JP4383564B2 - メカニカルシール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はメカニカルシールに関するもので、より詳しくは、洗浄のための流路形成機能を有し、かつ、液だまり部のない構造とすることによって、製造装置の一般的構成機器であるポンプやタンクの底もしくはサイドから挿入する攪拌機等に好適なメカニカルシールを提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
医薬品、化粧品、食品をはじめとする各種の製造においては、品種切替やロット切替の際の相互混入防止、微生物汚染防止の観点から、装置のサニタリー性、すなわち洗浄が容易で液だまり部のない構造とすることが重要である。
【0003】
従来のメカニカルシールにおいては、シール端面は常に面圧が加わり密封状態を維持しているため、メカニカルシール内に袋小路を有した構造になっている(例えば、JIS B 2405 メカニカルシール通則の図1〜図3参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のとおり従来のメカニカルシールは内部に袋小路を形成しているため、メカニカルシール内に流入した製造工程での原料・製品等のプロセス液と、その後の洗浄工程における洗浄液との置換が容易ではなく、洗浄効果が低いという問題点があった。
【0005】
また、シール端面間が常に密封されているため、シール端面間の洗浄が容易ではないという問題点があった。
【0006】
さらに、従来のメカニカルシールは袋小路を形成しているため、使用する方向によっては、メカニカルシール内に液だまり部が生じるという問題点もあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、洗浄に際しメカニカルシール内に洗浄液の流路を形成させることによって、メカニカルシールのシール端面間およびメカニカルシール内の洗浄効果を充分たらしめるとともに、洗浄終了後においてはメカニカルシール内に洗浄液が残ることのないようにすることにある。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のメカニカルシールは、一端にシール端面を備えたシールリングと、一端にシール端面を備えたメイティングリングと、シールリングをメイティングリングに向けて押圧することにより両者のシール端面同士を密接させたメカニカルシールにおいて、洗浄時に、シールリングをメイティングリングから離間する方向に強制的に移動させることにより前記シール端面間に洗浄に必要な洗浄液流量を確保するクリアランスを生じさせるための駆動手段を設け、かつ、メカニカルシールを収納するスタッフィングボックスの下部に配管接続口を設け、前記クリアランスと前記配管接続口とが連通してメカニカルシール内洗浄のための流体流路を形成するようにしたものである。洗浄に際し、駆動手段を作動させてシール端面間にクリアランスを生じさせることにより、シール端面も洗浄できるため洗浄効果が高まる。
【0009】
メカニカルシールを収納するスタッフィングボックスの下部に配管接続口を設け、前記クリアランスと前記配管接続口とが連通してメカニカルシール内洗浄のための流体流路を形成するようにしたことにより、洗浄に必要な洗浄液流量を確保でき、しかも、洗浄終了後においてはメカニカルシール内の液がスタッフィングボックスの下部に設けた配管接続口より外部に流出するためメカニカルシール内に液が残る心配がない。
【0010】
シールリングを移動させるための駆動手段としては、流体圧力もしくは電気を利用したアクチュエータを使用するほか、カムなどの機械的な機構を採用することも可能である。
【0011】
流体圧力を利用するアクチュエータとしては、圧縮空気や加圧液体を駆動源とする流体圧シリンダが挙げられる(請求項2)。この場合、請求項3の発明のように、メカニカルシールを収納するスタッフィングボックスの内周壁面とシールリングの外周面との間に流体圧シリンダを形成し、流体圧がシールリングの半径方向平面に作用するようにするか、あるいは、請求項4の発明のように、流体圧シリンダを、メカニカルシールを収納するスタッフィングボックスに設けたシリンダと、該シリンダ内に摺動自在に収納され、かつ、一端にてシリンダから突出してシールリングに当接したプランジャとで構成し、シリンダの内部に圧力流体を送り込むことによりプランジャが進出してシールリングを移動させるようにしてもよい。
【0012】
電気を利用するアクチュエータとしてはソレノイドが挙げられる(請求項5)。この場合、請求項6の発明のように、シールリングを磁性材料で構成し、メカニカルシールを収納するスタッフィングボックスに、シールリングの外周を取り巻くようにしてコイルを装着し、コイルに通電することによって生じる電磁力でシールリングを吸引して移動させる。
【0013】
上記のように構成されたメカニカルシールにおいては、洗浄液がメカニカルシール内を流れることで、シール端面間およびメカニカルシール内部の洗浄がなされる。また、洗浄終了後は、メカニカルシール内の液は重力によって、スタッフィングボックス下部に設けた配管接続口より外部に流出し、液だまりが発生することはない。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1に、横型渦巻ポンプのシャフトの軸封に使用するメカニカルシールに適用した実施の形態を示す。図1はポンプの主要部の縦断面図であり、中心線を境にして下半分は通常運転時の状態を示し、上半分は洗浄工程時の状態を示す。
【0015】
ポンプ(1)は、図に現われていない電動機等により回転駆動されるシャフト(2)の端部にインペラ(3)を固定してあり、インペラ(3)がケーシング(4)内で回転することによってケーシング(4)の吸込み口(5)から液を吸い込み、吐出口(6)から吐出する。メカニカルシール(10A)はケーシング(4)とシャフト(2)との間のすきまから液(シール流体)が漏れるのを防ぐために使用される軸封装置の一種である。
【0016】
メカニカルシール(10A)は、シールリング(12)と、メイティングリング(14)と、スプリング(16)とを主要な構成要素としている。シールリング(14)はスタッフィングボックス(18)内に軸方向にスライド可能に収容されている。シールリング(12)はシャフト(2)の外周に同心状に延在するスリーブ部(11)と、スリーブ部(11)の一端から半径方向に延在するフランジ部(13)とからなる。スリーブ部(11)はケーシング(4)の貫通穴と摺動可能に嵌合し、両者間はOリングによってシールされている。
【0017】
スタッフィングボックス(18)の内壁面は段付き穴となっており、その大径穴部(22)にシールリング(12)のフランジ部(11)が摺動可能に嵌合している。大径穴部(22)の内壁面とフランジ部(13)の外周面との間はOリングによってシールされている。スタッフィングボックス(18)の小径穴部にスプリング(16)が収容されている。ここでは、スプリング(16)の具体例として圧縮コイルバネを例示してあり、その一端はシールリング(12)のフランジ部(13)の端面に当接し、他端はスタッフィングボックス(18)の小径穴部の端壁面に形成したばね受け(26)に当接している。
【0018】
メイティングリング(14)はシャフト(2)に嵌合し、ピン(15)によってインペラ(3)と共に回転するようになっている。シールリング(12)とメイティングリング(14)とは互いに密接して擦れ合うシール端面を備えている。シールリング(12)は、シール端面の摩耗に従い、スプリング(16)の作用で軸方向に動いて密接状態を維持する。
【0019】
シールリング(12)のスリーブ部(11)の外周面とスタッフィングボックス(18)の内周壁面との間に環状のシリンダ(20)が形成されている。このシリンダ(20)に、図示するように三方弁(27)を備えた配管(28)を接続し、圧縮気体または加圧された液体などの加圧流体を供給することにより、シールリング(12)のフランジ部(13)に流体圧力が作用し、スプリング(16)に抗して、つまり、メイティングリング(14)から離間する方向にシールリング(12)を移動させることができる。スタッフィングボックス(18)の下部には配管接続口(29)を下向きに設けてある。なお、三方弁(27)に電磁弁を使用して、通常運転時と洗浄時との切換えを自動的に制御することができる。
【0020】
上記構成の図1の実施の形態の作用を説明すると、まず、通常運転時は、三方弁(27)をシリンダ(20)内に圧力流体が供給されない状態にしておく。したがって、図1の下半分に示すように、スプリング(16)によってシールリング(12)がメイティングリング(14)に向けて押圧され、シール端面同士が密接して密封状態が保たれる。
【0021】
次に、洗浄工程に際しては、三方弁(27)を切り換えてシリンダ(20)内に加圧流体を供給する。すると、シリンダ(20)内の圧力がシールリング(12)のフランジ部(13)に作用して、図1の上半分に示すように、スプリング(16)に抗してシールリング(12)をメイティングリング(14)から離間する方向、つまり図の右側へ移動させる。その結果、シールリング(12)とメイティングリング(14)のシール端面間にクリアランス(C)が生じる。したがって、ポンプ(1)内に供給された洗浄液がこのクリアランス(C)からメカニカルシール(10A)内にも流入し、シール端面およびメカニカルシール内部の洗浄を行う。そして、洗浄終了後はメカニカルシール(10A)内の液はすべて、重力によって配管接続口(29)から外部に流出する。
【0022】
図2に示すメカニカルシール(10B)は、シールリング(12)をスライドさせてシール端面間にクリアランスを生じさせるための駆動手段として、図1のものにおける流体圧シリンダに代えて電気を利用したアクチュエータ、つまりソレノイドを採用したものである。この場合、中空円筒形のシールリング(12)は磁性材料製で、軸方向にスライド自在であって、通常はスプリング(16)によってメイティングリング(14)に向けて弾性的に押圧されている。スタッフィングボックス(18)にはシールリング(12)の外周を取り巻くようにしてコイル(30)を設けてある。このコイル(30)に通電すると、その両端に磁極が形成され、磁気による吸引力が発生してシールリング(12)をスプリング(16)に抗して図の右側に移動させる。ここでも、図2の下半分は通常運転時の状態を示しており、コイル(30)の電気回路が開いているため、スプリング(16)によってシールリング(12)とメイティングリング(14)のシール端面同士が密接して密封された状態にある。洗浄工程時は、コイル(30)の電気回路が閉じられ、図2の上半分に示すように、コイル(30)により発生した磁気でシールリング(12)が吸引されてスプリング(16)側へ移動し、シールリング(12)とメイティングリング(14)のシール端面間にクリアランス(C)が生じる。
【0023】
図3に示す実施の形態は、タンク(7)の下部より垂直に挿入した攪拌機のシャフト(2)の軸封に適用した場合の例である。この場合、メカニカルシール(10C)の基本的構成は、竪型に配置されている点を除けば、図1の実施の形態とほぼ同様である。それゆえ、図1に示される既述のものと実質的に同一の部材ないし部分には同一の参照符号を付し、重複した説明を省略することとする。ここでは、メイティングリング(14)はシャフト(2)と嵌合し、ピン(9)によって攪拌羽根(8)と共に回転するようになっている。また、配管接続口(29)はスタッフィングボックス(18)の下部に設けてあり、スタッフィングボックス(18)内に液だまり部ができないようにしてある。そして、図1の場合と同様に、シリンダ(20)内に加圧流体を供給することによって、シールリング(12)がスプリング(16)に抗してここでは図の下方に移動し、シール端面間にクリアランス(C)が生じる。図3の左半分は通常運転時の状態を示しており、スプリング(16)の作用でシール端面が密封された状態にある。図3の右半分は洗浄工程時の状態を示しており、シリンダ(20)内の流体圧力の作用でシール端面間にクリアランス(C)が生じている。
【0024】
図4に上述の図3の実施の形態を改変したメカニカルシール(10D)を示す。ここでは、シールリング(42)は円板状の基板(40)に固定され、その基板(40)はOリングを介してシャフト(2)に摺動可能に嵌合している。メイティングリング(44)はシャフト(2)との間にすきまを形成してスタッフィングボックス(48)に固定されている。基板(40)は、シャフト(2)の先端に固定された攪拌羽根(8)との間に介在するスプリング(46)によって、メイティングリング(44)に向けて図の下方に弾性的に押圧されている。配管接続口(49)はスタッフィングボックス(48)の下部に下向きに設けてある。
【0025】
スタッフィングボックス(48)の円周方向に等間隔に配置された複数のシリンダ(50)と、シリンダ(50)に収容されたプランジャ(52)と、プランジャ(52)を弾性的に押圧するスプリング(54)とによって駆動手段が構成される。プランジャ(52)はシリンダ(50)内で進退自在であり、プランジャ(52)が後退した位置ではその先端部がメイティングリング(44)のシール端面とほぼ面一となり、プランジャ(52)が進出すると先端部にて基板(40)と当接する。
【0026】
プランジャ(52)は、通常運転時には、図4の右半分に示すようにスプリング(54)の作用で後退した位置にあり、先端部がスタッフィングボックス(48)内に退入してメイティングリング(44)とほぼ面一となっている。したがって、スプリング(46)によりシールリング(42)がメイティングリング(44)に向けて押圧され、シール端面間は密封された状態にある。一方、洗浄工程時には、シリンダ(50)内に加圧流体を供給することによって、図4の左半分に示すように、スプリング(54)に抗してプランジャ(52)が図の上方に移動し、その先端部にて基板(40)をスプリング(46)に抗して押し上げる。その結果、シールリング(42)とメイティングリング(44)のシール端面間にクリアランス(C)が生じる。
【0027】
【発明の効果】
本発明は以上説明したように構成されているので、以下に記載されているような効果がある。
【0028】
本発明のメカニカルシールをポンプや攪拌機等の機器に使用することによって洗浄が確実に行えるため、機器のサニタリー機能が高まり、品種切替やロット変更に際しメカニカルシール内部での異種流体の相互混入を防止できる。
【0029】
また、上記の洗浄効果とあいまって液だまり部がないため、シール端面間やメカニカルシール内部での微生物汚染が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】横型に配置した実施の形態を示す縦断面図である。
【図2】電気的アクチュエータを用いた実施の形態を示す縦断面図である。
【図3】竪型に配置した実施の形態を示す縦断面図である。
【図4】図3の実施の形態の改変態様を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10A,10B,10C,10D メカニカルシール
12,42 シールリング
14,44 メイティングリング
16,46 スプリング
18,48 スタッフィングボックス
20,50 シリンダ
29,49 配管接続口
30 コイル
52 プランジャ
C クリアランス
Claims (6)
- 一端にシール端面を備えたシールリング(12)と、一端にシール端面を備えたメイティングリング(14)と、シールリング(12)をメイティングリング(14)に向けて押圧することにより両者のシール端面同士を密接させたメカニカルシール(10A,10B,10C,10D)において、洗浄時に、シールリング(12)をメイティングリング(14)から離間する方向に強制的に移動させることにより前記シール端面間に洗浄に必要な洗浄液流量を確保するクリアランス(C)を生じさせるための駆動手段を設け、かつ、メカニカルシール(10A,10B,10C,10D)を収納するスタッフィングボックスの下部に配管接続口(29,49)を設け、前記クリアランス(C)と前記配管接続口(29,49)とが連通してメカニカルシール内洗浄のための流体流路を形成するようにしたことを特徴とするメカニカルシール(10A,10B,10C,10D)。
- 前記駆動手段が流体圧シリンダであることを特徴とする請求項1のメカニカルシール。
- 前記流体圧シリンダが、メカニカルシールを収納するスタッフィングボックスの内周壁面とシールリングの外周面との間に形成され、流体圧がシールリングの半径方向平面に作用することを特徴とする請求項2のメカニカルシール。
- 前記流体圧シリンダが、メカニカルシールを収納するスタッフィングボックスに設けたシリンダと、該シリンダ内に摺動自在に収容され、かつ、一端にてシリンダから突出してシールリングに当接したプランジャとからなり、シリンダの内部に圧力流体を送り込むことにより、プランジャが進出してシールリングを移動させることを特徴とする請求項2のメカニカルシール。
- 前記駆動手段がソレノイドであることを特徴とする請求項1のメカニカルシール。
- シールリングを磁性材料で構成し、メカニカルシールを収納するスタッフィングボックスに、シールリングの外周を取り巻くようにしてコイルを装着し、コイルに通電することによって生じる電磁力でシールリングを吸引して移動させることを特徴とする請求項5のメカニカルシール。
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