JP4379010B2 - 施錠装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば家屋、自動車、金庫または保管庫などのドアに設置されて使用される施錠装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の施錠装置が種々提案され市販されている。例えば、特許文献1には、公衆無線通信回線を介してアクセスし得るページャと、ページャからの出力によって錠を施錠または開錠する作動機構とを用い、ページャを呼び出すとともにページャに対して所要のID情報を伝達することによって作動機構を作動させて錠を施錠することにより、既存のページャの機能をそのまま錠開閉手段として流用するだけで低コストに、リモートコンロトールによるドアの開閉システムを構築することができるようにした錠制御システムなどが記載されている。
【0003】
特許文献2には、ID確認のために用いる識別データを頻繁に変更することで識別データの盗聴と複製により保安装置破りを無意味化し、識別データを盗聴から保護することができる識別データ保護方法が記載されている。
【0004】
特許文献3には、鍵から与える電子コードの確認の結果として与えるべき鎖錠機構内の部材の制御がそのスペースおよびコスト要件に関して有利に配置され、且つ実際の鎖錠機構への変更ができるだけ少ない、新規な電気機械式シリンダ錠が記載されている。
【0005】
特許文献4には、上記特許文献3などの機械的開錠情報と電子コードによる開錠情報がリンクしていないことによる問題を解決するべく、機械式錠と電気式錠とを相互に時間的にリンクさせ、機械式錠と電気式錠の両方を限られた待ち時間内に開けなければならないようにしたディジタル施錠装置が記載されている。このディジタル施錠装置には、一般的な鍵山形状が一致したときに開錠状態になる機械式錠と、赤外線や電波により、時刻情報とデジタルコードの組合せを判別して開錠状態になる電気式錠とが設けられる。
【0006】
特許文献5には、イモビライザ機能およびキーレスエントリ機能を統合してキー内に一体化することにより、材料コストの低減、組み付けコストの低減およびメンテナンス労力の低減を実現した車両用リモコン装置が記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−303729号公報
【特許文献2】
特許第3249571号公報
【特許文献3】
特開平11−315653号公報
【特許文献4】
特許第3391783号公報
【特許文献5】
特許第3256666号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術では、異なる複数の錠前の施錠または開錠を行う場合には、複数の鍵を用いなければならない。例えば、特許文献4では、キーに刻まれた凹凸形状に多数桁の組合せがあり、その一致により開錠判定する機械式錠を有することから、機械式錠毎にキーを製作する必要がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、錠前の施錠開錠用のコード(錠前コードおよび鍵コード)を共通化して異なる複数の錠前に割り当てることなく、異なる複数の錠前に個別の施錠開錠用のコードを割り当てたとしても、同じ鍵で、異なる複数の錠前の施錠または開錠を行うことができる施錠装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための請求項1記載の発明の施錠装置は、施錠開錠用の施錠開錠手段、固有の錠前コードおよび鍵コードを記憶する錠側記憶手段、錠前コード送信用の錠側送信手段、および鍵コード受信用の錠側受信手段を備え、前記錠側送信手段を介して、前記錠側記憶手段に記憶された錠前コードを送信した後、前記錠側受信手段で受信された鍵コードが前記錠側記憶手段に記憶された鍵コードと一致する場合、前記施錠開錠手段の施錠または開錠を許可する錠前と、少なくとも一つの錠前の錠側記憶手段に記憶される錠前コードおよび鍵コードを対応付けて記憶する鍵側記憶手段、錠前コード受信用の鍵側受信手段、および鍵コード送信用の鍵側送信手段を備え、前記鍵側受信手段によって受信された錠前コードが前記鍵側記憶手段に記憶された錠前コードと一致する場合、その受信された錠前コードに対応付けられた鍵コードを前記鍵側記憶手段から読み出して前記鍵側送信手段を介して送信する鍵とを備え、前記錠前は、前記鍵に荷重を加える荷重手段と、この荷重手段で荷重を加えたときの前記鍵の弾性変形量を計測する計測手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、錠前から送信される錠前コードが鍵側記憶手段に記憶された錠前コードと一致するとともに、鍵から送信される鍵コードが錠側記憶手段に記憶された鍵コードと一致する場合に限り、施錠開錠手段の施錠または開錠が許可されるので、セキュリティを強化することができる。また、他の錠前の錠側記憶手段に、固有の(別の)錠前コードおよび鍵コードを記憶し、これら錠前コードおよび鍵コードを対応付けて同じ鍵の鍵側記憶手段に記憶することにより、その同じ鍵で、異なる複数の錠前の施錠または開錠を行うことができる。また、計測手段によって計測して調べた弾性変形量を基に、鍵を機構的に照合することが可能となり、他の物理量(電気抵抗等)を測定する場合に比べ、鍵の判別を容易に行うことができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の施錠装置において、前記錠前は、前記鍵の一部を挿入するための鍵穴を有し、この鍵穴内に、前記錠側送信手段および前記錠側受信手段としてそれぞれ錠側発光素子および錠側受光素子を備え、前記鍵は、前記鍵穴に挿入される当該鍵の一部に、前記鍵側受信手段および前記鍵側送信手段としてそれぞれ鍵側受光素子および鍵側発光素子を備えることを特徴とする。この発明によれば、鍵の一部を錠前の鍵穴に挿入した状態で、鍵と錠前との間で鍵コード等が光信号で送受信されるので、鍵コード等の秘匿性を強化することができる。また、光を用いて送受信するので、電気を用いる構成に比べ、ノイズを発生し難くなり、通信の信頼性を向上させることができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の施錠装置において、前記鍵は少なくとも表面材質がセラミックスであることを特徴とする。この発明によれば、機械的強度に優れ、錆の発生や腐食の問題がないほか、鉄や銅などの金属に比べて切削加工が容易でないので、鍵の形状的な複製が困難となる利点がある。また、鍵の表面が絶縁体となり、その表面に電気回路を直接形成することが可能となる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の施錠装置において、前記鍵側記憶手段および前記錠側記憶手段は書換自在の半導体メモリであることを特徴とする。この発明によれば、鍵を紛失した場合、新しい鍵のみを用意し、この鍵の鍵側記憶手段に従前の錠前コードと新たな鍵コードとを記憶し、錠前の錠側記憶手段に記憶されている鍵コードを上記新たな鍵コードに書き換えることにより、従前の錠前を新しい錠前として使用することができる。また、別の錠前を後付けで設けたとしても、その別の錠前の錠側記憶手段に固有の錠前コードおよび鍵コードを記憶し、これら錠前コードおよび鍵コードを対応付けて手持ちの鍵の鍵側記憶手段に記憶することにより、手持ちの同じ鍵で、後付けの錠前の施錠または開錠を行うことができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の施錠装置において、前記鍵側記憶手段の半導体メモリは着脱自在になっていることを特徴とする。この発明によれば、鍵側記憶手段の記憶内容をパソコンなどを用いて容易に書き換えることができる。また、鍵側記憶手段の半導体メモリを鍵から外して別管理とした場合、鍵を万一紛失しても、その鍵では錠前の開錠または施錠を行えないので、セキュリティに問題が発生することがない。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項2記載の施錠装置において、前記鍵は当該鍵の一部に鍵側電極を備え、前記錠前は自己の鍵穴に前記鍵の一部が挿入された場合に前記鍵側電極と電気的に接続する錠側電極と、この錠側電極を介して前記鍵に給電する給電手段とを備えることを特徴とする。この発明によれば、鍵に電池を設ける必要がないので、鍵の小型化が可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
(参考例1)
図1は参考例1の施錠装置のブロック図、図2は同施錠装置の斜視図、図3は同施錠装置における鍵と錠前との電気接続の説明図、図4は同施錠装置における鍵と錠前との光接続の説明図、図5は同施錠装置の動作フロー図である。
【0020】
参考例1の施錠装置は、例えば家屋、自動車、金庫または保管庫などのドアに設置されて使用されるものであり、図2に示すように、鍵1と、錠前2とにより構成されている。
【0021】
鍵1は、図1,図3,図4に示すように、鍵本体10と、カバー13とを備えるとともに、一対の端子T10と、複数(図では8)の端子T11と、メモリカード14と、受光素子15と、発光素子16と、マイコン17とを鍵本体10に備えている。そして、受光素子15、発光素子16およびマイコン17は、エポキシ樹脂などの封止樹脂により保護されている。
【0022】
鍵本体10は、図4に示すように、平角状の摘み部11と、この一の側壁の一部から延設される平角状の挿入部12とを一体に有する形状に形成されている。そして、摘み部11の一の面側には、一の面側とこれと直交し挿入部12の無い他の面側とに開口する凹所110が形成されている。一方、挿入部12には、凹所110と連通し挿入部12の先端に伸びるH字状の溝120が一の面側に形成され、この裏面側に、摘み部11側から挿入部12の先端に伸びるI字状の溝121が形成されている。これらの溝120,121により、挿入部12は凹凸を有する形状になっている。
【0023】
ここで、鍵本体10の少なくとも表面材質がセラミックスとなっている。参考例1では、アルミナ・ジルコニアなどのセラミックスを主成分とした粉末樹脂材料を用いて、凹凸部を持つ鍵本体10を一体で粉末射出成形して形成し、脱脂および焼結をして基板状にされる。続いて、鍵本体10の表面に、レーザによる薄膜除去法などのMID(MoldedInterconect Device) 法を用いて、電気回路が直接形成される。
【0024】
カバー13は、例えば樹脂により鍵本体10の凹所110および溝120の一部を閉塞する平板状に形成されている。また、カバー13は、後述の受光素子15、発光素子16の近傍部分が光の送受信を妨げない透光性になっている。
【0025】
一対の端子T10は、図3に示すように、挿入部12先端の溝120に配置されている。複数の端子T11は、摘み部11の凹所110における上記他の面側と対向する側に配列されている。
【0026】
メモリカード14は、少なくとも一つの錠前2の後述するメモリカード24に記憶される錠前コードおよび鍵コードを対応付けて記憶するものであり、例えばフラッシュメモリなどの読み書き可能な不揮発性半導体メモリにより構成され、鍵本体10の凹所110内に設けられて複数の端子T11と接続される。
【0027】
受光素子15は、錠前2からの錠前コードを光信号で受信するためのものであり、挿入部12の溝120内における溝120の胴部120aと一方の端子T10との間に配置されている。
【0028】
発光素子16は、錠前2に鍵コードを光信号で送信するためのものであり、挿入部12の溝120内における溝120の胴部120aと他方の端子T10との間に配置されている。
【0029】
マイコン17は、記憶素子および演算素子などにより構成され、図1,図3に示すように、凹所110および溝120に配線された複数のリードを介して、一対の端子T10、メモリカード14、受光素子15および発光素子16と電気的に接続されており、錠前2に施錠または開錠をさせるための処理を実行する。
【0030】
ここで、参考例1の鍵1は、挿入部12側が錠前2の鍵穴に挿入されると、一対の端子T10が錠前2と電気的に接続し、その一対の端子T10を介して錠前2から電力の供給を受けて動作するようになっている。このため、マイコン17は、挿入部12の鍵穴への挿入時に動作し、受光素子15によって錠前コードが受信されると、その錠前コードがメモリカード14に記憶された錠前コードと一致するかどうかを照合し、一致する場合には、その受信された錠前コードに対応付けられた鍵コードをメモリカード14から読み出して受光素子15を介して送信する処理を行うように構成される。
【0031】
錠前2は、図1〜図4に示すように、当該錠前2の鍵穴20に挿入した正規の鍵1の回動に応じて、ドア3に対して施錠または開錠を行うものであり、施錠開錠部21と、一対の端子T20と、抵抗測定器22と、電源23と、メモリカード24と、発光素子25と、受光素子26と、マイコン27とを備えている。
【0032】
施錠開錠部21は、一般的にシリンダー錠と呼ばれているものであり、固定された外筒と中心に鍵穴20のある回転する内筒の二重構造になっている。図2の例では、施錠開錠部21は、ドア3の側部に埋設された角状で金属製の進退部210と、この進退動のロックをするための図示しない電動式の回動ストッパとを備え、この回動ストッパのロック解除時に、錠前2の鍵穴20に挿入した鍵1を回動することができるようになり、それを回動することにより、進退部210が図示しない枠部の穴内に進出して施錠を行うか、枠部の穴から退避して開錠を行う構成になっている。回動ストッパのロック解除は、後述する鍵コードの照合で適合した場合に、タンブラピンを外すことにより行われ、タンブラピンが外れると、内筒が回動自在となる。
【0033】
一対の端子T20は、錠前2の鍵穴20内に設けられ、鍵1の挿入部12が鍵穴20内に挿入された状態において、図3に示すように、その鍵1の一対の端子T10と電気的に接続するようになっている。
【0034】
抵抗測定器22は、鍵1の挿入部12が錠前2の鍵穴20内に挿入された状態において、一対の接触子T22を介して、鍵1の挿入部12における異なる2点間の絶縁抵抗の値を測定するものである。このような絶縁抵抗の値は、一対の接触子T22間の離隔誤差や、鍵1の挿入部12を構成する材料などが変われば変化するので、鍵1の機構的な照合に利用可能となる。
【0035】
電源23は、電池または商用電源を整流・平滑などして直流電力を得る直流電源などであり、図1に示すように、錠前2の各部に電力を供給するほか、鍵1の挿入部12が錠前2の鍵穴20内に挿入された状態において、一対の端子T20および一対の端子T10を介して、鍵1に電力を供給するものである。なお、電源23は、電池または直流電源に限らず、太陽電池パネルとバッテリ回路とを備える構成でもよい。
【0036】
メモリカード24は、固有の錠前コードおよび鍵コードを記憶するとともに、それら錠前コードおよび鍵コードをメモリカード14に記憶した正規の鍵1の挿入部12が、錠前2の鍵穴20内に挿入された状態で、抵抗測定器22によって予め測定された抵抗値を記憶するものであり、例えばフラッシュメモリなどの読み書き可能な不揮発性半導体メモリにより構成される。なお、図2では、ドア3の側部にメモリカード24が(着脱自在に)埋設されるようになっている。
【0037】
発光素子25は、メモリカード24に記憶された錠前コードを光信号で送信するためのものであり、鍵1の挿入部12が錠前2の鍵穴20内に挿入された状態において、図4に示すように、その鍵1の受光素子15と対向配置されるようになっている。
【0038】
受光素子26は、鍵1からの鍵コードを光信号で受信するためのものであり、鍵1の挿入部12が錠前2の鍵穴20内に挿入された状態において、その鍵1の発光素子16と対向配置されるようになっている。
【0039】
マイコン27は、記憶素子および演算素子などにより構成され、図1,図3に示すように、一対の端子T20、抵抗測定器22、メモリカード24、発光素子25および受光素子26と電気的に接続されており、施錠または開錠などをするための処理を実行する。
【0040】
例えば、抵抗測定器22から得られた抵抗値が、メモリカード24に記憶された抵抗値を含む所定範囲内に入れば、メモリカード24に記憶された錠前コードを読み出して発光素子25を介して送信する処理が実行される。
【0041】
また、錠前コードを送信した後、受光素子26で受信された鍵コードがメモリカード24に記憶された鍵コードと一致するかどうかを照合し、一致する場合、施錠開錠部21の回動ストッパのロックを解除する処理が実行される。
【0042】
さらに、抵抗測定器22から得られた抵抗値が、メモリカード24に記憶された抵抗値を含む所定範囲内に入らず、また受光素子26で受信された鍵コードがメモリカード24に記憶された鍵コードと一致しなければ、図示しない警報手段を介して警報を出す処理が実行される。
【0043】
ここで、鍵1の鍵本体10およびこの挿入部12に対応する錠前2の鍵穴20の部分について補説する。鍵本体10は、上記の如く射出成形法にて作製されるが、鍵穴20の部分も射出成形法にて作製される。そして、その表面に立体的なメタライズ回路が形成され、MIDと呼ばれる立体成形回路部品が実装される。MIDには一回成形法、二回成形法などの各種公知の方式があるが、特に基板に金属薄膜を蒸着・スパッタリングしたのち、レーザを用いて薄膜除去し回路形成する一回成形法が参考例1の構造に適している。基板材は、セラミック基板や金属体に絶縁層を被覆した基板などでもよく、フィラーなどを含有する樹脂などでもよい。
【0044】
錠前コードおよび鍵コードについて補説すると、これらの各々は、製造時に付与され利用者が変更することができない固有のオリジナルコードと、利用者によって設定登録される暗証コードとにより構成される。鍵コードを構成するオリジナルコードは、鍵1のマイコン17内の記憶素子(不揮発性半導体メモリ)に記憶されており、例えば施工時に、その暗証コードが利用者によって設定登録されると、マイコン17内の記憶素子から読み出されたオリジナルコードを付加して鍵コードが作成され、メモリカード14,24に記憶される。錠前コードを構成するオリジナルコードは、錠前2のマイコン27内の記憶素子(不揮発性半導体メモリ)に記憶されており、例えば施工時に、その暗証コードが利用者によって設定登録されると、マイコン27内の記憶素子から読み出されたオリジナルコードを付加して錠前コードが作成され、メモリカード24,14に記憶される。上記固有のオリジナルコードを記憶すれば、錠前コードおよび鍵コードの各々を必ず固有のコードとすることができるほか、商品履歴を残すことができる。また、ユキビタスに準拠可能となっている。さらに、メモリカード14,24には、同一規格で大量に製作されるものが使用される。これにより、単価を下げることができる。
【0045】
なお、錠前2のマイコン27内の記憶素子に、錠前コードおよび鍵コードの各々を構成する固有のオリジナルコードを記憶し、これらの両オリジナルコードからそれぞれ得られる錠前コードおよび鍵コードをメモリカード14,24に記憶するようにしてもよい。この場合、異なる複数の錠前の各々に対して、固有の錠前コードを割り当てることができるほか、固有の鍵コードを割り当てることができる。
【0046】
次に参考例1の施錠装置の動作について説明する。鍵1の挿入部12を錠前2の鍵穴20に挿入すると(S1)、鍵1の各端子T10と錠前2の各端子T20とが電気的に接続し、鍵1が錠前2から電力の供給を受けて動作する。
【0047】
一方、錠前2において、一対の接触子T22により、鍵1の挿入部12における2点間の絶縁抵抗の値が測定される。そして、測定された抵抗値が、メモリカード24に記憶された抵抗値を含む所定範囲内に入らなければ(S2でNO)、警報が出される(S3)。これに対し、所定範囲内に入れば(S2でYES)、メモリカード24に記憶された錠前コードが読み出されて発光素子25を介して送信される(S4)。
【0048】
鍵1において、受光素子15で上記錠前コードが受信されると(S5)、その錠前コードがメモリカード14に記憶された錠前コードと一致するかどうかの照合が行われる(S6)。そして、一致すれば、錠前コードに対応付けられた鍵コードがメモリカード14から読み出されて受光素子15を介して送信される(S7)。
【0049】
錠前2において、受光素子26で上記鍵コードが受信されると(S8)、その鍵コードがメモリカード24に記憶された鍵コードと一致するかどうかの照合が行われる(S9)。そして、一致しなければ(S9でNO)、警報が出され(S3)、一致すれば(S9でYES)、施錠開錠部21の回動ストッパのロックが解除される(S10)。これにより、錠前2の鍵穴20に挿入した鍵1を回動することができるようになり、それを回動することにより、進退部210を枠部の穴内に進出させて施錠を行うか、枠部の穴から退避させて開錠を行うことができる。この後、または錠前2の鍵穴20から鍵1を抜いた後、施錠開錠部21の回動ストッパのロックがかかる。
【0050】
参考例1によれば、錠前2から送信される錠前コードがメモリカード14に記憶された錠前コードと一致するとともに、鍵1から送信される鍵コードがメモリカード24に記憶された鍵コードと一致する場合に限り、施錠開錠部21の施錠または開錠が許可されるので、セキュリティを強化することができる。また、他の錠前2のメモリカード24に、固有の錠前コードおよび鍵コードを記憶し、これら錠前コードおよび鍵コードを対応付けて同じ鍵1のメモリカード14に記憶することにより、その同じ鍵1で、異なる複数の錠前2の施錠または開錠を行うことができる。
【0051】
また、鍵1の挿入部12を錠前2の鍵穴20に挿入した状態で、鍵1と錠前2との間で鍵コード等が光信号で送受信されるので、鍵コード等の秘匿性を強化することができる。
【0052】
また、鍵1は少なくとも表面材質がセラミックスであるので、機械的強度に優れ、錆の発生や腐食の問題がないほか、鉄や銅などの金属に比べて切削加工が容易でないので、鍵の形状的な複製が困難となる利点がある。また、鍵1の表面が絶縁体となり、その表面に電気回路を直接形成することが可能となる。鍵1の製法は、粉末射出成形後、焼結したセラミックやアルミを用いてもよく、アルミを用いた場合には、アルマイト処理を行い、表面側の部分をセラミックの材質で形成してもよい。
【0053】
また、メモリカード14,24が書換自在の半導体メモリであるので、鍵1を紛失した場合、新しい鍵1のみを用意し、この鍵1のメモリカード14に従前の錠前コードと新たな鍵コードとを記憶し、錠前2のメモリカード24に記憶されている鍵コードを上記新たな鍵コードに書き換えることにより、従前の錠前2を新しい錠前として使用することができる。また、別の錠前2を後付けで設けたとしても、その別の錠前2のメモリカード24に固有の錠前コードおよび鍵コードを記憶し、これら錠前コードおよび鍵コードを対応付けて手持ちの鍵1のメモリカード14に記憶することにより、手持ちの同じ鍵1で、後付けの錠前2の施錠または開錠を行うことができる。
【0054】
さらに、鍵1が、挿入部12に一対の端子T10を備える一方、錠前2が、自己の鍵穴20に鍵1の挿入部12が挿入された場合に一対の端子T10と電気的に接続する一対の端子T20と、これらの端子T20介して鍵1に給電する電源23とを備えるので、鍵1に電池を設ける必要がなく、鍵1の小型化が可能となる。
【0055】
(実施形態1)
図6は本発明による実施形態1の施錠装置における鍵の機構的照合の説明図である。
【0056】
実施形態1の施錠装置は、参考例1との相違点として、鍵1の挿入部12における異なる2点間の絶縁抵抗の値ではなく、材料などで異なる鍵1の弾性変化量(率)を調べることにより、鍵1を機構的に照合することを特徴とする。
【0057】
実施形態1では、抵抗測定器22に代えて、図6に示すように、荷重付加ピン281により鍵1の挿入部12に一の面側から荷重を加えるとともに、その裏面側を2つの支持ピン282で支持する荷重部と、この荷重部で荷重を加えたときの鍵1の弾性変形量を、2つの支持ピン282間に位置する変位量検知電極ピン283で計測する計測部とが具備される。そして、鍵1の挿入部12を錠前2の鍵穴20に挿入したとき、挿入部12と変位量検知電極ピン283との隙間が35〜40μmになるように設定される。また、変位量検知電極ピンとしては、接触非接触を問わず、各種距離計を用いることが可能である。
【0058】
次に実施形態1の施錠装置の動作について説明する。鍵1の挿入部12を錠前2の鍵穴20に挿入すると、マイコン27は、鍵1の各端子T10と錠前2の各端子T20とが電気的に接続することにより、鍵1が鍵穴20に挿入されたことを確認し、続いて荷重部を介して、荷重付加ピン281により鍵1の挿入部12に一定圧の荷重を加える。そして、マイコン27は、計測部から、変位量検知電極ピン283が挿入部12の導電部に電気的に接続しない計測結果を受けると、鍵1が機構的に正規の鍵であると判別する一方、電気的に接続した計測結果を受けると、鍵1が機構的に正規の鍵でないと判別する。この場合、変位量検知電極ピン283が押されるので、その押される方向に先述の警報手段の発報スイッチを設ければ、簡単に警報(例えば警報音)を出すことができる。なお、その他の動作は、参考例1と同様である。
【0059】
このように、鍵1に荷重を加える荷重部と、この荷重部で荷重を加えたときの鍵1の弾性変形量を計測する計測部とを錠前2に設けることにより、他の物理量(電気抵抗等)を測定する場合に比べ、鍵の判別を容易に行うことができる。なお、変位センサなどを用いても同様の判別が可能となる。
【0060】
(実施形態2)
図7は本発明による実施形態2の施錠装置における鍵に使用されるメモリカードの説明図である。
【0061】
実施形態2の施錠装置は、図7に示すように、メモリカード14が、例えばSDカードにより構成され、鍵本体10の凹所110に着脱自在になっていることを特徴とする。凹所110に装着されたメモリカード14は、図7の複数の突起の所にMID法で形成された複数の端子T11と電気的に接続されることにより(図3参照)、マイコン17と電気的に接続される。
【0062】
これにより、メモリカード14の記憶内容をパソコンなどを用いて容易に書き換えることができるほか、携帯電話などにも兼用可能となり、別管理が可能となる。例えば、メモリカード14を鍵1から外して別管理とした場合、鍵1を万一紛失しても、その鍵1では錠前2の開錠または施錠を行えないので、セキュリティに問題が発生することがない。
【0063】
(参考例2)
図8は参考例2の施錠装置における鍵の機構的照合の説明図である。ただし、図8(b),(c)は、図8(a)のA−A線に対応する箇所の断面図である。
【0064】
参考例2の施錠装置は、図8に示すように、錠前2が、鍵1の挿入部12を鍵穴20に挿入した状態で、発光素子16から直接受光した光と鍵穴20内で反射させてから受光した光との位相差を計測する計測部(図示せず)を備え、予め正規の鍵1を用いて上記計測部によって計測された位相差をメモリカード24に記憶し、実使用時に計測部によって計測された位相差とメモリカード24に記憶された位相差とを比較することにより、鍵1の照合を行うことを特徴とする。
【0065】
そして、マイコン27は、計測部によって計測された位相差が、メモリカード24に記憶された位相差を含む所定範囲内に入れば、鍵1を正規の鍵であると判別する一方、所定範囲内に入らなければ、鍵1を正規の鍵でないと判別する。位相差は、デジタル的ないしアナログ的に認識可能である。なお、図8においてBは封止樹脂である。
【0066】
このように、発光素子16からの光を直接受光する場合の光路L1と鍵穴20内で反射させてから受光する場合の光路(屈折光路)L2との組合せを違えることにより、その物理的な組合せを鍵1の照合に利用することができるので、セキュリティをより一層強化することができる。
【0067】
また、受光素子26は、光路L1用の光受光用と光路L2用の光受光用の2つの受光素子を設けることが望ましいが、発光素子16は1個でも良いので、受光素子および発光素子を複数組み用いることなく、同様の効果を得ることが可能である。
【0068】
(実施形態3)
図9は本発明による実施形態3の施錠装置における鍵と錠前との電気接続の説明図である。
【0069】
実施形態3の施錠装置は、図9に示すように、一対の端子T10および一対の端子T20の配置位置が実施形態4と相違している。このような構造でも、錠前2の電源23から鍵1に電力を供給することができるので、鍵1に電池を設ける必要がなく、鍵1の小型化が可能となる。また、一対の端子T20を弾性率の低い導電性エラストマ等で構成することにより、確実な給電が可能となる。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、錠前の施錠開錠用のコード(錠前コードおよび鍵コード)を共通化して異なる複数の錠前に割り当てることなく、異なる複数の錠前に個別の施錠開錠用のコードを割り当てたとしても、同じ鍵で、異なる複数の錠前の施錠または開錠を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例1の施錠装置のブロック図である。
【図2】同施錠装置の斜視図である。
【図3】同施錠装置における鍵と錠前との電気接続の説明図である。
【図4】同施錠装置における鍵と錠前との光接続の説明図である。
【図5】同施錠装置の動作フロー図である。
【図6】本発明による実施形態1の施錠装置における鍵の機構的照合の説明図である。
【図7】本発明による実施形態2の施錠装置における鍵に使用されるメモリカードの説明図である。
【図8】参考例2の施錠装置における鍵の機構的照合の説明図である。
【図9】本発明による実施形態3の施錠装置における鍵と錠前との電気接続の説明図である。
【符号の説明】
1 鍵
14 メモリカード
15 受光素子
16 発光素子
17 マイコン
2 錠前
21 施錠開錠部
22 抵抗測定器
23 電源
24 メモリカード
25 発光素子
26 受光素子
27 マイコン
Claims (6)
- 施錠開錠用の施錠開錠手段、固有の錠前コードおよび鍵コードを記憶する錠側記憶手段、錠前コード送信用の錠側送信手段、および鍵コード受信用の錠側受信手段を備え、前記錠側送信手段を介して、前記錠側記憶手段に記憶された錠前コードを送信した後、前記錠側受信手段で受信された鍵コードが前記錠側記憶手段に記憶された鍵コードと一致する場合、前記施錠開錠手段の施錠または開錠を許可する錠前と、
少なくとも一つの錠前の錠側記憶手段に記憶される錠前コードおよび鍵コードを対応付けて記憶する鍵側記憶手段、錠前コード受信用の鍵側受信手段、および鍵コード送信用の鍵側送信手段を備え、前記鍵側受信手段によって受信された錠前コードが前記鍵側記憶手段に記憶された錠前コードと一致する場合、その受信された錠前コードに対応付けられた鍵コードを前記鍵側記憶手段から読み出して前記鍵側送信手段を介して送信する鍵とを備え、
前記錠前は、前記鍵に荷重を加える荷重手段と、この荷重手段で荷重を加えたときの前記鍵の弾性変形量を計測する計測手段とを備えることを特徴とする施錠装置。 - 前記錠前は、前記鍵の一部を挿入するための鍵穴を有し、この鍵穴内に、前記錠側送信手段および前記錠側受信手段としてそれぞれ錠側発光素子および錠側受光素子を備え、
前記鍵は、前記鍵穴に挿入される当該鍵の一部に、前記鍵側受信手段および前記鍵側送信手段としてそれぞれ鍵側受光素子および鍵側発光素子を備えることを特徴とする請求項1記載の施錠装置。 - 前記鍵は少なくとも表面材質がセラミックスであることを特徴とする請求項2記載の施錠装置。
- 前記鍵側記憶手段および前記錠側記憶手段は書換自在の半導体メモリであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の施錠装置。
- 前記鍵側記憶手段の半導体メモリは着脱自在になっていることを特徴とする請求項4記載の施錠装置。
- 前記鍵は当該鍵の一部に鍵側電極を備え、前記錠前は自己の鍵穴に前記鍵の一部が挿入された場合に前記鍵側電極と電気的に接続する錠側電極と、この錠側電極を介して前記鍵に給電する給電手段とを備えることを特徴とする請求項2記載の施錠装置。
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