本願は、米国特許出願第10/053625号(2001年11月2日出願)の一部継続出願である。これはまた、米国特許出願第09/753313号(2000年12月29日出願)の一部継続出願であり、米国特許出願第09/938987号(2001年8月24日出願)の一部継続出願である。後者は、すでに放棄された09/079829号(1998年5月15日出願)の継続出願であり、米国暫定特許出願60/046672号(1997年5月15日出願)への優先権を主張した。本出願はまた、米国暫定特許出願60/338721号(2001年12月4日出願)、60/339033号(2001年12月10日出願)、60/276866号(2001年5月5日出願)、及び60/338969号(2001年12月10日出願)への優先権を主張する。連邦政府の資金提供に関する通知:本発明は、2 R44 AG16551−02の下で、国立老化研究所により与えられた政府支援を受けてなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する可能性がある。
技術分野
本発明は、アルツハイマー病及びパーキンソン病のような、アミロイド、NAC(即ち、非アミロイド成分)、及びαシニュクライン疾患の治療及び予防のための方法及び組成物、そして、そのための新規化合物の単離の方法に関する;特に、それは、ポリフェノール組成物と、上記の疾患を治療するためにそれを使用する方法に関し;より特定すると、それは、アミロイド、NAC、及びαシニュクライン疾患の治療及び予防のためのプロアントシアニジンと関連化合物に関する。
背景技術
アルツハイマー病は、βアミロイドタンパク質若しくはAβと呼ばれる39〜43のアミノ酸ペプチドが、原線維形態で、細胞外アミロイド斑として、及び脳血管の壁内のアミロイドとして存在して、蓄積することにより特徴づけられる。アルツハイマー病における原線維Aβアミロイド沈着は、患者にとって有害であり、最終的には、アルツハイマー病の顕著な特徴である、毒性と神経細胞死をもたらすと考えられている。積み重なる証拠は、アミロイド、より特定すると、Aβ原線維の形成、沈着、蓄積、及び/又は存続がアルツハイマー病の病理発生の主たる原因因子であることを示唆する。さらに、アルツハイマー病以外にも、ダウン症候群、親凝集性(congophilic)脈管障害を伴う障害、オランダ型の遺伝性脳出血、及び封入体性筋炎を含む、いくつかの他のアミロイド疾患がAβ原線維の蓄積を伴う。
パーキンソン病は、アミロイドの特徴の多くを明示する異常な原線維タンパク質沈着物の形成、沈着、蓄積、及び/又は存続により特徴づけられるもう1つのヒトの障害である。パーキンソン病においては、αシニュクライン/NACのフィラメントからなる細胞質リューイ小体の蓄積がその病理発生において、そして治療標的として重要であると考えられている。αシニュクライン/NAC形成、沈着、蓄積、及び/又は存続を阻害するか、又は前形成されたαシニュクライン/NAC原線維(又はその一部)を破壊することができる新規の薬剤若しくは化合物は、パーキンソン病の治療への潜在的な治療薬とみなされる。
多様な他のヒト疾患もアミロイド沈着を明示し、通常、全身臓器(即ち、中枢神経系の外側にある臓器若しくは組織)に、臓器の機能不全若しくは不全をもたらすアミロイド蓄積がある。いくつかの異なる臓器及び組織に顕著なアミロイド蓄積をもたらす(以下に論じる)これらのアミロイド疾患は、全身性アミロイド症として知られている。他のアミロイド疾患においては、2型糖尿病の患者の90%における膵臓のように、単一の臓器が影響を受ける場合がある。このタイプのアミロイド症においては、膵臓中のランゲルハンス島のβ細胞が、島アミロイドポリペプチド(IAPP)として知られるタンパク質から主になる原線維アミロイド沈着物の蓄積により破壊されると考えられている。そのようなアミロイド蓄積を阻害するか又は抑制することは、2型糖尿病への新しい有効な治療薬をもたらすと考えられている。アルツハイマー病、パーキンソン病、及び「全身性」アミロイド疾患においては、今のところ治癒法も有効な治療法もなく、患者は、通常、疾患の発症から3〜10年以内に死亡する。
アミロイド疾患には、限定されないが、アルツハイマー病、ダウン症候群、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、及び封入体性筋炎に関連したアミロイド(Askanas et al, Ann. Neurol. 43: 521-560, 1993)(ここでは、特定のアミロイドがβアミロイドタンパク質又はAβと呼ばれる)、慢性炎症、様々な形態の悪性腫瘍、及び家族性地中海発疹熱に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがAAアミロイド又は炎症関連アミロイド症と呼ばれる)、多発性骨髄腫や他のB細胞障害に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがALアミロイドと呼ばれる)、II型糖尿病に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドタンパク質がアミリン又は島アミロイドポリペプチドと呼ばれる)、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−シュトラウスラー症候群、クールー病、及び動物スクラピーを含むプリオン病に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがPrPアミロイドと呼ばれる)、長期血液透析及び手根管症候群に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがβ2−ミクログロブリンアミロイドと呼ばれる)、老人性心臓アミロイド及び家族性アミロイド性多発神経障害に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがトランスチレチン又はプレアルブミンと呼ばれる)、及び甲状腺の髄様癌のような内分泌腫瘍に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがプロカルシトニンの変異体と呼ばれる)が含まれる。さらに、原線維を形成し、そしてコンゴレッド及びチオフラビンS陽性であるαシニュクラインタンパク質が、パーキンソン病、リューイ小体疾患(リューイ、「神経学要覧」中、M. Lewandowski 編、スプリンガー、ベルリン、920-933 頁、1912年;Pollanen et al, J. Neuropath. Exp. Neurol. 52: 183-191, 1993; Spillantini et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 6469-6473, 1998; Arai et al, Neurosc. Lett. 259: 83-86, 1999)、及び多系統萎縮症(Wakabayashi et al, Acta Neuropath. 96: 445-452, 1998)の患者の脳には、リューイ小体の一部として見出されている。本開示の目的のためには、パーキンソン病は、この疾患を有する患者の脳に(コンゴレッド及びチオフラビンS陽性であり、優勢なβプリーツシート二次構造を含有する)原線維が発生するという事実により、アミロイド様疾患の特徴も示す疾患とみなすべきである。
アルツハイマー病、パーキンソン病、II型糖尿病、全身性AAアミロイド症、及び他のアミロイド症において起こるアミロイド形成、沈着、蓄積、及び/又は存続を停止させるための潜在的な治療薬としての新規化合物若しくは薬剤の発見及び同定が、懸命に求められている。
ポリフェノールは、そのいくつかが我々の食物連鎖へ入る多様な植物の中に広く存在する、信じがたいほどに多様な化合物の群である(Ferreira et al, Tetrahedron 48: 1743-1803, 1992)。ポリフェノールのなかには無栄養であるとみなされるものもあるが、これらの化合物への関心が高まったのは、健康への有り得る有益な効果のためである。例えば、クエルセチン(フラバノイド)は、実験研究において抗発癌活性を保有することが示された(Kato et al, Carcinogenesis 4: 1301-1305, 1983; Deschner et al, Carcinogenesis 7: 1193-1196, 1991)。カテキンとエピカテキン(フラバン−3−オール)は、白血病ウイルスの逆転写酵素活性を阻害することが示された(Chu et al, J. Natural Prods. 55: 179-183, 1992)。統計報告は、日本の茶の生産地方において、胃癌死亡率が有意に低いことを示した。没食子酸エピガロカテキンは、マウス皮膚腫瘍を阻害する、緑茶中の薬理学的に活性な素材であると報告されている(Mimoto et al, Carcinogenesis 21: 915-919, 2000)。エラグ酸(ellagic acid)も、様々な動物腫瘍モデルにおいて抗発癌活性を保有することが示された(Inoue et al, Biol. Pharm. Bull. 18: 1526-1530, 1995)。しかしながら、これらの文献のなかで、プロアントシアニジン、及びプロシアニジン、特に、エピカテキン−エピカテキンダイマー若しくはトリマー、又は他のオリゴマー、エピカテキン−カテキンダイマー、等、又はそれらの類似体若しくは誘導体が、アミロイド若しくはαシニュクライン/NAC原線維形成の阻害のために有益である、及び/又は前形成アミロイド若しくはαシニュクライン/NAC原線維の破壊を引き起こすということを教示又は示唆するものはひとつもない。
発明の開示
植物材料に由来する抗アミロイド化合物の単離、同定、及び使用に関する方法と、プロアントシアニジンがアミロイド及びαシニュクライン/NAC原線維形成の強力な阻害剤であり、多様なアミロイド及びαシニュクライン疾患に対して前形成原線維の強力な破壊/分解を引き起こすという驚くべき発見が開示される。エピカテキン−エピカテキン、カテキン−エピカテキンダイマー、エピアフゼレキン−エピカテキンダイマー、エピカテキン−エピカテキン−エピカテキントリマー、並びに他のエピカテキン及び/又はカテキンオリゴマーのような、プロシアニジンを含む、代表的な化合物が、限定されないが、アルツハイマー病、II型糖尿病、及び全身性アミロイド症を含むアミロイド疾患の治療の強力なアミロイド原線維阻害剤として役立つことが明らかにされ、これはさらに、パーキンソン病及びリューイ小体疾患の治療のためにαシニュクライン若しくは非アミロイド成分(NAC)原線維形成を阻害する。
また開示されるのは、そのような化合物を調製して単離する方法、並びに、その新しい、特にアミロイド及びαシニュクライン/NAC原線維破壊剤としての使用である。本発明はまた、A、B、及びC型のプロシアニジン、又はエピカテキン及びカテキンの他のモノマー、ダイマー、トリマー、及びマルチマーのようなプロアントシアニジンを用いた患者の治療により、いくつかの異なるアミロイド疾患におけるアミロイド原線維の形成、沈着、蓄積、及び/又は存続を阻害するか又は消失させる方法に向けられる。代表的な化合物は、エピカテキン−4β→8−エピカテキン又はカテキン−4α→8−エピカテキンのような置換されたエピカテキン−エピカテキン若しくはカテキン−エピカテキンダイマーと、エピアフゼレキン−4β→8−エピカテキン、又は他のプロアントシアニジンオリゴマーである。
また開示されるのは、アルツハイマー病、II型糖尿病、パーキンソン病、全身性AAアミロイド症、及び、アミロイド原線維蓄積を伴う他の障害の治療介入のための、植物材料に由来するアミロイド阻害化合物の単離、同定、及び使用の方法であり;より特別には、それは、Uncarina tomentosa と関連植物、及び他の既知のプロアントシアニジン産生植物からのアミロイド阻害化合物を単離する方法と、これらの化合物の使用に関する。
注目されるのは、別名 Una de Gato(又はネコの爪)として知られる Uncarina tomentosa の樹皮及び根の部分へ特定の抽出法(及び、そのような抽出法から導かれる個別の化合物)を適用すると、(エピカテキン−エピカテキンダイマーとして同定される「化合物H2」;カテキン−エピカテキンダイマーとして同定される「化合物H1」、エピカテキン−エピカテキン−エピカテキントリマーとして同定される「化合物K2」のような)単一化合物とエピアフゼレキン−エピカテキンダイマーとして同定される「化合物K1」の単離及び精製がもたらされ、これらがすべてアルツハイマー病のβアミロイドタンパク質(Aβ)の形成及び成長、パーキンソン病のαシニュクライン原線維の形成及び成長の印象的な阻害剤として作用し、アルツハイマー病、パーキンソン病、II型糖尿病の前形成原線維の破壊/溶解を引き起こすという驚くべき発見である。
これまでに、我々の研究は、アマゾン熱帯雨林の木ブドウ、Uncarina tomentosa に由来する天然物質の同定をもたらし、これをPTI−00703と呼んだ。例えば、Uncarina tomentosa と関連植物材料抽出物の誘導体の、アルツハイマー病、II型糖尿病、及び他のアミロイド障害のアミロイド症の阻害剤としての初期の発見を記載する、米国特許出願第09/079,829、09/198,824、及び09/208,278号を参照のこと。その開示は、完全に示されるかのように、参照により本明細書に援用される。このことは、本願の親出願により確認され、その開示は、完全に示されるかのように、参照により本明細書に援用される。それは、アッセイにより導かれるアフィニティー分画と逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の方法を使用して、Aβ原線維形成阻害活性の大部分を説明すると見られる、PTI−00703(まとめて、「PTI−777」と呼ばれる)内の最も活性のある水溶性成分を単離し、試験し、特徴づけた。
これら後者の開示においては、PTI−777とHPLCにより単離されるその個別分画が、関連する in vitro 及び/又は動物モデルにおいて試験され、Aβ原線維形成の阻害を一貫して明示することを見出したことが論じられている。また、記載されたのは、PTI−777とその個別分画、及び/又は成分の単離の方法である。PTI−777化合物のそれぞれのさらなる精製及び in vitro 試験、並びに、初期の構造特性決定試験は、Uncarina tomentosa に由来するアミロイド阻害化合物が低分子(約200〜500の分子量)であり、芳香族ポリフェノール化合物の一般種に属することを示唆した。2つのそのような化合物、クロロゲン酸(C16H18O9;FW 354.31)(当初「F分画」と呼んだ)とエピカテキン(C15H14O6;FW 290.27)(当初「J分画」と呼んだ)を分析技術により精製し、同定した。さらに、PTI−777から単離した「H分画」がアミロイド原線維形成の最も強力な阻害剤であることをデータは示した。さらに、PTI−777は、放射標識実験により明示されるように脳へ入る能力を有し、アルツハイマー病、パーキンソン病、及び、2型糖尿病や全身性AAアミロイド症のような、原線維タンパク質の沈着及び蓄積を伴う他の中枢神経系障害の治療薬剤としてそれが有用である潜在可能性があることを示す。
我々は、ここで、PTI−777の追加の主要成分をさらに精製し、単離し、そして同定し、(プロアントシアニジンの一般種に属する)そのような単一化合物が強力なアミロイド阻害剤であるというさらに驚くべき発見を明らかにした。化合物H2は、質量分析試験により、PTI−777の主要成分であることが示され、精製し、最終的に、プロシアニジンB2としても知られる、エピカテキン−4β→8−エピカテキンと(本明細書に記載されるように)同定した。同様にPTI−777の主要成分である化合物H1を精製し、プロシアニジンB4としても知られる、カテキン−4α→8−エピカテキンと(本明細書に記載されるように)同定した。PTI−777の成分である化合物K2を精製し、プロシアニジンC1としても知られる、エピカテキン−4β→8−エピカテキン−4β→8−エピカテキンと同定した。PTI−777の成分である化合物K1を精製し、エピアフゼレキン−4β→8−エピカテキンと同定した。
アルツハイマー病のAβアミロイド症、パーキンソン病のαシニュクライン/NAC原線維形成、及びII型糖尿病IAPP原線維形成の強力な阻害剤としての、上記プロアントシアニジンのそれぞれの効力を本明細書に開示し、プロシアニジン、特にプロアントシアニジンが、全般に、アルツハイマー病、パーキンソン病、2型糖尿病、全身性AAアミロイド症、及び他のアミロイド疾患に関連したアミロイド症と関連の原線維形成の治療に有用な化合物であるという結論を裏付ける。
アミロイド疾患、又はαシニュクライン若しくはNAC原線維形成により特徴づけられる疾患に罹患しているか、又はそれに罹りやすいヒト又は他の哺乳動物を治療する方法が開示される。どんな哺乳動物もこの疾患若しくは状態の被検者になってよいか、又は単に、この疾患若しくは状態に罹りやすい哺乳動物であってよい。本明細書において使用されるアミロイド疾患には、限定されないが、本明細書において論じられる様々な既知の開示されたアミロイド症が含まれる。アミロイド疾患への開示された治療は、対応するアミロイド症への似たような治療をカバーすると考えられ、逆もまた同じである。同じことがαシニュクライン疾患に当てはまる。用語「原線維形成」は、特別な程度の原線維形成が進行したか、又はある特別に認知されたアミロイド症又はアミロイド若しくはαシニュクライン疾患へ進行することが予期されるかどうかにかかわらず、本明細書に開示される様々な置換タンパク質及び/又は前駆体タンパク質が、原線維、斑、及びもつれ様のものを形成する傾向を意味する。一般に、開示されるような原線維形成の治療は、その原線維形成に対応する、それから続く、他の点でそれに関連するどんなアミロイド症又はどんなアミロイド若しくはαシニュクライン疾患の治療も含んで網羅するように意図されている。
「治療」はまた、あらゆる可能な事例において、どんな実験若しくはスクリーニングの目的、等であれ、in vitro 治療が類似の原線維形成、又は哺乳動物被検者においてその原線維形成に対応するアミロイド若しくはαシニュクライン疾患の治療をもたらすか、又はもたらすように意図されているかにかかわらず、「in vitro 治療」を含んで網羅すると考えられる。
本方法には、式I若しくは式IIの一方、又はその両方により特徴づけられるプロアントシアニジン及びプロアントシアニジン化合物(図54〜56を参照のこと)の群に見出すことが可能である、任意のプロアントシアニジン又はプロアントシアニジン化合物の治療有効量を哺乳動物へ投与することが含まれる。この群にはまた、式I及び式IIのオリゴマー組み合わせ物(図56を参照のこと)により特徴づけられるプロアントシアニジンが含まれ、また、上記プロアントシアニジンのいずれかの製剤的に許容されるあらゆる塩も含まれる。
本明細書の他の部分でより詳細に論じるように、プロアントシアニジン(本明細書においてはPAとも呼ぶ)には、多様な構造の形状とオリゴマー形態が含まれる。式I及びIIは、それぞれ、様々な開示オリゴマーを構成するのに有効なオリゴマー単位の1つの一般形を表すように意図されている。例えば、いくつかのプロアントシアニジンオリゴマーは式Iにより十分に特徴づけられるので、式Iにより示される一般構造がこのオリゴマーの各単位の正しい一般化であることになる。式Iにより特徴づけられるプロアントシアニジンの例は、ダイマーのエピカテキン−4β→8−エピカテキンであり、ここでは、2つのエピカテキン単位がそれぞれ式Iの特有の例であり、それに適合し、一方の単位の4位炭素から他方の単位の8位炭素へ結合し、それによりいわゆる4−8連結をもたらしている。同様に、式IIにより完全に特徴づけられるプロアントシアニジンオリゴマーは、その単位がすべて1つの単位の4位炭素原子から隣接単位の6位炭素原子へ結合され、それによりいわゆる4−6連結をもたらす、といった具合である。
プロアントシアニジンのなかには、式I又は式IIだけでは十分に特徴づけることができないものがあり、事実、一方の単位においては式I配置を、他方の単位においては式II配置を示す。例えば、第二単位へ4−6連結している単位を有し、第二単位自身は第三単位への4−8連結を有するプロアントシアニジンは、厳密には、式I又は式IIの化合物のいずれでもないが、実際は式I及び式IIのオリゴマー組み合わせ物であり、ここでは、他の特徴の中でも、各単位が1つ以上の特徴づけ(即ち、式I又は式II)を受ける可能性がある。ここで示した例においては、3つの単位のうち中央のものでその4位と6位の両方の炭素連結部位が詰まっているので、式IIの単位である(末端単位として1つの炭素しか連結していないので、第一単位が何であるかを特別に特定することは可能でない場合がある);しかしながら、第三単位はその8位炭素連結部位が詰まっていて、それが末端単位であるかどうかにかかわらず、それは最もあり得るには式Iへ適合するだろう(但し、第四単位へその6位炭素部位でそれ自身が連結し、その6位と8位の炭素連結部位が詰まった単位となる、比較的稀に出現する第三単位は例外である。これは、それでも治療に有用な化合物であるかもしれないが、いずれの式にも適合しない)。このように、4−6(又は6−4)連結したいくつかの単位と4−8(又は8−4)連結したいくつかの単位を有するオリゴマーは、式I及び式IIの両方の配置にある単位を示すが、式Iの化合物でも式IIの化合物でもなく、むしろ、式I及び式IIのオリゴマー組み合わせ物となるものである。
本明細書において論じられる観察事実に基づけば、上記、又は本明細書の他の部分で特徴づけられ、特に、2〜20の範囲の数であるオリゴマー単位を有する(即ち、いずれの式においてもnが2〜20の整数値である場合)プロアントシアニジンは、いずれも本明細書に開示される疾患及び状態を治療するのにある有意な程度まで有効であろうと考えられる。同様に、決して論じられないが、やはり本明細書において論じられる観察事実に基づけば、(上記の6−8若しくは8−6単位連結、又は6−6連結さえのような1つ以上の変異連結の存在のような)上記の式の規定に正確には一致しないプロアントシアニジンも、本明細書に開示ざれる疾患及び状態を治療するのにある有意な程度まで有効であろうと考えられる。
示した式において、R1とR2は、独立して、水素及びヒドロキシから選択され;R3は、水素、場合により置換されるO−グリコシル、−C(O)−(場合により置換されるアリール)、及び−C(O)−(場合により置換されるヘテロアリール)からなる群から選択され;そしてR4は、水素、カテキン、エピカテキン、エピアフゼレキン、及び、カテキン及びエピカテキンの没食子酸塩からなる群から選択される。2、3、及び4位での線は所望のR及びS(時々、そして代替的に、α及びβと呼ばれる)立体化学配置を示す。一般に、4位での配置は3位での配置に対してトランスである。式I中の4及び8位と式II中の4及び6位での線は、先に論じたように、個別単位間の可能なオリゴマー結合を示し、そしてR1、R2、R3、及びR4での置換のそれぞれと、2、3、及び4位での配置のそれぞれと、4−8及び4−6のオリゴマー結合配置のそれぞれは、独立して、各個別単位について選択され、オリゴマーの単位系列における単位について異なってもよい。但し、しばしば、より短いオリゴマーの単位は互いに同種である。
好ましいオリゴマーは、2〜5単位、又は2〜3単位さえ有する。それぞれの2位炭素でのキラル配置は、好ましくは、SではなくRである。ある態様においては、この単位のいくつか又はすべてが、水素、2,3−ジヒドロキシベンゾイル、3,4−ジヒドロキシベンゾイル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾイル、又は3,4,5−トリヒドロキシベンゾイルのいずれか1つであるR3を有し、好ましくは、それぞれのR3が水素であり、それぞれのR1がヒドロキシであり、そしてそれぞれのR2が水素である。R3はまた、場合により置換されるO−グリコシルであってもよい。
アミロイド疾患、又はαシニュクライン若しくはNAC原線維形成により特徴づけられる疾患の、哺乳動物被検者におけるもう1つの治療の方法も開示される。この方法には、治療有効量のプロアントシアニジンを該被検者へ投与する工程が含まれる。このプロアントシアニジンは、好ましくは、2〜20、より好ましくは2〜5のフラバノイド単位を有するプロシアニジンオリゴマーである。それぞれのフラバノイド単位は、有利には、カテキン、エピカテキン、エピアフゼレキン、ガロカテキン、ガロエピカテキン、エピガロカテキン、及びこのカテキンの没食子酸塩を含むカテキン類の1つであり得る。フラバノイド単位はまた、フラバノール、フラボノール、フラバンジオール、ロイコシアニジン、又はアントシアニジンの1つであり得る。
治療すべき特定のアミロイド疾患は、アルツハイマー病、ダウン症候群、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、封入体性筋炎、慢性炎症のアミロイド症、悪性腫瘍及び家族性地中海発疹熱のアミロイド症、多発性骨髄腫及びB細胞障害のアミロイド症、2型糖尿病のアミロイド症、プリオン病のアミロイド症、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−シュトラウスラー症候群、クールー病、スクラピー、狂牛病、長期血液透析に関連したアミロイド症、手根管症候群を伴うアミロイド症、老人性心臓アミロイド症、家族性アミロイド性多発神経障害、内分泌腫瘍に関連したアミロイド症、全身性AAアミロイド症、ALアミロイド症、Aβアミロイド症、又はPrPアミロイド症であり得るが、特にアルツハイマー病である。
治療すべき特別のαシニュクライン若しくはNAC原線維形成は、リューイ小体疾患、パーキンソン病、又は多系統萎縮症に関連した原線維形成であり得る。
アミロイド、アルファーシニュクライン若しくはNAC原線維形成の in vitro 環境における治療の方法も開示される。この方法には、治療有効量のプロアントシアニジンを in vitro 環境へ投与する工程も含まれる。好ましくは、プロアントシアニジンは、エピカテキン、カテキン、エピアフゼレキン、没食子酸エピカテキン、又は没食子酸カテキンのいくつか若しくはすべてのオリゴマーであるプロシアニジンである。
プロシアニジンは、有利には、A、B、又はC型プロシアニジンであるプロシアニジンであってよい。プロシアニジンは、好ましくは、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、及びB8型プロシアニジンのダイマーのような、エピカテキン及び/又はカテキン単位のダイマー若しくはトリマーである。1つの態様においては、プロシアニジンダイマーがエピカテキン−4β→8−エピカテキンであり;もう1つの態様においては、プロシアニジンダイマーがカテキン−4α→8−エピカテキンであり;なおもう1つの態様においては、プロシアニジンがエピカテキントリマーのエピカテキン−4β→8−エピカテキン−4β→8−エピカテキンであり;なおもう1つの態様においては、プロシアニジンがダイマーのエピアフゼレキン−4β→8−エピカテキンである。
本方法にはまた、経口投与、非経口注射、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、局所投与、及びエアゾールスプレー投与により、プロシアニジンを被検者へデリバリーする投与工程が含まれる場合がある。
医薬組成物若しくは薬剤も開示される。それは、治療有効量のプロアントシアニジン(PA)と製剤的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤、等が一緒のものである。PAの治療量は、アミロイド、αシニュクライン若しくはNAC原線維形成を哺乳動物被検者において治療する効力について選択される。開示される組成物は、被検者の体重の1kgにつき約10〜1,000mgの範囲、好ましくは被検者の体重の1kgにつき約10〜100mgの範囲の治療投与量でデリバリーされる。
プロアントシアニジンは、好ましくは、エピカテキン、又はエピカテキン及びカテキンの1つ以上のダイマー及びトリマー、又はそれらの混合物、並びに、それらの製剤的に許容される類似体及び誘導体である。好ましいプロアントシアニジンは、プロシアニジンダイマーのエピカテキン−4β→8−エピカテキン、プロシアニジンダイマーのカテキン−4α→8−エピカテキン、プロシアニジンダイマーのエピアフゼレキン−4β→8−エピカテキン、及び、プロシアニジントリマーのエピカテキン−4β→8−エピカテキン−4β→エピカテキンである。
本組成物が2つ以上のプロアントシアニジンの混合物である場合、それらはまた、有利には、エピカテキンと、エピカテキン及びカテキンのダイマー及びトリマー、及び、これらの化合物の製剤的に許容される類似体及び誘導体から選択される場合がある。エピカテキン及びカテキンのダイマー及びトリマー、及び/又はそれらの製剤的に許容される類似体及び誘導体のような2つ以上のプロシアニジンの混合物、特に、エピカテキン−4β→8−エピカテキン、カテキン−4α→8−エピカテキン、エピアフゼレキン−4β→8−エピカテキン、及びエピカテキン−4β→8−エピカテキン−4β→8−エピカテキンのような2つ以上のプロアントシアニジンの混合物は、治療上有利に利用することが可能であると考えられる。実質的に純粋なプロアントシアニジンの医薬組成物としても混合物は特に有利であり、これまで当技術分野においては示唆されたことがないと考えられる。
開示される組成物は、1つ以上のプロアントシアニジンを含有し、それぞれのプロアントシアニジンは、同じプロアントシアニジンの植物、又は植物からの抽出物における天然の存在の割合比率を「有意に超える」割合比率若しくは比率純度で組成物中に存在する。例えば、特別のプロアントシアニジンが、植物においては0.01重量パーセントの比率で存在し、その植物の抽出物においては1.0重量パーセントの比率で存在すると仮定する。すると、開示される組成物においては、同じプロアントシアニジンが、0.01パーセント又は1.0%より有意に高い重量比率、例えば10パーセントで組成物中に存在する。体積による組成物比率又は存在比率、又は純度パーセントのような、これに倣った他の割合も同様に適用可能である。本発明の範囲をこの例や他の例に制限しない、さらなる例によると、PAは、本明細書における開示に従って経口でデリバリーされる錠剤中に存在する。このPAは、98.5%の純度比率で存在する単離PAである(即ち、このPAは、例えば、HPLC上の特徴的な単一の鋭いピークバンドのような、慣用の純度指標により測定されるように、98.5%純粋である)。しかしながら、特別のPAは、錠剤中においてはほんの15重量%の成分である。PAは、果実中では0.06の乾燥重量パーセントで存在することが知られているが、ある種の果実抽出物は、同じPAを0.75乾燥重量パーセントまで含有することが知られている。この例では、PAは、錠剤において、抽出物よりも20:1の比率で比例的により多く存在していて、これは、植物又は植物の抽出物における天然の割合比率を有意に超えることの1つの尺度である。
一般に、同じPAの植物中の天然の存在比率より10倍(又はそれ以上)多いPAの(重量、乾燥重量、体積、又は純度)比率を有する治療的に投与される剤形中に存在するPAは、PAのその植物中の天然の存在比率を「有意に超える」比率である。本文脈において植物の抽出物について述べる場合は、慣用若しくは天然の抽出物(ジュース、濃縮物等、又は既知の他の目的に使用される抽出物)のみが考慮され、ここで定義した「有意に超える」という知見を無効にするために特別のPAを濃縮することをその効果とする、本開示の優先日より後に調製される新規抽出物は考慮されないことに留意すべきである。また、ある事例においては、「有意に超える」という知見が2:1ほどの小さい比率でも正当化される場合があるが、より好ましくは、50:1〜100:1ほどの大きさで正当化される場合があることに留意すべきである。
単一のPA化合物が組成物を構成する賦形剤と一緒にある例においては、特許請求されるような「有意に超える」標準の目的には、その全体的な重量比率よりも、組成物中の該化合物のパーセント純度にのみ注目して比較することが簡便である場合がある。PAの混合物の場合は、混合PAの治療投与量における合計の組成物比率に着目し、その数字を、同じPAの天然の植物若しくは抽出物における合計の存在比率と比較することが適正であり得る。
少なくとも、開示される測定の標準の目的は、特許請求される組成物が、植物や慣用の植物抽出物における有効成分の天然の存在についての読取りを超える正当な限界を示すことである。
好ましい組成物は、少なくとも実質的に純粋であるプロアントシアニジンを含有する。実質的に純粋な単離若しくは合成の形態にあるプロアントシアニジンも、同様に有利に利用することが可能である。一般に、「純粋」は、95%より純粋であることを意味し、「実質的に純粋な」PAは、抽出又は他の既知の手段、又は、抽出若しくは精製の方法によって容易にも合理的にも除去し得ない不純物のみを有する治療投与量においてPAが存在するように、本明細書において開示される手段により精製されたPAを意味する。「単離」は、件のPAに、治療剤形において有意量の他のPAが付随しないことを意味する。「単離されて純粋な」化合物は、製薬業界の有効成分について慣用的であるような、単離精製形の化合物である。
プロアントシアニジン類を含有する植物材料からのプロアントシアニジンの単離の方法が開示される。1つの方法には、a)該植物材料をメタノール又は同様の非極性溶媒で溶解する工程;b)該メタノール抽出植物材料をシリカゲルカラム上にロードする工程;c)該カラムを、クロロホルム中の増加割合のメタノールの系列で溶出して、プロアントシアニジン類を溶出させる工程;d)抽出物中のプロアントシアニジン類を逆相HPLCにより分離する工程;及びe)分離して単離し、それにより「純粋」であるとみなされるプロアントシアニジンを採取して凍結乾燥させる工程が含まれる。クロロホルム溶出液中のメタノール系列には、有益にも、少なくともクロロホルム中10%メタノール、クロロホルム中20%メタノール、クロロホルム中40%メタノール、50%メタノール、及びクロロホルム中100%メタノールの溶出液が含まれる。好ましい植物材料は、Uncarina tomentosa に由来する。
開示される単離法からつくられるプロアントシアニジン組成物もまた開示される。クロロホルム中20%メタノールの系列の工程でシリカゲルカラムから溶出される組成物は、プロシアニジンダイマー及びトリマーを主に含有し;クロロホルム中40%メタノールの工程でシリカゲルカラムから溶出されるプロアントシアニジン組成物は、プロシアニジントリマー及びテトラマーを主に含有し;クロロホルム中50%メタノールの工程でシリカゲルカラムから溶出される組成物は、プロシアニジントリマー、テトラマー、ペンタマー、及びヘキサマーを主に含有し;クロロホルム中100%メタノールの工程でシリカゲルカラムから溶出される組成物は、プロシアニジンテトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、及び6より多い単位のオリゴマーを含有する。
第二の単離法には、a)該植物材料をエタノール又は同様の非極性溶媒で溶解する工程;b)該エタノール抽出植物材料をLH20カラム上にロードする工程;c)該カラムを、エタノールに次いで、エタノール(及び/又はメタノール)中の増加割合のアセトン系列で溶出して、プロアントシアニジン類を溶出させる工程;d)抽出物中のプロアントシアニジン類を逆相HPLCにより分離する工程;及びe)分離して単離し、それにより「純粋」であるとみなされるプロアントシアニジンを採取して凍結乾燥させる工程が含まれる。エタノール(及び/又はメタノール)溶出液中のアセトン系列には、有益にも、少なくともエタノール中5%アセトン、エタノール中10%アセトン、エタノール中50%アセトン、メタノール中50%アセトン、及び100%メタノールが含まれる。好ましい植物材料は、Uncarina tomentosa に由来する。
第二の開示される単離法からつくられるプロアントシアニジン組成物もまた開示される。LH20カラムからエタノールで溶出される組成物は、プロシアニジンダイマー及びトリマーを主に含有し;エタノール中5%アセトンの工程でLH20カラムから溶出されるプロアントシアニジン組成物は、プロシアニジンダイマー及びトリマーを主に含有し;エタノール中10%アセトンの工程でLH20カラムから溶出されるプロアントシアニジン組成物は、プロシアニジンダイマー及びトリマーを主に含有し;エタノール中50%アセトンの工程でLH20カラムから溶出されるプロアントシアニジン組成物は、プロシアニジンダイマー、トリマー、及びテトラマーを主に含有し;メタノール中50%アセトンの工程でLH20カラムから溶出されるプロアントシアニジン組成物は、プロシアニジントリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、及び6より多い単位のオリゴマーを主に含有し;100%メタノールの工程でLH20カラムから溶出されるプロアントシアニジン組成物は、プロシアニジントリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、及び6より多い単位のオリゴマーを主に含有する。
アミロイド疾患、又はαシニュクライン若しくはNAC原線維形成により特徴づけられる疾患の、哺乳動物被検者における治療のさらなる方法も開示される。この方法には、開示される単離法により単離されるプロアントシアニジンの治療有効量を該被検者へ投与することが含まれる。
開示される方法においては、治療のためのアミロイド疾患が、アルツハイマー病、ダウン症候群、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、封入体性筋炎に関連したアミロイド疾患、2型糖尿病に関連したアミロイド症、慢性炎症、様々な形態の悪性腫瘍、及び家族性地中海発疹熱に関連したアミロイド症、多発性骨髄腫や他のB細胞障害に関連したアミロイド症、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−シュトラウスラー症候群、クールー病、動物スクラピー、及び狂牛病を含むプリオン病に関連したアミロイド症、長期血液透析及び手根管症候群に関連したアミロイド症、甲状腺の髄様癌のような内分泌腫瘍に関連したアミロイド症からなる群から選択され、αシニュクライン疾患が、パーキンソン病、リューイ小体疾患、及び多系統萎縮症からなる群から選択される。
もう1つの組成物が同様に開示される。それには、製剤的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤、等と、式I若しくは式IIの一方、又はその両方により特徴づけられるプロアントシアニジン及びプロアントシアニジン化合物(図54〜56を参照のこと)の群に見出すことが可能である、プロアントシアニジン(PA)又はプロアントシアニジン化合物が含まれる。この群にはまた、式I及び式IIのオリゴマー組み合わせ物(図56を参照のこと)により特徴づけられるプロアントシアニジンが含まれ、上記プロアントシアニジンのいずれかの製剤的に許容されるあらゆる塩も含まれる。上記の式において、nは2〜20の範囲の整数であり、好ましくは2〜5、又は2〜3でさえある。
PAは、アミロイド疾患、又はαシニュクライン若しくはNAC原線維形成により特徴づけられる疾患を哺乳動物被検者において治療するのに有効な量で組成物中に選択可能的に存在する。
示される式において、R1とR2は、独立して、水素及びヒドロキシから選択され;R3は、水素、場合により置換されるO−グリコシル、−C(O)−(場合により置換されるアリール)、及び−C(O)−(場合により置換されるヘテロアリール)からなる群から選択され;そしてR4は、水素、カテキン、エピカテキン、及び、カテキン及びエピカテキンの没食子酸塩からなる群から選択される。2、3、及び4位での線は所望のR及びS(時々、そして代替的に、α及びβと呼ばれる)立体化学配置を示す。一般に、4位での配置は3位での配置に対してトランスである。式I中の4及び8位と式II中の4及び6位での線は、先に論じたように、個別単位間の可能なオリゴマー結合を示し、そしてR1、R2、R3、及びR4での置換のそれぞれと、2、3、及び4位での配置のそれぞれと、4−8及び4−6のオリゴマー結合配置のそれぞれは、独立して、各個別単位について選択され、オリゴマーの単位系列における単位について異なってもよいが、しばしば、より短いオリゴマーの単位は互いに同種である。
本発明は、特定の実施例、植物の種及び部分、方法、処理法、等を参照に記載される。しかしながら、当業者は、様々な化学置換が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく開示化合物内でなし得ることを認めるであろう。特に、フラバノイド、プロシアニジン、及びプロアントシアニジンを含むポリフェノールは、いくつかの異なる方法により植物材料から単離、及び/又は精製し得ることが知られている。さらに、これらの代替法と、異なる溶媒又は異なるカラムの精製用の使用、及び部分精製ポリフェノールの組成物からのプロシアニジン及びプロアントシアニジンの使用といった、この方法の他の工程における必然の変更も、ここに開示される植物由来抽出物とそれに由来する化合物の範囲内に含まれることを認めるであろう。
アミロイド疾患の治療のための新たな方法が開示される。アミロイド疾患には、限定されないが、アルツハイマー病、ダウン症候群、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、及び封入体性筋炎に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがβアミロイドタンパク質又はAβと呼ばれる)、慢性炎症、様々な形態の悪性腫瘍、及び家族性地中海発疹熱に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがAAアミロイド又は炎症関連アミロイド症と呼ばれる)、多発性骨髄腫や他のB細胞障害に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがALアミロイドと呼ばれる)、II型糖尿病に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドタンパク質がアミリン又は島アミロイドポリペプチドと呼ばれる)、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−シュトラウスラー症候群、クールー病、及び動物スクラピーを含むプリオン病に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがPrPアミロイドと呼ばれる)、長期血液透析及び手根管症候群に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがβ2ミクログロブリンアミロイドと呼ばれる)、老人性心臓アミロイド症及び家族性アミロイド性多発神経障害に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがトランスチレチン又はプレアルブミンと呼ばれる)、及び甲状腺の髄様癌のような内分泌腫瘍に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがプロカルシトニンの変異体と呼ばれる)が含まれる。さらに、パーキンソン病、リューイ小体疾患(リューイ、「神経学要覧」中、M. Lewandowski 編、スプリンガー、ベルリン、920-933 頁、1912年;Pollanen et al, J. Neuropath. Exp. Neurol. 52: 183-191, 1993; Spillantini et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 6469-6473, 1998; Arai et al, Neurosc. Lett. 259: 83-86, 1999)、及び多系統萎縮症の患者の脳には、原線維を形成し、そしてコンゴレッド及びチオフラビンS陽性であるαシニュクラインタンパク質が、リューイ小体の一部として見出されている。本開示の目的のためには、パーキンソン病は、この疾患を有する患者の脳に(コンゴレッド及びチオフラビンS陽性であり、優勢なβプリーツシート二次構造を含有する)原線維が発生するという事実により、アミロイド様疾患の特徴も示す疾患とみなすべきである。
アルツハイマー病、II型糖尿病、他のアミロイド症、及びパーキンソン病におけるアミロイドの形成、沈着、蓄積、及び/又は存続の治療にアミロイド阻害化合物を単離して使用するための、(Una de Gato 又はネコの爪としても知られる)Uncarina tomentosa 由来の樹皮及び/又は根の使用が開示される。Una de Gato 又はネコの爪はまた、限定されないが、Paraguayo、Garabato、Garabato casha、Tambor huasca、Una de gavilan、タカの爪(Hawk's claw)、ネコの爪(Nail of Cat)、及び Nail of Cat Schuler とも呼ばれる。
限定されないが Uncarina(カギカズラ)属を含む、Rubiciaceae(アカネ)科に関連した植物物質からの抽出物、及び/又はその化合物誘導体の、アルツハイマー病、II型糖尿病、他のアミロイド症、及びパーキンソン病におけるアミロイドの形成、沈着、蓄積、及び/又は存続の治療への使用が開示される。
限定されないが、Uncarina tomentosa、Uncarina attenuata、Uncarina elliptica、Uncarina guianensis、Uncarina pteropoda、Uncarina bernaysli、Uncarina ferra DC、Uncarina kawakamii、Uncarina rhyncophylla、Uncarina calophylla、Uncarina gambir、及び Uncaria orientalis が含まれる可能性がある、様々な Uncarina 種に関連した植物物質からの抽出物、及び/又はその化合物誘導体の使用も開示される。
Uncarina tomentosa と関連の植物材料を含有する、市販の丸剤、錠剤、カプレット剤、軟及び硬ゼラチンカプセル剤、トローチ剤、小袋剤、カシェ剤、ベジキャップ(vegicaps)、液滴剤、エリキシル剤、懸濁液剤、乳剤、溶液剤、シロップ剤、ティーバッグ剤、(固形物としてか、又は液体媒体中の)エアゾール剤、坐剤、無菌注射溶液剤、無菌包装散剤、樹皮束剤(bark buncles)、及び/又は樹皮散剤の、アルツハイマー病、II型糖尿病、他のアミロイド症、及びパーキンソン病を有する患者を治療するために、抽出可能な植物材料を入手するための使用が開示される。
Uncarina tomentosa と関連の植物材料内に含有されるポリフェノールの、アルツハイマー病、II型糖尿病、他のアミロイド症、及びパーキンソン病におけるアミロイドの形成、沈着、蓄積、及び/又は存続の治療への使用が開示される。
Uncarina tomentosa から精製されるプロアントシアニジン型化合物が抗アミロイド及び抗αシニュクライン/NAC活性を有することが、驚くべきことに発見された。それにより、本発明は、Uncarina tomentosa 抽出物とそれに由来する個別の化合物を提供する。この抽出物は、好ましくは、限定されないが、エピカテキン、カテキン、エピアフゼレキン、プロシアニジンB2、2〜10、好ましくは2〜5又は4〜10のプロシアニジンオリゴマー、プロシアニジンB4、プロシアニジンC1、及びこれらの誘導体から選択される少なくとも1つのプロアントシアニジンのポリフェノールのような、ポリフェノール(類)を含む。
Uncarina tomentosa と関連植物材料内に含有されるプロアントシアニジンの、アルツハイマー病、II型糖尿病、他のアミロイド症、及びパーキンソン病におけるアミロイドの形成、沈着、蓄積、及び/又は存続の治療への使用が開示される。
Uncarina tomentosa と関連植物材料内に含有されるプロシアニジンの、アルツハイマー病、II型糖尿病、他のアミロイド症、及びパーキンソン病におけるアミロイドの形成、沈着、蓄積、及び/又は存続の治療への使用が開示される。
プロシアニジン若しくはプロアントシアニジンB2としても知られるエピカテキン−4β→8−エピカテキンの、アルツハイマー病、II型糖尿病、他のアミロイド症、及びパーキンソン病におけるアミロイドの形成、沈着、蓄積、及び/又は存続の治療への使用が開示される。
プロシアニジン若しくはプロアントシアニジンB4としても知られるカテキン−4α→8−エピカテキンの、アルツハイマー病、II型糖尿病、他のアミロイド症、及びパーキンソン病におけるアミロイドの形成、沈着、蓄積、及び/又は存続の治療への使用が開示される。
プロシアニジン若しくはプロアントシアニジンC1としても知られるエピカテキン−4β→8−エピカテキン−4β→エピカテキンの、アルツハイマー病、II型糖尿病、他のアミロイド症、及びパーキンソン病におけるアミロイドの形成、沈着、蓄積、及び/又は存続の治療への使用が開示される。
エピアフゼレキン−4β→8−エピカテキンの、アルツハイマー病、II型糖尿病、他のアミロイド症、及びパーキンソン病におけるアミロイドの形成、沈着、蓄積、及び/又は存続の治療への使用が開示される。
アルツハイマー病、II型糖尿病、全身性AAアミロイド症、他のアミロイド症、及びパーキンソン病において、アミロイド形成、アミロイド沈着、アミロイド蓄積、アミロイド存続、アミロイドタンパク質−アミロイドタンパク質相互作用を阻害する、及び/又は前形成若しくは前沈着アミロイド原線維の溶解/破壊を引き起こす強力な薬剤としての使用のために、Uncarina tomentosa と関連植物材料内に存在する活性アミロイド阻害性プロシアニジンを単離する方法も開示される。
アミロイド沈着を阻害する、プロアントシアニジン、エピカテキン−4β→8−エピカテキン、カテキン−4α→8−エピカテキン、エピアフゼレキン−4β→8−エピカテキン、エピカテキン−4β→8−エピカテキン−4β→8−エピカテキン、又はその(本明細書に開示されるような)類似体若しくは誘導体の治療量を被検者へ投与することを含む、組成物及び方法が開示される。それ故に、本発明の組成物及び方法は、アミロイド沈着が起こる障害においてアミロイド症を阻害するのに有用である。本発明の化合物は、アミロイド症を治療するため治療用に使用することが可能であるか、又はアミロイド症に罹りやすい被検者において予防的に使用することが可能である。本発明の方法は、少なくとも一部は、直接的にアミロイド原線維形成を阻害すること、アミロイド原線維成長を阻害すること、及び/又は前形成アミロイド原線維の溶解/破壊を引き起こすことに基づく。
アミロイド症を治療するための医薬組成物が開示される。この医薬組成物には、アミロイド沈着を阻害するのに有効な量の本発明の治療化合物と、製剤的に許容される運搬体が含まれる。
医薬組成物として投与することが可能である本発明のプロアントシアニジン組成物が開示される。この医薬組成物は、限定されないが、プロアントシアニジンの抽出物又は精製化合物と、乳糖、セルロース、又はその同等物のような製剤的に許容される担体を包含する場合があるか、又はカプセル剤若しくは錠剤のような医薬剤形内に含まれる場合がある。
プロシアニジン、プロアントシアニジン、エピカテキン−4β→8−エピカテキン(即ち、プロシアニジンB2)、カテキン−4α→8−エピカテキン(即ち、プロシアニジンB4)、エピカテキン−4β→8−エピカテキン−4β→8−エピカテキン(即ち、プロシアニジンC1)、エピアフゼレキン−4β→8−エピカテキン、又はプロアントシアニジンのB1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、C1、又はC2を含む、その類似体若しくは誘導体に類似して作製した任意及びすべての合成化合物の、アルツハイマー病、II型糖尿病、全身性AAアミロイド症、他のアミロイド症、及びパーキンソン病において、アミロイド形成、アミロイド沈着、アミロイド蓄積、アミロイド存続、アミロイドタンパク質−アミロイドタンパク質相互作用を阻害する、及び/又は前形成若しくは前沈着アミロイド原線維の溶解/破壊を引き起こす強力な薬剤としての使用が開示される。
アミロイドの形成、沈着、蓄積、及び/又は存続を予防する、抑制する、又は一掃して、それによりアルツハイマー病、パーキンソン病、II型糖尿病、全身性AAアミロイド症、及び他のアミロイド症への有効な治療をもたらすのに十分な量と時間において哺乳動物へ、プロアントシアニジン抽出物、プロアントシアニジン化合物、プロアントシアニジンポリマー、又はそれらの混合物が限定されずに含まれる場合があるプロアントシアニジン組成物を投与することによって、哺乳動物においてアミロイド症を予防するか又は治療することが開示される。
Uncarina tomentosa 由来のプロシアニジン、プロアントシアニジン、エピカテキン−4β→8−エピカテキン(即ち、プロシアニジンB2)、カテキン−4α→8−エピカテキン(即ち、プロシアニジンB4)、エピカテキン−4β→8−エピカテキン−4β→8−エピカテキン(即ち、プロシアニジンC1)、及びエピアフゼレキン−4β→8−エピカテキン、又はそれらの類似体若しくは誘導体を精製して同定するための単離法が開示される。1つのそのような方法においては、商業的に得られる丸剤、錠剤、カプレット剤、軟及び硬ゼラチンカプセル剤、トローチ剤、小袋剤、カシェ剤、ベジキャップ、液滴剤、エリキシル剤、懸濁液剤、乳剤、溶液剤、シロップ剤、ティーバッグ剤、(固形物としてか、又は液体媒体中の)エアゾール剤、坐剤、無菌注射溶液剤、無菌包装散剤、樹皮束剤(bark buncles)、及び/又は樹皮散剤を製造するために、本発明に記載される方法を使用して、抽出物が調製される。
被検者において心的注意力を高め、脳アミロイド沈着の形成を阻害するために Uncarina tomentosa と関連植物材料からの精製化合物を提供する、本明細書に記載されるような抽出の方法が開示される。
心的敏捷性のために;心的注意力を高めるために;加齢又は関連した認知若しくは記憶の低下に対して、栄養支援を提供するために;認知の良好性を高めるために;脳機能を支援するために;認知能力、心的パフォーマンス、又は記憶を向上させるために;集中力と心的鋭敏性を高めるために;心的活力を高めるために;より優れた心的明晰性及び注意力を高めるために;加齢に関連した認知若しくは記憶の低下に対して、短期記憶を向上させるために;正常な脳機能を支援するために;学習若しくは記憶を強化するために;集中力を向上させるために;心的パフォーマンスを強化するために;心的低下を抑制するために;加齢に関連した脳障害の可能性を抑制するために;良好な脳の健康を維持するために;アミロイド原線維又はタンパク質沈着、脳関連のアミロイド原線維沈着又は脳関連アミロイドタンパク質沈着、アミロイド原線維形成及び成長、又は加齢関連のアミロイド原線維形成及び成長、脳関連のアミロイド原線維形成及び成長を抑制、一掃、予防、阻害、又は破壊/溶解するために;健全な膵臓機能を支援するために;正常なインスリン機能を高めることに役立つことによって膵臓機能を高めるために;アミロイド原線維又はタンパク質沈着と、膵臓関連のアミロイド原線維形成及び成長を抑制、一掃、予防、阻害、又は破壊/溶解するための、Uncarina tomentosa と関連植物材料からの精製化合物も開示される。
アミロイドとアミロイド症
アミロイドとは、いずれも共通の形態学的性質、染色特性、及びX線回折スペクトルを有する、多様であるが特定の細胞外タンパク質沈着物の群を指す一般名である。沈着するアミロイドタンパク質の性質にかかわらず、すべてのアミロイドは、以下の特性を有する:1)光学顕微鏡レベルで無定形の外観を示し、ヘマトキシリン及びエオジン染色を使用すると、好エオジン性に見える;2)コンゴレッドで染色すると、偏光下で見たときに、赤/緑の複屈折を明示する(Puchtler et al., J. Histochem. Cytochem. 10: 355-364, 1962);3)優勢なβプリーツシート二次構造を含有する、及び4)不確定の長さと7〜10nmの直径を有する非分岐性の原線維から超微細構造的に構成される。アミロイド症及び「アミロイド疾患」は、今日、沈着する特定のアミロイドタンパク質に従って分類されている。アミロイドには、限定されないが、アルツハイマー病、ダウン症候群、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、及び封入体性筋炎に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがβアミロイドタンパク質又はAβと呼ばれる)、慢性炎症、様々な形態の悪性腫瘍、及び家族性地中海発疹熱に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがAAアミロイド又は炎症関連アミロイド症と呼ばれる)、多発性骨髄腫や他のB細胞障害に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがALアミロイドと呼ばれる)、II型糖尿病に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドタンパク質がアミリン又は島アミロイドと呼ばれる)、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−シュトラウスラー症候群、クールー病、及び動物スクラピーを含むプリオン病に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがPrPアミロイドと呼ばれる)、長期血液透析及び手根管症候群に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがβ2ミクログロブリンアミロイドと呼ばれる)、老人性心臓アミロイド及び家族性アミロイド性多発神経障害に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがプレアルブミン若しくはトランスチレチンアミロイドと呼ばれる)、及び甲状腺の髄様癌のような内分泌腫瘍に関連したアミロイド(ここでは、特定のアミロイドがプロカルシトニンの変異体と呼ばれる)が含まれる。
臨床状態のアミロイド沈着物は、βプリーツシートコンホメーションの存在に関連した共通の物理特性を共有するが、多くの異なる化学タイプが存在し、追加の型が将来記載される可能性があることは今日明らかである。現在、アミロイド症において全般に機能している可能性があるいくつかの共通の発病機序があると考えられている。多くの症例において、循環性の前駆体タンパク質が、(例えば、形質細胞障害において)完全又は異常な分子のいずれかの過剰産生、(いくつかの二次性アミロイド症候群における血清アミロイドAと長期血液透析におけるβ2−ミクログロブリンの)抑制された分解若しくは排泄、又は変異タンパク質に関連した遺伝異常(例えば、家族性アミロイド性多発神経障害)から生じる可能性がある。多くのタイプのアミロイド症においてはより大きなタンパク質前駆体分子のタンパク分解が起こり、より低分子量の断片の産生をもたらすが、これは、通常細胞外の場所において重合化し、組織沈着物としてβプリーツシートコンホメーションをとる。関与する正確な機序とタンパク分解プロセシング及び/又は翻訳修飾における変化をもたらす異常原因は、ほとんどのアミロイドでわかっていない。
慢性炎症、様々な形態の悪性腫瘍、及び家族性地中海発疹熱に関連したアミロイド(即ち、AAアミロイド又は炎症関連アミロイド症)(Benson と Cohen, Arth. Rheum. 22: 36-42, 1979; Kamei et al, Acta Path. Jpn. 32: 123-133, 1982; McAdam et al., Lancet 2: 572-573, 1975; Metaxas, Kidney Int. 20: 676-685, 1981)と、多発性骨髄腫や他のB細胞障害に関連したアミロイド(即ち、ALアミロイド)(Harada et al. J. Histochem. Cytochem. 19: 1-15, 1971)が例として含まれる全身性アミロイド疾患は、一般に中枢神経系の外側に存在する多様に異なる臓器及び組織においてアミロイド沈着を伴うことが知られている。これらの疾患におけるアミロイド沈着は、例えば、肝臓、心臓、脾臓、胃腸管、腎臓、皮膚、及び/又は肺に起こる場合がある(Johnson et al, N. Engl. J. Med. 321: 513-518, 1989)。これらアミロイド症のほとんどで、明らかな治癒も有効な治療法もなく、アミロイド沈着の結果は、患者にとって有害になり得る。例えば、腎臓におけるアミロイド沈着は腎不全をもたらし、一方、心臓におけるアミロイド沈着は心不全をもたらす場合がある。これらの患者では、全身性臓器におけるアミロイド蓄積が最終的な死を概して3〜5年以内にもたらす。他のアミロイド症は、アルツハイマー病及びダウン症候群の患者の脳中に見出されるAβアミロイド沈着物:クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−シュトラウスラー症候群、及びクールー病の患者の脳中に見出されるPrPアミロイド;II型糖尿病の患者の90%の膵臓のランゲルハンス島中に見出される島アミロイド(アミリン)沈着物(Johnson et al, N. Engl. J. Med. 321: 513-518, 1989; Lab. Invest. 66: 522-535, 1992);長期血液透析を受けている患者において観察されるような手根管症候群をもたらす、内側神経中のβ2−ミクログロブリンアミロイド沈着物(Geyjo et al, Biochem. Biophys. Res. Comm. 129: 701-706, 1985; Kidney Int. 30: 385-390, 1986);老人性心臓アミロイドを有する患者の心臓中に観察されるプレアルブミン/トランスチレチンアミロイド;及び、家族性アミロイド性多発神経障害を有する患者の末梢神経中に観察されるプレアルブミン/トランスチレチンアミロイド(Skinner と Cohen, Biochem. Biophys. Res. Comm. 99: 1326-1332, 1981; Saraiva et al, J. Lab. Clin. Med. 102: 590-603, 1983; J. Clin. Invest. 74: 104-119, 1984; Tawara et al, J. Lab. Clin. Med. 98: 811-822, 1989)で観察されるように、単一の臓器若しくは組織に影響を及ぼす場合がある。
アルツハイマー病と高齢化人口
アルツハイマー病は、高齢者の痴呆症の主要原因であり、65歳の年齢を超える人口の5〜10%が罹患する(「アルツハイマー病と関連障害の理解への手引き」 Jorm 編、ニューヨークユニバーシティプレス、ニューヨーク、1987年)。アルツハイマー病においては、記憶、注意、言語、及び推理のような認知プロセスに必須である脳の部分が変性し、独立心を含め、我々をヒトたらしめている多くのものを犠牲者から奪ってしまう。ある遺伝性アルツハイマー病の形態においては、発症が中年であるが、より一般的には、症状は60歳代半ば以降に出現する。今日400〜500万のアメリカ人がアルツハイマー病に罹患し、これらの人々の半数よりやや多くが自宅でケアを受けているが、他の人々は多くの様々な医療施設にいる。アルツハイマー病と他の痴呆症の罹患率は65歳を超えると5歳ごとに倍増し、最近の研究は、85歳以上の人々のほぼ50%がアルツハイマー病の症状を有することを示す(「アルツハイマー病に関する2000年度進捗報告」、国立老化研究所/国立衛生研究所)。米国の全人口の13%(3300万人)が65歳以上であり、この比率は、2025年までに20%へ上昇する(「アルツハイマー病に関する2000年度進捗報告」)。
アルツハイマー病は社会に対して重い経済負担も課している。最近の研究は、重篤な認知障害を有する1人のアルツハイマー病患者を家庭や療養施設で世話するコストが年間47,000ドルより多いと推定した(「アルツハイマー病と関連障害の理解への手引き」)2〜20年に及ぶ可能性がある疾患としては、アルツハイマー病の家庭や社会への全体コストは驚異的である。米国におけるアルツハイマー病の医療費と患者及びその看護者の双方の損失賃金に関する年間経済負担は800〜1000億ドルと推定されている(「アルツハイマー病に関する2000年度進捗報告」)。
アルツハイマー病についてはじめてFDA承認された塩酸タクリン(「Cognex(コグネクス)」)は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤である(Cutler と Sramek, N. Engl. J. Med. 328: 808-810, 1993)。しかしながら、この薬物は、アルツハイマー病患者における認知改善をもたらすことにおいて限定された成功しか示さず、はじめは、肝毒性のような重い副作用があった。より最近FDA承認された第二の薬物であるドネペジル(「Aricept(アリセプト)」は、やはりアセチルコリンエステラーゼ阻害剤であり、アルツハイマー病患者における軽度の認知改善を明示することによって、タクリンより有効である(Barner と Gray, Ann. Pharmacotherapy 32: 70-77, 1998; Rogers と Friedhoff, Eur. Neuropsych. 8: 67-75, 1998)が、治癒法であると信じられてはいない。故に、アルツハイマー病患者へのより有効な治療薬へのニーズがあることは明らかである。
アルツハイマー病の治療標的としてのアミロイド
アルツハイマー病は、βアミロイドタンパク質、Aβ若しくはβ/A4と呼ばれる39〜43のアミノ酸ペプチドの沈着及び蓄積により特徴づけられる(Glenner と Wong, Biochem. Biophys. Res. Comm. 120: 885-890, 1984; Masters et al., Ptoc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 4245-4249, 1985; Husby et al., Bull. WHO 71: 105-108, 1993)。Aβは、βアミロイド前駆体タンパク質(又はβPP)と呼ばれるより大きな前駆体タンパク質のプロテアーゼ開裂に由来し、それにはいくつかの選択スプライシングされる変異体が存在する。βPPの最も豊富な形態には、695、751、及び770のアミノ酸からなるタンパク質が含まれる(Tanzi et al., Nature 331: 528-530, 1988; Kitaguchi et al., Nature 331: 530-532, 1988; Ponte et al., Nature 331: 525-527, 1988)。
小さなAβペプチドは、アルツハイマー病を有する患者の脳中「斑」のアミロイド沈着物を構成する主要成分である。さらに、アルツハイマー病は、神経細胞質中に異常に蓄積する対合した螺旋フィラメントからなる数多くの神経原線維の「もつれ」の存在により特徴づけられる(Grundke-Iqbal et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 4913-4917, 1986; Kosik et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 4044-4048, 1986; Lee et al., Science 251: 675-678, 1991)。故に、アルツハイマー病の病理学的特徴は、「斑」と「もつれ」の存在であり、アミロイドは斑の中心核に沈着している。アルツハイマー病の脳に見出される他の主要な病巣のタイプは、脳実質内と脳外に存在する髄膜血管の壁中の両方における、血管壁中のアミロイドの蓄積である。血管の壁に局在化しているアミロイド沈着物は、脳血管アミロイド又は好コンゴレッド性血管症と呼ばれる(Mandybur, J. Neuropath. Exp. Neurol. 45: 79-90, 1986; Pardridge et al., J. Neurochem. 49: 1394-1401, 1987)。
多年の間、アルツハイマー病における「アミロイド」の重要性については、この疾患に特徴的な「斑」及び「もつれ」がこの疾患の原因であるのか、又は結果にすぎないのかという進行中の学術論争がある。ここ数年では、今や研究は、アミロイドが実際にアルツハイマー病の原因となる因子であり、単なる無実の傍観者とはみなせないことを示している。アルツハイマー病のAβタンパク質は、細胞培養において、短い時間の間に神経細胞の変性を引き起こすことが示された(Pike et al., Br. Res. 563: 311-314, 1991; J. Neurochem. 64: 253-265, 1995)。諸研究は、神経毒性効果の原因となるのが、すべてのアミロイドに特徴的な(優勢なβプリーツシート二次構造からなる)原線維構造であることを示唆する。Aβはまた、海馬のスライス培養において神経毒性であることが見出され(Harrigan et al., Neurobiol. Aging 16: 779-789, 1995)、トランスジェニックマウスにおいて神経細胞死を誘導する(Games et al., Nature 373: 523-527, 1995; Hsiao et al., Science 274: 99-102, 1996)。ラット脳へのアルツハイマーAβの注射はまた、記憶障害と神経機能不全を引き起こす(Flood et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 3363-3366, 1991; Br. Res. 663: 271-276, 1994)。
おそらくは、Aβアミロイドがアルツハイマー病の病理発生に直接関与するという最も確実な証拠は、遺伝学的研究に由来する。Aβの産生は、その前駆体、βアミロイド前駆体タンパク質をコードする遺伝子における突然変異から生じ得ることが発見された(Van Broeckhoven et al., Science 248: 1120-1122, 1990; Murrell et al., Science 254: 97-99, 1991; Haass et al., Nature Med. 1: 1291-1296, 1995)。家族性アルツハイマー病の早期発症を引き起こすβアミロイド前駆体タンパク質遺伝子における突然変異の同定は、アミロイドがこの疾患の根底にある病理発生プロセスの中心にあるという最も強い論拠である。家族性アルツハイマー病を引き起こすことにおけるAβの重要性を明示する、4つの報告された疾患起因性突然変異が今や発見されている(Hardy, Nature Genet. 1: 233-234, 1992 に概説されている)。これらの研究のすべては、ヒト患者の脳における原線維Aβの形成、沈着、蓄積、及び/又は存続を抑制、一掃、又は予防する薬物を提供することが有効な治療薬として役立つことを示唆する。
アルツハイマー病と他のアミロイド症において生じるアミロイドの沈着、蓄積、及び/又は存続を停止させる潜在的な治療薬剤としての新規の化合物若しくは薬剤の発見及び同定が懸命に求められている。
パーキンソン病とαシニュクライン原線維形成
パーキンソン病は、その主要成分がαシニュクライン(Spillantini et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 6469-6473, 1998; Arai et al, Neurosc. Lett. 259: 83-86, 1999)、140アミノ酸タンパク質(Ueda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 90: 11282-11286, 1993)からなるフィラメントである、細胞質間リューイ小体の存在により病理学的に特徴づけられる神経変性障害である(リューイ、「神経学要覧」中、M. Lewandowski 編、スプリンガー、ベルリン、920-933 頁、1912年;Pollanen et al, J. Neuropath. Exp. Neurol. 52: 183-191, 1993)。家族性早期発症パーキンソン病を引き起こすαシニュクラインにおける2つの優性突然変異が記載され、リューイ小体がパーキンソン病におけるニューロンの変性へ機械的に貢献することを示唆した(Polymeropoulos et al., Science 276: 2045-2047, 1997; Kruger et al., Nature Genet. 18, 106-108, 1998)。最近、in vitro 試験は、組換えαシニュクラインが実際にリューイ小体様の原線維を形成し得ることを明示した(Conway et al., Nature Med. 4: 1318-1320, 1998; Hashimoto et al., Brain Res. 799: 301-306, 1998; Nahri et al., J. Biol. Chem. 274: 9834-9846, 1999)。最も重要には、いずれのパーキンソン病連結αシニュクライン突然変異もこの凝集プロセスを加速し、そのことはそのような in vitro 試験がパーキンソン病の病理発生に関連がある可能性があることを示唆する。αシニュクライン凝集と原線維形成は、核形成依存性の重合化プロセスの判定基準を満足する(Wood et al., J. Biol. Chem. 274: 19509-19512, 1999)。この点では、αシニュクライン原線維の形成は、アルツハイマー病のβアミロイドタンパク質(Aβ)原線維のそれに似ている。αシニュクライン組換えタンパク質と、αシニュクラインの35アミノ酸ペプチド断片である非アミロイド成分(NACとして知られる)は、いずれも37℃でインキュベートしたときに原線維を形成する能力を有し、コンゴレッド(偏光下で見たときに、赤/緑の複屈折を明示する)とチオフラビンS(陽性の蛍光を明示する)のようなアミロイド染料で陽性である(Hashimoto et al., Brain Res. 799: 301-306, 1998; Ueda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 90: 11282-11286, 1993)。
さらに、αシニュクライン/NACの蓄積はまた、リューイ小体疾患と多系統萎縮症に共通の細胞病理学的な特徴である(Wakabayashi et al, Acta Neuropath. 96: 445-452, 1998; Piao et al, Acta Neuropath. 101: 285-293, 2001)。多系統萎縮症は、αシニュクライン/NACを含有する、ニューロン及びグリア細胞質の封入体により特徴づけられる、成人の散発性神経変性疾患である。
パーキンソン病のαシニュクライン/NAC原線維も、アルツハイマー病のAβ原線維と同じように、優勢なβプリーツシート構造からなる。故に、アルツハイマー病のAβアミロイド原線維形成を阻害することが見出された化合物は、αシニュクライン及び/又はNAC原線維形成の阻害に有効であることが予期され得る。故に、これらの化合物は、アルツハイマー病と他のアミロイド障害の治療薬としての効力を有することに加え、パーキンソン病の治療薬としても役立つだろう。
島アミロイドポリペプチド(IAPP)と2型糖尿病
島アミロイド沈着物は、十分確定した2型糖尿病の患者の約90%に観察され、この疾患プロセスに特徴的な特性であると見られる(Westermark, J. Med. Sci. 77: 91-94, 1972; Clark et al, Diabetes Res. 9: 151-159, 1988)。多くの患者において、この沈着物が広がっていて、多くの島に影響を及ぼす。アミロイドに置き換えられた島(主にβ細胞)塊(マス)の程度は、糖尿病プロセスの重症度の指標になる場合があり、インスリン治療を必要とする個体は、最大の島塊低下とアミロイド形成を有する(Westermark, Amyloyd: Int. J. Exp. Clin. Invest. 1: 47-60, 1994)。島アミロイドは異なる集団から入手される剖検サンプルにおいて観察されてきたので、それは、この症候群の個体の亜集団よりはこの疾患に共通した現象であるらしい(Westermark, J. Med. Sci. 77: 91-94, 1972; Clark et al, Diabetes Res. 9: 151-159, 1988)。島アミロイド沈着物の蔓延は年齢とともに増加する(Bell, Am. J. Path. 35: 801-805, 1959)が、これは驚くことではない。なぜなら、グルコース耐性の悪化と2型糖尿病の罹患率の増加が正常な老化に関連するからである(Davidson, Metabolism 28: 687-705, 1979)。
島アミロイドの主要タンパク質は、島アミロイドポリペプチド(IAPP)又はアミリンとして知られる37アミノ酸ペプチドである。IAPPは、インスリンを担う細胞質顆粒に保存される、膵臓β細胞の既知の正常分泌産物(Kahn et al, Diabetes 39: 634-638, 1990)である(Clark et al, Cell Tissue Res. 257: 179-185, 1989)。島アミロイドの沈着が2型糖尿病の病理発生に関与しているのか、又は単にその結果であるのかどうかが長いこと問われてきた。しかしながら、今やいくつかの研究は、島アミロイドの形成、沈着、及び存続が実際にβ細胞機能不全と細胞死、高血糖症をもたらす、2型糖尿病の発症における重要な第一因子である可能性があることを示唆する。
IAPPは、そのβ細胞機能の減損とβ細胞塊の低下を介して2型糖尿病の病理発生に重要な役割を担うと仮定されている(Johnson et al, N. Engl. J. Med. 321: 513-518, 1989)。β細胞塊に置き換わる島アミロイド沈着物を形成することができること以外に、アミロイド原線維は、島を直接傷害するらしい。ヒト若しくはラットのIAPPの存在下に島をインキュベートした試験は、ヒトIAPPが濃度依存的なやり方でアミロイド原線維を形成し、膵臓の島β細胞の死に関連することを明示した(Lorenzo et al, Nature 368: 756-760, 1994)。細胞死は、アミロイド原線維を形成しないラットIAPPの存在下では起こらなかった(Lorenzo et al, Nature 368: 756-760, 1994)。
トランスジェニックマウスモデルが関与した試験は、2型糖尿病の病理発生における島アミロイドの役割へのさらなる洞察を可能にした。より最近の試験は、IAPP由来の島アミロイドの進展は高血糖症に依存せず、進行性であることを強く示唆する(Verchere et al, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93: 3492-3496, 1996)。これら後者の試験においては、高血糖症が進展したのは雄トランスジェニックマウスのほんの31%と雄の非トランスジェニック動物の14%においてである。これらのマウスからの膵臓切片を検査すると、糖尿病のあるどのトランスジェニックマウスにも島アミロイドが見出された。しかしながら、正常血糖である雄トランスジェニックマウスの2/3も島アミロイド沈着物を発症し、高血糖症が島アミロイド形成の前提条件ではないことを示した。これらと他の試験からのデータは、ヒトIAPPがβ細胞に対して細胞障害性であり、それにより島機能において早期の改変をもたらす可能性があることをさらに示唆した(Lorenzo et al, Nature 368: 756-760, 1994; Janson et al, Diabetes 47: A250, 1998)。島アミロイド沈着は2型糖尿病の島病巣の初期の特徴であるらしく、島アミロイドの進行性蓄積がさらなるβ細胞塊低下に関連している(Clark et al, Diabetes Res. 9: 151-159, 1988; Westermark と Wilander, Diabetologia 15: 417-421, 1978)。このように、増加したアミロイド沈着により引き起こされる島塊の進行低下は、インスリン分泌の進行減損、糖耐性の低下、そして最終的には絶食性高血糖症の進展に関連する。トランスジェニック動物における試験は、高血糖症が島アミロイドの進展に関与していることだけでなく、アミロイドがβ細胞を置き換えることによって高血糖症の進展に貢献することを示唆する。これらの試験は、全体として、島アミロイド形成が2型糖尿病のβ細胞不全の進展に中心的な役割を担うことを示唆する。故に、島アミロイド(即ち、IAPP又はアミリン)の形成、沈着、蓄積、又は存続を阻害するか又は破壊することが可能な薬剤若しくは化合物は、2型糖尿病の新たな潜在治療薬をもたらす可能性がある。
Uncaria tomentosa
「Una de Gato」(スペイン語)又は「ネコの爪(Cat's claw)」(英語)としても知られる薬草、Uncaria tomentosa は、ペルー領アマゾン熱帯雨林内で生長する木ブドウを意味する。このゆっくりと生長するぶどうは、成熟に至るまでに20年間かかり、自生の木々に付着してその周囲を取り囲みながら、100フィートを超える長さにわたり生長することが可能である。それは、2000〜8000フィートの高さにある丘陵地帯に豊富に見出される。このブドウが「ネコの爪」と呼ばれるのは、その葉の基部から突き出ている、その特徴的な曲がった爪のような棘のためである。伝統的に、現地のインディオ部族は、この薬草の樹皮と根を茹でて煎じ茶を作り、Uncaria tomentosa を聖なる薬草とみなしてきた。この植物の樹皮に含まれるきわめて有効な特質は、ヒトにおけるその潜在利益についての科学的な医学データは概ね不足してものの、身体に対して絶大でポジティブな影響を及ぼすと信じられている。Uncaria tomentosa の樹皮にあるアルカロイドと光化学物質は根に見出されるものとほぼ同一であり、このように収穫することは、この植物を保存し、熱帯雨林の将来への予防手段となる。
Uncaria tomentosa に存在する活性物質のいくつかは、この植物において発生し、その水抽出物が複合体としてタンニンへ結合している、アルカロイドである。この形態においては、そのごくわずかしか活性化され得ない。この複合体が胃の酸性環境により分離されると、アルカロイドはその塩酸塩の形態へ変換され、よく吸収されるようになる。より黒ずんだ Uncaria tomentosa 抽出物は、より多くのタンニンが存在し、有益なアルカロイドがタンニンとともに固定され、生体に利用されない、ほとんど吸収されない複合体を形成していることを意味する。明るい金色の Uncaria tomentosa は、より少ないタンニンとより多くの利用可能なアルカロイドが抽出物中に存在していることを示唆する。
Uncaria tomentosa は、南米ペルーの熱帯雨林において最も重要な植物の1つである。この植物の樹皮からいくつかのオキシインドールアルカロイドがすでに単離されている。2つの米国特許(米国特許第4,844,901号と米国特許第4,940,725号)は、Uncaria tomentosa からの6種のオキシインドールアルカロイドの単離及び使用を記載し、これは、「免疫系の不特定の刺激に適している」と考えられている。これらのオキシインドールアルカロイドは、免疫系へ全般的な抗原刺激(boost)を提供するだけでなく、有害な微生物及び異物を貪食する白血球及びマクロファージの能力に対して絶大な効果を及ぼすと考えられている。最も免疫活性のあるアルカロイドは、アロイソプテロポジン、異性体Aの、五環系オキシインドールアルカロイドであるらしい(米国特許第4,940,725号)。
Uncaria tomentosa は多様な病気を治療するのに使用することが可能であると示唆した医療提供者もいるが、この植物又はその抽出物、又はそれ由来の化合物の、アルツハイマー病及びパーキンソン病を含むアミロイド症において起こるような、アミロイドの形成、沈着、蓄積、及び/又は存続の治療への使用や使用の示唆はどこにもなかった。本発明は、アルツハイマー病、2型糖尿病、全身性AA、アミロイド症、及び他のアミロイド疾患に関連したアミロイド症の治療、並びに、パーキンソン病の患者において観察されるようなαシニュクライン原線維の形成及び蓄積の治療への、プロシアニジン及びプロアントシアニジンを含む、Uncaria tomentosa 由来化合物の有効性を明瞭に明示する。
プロアントシアニジン、プロシアニジン、フラバノイド、及びタンニン
プロアントシアニジンは、果実、液果、及び他の植物材料において天然に存在するポリフェノール性分子である。これらの分子はフラバノイドファミリーの化合物に属する。フラバノイドポリフェノールには、カテキン、アントシアニン、及びプロアントシアニジンが含まれる。プロアントシアニジンは、当技術分野において、濃縮タンニン、ロイコアントシアニジン、ロイコデルフィニン、ロイコシアニン、アントシアノーゲン、エピカテキン−カテキンポリマー、又はプロシアニジンとしても知られている。プロシアニジン及びプロアントシアニジンの概説については、Santos-Buelga と Scalbert, J. Sc. Food Agri. 80: 1094-1117, 2000 を参照のこと。これは、完全に示されるかのように参照により本明細書に援用され、以下に詳しく考察される。
目下の抗アミロイド活性に有用なプロアントシアニジンのオリゴマー若しくはポリマーは、ロイコアントシアニジンのモノマー単位から構成される。一般に、ロイコアントシアニジンは、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、ガロエピカテキン、フラバノール、フラボノール、及びフラバン−3,4−ジオール、ロイコシアニジン、及びアントシアニジンを含む、モノマーフラバノイドである。治療的に有効なプロアントシアニジンポリマーは、2〜20のフラバノイド単位、そしてより好ましくは2〜11のフラバノイド単位を有する。
プロアントシアニジンのポリマー若しくはオリゴマーは変動数のフラバノイド単位を有することが知られていて、例えば、Mattice et al, Phytochem. 23: 1309-1311, 1984; Czochanska et al, J. C. S. Chem. Comm. 375, 1979; Jones et al, Photochemistry, 15: 1407-1409, 1979 に報告されている。再引用された範囲のフラバノイド単位を有し、上記文献に記載されるプロアントシアニジンオリゴマーは、その開示が本明細書において完全に示されるかのように参照により本明細書に援用される。
プロアントシアニジンとも呼ばれるプロシアニジンは、エピカテキン及びカテキンの残基から構成されるポリマー若しくはオリゴマーの化合物である。開示される化合物には、エピカテキン及びカテキン残基のダイマーと、エピカテキンのトリマーが含まれる。カテキン及びエピカテキンの残基は、約10,000ダルトンまでの分子量までのポリマーのプロシアニジンにおいて、あらゆる可能な組合せで組み合わせることが可能である。プロアントシアニジンポリマーは、変動数のフラバノイド単位を有することが知られている。このポリマーは、好ましくは、2〜15のモノマーフラバノイドサブユニット、最も好ましくは2〜10のサブユニットを含有する。
タンニンは、標準的には、2つの群へ分けられる。加水分解可能なタンニンは、フェノール酸とポリオール、通常はグルコースのエステルである。フェノール酸は、ガロタンニン中の没食子酸か、又はエラジタンニンのガロイル残基の酸化に由来する他のフェノール酸のいずれかである。タンニンの第二群を形成するプロアントシアニジンは、我々の食事においてずっとより一般的である。それらは、基本のフラバン−3−オール単位からつくられるポリマーである。プロアントシアニジンの主要な特徴は、酸性媒体中で加熱すると、それらがアントシアニジンを生じることであり、従ってその名称がある(Santos-Buelga と Scalbert, J. Sc. Food Agri. 80: 1094-1117, 2000 に概説されている)。
構造的には、タンニンは、1000単位の相対分子重量につき12〜16のフェノール基と5〜7の芳香環を保有する(E. Haslam,「実用ポリフェノール化合物−構造から分子認識及び生理学的作用へ」、ケンブリッジユニバーシティプレス、ケンブリッジ、1998年)。この特徴は、その高分子量とともに、タンニンと赤ワインや黒紅茶のようなプロセス処理製品に見出される類似のフェノールポリマーを、構造及び性質の両方において、低分子量フェノール酸やモノマーフラバノイドとは明らかに異なるものにする。単純フラバノール、プロアントシアニジン、及び他のフェノール化合物の酵素的及び/又は化学的変換により形成されるフェノール性ポリマーは、タンニン様化合物と呼ばれる。
プロアントシアニジンは、その基本単位がC−C結合により、時にはC−O−C結合により連結しているポリマー性フラバン−3−オールである。フラバン−3−オール単位は、典型的なC6−C3−C6フラバノイド骨格を有する。3つの環は、文字A、B、及びCにより識別される(図1を参照のこと)。それらは、双方の芳香環上のヒドロキシル基の数と、複素環上の不斉炭素の立体化学に従って構造的に異なる。食物中の最も一般的なプロアントシアニジンは、B環に3’,4’−ジヒドロキシ置換を有するプロシアニジンと、3’,4’,5’−トリヒドロキシ置換を有するプロデルフィニジンである。プロシアニジン又は混合プロシアニジン/プロデルフィニジンは、食物中にごく一般的に存在する。4’−ヒドロキシB環を有するプロペラルゴニジンは食物源においては比較的稀であるが、本明細書においてはエピアフゼレキンの形態で特に開示される。フラバノール複素環の3つの炭素、C2、C3、C4は不斉であり、異なる配置で生じる場合がある。いくつかのごく稀な例外では、C2の配置がRである。2S配置を有するフラバン−3−オール単位は、頭字語のenantio(ent−)により識別される。C2−C3連結の立体化学は、(+)−(ガロ)カテキン及び(−)−エピ(ガロ)カテキンポリマーにあるように、それぞれトランス(2R,3S)又はシス(2R,3R)のいずれか一方であり得る。C4でのフラバン間結合は、C3のヒドロキシ基に関していつでもトランスである(E. Haslam,「実用ポリフェノール化合物−構造から分子認識及び生理学的作用へ」、ケンブリッジユニバーシティプレス、ケンブリッジ、1998年)。
最も通常のフラバノール間連結は、1つのフラバノイド単位(「伸長若しくは上方単位」)のC4間に確立されるC−C結合である。そのようなプロアントシアニジンは、いわゆるB型(二量体)及びC型(三量体)プロアントシアニジンに属する。二重連結単位(1つはC−Cで、1つはC−O;「A型連結」)を有する化合物も、茶葉、ココア、及びクランベリー果実のような食物源において報告されている(LJ. Porter,「フラバンとプロアントシアニジン」、JB Harborn 編「フラバノイド−1986年以降の研究における進歩」中、チャップマン・アンド・ホール、ロンドン、23−55頁、1994年)。これらのA型プロアントシアニジンにおいては、通常のC4−C8若しくはC4−C6結合に加えて、追加のエーテル連結が、上方単位のC2と下方単位の酸素を担うC7若しくはC5との間で形成される。
当初、オリゴマーのプロアントシアニジンは、A、B、又はCの文字がフラバノール間連結のタイプを記載するα数値系により命名され;それが検出されるごとにその文字へ数字を追加した(Thompson et al, J. Chem. Soc. Perkins Trans, 1: 1387-1399, 1972)。後に、増加するたくさんの新規構造を命名するために新たな命名法が導入された。それは、多糖について利用されるものに基づいている(Hemingway et al, J. Chem. Soc. Perkins Trans. 1: 1387-1399, 1972)。この命名法においては、オリゴマーの基本単位が対応するフラバン−3−オールモノマーの名称で指定される。フラバノール間連結とその方向が矢印(4→)で示され、C4でのその配置はα又はβとして記載される。A型二重連結プロアントシアニジンにおいては、両方の連結が明記される。カテキン下方単位の置換パターンから明らかであるので、追加のエーテル結合において酸素を明記することは不必要である(LJ. Porter, JB Harborn 編「フラバノイド−1986年以降の研究における進歩」中、チャップマン・アンド・ホール、ロンドン、21−62頁、1988年)。例えば、この命名法に従えば、プロシアニジンダイマーB1はエピカテキン−4β→8−カテキンとなり、ダイマーA2は、エピカテキン−2β→7,4β→8−エピカテキンとなる。
フラバノール単位は、様々なアシル若しくはグリコシル置換基を担うことが可能である。最も一般的なアシル置換基は、お茶(Nonaka et al, Chem. Pharmaceutic. Bull. 31: 3906-3914, 1983)とワイン(Prieur et al, Phytochem. 36: 781-784, 1994)にあるように、C3位のヒドロキシルとエステルを形成する没食子酸である。いくつかのグリコシル化プロアントシアニジンオリゴマーも特性決定されている。この糖は一般にC3でヒドロキシル基へ連結する(Ishimaru et al, Phytochemistry 26: 1167-1170, 1987; Zhang et al, Phytochemistry 27: 3277-3280, 1988)が、C5位でも連結する(Gujer et al, Phytochemistry 25: 1431-1436, 1986)。プロアントシアニジンのヘテロシドは他のフラバノイドグリコシドほど頻繁に報告されていないが、精製されたプロアントシアニジンポリマーに糖が頻繁に結合しているので、その発生は過小評価されている可能性がある(Porter et al, Phytochemistry 24: 567-569, 1985; Mathews et al, J. Agric. Food Chem. 45: 1195-1201, 1997)。そのような変動と、本明細書に開示される他の変動は、開示されるプロアントシアニジンの開示の範囲内に含まれる。
より最近、液体クロマトグラフィーに共役したエレクトロスプレー質量分析技術の導入は、プロアントシアニジンポリマーのより詳細な特性決定をもたらした。そのような方法を本発明において利用して、強力な抗アミロイド及び抗αシニュクライン/NAC活性を明示する、Uncaria tomentosa に由来するプロシアニジン及びプロアントシアニジンを同定した。
発明を実施するための最良の形態
さらなる諸定義
本開示においては、以下の用語は、この用語が文献の随所で異なって使用されているか、又は当技術分野において他のやり方で使用されているかどうかにかかわらず、以下の意味を有する。
「プロアントシアニジン」には「プロシアニジン」が含まれる。「プロシアニジン」は、「プロアントシアニジン」の特定のクラスである。
「哺乳動物」及び「哺乳動物被検者」には、限定されないが、ヒトと、伴侶動物(ネコ、イヌ、等)、(マウス、ラット、モルモット、等のような)実験動物、及び農場動物(ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、等)のような非ヒト哺乳動物が含まれる。
「製剤的に許容される賦形剤」は、概して安全で、無毒で、望ましい医薬組成物を調製するのに有用である賦形剤を意味し、ヒト医薬品の使用だけでなく獣医学的な使用にも許容される賦形剤が含まれる。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体であってよく、又はエアゾール組成物の場合は、気体であってもよい。
「製剤的に許容される塩」は、製剤的に許容され、所望の薬理学的性質を有する塩を意味する。そのような塩には、化合物に存在する酸性プロトンが無機若しくは有機の塩基と反応することが可能である場合に形成され得る塩が含まれる。好適な無機塩には、アルカリ金属、例えば、ナトリウム及びカリウム、マグネシウム、カルシウム、及びアルミニウムとともに形成されるものが含まれる。好適な有機塩には、アミン塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン、等のような有機塩基と形成されるものが含まれる。そのような塩にはまた、無機酸(例、塩酸及び臭化水素酸)や有機酸(例、酢酸、クエン酸、マレイン酸、及び、メタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸のようなアルカン及びアレーンスルホン酸)と形成される酸付加塩が含まれる。2つの酸性基が存在する場合、製剤的に許容される塩は、一酸一塩か、又は二塩であってよく;そして同様に、2つ以上の酸性基が存在する場合は、そのような基のいくつか又はすべてを塩化することが可能である。
「治療有効量」は、一般に、ある疾患を治療するために被検者又は動物へ投与されるときに、その疾患へ所望される程度の治療をもたらすのに十分である量を意味する。「治療有効量」又は「治療有効投与量」は、好ましくは、アミロイド症、原線維の形成、沈着、蓄積、及び/又は存続、又はαシニュクライン/NAC原線維形成に関連した疾患を、患者において、非治療被検者に比べて、少なくとも20%だけ、より好ましくは少なくとも40%だけ、なおより好ましくは少なくとも60%だけ、そしてさらにより好ましくは少なくとも80%だけ阻害し、抑制し、破壊し、分解する。哺乳動物被検者の治療へのプロアントシアニジン若しくはプロシアニジン、又は他の開示組成物の有効量は、被検者の体重1kgにつき約1mg〜約10,000mgであるが、より好ましくは約10mg/kg/体重〜100mg/kg体重である。開示組成物の広範囲の投与量が安全かつ有効であると考えられている。
疾患を「治療する」又は疾患の「治療」には、その疾患への素因があるかもしれないが、まだその疾患の諸症状を体験も表出もしていない哺乳動物においてその疾患が生じることを予防すること(予防治療)、その疾患を阻害すること(その進展を遅延させるか又は停止させること)、その疾患の症状若しくは副作用の軽減を提供すること(一時緩和治療も含む)、及びその疾患を和らげること(疾患の後退を引き起こすこと)が含まれる。アミロイド症又は「アミロイド疾患」を「治療すること」には、以下のいずれか1つ以上が含まれる:Aβや本明細書において言及される他のアミロイドのようなアミロイド原線維及びアミロイドタンパク質沈着物を予防すること、阻害すること、抑制すること、分解すること、破壊すること、及び分離させること。
αシニュクライン疾患を「治療すること」又は「αシニュクライン/NAC原線維形成を治療すること」には、以下のいずれか1つ以上が含まれる:リューイ小体疾患、パーキンソン病、及び多系統萎縮症にあるようなαシニュクライン/NAC原線維とαシニュクライン/NAC関連タンパク質沈着物を予防すること、阻害すること、抑制すること、分解すること、破壊すること、及び分離させること。
「NAC」(非アミロイド成分)は、αシニュクラインの35アミノ酸ペプチド断片であるが、これも、αシニュクラインのように、37℃でインキュベートしたときにアミロイド様原線維を形成する能力を有し、コンゴレッド(偏光下で見たときに、赤/緑の複屈折を明示する)とチオフラビンS(陽性の蛍光を明示する)のようなアミロイド染料で陽性である(Hashimoto et al., Brain Res. 799: 301-306, 1998; Ueda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 90: 11282-11286, 1993)。NAC原線維の形成、沈着、蓄積、凝集、及び/又は存続の阻害は、パーキンソン病、リューイ小体疾患、及び多系統萎縮症のような、αシニュクラインが関与するいくつかの疾患に有効な治療であると考えられている。
「原線維形成」は、アミロイド原線維、又はαシニュクライン及び/又はNACを含有する形成された原線維の存在を意味する。そのような原線維形成の治療化合物を用いた阻害には、限定されないが、そのようなアミロイド、アミロイド原線維、αシニュクライン及び/又はNAC原線維の哺乳動物被検者における形成、沈着、蓄積、凝集、及び/又は存続を治療すること、阻害すること、予防すること、又は管理することが含まれる場合がある。
「医薬剤」又は「薬理剤」又は「医薬組成物」は、治療に使用される、好ましくは純粋であるか又はほぼ純粋の形態にある、化合物又は諸化合物の組合せを意味する。本明細書においては、医薬剤若しくは薬理剤には、実施例のようなプロアントシアニジンとプロシアニジンが含まれる。開示される医薬若しくは薬理化合物、又は組成物中の化合物は、80%均一性、そして好ましくは90%均一性まで精製されている。99.9%均一性まで精製された化合物及び組成物は有利であると考えられる。純粋化合物ならば、検査又は確認のときに、HPLCで単一の鋭いピーク帯を生じるだろう。
開示される化合物及び組成物は、1つ以上のキラル中心を保有する場合があり、故に、出発材料に個別の立体異性体か又は立体異性体の混合物が使用されるかに依存して、個別の立体異性体としてか又は立体異性体の混合物として生成することが可能である。他に明記しなければ、化合物又は諸化合物の群の記載若しくは命名には、個別の立体異性体と立体異性体の(ラセミ又は他の)混合物の両方が含まれると意図される。立体異性体の立体化学の決定と分離の方法は、当技術分野の当業者によく知られている[March J:「先端有機化学」第4版、ジョンウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク、ニューヨーク州、1992年の第4章における考察を参照のこと]。
「場合により置換されるグリコシル」は、硫酸塩、スルホネート、リン酸塩、ホスホネート、及びカルボキシレート(それぞれ、場合により置換されるアルキル、場合により置換されるアリール、又は場合により置換されるヘテロアリールとともに場合によりエステル化される)から選択される3つまでのアニオン置換基で場合により置換されるグリコシルであり;例には、グルコシル、ガラクトシル、ラムノガラクトシル、等が含まれる。
「アリール」は、5〜12の環炭素原子と十分な環不飽和度を有する環式(単環式、縮合二環式、又は連結二環式)基であり、この基は、その用語が慣用的に使用されているように「芳香性」である(例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、等)。「ヘテロアリール」基は、1〜4の環炭素原子がO、S、又はNR(ここでRは、水素又はC1-6アルキルである)に置き換わった、直前に定義した「アリール」基である(例えば、ピロリル、フラニル、チエニル、ベンゾフラニル、等)。「置換アリール若しくはヘテロアリール」は、1〜3の、好ましくは隣接したヒドロキシル基と、5つまでの非干渉置換基により置換された、直前に定義したアリール若しくはヘテロアリール基である。非干渉置換基とは、化合物の薬理活性に不都合に影響を及ぼさず、他の点でも薬理学的に望ましくなくはない置換基である。好適な非干渉置換基には、ハロゲンと、それぞれ5つまでのハロゲン原子で場合により置換されるC1-6アルキル及びC1-6アルコキシが含まれる。
アミロイド疾患の薬理若しくは医薬による治療、又はαシニュクライン/NAC原線維形成の治療のために開示される化合物には、限定されないが、プロアントシアニジン、プロシアニジン、アントシアニン、濃縮タンニン、ロイコアントシアニジン、ロイコシアニン、アントシアノーゲン、エピカテキン−カテキンポリマー若しくはオリゴマー、フラバノイド、フラバン−3,4−ジオール、プロペラルゴニジン、及び、A型、B型、及びC型プロシアニジンが含まれる。
驚くべきことに、Uncaria tomentosa の化合物及び抽出物が強力な抗アミロイド活性を示すことが今や見出された。そのような活性を示すことが見出された個々の化合物は、ポリフェノールとして知られる化合物の一般クラス、より特定すると、プロシアニジン及びプロアントシアニジンに属する。開示されるのは、限定されないが、プロシアニジンB2、B4、及びC1を含む、本発明の個々の化合物を獲得するための単離の諸工程を含む方法である。抗アミロイド及び抗αシニュクライン/NAC阻害活性を有する抽出物及び化合物は、溶媒抽出技術、ゲル浸透クロマトグラフィー、調製用高速液体クロマトグラフィー、又はそのような技術の組合せを含む、本明細書に開示される多様な方法により精製することが可能である。
プロアントシアニジンを含有する抗アミロイド及び抗αシニュクライン/NAC組成物及び化合物は、製剤技術分野の当業者によく知られた標準技術に従って調製可能である。そのような組成物は、特別な患者の年齢、性別、体重、及び状態、そして投与の経路のような要因を考慮に容れて、当業者によく知られた投与量において、そして技術により投与することが可能である。本組成物は、やはり特別な患者の年齢、性別、体重、及び状態、そして投与の経路のような要因を考慮に容れて、他の潜在的な抗アミロイド剤、又は抗αシニュクライン/NAC剤とともに同時投与するか又は連続投与することが可能である。
開示される目的を達するために有用な組成物の例には、本発明に十分適している可能性がある、カプセル剤、錠剤、丸剤、等のような経口投与用の固形組成物、並びに噛むことが可能な固形製剤;オリフィス、例えば、懸濁液剤、シロップ剤、又はエリキシル剤のような経口、経鼻投与用の液体調製物;及び、無菌の懸濁液剤若しくは乳剤のような非経口、皮下、皮内、筋肉内、又は静脈内投与(例、注射可能な投与)用の調製物が含まれる。活性プロアントシアニジン化合物は、滅菌水、生理食塩水、等のような好適な担体、希釈剤、又は賦形剤との混合状態にあってよい。本発明の活性抗アミロイド化合物は、例えば、等張、水性の生理食塩水緩衝液において元に戻すために凍結乾燥形態で提供することが可能である。
上記の化合物は精製可能であり、例えば、化合物又はその組み合わせ物は実質的に純粋であり得る;例えば、見かけの均質性まで精製することが可能である。純度は相対的な概念であり、数多くの実施例は、本発明の化合物又はその組み合わせ物の単離、並びにその精製を明示し、そのような例示される方法により、当業者は、実質的に純粋な化合物又はその組み合わせ物を入手するか、又はそれらを見かけの均質性(例えば、HPLCによる純度;単一のクロマトグラフィーピークの観測)まで精製することが可能である。本明細書において定義されるように、実質的に純粋な化合物又は化合物の組み合わせ物は、少なくとも約70%純粋であり、より有利には少なくとも80%純粋であり、少なくとも90%純粋であり、より好ましくは90%より多く純粋であり、例えば少なくとも90〜95%純粋であるか、又は95%より多く純粋であるようにさらにより純粋であり、例えば99.99%純粋である。
ポリフェノールの(+)−カテキン及び(−)−エピカテキンは、本明細書において、本発明の方法により調製することが可能であるポリフェノールオリゴマーのタイプを例示するために使用される。隣接するポリフェノールモノマーの(+)−カテキン及び(−)−エピカテキンの間の連結は、4位から6位、又は4位から8位であり;そして、モノマーの4位と隣接モノマー単位の6及び8位との間の連結は、本明細書において(4→6)又は(4→8)と指定される。
さらに、オリゴマーの立体異性体が本発明の範囲内に含まれる。オリゴマーのフラバノイドモノマーにある置換基の立体化学は、その相対的な立体化学、「α/β」又は「シス/トランス」によるか、又は絶対的な立体化学、R/Sにより記載される場合がある。用語「α」は、フラバン環の面の下に置換基が配向していることを示し、一方、「β」は、この環の面の上に置換基が配向していることを示す。用語「cis(シス)」は、2つの置換基が環の同一面に配向していることを示し、一方「trans(トランス)」は、2つの置換基が環の反対面に配向していることを示す。用語R及びSは、立体産生(stereogenic)中心に直接付いた諸原子の原子数に従った基のランク付けに基づいた、立体産生若しくは「キラル」中心に関する置換基の配置を示すために使用される。例えば、ポリフェノールの(+)−カテキンは、(2R,trans)−2−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−3,5,7−トリオール、又は(2R,3S)−フラバン−3,3’,4’,5,7−ペンタオールと定義することが可能である。フラバン間(ポリフェノール−ポリフェノール)結合は、相対的な用語のα/β、又はcis/transを使用してしばしば特徴づけられるが、本明細書においてフラバン間結合の相対的な立体化学を示すには、α/βを使用する。
モノマーの4位と隣接モノマーの6及び8位の間には多数の立体化学的な連結が存在し;モノマー単位間の立体化学的な連結は、直線状オリゴマーでは、(4α→6)又は(4β→6)又は(4α→8)又は(4β→8)と指定される。カテキンがもう1つのカテキン若しくはエピカテキンへ連結している場合、この連結は、有利には、(4α→6)又は(4α→8)である。エピカテキンがカテキン又はもう1つのエピカテキンへ連結している場合、この連結は、有利には、(4β→6)又は(4β→8)である。
4位炭素だけでなく、2位炭素への結合もα若しくはβの立体化学を有し、3位炭素への結合もα若しくはβの立体化学を有する(例、(−)−エピカテキン又は(+)−カテキン)。
好ましい化合物の例には、限定されないが、ダイマーのエピカテキン−4β→8−エピカテキン及びエピカテキン−4β→6−エピカテキン(ここでは、エピカテキン−4β→8−エピカテキンが好ましい);トリマーの[エピカテキン−(4β→8)]2−エピカテキン、[エピカテキン−(4β→8)]2−カテキン、及び[エピカテキン−(4β→6)]2−エピカテキン(ここでは、[エピカテキン−(4β→8)]2−エピカテキンが好ましい);テトラマーの[エピカテキン−(4β→8)]3−エピカテキン;[エピカテキン−(4β→8)]3−カテキン、及び[エピカテキン−(4β→8)]2−エピカテキン−(4β→6)−カテキン(ここでは、[エピカテキン−(4β→8)]3−エピカテキンが好ましい);及びペンタマーの[エピカテキン−(4β→8)]4−エピカテキン、[エピカテキン−(4β→8)]3−エピカテキン−(4β→6)−エピカテキン、[エピカテキン−(4β→8)]3−エピカテキン−(4β→6)−カテキン、[エピカテキン−(4β→8)]3−エピカテキン−(4β→8)−カテキン、及び[エピカテキン−(4β→8)]3−エピカテキン−(4β→6)−カテキン(ここでは、[エピカテキン−(4β→8)]4−エピカテキンが好ましい)が含まれる。
発明の詳しい説明から、上記のリストが例示であり、本発明の方法により調製することが可能である化合物のタイプを例示するために提供され、本発明により網羅される本発明の化合物の完全なリストして意図されてはいないことが理解されよう。
当業者は、本発明のオリゴマー内のいくつかの結合の回転が、特にオリゴマーがベンジルのような基で置換されている場合は、立体障害により制限される場合があることを理解されよう。従って、本発明の化合物のあらゆる可能な領域異性体(regioisomers)及び立体異性体が本発明の範囲内に含まれる。
プロアントシアニジンは、本発明に記載されるような Uncaria tomentosa からだけでなく、ブドウ、カキ(日本の柿の木)、ビンロウ、リンゴ、大麦、ココア葉、ココアリキュール、ダークチョコレート、ネストリーフ(Nest-leaf)、ダイオウ、シナモン、アズキ豆、キイチゴ、等といった他の様々な植物から抽出して精製することが可能である。それらはまた、慣用の化学合成により入手可能である。
プロシアニジン及びプロアントシアニジンの化学合成に関しては、エピカテキン若しくはカテキンのダイマーを生成する方法が Journal of Chemical Society, Parkin Transaction I 1535-1543 頁、1983 に開示されている。開示されるような使用へのプロアントシアニジンを化学的に生成するには、本明細書に援用される、米国特許第6,165,912号(Tuckmantel et al; 2000年12月5日)と米国特許第6,207,842B1号(Romanczyk Jr et al;2001年3月27日)が参考になる。
さらに、Uncaria tomentosa に由来するプロシアニジン若しくはプロアントシアニジンが開示されるが、当業者には、この開示の方法を理解して、活性化合物を入手する合成ルートと代替的な抽出ルートが想定されよう。従って、合成のポリフェノール又はプロシアニジン又はプロアントシアニジン、又は、限定されないが、グリコシド、没食子酸塩、エステル、等を含むその誘導体が本発明の範囲内に含まれる。
開示されるのは、植物材料に由来する抗アミロイド化合物の単離、同定、及び使用に関する方法と、プロアントシアニジンがアミロイド及びαシニュクライン/NAC原線維形成の強力な阻害剤であり、多様なアミロイド及びαシニュクライン疾患に対して前形成原線維の強力な破壊/分解を引き起こすという驚くべき発見である。強力なアミロイド原線維阻害剤として役立つことが確認された例示化合物には、限定されないが、アルツハイマー病、II型糖尿病、及び全身性AAアミロイド症を含むアミロイド疾患の治療、並びにパーキンソン病及びリューイ小体疾患の治療のためにαシニュクライン若しくは非アミロイド成分(NAC)原線維形成を阻害するための、エピカテキン−エピカテキン、カテキン−エピカテキン、エピアフゼレキン−エピカテキンダイマー、エピカテキン−エピカテキン−エピカテキントリマー、並びに他のエピカテキン及び/又はカテキンオリゴマーのようなプロシアニジンが含まれる。
また開示されるのは、そのような化合物を調製して単離する方法、並びに、特にアミロイド及びαシニュクライン/NAC原線維破壊剤としての、その新たな使用である。本発明はまた、いくつかの異なるアミロイド疾患におけるアミロイド原線維の形成、沈着、蓄積、及び/又は存続を、エピカテキン及びカテキンのモノマー、ダイマー、トリマー、及びマルチマーを含む、A、B、及びC型のプロアントシアニジンを用いた患者の治療により阻害するか又は消失させる方法に向けられる。例示のプロシアニジン化合物は、エピカテキン−4β→8−エピカテキン、カテキン−4α→8−エピカテキン、又はエピアフゼレキン−4β→8−エピアフゼレキンのような、置換されたエピカテキン−エピカテキン若しくはカテキン−エピカテキンダイマー、又は他のオリゴマーである。
アルツハイマー病、II型糖尿病、パーキンソン病、全身性AAアミロイド症、及び、アミロイド原線維の形成及び蓄積を伴う他の疾患の治療介入のための、植物材料に由来するアミロイド阻害化合物の単離、同定、及び使用の方法、特に、Uncarina tomentosa と関連植物からのアミロイド阻害化合物を単離する方法と、これらの化合物の使用に関する方法が開示される。
薬理学と有用性
開示化合物は、アミロイド原線維形成を阻害するか又は予防する、アミロイド原線維成長を阻害するか又は予防する、及び/又は前形成アミロイド原線維及びアミロイドタンパク質沈着物の分解、破壊、及び/又は分離を引き起こすように作用する。その活性は、in vitro では、実施例4〜7において論じられるような方法により測定可能であるが、アミロイド症に対する in vivo でのその活性は、実施例11において論じられるような方法により、アルツハイマー病の動物モデルか、又はヒトにおいて測定することが可能である。
開示化合物はまた、αシニュクライン/NAC原線維形成を阻害するか又は予防する、αシニュクライン/NAC原線維成長を阻害するか又は予防する、及び/又は前形成αシニュクライン/NAC原線維及びαシニュクライン/NAC関連タンパク質沈着物の分解、破壊、及び/又は分離を引き起こすように作用する。その活性は、in vitro では、以下の実施例4〜7において論じられるものに類似した方法により測定可能である。
化合物の治療比は、例えば、有効な抗原線維活性(マウスのような好適な動物種における好適な in vivo モデルでの抗アミロイド若しくは抗αシニュクライン/NAC活性)を与える用量を、試験動物種における有意な体重損失(又は他の観察可能な副作用)を与える用量と比較することによって決定することが可能である。
医薬組成物と投与
一般に、化合物は、単独で、又は本発明の少なくとも1つの他の化合物、及び/又は治療される疾患に対する少なくとも1つの他の慣用的な治療剤と組み合わせて、当技術分野で知られた通常の形式のいずれかにより、治療有効量の純粋な単離形態で投与される。治療有効量は、疾患、その重症度、治療される動物の年齢及び相対的な健康、化合物(類)の効力、及び他の要因に依存して、広く変動する可能性がある。抗原線維剤として、本発明の化合物の治療有効量は、1〜1000mg/Kg体重;例えば10〜100mg/Kgの範囲に及ぶ場合がある。当技術分野の当業者は、慣用的に、不要な実験をすることなく、その技量と本開示を参考にして、アミロイド症又はαシニュクライン/NAC原線維形成の治療への化合物の治療有効量を決定することが可能であろう。
一般に、化合物は、医薬組成物として、以下の経路の1つにより投与される:経口、局所、全身(例、経皮、鼻腔内、又は坐剤による)、又は非経口(例、筋肉内、皮下、又は静脈内注射)。組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、半固形剤、散剤、徐放性製剤、溶液剤、懸濁液剤、エリキシル剤、エアゾール剤、又は他の適正な組成物の形態をとることが可能であり;そして、本発明の少なくとも1つの化合物を、少なくとも1つの製剤的に許容される賦形剤と組み合わせて含む。好適な賦形剤は当技術分野の当業者によく知られていて、それらと、組成物を製剤化する方法は、Alfonso AR:「レミントン製薬科学」17版、マックパブリッシングカンパニー、イーストン、ペンシルヴェニア州(1985年)のような標準の参考文献に見出すことが可能である。特に注射溶液剤に適した液状担体には、水、生理食塩水溶液、デキストロース水溶液、及びグリコールが含まれる。
特に、化合物(類)は、最適にはただ1つのそのような化合物がある特別の剤形において投与されるが、例えば、錠剤、トローチ剤、甘味入り錠剤、水性及び油性の懸濁液剤、分散性の散剤若しくは顆粒剤、乳剤、硬/軟カプセル剤、又はシロップ剤若しくはエリキシル剤として、経口投与することが可能である。経口使用に意図された組成物は、医薬組成物の製造について当技術分野で知られた方法に従って調製することが可能であり、そのような組成物は、製剤的に洗練されて口当たりのよい調製物を提供するために、甘味剤、芳香剤、着色剤、及び保存剤からなる群から選択される1つ以上の剤を含有してよい。
錠剤は、本化合物を、錠剤の製造に適している無毒の製剤的に許容される賦形剤と混合して含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム、又はリン酸ナトリウムのような不活性希釈剤;造粒剤及び崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン又はアルギン酸;結合剤、例えばトウモロコシデンプン、ゼラチン、又はアカシア、及び滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクであり得る。錠剤はコーティングしなくてもよいが、胃腸管における崩壊及び吸収を遅らせることによって、より長い時間にわたる持続作用をもたらすために、既知の技術によりコーティングしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセロール又はジステアリン酸グリセロールのような時間遅延素材を利用してよい。経口使用の製剤はまた、化合物が不活性な固形希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、又はカオリンと混合される硬ゼラチンカプセル剤として、又は有効成分が水又は油性媒体、例えば落花生油、流動パラフィン、又はオリーブ油と混合される軟ゼラチンカプセル剤として提示してよい。
水性懸濁液剤は、本化合物を、水性懸濁液剤の製造に適した賦形剤と混合して含有する。そのような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアゴムであり;分散剤又は湿潤剤は、天然に存在するホスファチド、例えばレシチン、又は酸化アルケンの脂肪酸との濃縮生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、又は酸化エチレンの長鎖脂肪族アルコールとの濃縮生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、又は、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールのような、ヘキシトールのような脂肪酸に由来する部分エステルと酸化エチレンの濃縮生成物、又は脂肪酸由来部分エステルとヘキシトール無水物との酸化エチレンの濃縮生成物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであり得る。水性懸濁液剤はまた、1つ以上の保存剤、例えばp−ヒドロキシ安息香酸エチル若しくはn−プロピル、1つ以上の着色剤、1つ以上の芳香剤、又は、スクロース若しくはサッカリンのような1つ以上の甘味剤を含有してよい。
油性懸濁液剤は、植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油、又はヤシ油に、又は流動パラフィンのような鉱油に化合物を懸濁させることによって製剤化することが可能である。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、ミツロウ、固型パラフィン、又はセチルアルコールを含有してよい。口当たりのよい経口調製物を提供するためには、以下に示されるような甘味剤と芳香剤を加えてよい。これらの製剤は、アスコルビン酸のような抗酸化剤の添加により保存することが可能である。水の添加による水性懸濁液剤の調製に適した分散性の散剤及び顆粒剤は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤、及び1つ以上の保存剤と混合して有効成分を提供する。好適な分散剤又は湿潤剤と懸濁剤は、すでに上記に記載されたものにより例示される。追加の賦形剤、例えば、甘味剤、芳香剤も存在してよい。
本化合物はまた、水中油型の乳剤の形態であり得る。油相は、植物油、例えばオリーブ油又は落花生油、又は鉱油、例えば流動パラフィン、又はこれらの混合物であってよい。好適な乳化剤は、天然に存在するゴム、例えばアカシアゴム又はトラガカントゴム、天然に存在するホスファチド、例えば大豆レシチン、そして天然に存在するホスファチド、例えば大豆レシチンと、脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来するエステル若しくは部分エステル、例えばモノオレイン酸ソルビタン、そして前記部分エステルの酸化エチレンとの濃縮生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり得る。乳剤はまた、甘味剤及び芳香剤を含有してよい。シロップ剤とエリキシル剤は、甘味剤、例えば、グリセロール、ソルビトール、又はスクロースとともに製剤化してよい。そのような製剤はまた、粘滑剤、保存剤、及び、芳香剤及び着色剤を含有してよい。
本化合物はまた、皮下、又は静脈内、又は筋肉内、又は胸骨内、又は鼻腔内のいずれかの注射若しくは注入により、又は無菌の注射若しくは油性懸濁液剤の形態の注入技術により投与することが可能である。本化合物は、無菌の注射可能な水性若しくは油性懸濁液剤の形態であり得る。これらの懸濁液剤は、上記に記載した湿潤剤及び懸濁剤の好適な分散を使用する既知の技術に従って製剤化することが可能である。無菌の注射調製物はまた、無毒の非経口的に許容される希釈剤若しくは溶媒中の注射溶液若しくは懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液であり得る。利用することが可能である許容される運搬体及び溶媒には、水、リンゲル溶液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、溶媒又は懸濁媒体として、無菌の脂肪油(fixed oils)が慣用的に利用される。この目的のためには、合成モノ若しくはジグリセリドを含む、任意のブランド脂肪油を慣用的に利用することが可能である。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は、注射剤の調製に使用を見出す。投与量処方は、最適な治療応答を提供するために調整することが可能である。例えば、いくつかの分割投与量を毎日投与してよいか、又は投与量は、治療状況の緊急性により指定されるように、比例的に低下させてもよい。
投与を容易にすることや投与量の均一性のためには、化合物を単位剤形において製剤化することが特に有利である。本明細書に使用されるような単位剤形は、治療される被検者への単位投与量に適した物理的に明確な単位を意味し;それぞれ、本化合物の治療有効量と少なくとも1つの製剤賦形剤を含有する。医薬製品は、ラベルが施されているか、又は、アルツハイマー病のようなアミロイド疾患、又はパーキンソン病のようなαシニュクライン/NAC原線維形成に関連した疾患の治療といった、意図される治療の方法を明記するラベルが付帯した容器内に単位剤形を含むものである。
以下の非限定的な実施例は、例示のためにのみ示すのであって、本発明を限定するものとはみなされない。本発明の精神又は範囲から逸脱せずに、その多くの明らかな変更が可能である。
実施例
実施例1:Uncaria tomentosa 及びPTI−777からのアミロイド阻害成分の単離
我々は、以前、米国特許出願第09/753,313号(2000年12月29日出願)、米国特許出願第09/938,987号(2001年8月24日出願)、米国特許出願60/271,777号(2001年2月27日出願)、及び米国特許出願60/338,721号(2001年11月2日出願)において、βアミロイドタンパク質(Aβ)若しくはαシニュクライン/NAC原線維形成を伴う神経学的障害と他のアミロイド障害の治療に関する、雨林の木ブドウ、Uncarina tomentosa の抽出物中のアミロイド阻害成分の発見に関して報告した。我々は、以前、Uncarina tomentosa の粉末化した樹皮のメタノール抽出物が、主にポリフェノールからなる化合物の混合物において比較的濃縮されている、強力なアミロイド阻害活性を含有するという発見を報告した。Uncarina tomentosa の主要成分であることが知られている純粋なオキシインドールアルカロイドのサンプルの試験はまた、これらの以前の試験において、オキシインドールアルカロイドがこのアミロイド阻害活性の原因ではないことを明示した。
これまでに、我々は、PTI−777として知られる Uncarina tomentosa のメタノール抽出物から2つのポリフェノール化合物を単離して同定し、これらがクロロゲン酸とエピカテキンであることを明示した。強力なアミロイド阻害活性を示すことが見出された Uncarina tomentosa のメタノール抽出物は、以前「PTI−777」と呼ばれた。以前報告した出願中の米国特許出願第60/271,777号(2001年2月27日出願)に記載されるように、PTI−777は、Uncarina tomentosa の粉末化した樹皮から単離した、F分画、G分画、H分画、I分画、J分画、K1分画、K2分画、L分画、M分画、N分画、及びO分画と呼ぶ約11の主要分画の群を表す。本発明において明示されるように、これらの分画のいくつかを、分画H(今日では、以下に記載されるようにH1及びH2と呼ぶ2つの主要成分を含有することが見出されている)についてなされたように、1又は2つの主要成分へさらに精製した。
PTI−777を出発点として使用して、出願中の米国特許出願第60/271,777号(2001年2月27日出願)に記載されるように、我々は、化合物H2、H1、K2、及びK1と呼ぶ、PTI−777内に含まれるさらなる主要成分の単離及び同定の方法の詳細を開示するが、これらはいずれもプロアントシアニジンの一般クラスに属し、いずれも強力なアミロイド及びαシニュクライン/NAC阻害活性を保有することが見出された。さらに、我々は、Uncarina tomentosa と他の植物からのそのような抗アミロイド/抗αシニュクライン/NAC化合物、及びプロアントシアニジンの単離の新たな方法を開示して教示する。
上記に引用した我々の出願において我々がより初期に報告した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の方法を変更し、より低いアセトニトリルの比率(以下に詳しく記載する)を使用することによって、我々は、主要ピークHが初期に報告したのと同じ相対保持時間から離れて出現するトレースを入手し、これはまた、かつては重複していると見られた(即ち、H分画として)、このピークのいくつかのさらなる分離(即ち、H1とH2)をもたらした。さらなる変更においては、我々のHPLCトレースの1つが1.5ml/分で実行されていることに注目し、我々は、2ml/分での溶出を行うと、1.5ml/分のトレースとほとんど同一のトレースが得られることを見出した。
エピカテキンは、カテキン、エピガロカテキン、及び様々な没食子酸カテキンと一緒に、緑茶中に存在することが知られている(我々の米国特許出願第09/753,313号(2000年12月29日出願);また、Baumann et al, J. Natural Prod. 64: 353-355, 2001 と Zeep et al, Anal. Chem. 72: 5020-5026, 2000 を参照のこと)。これらカテキンのいくつかの単離についての報告のいくつかにおいては、特にセファデックスLH20ゲルが他のゲルとともに、そしてまた溶媒分画と他のHPLC法が考察されている。さらに、メタノールのクロロホルム中の勾配液で溶出させるシリカゲルクロマトグラフィーも、カテキンに類似した極性の化合物、例えばフラバノイドやイリドイド(iridoid)グリコシドに対して使用されてきた(Kim et al, J. Nat. Prods. 64: 75-78, 2001; Sang et al, J. Nat. Prods. 64: 799-800, 2001; Calis et al, J. Nat. Prods. 64: 961-964, 2001)。
すでに我々は、抽出物PTI−777の精製の初期工程においてセファデックスLH20を使用していた。故に、さらなる研究は、逆相(RP)C18シリカ若しくはシリカゲルクロマトグラフィーの使用に集中した。多様な溶媒系を使用して、我々は、PTI−777のメタノール抽出物の、RP C18及びシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)挙動の使用を分析した。RP C18シリカは、すべての材料がこのTLCでは1つの主要スポットにあることを示したが、シリカでは、いくつかの分離したスポットが見られた。
故に、我々は、抽出物PTI−777の小サンプルのシリカゲルクロマトグラフィーによる分離を試みた。この抽出物が光と空気の両方に感受性があるように見えたので、制限された光において、迅速な溶媒勾配液でカラムを使用し、シリカ上での分解を最小化した。カラム分画のHPLC分析により、我々が良好な分離を遂行するための新たな方法を発見したことが示された。
特に、分画9(方法1及び2を参照のこと)はほとんど純粋なエピカテキンであり、分画11〜13は、根底にあるH1ピークとともに、大部分はピークH2を含んでいた。他のピークの興味深い濃縮を示す他の分画、特にK1は、分画10に濃縮され、一方、K2は分画14に濃縮された。有用な材料の全回収率は50%であったが、ピークのいくつかが分離されたことからすれば、これは、様々なピークが豊富な分画を与える多量の材料を分離するための良好なやり方であると思われた。
実施例2:PTI−777からのピークH2の単離とエピカテキン−エピカテキンダイマーとしての同定
一般実験法
すべての溶媒を使用前に蒸留し、20〜60℃までの温度での真空下の回転蒸発により除去した。オクタデシル官能化シリカゲル(C18)を逆相(RP)フラッシュクロマトグラフィーに使用し、Merck シリカゲル60(200〜400メッシュ、40〜63μm)をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーに使用した。TLCは、Merck DC−プラスチック箔珪質ゲル(plastikfolien Kieselgel)60 F254を使用して行い、はじめにUVランプで可視化してから、5%塩化鉄水溶液に浸した。旋光度は、パーキン−エルマー 241偏光計で測定した。質量、紫外線(UV)、及び赤外線(IR)スペクトルは、それぞれ、Kratos MS−80、島津 UV240、及びパーキン−エルマー 1600FTIRの機器で記録した。NMRスペクトルは、25°で、Varian INOVA−500若しくはVXR−300分光計で、1Hについては500若しくは300MHzで、そして13Cについては125若しくは75MHzで記録した。化学シフトは、CH3OH(3.30ppm)、CD3OD(49.3ppm)、CHCl3(7.25ppm)、CDCl3(77.0ppm);(CH3)2CO(2.15ppm)、及び(CD3)2CO(30.5ppm)の溶媒ピークを参照とするδスケールによりppmで示す。
ピークH1及びH2を単離するためのHPLC条件
分析用HPLC機器は、Waters 717自動サンプラー、600ポンプ及びコントローラー、さらにOmegaソフトウェアにより制御される2478UV検出器から構成された。ガードカラム(C18 ODS 4x3mm,5μmカラムを含有する、Phenomenex SecurityGuard カートリッジ)付きRP−18半調製用カラム(Phenomenex Jupitar 5μm C18 300A,250x10mm)を30℃で使用することによって、サンプルを分析した。サンプル(5μl)は、流速5.0mL/分の移動相を使用して、280nmでのUV検出で分析した。
溶媒A−0.1% TFAを含有するCH3CN
溶媒B−0.1% TFAを含有するH2O
PTI−777のシリカゲル分画化の例
抽出物PTI−777(1g)のサンプルをメタノール(2ml)に溶かしてから、クロロホルムで調製したシリカゲル(10g)カラムにロードした。クロロホルム中の増加割合のメタノールでこのカラムを溶出し、45の分画を得た。
PTI−777の、H2と呼ぶ、ピークHの主要成分を、HPLCによりモニターする一連のクロマトグラフィー技術により単離した(図2〜5)。我々は、はじめ、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによりPTI−777抽出物を分離し(表1)(トレーシングは方法1を使用するHPLCによりモニターした)、それにより、クロロホルム中20%メタノールでの溶出により、ピークHの2成分が豊富な分画(134mg)を得た(HPLCトレーシングは、図3に示す方法2を使用する)。ピークHの2つの主要成分を調製スケールで分離するためのHPLC法(即ち,HPLC方法2)を開発し、ほとんど純粋なH1(16mg)(HPLC方法1、図4)と純粋なH2(23mg)(HPLC方法1、図5)を得た。
H2の-veイオンエレクトロスプレー質量スペクトルは、明瞭な100%イオンを577ダルトンに示した。これは、2つのエピカテキン、又は異性体単位のダイマーのような、C30H26O12の分子式の分子イオン(M+−H)に適正である。エピカテキンは以前PTI−777抽出物から単離されたことがあり、本出願の元事例に記載されている。
ピークH2の1H NMRスペクトル(図6)がシグナルの異常な広がりを示したのに対し、13C NMR(図7)は、ある種のフラボノールダイマーに一致した、鋭くて広いシグナルを示した。我々は、特徴的なH−6/H−8及びC−6/C−8シグナルが現れるはずの、1H スペクトルの5.8〜6.3ppm領域や13C NMRスペクトルの90〜99ppm領域にシグナルを見ないことに驚いた。重水素メタノールの代わりに重水素アセトンにおいてNMRスペクトルを行うと(図8,9)、予測されるシグナルが存在することが示され、重水素プロトン性溶媒においては、これらH6及びH8プロトンの重陽子への交換が起こることを示した。
シグナルが広がるのは、しばしば、分子内における制限された回転のためである。この回転は、より高い温度でスペクトルを操作することによって速めることが可能であり、それにより、より鋭いシグナルが得られる。故に、我々は、はじめに40℃で、次いで50℃で1H及び13C NMRスペクトルを操作した。残念ながら、このシグナルを鋭くさせることの明確な徴候はなかったが、H2の再配置か又は分解のいずれかを示す、新たなピークも現れた。
ピークH2データの要約
上記シリカゲルカラムからの分画20〜24(1ml中134mg)(表1)のアリコート(14x70μl)を、方法2を使用するHPLCにより分離した。14.5分と16.2分の間のピークと、16.2分と19.0分の間のピークを採取してから、凍結乾燥させて2つの生成物、約80%純粋なH1、保持時間15.1分(HPLC方法2)(16mg)を白色の固形物として;そして、純粋なH2(23mg)、保持時間16.9分(HPLC方法2)を白色の固形物として得た。
−veエレクトロスプレー質量分析法:577(M+−H,100%)。
H2の分子量=578。
H2のアセチル化
化合物H2は、その構造をNMR分光法により最終的に証明するのに必要な条件の下では不安定であったので、我々は、安定な誘導体をつくらなければならなかった。純粋なH2のサンプルのアセチル化により過酢酸塩(図10)を得て、これをシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製した。NMRとTLCによれば同一である、この過酢酸塩のより大きいサンプルはまた、H1及びH2が豊富な分画のアセチル化からの2つの主要生成物のシリカゲル分離によっても得た。
上記の試験では、H2のサンプル(7mg)を、無水酢酸(0.5ml)及びピリジン(0.5ml)の混合物に溶かした。この混合物を室温に18時間放置してから、溶媒を真空において除去した。ジクロロメタン中20%酢酸エチルで溶出させるシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによる精製により、H2過酢酸塩(6mg)を無色のゴムとして得た。NMRデータを表2にまとめる。
H2過酢酸塩の1及び2D NMR実験(図11,12を参照)(表2)は、それがデカ酢酸塩であることを示した。1H及び13C NMRスペクトルの両方において、2組のシグナルが3:1の比で見られた。これらは回転異性体(アトロプ異性体;atropisomers)によるものであり、NMR実験の時間枠において相互変換する、核オーバーハウザ増強分光法(NOESY)スペクトルにおける逆相交差ピークにより示された。これらのアトロプ異性体をクロマトグラフィーにより分離させることは可能でなかっただろう。結晶化により分離することができたとしても、生物学的アッセイのために溶液へ入れればすぐに混合物へ戻ってしまう。我々は、主要なアトロプ異性体のシグナルを使用してこの構造を解釈した。
60〜80領域中のC−2及びC−3位に対する4つの13Cシグナル、並びに下方単位のフリーC−4位に対する26.65のシグナル、さらに上方単位の連結C−4に対する33.99のシグナルから、2つのフラバン−3−オール単位の存在を認めることができた。CIGAR 1H−13C相関性実験(図13,14)は、H−4(u)からC−8(l)及びC−8a(l)への相関関係により、2つの単位が4(u)位から8(l)位へ連結していることを示した。上方及び下方単位の両方のC−2及びC−3での立体化学は、下方単位に対する1H及び13Cシグナルの類似した化学シフト、並びに両単位中のH−2及びH3の間の類似した低いカップリング定数により、エピカテキン中と同じであることが示された。この連結の立体化学は、NOESY相互作用(図15〜17)から、特にH−2(u)とH−4(u)の間に相互作用がないこと、そしてH−2(u)とH−6’(l)の間とH−3(u)とH−6’(l)の間に相互作用が存在していることから、4β→8であると示された。故に、天然産物H2の構造を、エピカテキン−4β→8−エピカテキンであるとした(図18)。
エピカテキン−4β→8−エピカテキンはまた、プロシアニジンB2又はプロアントシアニジンB2として知られている。我々のH2のNMRデータは、プロシアニジンB2について公表された部分NMRデータ(Kashiwada et al, Chem. Pharm. Bull. 38: 888-893, 1990; Porter et al, J. Chem. Soc. Perkin 1: 1217-1221, 1982)に適合し、我々のH2過酢酸塩のNMRデータ(図10;表2)は、過酢酸化プロシアニジンB2についての公表データ(Franck et al, ACH Models in Chemistry 136: 511-517, 1999)と正確に適合した。+25°の文献5値に比較した、+29.0°の旋光度は、この絶対立体化学が以前に見出したものと同じであることを示した。
実施例3:PTI−777からのピークH1の単離及び同定
一般実験法
PTI−777抽出物の、H1と呼ぶ、ピークHの微量成分も、HPLCによりモニターする一連のクロマトグラフィー技術により単離した(詳細については、実施例1の実験法を参照のこと)。我々は、はじめ、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより元のPTI−777抽出物を分離し(図2のHPLCトレーシングを参照のこと)、ここで、クロロホルム中20%メタノールでの溶出により、ピークHの2成分が豊富な分画(134mg)を得た。ピークHの2つの主要成分を調製スケールで分離するためのHPLC法(図3のHPLCトレーシングを参照のこと)を開発し、ほとんど純粋なH1(16mg)(図4のHPLCトレーシングを参照のこと)と純粋なH2(23mg)を得た。
H1の-veイオンエレクトロスプレー質量スペクトルは、明瞭な100%イオンを577ダルトンに示した。これは、2つのエピカテキン、又は異性体単位のダイマーのような、C30H26O12(分子量578)分子式の分子イオン(M+−H)に適正である。我々は、以前、PTI−777抽出物からエピカテキンを単離して同定した。
ピークH1の1H NMRスペクトル(図19)及び13C NMRスペクトル(図20)は、ある種のフラボノールダイマーに一致した、主要と微量のアトロプ異性体が存在する、2組のシグナルを示した。
H1のサンプルのアセチル化により過酢酸塩(図21)を得て、これをシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製した。NMRとTLCによれば同一である、この過酢酸塩のより大きいサンプルはまた、H1及びH2が豊富な分画のアセチル化からの2つの主要生成物のシリカゲル分離によっても得た。
H1過酢酸塩の1及び2D NMR実験(図22,23)(表3)は、それがデカ酢酸塩であることを示した。優勢なアトロプ異性体のシグナルを使用してこの構造を解釈した。60〜80領域中の4つの13Cシグナル(図23)、並びに下方単位のフリーC−4位に対する26.65のシグナル、さらに上方単位の共役C−4に対する36.72のシグナル(図23)から、2つのフラバン−3−オール単位の存在を認めることができた。13Cシグナルの位置と下方単位の1Hシグナルの小さなカップリングはエピカテキン単位に典型的であったが、13Cシグナルの位置と下方単位の1Hシグナルのずっと大きなカップリングは共役カテキンに典型的であった(Fletcher et al, JCS Perkin 1: 1628-1637, 1977)。
CIGAR 1H−13C相関性実験(図24,25)は、H−4(u)からC−8(l)及びC−8a(l)への相関関係により、2つの単位が4(u)位から8(l)位へ連結していることを示した。
故に、天然産物H1の構造を、プロシアニジンB4又はプロアントシアニジンB4として知られている、カテキン−4α→8−エピカテキンであると決定した(図26)。化合物H1に関する我々のNMRデータは、プロシアニジンB4について公表された部分NMRデータ(Thompson et al, JCS Perkin 1: 1387-1399, 1972; Fletcher et al, JCS Perkin 1: 1628-1637, 1977)に適合し、アセチル化化合物H1の我々のデータ(図21;表3)は、過酢酸化プロシアニジンB4について公表された部分NMRデータ(Thompson et al, JCS Perkin 1: 1387-1399, 1972; Fletcher et al, JCS Perkin 1: 1628-1637, 1977)に適合した。−193°(EtOH)の文献値(Thompson et al, JCS Perkin 1: 1387-1399, 1972)に比較した、化合物H1についての−102°(MeOH)の旋光度は、この絶対立体化学が以前に見出したものと同じであることを示した。
ピークH1データの要約
上記シリカゲルカラムからの分画20〜24(1ml中134mg)(図3)のアリコート(14x70μl)を、(実施例1に記載されるように)方法2を使用するHPLCにより分離した。14.5分と16.2分の間のピークと、16.2分と19.0分の間のピークを採取してから、凍結乾燥させて2つの生成物、約80%純粋なH1、保持時間15.1分(方法2)(16mg)(図4)を白色の固形物として;そして、純粋なH2(23mg)を白色の固形物として得た。
−veエレクトロスプレー質量分析法:577(M+−H,100%)。
分子量=578。
H1アセチル化のプロトコール
PTI−777(50mg)の第二のシリカゲルカラムからの、H1及びH2ピークが豊富な分画のサンプルを、無水酢酸(0.5ml)及びピリジン(0.5ml)の混合物に溶かした。この混合物を室温に18時間放置してから、溶媒を真空において除去した。ジクロロメタン中20%酢酸エチルで溶出させるシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによる精製により、H2過酢酸塩(38mg)に次いで、H1過酢酸塩(5)(15mg)を無色のゴムとして得た。NMRデータを以下の表3に示す。
実施例4:PTI−777からのピークK2の単離及び同定
一般実験法
PTI−777抽出物の、K2と呼ぶ、ピークKの主要成分を、HPLCによりモニターする一連のクロマトグラフィー技術により単離した(詳細については、実施例2の実験法を参照のこと)。我々は、はじめ、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより元のPTI−777抽出物を分離し、このとき、クロロホルム中40%メタノールにより、ピークKの主要成分が豊富な分画を得た(表1)。方法1(実施例1を参照のこと)を使用する、K2が豊富な分画についての調製用HPLC(図27)により、純粋なピークK2のサンプルを得た(図28)。この-veイオンエレクトロスプレー質量分析法は、それが866の分子イオンM+を有することを示した(図29)。これは、3つのエピカテキン若しくはカテキン単位のトリマーのような、C45H38O18(分子量=866)の分子式に適正である。この最初の1H NMR(図30)が、H2において見られるものに類似した幅広いピークがあることを示したので、K2の構造を明確に同定するためにこの化合物をアセチル化することを決定した。
ピーク2が豊富にある、シリカゲルカラムからのさらなる分画をこれまでと同じように(実施例1及び2にあるように)アセチル化し、構造解明のためにさらなる材料を入手することを可能にした。K2の過酢酸塩をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製した。
K2過酢酸塩に対して1(図31,32)及び2D NMR実験(図33,34)を行った。1H及び13C NMRスペクトルの両方において、2組のシグナルが3:1の比で見られた。これらは、実施例2において考察したように、回転異性体(アトルプ異性体)によるものであった。我々は、主要な異性体のシグナルを使用してこの構造を解釈した(以下の表4を参照)。
13Cシグナルの位置と下方単位の1Hシグナルの小さなカップリングはエピカテキンに典型的であり、13Cシグナルの位置と他の2単位の1Hシグナルの小さなカップリングは共役エピカテキンに典型的であった(Fletcher et al, J.C. S. Perkin 1: 1628-1637, 1977)。60〜80領域中の6つの13Cシグナル、並びに下方単位のフリーC−4位に対する26.39のシグナル、さらに他の単位の共役C−4’に対する34.36及び35.04のシグナルから、3つのフラバン−3−オール単位の存在を認めることができた。
CIGAR 1H−13C相関性実験(図33,34)は、H−4(u)からC−8(m)及びC−8a(m)へ、そしてH−4(m)からC−8(l)及びC−8a(l)への相関関係により、2つの単位が4(上方)位から8(下方)位へ連結していることを示した。
故に、K2過酢酸塩を、図35に示す構造であると決定した。図35に示す、K2過酢酸塩に関する我々のNMRデータは、プロシアニジンC1について公表された部分NMRデータ(Porter et al, J. C. S. Perkin 1: 1217-1221, 1982; Hemingway et al, J. C. S. Perkin 1: 1209-1216, 1982)に適合したが、我々は、K2の構造に関して公表された13C NMRデータを見つけることができなかった(図36)。構造K2についての+60.9°(MeOH)旋光度は、+92°(H2O)の文献値に比較して、それが公表されたものと同じ絶対立体化学を有することを示した。それ故、K2を、エピカテキン−4β→8−エピカテキン−4β→8−エピカテキン、又はプロシアニジンC1と同定した(図36)。
ピークK2データの要約
上記シリカゲルカラムからの分画35〜40(1.0ml中226mg)のアリコート(8x70μl)を、(実施例2に記載されるように)方法1を使用するHPLCにより分離した。12.90分と15.70分の間のピークを採取した。P88−21−2、保持時間15.1分(5mg)(図27,28)がK2のピークである。
K2アセチル化のプロトコール
K2のサンプル(5mg)を、無水酢酸(0.5ml)及びピリジン(0.5ml)の混合物に溶かした。この混合物を室温に18時間放置してから、溶媒を真空において除去した。ジクロロメタン中20%酢酸エチルで溶出させるシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによる精製により、K2過酢酸塩(2mg)を無色のゴムとして得た。
K2(34mg)が豊富な分画(図28)を、無水酢酸(0.5ml)及びピリジン(0.5ml)の混合物に溶かした。この混合物を室温に18時間放置してから、溶媒を真空において除去した。ジクロロメタン中20%酢酸エチルで溶出させるシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによる精製により、K2過酢酸塩(15mg)を無色のゴムとして得た。NMRデータを以下の表4に示す。
実施例5:プロアントシアニジンH2、H1、及びK2のAβ原線維破壊剤としての効力
次の試験のセットにおいて、我々は、実施例1〜3に記載のように単離した、純粋化合物H2(エピカテキン−4β→8−エピカテキン)、H1(カテキン−4α→8−エピカテキン)、及びK2(エピカテキン−4β→8−エピカテキン−4β→8−エピカテキン)について、様々なアミロイド及びαシニュクライン/NAC疾患における効力を試験したことを明示する。最初の試験のセットでは、これらプロアントシアニジンの純粋化合物について、アルツハイマー病の前形成アミロイド原線維(即ち、Aβ1〜42原線維からなる)の強力な分解/破壊を引き起こすその能力を試験した。
1つの試験においては、チオフラビンTフルオロメトリーを使用して、前形成Aβ1−42原線維の分解/溶解に対するH2、H1、K2、及びEDTA(陰性対照として)の効果を決定した。このアッセイにおいて、チオフラビンTは、原線維アミロイドへ特異的に結合し、この結合が、形成されるアミロイド原線維の量に正比例した、485nmでの蛍光増強をもたらす。蛍光がより強いほど、形成されたアミロイド原線維の量がより多い(Naki et al, Lab. Invest. 65: 104-110, 1991; Levine III, Protein Sc. 2: 404-410, 1993; Amyloid Int. J. Exp. Clin. Invest. 2: 1-6, 1995)。
この試験において、25μMの前原線維化Aβ1−42(バケム社)を、単独でか又はEDTA、H2、H1、又はK2の存在下で、Aβ:試験化合物の重量比を1:0.1、1:0.01、1:0.001、又は1:0.0001として、37℃で1週間インキュベートした。同時インキュベーションから3日又は7日後に、各インキュベーション混合物の50μlを、150μlの蒸留水と50μlのチオフラビンT溶液(即ち、250mMリン酸緩衝液中500mMチオフラビンT)(pH6.8)を含有する96穴マイクロタイタープレートへ移した。ELISAプレート蛍光計を使用して、緩衝液単独又は化合物単独をブランクとして差し引いてから、485nm(444nm励起波長)で蛍光を読み取った。
7日間インキュベーションの結果をここに示すが、3日間の早さでも同様の結果を得た。図37に示すように、EDTAがすべての試験濃度でAβ1−42原線維の有意な阻害を引き起こさなかったのに対し、化合物H2は、前形成Aβ1−42原線維の用量依存的な破壊/分解を引き起こし、1:0.01のAβ:H2重量/重量比で使用したときは有意な(p<0.01)29+/−4%の破壊、そして1:0.1のAβ:H2重量/重量比(即ち、1:1のモル比)で使用したときは有意な(p<0.01)73+/−2%の破壊であった。同様に、化合物H1は、前形成Aβ1−42原線維の用量依存的な破壊/分解を引き起こし、1:0.001のAβ:H1重量/重量比で使用したときは有意な16+/−3%の破壊、1:0.01のAβ:H1重量/重量比で使用したときは有意な33+/−6%の破壊、そして1:0.1のAβ:H1重量/重量比(即ち、1:1のモル比)で使用したときは有意な54+/−8%の破壊であった。化合物K2も、前形成Aβ1−42原線維の用量依存的な破壊/分解を引き起こし、1:0.01のAβ:K2重量/重量比で使用したときは有意な27+/−4%の破壊、そして1:0.1のAβ:K2重量/重量比(即ち、1:1のモル比)で使用したときは有意な60+/−19%の破壊であった。この試験は、プロアントシアニジンのH2、H1、及びK2が、アルツハイマー病のタイプAβ原線維の強力な破壊剤であり、その効果を用量依存的なやり方で発揮することを示した。
Aβ1−42が、そのモノマー形態でも破壊されることを、SDS−PAGE及びウェスタンブロッティングの方法の使用を伴う試験によって確かめた。この後者の試験においては、前原線維化Aβ1−42(25μM)の同一3検体サンプルを、単独でか又はH2、H1、K2、又はEDTA(陰性対照として)の存在下で、37℃で3日及び7日間インキュベートした。次いで、各サンプルの5μgを0.2μmフィルターに通して濾過した。次いで、濾液から回収したタンパク質をロードして、10〜20%トリス−トリシンSDS−PAGEに泳動し、ニトロセルロースへブロットし、Aβ抗体(クローン6E10;Senetek)を使用するECLにより検出した。図38に示すように、Aβ1−42は、単独か又はEDTAの存在下での3日及び7日のインキュベーションの後で、約4キロダルトンのバンド(即ち、モノマーAβ)として検出された。Aβ1−42モノマーは、Aβ1−42のH2、H1、又はK2のいずれかとの7日間の同時インキュベーションでのインキュベーションの後では検出されず(図38)、これらの化合物がモノマーAβ1−42の消失を引き起こすことが可能であることを示唆した。Aβ1−42の消失は、H2とH1では3日間のインキュベーション後でもすでに明らかであったが、K2では完全な効果を及ぼすのにより長く(即ち、7日間)かかった。この試験により、プロアントシアニジンのH2、H1、及びK2が、モノマーAβ1−42の破壊/除去を引き起こすことも可能であることが確かめられた。
実施例6:円二色性分光法により明らかにされる、前形成Aβ1−42及び1−40原線維のプロアントシアニジン化合物H2による破壊
円二色性(CD)分光法は、前形成アミロイド原線維を破壊する試験化合物の効果を決定するために使用する方法である。1つの試験では、ここに示すように、円二色性分光法を使用して、アルツハイマー病と関連障害を有する患者の脳中に見出されるタイプの前形成Aβ1−42及び1−40原線維のβプリーツシート構造の破壊に対する純粋化合物H2(即ち、エピカテキン−4β→8−エピカテキン)の効果を決定した。この試験では、Aβ1−42若しくはAβ1−40ペプチド(バケム社、トーランス、カリフォルニア州)をはじめに2mM NaOH溶液に溶かし、この溶液のpHを10より高く維持した。次いで、このペプチドを10% TFE含有PBSに溶かし、このpHを7.2へ調整した。Aβ1−40若しくはAβ1−42を、化合物H2の非存在下又は存在下において、1:0.1のAβ:H2重量/重量比(即ち、1:1のモル比)でインキュベートした。インキュベーションから3及び7日後、50μMのAβ及びH2化合物の混合物を用いて、AVIV 202分光偏光計でCDスペクトルを記録した。調温キュベットホルダーを使用する0.1cm石英セルを用いてすべてのスペクトルを採取した。0.5nmの増分、1nmの帯域幅で260〜195nmから波長トレースを走査し、5秒の時間にわたり平均化した;温度は25℃で一定に保った。報告されるすべてのスペクトルは4回のスキャンの平均である。
図39に示すように、10% TFE PBS緩衝液中単独のAβ1−42は、218nmで観察される鋭い極小部分により明示されるように、顕著なβシート構造のあるアミロイドタンパク質に典型的なCDスペクトルを示した。しかしながら、H2化合物(図39ではPTC38として表される)の(1:1モル比での)存在下では、218nmで観察される極小部分の(Aβ1−42単独と比較した)平坦化により示されるように(図39)、Aβ1−42原線維におけるβシート構造の明瞭な破壊(ランダムコイルやαヘリックスの有意な増加を伴う)が明らかであった。このことは、Aβ1−42原線維のH2との同時インキュベーションから3日後(示さず)と7日後(図39)の両方で観察された。この試験は、H2化合物が、Aβ1−42原線維に特徴的なβプリーツシート構造を破壊/分解する能力を有することを明瞭に明示した。
図40に示すように、10% TFE PBS緩衝液中単独のAβ1−40も、218nmで観察される鋭い極小部分により明示されるように、顕著なβシート構造のあるアミロイドタンパク質に典型的なCDスペクトルを示した。しかしながら、H2化合物(図40ではPTC38として表される)の(1:1モル比での)存在下では、218nmで観察される極小部分の(Aβ1−40単独と比較した)完全な平坦化により示されるように(図40)、Aβ1−40原線維におけるβシート構造のほぼ完全な破壊/分解(ランダムコイルやαヘリックスの有意な増加を伴う)が明らかであった。このことは、Aβ1−40原線維のH2との同時インキュベーションから3日後(示さず)と7日後(図40)の両方で観察された。この試験は、H2化合物が、Aβ1−40原線維に特徴的なβプリーツシート構造を破壊/分解する能力を有することを明瞭に明示した。Aβ1−42とAβ1−40はいずれもアルツハイマー病と関連障害を有する患者の脳にあるアミロイド沈着物中に存在することが知られている。本試験により、プロアントシアニジン(この特別の事例においては、エピカテキン−エピカテキンダイマー)のアミロイド原線維の強力な阻害/破壊剤としての効力が確認され、化合物H2と他のプロアントシアニジンが強力な抗アミロイド剤であるという、チオフラビンTフルオロメトリー及びSDS−PSGE/ECLタイプのアッセイを使用した以前の実施例が確認される。
実施例7:プロアントシアニジンH2、H1、及びK2のαシニュクライン/NAC原線維破壊剤としての効力
パーキンソン病は、その主要成分がαシニュクライン(Spillantini et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 6469-6473, 1998; Arai et al, Neurosc. Lett. 259: 83-86, 1999)と140アミノ酸タンパク質(Ueda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 90: 11282-11286, 1993)からなるフィラメントである、細胞質間リューイ小体の存在により病理学的に特徴づけられる神経変性障害である(リューイ、「神経学要覧」中、M. Lewandowski 編、スプリンガー、ベルリン、920-933 頁、1912年;Pollanen et al, J. Neuropath. Exp. Neurol. 52: 183-191, 1993)。αシニュクライン組換えタンパク質と、αシニュクラインの35アミノ酸ペプチド断片である非アミロイド成分(NACとして知られる)は、37℃でインキュベートしたときにいずれも原線維を形成する能力を有し、コンゴレッド(偏光下で見たときに、赤/緑の複屈折を明示する)とチオフラビンS(陽性の蛍光を明示する)のようなアミロイド染料で陽性である(Hashimoto et al., Brain Res. 799: 301-306, 1998; Ueda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 90: 11282-11286, 1993)。前形成αシニュクライン及び/又はNAC原線維の阻害、破壊/分解は、パーキンソン病及びリューイ小体疾患の治療のための将来の治療薬として役立つと考えられている。
故に、次の試験において、我々は、プロアントシアニジン、特にH2、H1、及びK2の前形成NAC原線維破壊剤としての効力を決定した。チオフラビンTフルオロメトリーを使用して、前形成NAC原線維の分解/溶解に対するH2、H1、K2、及びEDTA(陰性対照として)の効果を決定した(図41)。この試験においては、25μMの前原線維化NAC(バケム社)を、単独で、又はEDTA、H2、H1、又はK2の存在下で、NAC:試験化合物の重量比を1:0.1、1:0.01、1:0.001、又は1:0.0001として、37℃で1週間インキュベートした。同時インキュベーションから3日又は7日後に、各インキュベーション混合物の50μlを、150μlの蒸留水と50μlのチオフラビンT溶液(即ち、250mMリン酸緩衝液中500mMチオフラビンT)(pH6.8)を含有する96穴マイクロタイタープレートへ移した。ELISAプレート蛍光計を使用して、緩衝液単独をブランクとして差し引いてから、485nm(444nm励起波長)で蛍光を読み取った。
7日間インキュベーションの結果をここに示す(図41)が、3日間の早さでも同様の結果を得た。図41に示すように、EDTAがすべての試験濃度でNAC原線維の有意な阻害を引き起こさなかったのに対し、化合物H2は、前形成NAC原線維の用量依存的な破壊/分解を引き起こし、1:0.01のNAC:H2重量/重量比で使用したときは有意な(p<0.01)27+/−27%の破壊;そして1:0.1のNAC:H2重量/重量比(即ち、1:1のモル比)で使用したときは有意な(p<0.01)77+/−2%の破壊であった。同様に、化合物H1は、前形成NAC原線維の用量依存的な破壊/分解を引き起こし、1:0.01のNAC:H1重量/重量比で使用したときは有意な31+/−16%の破壊;そして1:0.1のNAC:H1重量/重量比(即ち、1:1のモル比)で使用したときは有意な64+/−3%の破壊であった。化合物K2も、前形成NAC原線維の用量依存的な破壊/分解を引き起こし、1:0.01のNAC:K2重量/重量比で使用したときは有意な20+/−27%の破壊、そして1:0.1のNAC:K2重量/重量比(即ち、1:1のモル比)で使用したときは有意な39+/−12%の破壊であった。この試験は、プロアントシアニジンのH2、H1、及びK2が、NAC原線維の強力な破壊剤でもあり、その効果を用量依存的なやり方で発揮することを示した。これらのプロアントシアニジンの類似の効力は、αシニュクライン原線維の破壊/分解についても観察されると予測される。
実施例8:プロアントシアニジンH2、H1、及びK2の2型糖尿病アミロイド原線維破壊剤としての効力
島アミロイド沈着物は、十分確定した2型糖尿病の患者の約90%に観察され、この疾患プロセスに特徴的な特性であると見られる(Westermark, J. Med. Sci. 77: 91-94, 1972; Clark et al, Diabetes Res. 9: 151-159, 1988)。多くの患者において、この沈着物が広がっていて、多くの島に影響を及ぼす。アミロイドに置き換えられた島(主にβ細胞)塊の程度は、糖尿病プロセスの重症度の指標になる場合があり、インスリン治療を必要とする個体は、最大の島塊低下とアミロイド形成を有する(Westermark, Amyloyd: Int. J. Exp. Clin. Invest. 1: 47-60, 1994)。
2型糖尿病島アミロイドの主要タンパク質は、島アミロイドポリペプチド(IAPP)又はアミリンとして知られる37アミノ酸ペプチドである。IAPPは、インスリンを担う細胞質顆粒に保存される、膵臓β細胞の既知の正常分泌産物(Kahn et al, Diabetes 39: 634-638, 1990)である(Clark et al, Cell Tissue Res. 257: 179-185, 1989)。IAPPは、2型糖尿病の病理発生において、そのβ細胞機能の減損とβ細胞塊の低下を介して重要な役割を担うと仮定されてきた(Johnson et al, N. Engl. J. Med. 321: 513-518, 1989)。β細胞塊に置き換わる島アミロイド沈着物を形成することができること以外に、アミロイド原線維は島を直に傷害するらしい。種々の試験は、全体として、島アミロイド形成が2型糖尿病のβ細胞不全の進展において中心的な役割を担うことを示唆する。故に、島アミロイド(即ち、IAPP)の形成、沈着、蓄積、又は存続を阻害するか又は破壊する、及び/又は前形成IAPP原線維の破壊/溶解又は分解を引き起こすことが可能な薬剤若しくは化合物は、2型糖尿病の新たな治療化合物の発見につながると考えられている。
故に、次の試験において、我々は、プロアントシアニジン、H2、H1、及びK2の前形成IAPP原線維の破壊剤としての効力/その分解を引き起こす効力を決定した。チオフラビンTフルオロメトリーを使用して、前形成IAPP原線維の分解/溶解に対するH2、H1、K2、及びEDTA(陰性対照として)の効果を決定した(図42)。この試験においては、25μMの前原線維化IAPP(バケム社)を、単独でか又はEDTA、H2、H1、又はK2の存在下で、IAPP:試験化合物の重量比を1:0.1、1:0.01、1:0.001、又は1:0.0001として、37℃で1週間インキュベートした。同時インキュベーションから3日又は7日後に、各インキュベーション混合物の50μlを、150μlの蒸留水と50μlのチオフラビンT溶液(即ち、250mMリン酸緩衝液中500mMチオフラビンT)(pH6.8)を含有する96穴マイクロタイタープレートへ移した。ELISAプレート蛍光計を使用して、緩衝液単独をブランクとして差し引いてから、485nm(444nm励起波長)で蛍光を読み取った。7日間インキュベーションの結果をここに示す(図42)が、3日間の早さでも同様の結果を得た。図42に示すように、EDTAがすべての試験濃度でIAPP原線維の有意な阻害を引き起こさなかったのに対し、化合物H2は、前形成IAPP原線維の用量依存的な破壊/分解を引き起こし、1:0.01のIAPP:H2重量/重量比で使用したときは有意な(p<0.01)36+/−5%の破壊;そして1:0.1のIAPP:H2重量/重量比(即ち、1:1のモル比)で使用したときは有意な(p<0.01)83+/−1%の破壊であった。同様に、化合物H1は、前形成IAPP1原線維の用量依存的な破壊/分解を引き起こし、1:0.01のIAPP:H1重量/重量比で使用したときは有意な35+/−4%の破壊;そして1:0.1のIAPP:H1重量/重量比(即ち、1:1のモル比)で使用したときは有意な79+/−1%の破壊であった。化合物K2も、前形成IAPP原線維の用量依存的な破壊/分解を引き起こし、1:0.01のIAPP:K2重量/重量比で使用したときは有意な26+/−4%の破壊;そして1:0.1のIAPP:K2重量/重量比(即ち、1:1のモル比)で使用したときは有意な62+/−1%の破壊であった。この試験は、プロアントシアニジンのH2、H1、及びK2が、IAPP原線維の強力な破壊剤でもあり、その効果を用量依存的なやり方で発揮することを示した。この試験はまた、プロアントシアニジンが2型糖尿病におけるIAPPアミロイド症の治療に有用であると予測されることを示す。
実施例9:PTI−777からのピークK1の単離及び同定
一般実験法
PTI−777抽出物(1g)のサンプルをエタノール(2ml)に溶かしてから、エタノールで調製したセファデックスLH20(10g)カラム上にロードした。エタノール(1000ml)に次いで、エタノール(400ml)中5%アセトン、エタノール(200ml)中190%アセトン、次いでメタノール(200ml)中50%アセトンでこのカラムを溶出し、120(12ml分画)を得た。
K1とK1酢酸塩(以下に記載)をモニタリングするための分析用HPLC条件は、方法1を使用した、実施例2と同じ条件下である。
ピークK1の単離
分画38〜42(上記の表5を参照のこと)は、化合物K1(22mg)を薄褐色のゴムとして含有した。このK1ピークの保持時間は、HPLC方法1によりモニターすると15.0分であった。
K1をアセチル化して構造決定を支援するために、K1のサンプル(15mg)を、無水酢酸(0.5ml)及びピリジン(0.5ml)の混合物に溶かした。この混合物を室温に18時間放置してから、溶媒を真空において除去し、このK1過酢酸塩(16mg)を無色のゴムとして得た。NMRデータを以下の表6に示す。
K1及びK1過酢酸塩の同定
PTI−777抽出物の、K1と呼ぶ、ピークKの微量成分を、HPLCによりモニターするセファデックスLH20のカラムクロマトグラフィーにより単離した。95%エタノールに続く、増加量のアセトン及び水、後続するメタノールを用いた溶出により、分画38〜42において純粋なピークK1を得た(表5を参照のこと)。K1過酢酸塩の構造を図43に示し、一方、K1の構造を図44に示す。これらの構造に到るために、以下の分析を行って、以下の結果を得た。
K1の-veイオンエレクトロスプレー質量スペクトルは、明瞭な100%イオンを561ダルトンに示した。これは、1つのエピカテキン、又は異性体単位と1つのエピアフゼレキン、又は異性体単位の混合ダイマーのような、C30H26O11(分子量:562)の分子式の分子イオン(M+−H)に適正である。K1の13C NMRは、ある種のフラバノールダイマーに一致したシグナルを示した(図46)。K1の1H NMRスペクトルが、化合物H2に見られるものに類似した広がったピークがあることを示した(図47)ので、この化合物をアセチル化して最終構造を決定することにした。純粋なK1のサンプルのアセチル化により過酢酸塩を得た(図43に構造を示す)。K1過酢酸塩の1H及び13C NMRスペクトルを、それぞれ図48及び49に示す。1H及び13C NMRスペクトルの両方において、2組のシグナルが3:1の比で見られた。これらは回転異性体(アトロプ異性体)によるものであった。我々は、主要なアトロプ異性体のシグナルを使用してこの構造を解釈した(以下の表6を参照のこと)。
60〜80領域中のC−2及びC−3位に対する4つの13Cシグナル、並びに下方単位のフリーC−4位に対する26.61のシグナル、さらに上方単位の連結C−4に対する34.14のシグナルから、2つのフラバン−3−オール単位の存在を認めることができた。CIGAR 1H−13C相関性実験(図50〜53)は、H−4(u)とC−8(l)との相関関係により、2つの単位が4(u)位から8(l)位へ連結していることを示した。上方及び下方単位の両方のC−2及びC−3での立体化学は、下方単位に対する1H及び13Cシグナルの類似した化学シフト、並びに両単位中のH−2及びH3の間の類似した低いカップリング定数により、エピカテキン中と同じであることが示された。3’,4’−二酸素化芳香環のH−2(l)からC−2’及びC−6’シグナルへのCIGAR相関関係により、下方フラバン−3−オール単位は、エピカテキンであることが示された。4’−酸素化環のH−2(u)から同等のC−2’/C−6’シグナルへのCIGAR相関関係により、上方フラバン−3−オール単位を同定した。これは、エピアフゼレキン単位を構成する。故に、天然産物K1の構造を、エピアフゼレキン−4β→8−エピカテキンであるとした。この化合物は、既知化合物である(Kashiwada et al, Chem. Pharm. Bull. 36: 39-47, 1988; Morimoto et al, Chem. Pharm. Bull. 34: 888-893, 1990)。K1の構造に関する我々のNMRデータは、エピアフゼレキン−4β→8−エピカテキンについて公表された部分NMRデータに適合した。+29°の文献値に比較した、−1.4°の旋光度は、不確実な絶対立体化学を示した。
ピークK1データの要約
−veエレクトロスプレー質量分析法:561(M+−H,100%)。
分子量=562。
実施例10:治療応用
プロアントシアニジンは、強力な阻害剤/破壊剤として作用し、及び/又はアミロイド原線維(存在するアミロイドタンパク質のタイプに関わらない。Aβ、NAC、及びIAPP原線維について実施例を示した)の分解を引き起こし、並びに、αシニュクライン/NAC原線維の強力な阻害剤/破壊剤として作用する。プロシアニジンのダイマー及びトリマーは、いずれもそのような原線維形成を特異的に阻害することが示され、我々の進行中の試験は、プロシアニジンのテトラマー及び(テトラマーより大きい)オリゴマーもそのようなアミロイド原線維阻害効果を発揮することが可能であることを示唆する。このように、好ましい治療応用には、アミロイド疾患と、αシニュクライン/NAC原線維形成を含む疾患の治療へのプロアントシアニジン及びプロシアニジンの使用が含まれる。
本発明のプロアントシアニジンは、植物 Uncaria tomentosa から発見、単離、そして同定された。しかしながら、その供給源(即ち、植物又は食品)にかかわらず、どのプロアントシアニジンでも類似のアミロイド/αシニュクライン/NAC阻害活性が観察される可能性があり、それには、当技術分野の当業者に知られた方法により合成され得るプロアントシアニジンも含まれる。
プロアントシアニジン化合物の非経口投与用の調製物には、無菌の水性若しくは非水性溶液剤、懸濁液剤、乳剤が含まれ、これは当技術分野で知られている助剤又は賦形剤を含有してよい。錠剤、丸剤、カプレット剤、軟及び硬ゼラチンカプセル剤、トローチ剤、小袋剤、カシェ剤、ベジキャップ(vegicaps)、液滴剤、エリキシル剤、懸濁液剤、乳剤、溶液剤、シロップ剤、ティーバッグ剤、(固形物としてか、又は液体媒体中の)エアゾール剤、坐剤、無菌注射溶液剤、無菌包装散剤のような医薬若しくは薬理組成物は、定常的な方法により調製可能であり、当技術分野で知られている。
本発明のプロアントシアニジンは、医薬若しくは薬理組成物の形態にある本明細書に記載のプロアントシアニジンを使用して、例えば、アルツハイマー病若しくは2型糖尿病のようなアミロイド疾患、又はαシニュクライン/NAC原線維形成を伴う他の病理を治療するために、その意図される目的を達成する任意の手段により投与することが可能である。
例えば、そのような組成物の投与は、皮下、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、経皮、又は頬内の経路のような様々な非経口経路によってよい。他のやり方では、又は同時に、投与は経口経路によってもよい。非経口投与は、ボーラス注射によるか、又は時間をかける漸時の潅流によっても可能である。本発明のプロアントシアニジン医薬組成物を使用する好ましい形式は、経口投与又は静脈内適用による。
アルツハイマー病アミロイド症のようなアミロイド病理を予防、抑制、又は治療するのに典型的な処方は、1日〜数日、1週間〜約10年まで、及びそれを含む期間にわたる、有効量のプロアントシアニジンの投与を含む。
In vivo 若しくは in vitro で投与される本発明のプロアントシアニジンの投与量は、レシピエントの年齢、性別、健康、及び体重、もしあれば同時治療の種類、治療の頻度、及び、所望される効果の種類に依存することが理解される。最も好ましい投与量は、不要な実験をせずに当業者により理解され、そして決定可能であるように、個々の被検者に合わせて調整される。
それぞれの治療に要求される全用量は、頻回用量によるか又は単回用量において投与してよい。プロアントシアニジン若しくはプロシアニジン化合物は、単独でか、又は、本明細書に記載されるように、アルツハイマー病若しくはパーキンソン病のようなアミロイド疾患若しくはαシニュクライン/NAC原線維形成へ向けられる他の治療薬と一緒に投与してよい。プロアントシアニジン化合物の治療に有効な量は、約10mg〜約1,000mg/kg体重であり、好ましくは、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100mg/kg体重のように、約10mg〜100mg/kg体重である。
非経口投与用の調製物には、無菌の水性若しくは非水性溶液剤、懸濁液剤、及び乳剤が含まれ、これは当技術分野で知られている助剤又は賦形剤を含有してよい。本発明のプロアントシアニジンを含有する医薬組成物には、プロアントシアニジンがその意図される目的を達成するのに有効な量で含有される、あらゆる組成物が含まれる場合がある。さらに、医薬組成物は、活性化合物の調製物への加工を容易にする、製剤的に使用することが可能である、賦形剤、担体、及び/又は助剤のような、好適な製剤的に許容される担体を含有してよい。
医薬組成物は少なくとも1つのプロアントシアニジン化合物を含み、また、静脈内、皮下、皮膚、経口、粘膜、直腸の投与の溶液剤が含まれる場合があるか、又は注射若しくは経口で投与される場合があり、約0.01〜100%、好ましくは約95〜100%の活性化合物を賦形剤とともに含有する場合がある。経口投与用の医薬組成物には、丸剤、錠剤、カプレット剤、軟及び硬ゼラチンカプセル剤、トローチ剤、小袋剤、カシェ剤、ベジキャップ、液滴剤、エリキシル剤、懸濁液剤、乳剤、溶液剤、及びシロップ剤が含まれる。
アルツハイマー病及びパーキンソン病、そして他の中枢神経系障害へのプロアントシアニジン化合物は、血液脳関門を通過するように最適化される場合がある。導入の方法には、限定されないが、全身投与、非経口投与、即ち、腹腔内、静脈内、口周囲、皮下、筋肉内、動脈内、皮内、筋肉内、鼻腔内、硬膜外、又は経口の経路が含まれる。中枢神経系障害の治療に好ましい態様において、プロアントシアニジン化合物は、心室内注射により脳脊髄液へ直接投与することが可能である。特定の態様においては、プロアントシアニジン化合物を治療の必要な組織の領域へ局所的に投与することが望まれる場合があり;このことは、例えば、限定されないが、外科手術時の局所注入、局所適用、注射により、カニューレを浸透ポンプで注入することにより、カテーテルの手段により、坐剤の手段により、又はインプラントの手段により達成することが可能である。
なおもう1つの態様において、プロアントシアニジン化合物は、浸透ポンプのような制御放出システムにおいてデリバリーすることが可能である。なおもう1つの態様において、制御放出システムは、治療標的、即ち、脳の近傍に配置することが可能であり、それにより全身用量のごく一部だけが必要とされる。
実施例11:アルツハイマー患者の臨床試験例
臨床試験のために5〜50名の女性を選択する。この女性は、閉経期にある、即ち、試験開始に先立つ6〜12ヶ月の間月経が止まっていて、初期アルツハイマー病と診断され、本試験期間内にアルツハイマー病の症状が悪化すると予測されるが、他の点では良好な健康状態にある。本試験にはプラセーボ群がある、即ち、この女性たちを2つの群へ分け、その1群には本発明の化合物を与え、他の群にはプラセーボを与える。記憶、認知、判断力、及び、アルツハイマー病に関連した他の症状に関して患者をベンチマークする。試験群の女性には治療量の化合物を経口経路により与える。この療法を6〜36ヶ月間継続する。両群においてベンチマークした症状について正確な記録をとり、試験の終了時にこれらの結果を比較する。各群のメンバー間でも結果を比較し、各患者の結果についても試験を開始する前に各患者について報告された症状を比較する。化合物の活性は、アルツハイマー病に関連した典型的な認知低下、及び/又は行動破壊の減弱化により明らかにされる。
本化合物の有用性は、上記アッセイの少なくとも1つにおける活性によって裏付けられる。
産業上の応用可能性
今日まで、アミロイド疾患、アミロイド症、アミロイド原線維形成、又はNAC若しくはαシニュクライン原線維形成により特徴づけられる疾患の治療へのプロアントシアニジン化合物の示唆された使用法は存在しない。この病態への費用効果のある治療法が世界全体で今や手近にあり、そして本開示が多くの苦痛と経済損失を軽減する手段を世界の医療提供者及び医療専門家の手中へすぐにもたらすと考えられる。
本発明を特定の態様及び実施例とともに記載してきたが、当業者には、本開示を考慮すれば、特に開示された材料及び技術の同等物も本発明に適用可能であること;そしてそのような同等物も以下の特許請求項に含まれると意図されることが明らかであろう。