以下本発明の実施例を説明する。まず図1に、本発明を対向電極型のプラズマエッチング装置へ適用した第一の実施例を示す。
図1において、真空容器としての処理室10は、上部電極12と下部電極15とから成る一対の対向する電極を備えている。下部電極15には試料40が載置される。両電極12,15の間隙は、φ300mm以上の大口径の試料を処理する時の試料面上の圧力差を1割以下にするために、30mm以上とするのが望ましい。また、フッ素原子や分子やイオンを減じるために、上部/下部電極表面上での反応を有効に活用する観点から、100mm以下、好ましくは60mm以下とするのが望ましい。上部電極12には、マッチングボックス162を介して高周波エネルギーを供給する高周波電源16が接続されている。161は高周波電源変調信号源である。上部電極12とアース間には、バイアス電源17の周波数成分に対しては低インピーダンスとなり、高周波電源16の周波数成分に対しては高インピーダンスとなるフィルタ165が接続されている。
試料台にほぼ平行に設置された上部電極12の表面積は、処理される試料40の面積よりも大きくし、バイアス電源17の印加により試料面上のシースに効率良くかつ均一に電圧が加わるように構成している。
上部電極12の下側表面には、シリコン、カーボンもしくはSiCからなるフッ素の除去板としての上部電極カバー30が設けられている。また、上部電極12の上部には、ガスを所望の分布に拡散するガス拡散板32を備えたガス導入室34が設けられている。処理室10には、ガス供給部36からガス導入室34のガス拡散板32、上部電極12及び上部電極カバー30に設けられた孔38を介して、試料のエッチング等の処理に必要なガスが供給される。外室11は、外室にバルブ14を介して接続された真空ポンプ18により真空排気され、処理室10が試料の処理圧力に調整される。13は絶縁体である。処理室10の周囲には、プラズマ密度を高めると共に処理室中の反応の均質化を図るために、放電閉じ込め用リング37が設けられている。放電閉じ込め用リング37には、排気用の隔間を設けている。
上部電極12の上には、電極間に形成された電界Eに直交し、試料40の面に平行な磁場を形成するための磁場形成手段200が設けられている。磁場形成手段200は、コア201、電磁コイル202、絶縁体203を具備している。上部電極12の構成材料としては、非磁性材導電体、例えばアルミニウムやアルミニウム合金がある。処理室10の構成材料としては、非磁性材、例えばアルミニウムやアルミニウム合金、アルミナ、石英、SiC等がある。コア201は、磁束が処理室10の中央上部から上部電極12に向かい、上部電極12に沿って略平行に外周に伸びるような磁界Bを形成すべく、コア部201A、201Bを有する断面略E字型の軸回転対称構造となっている。磁場形成手段200によって両電極間に形成される磁場は、10ガウス(Gauss)以上110ガウス以下、好ましくは17ガウス以上72ガウス以下の静磁場、あるいは低周波磁場(1KHZ以下)の、サイクロトロン共鳴を生じる部分を有する。
サイクロトロン共鳴を生じる磁場強度Bc(ガウス)は、公知の通り、プラズマ生成用高周波の周波数f(MHz)に対しBc=0.357×f(MHz)の関係にある。
なお、本発明における2電極12,15は、相対向する一対の電極が実質的に平行であれば良く、プラズマ生成特性等の要求から電極12,15が若干の凹面あるいは凸面を持つものであっても良い。この様な2電極型では、電極間の電界分布を容易に均一化でき、この電界に直交する磁場の均一性を向上することにより、サイクロトロン共鳴によるプラズマの生成を均一にすることが比較的容易である特徴を持つ。
試料40を載置保持する下部電極15は、2極式の静電チャック20を備えた構成となっている。すなわち、下部電極15は、外側の第1下部電極15Aと、その内側上方に絶縁体21を介して配置された第2下部電極15Bによって構成され、第1、第2両下部電極の上表面に静電吸着用誘電体層(以下、静電吸着膜と略称する)22が設けられている。第1、第2両下部電極間には、高周波成分カット用のコイル24A,24Bを介して直流電源23が接続されており、第2下部電極15B側が正になるようにして両下部電極間に直流電圧を印加する。これにより、静電吸着膜22を介して試料40と両下部電極間に作用するクーロン力により、試料40が下部電極15上に吸着、保持される。静電吸着膜22としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムにチタン酸化物を混合したものなどの誘電体を使用することができる。また、電源23としては、数100Vの直流電源を用いる。
また、下部電極15(15A,15B)には、20V〜1000Vの振幅のパルスバイアスを供給するパルスバイアス電源17が、DC成分をカットするブロッキングコンデンサ19A,19Bを介してそれぞれ接続されている。
これまで、静電チャックとして、2極式を用いて説明したが、他の方式の静電チャック、例えば、単極式やn極式(n≧3)でもよい。
エッチング処理を行う場合、処理の対象物である試料40は、処理室10の下部電極15の上に載置され、静電チャック20により吸着される。一方、ガス供給部36からガス導入室34を介して、試料40のエッチング処理に必要なガスが処理室10に供給される。外室11は真空ポンプ18により真空排気され、処理室10が試料の処理圧力、例えば0.4〜4.0Pa(パスカル)になるように減圧排気される。次に、高周波電源16より30MHz〜300MHz、望ましくは50MHz〜200MHzの高周波電力を出力して、処理室10の処理ガスをプラズマ化する。
30ないし300MHzの高周波電力と磁場形成手段200により形成された10ガウス以上110ガウス以下の静磁場の部分とにより、上部電極12と下部電極15との間に電子のサイクロトロン共鳴を生じさせ、この場合、0.4〜4.0Paの低ガス圧でかつ高い密度のプラズマを生成させる。
他方、下部電極15に、パルスバイアス電源17から電圧20V〜1000Vで周期が0.1μs〜10μs、好ましくは、0.2μs〜5μsで正のパルス部分のデューティが0.05〜0.4のバイアスを印加し、プラズマ中の電子やイオンを制御して試料40に対するエッチング処理を行う。
エッチングガスは、ガス拡散板32で所望の分布にされた後、上部電極12及び上部電極カバー30に明けられた孔38を通して処理室10に注入される。
また上部電極カバー30には、カーボンやシリコンあるいはこれらを含有するものを用い、フッ素や酸素成分を除去してレジストやシリコン等の下地との選択比を向上させる。
大口径の試料の微細加工性を向上させるには、プラズマ発生用高周波電源16としてより高い周波数のものを用い、低ガス圧領域での放電の安定化を図るのがよい。本発明では、0.4Paないし4Paの低圧ガスで5×1010ないし5×1011cm−3のプラズマ密度で、かつ、過度にガスの解離を進めず大口径で均一なプラズマを得るために、上部電極12に、プラズマ生成用高周波電源16を接続する。他方、試料を載置した下部電極15には、イオンエネルギー制御用のバイアス電源17を接続しこれら両電極間の距離を、30ないし100mmとする。
また、プラズマ生成用高周波電源16として、30MHzないし300MHz,好ましくは50MHzないし200MHzのVHFを用い、10ガウス以上110ガウス以下、好ましくは17ガウス以上72ガウス以下の静磁場もしくは低周波(1KHz以下)磁場の部分との相互作用により、上部電極12と下部電極15の間に、電子のサイクロトロン共鳴を生じさせる。
図2に、電子のサイクロトロン共鳴を生じる磁場を加えた状態で、プラズマを発生させる高周波電源の周波数を変化させたときの、プラズマ密度の変化の一例を示す。供試ガスはアルゴンにC4F8を2〜10%加えたもの、処理室の圧力は1Paである。プラズマ密度は、f=2450MHzのマイクロ波ECRの場合を1として基準値化している。なお、破線は、磁場無しの場合を示している。
50MHz≦f≦200MHzにおいては、プラズマ密度は、マイクロ波ECRの場合に比べて1桁程度ないし2桁程度低下する。また、ガスの解離も低下し、不要なフッ素原子/分子や、イオンの発生も1桁以上低下する。このVHF帯の周波数と、サイクロトロン共鳴を用いることによって、プラズマ密度の絶対値として、5×1010cm−3以上の、適度に密度の高いプラズマが得られ、0.4〜4Paの低圧で高レートの処理が可能となる。さらに、ガスの解離も過度に進まないために、SiO2等の絶縁膜に対してSiやSiN等の下地との選択比を大きく悪化させることは無い。
50MHz≦f≦200MHzにおいては、従来の13.56MHzの平行平板電極に比べて、ガスの解離が少し進むが、これによるフッ素原子/分子や、イオンのわずかの増加は、電極表面やチャンバ壁面にシリコンや炭素を含む物質を設置して改善することができる。あるいは更に、この電極表面やチャンバ壁面にバイアスを加えることにより、フッ素を炭素やシリコンと化合させて排出したり、水素を含むガスを用いて水素とフッ素とを化合させて排出して改善することができる。
高周波電源の周波数が200MHz以上、特に300MHz以上になると、プラズマ密度が高くなるが、ガスの解離が過度になりフッ素原子/分子やイオンの増加が大きくなり過ぎ、SiやSiN等の下地との選択比を大きく悪化させるので好ましくない。
図3に、サイクロトロン共鳴時と無共鳴時とに電子が高周波電界から得るエネルギー利得kを示す。無磁場時に高周波の1周期中に電子が得るエネルギーを e0とし、サイクロトロン共鳴磁場 Bc=2πf・(m/e)を印加した時に高周波の1周期中に電子が得るエネルギーを e1としたとき、e1,e0は、数1のようになる。
これらの比(=e1/e0)をkとしたとき、kは、次式で表される。但し、m:電子の質量,e:電子の電荷,f:印加周波数
K=(1/2)(ν2+ω2){1/(ν2+(ω−ωc)2))
+(1/(ν2+(ω+ωc)2))}
但し、ν:衝突周波数, ω:励起角周波数,
ωc:サイクロトロン角周波数
一般に、kの値は、ガス圧が低い程、周波数が高い程大きくなる。図3は、Ar(アルゴン)ガスの場合であり、圧力P=1Paにおいては、f≧50MHzでk≧150となり、磁場が無い時に比べて低ガス圧下においても解離が促進される。サイクロトロン共鳴効果は、圧力P=1Paにおいては、20MHz程度以下の周波数では急速に小さくなる。図2に示した特性でも分かるように、30MHz以下の周波数では、磁場無しの場合と差が少なく、サイクロトロン共鳴効果は小さい。
なお、ガス圧を低くすればサイクロトロン共鳴効果は高まるが、1Pa以下ではプラズマの電子温度が高まり、解離が進み過ぎるという逆効果が大きくなる。ガスの過度の解離を抑えて、かつ、プラズマ密度を5×1010cm−3程度以上にするには、ガスの圧力として0.4Paから4Pa、好ましくは1Pa程度から4Paの間が良い。
サイクロトロン共鳴効果を発揮させるためには、kの値を数十以上とする必要がある。図2や図3からも明らかなように、過度にガスの解離を進めずにサイクロトロン共鳴効果を有効に利用するには、ガス圧が0.4Paないし4Paの圧力では、プラズマ生成用高周波電源として、30ないし300MHz,好ましくは50ないし200MHzのVHFを用いる必要がある。
図4は、従来のマグネトロン方式チャンバで上部電極を接地し、下部電極上に均一な横方向の磁界Bを与えると共に、68MHzの高周波電力を印加した時の、試料に誘起されるイオン加速電圧VDCと、試料内の誘起電圧VDCのバラツキΔVを示している。磁場Bの強度を上げると電子に働くローレンツ力によりイオン加速電圧VDCが小さくなり、プラズマ密度が増加する。しかし、従来のマグネトロン放電型の場合、磁場Bの強度が200ガウス程度と大きいため、プラズマ密度の面内の均一性が悪化し、誘起電圧のバラツキΔVが大きくなり、試料のダメージが増大する欠点がある。
図4から、従来のマグネトロン放電型の200ガウスの場合に比べ、ΔVを1/5〜1/10以下にするには、磁場Bの強度は、試料面付近において30ガウス以下、好ましくは15ガウス以下の小さな値とするのが、ダメージを無くす上から望ましい。
サイクロトロン共鳴領域は、上部電極12と下部電極15の中間で、かつ両電極の中間位置よりもやや上部電極側に形成される。図5は、横軸が試料面(下部電極15)から上部電極12までの距離、縦軸が磁場を示している。図5の例は、印加周波数f1=100MHz,Bc=37.5G、電極間隔=50mmの条件で、ECR領域が、試料面から30mm付近に形成されている。
このように本発明では、上部電極12と下部電極15との間で、下部電極15(試料載置面)に平行な磁場成分の最大となる部分を、上部電極面、もしくは両電極の真中より上部電極側に設定する。これによって、下部電極面での試料に平行な磁場強度を30ガウス以下好ましくは15ガウス以下として、下部電極面付近で電子に働くローレンツカ(E×B)を小さい値とし、下部電極面でのローレンツカによる電子ドリフト効果によるプラズマ密度の面内の不均一性の発生をなくすことができる。
図1の実施例の磁場形成手段200によれば、図6に示すように、ECR領域が試料の中央部付近を除き、下部電極15(試料載置面)からほぼ同じ高さの位置に形成される。従って、大口径の試料に対して、均一なプラズマ処理を行うことが出来る。ただし、試料の中心付近では、ECR領域が試料載置面から高い位置に形成されている。ECR領域と試料台間は、30mm以上の距離があるため、この間でイオンやラジカル試は拡散し平均化されるので、通常のプラズマ処理には問題が無い。ただし、試料の全面を均一にプラズマ処理するためには、ECR領域が試料の全面に亘り試料面から同じ高さの位置に、あるいは試料の外側のECR領域が中心付近のECR領域よりも若干試料台側に近くなるように形成されるのが望ましい。この対策については、後で詳細に述べる。
以上述べたように、図1に示す本発明の実施例では、プラズマ発生用高周波電源16として、30ないし300MHzの高周波電力を用い、かつ電子サイクロトロン共鳴によりガスの解離を進めているため、処理室10内のガス圧力が0.4Paないし4Paの低圧の下でも安定したプラズマが得られる。また、シース中でのイオンの衝突が少なくなるので、試料40の処理に際して、イオンの方向性が増し垂直な微細加工性を向上させることができる。
処理室10の周囲は、放電閉じ込め用リング37によってプラズマを試料40付近に極在化させることにより、プラズマ密度の向上を図ると共に、放電閉じ込め用リング37より外の部分への不要なデポジット物の付着を最小とさせる。
なお、放電閉じ込め用リング37としては、カーボンやシリコンあるいはSiC等の半導体や導電材を用いる。この放電閉じ込め用リング37を高周波電源に接続しイオンによるスパッタを生じさせると、リング37へのデポ付着を低減すると共にフッ素の除去効果も持たせることができる。
なお、試料40の周辺の絶縁体13上に、カーボンやシリコンあるいはこれらを含有するサセプタカバー39を設けると、SiO2等の絶縁膜をフッ素を含有するガスを用いてプラズマ処理を行う場合、フッ素を除去出来るので、選択比の向上に役立つ。この場合、バイアス電源17の電力の一部がサセプタカバー39に印加されるように、サセプタカバー39の下部分の絶縁体13の厚みを0.5mm〜5mm程度に薄くすると、イオンによるスパッタ効果により上記効果が促進される。
また、直流電源23の電位により、誘電体の静電吸着膜22を挟んで下部電極15(15A,15B)と試料40を介して静電吸着回路が形成される。この状態で試料40は静電気力により下部電極15に係止、保持される。静電気力により係止された試料40の裏面には、ヘリウム、窒素、アルゴン等の熱伝導ガスが供給される。熱伝導ガスは、下部電極15の凹部に充填されるが、その圧力は、数百パスカルから数千パスカル程度とする。なお、静電吸着力は、ギャップが設けられた凹部の間では、ほとんどゼロであり、下部電極15の凸部においてのみ静電吸着力が発生しているとみなせる。しかし、後で述べるように、直流電源23に電圧を適切に設定して、熱伝導ガスの圧力に十分耐えることのできる吸着力を設定することができるので、熱伝導ガスにより試料40が動いたり飛ばされたりすることはない。
ところで、静電吸着膜22は、プラズマ中のイオンに対するパルスバイアスのバイアス作用を減じる様に作用する。正弦波電源を用いてバイアスをしている従来の方法でもこの作用は生じているが、顕在化していない。しかし、パルスバイアスではイオンエネギー幅が狭いという特徴が犠牲になってしまうため、問題が大きくなる。
本発明では、パルスバイアスの印加に伴い静電吸着膜22の両端間に発生する電圧の上昇を抑制し、パルスバイアスの効果を高めるために、電圧抑制手段を設けたことに1つの特徴がある。
電圧抑制手段の一例としては、パルスバイアスの印加に伴い静電吸着膜の両端間に生ずるバイアス電圧の一周期中の電圧の変化(VCM)が、パルスバイアス電圧の大きさ(Vp)の1/2以下となるように構成するのが良い。具体的には、下部電極15の表面に設けられた誘電体からなる静電吸着膜の膜厚を薄くしたり、誘電体を誘電率の大きい材料とすることにより、誘電体の静電容量を増す方法がある。
あるいはまた、他の電圧抑制手段として、パルスバイアス電圧の周期を短くして電圧VCMの上昇を抑制する方法もある。さらに、静電吸着回路とパルスバイアス電圧印加回路を別な位置、例えば試料が配置保持される電極とは別の対向する電極、あるいは別に設けた第三の電極に、分離して設ける方法も考えられる。
次に、図7〜図13を用いて、本発明における電圧抑制手段によりもたらされるべき、パルスバイアス一周期中の静電吸着膜の両端間に生じる電圧の変化(VCM)とパルスバイアス電圧の関係について詳細に述べる。
まず、本発明のパルスバイアス電源17において使用する望ましい出力波形の例を図7に示す。図中、パルス振幅:vp ,パルス周期:T0 ,正方向パルス幅:T1 とする。
図7(A)の波形をブロッキングコンデンサ,静電吸着用誘電体層(以下、静電吸着膜と略称する)を経由して試料に印加した時、別の電源によりプラズマを発生させた状態での定常状態での試料表面の電位波形を図7(B)に示す。
ただし、波形の直流成分電圧 :VDC
プラズマのフローティングポテンシャル:Vf
静電吸着膜の両端間に生じる電圧の一周期中の最大電圧:VCM とする。
図7(B)中、Vf より正電圧となっている(I)なる部分は、主に電子電流のみを引き込んでいる部分であり、Vf より負の部分は、イオン電流を引き込んでいる部分,Vf の部分は、電子とイオンとがつりあっている部分(Vf は通常数V〜十数V)である。
なお、図7(A)および今後の説明では、ブロッキングコンデンサの容量や試料表面近辺の絶縁体による容量は静電吸着膜による容量(以下静電吸着容量と略称する)に比べて十分大きいと仮定している。
VCMの値は次の式(数2)で表わされる。
但し、q:(T0−T1)期間に試料に流入するイオン電流密度(平均値)
c:単位面積当りの静電吸着容量(平均値)
ii :イオン電流密度, εr :静電吸着膜の比誘電率
d:静電吸着膜の膜厚 ε0 :真空中の誘電率(定数)
K:静電吸着膜の電極被覆率(≦1)
図8及び図9に、パルスデューティ比:(T1/T0)は一定のままT0 を変化させた時の試料表面の電位波形とイオンエネルギーの確率分布を示す。但し、T01,T02:T03:T04:T05=16:8:4:2:1とする。
図8の(1)に示す様に、パルス周期T0 が大きすぎると、試料表面の電位波形は矩形波から大きくはずれ、三角波になり、イオンエネルギーは図9に示すように、低い方から高い方まで一定の分布となり好ましくない。
図8の(2)〜(5)に示す様に、パルス周期T0 を小さくするにつれて、(VCM/vp )は1よりも小さな値となり、イオンエネルギー分布も狭くなってゆく。
図8,図9においてT0=T01,T02:T03:T04:T05は、
(VCM/vp )=1,0.63,0.31,0.16,0.08に対応している。
次に、パルスのオフ(T0−T1)期間と、静電吸着膜の両端間に生じる電圧の一周期中の最大電圧VCMの関係を図10に示す。
静電吸着膜として、厚み0.3mmの酸化チタン含有アルミナ(εr=10)を用いて電極の約50%を被膜(K=0.5 )した場合、イオン電流密度ii =5mA/cm2 の中密度プラズマ中でのVCMの値の変化を図10の太線(標準条件の線)で示す。
図10から明らかなように、パルスのオフ(T0−T1)期間が大きくなるにつれ、静電吸着膜の両端間に生じる電圧VCMはそれに比例して大きな値となり、通常使用されるパルス電圧vp 以上になってしまう。
例えば、プラズマエッチング装置においては、ダメージ,下地やマスクとの選択性,形状等により通常、
ゲートエッチングでは 20volt ≦ vp ≦100volt
メタルエッチングでは 50volt ≦ vp ≦200volt
酸化膜エッチングでは 250volt ≦ vp ≦1000volt
に制限される。
後述の(VCM /vp )≦0.5の条件を満たそうとすると標準状態では、(T0−T1)の上限は次のようになる。
ゲートエッチングでは (T0−T1)≦0.15μs
メタルエッチングでは (T0−T1)≦0.35μs
酸化膜エッチングでは (T0−T1)≦1.2μs
ところで、T0 が0.1μs に近くなると、イオンシースのインピーダンスがプラズマのインピーダンスに近づくかそれ以下となるため、不要なプラズマの発生を生じると共に、バイアス電源がイオンの加速に有効に使われなくなってくる。このため、バイアス電源によるイオンエネルギーの制御性が悪化するため、T0 は、0.1μs以上、好ましくは0.2μs以上が良い。
従って、vpを低くおさえられるゲートエッチャ等においては、静電吸着膜の材料を比誘電率が10〜100と高いもの、(例えばTa2O3でεr=25)に変えたり、絶縁耐圧を低下させず膜厚を薄く、例えば10μm〜400μm、望ましくは10μm〜100μmにしたりする必要がある。
図10には、単位面積当りの静電容量cを、それぞれ2.5倍、5倍、10倍に増加させた時のVCMの値も併記した。静電吸着膜の改善を行っても現状では静電容量cを数倍にする改善が限度とみられ、VCM≦300 volt、c≦10c0とすると、
0.1μs≦(T0−T1)≦10μsとなる。
イオンの加速によりプラズマ処理に有効な部分は(T0−T1)の部分であり、パルスデューティ(T1/T0)としてはできるだけ小さい方が好ましい。
時間平均も加味した、プラズマ処理の効率として(VDC/vp)で見積ったのが、図11である。(T1/T0)を小さくし、(VDC/vp)を大きくするのが好ましい。
プラズマ処理の効率として0.5≦(VDC/vp)を仮定し、後述の条件、(VCM/vp )≦0.5を入れると、パルスデューディは、(T1/T0)≦0.4程度となる。
なお、パルスデューディ(T1/T0)は小さいほどイオンエネルギーの制御に有効であるが、必要以上に小さくするとパルス幅T1が0.05μs程度の小さい値となり、数十MHzの周波数成分を多く含むようになり、後述するような、プラズマ発生用高周波成分との分離も難しくなる。図11に示すように、0≦(T1/T0)≦0.05間での(VDC/vp)の低下はわずかであり、(T1/T0)として0.05以上で特に問題は生じない。
ここで図12に、ゲートエッチングの例として、塩素ガス1.3Paをプラズマ化した時のシリコンと下地の酸化膜とのエッチングレートESiおよびESiO2のイオンエネルギー依存性を示す。シリコンのエッチングレートESiは低イオンエネルギーでは一定値になる。イオンエネルギーが10V程度以上では、イオンエネルギーの増加に従って、ESiも増加する。一方下地となる酸化膜のエッチングレートESiO2は、イオンエネルギーが20V程度以下では0であり、20V程度を越えると、イオンエネルギーと共にESiO2は増加する。
その結果、イオンエネルギーが20V程度以下では下地との選択比ESi/ESiO2が∞となる領域が存在する。イオンエネルギーが20V程度以上では、下地との選択比ESi/ESiO2は、イオンエネルギーの増加と共に急速に低下する。
図13は、絶縁膜の一種である酸化膜(SiO2 ,BPSG,HISO等)のエッチングの例として、C4F8ガス1.0Paをプラズマ化した時の、酸化膜とシリコンとのエチングレートESiO2および、ESiのイオンエネルギー分布を示すものである。
酸化膜のエッチングレートESiO2は、低イオンエネルギーでは負の値となり、デポを生じる。イオンエネルギーが400V付近にてESiO2が急速に正に立ち上がり、その後は、徐々に増加する。一方下地となるシリコンのエッチングレートESiは、ESiO2よりイオンエネルギーの高い所で(−)(エッチング)から(+)(エッチング)となり徐々に増加する。
この結果、ESiO2が(−)から(+)に変化する付近にて、下地との選択比ESiO2/ESiが ∞ となり、それ以上でESiO2/ESiはイオンエネルギーの増加と共に急速に低下する。
図12、図13で、実際のプロセスへの適用に対しては、ESiやESiO2の値や、ESi/ESiO2や、ESiO2/ESiの値の大きさを考慮して、バイアス電源を調整してイオンエネルギーを適正値にする。
また、ジャストエッチング(下地膜が現われるまでのエッチング)まではエッチングレートの大きさを優先し、ジャストエッチ後は選択比の大きさを優先してイオンエネルギーをジャストエッチの前後に変更すれば、更に良い特性が得られる。
ところで図12、図13に示した特性は、イオンのエネルギー分布が狭い部分に限定された時の特性である。イオンのエネルギー分布が広い場合の各エッチングレートはその時間平均値となるため、最適値に設定することが出来ず、選択比は大幅に低下してしまう。
実験によると、(VDC/vp)は0.3以下程度であれば、イオンエネルギーの広がりは±15%程度以下となり、図12や図13の特性でも30以上の高い選択比が得られた。また、(VDC/vp)≦0.5であれば、従来の正弦波バイアス法に比べて選択比等の改善が図れた。
このように、静電吸着膜の両端間に生じるパルス電圧の一周期中の電圧変化(VCM)を抑える電圧抑制手段として、VCMが、パルスバイアス電圧の大きさvpの1/2以下となるように構成するのが良く、具体的には、下部電極15の表面に設けられた誘電体の静電チャック膜22の膜厚を薄くしたり、誘電体を誘電率の大きい材料とすることにより、誘電体の容量を増すことができる。あるいは、パルスバイアス電圧の周期を、0.1μs〜10μs、好ましくは0.2μs〜5μs(繰り返し周波数:0.2MHz〜5MHzに対応)と短くし、パルスデューディ(T1/T0)を、0.05≦(T1/T0)≦=0.4として静電吸着膜の両端の電圧変化を抑制する。
あるいはまた、上記誘電体の静電吸着膜の膜厚と、誘電体の比誘電率及びパルスバイアス電圧の周期の幾つかを組み合わせて、静電吸着膜の両端間に生じる電圧VCMの変化が上記した(VCM/vp )≦0.5の条件を満たすようにしても良い。
次に、図1の真空処理室を、絶縁膜(例えばSiO2, SiN,BPSG等)のエッチングに用いた実施例について述べる。
ガスとしては、C4F8:1〜5%,Ar:90〜95%,O2:0〜5%
もしくは、C4F8:1〜5%,Ar:70〜90%,O2:0〜5%,CO:10〜20%,の組成のものを用いる。プラズマ発生用高周波電源16としては、従来よりも高い周波数、例えば40MHzのものを用い、1〜3Paの低ガス圧領域での放電の安定化を計る。
なお、プラズマ源用高周波電源16の高周波化により必要以上の解離が進行する場合は、高周波電源16の出力を高周波電源変調信号源161により、オンオフないしはレベル変調制御する。高レベルの時は、ラジカルの生成に比べてイオンの生成が盛んとなり、低レベルの時は、イオンの生成に比べてラジカルの生成が盛んとなる。オン(またはレベル変調時の高レベル)時間としては5〜50μs程度、オフ時間(またはレベル変調時の低レベル)としては10〜100μs、周期20μs〜150μs程度を用いる。これにより不必要な解離を防ぐとともに、所望のイオン−ラジカル比を得ることができる。
また、プラズマ源用高周波電源の変調周期は、通常、パルスバイアスの周期に比べ長くなる。そこで、プラズマ源用高周波電源の変調周期をパルスバイアスの周期の整数倍にし、2つの間の位相を最適化することにより、選択比の改善ができた。
一方、パルスバイアス電圧の印加によって、プラズマ中のイオンを試料に加速、垂直入射させることにより、イオンエネルギーの制御を行う。パルスバイアス電源17として、例えば、パルス周期:T=0.65μs、パルス幅:T1=0.15μs、パルス振幅:Vp=800Vの電源を用いることにより、イオンエネルギーの分布幅は±15%以下になり、下地のSiやSiNとの選択比として
20〜50の特性の良いプラズマ処理が可能になった。
次に、図14により本発明の他の実施例になる2電極型のプラズマエッチング装置を説明する。この実施例は、図1に示したと同様な構成であるが、試料40を保持する下部電極15が、単極式の静電チャック20を備えた構成となっている点で異なる。下部電極15の上表面に静電吸着用誘電体層22が設けられ、下部電極15には、高周波成分カット用のコイル24を介して直流電源23のプラス側が接続されている。また、20V〜1000Vの正のパルスバイアスを供給するパルスバイアス電源17が、ブロッキングコンデンサ19を介して接続されている。
処理室10の周囲には放電止じ込め用リング37A,37Bを設置し、プラズマ密度の向上を図ると共に、放電止じ込め用リング37A,37B外の部分への不要なデポジット物の付着を最小とさせる。図14の放電止じ込め用リング37A,37Bにおいて、下部電極側の放電止じ込め用リング37Aの土手部の直径は、上部電極側の放電止じ込め用リング37Bの土手部の直径より小さくし、試料周辺での反応生成物の分布を一様にしている。
なお、放電止じ込め用リング37A,37Bの材料として、少なくとも処理室側に面する側に、カーボン、シリコンあるいはSiC等の半導体や導電体を用いる。また、下部電極側リング37Aにはコンデンサ19Aを介して100K〜13.56MHzの放電止じ込めリング用バイアス電源17Aを接続し、上部電極側リング37Bには高周電源16の電力の一部が印加される様に構成し、イオンのスパッタ効果によるリング37A,37Bへのデポ付着を低減すると共にフッ素の除去効果も持たせる。
なお、図14の13A,13Cはアルミナ等で構成される絶縁体であり、13BはSiC,グラッシーカーボン、Si等の導電性の部材である。
リング37A,37Bの導電性が低い場合には、金属等の導体をリング37A,37B中に内蔵させリングの表面と内臓導体の距離を狭くすることにより、高周波電力がリング37A,37Bの表面から放射され易くして、スパッタ効果を高めることができる。
上部電極カバー30は、通常その周辺のみがボルト250で上部電極12に固定される。ガス供給部36からガス導入室34、ガス拡散板32、上部電極12を介して上部電極カバー30にガスが供給される。上部電極カバー30に設けられた孔は、孔中の異常放電を生成し難くするため、0.3〜1mm径の細孔になっており、上部電極カバー30上部のガス圧は1気圧の数分の1から1/10程度となる。例えば300mm径の上部電極カバー30に対して、全体として100Kg程度以上の力が加わる。このため上部電極カバー30が上部電極12に対して凸状になり中央部付近では数百ミクロン以上の隙間を生じる。
この場合、高周波源16の周波数が30MHz程度以上高くなると、上部電極カバー30の横方向抵抗が無視出来なくなり、特に中央部付近のプラズマ密度が低下する現象が出る。これを改善するには、上部電極カバー30を周辺以外の中心寄りで上部電極12に固定すれば良い。図14の例では、SiCやカーボン等の半導体もしくはアルミナ等の絶縁体のボルト251で、上部電極カバー30の中心寄りの数ケ所を上部電極12に固定し、上部電極12側から印加される高周波の分布を一様にしている。
なお、上部電極カバー30の少なくとも中心寄り部分を上部電極12に固定する方法は、何ら上記ボルト251に限定されるものでなく、接着作用のある物質で上部電極カバー30と上部電極12とを全面でもしくは少なくとも中心寄りの部分で接着してもよい。
図14の実施例において、処理の対象物である試料40は、下部電極15の上に載置され、静電チャック20、すなわち直流電源23による正電荷とプラズマから供給される負電荷により静電吸着膜22の両端間に生じるクーロン力により吸着される。
この装置の作用は、図1に示した2電極型のプラズマエッチング装置と同様であり、エッチング処理を行う場合、処理を行なうべき試料40を試料台15に載置し、静電力で保持し、ガス供給系36から処理室10に処理ガスを所定の流量で導入しながら、他方真空ポンプ18により真空排気することにより、処理室10の圧力を試料の処理圧力、0.5〜4.0Paに減圧排気する。次に、高周波電源16をオンとし、両電極12,15間に20MHz〜500MHz、好ましくは30MHz〜100MHzの高周波電圧を印加してプラズマを発生させる。他方、下部電極15に、パルスバイアス電源17から20V〜1000V、周期が0.1μs〜10μs好ましくは0.2μs〜5μsの正のパルスバイアス電圧を印加し、処理室10内のプラズマを制御して試料40にエッチング処理を行う。
このようなパルスバイアス電圧の印加によって、プラズマ中のイオンもしくはイオン及び及び電子を試料に加速、垂直入射させることにより、高精度の形状制御あるいは選択比制御を行う。パルスバイアス電源17及び静電吸着膜22に必要な特性は図1の実施例と同様であり、詳細は省略する。
次に、図15ないし図17により本発明の他の実施例を説明する。この実施例は、図1に示した2電極型のプラズマエッチング装置と同様な構成であるが、磁場形成手段200の構成が異なる。磁場形成手段200のコア201は、偏心しており、試料40の中心位置に相当する軸を中心にして、モータ204により駆動されて毎分数ないし数十回転の速度で回転するように構成されている。なお、コア201は接地されている。
試料の全面を高精度にプラズマ処理するためには、試料の中央部付近に比べ、試料の周辺部ないしはその外側付近のプラズマの生成が高まる様に、電子のサイクロトロン共鳴効果を中央に比べ、周辺部ないしはその外側で大きくするのがよい。しかし、図1の実施例の場合、図6に示したように、試料の中心付近ではECR領域が無く、中心付近でプラズマ密度が低くなり過ぎる場合が出てくる。
図15の実施例では、磁場形成手段200の偏心したコア201が回転することによって磁場の分布が変化し、試料の中心付近では時刻t=0,t=T0では、ECR領域が試料面から低い位置に形成され、時刻t=1/2T0では試料面から高い位置に形成される。コア201が毎分数ないし数十回転の速度で回転する結果、図17に示すように、両電極の中間部における試料面に平行な方向の磁場強度の平均値が、回転による時間平均化によりほぼ同じ値になる。すなわち、ECR領域が試料の周辺部を除き試料面からほぼ同じ高さの位置に形成される。
なお、図15のコア201部に一点鎖線で示したように、偏心した中央部のコアに近い側の磁気回路を構成するコアはその厚さを薄く、遠い側の磁気回路を構成するコアはその厚さを厚くすれば、磁場強度の均一性はさらに向上する。
次に、図18ないし図19により本発明の他の実施例を説明する。この実施例は、図15に示した2電極型のプラズマエッチング装置と同様な構成であるが、磁場形成手段200の構成が異なる。磁場形成手段200のコア201は、処理室の中央に対応する位置に凹面のエッジ201Aを有し、処理室の側方位置他のエッジ201Bを有している。凹面のエッジ201Aの作用により、磁束Bは傾斜した方向成分を有する。その結果、磁場の分布が変化し、図19に示したように、試料面に平行な成分の磁場強度が図1の実施例の場合に比べて、より均一化される。
次に、図20により本発明の他の実施例を説明する。この実施例は、図15に示した2電極型のプラズマエッチング装置と同様な構成であるが、磁場形成手段200の構成が異なる。磁場形成手段200のコア201は固定式であり、処理室の中央に対応する位置に配置されたコア205と共に磁気回路を構成する。コア205は、絶縁体203と共に、エッジ201Aの中心を通る軸の廻りを回転する。このような構成により、図15の実施例と同様にして、試料の中心付近におけるECR領域の平均的な位置が、試料面からほぼ同じ位置に形成される。すなわち、ECR領域が試料の全面に亘り試料面からほぼ同じ高さの位置に形成される。
次に、図21ないし図22により本発明の他の実施例になる2電極型のプラズマエッチング装置を説明する。この実施例では、磁場形成手段200が、処理室10の周囲に2対のコイル210,220を備えており、各対のコイルに置ける磁界の向きを矢印1,2,3,4のように順次切り替えることにより、回転磁界を形成するように構成されている。コイル210,220の中心位置O−Oは、両電極12,15の中間よりも上部電極12側に位置している。これによって、試料40上の磁場強度を30ガウス以下、好ましくは15ガウス以下になるように構成している。
コイル210,220の位置、外径を適宜選定することによって、試料の周辺部ないしはその外側付近のプラズマの生成がより高まる様に、磁場の強度分布を調整することができる。
次に、図23、図24により、本発明の他の実施例になる2電極型のプラズマエッチング装置を説明する。この実施例では、磁場形成手段200として、円形の処理室10の周囲に沿って水平面内で円弧状に配置された一対のコイル210’を備えている。この一対のコイル210’に流れる電流を制御して、図23に矢印(1)、(2)で示したように、一定周期毎に磁場の極性を変化させる。
図24に破線で示すように、磁束Bは、垂直面内では処理室中心部で拡がるため、処理室中心部の磁場強度は低下する。しかし、一対のコイル210’は、処理室に沿ってカーブしているため、水平面内では、処理室中心部に磁束Bが集まる様になっている。そのため、処理室中心部の磁場の強さを、図22の実施例に比べて、高めることができる。すなわち、図23の実施例では、図22の実施例に比べて、処理室中心部における磁場強度の低下を抑制することができ、試料台の試料載置面における磁場強度の均一性を向上させることができる。
また、一定周期毎に磁場の極性を変化させることによって、E×Bのドリフト効果を少なくしている。
なお、磁場形成手段200として、図22の実施例と同様な、2対のコイルを採用しても良い。
また、磁場形成手段200として、円弧状コイル210’に代えて、図25に示すように、円形の処理室10の周囲に沿って配置された複数の直線コイル部分の組み合わせになる、凸型のコイル210’としても良い。この場合も、水平面内では、処理室中心部に磁束Bが集まる様になり、図23の実施例と同じ効果が得られる。
さらに、図26の実施例のように、1対のコイルの中心軸を、処理室中心部で試料面に近づくように、垂直面内で傾斜させて配置しても良い。この実施例によれば、処理室中心部の磁場強度を上げ、処理室周辺部の磁場強度を下げることができるので、試料台の試料載置面における磁場強度の均一性を向上させることができる。なお磁場強度の均一化のためには、コイルの中心軸の傾斜角度θを、5度乃至25度の範囲とするのが良い。
また、図27に示すように、一対のコイル210Aの近傍に、コイル210Bを設置し、2組のコイルの電流を制御することにより、ECR共鳴位置と共に、ECR共鳴位置付近での磁場の勾配を変化させ、ECR共鳴領域の幅を変化させることもできる。ECR共鳴領域の幅をプロセス毎に最適化することにより、各プロセスに適したイオン/ラジカル比を得ることが可能となる。
なお、以上述べた、図23乃至図27の実施例を、必要に応じて適宜組み合わせることにより、磁場強度分布の均一性と制御特性を更に向上させることが出来る。
次に、図28ないし図29により本発明の他の実施例になる2電極型のプラズマエッチング装置を説明する。この実施例では、処理室壁の一部が導電体で構成されると共に接地されている。一方、磁場形成手段200が、処理室10の周囲及び上部にコイル230,240を備えている。コイル230で形成される磁束Bの向きと、コイル230で形成される磁束B’の向きは、矢印で示すように、処理室10の中心部では互いに打消合い、処理室10の周辺および外側では互いに重畳するように構成されている。その結果、試料面上の磁場の強度分布は図29のようになる。しかも、試料40の載置面部分では、上部電極12と下部電極15の間の、電界成分の向きと磁界成分の向きは平行である。一方、試料40の載置面の外側部分では、上部電極12の周辺部ないしは上部電極12と処理室壁との部分で、横方向の電界成分と直交する縦方向の磁界成分が生じる。
従って、図28の実施例によれは、試料の中心付近における電子のサイクロトロン共鳴効果を下げ、試料の周辺部ないしはその外側付近のプラズマの生成を高めることができる。このようにして、試料の周辺部ないしはその外側付近のプラズマの生成をより高めることにより、プラズマ密度分布を均一化することができる。
次に、図30により本発明の他の実施例を説明する。この実施例は、図1に示した2電極型のプラズマエッチング装置において、高周波電源16から上部電極12に印加する高周波電力f1では、充分なイオンエネルギーが得られない場合に、低周波電源163から上部電極12に、例えば1MHz程度以下の高周波f3をバイアスとして印加することによって、イオンエネルギーを100〜200V程度増大させるものである。なお、164,165はフィルターである。
次に、図31により、無磁場型の2電極型のプラズマエッチング装置における、本発明の実施例を説明する。
前にも述べたように、試料の微細加工性を向上させるには、プラズマ発生用高周波電源16としてより高い周波数のものを用い、低ガス圧領域での放電の安定化を計るのがよい。本発明の実施例では、処理室10における試料の処理圧力を0.5〜4.0Paとしている。処理室10内のガス圧力を40mTorr以下の低圧にすることにより、シース中でのイオンの衝突が少なくなるので、試料40の処理に際して、イオンの方向性が増し垂直な微細加工が可能になった。なお、5mTorr以下では、同じ処理速度を得るには、排気装置や高周波電源が大型化すると共に、電子温度の上昇による必要以上の解離が生じ、特性が劣化する傾向がある。
一般に、一対の2電極を用いたプラズマ発生用の電源の周波数と安定的に放電が行われる最低のガス圧力との間には、図32に示すように、電源の周波数が高くなるほど、電極間距離が大きくなるほど、安定放電最低ガス圧が低下するという関係がある。周囲の壁や放電閉込めリング37へのデポ等の悪影響を避け、上部電極カバー30やサセプタカバー39や試料中のレジスト等によるフッ素や酸素を除去する効果を有効に機能させるために、最高ガス圧40mTorr時の平均自由工程の25倍以下に対応して、電極間距離を50mm程度以下とするのが望ましい。また、電極間距離として、最高ガス圧(40mTorr)時の平均自由工程の2〜4倍(4mm〜8mm)程度以上でないと、安定な放電が困難となる。
図31に示した実施例では、プラズマ発生用高周波電源16として、20MHz〜500MHz、望ましくは30MHz〜200MHzの高周波電力を用いるため、処理室内のガス圧力を、0.5〜4.0Paの低圧にしても、安定したプラズマが得られ、微細加工性を向上させることができる。また、このような高周波電力を用いることによりガスプラズマの解離が良くなり、試料加工時の選択比制御が良くなる。
以上述べた本発明の実施例において、パルスバイアス電源の出力とプラズマ発生用電源の出力との間に干渉が生ずる可能性も考えられる。そこで、以下、この対策についてのべる。
まず、パルス幅:T1,パルス周期:T0で無限大の立上り/立下り速度をもつ理想的な矩形パルスにおいては、図33に示す様に、f≦3f0(f0=(1/T1))の周波数範囲に70〜80%程度の電力が含まれる。実際に印加される波形は、立上り/立下り速度が有限となるため、電力の収束性は更に改善され、f≦3f0の周波数範囲に90%程度以上の電力が含まれる様にできる。
3f0 なる高い周波数成分をもつパルスバイアスを試料面内に均一に印加される様にするためには、試料にほぼ平行な対向電極を設け、次式数3で求まる3f0に対して、f≦3f0 なる範囲の周波数成分を接地することが望ましい。
図31に示した実施例は、上記パルスバイアス電源出力とプラズマ発生用電源出力との干渉の対策を行っている。すなわち、このプラズマエッチング装置において、試料40と対向する上部電極12には、プラズマ発生用高周波電源16が接続される。この上部電極12をパルスバイアスの接地レベルにするには、プラズマ発生用高周波電源16の周波数f1 を上記の3f0 より大きくし、かつ、f=f1 付近でのインピーダンスが大きく、他の周波数ではインピーダンスが低い、バンドエリミネータ141を上部電極12と接地レベルとの間に接続する。
一方、f=f1 付近でのインピーダンスが低く、他の周波数はインピーダンスが高いバンドパスフィルタ142を、試料台15と接地レベル間に設置する。このような構成を用いれば、パルスバイアス電源17の出力とプラズマ発生用電源16出力との間の干渉を、問題のないレベルに抑え、試料40に良好なバイアスを加えることができる。
図34は、本発明を外部エネルギー供給放電方式のうち誘導結合型放電方式でかつ、無磁場タイプのプラズマエッチング装置へ適用した例である。52は平面コイル、54は平面コイルに10MHz〜250MHzの高周波電圧を印加する高周波電源である。誘導結合型放電方式は図10に示した方式に比べ、低い周波数でかつ低圧での安定なプラズマ発生が可能になる。逆に、解離が進みやすくなるため、図1で示したように、高周波電源1の出力を高周波電源変調信号源161により変調し、不必要な解離を防ぐことが出来る。真空容器としての処理室10は、静電吸着膜22の上に試料40が載置される試料台15を備えている。
エッチング処理を行う場合、処理を行なうべき試料40を試料台15に載置し、静電力で保持し、ガス供給系(図示せず)から処理室10に処理ガスを所定の流量で導入しながら、他方真空ポンプにより真空排気することにより、処理室10の圧力を0.5〜4.0Paに減圧排気する。次に、高周波電源54に13.56MHzの高周波電圧を加えて処理室10にプラズマを発生させる。このプラズマを用いて試料40をエッチング処理する。他方、エッチング時には、下部電極15に、周期が0.1μs〜10μs好ましくは0.2μs〜5μsのパルスバイアス電圧を印加する。パルスバイアス電圧の振幅は、膜種により範囲が異なることは図1の実施例で述べたとおりである。このパルスバイアス電圧の印加によって、プラズマ中のイオンを試料に加速、垂直入射させることにより、高精度の形状制御あるいは選択比制御を行う。これにより、試料のレジストマスクパターンが極微細なものであっても、高精度のエッチング処理を行うことができる。
また、図35に示すように、誘導結合型放電方式無磁場タイプのプラズマエッチング装置において、誘導電高周波出力の処理室10側に、隙間を有するファラデーシールド板53と、0.5mm〜5mmの薄いシールド板保護用絶縁板54を設置し、そのファラデーシールド板を接地してもよい。ファラデーシールド板53の設置によって、コイルとプラズマ間の容量成分が少なくなり、図34におけるコイル52下の石英板やシールド板保護用絶縁板54を叩くイオンのエネルギーを低下することが出来、石英板や絶縁板の損傷を少なくすると共に、プラズマ中への異物の混入を防ぐことが出来る。
また、ファラデーシールド板53は、パルスバイアス電源17の接地電極の役目も兼ねるため、試料40とファラデーシールド板53との間に均一にパルスバイアスを印加することが出来る。この場合、上部電極や試料台15に設置するフィルタは不要である。
図36は、本発明をマイクロ波プラズマ処理装置に適用した装置の一部を縦断面した正面図である。静電吸着膜22の上に試料40が載置される試料台15としての下部電極15には、パルスバイアス電源17及び直流電源13が接続されている。41はマイクロ波の発振源としてのマグネトロン、42はマイクロ波の導波管であり、43は、処理室10を真空封止しマイクロ波を処理室10に供給するための石英板である。47は磁場を供給する第一のソレノイドコイル、48は磁場を供給する第二のソレノイドコイルである。49は処理ガス供給系であり、処理室10内にエッチング、成膜等の処理を行なう処理ガスを供給する。また、処理室10は、真空ポンプ(図示せず)により真空排気される。パルスバイアス電源17及び静電チャック20に必要な特性は図1の実施例と同様であり、詳細は省略する。
エッチング処理を行う場合、処理を行なうべき試料40を試料台15に載置し、静電力で保持し、ガス供給系49から処理室10に処理ガスを所定の流量で導入しながら、他方真空ポンプにより真空排気することにより、処理室10の圧力を0.5〜4.0Paに減圧排気する。次に、マグネトロン41及び第一、第二のソレノイドコイル47、48をオンとし、マグネトロン41で発生したマイクロ波を導波管42から処理室10に導びいて、プラズマを発生させる。このプラズマを用いて試料40にエッチング処理を行う。他方、エッチング時には、下部電極15に、周期が0.1μs〜10μs好ましくは0.2μs〜5μsのパルスバイアス電圧を印加する。
このようなパルスバイアス電圧の印加によって、プラズマ中のイオンを試料に加速して、垂直に入射させることにより、高精度の形状制御あるいは選択比制御を行う。これにより、試料のレジストマスクパターンが極微細なものであっても、垂直入射によりマスクパターンに対応した高精度のエッチング処理が行える。
なお、図1以下に示した本発明のプラズマエッチング装置において、静電吸着回路の直流電圧とパルスバイアス電源回路のパルス電圧を重畳して生成し、回路を共通に構成することもできる。また、静電吸着回路とパルスバイアス電源回路を別な電極に分離して設け、パルスバイアスが静電吸着に影響を及ぼさないようにすることもできる。
図1に示したプラズマエッチング装置の実施例における静電吸着回路に代えて、他の吸着手段、例えば真空吸着手段を用いることもできる。
以上述べた本発明の静電吸着回路とパルスバイアス電圧印加回路を備えたプラズマ処理装置は、エッチングガスに代えてCVDガスを導入する等の変更を加えることにより、以上述べたエッチング処理に限らずCVD装置等のプラズマ処理装置にも適用できる。
次に、図37に示した本発明の他の実施例により、従来の欠点を改善し、イオンとラジカル生成の量と質を制御し、極微細なプラズマ処理を可能とするプラズマエッチング装置の他の実施例について述べる。
すなわち、試料を設置している真空処理室の上流側で真空処理室とは別の場所に第一のプラズマ生成を行う場所を設定し、そこで生成した準安定原子を真空処理室に注入し、真空処理室にて第二のプラズマを生成する構成としている。図1に示したプラズマエッチング装置に加えて、イオン・ラジカル源用ガス供給部60と、準安定原子発生用プラズマ発生室62を備えている。また上部電極12には、準安定原子を含むガスを真空処理室に導入するル−トのほかに、イオン・ラジカル源用ガス供給部に繋がっている導入ル−トを設けている。
この実施例の特徴は、次の通りである。
(1)準安定原子発生用ガス供給部36から供給されたガスを準安定原子発生用プラズマ発生室62にて高周波電力を印加してプラズマ化し、あらかじめ所望の準安定原子を所望量発生させ処理室10に流入させる。準安定原子発生用プラズマ発生室62は、効率良く準安定原子を発生させるために、室内の圧力は、数百mTorr〜数十Torrの高い圧力に設定する。
(2)他方、イオン・ラジカル源用ガス供給部60からのガスを処理室10に流入させる。
(3)プラズマ発生用電源16で比較的低電力の高周波を出力し、処理室10にプラズマを発生させる。準安定原子の注入により、5eV程度以下の低エネルギ−の電子でもイオンを効率良く生成させることができるため、低電子温度(6eV程度以下、好ましくは4eV程度以下)で、かつ15eV程度以上の高エネルギ−電子が大幅に少ないプラズマが得られる。このため、ラジカル源用ガスは過剰な解離を生じさせることなく必要な量と質を確保出来る。一方イオンの量は、準安定原子発生用プラズマ発生室62にて発生する準安定原子の量と、イオン・ラジカル源用ガス供給部60からのイオン源用ガスにて制御することができる。
このようにしてイオンとラジカル生成の質や量を制御できる様になるため、極微細なプラズマ処理においても良好な性能が得られる。ラジカル源用ガスとしては、CHF3、CH2F2,C4F8あるいはCF4などのフルオロカ−ボンガスに、必要に応じてC,Hを含むガス(C2H4,CH4,CH3OHなど)を混ぜてもちいる。準安定原子発生用ガスとしては、1種類ないしは2種類の希ガスをべ−スにしたものを用いる。イオン源用ガスとしては、下記の性質を持つ希ガス等を用いることにより、効率良くイオンを生成できる。
前記準安定原子のエネルギ−凖位に対し、イオン源用ガスの電離凖位が低いもの、もしくは、イオン源用ガスの電離凖位の方が高いが、その差が小さい(5eV程度以下)ものが用いられる。
尚、性能的には低下するがイオン源用ガスとして特に追加せず、上記準安定原子発生用ガスやラジカル源用ガスで代用することもできる。
次に、図38にイオンとラジカル生成の質や量を制御する本発明の他の実施例を示す。図37と基本的考えは、同じであるが、図37において、準安定原子発生用プラズマ室62と真空処理室10との間の距離が長く、この間での準安定原子の減衰が大きい場合の対策として実施する例である。41はマイクロ波の発振源としてのマグネトロン、42はマイクロ波の導波管であり、43は第一のプラズマ生成室45を真空封じして、マイクロ波を通過させるための石英板であり、44はガス分散用の石英板である。第一のプラズマ生成室45では、数100mTorrから数10Torrのガス圧で前記マイクロ波によりプラズマを発生させ、準安定原子を発生させる。
図38では、図37に比較し準安定原子の発生場所と真空処理室間の距離を短く出来るため、高い密度で準安定原子を真空処理室に注入することができ、真空処理室10におけるイオンの量を増加できる。処理室10は5〜50mTorrの圧力に保ち、20MHz以上の高周波電源16により、5eV好ましくは3eV以下で10の10乗から11乗台/cm3の高密度低電子温度プラズマを発生させ、解離エネルギ−として8eV以上を必要とするCF2の解離を避けつつ、イオン源用ガスの電離を進行させる。この結果、試料40の表面上では、バイアス電源17により数100Vで加速されたイオンの入射でアシストされた下記反応が主に進行する。
SiO2+2CF2 → SiF4 ↑+2CO ↑
なお、下地材料となるSiやSiNは、CF2ではエッチングされないため、高選択比の酸化膜エッチングが可能となった。
また、CF2の一部解離によるFの増加は、シリコン、カ−ボンもしくはSiC等からなる上部電極カバ−30により減少させている。
上で述べたように、ラジカル源用ガスとイオン源用ガスとを調節することにより、処理室10内でのイオンとラジカルとの比率をほぼ独立に制御でき、試料40の表面での反応を所望のものにコントロ−ルすることが容易になった。
本発明の、静電吸着回路とパルスバイアス電圧印加回路を備えたプラズマ処理装置は、エッチングガスに代えてCVDガスを導入する等の変更を加えることにより、以上述べたエッチング処理に限らずCVD装置等のプラズマ処理装置にも適用できる。
次に、図39にイオンとラジカルとを独立に制御する本発明の他の実施例を示す。図39において、CHF3、CH2F2,C4F8あるいはCF4などのフルオロカ−ボンガスに、必要に応じてC,Hを含むガス(C2H4,CH3OHなど)を混ぜ、図39のAなる部分よりバルブ70を経由してラジカル発生用プラズマ発生室62に入れる。
ラジカル発生用プラズマ発生室62では、数MHzないしは数10MHzのRF電源63の出力をコイル65に印加し、数100mTorrから数10Torrのガス圧でプラズマを発生させ、主にCF2ラジカルを発生させる。同時に発生するCF3やFはH成分により減少させる。
なお、ラジカル発生用プラズマ発生室62でCFやO等の成分を大幅に減少させることは困難なため、この後に不要成分除去室65を設ける。ここでは、カ−ボンやSiを含む材質(カ−ボン、Si,SiC等)の内壁を設置し、不要な成分を減少、あるいは悪影響の少ない別のガスに変換させる。不要成分除去室65の出口は、バルブ71に接続し、CF2が主成分のガス組成を供給する。
なお、バルブ70とバルブ71との間は、デポ物等の堆積物が多く蓄積するため、比較的短期間で清掃や交換が必要である。このため、大気開放と交換とを容易にすると共に、再立ち上げ時の真空立ちあげ時間の短縮のため、バルブ72を経由して排気装置74に接続している。なお排気装置74は、処理室10用排気装置等と兼用してもよい。
またイオン源用ガス(アルゴンガスやキセノンガス等の希ガス)Bはバルブ73を経由し、前記のバルブ71の出口と繋ぎ処理室に供給する。
処理室10は5〜40mTの圧力に保ち、変調を施した20MHz以上の高周波電源16により、5eV好ましくは3eV以下で10の10乗から11乗台/cm3の高密度低電子温度プラズマを発生させ、解離エネルギ−として8eV以上を必要とするCF2の解離を避けつつ、イオン源用ガスの電離を進行させる。
この結果、試料40の表面上では、バイアス電源17により数100Vで加速されたイオンの入射でアシストされた下記反応が主に進行する。
SiO2+2CF2 → SiF4 ↑+2CO ↑
なお、下地材料となるSiやSiNは、CF2ではエッチングされないため、高選択比の酸化膜エッチングが可能となった。
また、CF2の一部解離によるFの増加は、シリコン、カ−ボンもしくはSiC等からなる上部電極カバ−30により減少させている。
上で述べたように、ラジカル源用ガスAとイオン源用ガスBとを調節することにより、処理室10内でのイオンとラジカルとの比率をほぼ独立に制御でき、試料40の表面での反応を所望のものにコントロ−ルすることが容易になった。また、不必要なデポ成分等は、不要成分除去室65で排除し、処理室10には極力持ち込まないようにしているため、処理室10内のデポは大幅に低減され、処理室10を大気に開放して行う清掃の頻度も大幅に低減できた。
次に、図40にイオンとラジカルとを独立に制御する他の実施例を示す。酸化ヘキサフルオロプロピレンガス(CF3CFOCF2,以下HFPOと略す)をAより、バルブ70を経由して加熱パイプ部66に通し、不要成分除去室65とバルブ71を経由し、イオン源ガスBと混合し、処理室10のほうに送る。加熱パイプ部66では、800℃〜1000℃にHFPOを加熱し下記の熱分解によりCF2を生成する。 CF3CFOCF2 → CF2+CF3CFO
CF3CFOは比較的安定な物質で分解しにくいが、一部分解し不要なOやFを発生するため、加熱パイプ部66の後に不要成分除去室65をもうけ不要成分を除去、あるいは悪影響のでない物質に変換している。一部のCF3CFOCF2は分解しないで処理室10に流入するが、5eV以下の低電子温度のプラズマでは解離しないため問題とはならない。
なお、バルブ72、排気装置74の用い方ならびに処理室10内での反応は、図39の場合と同じである。
本発明の、静電吸着回路とパルスバイアス電圧印加回路を備えたプラズマ処理装置は、エッチングガスに代えてCVDガスを導入する等の変更を加えることにより、以上述べたエッチング処理に限らずCVD装置等のプラズマ処理装置にも適用できる。
10…処理室、12…上部電極、15…下部電極、16…高周波電源、17…パルスバイアス電源、18…真空ポンプ、20…静電チャック、22…静電吸着膜、23…直流電源、30…上部電極カバー、32…ガス拡散板32、36…ガス供給部3、40…試料、161…高周波電源変調信号源、200…磁場形成手段200、201…コア、202…電磁コイル、203…絶縁体。