JP4380216B2 - 電子線滅菌装置及び滅菌処理システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、凹部を有する立体形状の被処理物、例えば医療用のゴム栓を滅菌する際に利用される電子線滅菌方法、電子線滅菌装置及び滅菌処理システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品用や医療用に使用される容器やそれに用いられるゴム栓等は、健康衛生面等を考慮して、病原菌及び他の微生物を滅菌レベルで殺菌する必要がある。また、それら容器に内容物を充填する環境も無菌状態にしておく必要がある。例えば、医療用容器に薬液を充填する環境としては、一般に、ISOクラス5のクリーンルーム又は無菌室が用いられる。特に、最近では、実際に製品が環境に接する小空間のみを完全無菌化したアイソレータ内で充填処理が行われることもある。
【0003】
従来、食品、医療や微生物関連産業等で利用される滅菌装置には、例えば、乾熱滅菌法、湿熱滅菌法、ガス滅菌法、放射線滅菌法を利用したものがある。
【0004】
乾熱滅菌法は、例えば300℃の高温環境下で被処理物を滅菌する方法である。この乾熱滅菌法を利用した装置は、ガラス容器等、耐熱性を有する被処理物を滅菌する場合に使用することができるが、耐熱性の低いプラスチック製やゴム製の被処理物を殺菌する場合には使用することができない。
【0005】
湿熱滅菌法を利用した装置としては、高温高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)装置がある。高温高圧蒸気滅菌装置は、約120℃の高温、高圧の水蒸気で滅菌を行うものである。この高温高圧蒸気滅菌装置は、120℃で変形しない材質のプラスチックやゴムでできた被処理物を滅菌する場合に使用されている。一般に、湿熱滅菌法を利用した装置は、高価で設備自体も巨大である。また、処理時間が数時間に及び、作業の危険性も高い。更に、いわゆるバッチ処理方式で処理しなければならないので、滅菌処理が終了した被処理物を、無菌の充填領域に連続的に運び入れることができない。このため、現在では、被処理物を充填領域に運び入れる際に、移動経路の無菌化、自動ロボット、移動式アイソレータやパスボックス等の手段が利用されているが、いずれの手段を用いても、コストがかかるという問題がある。
【0006】
ガス滅菌法を利用した装置としては、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌装置がある。エチレンオキサイドガス滅菌装置は、エチレンオキサイドガスの毒性により病原菌や微生物を不活化する方法を利用したものである。このエチレンオキサイドガス滅菌装置でも、上記の湿熱滅菌法を利用した装置と同様の問題点がある。しかも、処理に使用した高濃度のエチレンオキサイドガスが低濃度になるまでに長時間を要するという問題もある。
【0007】
放射線滅菌法を利用した装置としては、γ線や高エネルギー電子線を利用したものがある。γ線や高エネルギー電子線による殺菌では、処理中にγ線や二次的に制動X線が発生する。かかるγ線やX線は人体に対して有害であり、しかも透過力が大きいので、それを遮蔽するのに、装置をコンクリート等で遮蔽した専用の建物が必要となり、装置も大型化し、高価なものとなってしまう。また、この場合は、滅菌専門の別工場で一括してバッチ処理方式で処理しなければならず、滅菌工程を、被処理物に内容物を充填するラインに組み入れることは困難である。
【0008】
現在最も一般的に用いられている滅菌法は湿熱滅菌法であるが、この湿熱滅菌法を利用した装置については、上述したように、さまざまな問題がある。このため、特に、プラスチック製やゴム製の被処理物を、連続的に滅菌処理することができるような滅菌方法の実現が望まれている。
【0009】
かかる要求に応えることができる滅菌方法として低エネルギー電子線を利用した滅菌方法がある(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載された電子線照射装置では、被処理物が所定の照射領域を通過するときに、低エネルギー電子線を被処理物の全周に照射して、被処理物の滅菌処理を行う。尚、この特許文献1には、主に被処理物が線状又は棒状の長尺物である場合が示されているが、被処理物がゴム栓等の立体物である場合には、被処理物をコンベア等の搬送手段に載せて、照射領域を通過させるようにすればよい。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−281400号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特に、凹部を有する立体形状の被処理物を、低エネルギー電子線を利用して滅菌する場合、搬送時における被処理物の状態によっては、被処理物の凹部のうち、どうしても電子線が届かない陰の部分ができてしまうことがある。かかる部分については、電子線が照射されず、したがって、被処理物を滅菌することができない。このため、一度、被処理物に電子線を照射した後、例えば、その被処理物の向きを変えて再度、被処理物に電子線を照射することが考えられる。しかし、この方法では、作業効率が悪いという問題がある。
【0012】
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、凹部を有する立体形状の被処理物の全表面に電子線を確実に照射することができ、且つ効率よく滅菌処理を行うことができる電子線滅菌方法、電子線滅菌装置及び滅菌処理システムを提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明に係る電子線滅菌装置は、中空部の中心軸が略鉛直方向を向くように設置された中空円筒状の真空容器と、前記真空容器内に設けられており、電子線を発生させるための少なくとも三つの電子線発生手段と、前記真空容器の内側面のうち前記各電子線発生手段に対向する位置に設けられており、当該電子線発生手段で発生した電子線を前記中空部内に取り出すための窓部と、凹部を有する立体形状の被処理物の姿勢を、前記凹部の中心軸が略水平方向を向く状態に保持したまま、前記被処理物を前記中空部の上方の所定位置に案内する案内手段と、を備え、前記案内手段により前記所定位置に案内された前記被処理物を、その案内時の姿勢のまま前記所定位置から前記中空部内に落下させると共に、前記各窓部を介して前記中空部内に取り出された電子線を、前記被処理物に、略水平方向から前記被処理物の全周囲にわたって照射するものである。
【0017】
上記の電子線滅菌装置において、前記被処理物を、前記凹部の中心軸の周りに回転させながら、前記中空部内に落下させることが望ましい。
【0018】
上記の電子線滅菌装置において、前記被処理物を所望の間隔で前記所定位置に供給するための供給速度調整手段を備えることが望ましい。
【0019】
上記の電子線滅菌装置において、前記電子線発生手段を三つ設け、前記各電子線発生手段を前記中空部の中心軸の周りに略120度の角度間隔で配置することが望ましい。
【0020】
上記の電子線滅菌装置において、前記被処理物は、医薬品容器に用いられるゴム栓であることが望ましい。
【0021】
上記の目的を達成するための本発明は、凹部を有する立体形状の被処理物を滅菌する滅菌処理システムであって、前記被処理物を洗浄する洗浄手段と、前記洗浄手段で洗浄された前記被処理物を乾燥する乾燥手段と、前記乾燥手段で乾燥された前記被処理物を、所定の方向性を持つように整列させて搬送する整列手段と、前記整列手段で搬送された前記被処理物に電子線を照射することにより前記被処理物を滅菌する上記の電子線滅菌装置と、を備えるものである。
【0022】
上記の滅菌処理システムにおいて、前記被処理物は、医薬品容器に用いられるゴム栓であることが望ましい。
【0023】
上記の滅菌処理システムにおいて、予め滅菌処理が施された前記医薬品容器に薬剤を充填する充填手段と、前記薬剤が充填された前記医薬品容器の口部に、前記電子線滅菌装置で処理された前記ゴム栓を詰める打栓手段とを備えることが望ましい。
【0024】
上記の滅菌処理システムにおいて、前記充填手段及び/又は前記打栓手段をアイソレータ内に収容することが望ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態である滅菌処理システムとしての薬液充填システムの概略ブロック図、図2はその薬液充填システムにおいて滅菌処理されるゴム栓の概略斜視図である。
【0026】
図1に示す薬液充填システムは、医薬品容器及びそれに用いられるゴム栓をそれぞれ滅菌処理した後、医薬品容器に薬液を充填し、その医薬品容器の口部にゴム栓を詰める処理を連続的に行うためのものである。本実施形態では、医薬品容器として、普通広く用いられている医療用のバイアル瓶を用いる場合について説明する。かかる薬液充填システムは、ゴム栓滅菌処理部10と、バイアル瓶滅菌処理部20と、充填処理部30と、無菌タンク40とを備える。ここで、ゴム栓滅菌処理部10が、請求項9記載の発明に係る滅菌処理システムに対応する。また、充填処理部30が、請求項11記載の充填手段及び打栓手段に対応する。したがって、ゴム栓滅菌処理部10と充填処理部30とが、本発明の滅菌処理システムを構成する。
【0027】
バイアル瓶滅菌処理部20では、バイアル瓶に滅菌処理が施される。かかるバイアル瓶滅菌処理部20は、バイアル瓶洗浄機21と、乾熱滅菌トンネル22とを有する。バイアル瓶は、ガラスで作られているので、乾熱滅菌法により滅菌処理を行うことができる。バイアル瓶は、バイアル瓶洗浄機21において水で洗浄された後、乾熱滅菌トンネル22に通される。乾熱滅菌トンネル22の温度は約300℃であるので、バイアル瓶は、乾熱滅菌トンネル22を通過することにより完全に滅菌される。
【0028】
ゴム栓滅菌処理部10では、ゴム栓に滅菌処理が施される。かかるゴム栓滅菌処理部10は、ゴム栓洗浄機11と、乾燥機12と、整列機13と、電子線滅菌装置100とを有する。ゴム栓は、例えばブチルゴム等で作られており、バイアル瓶のように乾熱滅菌法により滅菌処理を行うことはできない。本実施形態では、ゴム栓の滅菌には、低エネルギー電子線を用いる。かかる滅菌処理は電子線滅菌装置100で行われる。
【0029】
ここで、電子線滅菌装置100で処理されるゴム栓(被処理物)について説明する。医療用のバイアル瓶に使用されるゴム栓2には、大別して、図2(a)に示すような全打栓用のものと、図2(b)に示すような半打栓用のものとがある。かかるゴム栓2は、円形状の基部2aと、バイアル瓶の口部に詰められる部分である凸部2bとを有する。全打栓用のゴム栓2の場合、図2(a)に示すように、凸部2bは円筒形状であり、その内部が凹部2cとなっている。半打栓用のゴム栓2の場合には、図2(b)に示すように、凸部2bに連なるように二つの突出部2d,2dが形成されており、それら突出部2d,2dの間及び凸部2bの内部が凹部2cとなっている。特に、半打栓用のゴム栓2は、バイアル瓶に充填した薬液を凍結乾燥させる場合に用いられる。具体的には、薬液をバイアル瓶に充填した後、二つの突出部2d,2dの先端部だけをバイアル瓶の口部に詰め込む。次に、この状態のバイアル瓶に対して薬液の凍結乾燥処理を行い、半打栓用のゴム栓2の凹部2cを介して薬液の水分を蒸発させる。そして、薬液が粉状になった後、半打栓用のゴム栓2の突出部2d,2d及び凸部2bをバイアル瓶の口部に完全に詰め込む。図2(a),(b)に示すようなゴム栓2には、いろいろなサイズのものがあるが、代表的なゴム栓2では、基部2aの直径は1〜3cm、凸部2b(半打栓用のものの場合には、凸部2b及び突出部2d)の長さは3〜10mmである。本実施形態では、全打栓用のゴム栓2として、例えば、浪華ゴム工業株式会社製N−3ゴム栓リング付を用いることにする。
【0030】
メーカから購入したゴム栓2には、異物等がついている可能性がある。このため、ゴム栓2の滅菌処理を行う前に、ゴム栓2を洗浄しなければならない。ゴム栓洗浄機11はゴム栓2を個別に洗浄するものである。ゴム栓2は、コンベアで搬送されている間に、ゴム栓洗浄機11によって水で洗浄される。かかるゴム栓洗浄機11としては市販の装置を用いることができる。特に、本実施形態では、処理能力が最大300個/minであるゴム栓洗浄機11を用いている。
【0031】
乾燥機12は、ゴム栓洗浄機11で洗浄されたゴム栓2を乾燥するものである。低エネルギー電子線は浸透性が低いので、ゴム栓2に水滴が付いていると、その水滴を透過することができない。このため、乾燥機12を用いて、ゴム栓2に付いた水滴を蒸発させることにしている。ゴム栓2は、コンベアで搬送されている間に、乾燥機12によって乾燥される。かかる乾燥機12としては市販の装置を用いることができる。
【0032】
このように、ゴム栓2は、ゴム栓洗浄機11及び乾燥機12による処理の間、コンベアで搬送される。この搬送中、ゴム栓2はいろいろな姿勢をとり、いろいろな方向を向いている。例えば、各ゴム栓2は、上向きの状態、下向きの状態又は横向きの状態をしている。整列機13は、かかるゴム栓2を、所定の方向性を持つように整列させて、電子線滅菌装置100に供給するものである。本実施形態では、整列機13は、ゴム栓2の凹部2cの中心軸が略水平方向であってゴム栓の供給方向に略垂直な方向を向くように、ゴム栓2を整列させる。
【0033】
電子線滅菌装置100は、ゴム栓2を、その凹部2cの中心軸が常に略水平方向を向く状態で落下させながら、ゴム栓2に、略水平方向からゴム栓2の全周囲にわたって電子線を照射するものである。この電子線滅菌装置100については後に詳述する。
【0034】
充填処理部30は、充填機(充填手段)31と、打栓機(打栓手段)32とを有する。かかる充填機31は、バイアル瓶滅菌処理部20から供給されたバイアル瓶に薬液を充填するものである。打栓機32は、充填機31によりバイアル瓶に薬液が充填された後、そのバイアル瓶の口部に、ゴム栓滅菌処理部10から供給されたゴム栓2を詰めるものである。かかる処理は自動で行われる。ところで、薬液の充填処理の際には、薬液が外界にさらされるため、製薬工場等では、充填処理部30の内部を最もきれいな環境にする必要がある。本実施形態では、充填機31及び打栓機32をアイソレータ内に収容することにより充填処理部30を構成している。アイソレータは、その内部と外部環境とを隔離する小型の密閉構造体であって、その内部の無菌性を維持する目的で使用されるものである。アイソレータの内部は、例えば過酸化水素蒸気等のガス滅菌剤によって滅菌される。尚、薬液は、外部に設けた無菌タンク40内に収容されており、その無菌タンク40から配管を通って充填処理部30内に供給される。
【0035】
次に、上述した薬液充填システムに用いられる電子線滅菌装置100について詳しく説明する。図3は本実施形態の電子線滅菌装置100の概略斜視図、図4はその電子線滅菌装置100の縦方向概略断面図、図5はその電子線滅菌装置100の横方向概略断面図、図6(a)はその電子線滅菌装置100の案内手段の概略平面図、図6(b)はその電子線滅菌装置100の案内手段の縦方向概略断面図、図7はその電子線滅菌装置100の供給速度調整手段を説明するための図、図8はその電子線滅菌装置100において電子線をゴム栓2に照射するときの様子を示す概略図である。
【0036】
かかる電子線滅菌装置100は、被処理物の滅菌処理に利用されるものであり、図3、図4、図5、図6及び図7に示すように、加速管(真空容器)110と、三つの電子線発生部120,120,120と、照射空間130と、三つの照射窓部140,140,140と、案内手段160と、供給速度調整手段170とを備えるものである。
【0037】
加速管110は、中空円筒形状に形成されており、その中空部111の中心軸が略鉛直方向を向くように設置されている。かかる加速管110は、例えばステンレスで形成されている。また、加速管110の高さは例えば60cm、その外径は例えば70cmである。中空部111は、ゴム栓2が通過(落下)する経路となるものであり、円筒形状に形成されている。
【0038】
各電子線発生部120は、電子線を発生させるためのものであり、図4及び図5に示すように、加速管110内に設けられている。各電子線発生部120は、熱電子を放出する棒状又は板状のフィラメント121と、フィラメント121を支持するガン構造体(不図示)と、フィラメント121で発生した熱電子をコントロールするグリッド122とを有する。フィラメント121は、図4に示すように、その長手方向が中空部111の中心軸に平行となるように配置されている。本実施形態では、図5に示すように、各電子線発生部120を、中空部111の中心軸の周りに略120度の角度間隔で配置している。電子線発生部120で発生した電子線は、加速管110内の空間(加速空間)で加速される。また、加速管110の内部は、電子が気体分子と衝突してエネルギーを失うことを防ぐため、及びフィラメント121の酸化を防止するため、真空ポンプ112により10−4〜10−5Paの真空に保たれている。
【0039】
照射空間130は、電子線をゴム栓2に照射する空間(照射領域)である。具体的には、中空部111内の空間のうち、照射窓部140,140,140に対応する空間である。この照射空間130は大気雰囲気となっている。ゴム栓2が中空部111内を落下し、照射空間130を通過している間に、そのゴム栓2に電子線が照射されることになる。
【0040】
照射窓部140は、電子線発生部110と同じ数だけ設けられている。各照射窓部140は、金属箔からなる窓箔141と、窓箔141を冷却すると共に窓箔141を支持する窓枠構造体(不図示)とを有する。窓箔141は、加速管110内の真空雰囲気と照射空間130内の大気雰囲気とを仕切るものであり、また窓箔141を介して照射空間130内に電子線を取り出すものである。かかる窓箔141は、図4及び図5に示すように、加速管110の内側面のうち当該電子線発生部120に対向する位置に設けられている。窓箔141の長手方向(上下方向)の長さは例えば20cmである。窓箔141に使用する金属としては、加速管110内の真空雰囲気を十分維持できる機械的強度があって、電子線を透過しやすいように比重が小さくて肉厚が薄く、しかも耐熱性に優れたものが望ましい。通常は、機械的な取扱いやすさから厚さ約13μmのチタン(Ti)箔が使用される。
【0041】
また、電子線滅菌装置110には、図4に示すように、フィラメント121を加熱して熱電子を発生させるための加熱用電源151と、フィラメント121とグリッド122との間に電圧を印加する制御用直流電源152と、グリッド122と窓箔141との間に電圧(加速電圧)を印加する加速用直流電源153とが設けられている。
【0042】
加熱用電源151によりフィラメント121に電流を通じて加熱するとフィラメント121は熱電子を放出し、この熱電子は、フィラメント121とグリッド122との間に印加された制御用直流電源152の制御電圧により四方八方に引き寄せられる。このうち、グリッド122を通過したものだけが電子線として有効に取り出される。そして、グリッド122から取り出された電子線は、グリッド122と窓箔141との間に印加された加速用直流電源153の加速電圧により加速管110内の加速空間で加速された後、窓箔141を突き抜け、照射空間130を落下するゴム栓2に照射される。
【0043】
本実施形態では、各電子線発生部120を中空部111の中心軸の周りに略120度の角度間隔で配置しており、各照射窓部140も中空部111の中心軸の周りに略120度の角度間隔で配置している。また、各電子線発生部120で発生した電子線は、窓箔141を通過する際に、窓箔141で拡散される。このため、三つの電子線発生部120で同時に電子線を発生させると、三つの窓箔141を通過した電子線は、照射空間130内に略均一に分布するようになる。すなわち、電子線は、照射空間130内の各高さ位置において、照射空間130の中心に向かってリング状に飛んでくる。このため、照射空間130を落下するゴム栓2に、略水平方向からゴム栓2の全周囲にわたって電子線を照射することができる。
【0044】
また、加速管110の内径(中空部111の直径)は10mmから60mmまでの範囲において任意に設定することができる。具体的には、加速管110の内側壁を交換することにより加速管110の内径の容易に変更することができる。実際、かかる加速管110の内径は、被処理物の大きさに応じて適切に設定しなければならない。例えば、加速管110の内径を被処理物の大きさよりも十分大きく設定すると、電子線が被処理物に照射されるまでに、電子線が減衰してしまうことがあり、これでは、被処理物を確実に殺菌・滅菌処理することができなくなってしまう。また、加速管110の内径を被処理物の大きさと略同じに設定すると、被処理物が照射空間130を落下する際に、被処理物が窓箔141に当たり、窓箔141を傷める危険性がある。このため、加速管110の内径は、例えば、被処理物の大きさの1.5倍〜3倍程度に設定することが望ましい。
【0045】
本実施形態の電子線滅菌装置100では、低エネルギー電子線を実現するために、加速電圧を100kV以上300kV以下の範囲において設定することができる。加速電圧は、被処理物の材質に応じて適切に設定する必要がある。例えば、加速電圧が高い場合、被処理物の材質によっては、電子線が被処理物の表面部だけでなく、その内部にも到達し、被処理物の内部の性質を改変してしまうおそれがあるからである。
【0046】
また、被処理物が照射空間130を落下する際に、被処理物に電子線が照射されるが、被処理物が受けるエネルギーの量は吸収線量という値で表される。適切な吸収線量を被処理物に与えるためには、具体的には、電子線滅菌装置100のビーム電流を制御することになる。通常は、加熱用電源151と加速用直流電源153とを所定の値に設定し、制御用直流電源152を可変にすることにより、ビーム電流の調整を行っている。一般に、電子線滅菌装置100のビーム電流の範囲は数ミリアンペアから1アンペア程度である。
【0047】
尚、フィラメント121及び照射窓部140についてその上下方向の長さを変えることにより、照射空間130を拡大又は縮小するようにしてもよい。照射空間130を大きくすることにより、より多くの吸収線量を被処理物に与えることができる。
【0048】
案内手段160は、ゴム栓2の姿勢を、その凹部の中心軸が略水平方向を向く状態に保持したまま、ゴム栓2を中空部111の上方の所定位置に案内するものである。図3及び図6に示すように、案内手段160の下端部は、中空部111の上端を塞ぐようにして、加速管110の上面に取り付けられている。また、案内手段160の上端部には、整列機13から供給されたゴム栓2を内部に導くための入口部161が設けられている。ゴム栓2は、整列機13で整列させられた姿勢、すなわちゴム栓2の凹部の中心軸が略水平方向を向いている姿勢のままでないと、入口部161内に入り込むことができない。
【0049】
案内手段160の内部には、ゴム栓2を中空部111に案内するための案内経路162が形成されている。この案内経路162の左右両側には壁部が設けられている。かかる二つの壁部の間の間隔は、ゴム栓2が左右に倒れることなく、入口部161に入り込んだときの姿勢を保持することができる程度に設定されている。また、案内経路162の中央部には、傾斜が付けられている。この傾斜は、ゴム栓2が滑らずに転がることができるような角度に設定される。したがって、入口部161内に入り込んだゴム栓2は、その凹部の中心軸が略水平方向を向く姿勢のまま、転がりながら、案内経路162にしたがって中空部111の上方に案内される。
【0050】
尚、一般に、入口部161及び案内経路162の形状や大きさは、被処理物の形状や大きさ等に応じて決められる。また、案内手段160を中空部111からそのまま上方に引き伸ばさず、案内手段160の案内経路162に傾斜を設けているので、電子線照射時に二次的に発生するX線が外部に漏出するのを防止することができる。
【0051】
こうして、ゴム栓2は、その凹部2cの中心軸が略水平方向を向く姿勢のまま中空部111の上方に案内された後、図8に示すように、中空部111内に落下していくことになる。かかる落下の間、ゴム栓2の姿勢は、その案内時の姿勢のまま維持される。また、ゴム栓2は、案内経路162内で転がっているので、落下の際、その凹部2cの中心軸の周りに回転している。そして、ゴム栓2が照射空間130を通過する際に、ゴム栓2には、略水平方向からゴム栓2の全周囲にわたって電子線が照射される。したがって、ゴム栓2の凹部2cの内面を含め、ゴム栓2の表面全体に略均一に電子線を照射することができる。
【0052】
供給速度調整手段170は、ゴム栓2を所望の間隔で中空部111の上方の所定位置に供給するためのものであり、図7に示すように、スプロケット171と、そのスプロケット171を駆動するための駆動手段(不図示)とを有する。かかる供給速度調整手段170は、整列機13の後部に設けられる。スプロケット171は、整列機13内に蓄積されたゴム栓2を一個ずつ案内手段160の入口部161に供給するものである。このスプロケット171の外周には、五つの凸部171aが設けられている。スプロケット171は、凸部171aが整列機13内に突出するようにして、回転自在に軸支されている。ゴム栓2は、隣り合う凸部171a間における凹部に入り込むことになる。かかるスプロケット171を駆動手段によって所望の回転数で回転させることにより、ゴム栓2を案内手段160(照射空間130)に単位時間当たりに供給する個数(供給速度)を調整することができる。スプロケット171の回転数は、ゴム栓洗浄機11や乾燥機12等の処理能力に応じて決められる。例えば、スプロケット171を1秒間に1回転させることにより、ゴム栓2を1分間に300個、案内手段160に供給することができる。このように、供給速度調整手段170を設けたことにより、ゴム栓2を一個ずつ一定の間隔で確実に照射空間130に供給することができる。
【0053】
尚、ここでは、供給速度調整手段170を整列機13に設けた場合について説明したが、供給速度調整手段170を案内手段160に設けるようにしてもよい。この場合、供給速度調整手段170の取り付け位置は、案内手段160のどこであってもよい。
【0054】
ところで、電子線滅菌装置100で滅菌処理が施されたゴム栓2は、例えば、バスケットで捕獲された後、コンベアでアイソレータ内に搬送される。かかる滅菌処理が施されたゴム栓2は、無菌状態のまま、アイソレータ内に搬送しなければならない。このため、本実施形態では、アイソレータ内部の滅菌処理に用いられる過酸化水素蒸気を、ゴム栓2の搬送路を介して電子線滅菌装置100の中空部111内に入り込ませることにより、電子線滅菌装置100の中空部111及び電子線滅菌装置100からアイソレータまでの搬送路を滅菌することにしている。このとき、かかる過酸化水素蒸気の処理が問題となるが、この問題に対しては次のような対策を採っている。すなわち、例えば案内手段160の所定箇所に、中空部111内に入り込んだ過酸化水素蒸気をアイソレータに戻すための第一経路と、その過酸化水素蒸気を外部に排出するための第二経路とを形成する。また、各経路には、その開閉を行う開閉手段を設ける。そして、電子線滅菌装置100において滅菌処理が行われていないときには、第一経路を開くと共に第二経路を閉じることにより、中空部111内に入り込んだ過酸化水素蒸気を、第一経路を介してアイソレータ内に戻す。一方、電子線滅菌装置100において滅菌処理が行われているときには、過酸化水素蒸気が電子線からのエネルギーを受けて、オゾンが発生する。このため、第一経路を閉じると共に第二経路を開くことにより、その発生したオゾンを含むガスを、第二経路を介して外部に排出する。
【0055】
次に、本実施形態の電子線滅菌装置100に関して行われたいくつかの実験について説明する。
【0056】
最初に、本発明者等は、ゴム栓2が中空部111内をどのような姿勢で落下しているのかを調べる試験を行った。この試験は、図2に示す全打栓用のゴム栓2と半打栓用のゴム栓2とについて行われた。各ゴム栓2を案内手段160で案内して落下させた場合に、当該ゴム栓2の状態を高速度カメラで撮影した。この試験の結果、いずれのゴム栓2も、中空部111を通過している間、すなわち案内手段160を離れてから約60cm落下する間は、凹部の中心軸が略水平方向を向いた姿勢を保持していることを確認した。ここで、本実施形態では、案内手段160の案内経路162に傾斜を設けて、ゴム栓2を転がらせて中空部111の上方に導いているので、ゴム栓2は、その凹部の中心軸の周りに回転しながら落下する。ゴム栓2が中空部111の上方に案内された時の姿勢を長い間安定して維持することができるのは、落下の際にゴム栓2が回転していることにも起因していると考えられる。
【0057】
また、本発明者等は、各ゴム栓2を、その凹部の中心軸が略水平方向を向く状態で静止させ、その後に、自由落下させた場合に、当該ゴム栓2の状態を高速度カメラで撮影した。この試験の結果、いずれのゴム栓2も、少なくとも約50cm落下する間は、凹部の中心軸が略水平方向を向いた姿勢を保持していることを確認した。すなわち、ゴム栓2をその凹部の中心軸の周りに回転させなくとも、ゴム栓2は、照射空間130を通過するまでは、凹部の中心軸が略水平方向を向いた姿勢を保持することができる。
【0058】
本実施形態の電子線滅菌装置100では、落下時におけるゴム栓2の姿勢はとても重要である。例えば、ゴム栓2を、その凹部の中心軸が上方向を向いた状態で落下させると、ゴム栓2には、電子線の照射方向に対して電子線が当たらない陰の部分ができてしまう。このため、ゴム栓2の表面全体に電子線を照射することができず、ゴム栓を滅菌することできない。本実施形態では、ゴム栓2が一個ずつ中空部111内を落下するときに、どのゴム栓2も、その凹部の中心軸が略水平方向を向いた姿勢を保持することができるので、ゴム栓2を個別に確実に滅菌することができるのである。
【0059】
次に、本発明者等は、本実施形態の電子線滅菌装置100による滅菌処理の効果を確認する実験を行った。この実験は、図2に示す全打栓用のゴム栓2と半打栓用のゴム栓2とについて行われた。各ゴム栓2の各部には、所定の指標菌(Bacillus pumilus)を植菌したアルミ箔を貼り付けた。ここで、アルミ箔に塗抹する菌の数は10 のオーダである。そして、それぞれのゴム栓2について次の手順により実験を行った。まず、かかるアルミ箔を貼り付けたゴム栓2を、電子線滅菌装置100の案内手段160を介して中空部111内に落下させることにより、ゴム栓2に電子線を照射した。ここで、電子線の照射条件を、加速電圧を250kV、ビーム電流を5mAとしている。次に、ゴム栓2から菌を捕集し、その生菌数を測定した。この実験の結果、いずれのゴム栓2についても、生菌が確認されなかった。したがって、本実施形態の電子線滅菌装置100を用いると、ゴム栓2を十分に滅菌することができることが確認された。これは、ゴム栓2の凹部の内面を含め、ゴム栓2の表面全体に電子線が略均一に照射されていることを裏付けている。
【0060】
次に、図1に示す薬液充填システムにおける処理の手順について説明する。
【0061】
この薬液充填システムでは、バイアル瓶とゴム栓2とは個別に滅菌処理される。バイアル瓶は、バイアル瓶洗浄機21によって洗浄された後、乾熱滅菌トンネル22を通過することにより滅菌される。こうして滅菌処理が施されたバイアル瓶は、アイソレータ内の充填機31に供給される。
【0062】
一方、ゴム栓2は、まず、ゴム栓洗浄機11によって洗浄された後、乾燥機12によって乾燥される。かかる処理は、ゴム栓2がコンベアで搬送されている間に行われる。ゴム栓2は、コンベアでの搬送中、決まった方向性をもたず、任意の姿勢をとっている。
【0063】
乾燥機12で乾燥されたゴム栓2は、コンベアで搬送されたまま、整列機13に供給される。そして、ゴム栓2は、整列機13によってゴム栓2の向きを整列させられて、電子線滅菌装置100の案内手段160に送られる。このとき、ゴム栓2は、供給速度調整手段170により所定の間隔で案内手段160に供給される。
【0064】
次に、ゴム栓2は電子線滅菌装置100によって滅菌処理される。すなわち、電子線滅菌装置100の案内手段160は、ゴム栓2の姿勢を、その凹部の中心軸が略水平方向を向く状態に保持したまま、中空部111の上方に案内する。そして、ゴム栓2は、その凹部の中心軸が略水平方向を向く状態で中空部111内を落下する。ゴム栓2が照射空間130を通過する際、ゴム栓2には、略水平方向からゴム栓2の全周囲にわたって電子線が照射される。これにより、ゴム栓2の凹部の内面を含めて、ゴム栓2の表面全体に略均一に電子線を照射することができるので、ゴム栓2を完全に滅菌することができる。こうして、電子線による滅菌処理が施されたゴム栓2は、アイソレータ内の打栓機32に供給される。
【0065】
こうして、滅菌処理が施されたゴム栓2及びバイアル瓶がアイソレータ内に供給されると、充填機31は、バイアル瓶に薬液を充填する処理を行い、その後、打栓機32は、そのバイアル瓶の口部にゴム栓を詰める処理を行う。
【0066】
本実施形態の電子線滅菌装置では、ゴム栓を、その凹部の中心軸が略水平方向を向く状態のまま中空部内に落下させると共に、そのゴム栓に、略水平方向からゴム栓の全周囲にわたって電子線を照射する。この落下の間、ゴム栓はその凹部の中心軸が略水平方向を向く姿勢を維持しているので、一回の処理で、ゴム栓の表面全体に電子線を略均一に照射することができる。したがって、ゴム栓の全表面に電子線を確実に照射することができ、ゴム栓の滅菌処理を効率よく行うことができる。特に、ゴム栓を、その凹部の中心軸の周りに回転させながら、中空部内に落下させることにより、ゴム栓は落下の際の姿勢を長い間安定して維持することができる。
【0067】
また、ゴム栓を所望の間隔で中空部の上方の所定位置に供給する供給速度調整手段を設けたことにより、ゴム栓を一個ずつ一定の間隔で確実に照射空間に供給することができる。
【0068】
更に、三つの電子線発生手段を中空部の中心軸の周りに略120度の角度間隔で配置したことにより、ゴム栓に、略水平方向からゴム栓の全周囲にわたって電子線を効率よく照射することができる。
【0069】
本実施形態の電子線滅菌装置を適用した薬液充填システムでは、ゴム栓を個別に滅菌することができるので、従来の湿熱滅菌法では実施できなかったゴム栓についての滅菌バリデーションを個別にとることができる。ここで、滅菌バリデーションとは、当該ゴム栓を滅菌するための方法や条件を定めたものである。滅菌バリデーションが決まれば、その滅菌バリデーションにしたがって処理を行うことにより、ゴム栓を必ず滅菌することができるということが保証される。
【0070】
また、かかる薬液充填システムでは、ゴム栓についての洗浄、乾燥、滅菌の各処理、さらにはアイソレータ内における薬液の充填及びゴム栓のキャッピングの処理を、連続的に自動で行うことができる。このため、薬液充填システムをクラス10000あるいはクラス100000の部屋に設置することも可能である。また、充填機及び打栓機をアイソレータ内に収容することにより、例えばクリーンルーム内に収容した場合に比べて、大幅なコストダウンを図ることができる。
【0071】
尚、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
【0072】
例えば、上記の実施形態では、電子線滅菌装置において、電子線発生部及び照射窓部を三組設けた場合について説明したが、電子線発生部及び照射窓部は四組以上設けるようにしてもよい。
【0073】
また、上記の実施形態では、薬液充填システムにおいて、充填機及び打栓機をアイソレータ内に収容することにより充填処理部を構成した場合について説明したが、例えば、クリーンルームを用いて充填処理部を構成してもよい。この場合、クリーンルームの中に設けたラミナーブース内に充填機及び打栓機を収容する。但し、クリーンルームを用いた場合には、作業者は、入室又は退出する度に、何度も着替えをしなければならない。
【0074】
更に、上記の実施形態では、電子線滅菌装置を用いてゴム栓を処理する場合について説明したが、このゴム栓としては、どのような材質のもの、あるいはどのような大きさのものを用いてもよい。また、電子線滅菌装置で処理する被処理物としては、凹部を有する立体形状のものであれば、ゴム栓以外のものを用いることができる。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る電子線滅菌装置によれば、被処理物を、その凹部の中心軸が略水平方向を向く状態のまま中空部内に落下させると共に、その被処理物に、略水平方向から被処理物の全周囲にわたって電子線を照射する。この落下の間、被処理物はその凹部の中心軸が略水平方向を向く姿勢を維持しているので、一回の処理で、被処理物の表面全体に電子線を略均一に照射することができる。したがって、被処理物の全表面に電子線を確実に照射することができ、被処理物の滅菌処理を効率よく行うことができる。特に、被処理物を、その凹部の中心軸の周りに回転させながら、中空部内に落下させることにより、被処理物は落下の際の姿勢を長い間安定して維持することができる。
【0076】
また、被処理物を所望の間隔で中空部の上方の所定位置に供給する供給速度調整手段を設けたことにより、被処理物を一個ずつ一定の間隔で確実に当該所定位置に供給することができる。更に、三つの電子線発生手段を中空部の中心軸の周りに略120度の角度間隔で配置したことにより、被処理物に、略水平方向から被処理物の全周囲にわたって電子線を効率よく照射することができる。
【0077】
本発明の電子線滅菌方法によれば、上記と同様に、被処理物の表面全体に電子線を確実に照射し、被処理物の滅菌処理を効率よく行うことができる。
【0078】
本発明の滅菌処理システムによれば、上記の電子線滅菌装置を用いたことにより、被処理物を個別に滅菌することができる。このため、滅菌バリデーションを個別にとることができるので、かかる滅菌バリデーションに基づいて被処理物の確実な滅菌が可能となる。また、かかる滅菌処理システムでは、被処理物についての洗浄、乾燥、滅菌の各処理を、連続的に自動で行うことができる。このため、滅菌処理システムをクラス10000あるいはクラス100000の部屋に設置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である滅菌処理システムとしての薬液充填システムの概略ブロック図である。
【図2】その薬液充填システムにおいて滅菌処理されるゴム栓の概略斜視図である。
【図3】本実施形態の電子線滅菌装置の概略斜視図である。
【図4】その電子線滅菌装置の縦方向概略断面図である。
【図5】その電子線滅菌装置の横方向概略断面図である。
【図6】(a)はその電子線滅菌装置の案内手段の概略平面図、(b)はその電子線滅菌装置の案内手段の縦方向概略断面図である。
【図7】その電子線滅菌装置の供給速度調整手段を説明するための図である。
【図8】その電子線滅菌装置において電子線をゴム栓に照射するときの様子を示す概略図である。
【符号の説明】
2 ゴム栓
2a 基部
2b 凸部
2c 凹部
2d 突出部
10 ゴム栓滅菌処理部
11 ゴム栓洗浄機
12 乾燥機
13 整列機
20 バイアル瓶滅菌処理部
21 バイアル瓶洗浄機
22 乾熱滅菌トンネル
30 充填処理部
31 充填機
32 打栓機
40 無菌タンク
100 電子線滅菌装置
110 加速管
111 中空部
112 真空ポンプ
120 電子線発生部
121 フィラメント
122 グリッド
130 照射空間
140 照射窓部
141 窓箔
151 加熱用電源
152 制御用直流電源
153 加速用直流電源
160 案内手段
161 入口部
162 案内経路
170 供給速度調整手段
171 スプロケット
171a 凸部

Claims (9)

  1. 中空部の中心軸が略鉛直方向を向くように設置された中空円筒状の真空容器と、
    前記真空容器内に設けられており、電子線を発生させるための少なくとも三つの電子線発生手段と、
    前記真空容器の内側面のうち前記各電子線発生手段に対向する位置に設けられており、当該電子線発生手段で発生した電子線を前記中空部内に取り出すための窓部と、
    凹部を有する立体形状の被処理物の姿勢を、前記凹部の中心軸が略水平方向を向く状態に保持したまま、前記被処理物を前記中空部の上方の所定位置に案内する案内手段と、
    を備え、前記案内手段により前記所定位置に案内された前記被処理物を、その案内時の姿勢のまま前記所定位置から前記中空部内に落下させると共に、前記各窓部を介して前記中空部内に取り出された電子線を、前記被処理物に、略水平方向から前記被処理物の全周囲にわたって照射することを特徴とする電子線滅菌装置。
  2. 前記被処理物を、前記凹部の中心軸の周りに回転させながら、前記中空部内に落下させることを特徴とする請求項1記載の電子線滅菌装置。
  3. 前記被処理物を所望の間隔で前記所定位置に供給するための供給速度調整手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の電子線滅菌装置。
  4. 前記電子線発生手段を三つ設け、前記各電子線発生手段を前記中空部の中心軸の周りに略120度の角度間隔で配置したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の電子線滅菌装置。
  5. 前記被処理物は、医薬品容器に用いられるゴム栓であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の電子線滅菌装置。
  6. 凹部を有する立体形状の被処理物を滅菌する滅菌処理システムであって、
    前記被処理物を洗浄する洗浄手段と、
    前記洗浄手段で洗浄された前記被処理物を乾燥する乾燥手段と、
    前記乾燥手段で乾燥された前記被処理物を、所定の方向性を持つように整列させて搬送する整列手段と、
    前記整列手段で搬送された前記被処理物に電子線を照射することにより前記被処理物を滅菌する請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の電子線滅菌装置と、
    を備えることを特徴とする滅菌処理システム。
  7. 前記被処理物は、医薬品容器に用いられるゴム栓であることを特徴とする請求項6記載の滅菌処理システム。
  8. 予め滅菌処理が施された前記医薬品容器に薬剤を充填する充填手段と、前記薬剤が充填された前記医薬品容器の口部に、前記電子線滅菌装置で処理された前記ゴム栓を詰める打栓手段とを備えることを特徴とする請求項7記載の滅菌処理システム。
  9. 前記充填手段及び/又は前記打栓手段をアイソレータ内に収容したことを特徴とする請求項8記載の滅菌処理システム。
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