JP4385365B2 - 多孔性無機質土木建築材料用の高浸透性表面改質剤 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔性無機質土木建築材料（以下、単にコンクリート等とも称する）用の高浸透性表面改質剤に関し、詳しくは、コンクリートに代表されるような多孔性無機質土木建築材料のための表面改質剤であって、特に、高浸透性を有する表面改質剤に関する。
【０００２】
【従来の技術】
コンクリートに代表されるような多孔性無機質土木建築材料は、主に屋外で使用されて風雨に晒されることが多く、かつ、多孔性であるので、雨水等がコンクリート等の表面から浸透することが多い。コンクリート等の表面から浸透した水は寒冷期には表面付近で凍結して、コンクリート等の表面にクラックを生じさせる要因となり、そのクラックに更に水が浸透して凍結することにより、より大きなクラックが生じて、コンクリート等の強度が低下（凍害）してしまう場合があった。また、最近では雨水が酸性化の傾向にあるので、このような酸性の雨水がコンクリート等の表面近傍に浸透することによりコンクリート等を中性化し、これによってもやはり強度が低下する場合があった。
【０００３】
一方、コンクリート等は硬化のために水分を要するので、打設後にも水分を含有し、この水分により長時間をかけて強度が増していくという性質を有する。従って、高強度化を図るために、内部からの水の蒸発を極力抑制することが望まれていた。
【０００４】
このため、従来より、コンクリート等の表面に有機シラン系化合物を塗布・浸透させて表面の改質を行うことにより、凍害や中性化を防止しつつ、内部の水分を保護することが試みられてきており、例えば、特開平６−９３２５４号公報や特開平６−１２８５６２号公報には、有機シラン系化合物を用いたコンクリート用の浸透性吸水防止剤が記載されている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載のコンクリート用浸透性吸水防止剤では、コンクリート等の表面からの浸透性の点では十分なものではなく、より浸透性を高めて、コンクリート等の内部に水分を蓄積させることのできる技術が求められていた。
【０００６】
そこで本発明の目的は、有機シラン系化合物を含有する表面改質剤であって、かつ、コンクリートに代表されるような多孔性無機質土木建築材料の表面に対して、従来になく高い浸透性を発揮することのできる多孔性無機質土木建築材料用の高浸透性表面改質剤を提供することにある。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、以下の構成により上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【０００８】
即ち、本発明の多孔性無機質建築材料用の高浸透性表面改質剤は、（Ａ）モノヘキシルトリエトキシシラン１００重量部と、（Ｂ）２０〜９０重量％の濃度の水を含んでいる炭素数１〜４のアルカノールのエチレンオキサイド２〜４０モル付加物５０〜５００重量部と、（Ｃ）（Ａ）及び（Ｂ）の合計量（水を含む）に対して０．０５〜２重量％の、スルホン酸塩型及び／又は硫酸エステル塩型の陰イオン界面活性剤と、を必須成分として含有することを特徴とするものである。
【００１１】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる（Ａ）はモノヘキシルトリエトキシシランである。
【００１９】
本発明に使用する（Ｂ）成分は２０〜９０重量％の濃度の水を含む炭素数１〜４のアルカノールのエチレンオキサイド付加物である。
【００２０】
また、エチレンオキサイドの付加量は（Ａ）成分及び水との相溶性の範囲で任意に選択することができるが、概ね２〜４０モル程度が良好である。
【００２５】
尚、（Ｂ）成分に含まれる水は、最終的には本発明の高浸透性表面改質剤として組成物全体の中で混合されてしまうので、本発明の高浸透性表面改質剤を調製するうえでは、必ずしも（Ｂ）成分中に混合されて調製される必要はなく、任意の段階で系内に混合することができる。
【００２６】
（Ｂ）成分は（Ａ）成分１００重量部に対して５０〜５００重量部使用する。これは、水と炭素数１〜４のアルカノールのエチレンオキサイド付加物との合計量である。（Ｂ）成分が上記範囲未満であると十分な浸透性を得ることができない。一方、上記量を超えて使用すると、多孔性無機質土木建築材料の表面改質効果自体が不十分となる。
【００２７】
本発明に使用する（Ｃ）成分は、スルホン酸塩型及び／又は硫酸エステル塩型の陰イオン界面活性剤である。
【００２８】
スルホン酸塩型あるいは硫酸エステル塩型陰イオン界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを全て使用することができ、例えば、直鎖及び／又は分岐鎖のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキル二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、Ｎ−アシル−Ｎ−メチルタウリン塩、ジメチル−５−スルホイソフタレート塩、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第２高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、第２高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアマイドの硫酸エステル塩等を挙げることができる。具体的には、例えば、ジヘキシルスルホコハク酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩（スルホコハク酸アルキル二塩）、ラウリルスルホ酢酸塩、ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、オレイルアルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩等を例示することができる。
【００２９】
これらの塩を構成するカチオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属類、アンモニウム、及びアルカノールアミン類等を例示することができる。
【００３０】
（Ｃ）成分は、（Ａ）及び（Ｂ）の合計量（水を含む場合これを含む）に対して、０．０５〜２重量％、好ましくは０．１〜１重量％にて使用する。（Ｃ）成分が上記未満であると十分な浸透性を得ることができない。一方、上記量を超えて使用しても浸透性が向上しないばかりか逆に低下する場合もあり、本発明の有機珪素化合物の加水分解安定性を損なう結果となる。
【００３１】
本発明の高浸透性表面改質剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内でオクチル酸スズやオクチル酸鉛のようなシラン系化合物と多孔性無機質土木建築材料の加水分解反応触媒、脂肪酸、油脂、シリコーンオイルやフッ素系撥水剤など既存の表面撥水剤等の添加剤を、通常の使用量の範囲内で所望により任意に用いることができる。
【００３２】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げ本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例１〜８、比較例１〜５〕
ＪＩＳ Ａ ６９１０に従い、ＪＩＳモルタル（７０ｍｍ×７０ｍｍ×２０ｍｍ）供試体を作製し、２５℃６５％ＲＨ雰囲気下にこれを２８日間並べて調整し、試験片とした。
【００３３】
各試験片の７０ｍｍ×７０ｍｍの底面に下記の表１および表２に示す組成の表面改質剤を２回刷毛塗りした後、２５℃６５％ＲＨ雰囲気下に７日間静置した。
【００３４】
その後、試験片を数個に分割割裂し、割裂面にフェノールフタレイン溶液を塗布して、着色されない部分の厚さを９点測定し、その平均値を表面改質剤の浸透深さとした。得られた結果を下記の表１、表２中に併せて示す。
【００３５】
尚、下記表１中、用いた材料は以下の通りである。
有機珪素化合物１：モノヘキシルトリエトキシシラン
親水性有機溶剤１：ブタノールのエチレンオキサイド４モル付加物
陰イオン界面活性剤１：ジヘキシルスルホコハク酸エステルＮａ塩
陰イオン界面活性剤２：ラウリルスルホ酢酸Ｎａ塩
陰イオン界面活性剤３：ラウリルベンゼンスルホン酸Ｎａ塩
陰イオン界面活性剤４：分岐型ドデシルベンゼンスルホン酸Ｎａ塩
陰イオン界面活性剤５：オレイルアルコール硫酸エステルＮａ塩
陰イオン界面活性剤６：ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルＮａ塩
陰イオン界面活性剤７：ラウリン酸ナトリウム
陰イオン界面活性剤８：ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステルＮａ塩
【００３６】
【表１】

【００３７】
【表２】

【００４０】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、有機シラン系化合物を含有しつつ、かつ、コンクリートに代表されるような多孔性無機質土木建築材料の表面に対して、従来になく高い浸透性を発揮することのできる表面改質剤を提供することができる。

Claims (1)

1. （Ａ）モノヘキシルトリエトキシシラン１００重量部と、（Ｂ）２０〜９０重量％の濃度の水を含んでいる炭素数１〜４のアルカノールのエチレンオキサイド２〜４０モル付加物５０〜５００重量部と、（Ｃ）（Ａ）及び（Ｂ）の合計量（水を含む）に対して０．０５〜２重量％の、スルホン酸塩型及び／又は硫酸エステル塩型の陰イオン界面活性剤と、を必須成分として含有することを特徴とする多孔性無機質土木建築材料用の高浸透性表面改質剤。