボンブラックマスターペレット(ロイヤルブラックRB 9005)を1重量部、Irganox1010を0. 1重量部、ジラウリルチオプロピオネート(DLTP、吉富製薬(株)製)を0.15重量部、及びTINUVIN327(チバガイギー社製)を0.1重量部それぞれ加え、ヘンシェルミキサーでブレンドした後、20mm径の同方向二軸押出機にて220℃の条件で溶融混練しエラストマー組成物のペレットを得た。物性および評価の結果を表3、表4に示した。次に、上記エラストマー組成物を用い、射出成形し、複数の運転席用エアーバッグ装置の収納カバーを得た。成形サイクルは80秒であり、得られた収納カバーを使って組み立てたエアバッグ装置の−40℃、常温、90℃での展開性能をまとめて表3、表4に示した。
【0082】
実施例1の収納カバーの形状を図1〜図4を参照して以下具体的に説明する。図1は本発明による運転席用エアバッグ装置の収納カバーの一例を示す斜視図である。図2は図1のII−II線による収納カバーの断面を示す模式図である。図3は図2の収納カバーのV字状溝の拡大断面を示す模式図である。図4は図2の収納カバーのU字状溝の拡大断面を示す模式図である。
【0083】
図1に示すように、収納カバーはリテーナー(図字せず)に取り付けるためのボルト穴を有するフランジ5を周囲に有し、一方が開き、内側にエアバッグを収納できる空間8を有して箱状に形成されており、天面2に脆弱な構造の破断予定部分3が図1の点線で示すようにH字状に配設され、天面2の二個所に図1の一点鎖線で示すようにヒンジ部4が配設されている。
【0084】
破断予定部分3は図2及び図3に示すように天面2の裏側の破断形状がV字状のV溝6により形成されている。ヒンジ部4は図2、図4に示すように天面2の裏側の断面形状がU字状のU溝7により形成されている。エアバッグ(図字せず)が膨張すると収納カバー1は破断予定部分3で破断し、二つの扉2a、2bがそれぞれヒンジ部4を軸に展開し、エアバッグが放出され膨張する。
【0085】
破断予定部分3の寸法はH字の縦の二本の棒に相当する部分が12cm、横の棒に相当する部分が15cmであり、破断予定部分の肉厚が0.5mm、ヒンジ部の肉厚が1.9mm、その他の部分は3mmである。また、実施例1の収納カバーは最大型締力150kg/cm2、最大射出圧力60kg/cm2の汎用型射出成形機に上記収納カバー用金型を取付け、運転温度200〜230℃で成形した。また、実施例1では内容積60リットルのエアバッグを使用し、ガス発生量が約1モルであるガス発生器1個を使用した。
【0086】
実施例6〜8
TPUとして(A)−1を用い、ポリプロピレン混合物として(B)−2、(B)−3、(B)−4、を用い、実施例1と同様にしてエラストマー組成物のペレットを得た。実施例1と同様に物性評価およびエアバッグの評価を実施した。結果を表4に示した。
【0087】
実施例9〜11
TPUとして(A)−1を用い、ポリプロピレン混合物として(B)−1を用い、実施例1と同様にエラストマー組成物のペレットを得た。実施例1と同様に物性評価およびエアバッグの評価を実施した。結果を表5に示した。
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
実施例12〜15
TPUとして(A)−1、(A)−2を用い、ポリプロピレン混合物として(B)−1を用い実施例1同様にして熱可塑性エラストマー組成物ペレットを得た。次に、射出成形にて複数の助手席用エアバッグ装置の収納カバーを得た。成形サイクルは65秒であった。得られた収納カバーを使って組み立てたエアバッグ装置の−40℃、常温、90℃での展開性はいずれも良好であった。
【0092】
図5は本発明による助手席用エアバッグ装置の収納カバーの一例を示す斜視図である。
図6は図5のVI−VI線による収納カバーの断面を示す模式図である。
図7は図5のVII−VII線による収納カバーの断面を示す模式図である。
【0093】
なお、この実施例9の収納カバーの形状を図5、図6及び図7に示す。即ち、収納カバー11は天板12と四枚の側壁18とからなる。天板12は側壁18の外側まで庇状に張り出しており、側壁は下端外周につば15がつけられている。収納カバー11は側壁18に配置されている穴19を使ってリテーナー(図字せず)に取り付けることが出来、リテーナーにはガス発生器(図字せず)が取り付けられる。
【0094】
収納カバーの天板12、側壁18、リテーナー、ガス発生器で形成される空間にエアバッグ(図字せず)を収納することが出来る。脆弱な構造の破断予定部分13、13’が図5、図6、図7に示すように天面12の側壁18より内側に配設され、ヒンジ部14が図5、図6に示すように配設されている。破断予定部分13、13’は図5、6に示すように配設されている。
【0095】
破断予定部分13、13’は図6、図7に示すように天板12の裏側の断面形状がV字状のV溝16、16’により形成されている。ヒンジ部14は図6に示すように天板12の裏側の断面形状がU字状のU溝17により形成されている。
【0096】
エアーバッグが膨張すると収納カバー11は破断予定部分13、13’で破断し、破断予定部13、13’とヒンジ部で囲まれる部分12aがヒンジ部14を軸として展開し、エアバッグが放出され膨張することになっている。収納カバー11の寸法は、(イ)天板12の長辺34cm、短辺14cm、厚さ3mm、(ロ)側壁18の長辺約28cm、短辺約10cm、高さ約6.8cm、厚さ約3mm、(ハ)破断予定部の肉厚0.5mm、(ニ)ヒンジ部の肉厚1.9mmである。
【0097】
また、実施例12〜15の収納カバーは最大型締力215kg/cm2、最大射出圧力60kg/cm2の汎用型射出成形機に上記収納カバー用金型を取付け、運転温度200〜230℃で成形した。また、実施例12〜15では内容積120リットルのエアバッグを使用し、ガス発生量が約1モルであるガス発生器2個を使用した。
【0098】
比較例1〜3
TPUとして(A)−1を用い、ポリプロピレン混合物として(B)−1、および押出しブレンドタイプのTPO(PP/EPDMブレンド)であるSantoprene 203−40(曲げ弾性率80MPa、ショアD硬さ40、MFR8g/10分、ゴムの分散粒径9μm)を用い、実施例1〜4の方法と同様に混練し評価した。この結果から本発明の範囲外の組成物はいずれかの物性が悪いことが明らかであった。
【0099】
【表6】
【0100】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、特定の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形法により成形することを採用し、脆弱な構造の破断予定部分を配設したことにより、耐久性に優れ、優れた感触を有し、広い温度範囲で確実に展開できるばかりではなく、高生産性、塗装レスが可能となり、低コストが実現されるエアバッグ収納カバーを実現した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による運転席用エアバッグ装置の収納カバーの一例を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線による収納カバーの断面を示す模式図である。
【図3】図2の収納カバーのV字状溝の拡大断面を示す模式図である。
【図4】図2の収納カバーのU字状溝の拡大断面を示す模式図である。
【図5】本発明による助手席用エアーバッグ装置の収納カバーの一例を示す斜視図である。
【図6】図5のVI−VI線による収納カバーの断面を示す模式図である。
【図7】図5のVII−VII線による収納カバーの断面を示す模式図である。
【図8】本発明による助手席用エアバッグ装置の収納 カバーの他の例を示す図6と同様の断面を示す模式図である。
【図9】図8に示す収納カバーの図7と同様の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
1、11、21・・・収納カバー
2・・・天面
2a・・・扉
3、13、13’、23、23’・・・破断予定部分
4、14、24・・・ヒンジ部
5・・・フランジ
6、16、16’、26、26’・・・V溝
7、7’、17、27・・・U溝
8・・・空間
9・・・穴
12、22・・・ 天板
12a・・・天板の開口部
18・・・側板
19・・・穴
Claims (1)
- 内側にエアバッグ収納用凹部を有すると共に脆弱な構造の破断予定部を有する熱可塑性エラストマーの射出成形体からなるエアバッグ装置の収納カバーであって、該熱可塑性エラストマーが次の(A)及び(B)成分からなる、ショアD硬さ20〜70の熱可塑性エラストマー組成物であり、
(A)ポリウレタンエラストマー:100重量部
(B)
(B−1)ポリプロピレン系重合体(プロピレンを85重量%以上含む):10〜60重量%
(B−2)エチレン−プロピレン系共重合体ゴム(プロピレンを75重量%以下含む):40〜90重量%
の混合物であって、該混合物中のエチレン−プロピレン系共重合体ゴムの平均分散粒径が2μm以下、該混合物の曲弾性率が20〜700MPa、ショアD硬さが20〜60であるポリプロピレン混合物:5〜900重量部
かつ、(A)成分のポリウレタンエラストマーが次の(a)、(b)及び(c)成分を共重合してなるポリウレタンエラストマーであることを特徴とする、エアバッグ装置の収納カバー。
(a)下記式(2)、及び(3)の繰り返し単位からなり、末端基が水酸基である脂肪族ポリカーボネートジオールを含み、上記(2)と(3)の割合が(2)/(3)=10/90〜90/10(モル比)である高分子量ポリオール(但し、式中nは炭素数4または5の整数のいずれか一方)。
(c)ポリイソシアネートと反応しうる活性水素を2個有する鎖延長剤
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