JP4390130B2 - 光触媒機能を有する部材及びこれに使用する光触媒塗料 - Google Patents

光触媒機能を有する部材及びこれに使用する光触媒塗料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光触媒機能を有する部材及びこれに使用する塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、セラミックや金属や合成樹脂などの基材の表面に光触媒層を形成し、光触媒機能を付与した種々の部材が開発されている。これらの部材は、表面に露出する光触媒粒子により、悪臭を分解したり、抗菌・防黴作用をなしたり、親水性を発揮したりするため、クーラーや掃除機や鏡等の家庭用品や、自動車の部品等に使用されたり、カーポートの屋根材等の建築資材や、高速道路の防音板等の道路資材などに使用されたりしており、さらに種々の用途展開が今なお開発されている。
【0003】
これらの部材は、セラミックや金属や合成樹脂などからなる部材(製品や部品)の基材の表面に、光触媒粒子である酸化チタン等を含有する光触媒塗料を塗布後、固化したり、焼き付けたりして、光触媒層を一体化した構造をなしている。この光触媒層は無機物を主体とした層であるため、柔軟性に劣り、伸縮や衝撃や捻りなどが作用するとクラックが生じるという問題が内在していた。特に、基材が合成樹脂であると、該合成樹脂製基材の熱伸縮が大きいためクラックが発生し易かった。
【0004】
この問題を解決するため、光触媒層を三官能シリコーン樹脂と、ウィスカー、マイカ、タルクから選ばれる少なくとも1つと、光触媒粒子とを配合した自己浄化性塗料組成物、及びこれを基材に塗布した自己浄化性部材が開発されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−69376号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ウィスカー、マイカ、タルクを含ませると透光性を有する光触媒層を形成することが困難であり、透明度が低い光触媒層しか得ることができなかった。
【0007】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、クラックが発生しない光触媒層を有する部材、及びこの部材に使用される光触媒塗料を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そのため、本発明に係る光触媒機能を有する部材は、セラミック、金属、合成樹脂、コンクリート、ガラス、タイルのいずれかの材質よりなる基材の表面に、光触媒粒子とシリカ又はシリコーン樹脂とカーボンナノチューブとからなる層状の光触媒機能領域が、海島構造の島部分となるように散在して形成されており、この光触媒機能領域は基材表面の30〜90%を占めており、基材表面の光触媒機能領域間にある非機能領域の幅は0.1〜30μmであり、光触媒機能領域中光触媒粒子の含有率が5〜50重量%、カーボンナノチューブの含有率が0.0005〜0.5重量%であることを特徴とするものである。
光触媒機能領域は、そこに含有されている光触媒粒子により悪臭を分解したり、抗菌・防黴作用をなしたり、親水性を発揮するなどの光触媒機能を発揮する。また、光触媒機能領域が海島構造の島部分となるように散在して形成されているため、部材に伸縮や衝撃や歪などが加わっても光触媒機能領域間でこれらを吸収してクラックを生じることがない。シリカ又はシリコーン樹脂は、光触媒粒子やカーボンナノチューブと共に光触媒機能領域を形成し、そして、カーボンナノチューブは、光触媒粒子とシリカ又はシリコーン樹脂とを絡めて光触媒機能領域を海島構造の島部分となるように散在させるし、該光触媒機能領域を強化してクラックの発生を防止することにも役立つ。
【0009】
また、本発明の部材のように、光触媒機能領域基材表面の30〜90%を占めており、基材表面の光触媒機能領域間にある非機能領域の幅が0.1〜30μmであると、光触媒機能領域が基材全面になくても親水性などの光触媒機能を発揮することができるし、光触媒機能領域相互間の非機能領域によってクラックの発生を防止できる。
【0010】
そして、本発明の部材のように、光触媒機能領域中光触媒粒子の含有率が5〜50重量%、カーボンナノチューブの含有率が0.0005〜0.5重量%であると、海島構造の島となるように散在する、光触媒機能に優れた、クラックを生じない光触媒機能領域を形成することができ、特に、光触媒機能領域のカーボンナノチューブの含有量0.0005〜0.01重量%と少量であると、カーボンナノチューブによって透光性を阻害することがないので、透光性の光触媒機能領域を形成することができる。そのため、基材として透光性の合成樹脂又はガラスよりなる基材を使用すると、透光性部材とすることができる。
【0011】
基材が合成樹脂である場合は、該合成樹脂製基材に保護層、又は接着層と保護層とを介して光触媒機能領域を形成することが好ましい。この構成であると、光触媒機能領域の光触媒機能が接着層或は合成樹脂製基材にまで達するのを保護層により防止し、該接着層と基材とを劣化させず、長期に亘る耐久性を維持できる。
【0012】
この構成において、接着層又は保護層に分子量が390以上の紫外線吸収剤を含有させていることが好ましい。この分子量が390以上の紫外線吸収剤は、接着層又は保護層から移行して光触媒層にまで達することが極めて少なく、光触媒機能を当初から発揮させることができる。
【0013】
これらの部材の光触媒機能領域の形成に使用される光触媒塗料は、光触媒粒子とシリカ又はシリコーン樹脂とカーボンナノチューブとを含有することを特徴とするものである。この光触媒塗料を基材に塗布、固化させることで、光触媒機能領域を基材の表面に散在させて形成することができるので、クラックの発生しない光触媒機能を有する部材とすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態を示す平面図、図2はそのX−X線断面図である。
【0016】
本発明の光触媒機能を有する部材Aは、基材1の片側の表面に光触媒機能領域2を形成してなる板状のものである。
【0017】
基材1としては、その表面に光触媒機能領域2を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、セラミック、金属、合成樹脂、コンクリート、セメント、ガラス、タイルなどが用途により適宜選択されて用いられる。基材1に直接光触媒機能領域2が形成された部材Aを形成する場合は、光触媒機能が作用しても劣化しないセラミック、金属、コンクリート、セメント、ガラス、タイルなどの基材1を用いることが好ましい。基材1として合成樹脂を用いる場合は、光触媒機能により樹脂基材1が劣化するので、後述するように、光触媒機能領域2と合成樹脂製基材1との間に保護層を介在させることが好ましい。これらの基材1の厚みは特に限定されるものではないし、その形状も図1の板状に限定されるものではない。
【0018】
光触媒機能領域2は、光触媒粒子とシリカ又はシリコーン樹脂とが均一に分散されて形成された領域であるか、或は光触媒粒子とシリカ又はシリコーン樹脂とカーボンナノチューブとが均一に分散されて形成された領域である。この光触媒機能領域2は部材1の表面に散在していて、これ以外の部材表面の領域は、光触媒機能を発揮しない非機能領域3であって、連続し且つ光触媒機能領域2の周りに形成されている。
【0019】
この光触媒機能領域2、2間にある非機能領域3の幅は0.1〜30μm程度である。この範囲であると、光触媒機能領域2が散在し非機能領域3があっても、部材表面の全面に亘って光触媒機能が発揮される。
【0020】
該光触媒機能領域2は、基材1の表面の30〜90%を占めていることが好ましい。30%未満であると、光触媒機能が十分に発揮されず、一方90%を超えると、光触媒領域2が多くなり非機能領域3が連続できなくなってクラックの発生を防止できなくなるからである。より好ましい光触媒機能領域2の占める割合は、35〜60%である。
【0021】
前記光触媒粒子は、光触媒機能を発揮できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、SrTiO3、WO3などの金属酸化物が用いられる。この中でも、酸化チタン、特にアナターゼ型酸化チタンは、光触媒機能を良好に発揮するし、入手もし易いので最も好ましく用いられる。この光触媒粒子は、光触媒機能領域2の中に5〜50重量%含有されている。5重量%より少ない場合は光触媒機能を発揮させることが困難であるし、一方50重量%より多くしても光触媒機能がそれ以上向上せず材料の無駄遣いとなる。
【0022】
シリカとしては、シリカ前駆体、水ガラスなどのシリカを主体とした無機材料、或はシリコーン樹脂が単独で或は組み合わせて用いられ、これらに光触媒機能が作用しても劣化することはない。このシリカは光触媒機能領域2中に95〜50重量%含有されていて、光触媒粒子と共に光触媒機能領域2を形成するために使用されている。
【0023】
カーボンナノチューブは、六角網目構造のグラファイト壁が単層若しくは複層の状態で円筒になったものがあり、いずれのものでも使用できる。単層カーボンナノチューブは外径が1〜2nmで長さが数μmのナノチューブ、或はこれが数十本束になって束の外径が1〜20nmで長さが数μmになったものであり、一方、複層カーボンナノチューブは外径が1〜20nmで長さが数μmのカーボンナノチューブであり、いずれも中空構造を持つ非常にアスペクト比の大きな材料である。これが均一に分散して光触媒機能領域2に含有されている。
【0024】
このカーボンナノチューブが光触媒機能領域の中で、どのような働きをするのかは明白でないが、主に光触媒粒子とシリカとに絡み合って光触媒機能領域2を散在させて形成させる作用をなしていると考えている。即ち、出願人はカーボンナノチューブが光触媒塗料中に分散されていて、塗料の固化時にカーボンナノチューブが光触媒粒子とシリカとに絡み合い、これら三者が纏わりついて光触媒機能領域2を形成すると同時に、カーボンナノチューブが分散されているから該領域が散在されて形成されることとなり、一方、カーボンナノチューブがない部分は、この部分に存在していた光触媒粒子とシリカとがカーボンナノチューブ部分に移行して、これらが存在しない非機能領域3になると考えている。この非機能領域3は、本実施形態では基材1が露出した状態となっている。
【0025】
このカーボンナノチューブは、光触媒機能領域2の中に0.0005〜0.5重量%含有されている。0.0005重量%より少ないと、光触媒粒子とシリカとの絡み合いが少なくなり、機能領域2が散在した状態で形成されずに光触媒粒子とシリカとカーボンナノチューブとが混合した一層となり、クラックの発生を防止できなくなる。一方、0.5重量%より多くなっても光触媒機能がそれ以上向上せず材料の無駄遣いとなるし、光触媒機能領域2が黒く着色されて成形体Aが透明性を有さなくなる。好ましくは0.0005〜0.01重量%、更に好ましくは0.0005〜0.005重量%、最も好ましくは0.0005〜0.003重量%である。
【0026】
これらの材料を用いて、光触媒機能領域2を散在するように形成するにはどのような方法でも良いが、例えば下記の方法が好ましく採用できる。
【0027】
第1の方法は、光触媒粒子とシリカ又はシリコーン樹脂、必要に応じて分散剤やバインダー樹脂等の少量(1重量%以下)とを、溶剤若しくは水に均一に混合分散し、光触媒塗料を作成する。そして、該光触媒塗料をスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの公知の部分的に塗布可能な塗布技法を用いて、基材1の上に直接塗布し、基材1に上記塗料が部分的に塗布して固化されることで、光触媒機能領域2が散在して形成されると共に、該塗料が塗布されていない非機能領域3が連続して形成され、図1及び図2に示すような光触媒機能領域2が散在する部材Aを得ることができる。
【0028】
また、第2の方法は、光触媒粒子と、シリカ又はシリコーン樹脂と、カーボンナノチューブと、必要に応じて分散剤やバインダー樹脂等を少量(1重量%以下)とを、溶剤又は水に均一に混合分散して光触媒塗料を作成する。そして、該光触媒塗料をロールコーター、ナイフコーター、バーコータ−などの公知の均一な厚さの層に塗布する塗布技法を用いて、基材1の表面全面に直接塗布して固化する。このことにより、前記したカーボンナノチューブの作用で、光触媒粒子、シリカ又はシリコーン樹脂、カーボンナノチューブとからなる光触媒機能領域2が基材1の表面に散在した状態で固化・形成され、その他の領域は上記塗料がなくて基材1が露出した状態の非機能領域3が連続的に形成され、図1及び図2に示すような光触媒機能領域2が散在する部材Aを得ることができる。
【0029】
この光触媒機能領域2の厚みは、1〜200nm(ドライ)に形成することが好ましい。1nmより薄いと光触媒作用が発揮し難く、200nmより厚くしても光触媒機能の向上が図られないからである。好ましくは、5〜150nm、さらに好ましくは10〜120nm(ドライ)の厚さにするのが望ましい。
【0030】
このようにして得られた部材Aは、その光触媒機能領域2が部材表面の全面に存在せず、30〜90%の割合を占めているので、紫外線のような光触媒粒子を活性化させる光が部材表面に当たると、部材Aの全表面が光触媒作用を発揮し、悪臭を分解したり、抗菌・坊黴作用をなしたり、親水性を発揮したりする。特に、酸化チタンからなる光触媒粒子を用いた光触媒機能領域2であると、親水性が非常に向上し、水との接触角が20°以下となるため、汚れが付着しても雨水などにより流し落とされるので、好ましい部材Aとなる。また、光触媒粒子がない非機能領域3が連続しているために、該領域3で部材の伸縮や衝撃や歪などによる外力を吸収してクラックの発生を阻止している。
【0031】
図3は、本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【0032】
本実施形態の光触媒機能を有する部材Bは、合成樹脂製の基材1の片側の表面に、接着層4と保護層5と光触媒機能領域2とをこの順で形成し一体化していて、光触媒機能領域2が散在してなるものである。
【0033】
基材1が合成樹脂製である場合は、基材1の表面に直接光触媒機能領域2を形成すると、光触媒作用が合成樹脂製基材1に作用し、該基材1が劣化し強度が低下したりなどするので、これを防止するために保護層5を設けることが好ましいのである。そして、この実施形態では、該保護層5と合成樹脂製基材1とを接着層4にて接合一体化しているが、保護層5を形成する材質によっては基材1に保護層5が直接密着一体化することができるので、この接着層4は必ずしも必要ではない。この場合は、基材1、保護層5、散在した光触媒機能領域2が一体化した構成となる。
【0034】
光触媒機能領域2は、前記実施形態の部材Aの光触媒機能領域2と同じであるので、説明を省略する。
【0035】
保護層5は、光触媒機能領域2の光触媒作用が接着層4や合成樹脂製基材1に及ばなくするための層であり、シリカなどの無機物とポリジメチルシロキサンなどのシリコーン樹脂やアクリル樹脂やフッ素樹脂などのバインダー樹脂とを均一に混合させた組成物などのように無機物と有機物とからなる無機−有機組成物、シリコーン樹脂とアクリル樹脂との共重合樹脂、或はシリコーン樹脂などが使用される。そのため、この保護層5は光触媒機能領域2に比べて無機物の量が少ないので、基材1全面に形成し伸縮や衝撃や捻りなどが加わってもクラックが生じることはない。この保護層5の厚みは0.01〜10μmに形成することが好ましい。0.01μmより薄いと光触媒機能の遮断ができず、接着層4や合成樹脂製基材1に光触媒作用が作用するので好ましくなく、10μmより厚くても遮断機能の更なる向上がみられないので材料の無駄使いとなる。さらに好ましい厚さは、0.5〜5μmである。
【0036】
接着層4は、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、熱可塑性エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂などの接着性樹脂を用いて形成された層である。この接着層4は、合成樹脂製基材1と保護層5とを接着して一体化するものであり、保護層5と基材1とに使用される材質とを懸案して前記接着性樹脂の中から適宜選択されるが、いろいろな樹脂に最もよく接着するアクリル系樹脂が最も好ましく用いられる。その厚みは0.1〜50μmに形成することが好ましい。0.1μmより薄いと接着性が乏しくなり剥離する恐れがあるので好ましくなく、50μmより厚くしても接着性の向上がみられないので材料の無駄使いとなる。好ましい厚さは、0.1〜10μmである。
【0037】
これらの接着層4又は保護層5の少なくとも一方には紫外線吸収剤が含有されていて、紫外線を該接着層4或は保護層5で遮断して合成樹脂製基材1が劣化・黄変するのを防止している。保護層5に紫外線吸収剤が含有されている場合は接着層4の劣化をも防ぎ、接着効果を長期に亘り維持させる効果も具備する。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾエート系のもの、或は光安定剤(HALS)が用いられる。その中でも、紫外線吸収剤の分子量が390以上のものが好ましく用いられる。
【0038】
具体的には、分子量が390以上の紫外線吸収剤としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシベンゾエート(分子量 438)、1,6−ビス(4−ベンゾール−3−ヒドロキシフェノキシ)−ヘキサン(分子量 510)、1,4−ビス(4−ベンゾール−3−ヒドロキシフェノキシ)−ブタン(分子量 483)、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕フェノール(分子量 425)、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(分子量 439)、メチル3−〔3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートと分子量が約300のポリエチレングリコールとの反応生成物(分子量約600)などのベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾエート系の紫外線吸収剤が好ましく用いられる。これらの高分子量の紫外線吸収剤は、その分子量が390以上という高分子量であるがゆえに、これが含有されている保護層5或は接着層4からの移行がしにくく当該層内に留まることとなる。
【0039】
特に、分子量が500以上の紫外線吸収剤(例えば、メチル3−〔3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートと分子量が約300のポリエチレングリコールとの反応生成物など)は、より移行がしにくくなるので好ましい。分子量の上限は特に制限されないが、分子量が余り高いと溶剤に溶けにくいので、100000までであることが好ましい。この紫外線吸収剤は接着性組成物或は保護層用組成物100重量部に対して0.5〜1000重量部、好ましくは3〜100重量部添加含有される。
【0040】
このように分子量が390以上の紫外線吸収剤を用いると、該紫外線吸収剤が光触媒機能領域2に移行することがなく、揮散することもないので、光触媒機能が当初より発揮されるし、耐光性も長期に亘って維持できる。
【0041】
このような光触媒機能領域2と接着層4と保護層5とを合成樹脂製基材1に接合・一体化する方法は特に限定されないが、例えば次の方法が用いられる。
【0042】
一つの方法は、光触媒粒子とカーボンナノチューブとシリカ若しくはシリコーン樹脂とを、必要に応じて分散剤やバインダー樹脂の少量(1重量%以下)とを、溶剤若しくは水に均一に分散した光触媒塗料、接着性樹脂を溶剤に均一に分散した接着層用塗料、シリカなどの無機物と樹脂などの有機物とを溶剤に均一に分散した保護層用塗料をそれぞれ作製する。そして、合成樹脂製基材1に接着層用塗料を塗布・固化して接着層4を形成し、その上に保護層用塗料を塗布・固化して保護層5を形成し、その上に光触媒塗料を塗布・固化することで光触媒機能領域2を散在させて形成し、図3に示すような4層構造の光触媒機能を有する部材Bを得る方法が用いられる。
【0043】
他の方法は、ポリエチレンテレフタレートなどの剥離性を有する剥離フィルムの表面に、上記光触媒塗料を塗布・固化して光触媒機能領域2を散在させて形成し、その上に上記保護層用塗料を塗布・固化した保護層5を形成し、更にその上に接着層用塗料を塗布・固化した接着層4をそれぞれ形成することにより、剥離フィルムに散在した光触媒機能領域2、保護層5、接着層4をこの順で形成した転写フィルムを作製する。そして、作製された転写フィルムの接着層4を合成樹脂製基材1に重ねて加熱加圧し、基材1に接着層4、保護層5、光触媒機能領域2を転写させて、図3に示すような4層構造の光触媒機能を有する部材Bを得ることもできる。
【0044】
更に他の方法は、アクリル系樹脂フィルムに保護層用塗料と光触媒塗料とを塗布・固化して、該フィルムに保護層5、散在する光触媒機能領域2をこの順で形成したラミネートフィルムを作製する。そして、該ラミネートフィルムのアクリル系樹脂フィルムを合成樹脂基材1側になるように重ねて加熱加圧してラミネートして接着し、図3に示すような4層構造の光触媒機能を有する部材Bを得ることもできる。このラミネートの方法では、アクリル系樹脂フィルムが接着層4の作用をなすため、接着層用塗料は必要ないが、接着層を設けてもよい。
【0045】
このラミネートフィルムを用いる場合、接着性を有さないポリエチレンテレフタレートを使用するときは、該フィルムの片面に保護層5、散在する光触媒機能領域2をこの順で形成し、他面に接着層4を形成したラミネートフィルムとする必要がある。そして、該ラミネートフィルムの接着層4を合成樹脂基材1側になるように重ねて加熱加圧してラミネートして接着することで、図3に示すような4層構造の光触媒機能を有する部材Bを得ることもできる
【0046】
このようにして得られた合成樹脂製部材Bは、光触媒機能領域2の光触媒粒子により悪臭を分解したり、抗菌・坊黴作用をなしたり、親水性を発揮したりする。また、保護層5又は接着層4に紫外線吸収剤を含有させると、その下側の合成樹脂製基材1を保護し変色し難い部材Bとすることができるし、接着層4又は保護層5に含まれる上記の紫外線吸収剤が移行したり揮散したりすることがないので、長期に亘り基材1の変色を防止することができるし、初期においても紫外線吸収剤が光触媒機能領域2まで移行しないので、紫外線が光触媒機能領域2に当たると直ちに光触媒機能が発揮されることとなる。
【0047】
この合成樹脂製部材Bは、カーポートやテラスなどの屋根材、或は道路用防音板などの透光性を必要とする用途に使用される。屋根材として使用する場合は、該部材Bの厚みを1.5〜4.0mmとなし、その全光線透過率を2.5mm厚で10〜50%、ヘイズ値を1〜5%とすることが好ましい。そして、合成樹脂製基材1としては、強度があり透明性に優れるポリカーボネートが最も好ましく用いられるが、他のアクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂なども好ましく使用される。また、基材1は無色透明でもよいが、フタロシアニン系化合物などの熱線吸収剤を添加した熱線吸収性基材1や、アルミニウム粉末などの熱線反射剤を添加した熱線反射性基材1が好ましく、これらの屋根材は、その下方の空間の温度上昇を抑制すると共に明るくて清潔なものにすることができる。
【0048】
一方、道路用防音板として使用する場合は、該部材の厚みを3〜10mmとなし、その全光線透過率を80%以上、ヘイズ値を1〜5%以下とすることが好ましい。そして、合成樹脂製基材1としては強度を有するポリカーボネートが最も好ましく用いられ、その他にアクリル樹脂も好ましく用いられる。
【0049】
図4は、本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【0050】
本実施形態の光触媒機能を有する部材Cは、合成樹脂製の板状の基材1の片側に、紫外線吸収剤を含有する合成樹脂よりなる耐候層11を形成し、この耐候層11の上に、接着層4と保護層5と光触媒機能領域2とをこの順で形成し一体化していて、光触媒機能領域2が散在してなるものである。
【0051】
耐候層11としては、前述したベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾエート系、或は光安定剤(HALS)などの公知の紫外線吸収剤が、好ましくは分子量が390以上の紫外線吸収剤が、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂に1〜10重量%均一に分散して含有されている。そして、その厚みは1〜100μmにすることで、その下の基材1の変色、劣化を防止している。
【0052】
この合成樹脂製部材Cは、このような耐候層11が形成されているので、接着層4或は保護層5には紫外線吸収剤を必ずしも含有させる必要はない。
【0053】
この部材Cの合成樹脂製基材1、接着層4、保護層5、光触媒機能領域2、非機能領域3は、前記実施形態である合成樹脂製部材Bのそれらと同じであるので、説明を省略する。また、該部材Cを形成するためのラミネートフィルム、転写フィルムも前記実施形態の合成樹脂製部材Bと同じものが使用されるので、説明を省略する。
【0054】
この合成樹脂製部材Cを得るには、紫外線吸収剤を含有しないか或は僅かに含有する合成樹脂と、紫外線吸収剤を1〜10重量%含有する合成樹脂とを、2層共押出し金型を用いて共押出しし、片面に耐候層11を有する合成樹脂製基材1を得る。そして、この基材1の耐候層11の表面に、前記実施形態と同様に、各塗料を直接塗布したり、ラミネートフィルムをラミネートしたり、転写フィルムを転写したりして、基材1の耐候層11の上に、接着層4、保護層5、散在する光触媒機能領域2を形成することで、合成樹脂製部材Cを得ることができる。
【0055】
上記各実施形態において、基材1の片面にのみ光触媒機能領域2を形成したが、該光触媒機能領域2を基材1の両面に形成しても良いし、基材1が立体形状である場合は全表面に形成してもよい。
【0056】
以下実施例に基づいて具体的に説明する。
【0057】
(実施例1)
光触媒酸化チタンとシリカとを含有する市販光触媒塗料に、カーボンナノチューブ(精華ナファイン社製)を0.002重量%均一に混合して光触媒塗料を調製した。該光触媒塗料をポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に100nmの厚さ(ドライ)にバーコータにて塗布し、100℃の雰囲気中で30分間、乾燥・固化させて光触媒塗膜を形成した。そして、この光触媒塗膜の上に、ポリジメチルシロキサンとアクリル樹脂とを均一に混合して調製した保護層用塗料を1μmの厚さに塗布し、100℃の雰囲気中で30分間、乾燥・固化させて保護層を形成した。さらに、この保護層の上に、アクリル系接着剤(コニシ(株)製のVP2000)と、この接着剤100重量部に対して分子量が600である紫外線吸収剤TINUVIN213(チバ・スペシャリティー・ケミカル(株)製)を5重量%均一に混合して調製した接着層用塗料を3μmに塗布し、100℃の雰囲気中に30分間、乾燥・固化させて接着層を形成することにより、4層構造の転写フィルムを作製した。
【0058】
厚さ5mmのポリカーボネート樹脂基材(タキロン(株)製)の上側表面に、上記転写フィルムの接着層がポリカーボネート樹脂基材側となるように重ね合わせて、温度270℃、圧力2MPaの条件で熱圧着し、転写フィルムの接着層、保護層、光触媒塗膜をポリカーボネート樹脂基材の表面に転写後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、板状の透光性の光触媒塗膜付きポリカーボネート樹脂部材を作製した。これを実施例1とする。
【0059】
[接触角の測定]
この実施例1の光触媒塗膜に、ブラックライトブルーランプ(BLBランプ)にて1mW/cm2の紫外線を24時間照射して試験片を作製した。BLBランプの照射前と照射後の試験片に、マイクロシリンジを用いてイオン交換水20mlを滴下し、試験片の表面の水滴を画像処理接触角度計(協和界面科学(株)製、CA−A)を用いて、試験片の接触角を3点法で測定した。その結果を表1に記載する。
【0060】
[表面の観察]
この実施例1の光触媒塗膜側の表面を、キーエンス製デジタルHFマイクロスコープVH−8000にて1000倍に拡大し、その表面状態を観察した。その結果の写真を図5として添付する。
【0061】
[表面物質の測定]
図5に示された表面の島部分と海部分とを、(株)堀場製作所製EMAX−3770にてエネルギー分散形X線分析(EDX)をそれぞれ行い、各部分の元素を分析した。その結果のチャートを図6として添付する。
【0062】
[クラックの有無の観察]
上記実施例1の光触媒塗膜に、BLBランプにて1mW/cm2の紫外線を24時間照射した後に、これを100℃のギヤーオーブンに1時間入れて加熱した後に冷却して試験片を得た。この試験片の光触媒塗膜の表面を目視し、クラックの有無を観察した。さらに、光触媒塗膜の表面をキーエンス製デジタルHFマイクロスコープVH−8000にて1000倍に拡大し、その表面状態を観察した。その結果のマイクロスコープ写真を図7として添付する。
【0063】
[耐候性の測定]
上記実施例1の光触媒塗膜に、サンシャインウエザオメーター(アトラス社製CXW型)を用いて、JIS K7350−4に準拠した方法で2500時間暴露を行なった。この暴露前後にJIS K7105に準拠した方法で全光線透過率、ヘイズ値及び黄変度の測定を行なった。その結果を表1に併記する。
【0064】
(実施例2、3)
カーボンナノチューブの含有量を0.00075重量%、0.003重量%に変化させた以外は、実施例1と同様にして、実施例2及び実施例3の板状の透光性の光触媒塗膜付きポリカーボネート樹脂部材を作製した。これを実施例2、実施例3とする。そして、当該各実施例2、3の光触媒塗膜の表面観察を実施例1と同様にして行ない、その結果のマイクロスコープ写真を図8及び図9として添付する。そして、接触角、クラックの有無、全光線透過率、ヘイズ値、黄変度を実施例1と同様にして行ない、その結果を表1にそれぞれ併記する。また、クラックの有無の試験を行なった後の光触媒塗膜の表面観察を行い、その結果のマイクロスコープ写真を図10及び図11として添付する。
【0065】
(比較例1、2)
実施例1で用いた市販光触媒塗料、及び該市販光触媒塗料にカーボンナノチューブを0.0003重量%添加して均一に混合して光触媒塗料を調製した。そして、これらの比較例用光触媒塗料を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1及び比較例2の板状の透光性の光触媒塗膜付きポリカーボネート樹脂部材を作製した。そして、当該比較例1,2の光触媒塗膜の表面観察を実施例1と同様に行ない、その結果のマイクロスコープ写真を図12及び図13として添付する。そして、接触角、クラックの有無、全光線透過率、ヘイズ値、黄変度を実施例1と同様にして行ない、その結果を表1にそれぞれ併記する。また、クラックの有無の試験を行なった後の光触媒塗膜の表面観察を行い、その結果のマイクロスコープ写真を図14及び図15として添付する。
【0066】
【表1】
Figure 0004390130
【0067】
この表1より、カーボンナノチューブを0.00075重量%、0.0015重量%、0.003重量%含有した光触媒塗膜を有する実施例2、1、3は、紫外線照射後に100℃のギヤーオーブンに入れて加熱したにも拘わらず、図7、図10及び図11からわかるように、クラックが発生しないことがわかった。しかし、カーボンナノチューブが含有されていない光触媒塗膜を有する比較例1、及びカーボンナノチューブを0.0003重量%しか含有しない光触媒塗膜を有する比較例2は、図14及び図15からわかるように、共にクラックが発生していることがわかる。
【0068】
この理由は図5及び図6から次のように考えられる。実施例1の光触媒塗料を塗布したポリカーボネートの光触媒塗膜は、図5より理解されるように、凸部を形成している部分(島部分)と凹部を形成している部分(海部分)とが観察され、且つ凹部は連続していて凸部を取り囲んでいることも観察される。即ち、この光触媒塗膜は海島構造をなしている。そして、該島部分の物質をEDXで測定した結果、図6に示すように、酸化チタンのピークを有しているので、光触媒酸化チタン粒子を含んだ光触媒機能領域であることがわかる。しかし、海部分は酸化チタンのピークがなく光触媒機能領域ではない(非機能領域)ことがわかるばかりでなく、シリカのピークが大きく出ているので保護層であることがわかる。これらのことより、光触媒塗料をバーコータで均一に塗布した層であったにもかかわらず、光触媒塗料が島(光触媒機能領域)となって固化され、保護層の上に散在していることがわかる。
【0069】
同様に、実施例2,3のポリカーボネートの光触媒塗膜を観察した図8、図9においても、光触媒塗膜が海島構造をなしていて、島部分(光触媒機能領域)が散在し、海部分(非機能領域)がこれを取り巻いて連続していることがわかる。
【0070】
一方、カーボンナノチューブを含有しない比較例1は、図12よりわかるように、海島構造をなしておらず、均一層の光触媒塗膜となっている。このように、光触媒塗料へのカーボンナノチューブの含有の有無により、海島構造となったりならなかったりするので、カーボンナノチューブが均一に分散し、これに光触媒粒子とシリカが纏わり付いた結果、カーボンナノチューブが分散して存在する部分が島部分(光触媒機能領域)となり、存在しない部分が海部分(保護層)となったものと思われる。
【0071】
その結果、海島構造を有する実施例1、2、3の光触媒塗膜は、光触媒機能領域が散在しているために、クラック有無の試験時に部材に熱伸縮等の外力が作用しても海部分で該外力を吸収して、島部分(光触媒機能領域)には作用しないためにクラックを発生しないと考えられる。
【0072】
しかし、比較例2のように、カーボンナノチューブの含有が0.0003重量%と少な過ぎると、図13に示すように、カーボンナノチューブによる海島構造形成能力に劣り、海島構造とならずに均一な一層構造になってクラックの発生を防止できないので、その含有量は0.0003重量%では少な過ぎることがわかる。一方、実施例2のカーボンナノチューブを0.00075重量%含有する光触媒塗膜は海島構造をなし且つクラックも発生していないので、海島構造を形成しクラックの発生をなくすには、0.0005重量%以上含有させる必要があることがわかる。
【0073】
光触媒機能は、いずれの実施例、比較例においても、照射後の接触角が20°以下となって良好な親水性を有しているから、光触媒機能を発揮していることがわかる。そして、各実施例は光触媒機能領域が散在して連続していないにも拘わらず、光触媒機能が発揮されているのは、該領域が全表面の30〜90%を占め、満遍なく均一に散在しているからである。
【0074】
また、実施例3は照射後の接触角が17°を示し、他の実施例及び比較例と比べて若干劣っているが、防汚性は十分に発揮する範囲の数値である。この接触角が大きくなった理由は、図9からわかるように、非機能領域が大きくなった為であろうと思われる。このことより、カーボンナノチューブは、0.003重量%以下の添加量が好ましいことがわかる。
【0075】
耐候性については、全光線透過率がサイクル実施前に比べて低下して悪くなっているが、実施例1,2,3は比較例1,2と比較すれば低下の程度が小さく良好な全光線透過率を保持している。そして、ヘイズ値も悪くなっているものの、各実施例は各比較例に比べてその程度が小さく良好な値を示している。これは各比較例が、図14,図15に示されるようにクラックを発生したために、これが大きく全光線透過率とヘイズ値に影響して、これらを悪くしたものと思われる。また、黄変度は各実施例と各比較例とでは差異が見られなかった。また、実施例3はサイクル実施前のヘイズ値が高くなっているが、これは前述のように、非機能領域が大きくなった影響であると思われる。
【0076】
この結果からすれば、各実施例は各比較例に比べて、サイクル実施によっても全光線透過率、ヘイズ値とも良好な性能を有していて、長期に亘り透明性を維持できることがわかる。
【0077】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の光触媒機能を有する部材は、その表面に光触媒機能領域が散在しているので、例え基材が熱収縮をする合成樹脂製であっても長期に亘り光触媒層にクラックのない光触媒機能を発揮する部材とすることができる。この光触媒機能領域は表面の30〜90%を占めるので、該領域が連続していなくても光触媒機能を十分発揮できる。そして、カーボンナノチューブは光触媒機能領域に0.0005〜0.5重量%と少量しか含有されていないので、該領域が透光性を阻害することがなく、透光性の光触媒機能領域を形成することができる。そのため、透光性合成樹脂基材に光触媒機能領域を散在させた部材となしても全光線透過率を低下させることがなく、屋根材や防音板などの透光性を必要とする用途にも使用できる。
【0078】
また、合成樹脂製基材に保護層、又は接着層と保護層とを介して光触媒機能領域を形成してなる場合に、接着層又は保護層に分子量が390以上の紫外線吸収剤を含有させていると、この紫外線吸収剤が接着層又は保護層から移行しにくくて光触媒層にまで達することがなく、光触媒機能を当初から発揮させることができる。
【0079】
これらの部材の光触媒機能領域に使用される光触媒塗料は、光触媒粒子とカーボンナノチューブとを含有すると、この光触媒塗料を基材に塗布、固化させるだけで、光触媒機能領域を基材の上に散在して形成することができ、クラックの発生しない光触媒機能を有する部材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を示す平面図である。
【図2】 同実施形態のX−X線断面図である。
【図3】 本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【図4】 本発明の更に他の実施形態を示す断面図である。
【図5】 本発明の実施例1の光触媒塗膜表面のマイクロスコープの写真である。
【図6】 同光触媒塗膜の島部分と海部分の夫々のEDXによるチャートである。
【図7】 クラック試験後の同光触媒塗膜表面のマイクロスコープ写真である。
【図8】 本発明の実施例2の光触媒塗膜表面のマイクロスコープ写真である。
【図9】 本発明の実施例3の光触媒塗膜表面のマイクロスコープ写真である。
【図10】 本発明の実施例2のクラック試験後の光触媒塗膜表面のマイクロスコープ写真である。
【図11】 本発明の実施例3のクラック試験後の光触媒塗膜表面のマイクロスコープ写真である。
【図12】 比較例1の光触媒塗膜表面のマイクロスコープ写真である。
【図13】 比較例2の光触媒塗膜表面のマイクロスコープ写真である。
【図14】 比較例1のクラック試験後の光触媒塗膜表面のマイクロスコープ写真である。
【図15】 比較例2のクラック試験後の光触媒塗膜表面のマイクロスコープ写真である。
【符号の説明】
A、B、C 合成樹脂製部材
1 基材
11 耐候層
2 光触媒機能領域
3 非機能領域
4 接着層
5 保護層

Claims (8)

  1. セラミック、金属、合成樹脂、コンクリート、ガラス、タイルのいずれかの材質よりなる基材の表面に、光触媒粒子とシリカ又はシリコーン樹脂とカーボンナノチューブとからなる層状の光触媒機能領域が、海島構造の島部分となるように散在して形成されており、この光触媒機能領域は基材表面の30〜90%を占めており、基材表面の光触媒機能領域間にある非機能領域の幅は0.1〜30μmであり、光触媒機能領域中光触媒粒子の含有率が5〜50重量%、カーボンナノチューブの含有率が0.0005〜0.5重量%であることを特徴とする光触媒機能を有する部材。
  2. 基材が透光性の合成樹脂又はガラスよりなる板状の基材であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒機能を有する部材。
  3. 光触媒機能領域が透光性を有し、カーボンナノチューブを0.0005〜0.01重量%含有していることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の光触媒機能を有する部材。
  4. 基材が合成樹脂よりなり、該合成樹脂製基材の表面に保護層を介して光触媒機能領域を散在させて形成していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光触媒機能を有する部材。
  5. 基材が合成樹脂よりなり、該合成樹脂製基材の表面に接着層と保護層を介して光触媒機能領域を散在させて形成し、接着層又は保護層に分子量が390以上の紫外線吸収剤を含有させていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光触媒機能を有する部材。
  6. 光触媒機能領域が、均一な厚さの層に塗布する塗布技法で形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の光触媒機能を有する部材。
  7. 塗布技法が、ロールコーター、ナイフコーター、バーコーターのいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の光触媒を有する部材。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれかの部材の光触媒機能領域の形成に使用される塗料であって、光触媒粒子とシリカ又はシリコーン樹脂とカーボンナノチューブとを含有することを特徴とする光触媒塗料。
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