JP4379758B2 - 近接場顕微鏡 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は近接場顕微鏡、特に測定結果からノイズの影響を除去する機構を持つ近接場顕微鏡の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な光学顕微鏡は、光の波長より小さなものは観察することができず、その分解能には限界がある。一方、電子顕微鏡等では、分解能は大きく向上させることができるものの、大気中、あるいは溶液中での動作は極めて困難であり、電子顕微鏡等の高分解能顕微鏡は特に生体試料を扱う分野では必ずしも満足のいくものではなかった。
これに対し、近年一般的な光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡とは異なる原理に基づく近接場顕微鏡が開発され、その応用が期待されている。この近接場顕微鏡は、いわゆる近接場光を検出するものである。すなわち、近接場顕微鏡は以下のような原理で被測定試料を観察するのである。
【0003】
被測定試料に光を照射すると、被測定物表面付近には近接場光と呼ばれる表面波が発生する。この表面波は物体表面に光の波長以内の距離領域に局在している。
そこで、先の鋭いプローブを近接場光の場の中に差し込んで近接場光を散乱させ、その散乱光強度を測定することにより波長も小さい微小領域でのスペクトルを得ることができる。または、プローブをその共振周波数で励振し、プローブと被測定物表面が近接したときにその振幅が減少することを利用して、被測定物表面‐プローブ間の距離制御を行うことができる。
従って、プローブの振幅が一定となるようにしつつプローブの走査を行うことにより、該プローブの先端位置は被測定物の凹凸を的確に反映するものとなり、しかもプローブ先端は近接場光の場に存在するのみであり被測定物そのものには接触していないため、試料に対して非接触、非破壊でかつ光の波長の値より小さいものを観察できるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし被測定物表面にも微小な凹凸があり、この凹凸の影響もあって、近接場顕微鏡であっても測定結果に試料からの反射光などからなるバックグラウンドを主とするノイズが含まれるものであった。
また波長限界を超えた空間分解能を実現できる近接場技術は、主に光の波長より小さな範囲で、より精密な被測定試料像を観察するのに用いられていた。このため主に可視光レーザーが用いられていた。
【0005】
また波長限界を超えた空間分解能での被測定物の観察像を採取することが目的とされていたため、単一波長の赤外光が使用されたものは存在したが、赤外によるスペクトル測定が可能な装置は存在しなかった。しかし、赤外光は波長が長いため、近接場によって波長限界を超える応用が可能であれば非常に有用である。また赤外光を用いて近接場スペクトルを採取することができれば、光の波長より小さな範囲でのスペクトル測定が可能となり、より詳細に被測定試料の解析が行い得る。
【0006】
本発明は前記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、測定結果からノイズの影響を除去することができる近接場顕微鏡を提供するとともに、光源として赤外光源を用い、近接場技術を用いて光の波長より小さな範囲での近接場赤外スペクトル測定を可能とする赤外近接場顕微鏡を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明にかかる近接場顕微鏡は、近接場光を散乱させるためのプローブと、試料または前記プローブに光を照射するための光源を含む光照射手段と、前記プローブによって散乱される試料の情報を含んだ光を採取し、検出するための光採取手段と、を有する近接場顕微鏡において、前記光の照射によって発生する近接場光の場から前記試料またはプローブを隔離または近接場光の場の浅い位置に配置して、前記光採取手段によってノイズを検出し、前記光の照射によって発生する近接場光の場に前記試料またはプローブを深く挿入して、前記光採取手段によって光強度を検出し、前記光強度からノイズを差し引いた測定結果を算出するための算出手段を有することを特徴とする。
【0008】
また本発明の近接場顕微鏡において、該光照射手段によって試料またはプローブに照射される光、または前記プローブによって散乱される試料の情報を含んだ光を特定波長範囲の光に分光する分光手段と、該光採取手段によって採取される各波長ごとの測定データを記憶し、解析する解析手段を有することによって、試料の近接場スペクトルを採取可能なことが好適である。
また本発明の近接場顕微鏡において、該分光手段には干渉計が使用されており、前記干渉計は往復運動する移動鏡が含まれており、前記移動鏡の往路で、近接場光の場に該試料またはプローブを深く挿入して、該光採取手段によって光強度を検出し、移動鏡の復路で、近接場光の場から前記試料またはプローブを隔離または近接場光の場の浅い位置に配置して、前記光採取手段によってノイズを検出することが好適である。
【0009】
また本発明の近接場顕微鏡において、光照射手段によって照射される光が赤外光であることが好適である。
また本発明の近接場顕微鏡において、光照射手段に含まれる光源が高温発熱体であることが好適である。
また本発明の近接場顕微鏡において、試料またはプローブに光を照射するための光源が波長可変レーザーであることが好適である。
【0010】
また本発明の近接場顕微鏡において、該分光手段が、波長可変フィルタ、または任意の波長幅を持つバンドパスフィルタ、フーリエ変換型分光器または分散型分光器のいずれかによって構成されていることが好適である。
また本発明の近接場顕微鏡において、該光照射手段が試料または該プローブに直接光を照射して近接場光を発生させる反射照明及び/または試料に高屈折率媒質のプリズムを接触させ、前記プリズムに光を照射して試料とプリズムの境界で光を全反射させて試料表面に近接場光を発生させる全反射照明によって照明を行うことが好適である。
また本発明の近接場顕微鏡において、該光照射手段が該反射照明または該全反射照明のどちらか一方の照明に切り替えることで選択可能なことが好適である。
【0011】
また本発明の近接場顕微鏡において、該光照射手段が少なくとも光源とカセグレン鏡によって構成されていることが好適である。
また本発明の近接場顕微鏡において、全反射照明で使用される該全反射プリズムの高屈折率媒質の形状が半球または半球類似形状であり、前記プリズム平面部の中心にカセグレン鏡の焦点が結像させていることが好適である。
また本発明の近接場顕微鏡において、全反射照明で使用される該全反射プリズムの高屈折率媒質が、ZnSe、KRS−5、Ge、Si、ダイヤモンドのいずれかの材料で構成されていることが好適である。
【0012】
また本発明の近接場顕微鏡において、該光採取手段が試料の情報を含んだ光を集光するカセグレン鏡と、前記カセグレン鏡によって集光された光を検出する検出器によって構成されていることが好適である。
また本発明の近接場顕微鏡において、試料またはプローブに照射する光を、光源と試料またはプローブの間において断続変調することが好適である。
また本発明の近接場顕微鏡において、該カセグレン鏡と該検出器の間に切り替え反射鏡またはダイクロック鏡を配置し、試料及びプローブを目視観察可能に構成されていることが好適である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を用いて本発明を詳細に説明する。
図1に本発明の一実施形態の概要構成図を記載する。同図に示すように本発明における近接場顕微鏡2は、近接場光を散乱させるためのプローブ4と、試料6または前記プローブ4に光を照射するための光源8を含む光照射手段10と、前記プローブ4によって散乱される試料の情報を含んだ光12を採取し、検出するための光採取手段14と、算出手段16とを有する。
【0014】
そして、図1に示す近接場顕微鏡2は、光の照射によって発生する近接場光の場から前記試料6またはプローブ4を隔離または近接場光の場の浅い位置に配置して、前記光採取手段14によってノイズを検出し、前記光の照射によって発生する近接場光の場に前記試料6またはプローブ4を深く挿入して、前記光採取手段14によって光強度を検出して、算出手段16によって、前記光強度からノイズを差し引いた測定結果を算出するように構成されている。
【0015】
詳しい動作説明図を図2に記載する。同図では、試料表面に光を照射して近接場光を発生させ、前記近接場光の場にプローブを挿入して測定を行う場合を例に挙げて説明する。
【0016】
図2(a)に示すように、試料6表面は非常に微小な凹凸があり、図2(b)に示すように、光照射手段によって試料6表面に光18が照射されると、近接場光の場20が試料6表面に形成されるのであるが、プローブ4が近接場光の場20に挿入されていないにもかかわらず、光採取手段14ではわずかながらにバックグラウンドとしてのノイズ22が検出される。
このため、光の照射によって発生する近接場光の場20からプローブ4を隔離または近接場光の場の浅い位置に配置して、光採取手段14によってノイズ22を検出しておく。
【0017】
そして図2(c)に示すように、光の照射によって発生する近接場光の場20にプローブ4を深く挿入して、光採取手段14によって光強度の検出を行う。この光強度の中には、試料の情報を含む信号光24とともにノイズ22も含まれている。よって、この図2(c)の状態で検出される光強度から図2(b)の状態で検出したノイズの大きさを算出手段16によって差し引くことで、正確な測定結果が得られるようになる。
【0018】
なお、近接場顕微鏡では、このように図2に示したような試料6表面に近接場光を発生させるものだけでなく、図3に示すように、プローブに発生させることもある。
【0019】
図3は近接場光の場をプローブに発生させた場合の動作説明図である。
同図に示すように、光の照射によってプローブに近接場光の場を発生させた場合には、同図(a)に示すように近接場光の場26から試料6を隔離または近接場光の場の浅い位置に配置して、光採取手段14によってノイズ22を検出し、続いて前記光の照射によって発生する近接場光の場に前記試料6を深く挿入して、前記光採取手段14によって光強度を検出して、算出手段16によって、前記光強度からノイズを差し引いた信号光24の測定結果を算出するのである。
【0020】
このような本発明の近接場顕微鏡において、該光照射手段によって試料またはプローブに照射される光、または前記プローブによって散乱される試料の情報を含んだ光を特定波長範囲の光に分光する分光手段と、該光採取手段によって採取される各波長ごとの測定データを記憶し、解析する解析手段を有することによって、試料の近接場スペクトルを採取可能なことが好適である。
【0021】
図1に記載した本発明の一実施形態においては、光照射手段10が光源8と分光器28から構成されており、光源8からの光を分光器28を通して、特定範囲の波長の光が試料またはプローブに照射されるように構成されている。また解析手段では試料またはプローブに照射される波長とともに光採取手段によって検出される光強度を記憶することによって試料の近接場スペクトルの測定結果を得ることができる。
【0022】
本実施形態においては算出手段16がコンピュータによって構成されており、解析手段もこのコンピュータが兼ねている。そして測定結果の記憶は前記コンピュータのハードディスクに解析可能な状態で記録されるようになっている。またこのコンピュータは分光器28及び光採取手段14である検出器、及びプローブの振動や動作を制御するプローブ制御手段30と双方向で通信可能となっており、分光器、検出器、及びプローブ制御手段の制御、管理も行うことができる。
【0023】
このような構成によって試料の近接場スペクトルを得ることが可能となるとともに、実験の測定条件や、各動作部の制御、管理を緻密に行うことができるため、測定結果の精度をあげることが可能となる。
【0024】
なお、本発明では算出手段としてコンピュータを用いているが、算出手段としてはこのような電子計算機を使用してもよいし、回路構成によって、ノイズを除去した信号をコンピュータに送るように構成してもよく、算出手段の構成に関する限定は特に無い。
【0025】
また、図1では分光した光を試料またはプローブに照射する構成例を示したが本発明はこれに限られるものでなく、分光されていない連続光を試料またはプローブに照射し、試料の情報を含む光を分光して検出する構成であっても同等の効果を得ることが可能である。
【0026】
またこのように分光手段を有する構成において、該分光手段に干渉計が使用されている場合、前記干渉計の移動鏡の往路において、近接場光の場に該試料またはプローブを深く挿入して、該光採取手段によって光強度を検出し、移動鏡の復路において、近接場光の場から前記試料またはプローブを隔離または近接場光の場の浅い位置に配置して、前記光採取手段によってノイズを検出することが好適である。
【0027】
このように分光手段に干渉計が用いられている場合、プローブの動作を干渉計の移動鏡の動作と同期させることによって、測定に要する所要時間を、単純にノイズと試料の情報を含む光を検出してこれらの差をとる方法と比較しておよそ半分に短縮することが可能となる。
【0028】
また本発明においては、光照射手段によって照射される光が赤外光であることが好適である。赤外光は光波の中でも波長が長く、波長限界を超えて観測を行い得る近接場顕微鏡に用いることによって、赤外光を用いて、より分解能を向上させることができる。
【0029】
なお、このような赤外光を用いる場合では、光照射手段に含まれる光源が高温発熱体であることが好適である。このような光源を用いれば装置の構成を単純化できるとともに、コストを低く抑えることが可能となる。また、試料またはプローブに光を照射するための光源が波長可変レーザーであってもよい。このような波長可変レーザーを用いれば測定精度の向上が期待できる。
【0030】
本発明において、該分光手段としては、波長可変フィルタ、または任意の波長幅を持つバンドパスフィルタ等を使用することが可能である。このようなフィルタで分光手段が形成されていれば、装置の構成を簡易化できる上、コストを低くすることが可能である。
【0031】
また光源としてフーリエ変換型分光器または分散型分光器等を用いてもよい。このような分光器を使用することによって、より測定精度を向上させることが可能である。
【0032】
なお本発明においてフーリエ変換型分光器以外の分光手段を使用するときは、試料またはプローブに照射する光を、光源と試料またはプローブの間において断続変調することが好適である。このように構成すると、変調された光が試料またはプローブに照射されることとなり、近接場光も変調される。よって、試料の情報を含む光の検出が簡単に行えるようになる。
【0033】
本発明の近接場顕微鏡における、近接場光の場を発生させる照明方法としては次のようなものが考えられる。図4に本発明で用いられ得る近接場光の場を発生させるための照明方法の説明図を記載する。
【0034】
図4(a)に示す方法は、試料6に全反射プリズム32を密着させ、前記密着部分に光を照射し、プリズム32と試料6の境界で光を全反射させ、試料6表面において近接場光の場20を発生させるものである。本明細書ではこの照明方法を全反射照明と呼んでいる。
【0035】
図4(b)に示す方法では、試料6に直接光を照射し、試料6表面において近接場光の場20を発生させるものである。本明細書ではこの照明方法を反射照明と呼んでいる。
【0036】
図4(c)に示す方法では、プローブ4先端に近接場光の場20を発生させるものである。この方法においては図4(d)に示すようにプローブが導光性材料34によって構成されており、その表面を金属36によって覆われている。このような構成により、導光性材料34中を進んできた光は表面を覆う金属36に照射され、前記金属36表面に近接場光の場20が形成される。そしてプローブの先端には金属36に覆われていない、極微小の開口が形成されており、前記開口より近接場光の場が外部に漏れ出し、プローブ先端部に近接場光の場20が形成されるのである。
【0037】
なお本発明の近接場顕微鏡において、該光照射手段が該反射照明または該全反射照明のどちらか一方の照明に切り替えることで選択可能なことが好適である。
図5に本発明の一実施形態における照明切り替え機構の構成例を示す。
【0038】
同図(a)に示すように、本発明の照明機構では、光照射手段が光源を含む光照射装置38と、凹面鏡40と凸面鏡42からなるカセグレン鏡からなっており、試料上に直接光を照射するように構成されている。また光採取手段は凹面鏡44と凸面鏡46からなるカセグレン鏡と検出器48からなっている。そして光照射手段による光の照射によって被測定試料表面には近接場光が発生し、プローブ4によって近接場光は散乱され、試料上の近接場光へのプローブ挿入位置に焦点が調整された光採取手段によって近接場光が測定されるのである。
【0039】
このような反射照明を行う装置において、全反射照明に切り替える際には光照射手段の配置位置を変更可能に装置を構成しておき、必要に応じて図5(b)のように光照射手段の配置位置を変更して、試料と密着するようにステージに備えられた全反射プリズム50の中心に凹面鏡40と凸面鏡42からなるカセグレン鏡の焦点が結像されるように、光照射手段そのものを再配置させるものがあげられる。
【0040】
またその他の構成例としては、図5(c)に示すように光照射装置38、凹面鏡40と凸面鏡42からなるカセグレン鏡と反射鏡54、及び凹面鏡60と凸面鏡58からなるカセグレン鏡と反射鏡56は固定されており、回転鏡52によって、反射照明か全反射照明かを切り替え可能に構成してもよい。
【0041】
このように切り替え可能としておくことによって、試料の性質によって測定に有利な照明方法を選択することが可能となる。なお本発明の照明方法はここに示した装置構成によって実現し得るもののみに限られるものでは無い。
【0042】
本発明の近接場顕微鏡において、全反射照明で使用される該全反射プリズムの高屈折率媒質の形状が半球または半球類似形状であり、前記プリズム平面部の中心にカセグレン鏡の焦点が結像させていることが好適である。
【0043】
このような形状の全反射プリズムを使用することによって、プリズムへの入射可能方向が非常に広くなるとともに、平面部での試料密着面積が増し、好適に全反射可能とできる。
また、プリズム平面部の中心にカセグレン鏡の焦点が結像させることで、好適に全反射照明による近接場光を発生させることができるとともに、安定した近接場光を発生させることが可能となる。
【0044】
なお本発明の近接場顕微鏡において、光源に赤外光源を使用しているのであれば、全反射照明で使用される該全反射プリズムの高屈折率媒質が、ZnSe、KRS−5、Ge、Si、ダイヤモンドのいずれかの材料で構成されていることが好適である。
これらの材料で構成された全反射プリズムは光源が赤外光であっても好適に全反射プリズムとしての機能を果たすことが可能である。
【0045】
また、本発明の光採取手段においては、図5に示すように試料の情報を含んだ光を集光するカセグレン鏡と、前記カセグレン鏡によって集光された光を検出する検出器によって構成されていることが好適である。
【0046】
このような構成によって、プローブによって散乱された試料の情報を含んだ光を広い範囲で集光し、検出することが可能となる。
さらに光照射手段、光採取手段がカセグレン鏡によって構成されることによって、色分散をなくすことができるようになるとともに、NA(開口数)を大きくとれる、ワークディスタンスが大きいなどの有用な効果を得ることができるようになる。
【0047】
なお、図5に示したように反射照明によって照明を行う際には、照明の反射光が検出器に直接入らないように光照射手段からの暗視野の位置に光採取手段が配置されていることが好適である。
【0048】
また、本発明の近接場顕微鏡における光採取手段としては、図5に記載した構成のみに限られるものではなく、様々な構成をとり得る。
図6に本発明の光採取手段のとり得る構成例を記載する。
同図(a)に示すように、プローブを導光性材料で構成し、プローブ先端から試料の情報を含む光を採取することも可能である。
【0049】
また図6(b)に示すようにカセグレン鏡の凸面鏡の中心、及び凹面鏡の中心に穴を設け、この穴にプローブを通すことで、光採取手段を試料の上方に配置することも可能である。
この図6に示したような構成であれば装置が簡略化され、小型化が可能である。
なお本発明の光採取手段の構成例はここに示したもののみに限られるものではない。また、ここで示したのは、光採取手段の構成例であるが、同様の構成を光の照射に使用することも可能である。
【0050】
以上、説明した本発明の近接場顕微鏡を実施例をあげてさらに詳しく説明する。
【実施例】
近接場赤外顕微鏡
図7に本発明の実施例として、近接場赤外顕微鏡の構成概要図を示す。
【0051】
同図に示す近接場赤外顕微鏡100は、光照射手段として分光手段である光源を含むフーリエ変換型赤外分光光度計102(FTIR)と回転反射鏡104、反射鏡106、凹面鏡108、凸面鏡110からなるカセグレン鏡を備え、試料に反射照明を行うことが可能である。また光照射手段は回転反射鏡104を回転させることによって反射鏡112、114、及び凹面鏡116、凸面鏡118からなるカセグレン鏡によって、ステージ120に備えられた試料122に密着した半球型全反射プリズム124の中心に光を照射する全反射照明に切り替えることが可能である。
【0052】
プローブ126で散乱された試料の情報を含む近接場光は凸面鏡128、凹面鏡130及び検出器132からなる光採取手段によって検出される。
本実施例では、算出手段として検出器132が機能する。つまりノイズを測定し、その測定値を検出器が一次的に記憶しておき、プローブを近接場光の場に深く挿入して測定する光強度から前記ノイズの測定値を差し引いて、コンピュータ134に測定結果としてデータを送るように構成されている。
【0053】
コンピュータ134は解析手段として機能し、検出器132によって送出されたデータをハードディスクに記録し、スペクトル解析などを行うことができる。さらにコンピュータは装置全体の制御を行うことができ、検出器132のみでなく、FTIR102、プローブ制御装置136、ステージ制御装置138と双方向に通信を行うことができるのである。
このような構成によって本実施例の近接場赤外顕微鏡は、赤外光を用いて被測定試料の解析を行うことができる。
【0054】
なお本実施例において特徴的なことは、測定が開始されると、コンピュータから測定開始の信号がステージ制御装置138に送られ、その信号を受信すると自動でプローブ126と試料122間の距離制御を行うことである。
【0055】
その機構を詳しく説明すると、プローブ126は位置検出装置140によってその位置が検出され、この位置情報は、ステージ制御装置138に送られる。その情報を基に、ステージ制御装置はステージ120を上下方向に駆動させ、プローブ126及び試料122間の距離の調整を行うのである。これによって矢印で示すループ142ができあがり、プローブ126と試料122の間の距離は自動で調整されることとなる。ここで特徴的なことは、本実施例ではFTIR内の干渉計144が備える移動鏡の動作周波数がスキャン信号としてステージ制御装置138に送られ、ステージ制御装置138はこのスキャン信号を基にステージ120とプローブ126の距離を移動鏡の往路で光の波長以内に近接させ、移動鏡の復路で、光の波長より長いか、その近傍の距離まで隔離させるのである。
【0056】
これによって、検出器132では、干渉計が備える移動鏡の往復運動に同期して、移動鏡の往路で、近接場光の場に該試料またはプローブを深く挿入されたときの光強度を検出することができ、移動鏡の復路で近接場光の場から前記試料またはプローブを隔離または近接場光の場の浅い位置に配置されたときの光強度、つまりノイズを検出することができるのである。よって、検出器132も移動鏡の往復運動を1セットとする測定周期で測定を行っており、移動鏡の復路で得たノイズを一次的に記憶し、続く往路で得た光強度から前記記憶されたノイズを差し引き、コンピュータ134にデータを送信するのである。
このようにステージが移動鏡の往復運動に同期してプローブとの位置を調整するため、自動で測定値からノイズの影響を除くことが可能となるのである。
【0057】
また本実施例では凸面鏡128、及び凹面鏡130からなるカセグレン鏡と検出器132の間に切り替え反射鏡146が配置されており、点線で示す光路上に反射鏡を挿入することによって、試料及びプローブを接眼レンズ148から目視観察可能となっている。
【0058】
なお試料及びプローブを観察する際には、FTIRによる赤外光源でなく、図示しない可視光源を使用して照明することが好適である。このように構成することによってカセグレン鏡などの光学系の調整や試料の配置位置の調整などが簡単に行えるようになる。
【0059】
なお切り替え反射鏡146の変わりに、可視光は反射し、赤外光を透過させるダイクロイック鏡を使用すれば、凸面鏡128、及び凹面鏡130からなるカセグレン鏡と検出器132の間にダイクロイック鏡を常に配置しておくことができ、光学系、及び操作を簡易化することが可能である。
【0060】
このような本実施例を用いてサンプルを用いて測定を行ったところ、赤外光源を使用しているのも関わらず、良好に赤外近接場スペクトルを測定することができた。また移動鏡の動作に同期していたため、測定時間が非常に短くて済んだ。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように本発明における近接場顕微鏡によれば、測定結果からノイズの影響を除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施形態の概要構成図である。
【図2】図2は近接場光の場を試料表面に発生させた場合の動作説明図である。
【図3】図3は近接場光の場をプローブに発生させた場合の動作説明図である。
【図4】図4は本発明で用いられ得る近接場光の場を発生させるための照明方法の説明図である。
【図5】図5は本発明の一実施形態における照明切り替え機構の構成例である。
【図6】図6は本発明の光採取手段のとり得る構成例である。
【図7】図7は本発明の実施例である近接場赤外顕微鏡の構成概要図である。
【符号の説明】
2 近接場顕微鏡
4 プローブ
6 試料
8 光源
10 光照射手段
12 試料の情報を含んだ光
14 光採取手段
16 算出手段
Claims (13)
- 近接場光を散乱させるためのプローブと、
試料または前記プローブに光を照射するための光源を含む光照射手段と、
前記プローブによって散乱される試料の情報を含んだ光を採取し、検出するための光採取手段と、
を有する近接場顕微鏡において、
前記光の照射によって発生する近接場光の場から前記試料またはプローブを隔離または近接場光の場の浅い位置に配置して、前記光採取手段によってノイズを検出し、
前記光の照射によって発生する近接場光の場に前記試料またはプローブを深く挿入して、前記光採取手段によって光強度を検出し、
前記光強度からノイズを差し引いた測定結果を算出するための算出手段と、
前記光照射手段によって試料またはプローブに照射される光、または前記プローブによって散乱される試料の情報を含んだ光を特定波長範囲の光に分光する分光手段と、
前記光採取手段によって採取される各波長ごとの測定データを記憶し、解析する解析手段とを有し、
前記分光手段および解析手段を有することによって、試料の近接場スペクトルを採取可能であり、
前記分光手段には干渉計が使用されており、
前記干渉計は往復運動する移動鏡が含まれており、前記移動鏡の往路で、近接場光の場に前記試料またはプローブを深く挿入して、前記光採取手段によって光強度を検出し、
前記移動鏡の復路で、近接場光の場から前記試料またはプローブを隔離または近接場光の場の浅い位置に配置して、前記光採取手段によってノイズを検出する
ことを特徴とする近接場顕微鏡。 - 請求項1に記載の近接場顕微鏡において、光照射手段によって照射される光が赤外光であることを特徴とする近接場顕微鏡。
- 請求項2に記載の近接場顕微鏡において、光照射手段に含まれる光源が高温発熱体であることを特徴とする近接場顕微鏡。
- 請求項2に記載の近接場顕微鏡において、試料またはプローブに光を照射するための光源が波長可変レーザーであることを特徴とする近接場顕微鏡。
- 請求項1に記載の近接場顕微鏡において、該分光手段が、フーリエ変換型分光器によって構成されていることを特徴とする近接場顕微鏡。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の近接場顕微鏡において、該光照射手段が試料または該プローブに直接光を照射して近接場光を発生させる反射照明及び/または試料に高屈折率媒質のプリズムを接触させ、前記プリズムに光を照射して試料とプリズムの境界で光を全反射させて試料表面に近接場光を発生させる全反射照明によって照明を行うことを特徴とする近接場顕微鏡。
- 請求項6に記載の近接場顕微鏡において、該光照射手段が該反射照明または該全反射照明のどちらか一方の照明に切り替えることで選択可能なことを特徴とする近接場顕微鏡。
- 請求項6または7に記載の近接場顕微鏡において、該光照射手段が少なくとも光源とカセグレン鏡によって構成されていることを特徴とする近接場顕微鏡。
- 請求項8に記載の近接場顕微鏡において、全反射照明で使用される該全反射プリズムの高屈折率媒質の形状が半球または半球類似形状であり、前記プリズム平面部の中心にカセグレン鏡の焦点が結像させていることを特徴とする近接場顕微鏡。
- 請求項6乃至9のいずれかに記載の近接場顕微鏡において、全反射照明で使用される該全反射プリズムの高屈折率媒質が、ZnSe、KRS−5、Ge、Si、ダイヤモンドのいずれかの材料で構成されていることを特徴とする近接場顕微鏡。
- 請求項1乃至10のいずれかに記載の近接場顕微鏡において、該光採取手段が試料の情報を含んだ光を集光するカセグレン鏡と、前記カセグレン鏡によって集光された光を検出する検出器によって構成されていることを特徴とする近接場顕微鏡。
- 請求項1乃至11のいずれかに記載の近接場顕微鏡において、試料またはプローブに照射する光を、光源と試料またはプローブの間において断続変調することを特徴とする近接場顕微鏡。
- 請求項11に記載の近接場顕微鏡において、該カセグレン鏡と該検出器の間に切り替え反射鏡またはダイクロイック鏡を配置し、試料及びプローブを目視観察可能に構成されていることを特徴とする近接場顕微鏡。
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