JP4387379B2 - カルシウム補強剤 - Google Patents

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Description

本発明は、カルシウム補強剤、特に加水した場合に沈降することなく極めて長期間の間安定に分散懸濁することができる、従来未知の新規カルシウム補強剤に関するものである。また本発明は、この新規カルシウム補強剤を添加してなる食品に関するものである。なお、本発明において、食品には飲料も包含される。
現在、オステオポローシス(骨粗しょう症)の患者が1000万人いると言われており、現代の食生活においてカルシウム摂取は重要な問題である。しかし、食生活の動向が、決してカルシウム摂取を増加させる方向に向かっていないことを考慮すると、カルシウム含有食品、種々のカルシウム製剤などを積極的に利用することが必要になってきた。また、日本と米国ではカルシウム摂取量に関する基準が異なるが、日本では摂取量が低く、本来ならば基準以上の摂取が必要とも考えられている。特に閉経後の女性では、一日の必要摂取量が1000mgとも1500mgとも言われている。閉経後の骨障害が老化現象として捉えられているが、老後生活のQOL、骨折、心筋梗塞予防などのためにも内分泌疾患の一つとして捉え、早期から予防、治療をする必要がある。現実に、日本での食生活の変化が、カルシウム摂取を増加させる方向にないことを考えると、カルシウム摂取の問題は更に大きなものとなる。
オステオポローシスを防ぐには、成長期において骨量を可能な限り大きくし、骨量の減少期に、減少した骨量を増加させる方法が望まれているが、食品からの摂取に依存する方法、あるいは薬剤に依存するなどの方法がある。薬剤では、カルシトニン及びビタミンDが現在主要部分が占めており、カルシウム強化食品も多く出されているのが現状である。理想的には日常の食生活において必要量を摂取することが望まれ、食品へのカルシウム強化が積極的になされているのが現状であるが、カルシウムの素材、添加方法、安定性などの問題がある。
食品への応用の場合、主として炭酸カルシウムなどを添加補強している場合が多い。しかし、特に液状食品の場合には、添加した炭酸カルシウムが粒子サイズによって沈降したり、増加量によってはかなりの白濁を呈したり、また、液状に懸濁させた場合、苦みを呈する等の問題点がある。このように、炭酸カルシウムを食品に応用することに際しては、これらの問題を解決できなければ商品価値を低下させてしまうことになる。
このように従来技術においては、特に液状食品の場合、炭酸カルシウムが沈降してしまうために、容器を振って充分に混合させないで上清のみを飲用した場合は充分量のカルシウムの摂取ができないし、充分に混合すると白濁し、また、添加量が多いと混合しない場合でも白濁するため、外観を損ない、食欲を減退させ、結局、充分量のカルシウムの摂取ができない。更に、上記のように炭酸カルシウムは苦味を呈するため、大量に飲用することができず、やはり充分量のカルシウムの摂取ができない。
食品工業総合事典、第582頁、昭和54年10月25日、光琳発行
本発明は、上記した問題点を有しない新規なカルシウム補強剤を開発する目的でなされたものである。
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、特に、カルシウム摂取不足のわが国の現状に鑑み、液状食品が摂取しやすい点に着目して、液状食品に適したカルシウム補強剤及びカルシウム強化した摂取しやすい液状タイプその他の食品を新たに開発する目的でなされたものである。
そこで、これら問題点を解決するための検討をおこなった。先ず、添加するカルシウム源として、味を呈さないこと、水中での分散が安定することが望ましい。日常的に摂取している食品の中でカルシウム含量の多いものとして、乳製品があげられるが、欧米と比較しその摂取量は少ないのが現状である。乳製品を除いて、カルシウム摂取に良いと言われるものに魚が有り、特に小魚の摂取が良いと言われている。この小魚の骨に存在するカルシウムが重要である。骨の成分としてはリン酸カルシウムがあり、これは即ち、ヒドロキシアパタイトである。そこでヒドロキシアパタイトをカルシウム源と考え、水中の分散安定化が可能であれば、炭酸カルシウムの利用において問題となっている種々の課題を解決する事ができる。ヒドロキシアパタイトは、医薬品分野においても薬剤の担持に利用されようとしており、また歯磨きの中にも添加され、その安全性にも心配がなく、生物学的利用性も高いと言われている。そこでヒドロキシアパタイトの超微粒子を利用する点に着目した。
たしかにヒドロキシアパタイトは苦味を呈することはもちろんないし、味自体を呈することがないため、経口投与用カルシウム補強剤の成分としては非常にすぐれているが、微粒子状にしても水中においては二次凝集を呈し、沈降する。そのため、分散安定化処理の必要を認めた。
そこで、ヒドロキシアパタイトの分散安定化を可能とすることができる物質を検索した結果、クエン酸(又はその塩)又はカゼインホスホペプチド(以下、CPPということもある)などのペプチド又はアルブミンなどの蛋白質でヒドロキシアパタイトの微粒子を表面処理し、これを水中に投じたところ、長期間に亘って沈降現象が認められず、苦味はもとより格別の呈味も認められないという有用な新知見を得た。
これらのことを総合して考え、クエン酸(又はその塩)含有液、又は蛋白質又はペプチドを用い、ヒドロキシアパタイト超微粒子を水中においても極めて長期間安定に分散懸濁できるカルシウム補強剤を完成させた。本補強剤をスラリー状にして液状食品に応用すると、沈降することなく、白濁も極めて軽微なものであり、粉体にして固体食品に添加しても良い。これらの新知見を総合して本発明を完成させるに至ったものであり、本発明は、ヒドロキシアパタイトを蛋白質又はペプチドで表面処理してカルシウム補強剤を製造する点を基本的技術思想とするものである。
本発明に係わるカルシウム補強剤は、カルシウムを長期間安定的に溶液中で懸濁維持することができるという優れた特徴を有するので、各種液状食品のカルシウム原料としては極めて有用である。また、保存中に溶液中のヒドロキシアパタイト量がわずかに低下する可能性はあるものの、品質保証期間、配合量を考慮することにより充分実用性がある。
本発明は、ヒドロキシアパタイトを蛋白質又はペプチドで処理することにより、カルシウムを長期間安定的に溶液中で懸濁維持できる新規カルシウム補強剤に関するものである。なお、本明細書においては、本発明の理解を容易ならしめるために、ヒドロキシアパタイトをクエン酸(又はその塩)含有液で処理してなるカルシウム補強剤についても参考例として記載されている。以下、本発明について詳述する。
本発明において使用するヒドロキシアパタイトは、微粒子とするのが良く、800nm以下、好ましくは500nm以下の超微粒子とすれば、水中においても極めて安定なカルシウム補強剤を有利に製造することができる。ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)は、水酸化カルシウムその他カルシウム化合物の水懸濁液にリン酸(塩)溶液を添加する等常法にしたがって製造することができ、合成されたヒドロキシアパタイト(結晶)から、遠心分離その他常法にしたがって目的とする超微粒子を分別すればよい。また、市販品も使用可能である。
本発明を実施するには、ヒドロキシアパタイトをクエン酸(又はその塩)含有液、又は蛋白質又はペプチドで表面処理する必要がある。クエン酸の選択は、種々の無機酸、有機酸でヒドロキシアパタイトを処理してみて、優れた効果が得られたもので、安価であり、かつ、食品添加物として広く用いられていることによった。クエン酸(又はその塩)含有液はクエン酸(又はその塩)を含む溶液(クエン酸−リン酸ナトリウムなど)であればいかなるものでもよいが、pH4.0〜7.5、好ましくはpH5.0〜6.5、より好ましくはpH5.5〜6.1程度に調整されたものがよく、クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液が好ましい。
また、蛋白質としては、アルブミン、カゼインなどがあり、ペプチドとしては、カゼインホスホペプチドがあり、その他各種蛋白質やペプチドが単用ないし併用できる。CPPは、カゼインをトリプシンで加水分解することにより得られる。なお、CPPには、αs1カゼインより生成されるα−CPPと、βカゼインより生成されるβ−CPPとがあるが、どちらを用いてもよい。また、市販品も使用することができ、例えば、明治CPP−I、明治CPP−II、明治CPP−III(明治製菓(株)製品)等が使用可能である。CPPは、通常、カルシウムを含有していることが多いが、本発明においてはカルシウム含有CPPが使用できるほか、CPPをEDTA処理する等によってカルシウムを減少ないし除去したCPPも使用することができる。
ヒドロキシアパタイトをクエン酸(又はその塩)含有液又はCPP等のペプチドや蛋白質で表面処理するには、両者を水中に懸濁、混合せしめ、超音波処理する等、常法にしたがって処理すればよい。このように表面処理したヒドロキシアパタイトは、これを水に懸濁した場合、従来から用いられている炭酸カルシウム等とは異なり、沈降することなく長期間に亘って安定に分散懸濁することができる。
したがって、クエン酸(又はその塩)含有液、又は蛋白質又はペプチドで処理したヒドロキシアパタイトは、そのまま本発明のカルシウム補強剤とすることができるほか、その処理物も同じく本発明のカルシウム補強剤とすることができる。処理物としては、濃縮物、ペースト状物、乾燥物、及び/又は希釈物等が広く包含される。これら処理物を得るための方法は、減圧濃縮、凍結乾燥、真空凍結乾燥、その他常法が適宜使用される。
本発明のカルシウム補強剤は、飲食品、特定保健用飲食品、健康飲料、健康食品、栄養食品その他各種タイプの飲食品として用いることができるほか、カルシウム強化剤として各種の飲食品に添加使用することができる。また、カルシウム強化、カルシウム補強等の目的で、医薬品としても使用することができる。
飲食品タイプとして使用する場合は、クエン酸(又はその塩)又は蛋白質で処理したヒドロキシアパタイトを有効成分とし、これ(その処理物)をそのまま、使用したり、他の食品ないし食品成分と併用したりして適宜常法にしたがって使用できる。本有効成分を用いる本発明に係る組成物は、固体状(粉末、顆粒状その他)、ペースト状、液状ないし懸濁液のいずれでもよいが、甘味料、酸味料、ビタミン剤その他ドリンク剤製造に常用される各種成分を用いて、健康ドリンクに製剤化すると好適である。
医薬品タイプの組成物として使用する場合、本有効成分は、種々の形態で投与される。その投与形態としては例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与をあげることができる。これらの各種製剤は、常法に従って主薬に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補強剤を用いて製剤化することができる。その使用量は症状、年令、体重、投与方法および剤形等によって異なるが、通常は、成人に対して1回約0.1mg乃至2,000mgを投与することができる。
本発明に係る有効成分は、クエン酸(又はその塩)は食品添加物として広く使用され、CPP等のペプチド及びアルブミン等の蛋白質はいずれも牛乳等の天然物由来の成分であり、ヒドロキシアパタイトは骨の構成成分であって、いずれも毒性は格別認められず、卓越した安全性を示し、ラットに対して1日当り500mg経口投与したが急性毒性は全く認められなかった。したがって飲食品タイプの組成物として使用する場合は、予防用、保健用、通常の飲食品として使用する場合のいずれにおいても、有効成分の使用量に格別の限定はないし、医薬として使用する場合も、患者に応じて上記範囲内で適宜使用すればよい。また、本有効成分は多量に服用しても格別の急性毒性を示さないので、必要あれば上記範囲よりも多量に使用しても差し支えない。
以下、本発明の実施例、及び参考例について詳述する。
<実施例1>
(ヒドロキシアパタイトの合成)
170mMの水酸化カルシウムの水懸濁液に、100mMのリン酸水溶液を室温で滴下し、およそpH9で反応を停止した。1週間静置した後、上清を除去し、ヒドロキシアパタイト溶液を得た。その溶液の固形分含量を測定し、ヒドロキシアパタイト濃度を算出した。
(0.5Mクエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液の調製)
クエン酸を26.25g秤量し、水を加え250mlとし、0.5Mクエン酸溶液を調製する。同様にして、クエン酸3ナトリウムを147.05g秤量し、水を加え1000mlとする。一定量の0.5Mクエン酸溶液をビーカーにとり、pHメーターの電極をセットする。スターラーを用い溶液を攪拌しながら、pH5.8に達するまでクエン酸ナトリウム溶液を加える。
(CPP)
市販品のCPPを用いた。純度は約80%である。このCPPをCPP(+)とする。また、このCPP10gを10mM−EDTA−2Na水溶液250mlに溶解後、エタノール250mlを加え、CPPを沈澱させる。2800rpm、5分間の遠心分離条件でCPPを回収したのち、水に溶かし凍結乾燥する。このようにして得られたCPPをCPP(−)とする。即ち、CPP中にカルシウムの存在するものをCPP(+)、存在しないものをCPP(−)とした。
(評価)
内径25mm程度のスクリューキャップ付試験管にヒドロキシアパタイト溶液を所定量入れる。次に、クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液を表1の所定量入れ、比較対照としてCPP(+)を表1の所定量添加する。水を加え、ヒドロキシアパタイト濃度が一定になるようにメスアップする。また、ヒドロキシアパタイト溶液のみで、他に何も添加しない試料も作製する。超音波破砕装置に2分間かけ、5℃で冷蔵保存し、経時的に分散状態を観察する。
(結果)
冷蔵保存7日目の観察結果では、表1に示すとおりヒドロキシアパタイトのみでは、無色透明の上清と乳白色の浮遊状態の沈殿に明確に分離していたが、クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液を添加したものは、CPP(+)を添加したものと同様に分離は認められず溶液全体が薄い白濁を呈していた。
Figure 0004387379
<参考例1>
クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液量を一定とし、ヒドロキシアパタイト量を変えて、分散状態を冷蔵7日目まで観察した。ヒドロキシアパタイト濃度は表2の7.5mM〜37.5mM、緩衝液(CAB)濃度は12.5mMとし、処理方法は実施例1と同じである。
(結果)
冷蔵2日目では上清の分離、沈澱の発生とも全く確認されなかった。冷蔵7日目で上清の分離は確認されなかったものの、底部に極微量の沈殿が確認され、その厚みは、添加したヒドロキシアパタイト量に比例したものであった。冷蔵7日目の試料の底部沈殿を残してデカント処理し、捕集した溶液の濁度を吸光度測定した。同時に再度各試料を調製し、分散処理直後の吸光度も測定した。その結果、どの試料も7日目の吸光度の数値が分散値後の数値の約80%であることが判明し、溶液中にヒドロキシアパタイトの約80%が残存しているものと推測された。
Figure 0004387379
<参考例2>
ヒドロキシアパタイト溶液を所定量ビーカーに入れ、0.5Mクエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.8)を加えた。この時の混合溶液のヒドロキシアパタイト濃度は50mM濃度、クエン酸−クエン酸ナトリウム濃度は83mM濃度とした。この溶液を実施例1の方法で分散処理した。次に、ビーカーに脱脂粉乳10g、上記ヒドロキシアパタイト分散液を2.65g取り、水でメスアップして100mlとした。この溶液を超音波破砕装置に2分間かけ、その後110℃、1分間オートクレーブ処理した。ヒドロキシアパタイト無添加を対照とした。両者を冷却2000rpm、10分間遠心分離し、沈澱の発生量を測定した。その結果、いずれも0.2%w/wであり、差は認められなかった。
ヒドロキシアパタイトの分散・安定化に及ぼす媒体調整の影響をpH4及び5において調べ、媒体を以下の表3に示した。媒体として水(pH無調整)、硝酸(pH4又は5の希硝酸)、酢酸(NaOHでpH4又は5に調整)、チオリンゴ酸(NaOHでpH4又は5に調整)、コハク酸(NaOHでpH4又は5に調整)、クエン酸(NaOHでpH4又は5に調整)、クエン酸−リン酸ナトリウム(pH4又は5)を用いた。結果は表3に示す通りであるが、媒体としてはクエン酸−クエン酸ナトリウムやクエン酸−リン酸ナトリウムで良い結果が得られた。
Figure 0004387379
<実施例2>
(炭酸カルシウムの調製)
試薬特級の炭酸カルシウムを用いた。Planetary micro millで10分間処理を行い、炭酸カルシウムの微細化を行った後、試験に供した。
(評価)
内経12mm程度のスクリューキャップ付き試験管に水を4ml入れ、CPP160mgとヒドロキシアパタイト40mgを加えた後(懸濁液の高さは4cmとなる)、超音波処理を2分間行う。なお、対照として、炭酸カルシウム40mgを用いて同様に処理する。処理後、100μl採取し、水900μlを加え600nmの波長での濁度を測定する。なお、無乳蛋白系(すなわち、ヒドロキシアパタイトのみ)で分散処理を行っても、濁度測定までの時間の経過で、ヒドロキシアパタイトはほとんど二次凝集を起こして沈澱してしまった(二次凝集粒径3〜4μm)。その後、下記する実験結果に示す経過時間ごとに、分散の状況を測定および観察する。それぞれの時間の経過したのちに、試験管の底に沈降した沈殿物の量を定性的に把握する。また、粒子の沈降が観察されるときは、上澄み層の厚さ、沈降層の厚さを測定し、また上澄み層の中間位及び沈降層の中間位からそれぞれ100μl採取し、水900μlを加え600nmの波長での吸光度を測定する。このような測定を行うことにより分散糸の安定性を評価した。
(結果)
試験番号を以下の通りとする。
試料1:炭酸カルシウムとCPP(+)から成る懸濁液
試料2:炭酸カルシウムとCPP(−)から成る懸濁液
試料3:ヒドロキシアパタイトとCPP(+)から成る懸濁液
試料4:ヒドロキシアパタイトとCPP(−)から成る懸濁液
(定性的評価結果)
静置1時間後
試料1:すでに試験管底の一部に沈澱が認められる。しかし、澄明な上清層は観察されなかった。
試料2:すでに試験管底の一部に沈澱が認められる。しかし、澄明な上清層は観察されなかった。
試料3:変化なし。
試料4:変化なし
静置1日後
試料1:試験管底の全面に堆積した沈澱が認められ、上清層も約1.4mmの厚さで澄明に認められた。
試料2:試験管底の全面に堆積した沈澱が認められたが、沈澱量は試料1より少ない。上清層は的1.2mmの厚さで澄明にみとめられた。
試料3:試験管底の一部に極めて僅かな沈澱が認められた。しかし、澄明な上清層は観察されなかった。
試料4:試験管底の一部に極めて僅かな沈澱が認められた。しかし、澄明な上清層は観察されなかった。
静置2日後
試料1:試験管底の全面に堆積した沈澱が認められ、極めて僅かな白濁を残して液層全体が上清層と観察された。
試料2:試験管底の全面に堆積した沈澱が認められ、極めて僅かな白濁を残して液層全体が上清層と観察された。
試料3:試験管底の一部に僅かな沈澱が認められた。しかし、上清層らしく観察される液層が1mm程度観察された。
試料4:試験管底の一部に僅かな沈澱が認められた。しかし、上清層らしく観察される液層が1mm程度観察された。
(定量的評価結果(600nmにおける吸光度値))
値は吸光度の測定後、値に希釈倍率を掛けて求めたものである。
静置開始時
試料1:18.4
試料2:18.2
試料3: 2.3
試料4: 2.4
炭酸カルシウムを分散された懸濁液試料1、試料2の吸光度はヒドロキシアパタイトを分散させた懸濁液試料3、試料4と比較し、濁度がおよそ9倍ある。これは炭酸カルシウムを分散させたとき、白濁すると言う問題点を数値的に示すものであり、結晶性ヒドロキシアパタイト超微粒子を使用することの意義が明瞭である。
静置1日後
試料1:上清層:0.3
沈降層:2.6
試料2:上清層:0.4
沈降層:3.2
試料3: :2.0
試料4: :2.2
懸濁試料1及び試料2では、上清層は勿論であるが、沈降層においても静置開始時の吸光度と比較し、明らかに低くなっている。層の厚さ及び吸光度値から懸濁液中に残存する炭酸カルシウム量を算出すると、試料1では約10%、試料2では約13%であり、いずれの場合とも静置1日間で90%程度の炭酸カルシウムが沈降したことになる。一方、試料3及び試料4では、わずか吸光度の減少が見られる程度であり、ヒドロキシアパタイトの分散安定化ができている。
静置2日後
試料1:上清層:0.8
試料2:上清層:0.9
試料3 :2.1
試料4 :2.3
懸濁試料1及び試料2では、上清層は静置開始時の吸光度と比較し、明らかに低くなっている。層の厚さ及び吸光度値から懸濁液中に残存する炭酸カルシウム量を算出すると、試料1では約4%、試料2では約5%であり、いずれの場合とも静置2日間で95%以上の炭酸カルシウムが沈降したことになる。一方、試料3及び試料4では、わずか吸光度の減少が見られる程度であり、上清層と見られる部分は極めて僅かであり、吸光度値から、沈降量はほとんど無視できる。したがって、ヒドロキシアパタイトの分散安定化ができていることが示された。
静置開始時から静置2日後までの溶液中に残存する炭酸カルシウム及びヒドロキシアパタイト量の変化を図1に示した。図中、縦軸は懸濁液中に存在する炭酸カルシウムあるいはヒドロキシアパタイトの残存重量%を示し、横軸は静置後の経過日数を示す。炭酸カルシウム懸濁液では吸光度そのものが非常に高く、しかも静置後の吸光度減少が極めて顕著であり、懸濁液の分散系が不安定であることを示している。一方、結晶性ヒドロキシアパタイト超微粒子懸濁液では、吸光度そのものの値は炭酸カルシウムの吸光度のおよそ九分の一であり、白濁の程度が極めて小さい。また、懸濁液の分散系の安定性を示す吸光度の変化が明瞭に認められず、分散系が極めて安定であることを示している。なお、使用したCPPのEDTAによる処理の影響は顕著には認められなかった。
<実施例3>
表面処理用タンパク質として、ヒト血清アルブミン(以下、HSA)を用い、最終濃度は0.5mg/ml、1.5mg/ml及び4.5mg/ml(いずれも水溶液)とした。微粒子化は、水に懸濁したHA(ヒドロキシアパタイト:セントラル硝子、最終濃度1mg/ml)に表面処理剤を加え、室温下、1000kg/cm2で5回ナノマイザー処理を行った。
得られた表面処理HA微粒子の分散状況を粒度分布測定装置を用いて測定し、平均粒径を求めた。分散に及ぼす表面処理剤の種類を下記表4に示す。
Figure 0004387379
上記結果より、HSAを添加した場合、いずれの添加量でも平均粒径100nm以下であり、凝集が生起せず良好な分散性を示した。
<実施例4>
HA最終濃度10mg/mlの条件下で、HA懸濁液を1分間超音波処理し、HSAを加えてさらに1分間超過波処理し、分散、安定化に必要なHSAの最終濃度を検討した。結果を下記表5に示す。
Figure 0004387379
上記の結果より、HSAは、HAに対し重量比で1/20以上あれば十分な分散、安定化作用を示すことが判明した。
<実施例5>
HSA表面処理HA微粒子分散液の保存安定性を検討した。0.5〜4.5mg/mlのHSA存在下にHA水懸濁液(最終濃度1mg/ml)を室温下、1000kg/cm2で5回ナノマイザー処理して得たHA分散液を4℃、3週間静置後の安定性を調べた。得られた結果を下記表6に示す。表中の数字は平均粒径(μm)を示す。
Figure 0004387379
<実施例6>
実施例5で得られたHA分散液の凍結乾燥後の安定性を調べた。得られた結果を下記表7に示す。なお、表中の数字は平均粒径(μm)を示す。
Figure 0004387379
上記結果から明らかなように、本発明にしたがって表面処理したHA微粒子は、凍結乾燥しても安定であり、表面処理剤濃度が高い場合、凝集も認められなかった。
<実施例7>
密栓蓋付きの容器に、水を2L入れ、更にCPP 80g及び実施例1で製造したヒドロキシアパタイト20gを加えた後、超音波処理を3分間行い、CPPでコーティングしたヒドロキシアパタイト(液状製品)を製造した。更にこれを減圧下濃縮して、1/2濃縮物を製造した。そして更にこれを凍結乾燥して乾燥粉末を製造した。
<実施例8>
糖類150g、蜂蜜15g、アスコルビン酸1g、クエン酸0.5g、香料適量に、実施例7で製造した液状製品を加えて1kgとし、これを95℃で20分間殺菌し、100mlずつ無菌的にビンに充填して、飲食品タイプの健康ドリンクを製造した。
<実施例9>
実施例6で得た乾燥粉末の20%水溶液200g、酢酸トコフェロール5g、硝酸チアミン10g、ニコチン酸アミド20g、無水カフェイン50g、安息香酸塩及び香料適量に脱イオン水を加えて30Lとし、殺菌した後30mlずつ無菌的にビンに充填して、医薬品としての健康ドリンクを製造した。
<実施例10>
(1)実施例7で製造した乾燥粉末 50g
(2)ラクトース 90g
(3)コーンスターチ 29g
(4)ステアリン酸マグネシウム 1g
(1)、(2)及び(3)(但し17g)を混合し、(3)(但し7g)から調製したペーストとともに顆粒化した。得られた顆粒に(3)(但し5g)と(4)を加えてよく混合し、この混合物を圧縮錠剤機により圧縮して、1錠あたり有効成分(1)を50mg含有する錠剤1000錠を製造した。
<実施例11>
グラニュー糖50g、コーンスターチと乳糖の等量混合物100g、実施例4で製造した乾燥粉末100mgを加えて充分に混合した。混合物を100等分して袋に詰め、1袋1.5gのスティック状カルシウム栄養健康食品を100袋製造した。
懸濁液中に存在する炭酸カルシウムあるいはヒドロキシアパタイトの経時変化を示す。

Claims (6)

  1. 800nm以下の超微粒子ヒドロキシアパタイトをカゼインホスホペプチドで表面処理してなり、加水した場合にヒドロキシアパタイトが沈降することなく安定に分散懸濁できるものであることを特徴とするカルシウム補強剤。
  2. 800nm以下の超微粒子ヒドロキシアパタイトをカゼインホスホペプチドで表面処理し、これを粉末化あるいはスラリー化してなり、加水した場合にヒドロキシアパタイトが沈降することなく安定に分散懸濁できるものであることを特徴とするカルシウム補強剤。
  3. ヒドロキシアパタイトが、500nm以下の超微粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカルシウム補強剤。
  4. カゼインホスホペプチド(CPP)が、カルシウム含有CPP又はカルシウムを減少ないし除去したCPPであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカルシウム補強剤。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のカルシウム補強剤を固体製品、練り製品、液状製品の少なくともひとつに添加してなることを特徴とするカルシウム補強食品。
  6. 800nm以下の超微粒子ヒドロキシアパタイトをカゼインホスホペプチドで表面処理することを特徴とする、加水した場合にヒドロキシアパタイトを沈降することなく安定に分散懸濁する方法。
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