このようなシート状回路デバイスを従来と同様にキャリアの収納部に保持して、実装機で実装する場合には、以下のような課題が生じる。従来の方法では、シート状回路デバイスを収納部内に一つずつ単純に収容したキャリアが実装機に装着された後、キャリアテープのカバーテープを順次剥がしながら、実装機の吸着ノズルによりシート状回路デバイスが一つずつ吸着され、取出されて、回路基板や電子部品の所定の面上に位置合せされた後、実装される。しかし、このような保持方法では、カバーテープを剥がすときの静電気により、シート状回路デバイスがカバーテープに吸着されてしまい、吸着ノズルで吸着できなくなる場合が生じる。また、マザーボードである回路基板に、例えばハンダリフロー実装する場合にハンダが溶融すると、シート状回路デバイスが容易に移動してしまい、正確なハンダ接続ができない場合も生じる。
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、シート状回路デバイスをキャリアの収納部内に安定して保持するとともに、回路基板や電子部品の所定の面上に確実に固定して、正確な位置での接続を行うことができるシート状回路デバイスとその保持方法、およびシート状回路デバイスの実装方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため本発明のシート状回路デバイスは、フィルム状基材と、フィルム状基材に形成された回路素子を含む回路パターンと、回路パターンに接続された外部接続用の電極端子と、回路パターン形成面およびフィルム状基材表面の少なくとも一方の面上に形成された常温で粘着性を有する粘着層とを有する構成からなる。
この構成により、シート状回路デバイスを、粘着層によってキャリアの収納部に整列して貼付けた状態で製造工程に供給することができるとともに、実装機により回路基板等に実装する場合にも、この粘着層を用いて所定の位置へ確実に固定してから電気的接続をすることができる。なお、この粘着層としては、市販の両面粘着テープを貼付けてもよいし、あるいは粘着材を塗布してもよい。
また、本発明のシート状回路デバイスは、粘着層が常温から設定温度までの温度領域において粘着性を有し、設定温度よりも高温または低温において非粘着性となる性質を有する構成からなる。
この構成により、シート状回路デバイスをキャリアに保持しておく場合には粘着層が有効に作用して固定され、キャリアから取出すときには粘着力を失わせてから取出せば、シート状回路デバイスに曲げ変形等を生じさせずに取出すことができるので、回路素子の信頼性が低下することもなくなる。なお、このような粘着特性を有する粘着層は、感温性粘着材あるいは粘着フィルムと呼ばれる市販の材料を用いることができる(例えば、ニッタ株式会社製の感温性粘着テープ)。この材料は、常温付近を中心として、ある温度以上に加熱または冷却すると粘着性がなくなる。本発明の場合には、キャリアに保持している場合は通常常温であるので常温付近で粘着性を有することが要求されるが、キャリアから取外すときには粘着性がなくなるように加熱または冷却すれば、シート状回路デバイスに曲げ変形等を与えずに容易に引き剥がすことができる。
また、本発明のシート状回路デバイスの保持方法は、複数個の収納部を有するキャリアと、フィルム状基材と、フィルム状基材に形成された回路素子を含む回路パターン、回路パターンに接続された外部接続用の電極端子と、回路パターン形成面およびフィルム状基材表面の少なくとも一方の面上に形成された常温で粘着性を有する粘着層とを有するシート状回路デバイスとを含み、上記収納部にシート状回路デバイスを上記粘着層により貼付けて保持する方法からなる。
この方法により、シート状回路デバイスが粘着層によってキャリアの収納部に貼付け保持されているので、キャリアのカバーを剥がして収納部から取出す際に、動いたり浮き上ったり、あるいは静電気によりカバーに吸着されることがない。このため、シート状回路デバイスを変形なく容易に取出すことができる。また、実装機による回路基板等への装着位置も定まりやすいので、確実に固定してから電気的接続をすることができる。
また、本発明のシート状回路デバイスの保持方法は、収納部のシート状回路デバイスを貼着する領域の少なくとも一部に、粘着層の粘着力を低下させる膜が形成されている方法からなる。なお、粘着層の粘着力を低下させる膜としては、フッ素を含む樹脂をコーティングすることで容易に作製できる。この樹脂からなる膜をシート状回路デバイスが貼着される領域に全面に形成してもよいし、または部分的に形成して粘着力を調整してもよい。また、シート状回路デバイスを貼着する領域に、シート状回路デバイスよりも小さな面積で、かつその周囲がテーパ形状を有する突面部が設けられている収納部を用いる方法としてもよい。さらに、シート状回路デバイスを貼着する領域に、中央部分が密で、周辺部分が粗となるように複数の凸状部が設けられている収納部を用いる方法としてもよい。
この方法により、シート状回路デバイスをキャリア中に保持している場合には粘着層により安定して保持され、キャリアの収納部から取外す場合には比較的小さい力でシート状回路デバイスを引き剥がすことができる。この結果、キャリアから取外す際に、シート状回路デバイスには曲げ変形等が生じにくくなり、回路素子の信頼性を低下させることがなくなる。
また、本発明のシート状回路デバイスの実装方法は、フィルム状基材と、フィルム状基材に形成された回路素子を含む回路パターンと、回路パターンに接続された外部接続用の電極端子と、回路パターン形成面およびフィルム状基材表面の少なくとも一方の面上に形成された常温で粘着性を有する粘着層とを有するシート状回路デバイスが、複数個の収納部に上記粘着層により貼付けて保持されたキャリアからシート状回路デバイスを吸着ノズルで吸着する工程と、シート状回路デバイスを収納部から引き剥がす工程と、シート状回路デバイスを回路基板または電子部品の所定の面上に位置合せして粘着層により粘着固定する工程と、シート状回路デバイスの電極端子と回路基板の電極パッドとを接続する工程とを有する方法からなる。
この方法により、キャリアの収納部に対しては、粘着層により固定され、安定な保持が行われる。また、回路基板または電子部品の所定の面上に対しては、同じ粘着層により粘着固定するので、あらためて粘着層を形成する工程は不要となり、キャリアから実装までの工程が簡略化される。
また、本発明のシート状回路デバイスの実装方法は、キャリアの収納部のシート状回路デバイスを貼着する領域の少なくとも一部に、粘着層の粘着力を低下させる膜が形成されている方法からなる。また、シート状回路デバイスを貼着する領域に、シート状回路デバイスよりも小さな面積で、かつその周囲がテーパ形状を有する突面部が設けられている収納部を用いる方法としてもよい。さらに、シート状回路デバイスを貼着する領域に、中央部分が密で、周辺部分が粗となるように複数の凸状部が設けられている収納部を用いる方法としてもよい。
この方法により、シート状回路デバイスをキャリア中に保持している場合には粘着層により安定して保持され、キャリアの収納部から取外す場合には比較的小さい力でシート状回路デバイスを引き剥がすことができる。この結果、キャリアから取外して回路基板へ実装するときに、高速で、かつ信頼性よく行うことができる。さらに、シート状回路デバイスには曲げ変形等が生じにくくなり、回路素子の信頼性を低下させることもなくなる。
また、本発明のシート状回路デバイスの実装方法は、シート状回路デバイスを収納部から引き剥がす工程において、シート状回路デバイスを吸着ノズルで吸着した後、吸着ノズルの吸着面とキャリアの収納部とを相対的に傾けて、シート状回路デバイスを一端部から引き剥がす方法からなる。
この方法により、シート状回路デバイスをキャリアの収納部から取外す際に、シート状回路デバイスに対して曲げ変形を生じさせないようにすることができる。
また、本発明のシート状回路デバイスの実装方法は、粘着層が常温から設定温度までの温度領域において粘着性を有し、設定温度よりも高温または低温において非粘着性となる性質を有し、シート状回路デバイスを収納部から引き剥がす工程において、収納部のシート状回路デバイスが貼着された領域を設定温度よりも高温または低温に加熱または冷却し、粘着層を非粘着性とするとともに、吸着ノズルでシート状回路デバイスを吸着して収納部から取外す方法からなる。
この方法により、キャリアの収納部からシート状回路デバイスを取外す際には、粘着層の粘着力を低下させるので、シート状回路デバイスには曲げ変形等が生じさせないようにして取外すことができる。この結果、回路素子の信頼性を低下させることがなくなる。
また、本発明のシート状回路デバイスの実装方法は、電子部品が対向する側面部または底面の周縁部からL字状に突出して複数の端子ピンが設けられた表面実装型コネクタであり、かつ、シート状回路デバイスの粘着層は電極端子が形成されている面とは異なる面上に形成されており、シート状回路デバイスを電子部品の所定の面上に位置合せして粘着層により粘着固定する工程が、表面実装型コネクタの端子ピンで囲まれる領域部において、シート状回路デバイスの電極端子と端子ピンの接続面とが同じ面上に位置するように粘着固定する方法からなる。
また、シート状回路デバイスの電極端子と回路基板の電極パッドとを接続する工程が、表面実装型コネクタの端子ピンを回路基板の電極パッドに接続する工程と同時に、同一材料により行うようにしてもよい。
この方法により、表面実装型コネクタとシート状回路デバイスとを一体化した構成を容易に作製してから、回路基板の所定の面上に一体的に実装することができる。
また、本発明のシート状回路デバイスの実装方法は、シート状回路デバイスの粘着層が電極端子の形成されている面と同一面上に形成されており、シート状回路デバイスを回路基板の所定の面上に位置合せして粘着層により粘着固定した後に、シート状回路デバイスの前記電極端子と前記回路基板の電極パッドとをハンダまたは導電性接着剤により接続する方法からなる。
この方法により、非常に薄く、軽いシート状回路デバイスであっても、シート状回路デバイスに最初から形成されている粘着層を用いて、回路基板表面に粘着固定してから、所定の接続を行うことができる。このため、あらためて粘着層を形成する必要がなく、かつ、接続時の加熱等でシート状回路デバイスが変形して接続不良が生じることもなくなる。
また、本発明のシート状回路デバイスの実装方法は、シート状回路デバイスを回路基板の所定の面上に位置合せして粘着層により粘着固定した後、さらに、対向する側面部または底面の周縁部からL字状に突出して複数の端子ピンが設けられた表面実装型コネクタを、上記端子ピンで囲まれる領域部にシート状回路デバイスを収容し、かつ端子ピンと回路基板の電極パッドとを位置合せして配設する工程とを含み、シート状回路デバイスの電極端子と回路基板の電極パッドとをハンダまたは導電性接着剤により接続するときに、同時に表面実装型コネクタの端子ピンと回路基板の電極パッドとを同一材料を用いて接続する方法からなる。
この方法により、シート状回路デバイスと表面実装型コネクタとを積層した構成で回路基板に実装することができる。例えば、シート状回路デバイスとして表面実装型コネクタのノイズ除去回路を構成しておけば、実装面積を大きくせずに表面実装型コネクタのノイズ除去防止を行うことができる。
以上のように本発明のシート状回路デバイスは、フィルム状基材と、フィルム状基材に形成された回路素子を含む回路パターンと、回路パターンに接続された外部接続用の電極端子と、回路パターン形成面およびフィルム状基材表面の少なくとも一方の面上に形成された常温で粘着性を有する粘着層とを有する構成からなり、シート状回路デバイスを、粘着層によってキャリアの収納部に整列して貼付けた状態で製造工程に供給することができるとともに、実装機により回路基板等に実装する場合にも、この粘着層を用いて所定の位置へ確実に固定してから電気的接続をすることができるという大きな効果を奏する。
また、上記のシート状回路デバイスが複数個の収納部に上記粘着層により貼付けて保持されたキャリアからシート状回路デバイスを吸着ノズルで吸着する工程と、シート状回路デバイスを収納部から引き剥がす工程と、シート状回路デバイスを回路基板または電子部品の所定の面上に位置合せして粘着層により粘着固定する工程と、シート状回路デバイスの電極端子と回路基板の電極パッドとを接続する工程とを有する実装方法からなり、キャリアの収納部に対しては、粘着層により固定され、安定な保持が行われる。また、回路基板または電子部品の所定の面上に対しては、同じ粘着層により粘着固定するので、あらためて粘着層を形成する工程は不要となり、キャリアから実装までの工程が大幅に簡略化されるという大きな効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、判りやすくするために、各図面は厚さ方向の寸法を拡大して表わしてある。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態によるシート状回路デバイス10の一部断面を含む斜視図である。このシート状回路デバイス10は、柔軟性を有するポリイミドフィルム等の軽くて薄いフィルム状基材11が用いられている。その表面には、回路素子12、13であるコンデンサ素子を複数個形成し、このコンデンサ素子から導出された回路パターンと、この回路パターンに接続された一方の電極端子14、15と、回路素子12、13が共通接続されている他方の電極端子16とが形成されている。また、フィルム状基材11の裏面には、全域に亘って常温で粘着性を有する粘着層17が形成されている。この粘着層17によって、シート状回路デバイス10をキャリアテープの収納部に整列して貼付けた状態で保持することができる。なお、本実施の形態では、キャリアはテープ状のものを使用している。また、実装時には、シート状回路デバイスを回路基板または電子部品の所定の面上に位置合せして、この粘着層17により粘着固定してから、電極端子同士を接続することができる。これにより、実装作業を安定して確実に行うことが可能である。なお、図1では、回路パターンは回路素子12、13と一体構成で形成されているので、特に符号は付していない。
つぎに、このシート状回路デバイス10キャリアテープに保持する保持方法について説明する。このシート状回路デバイス10は図2の斜視図に示すように、キャリアテープ18の収納部19内に収納され、カバーテープ20で覆われた状態で保持される。図3は、図2に示すP−P線に沿った断面図で、シート状回路デバイス10がキャリアテープ18の収納部19内に収納された状態を示す図である。図3に示すように、キャリアテープ18の収納部19内において、シート状回路デバイス10は粘着層17により、それぞれの収納部19の底面19Aに貼付け固定されている。この底面19Aには、フッ素樹脂を主体とする樹脂材料をコーティングして粘着力を低下させる膜21が設けられている。
この膜21を設けることによってキャリアテープ18の収納部19に保持した状態では安定して保持される程度に粘着力が小さくなり、例えば実装機の吸着ノズルによりシート状回路デバイス10をキャリアテープ18から取出す際には、比較的小さな引き剥がし力で剥がすことができるので、シート状回路デバイス10には曲げ変形等が生じにくい。
なお、このキャリアテープ18の収納部19の底面19Aに形成した膜21に代わるもの、あるいはこの膜21と複合して使用する形状として、図4および図5に示すような収納部の構成としてもよい。図4は、収納部22の底面22Aにシート状回路デバイス10よりも小さくな面積で、かつその周囲がテーパ形状を有する突面部23が設けられている。シート状回路デバイス10は、この突面部23上に粘着層17で貼付けるようにしてもよい。このような構成とすることで、キャリアテープ18での保持状態では必要な粘着性を有し、実装のために引き剥がすときには小さな力で容易に引き剥がすことが可能となる。なお、この場合、突面部23上に細い溝を設けて粘着力を調整することもできる。
また、図5は、収納部24の底面24Aにシート状回路デバイス10よりも狭い範囲に、中央部分が密で、周辺部分が粗となるように複数の凸状部25を設けた構成である。この凸状部25上にシート状回路デバイス10を粘着層17で貼付けるようにしてもよい。
つぎに、キャリアテープ18の収納部19、22、24に収納保持されたシート状回路デバイス10を収納部19、22、24から取出す方法について、図6を用いて説明する。図6においては、キャリアテープ18の収納部は図3に示す構成の収納部19で示している。実装機(図示せず)に装着されている吸着ノズル26でシート状回路デバイス10を吸着した後、矢印で示すように吸着ノズル26の吸着面に対し、収納部19の底面19Aを傾けることによって、シート状回路デバイス10の粘着層17を収納部19の底面19Aの一端部から引き剥がす。このような方法により、シート状回路デバイス10には曲げ変形等を生じさせないようにして、容易に引き剥がすことができる。なお、この場合に吸着ノズル26は、シート状回路デバイス10よりも少なくとも大きな面積の吸着面とすれば、シート状回路デバイス10の全面を平面状態で吸着することができる。この結果、収納部19から引き剥がす場合に、シート状回路デバイス10には曲げ変形がまったく生じないようにすることができ、回路素子(図示せず)等の信頼性を損なうことがない。
この吸着ノズル26の吸着面に対して、収納部19の底面19Aを傾ける方法は、必ずしも収納部19の底面19Aを傾ける必要はなく、吸着ノズル26の吸着面を傾けて両者が相対的に傾くようにしてもよい。
このようにして、キャリアテープ18の収納部19から取出されたシート状回路デバイス10は、実装機の吸着ノズル26に吸着保持されて回路基板や電子部品の所定の面上に位置合せされ、粘着層17により粘着固定された後、一方の電極端子14、15と他方の電極端子16とが回路基板の電極パッドに接続される。以上のように本実施の形態によれば、キャリアテープ18に収納されたシート状回路デバイス10は、粘着層17によって収納部19、22、24に貼付け保持されているので、キャリアテープ18のカバーテープ20を剥がして収納部19、22、24から取出す際に、動いたり浮き上ったりすることがない。さらに、同じ粘着層17を用いて回路基板または電子部品の所定の面上に粘着固定するので、実装時の作業性も改善され、かつ工程も簡略化される。
なお、本実施の形態では、シート状回路デバイス10の裏面の全面に粘着層17を形成したが、本発明はこれに限定されない。シート状回路デバイス10をキャリアテープ18の収納部19、22、24および回路基板や電子部品の所定の面上に粘着固定できれば全面に形成する必要は特にない。
さらに、シート状回路デバイス10をキャリアテープの収納部に保持しておく場合、または保持した状態で実装工程と行う場合、収納部を有し、カバーテープで覆われたキャリアテープである必要はなく、例えば図7に示すようなキャリアシート27でもよい。図7のキャリアシート27は、幅広のシートの上にシート状回路デバイス10を粘着層(図示せず)により単純に粘着固定させたものである。このようなキャリアシート27による保持方法であってもよい。
また、シート状回路デバイスを装着する固定部材の条件等に対応して、粘着層を形成する位置を変えてもよい。すなわち、図8には、第1の実施の形態におけるシート状回路デバイスの変形例のシート状回路デバイス28の斜視図を示す。図9は、このシート状回路デバイス28をキャリアテープ18の収納部19に収納した状態を示す断面図である。なお、図8および図9において、図1から図3に示す要素と同じ要素については同じ符号を付している。
この変形例では、シート状回路デバイス28に形成する粘着層29は、一方の電極端子14、15と他方の電極端子16を除く、回路パターン面およびフィルム状基材表面に直線状に形成されている。キャリアテープ18の収納部19に保持する場合には、一方の電極端子14、15と他方の電極端子16とを貼着領域側に向けて貼付ける。このような構成のシート状回路デバイス28であっても、キャリアテープ18のカバーテープ20を剥がして収納部19から取出す際に、動いたり浮き上ったりすることを防止できる。また、実装機による回路基板や電子部品の所定の表面上への位置合せも容易で、安定して確実に粘着固定が可能であり、位置ズレ等が生じずに電気的接続もできる。
(第2の実施の形態)
図10は、本発明の第2の実施の形態によるシート状回路デバイス30の一部断面を含む斜視図である。このシート状回路デバイス30は、第1の実施の形態において、図1に示したものと外観形状は同じであるが、フィルム状基材11の裏面に形成された粘着層31の特性が異なっている。なお、第1の実施の形態と同じ要素については同一符号を付している。
すなわち、本実施の形態のシート状回路デバイス30に用いた粘着層31は、常温から設定温度までの温度領域において粘着性を有し、設定温度温度よりも高温または低温において粘着力が低下する性質を有する材料からなる。例えば、40℃の設定温度を境に、これよりも低い温度では粘着性を有するが、これよりも高い温度では非粘着となるものを用いればよい。あるいは、例えば、10℃の設定温度を境に、これよりも高い温度では粘着性を有するが、これよりも低い温度では非粘着性となるものを用いることもできる。この粘着性、非粘着性は繰り返し発現可能であるので、加熱または冷却して非粘着性とした後、回路基板や電子部品に貼付けて、常温に戻せば再び粘着固定される。
この粘着層31でシート状回路デバイス30をキャリアテープ32の収納部33内に粘着させて保持した状態を図11に示す。本実施の形態では、キャリアテープ32の収納部33には、粘着層31の粘着力を調整する膜や突面部等はまったく設けられていない。シート状回路デバイス30は、キャリアテープ32が設定温度より高い温度または低い温度にさらされない限り粘着性を保持するので、確実にシート状回路デバイス30を保持することができる。
つぎに、キャリアテープ32に保持されているシート状回路デバイス30を収納部33から引き剥がして、実装する工程について説明する。図12は、実装機(図示せず)の吸着ノズル26による取出し状態を示す要部断面図である。収納部33の底面33Aが、ヒータ34で所定の温度(例えば、40℃)以上となるように加熱される。同時に、実装機の吸着ノズル26がシート状回路デバイス30面上にセットされ、シート状回路デバイス30を吸着する。
このヒータ34による加熱で、粘着層31が非粘着性となる所定の温度以上に加熱されると、粘着層31は非粘着性となり、収納部33から容易に引き剥がすことができる。このため、シート状回路デバイス30は曲げ変形等を受けることなく、吸着ノズル26で吸着して取出すことができる。
そして、キャリアテープ32の収納部33から取出されたシート状回路デバイス30が吸着ノズル26に吸着保持されて、回路基板や電子部品の所定の面上まで移動させられたときには、その温度は常温に戻っているので粘着層31の粘着性が発現し、シート状回路デバイス30は確実に粘着固定することができる。
この後、一方の電極端子14、15および他方の電極端子16と回路基板の電極パッド(図示せず)とを、例えばハンダ接続すれば所定の実装が完了する。
以上のように本実施の形態によれば、常温において、粘着層31によってシート状回路デバイス30をキャリアテープ32に粘着固定して保持することができる。また、回路基板や電子部品の所定の面上に粘着固定する場合には、設定温度から外れるように加熱または冷却して非粘着性とすれば、シート状回路デバイス30にまったく曲げ変形等を与えずに取出すことができる。
なお、本実施の形態においても、粘着層31は必ずしもフィルム状基材11の裏面全域に亘って形成する必要はない。また、第1の実施の形態の変形例で示すように粘着層を形成してもよい。
また、上記の説明では、粘着層31は設定温度(例えば、40℃)よりも低い温度で粘着性を有し、これよりも高い温度では非粘着性となる材料を用いた例で説明したが、粘着層31が設定温度(例えば、10℃)よりも高い温度で粘着性を有し、これよりも低い温度では非粘着性となる材料を用いて、設定温度以下に冷却して取出す方法としてもよい。
(第3の実施の形態)
図13は、本発明の第3の実施の形態によるシート状回路デバイス10と表面実装型コネクタ36とを回路基板39上に積層して実装した構造を示す断面図である。また、図14は、図13のQ−Q線側から見た平面図である。なお、第1の実施の形態と同じ要素については同一符号を付している。
本実施の形態では、第1の実施の形態で説明したシート状回路デバイス10を、表面実装型コネクタ36の端子ピン38で囲まれる領域内に配置し、粘着層17で粘着固定してから、シート状回路デバイス10と表面実装型コネクタ36とを一括して回路基板39の所定の電極パッド40、41と位置合せし、例えばハンダ等の接続部材42で接続して実装したものである。
表面実装型コネクタ36には、箱型の樹脂ケース37の雄型部材を挿入する空間部37A内に接触部46が突出するように設けられている。また、複数の端子ピン38が、樹脂ケース37の底面からL字形状に突出して形成されている。この端子ピン38と接触部46とは、同一材料により接続されている。
シート状回路デバイス10は、この樹脂ケース37の底面と複数の端子ピン38とで囲まれる領域部に粘着層17により粘着固定されている。
回路素子12、13であるコンデンサ素子の一方の電極端子14、15は、に回路基板39の電極パッド40により、それぞれ対向する端子ピン38と導通するようにハンダ等の接続部材42で接続されている。また、同様に回路素子12、13であるコンデンサ素子の他方の電極端子16は、回路基板39に設けられた電極パッド41に同様にハンダ等の接続部材42で接続されている。
つぎに、このシート状回路デバイスの実装方法について、さらに詳しく説明する。まず、第1の実施の形態と同様に、キャリアテープ18の収納部19に粘着層17により貼付け保持されているシート状回路デバイス10を吸着ノズル(図示せず)で吸着し、キャリアテープ18から取外す。吸着ノズルを移動させて、表面実装型コネクタ36の樹脂ケース37の底面と複数の端子ピン38とで囲まれる領域部に、同じ粘着層17を用いて粘着固定する。
この後、シート状回路デバイス10と表面実装型コネクタ36とが一体化した状態で吸着ノズルにより吸着し、回路基板39の所定の電極パッド40、41と、端子ピン38および一方の電極端子14、15と他方の電極端子16とを位置合せする。この位置合せした状態を図15に示す。
この後、シート状回路デバイス10の一方の電極端子14、15と他方の電極端子16、および端子ピン38を、回路基板39のそれぞれの電極パッド40、41と接触させた後、所定の温度に加熱することでハンダ等の接続部材42で同時に接続を行い、実装工程が完了する。
このような実装方法とすることにより、あらかじめシート状回路デバイス10を表面実装型コネクタ36に粘着固定して、一体化しておくことができるので、一括して回路基板39に実装でき、実装工程を簡略化できる。
なお、以上の説明において、シート状回路デバイス10を表面実装型コネクタ36に粘着固定する粘着層としては、常温で粘着性を有する粘着層だけでなく、常温から設定温度までの温度領域において粘着性を有し、設定温度よりも高温または低温において非粘着性となる粘着層を用いてもよい。
(第4の実施の形態)
図16は、本発明の第4の実施の形態によるシート状回路デバイス28を回路基板39上に位置合せした後、表面実装型コネクタ36を積層した後、一方の電極端子14、15、他方の電極端子16と端子ピン38とを一括して電極パッド40、41に接続して実装した構成を示す断面図である。なお、第1の実施の形態と同じ要素については同じ符号を付している。
本実施の形態においては、第1の実施の形態の変形例で説明したシート状回路デバイス28と表面実装型コネクタ36とを回路基板39上に積層して構成している。本実施の形態では、シート状回路デバイス28の一方の電極端子14、15と他方の電極端子16が設けられている面側に粘着層29が形成されており、粘着層29によりシート状回路デバイス28を回路基板39上に位置合せした後、表面実装型コネクタ36を積層し、一括して端子同士を接続する実装方法である。
以下、具体的な実装方法について、図17に示す部分断面図を用いて説明する。キャリアテープ18の収納部19に粘着層29により粘着固定されたシート状回路デバイス28を吸着ノズル(図示せず)により吸着し、キャリアテープ18から取外す。シート状回路デバイス28を吸着したまま吸着ノズルを回路基板39の所定の位置に移動し、回路基板39の電極パッド40、41に対して一方の電極端子14、15および他方の電極端子16がそれぞれ対向する位置にシート状回路デバイス28を位置合せしてから、粘着層29により回路基板39に粘着固定する。
つぎに、図17に示すように、表面実装型コネクタ36の樹脂ケース37の底面と複数の端子ピン38とで囲まれる領域部にシート状回路デバイス28が収容されるように位置合せするとともに、端子ピン38と回路基板39の電極パッド40とが対向する位置に表面実装型コネクタ36を配設する。
この後、回路基板39の電極パッド40、41とシート状回路デバイス28の一方の電極端子14、15と他方の電極端子16および表面実装型コネクタ36の端子ピン38を同時に一括して、例えばハンダ等の接続部材42でそれぞれ接続すると、図16に示す実装構成が作製される。
このような実装方法とすることにより、シート状回路デバイス28と表面実装型コネクタ36とを別々に回路基板39上に実装しながら、低背化可能な積層構成の実装を容易に実現できる。
なお、以上の説明において、シート状回路デバイス28を回路基板39表面に粘着固定する粘着層29として、常温で粘着性を有する材料について説明したが、本発明はこれには限定されない。常温から設定温度までの温度領域において粘着性を有し、設定温度よりも高温または低温において非粘着性となる粘着材を粘着層として用いてもよい。