JP4378940B2 - 運転条件の変動に着目して圧縮比の制御を行う内燃機関 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関の圧縮比を変更する技術に関し、詳しくは圧縮比を適切に変更することによって内燃機関の燃料消費量を低減させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関は、小型でありながら比較的大きな動力を出力可能であるという優れた特性を備えることから、自動車や船舶、飛行機など各種の輸送機械の動力源として、あるいは定置式の各種機械の動力源として広く使用されている。これら内燃機関は、燃焼室内で圧縮した混合気を燃焼させ、このときに発生する燃焼圧力を機械的な仕事に変換し、動力として取り出すことを動作原理としている。
【0003】
一般的に内燃機関は、混合気の圧縮割合を表す指標である圧縮比が高くなるほど効率よく動力を取り出すことが可能となるが、あまりに圧縮比が高くなると摩擦損失が増加して効率が低下する傾向にある。従って、理論的には、圧縮比には熱効率が最も高くなる最適圧縮比が存在することが知られている。もっとも、実際の内燃機関では圧縮比を高くすると、運転条件によってはノッキングと呼ばれる異常燃焼が発生することがあるので、これを避けるために最適な圧縮比よりも低めの値に設定されていることが多い。
【0004】
こうした点に鑑みて、内燃機関の熱効率を改善するべく、圧縮比を運転条件に応じて切り替えることが試みられてきた(例えば、特許文献1、特許文献2など)。すなわち、ノッキングが発生しない運転条件では圧縮比を高くし、ノッキングが発生する運転条件では圧縮比を低くしてやることによって、内燃機関の熱効率を改善することが可能である。上記の特許文献には、内燃機関の吸入空気量が多い条件(すなわちアクセル開度が大きい条件)はノッキングが発生し易いので圧縮比を低い値に設定してノッキングの発生を回避し、吸入空気量が少ない条件(すなわちアクセル開度が小さい条件)ではノッキングが発生し難いので圧縮比を高い値に設定して熱効率の向上を図る技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−258153号公報
【特許文献2】
特開昭63−159642号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、アクセル開度などの運転条件に応じて圧縮比を切り替えた場合、運転条件に対する圧縮比の設定をどのように変更してみても、当初に予想されたほどには燃料消費量の改善効果が得られないことが多いという問題があった。
【0007】
この発明は、従来の技術における上述した課題を解決するためになされたものであり、内燃機関の圧縮比を適切に変更することで、燃料消費量をより一層低減させることが可能な技術の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の内燃機関は次の構成を採用した。すなわち、
圧縮比を制御可能な圧縮比制御機構を有する内燃機関であって、
前記内燃機関の運転条件を検出する運転条件検出手段と、
前記内燃機関が定常状態で運転されている度合いを表す定常運転度合いを、前記検出した運転条件に基づいて判定する定常運転度合い判定手段と、
前記検出した運転条件と前記判定した定常運転度合いとを考慮しながら、圧縮比の制御目標値を設定する目標圧縮比設定手段と
を備えることを要旨とする。
【0009】
また、上記の内燃機関に対応する本発明の内燃機関の制御方法は、
圧縮比を制御可能な圧縮比制御機構を有する内燃機関の制御方法であって、
前記内燃機関の運転条件を検出する第1の工程と、
前記内燃機関が定常状態で運転されている度合いを表す定常運転度合いを、前記検出した運転条件に基づいて判定する第2の工程と、
前記検出した運転条件と前記判定した定常運転度合いとを考慮しながら、圧縮比の制御目標値を設定する第3の工程と、
前記設定された制御目標値に前記内燃機関の圧縮比を制御する第4の工程と
を備えることを要旨とする。
【0010】
かかる本発明の内燃機関および内燃機関の制御方法においては、内燃機関の運転条件を検出して、内燃機関が定常状態で運転されている度合いを表す定常運転度合いを判定する。すなわち、内燃機関が一定の運転条件で運転されているのか、あるいは運転条件が大きく若しくは、しばしば変更されながら運転されているのかといった事柄について判定する。次いで、検出した運転条件と定常運転度合いとを考慮しながら、圧縮比の制御目標値を設定した後、圧縮比制御機構を用いて内燃機関の圧縮比をこの目標値に設定する。
【0011】
通常、内燃機関は運転条件が変更されながら運転されることが多いので、圧縮比を変更可能な内燃機関において、運転条件に応じて圧縮比を設定したのでは、運転条件が変更される度に圧縮比の変更が必要となる。こうした点に鑑みて、本発明の内燃機関および内燃機関の制御方法では、運転条件に加えて、定常運転度合いも考慮して圧縮比を設定している。このため、運転条件が頻繁に変更されるような場合に、変更を見越した圧縮比に設定することで、圧縮比を頻繁に変更する事態を回避することができる。圧縮比の変更にはエネルギを要するので、頻繁に変更すれば大きなエネルギを消費してしまい、圧縮比を変更することによって得られるであろう燃料消費量の低減効果を減殺してしまうおそれがある。これに対して、定常運転度合いも考慮して圧縮比を設定すれば、こうした事態を回避することが可能となるので、圧縮比の変更による燃料消費量の低減効果を確実に得ることが可能となる。
【0012】
また、運転条件の変化に応じて圧縮比を高圧縮比から低圧縮比に変更する場合、運転条件の変化に対して圧縮比の変更が遅れると、強いノッキングが発生することがある。こうして強いノッキングが発生した場合、これを避けるために、圧縮比変更が完了するまでの間は点火時期を遅角させる必要が生じる。しかし、点火時期を遅角させると内燃機関の熱効率が低下するので、その分だけ燃料消費量が増加し、延いては圧縮比変更により得られるであろう燃料消費量の低減効果を減殺する結果となる。もちろん、運転条件の変化に遅れないように圧縮比をより速やかに変更すれば、点火時期の遅角は不要となり、内燃機関の熱効率の低下を回避することができる。しかし、圧縮比を速やかに変更するためには、それだけ大きなエネルギが必要となるので、やはり燃料消費量を増加させ、圧縮比変更による効果を減殺してしまう。上述した本発明の内燃機関および内燃機関の制御方法によれば、圧縮比の設定に際して、運転条件に加えて定常運転度合いも考慮することで、運転条件の変更を見越した圧縮比を設定し、その結果、こうした理由による燃料消費量の増加を回避して、圧縮比の変更による燃料消費量の改善効果を確実に得ることが可能となる。
【0013】
こうした内燃機関および内燃機関の制御方法においては、前記運転条件として、少なくとも該内燃機関の負荷に関連した値を検出することとしても良い。負荷に関連した値としては、種々の値を検出することが可能であるが、例えば、該内燃機関に対して出力を指示するための値や、内燃機関に設けられたスロットルバルブの開度、吸気通路内の圧力、吸入空気量など、更には、これらを間接的に検出可能な種々の値を用いることができる。
【0014】
内燃機関の運転条件の中では、負荷に関する条件が頻繁に、あるいは大きく変更されることが多いことから、前記運転条件として、少なくとも負荷に関連した値を検出してやれば、前記定常運転度合いを適切に判定することが可能となる。
【0015】
また、かかる内燃機関および制御方法においては、負荷に関連する値を検出し、該検出結果から負荷の変化量と変化頻度とを抽出して、これらに基づいて前記定常運転度合いを判定することとしても良い。
【0016】
運転条件が大きく変更された場合も、あるいは頻繁に変更された場合も、いずれも定常状態で運転されているとは言えず、定常運転度合いの判定に際しては、運転条件の変更量と変化の頻度とを考慮することが望ましいと言える。従って、内燃機関の負荷に関連する値の検出結果から、負荷の変化量と変化頻度とを抽出し、これらに基づいて定常運転度合いを判定すれば、適切に判定することが可能となるので好ましい。
【0017】
上述の内燃機関および内燃機関の制御方法においては、判定した定常運転度合いが所定の基準を満たさない場合に、基準を満たす場合よりも、前記圧縮比の制御目標値を低い値に設定することとしても良い。
【0018】
こうすれば、内燃機関の運転条件が定常運転状態から離れるほど、換言すれば、運転条件が大きく若しくは頻繁に変更されているほど、該内燃機関の圧縮比が低めに設定されることになる。通常、ノッキングは高圧縮比になるほど発生し易いから、こうして低めの低圧縮比に設定しておけば、運転条件の変動に伴うノッキングの発生を回避することができる。この結果、ノッキングの発生回避のために点火時期を遅角したり、あるいは圧縮比を速やかに切り換えるために大きなエネルギを消費して、燃料消費量が増加してしまうことを確実に避けることが可能となる。
【0019】
あるいは、上述の内燃機関および内燃機関の制御方法においては、判定した定常運転度合いが所定の基準を満たさない場合に、圧縮比の制御目標値を所定値以下の値に制限して設定することとしても良い。
【0020】
こうして圧縮比を所定値以下の値に制限することによっても、運転条件の変動に伴って、ノッキングが発生することを回避して、燃料消費量が増加してしまうことを確実に避けることが可能となる。
【0021】
更には、上述の内燃機関および制御方法においては、圧縮比の上限値を定常運転度合いに応じて予め記憶しておき、前記設定された圧縮比の制御目標値が該上限値を超えている場合には、該制御目標値を該上限値に変更することとしても良い。
【0022】
内燃機関の運転条件が定常運転状態から離れるほど、運転条件の変動に伴ってノッキングが発生し易くなる。従って、定常運転度合いに応じて圧縮比の上限値を記憶しておき、圧縮比の制御目標値をこの上限値にクリップしてやれば、運転条件の変動に伴ってノッキングが発生することを適切に回避しつつ、燃料消費量の低減を図ることが可能となる。
【0023】
上述した内燃機関および制御方法であって、前記運転条件として少なくとも負荷に関連する値を検出するような内燃機関および制御方法においては、次のようにして圧縮比の制御目標値を設定することとしても良い。すなわち、負荷の変化量と負荷の変化頻度とに応じて定められた複数の領域毎に、圧縮比の許容値を予め記憶しておく。そして、運転条件に基づいて設定した圧縮比の制御目標値が、前記領域毎に記憶されている前記許容値を超える場合に、該圧縮比の制御目標値を該許容値に変更することとしても良い。
【0024】
このように、圧縮比の許容値を、負荷の変化量と負荷の変化頻度とに応じて定められた複数の領域毎に定めることとすれば、定常運転度合いに応じて適切な許容値を定めることができるので、運転条件の変動に伴ってノッキングが発生することを適切に回避しつつ、燃料消費量の低減を図ることが可能となる。
【0025】
また、こうした圧縮比の許容値としては、少なくとも前記負荷の変化量および前記負荷の変化頻度が小さい領域ほど、大きな値を記憶することとしてもよい。
【0026】
こうすれば、内燃機関の運転条件が定常運転状態に近づくほど高い圧縮比に設定され、逆に、定常運転状態から離れるほど低い圧縮比に設定されることになる。従って、内燃機関を適切な圧縮比で運転することが可能となるので好ましい。
【0027】
また、上述した内燃機関および制御方法においては、前記運転条件として、少なくとも前記内燃機関の負荷に関連した値と該内燃機関の回転速度とを検出し、次のようにして圧縮比の制御目標値を設定することとしても良い。すなわち、少なくとも前記回転速度を含んだ運転条件毎に、該運転条件に応じた基準の圧縮比を記憶しておく。このとき、基準の圧縮比としては、少なくとも所定の回転速度以下の領域内に、回転速度が低くなるほど記憶されている圧縮比が小さくなる領域が含まれているような、基準の圧縮比を記憶しておく。そして、検出した運転条件に応じて、記憶されている該基準の圧縮比を読み出した後、前記定常運転度合いに基づいて補正した値を前記制御目標値として設定することとしてもよい。
【0028】
通常、内燃機関は、回転速度の低い運転条件の領域に、ノッキングの発生し易い領域が存在することがある。従って、回転速度が低くなるほど、記憶されている値が小さくなる領域を含むように、基準の圧縮比を記憶しておけば、こうした領域でのノッキングの発生を回避することが可能となる。また、こうした領域では、内燃機関の制御時に想定した運転状態と実際の運転状態との乖離が生じ易いので、この点でもノッキングが発生し易い傾向にある。従って、内燃機関の回転速度が所定回転速度以下の領域では、基準の圧縮比を上記の状態、すなわち、回転速度が低くなるほど、小さな値となる領域を含むような状態で記憶しておけば、運転条件が変更された場合でもノッキングが発生し難くなる。このため、点火時期の遅角などにより、燃料消費量が増加することを回避することが可能となって好ましい。
【0029】
本発明は、内燃機関を動力源とする車両に対しても効果的に適用することができる。すなわち、こうした本発明の車両は、
圧縮比を制御可能な圧縮比制御機構を有する内燃機関を動力源とした搭載した車両であって、
前記内燃機関に対して要求する出力を設定するアクセルペダルと、
前記内燃機関が定常状態で運転されている度合いを表す定常運転度合いを、前記アクセルペダルの操作量に基づいて判定する定常運転度合い判定手段と、
前記検出した運転条件と前記判定した定常運転度合いとを考慮しながら、圧縮比の制御目標値を設定する目標圧縮比設定手段と
を備えることを要旨とする。
【0030】
かかる本発明の車両においては、アクセルペダルの操作量に基づいて定常運転度合いを判定し、判定結果を考慮しながら前記内燃機関の圧縮比を設定する。こうすれば、圧縮比の変更による燃料消費量の改善効果を確実に得ることが可能となる。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の作用・効果をより明確に説明するために、次の順序に従って、本発明の実施例について説明する。
【0032】
A.装置構成:
図1は、圧縮比可変機構を備えた本実施例のエンジン10の構成を概念的に示した説明図である。以下では、エンジン10は、いわゆる火花点火式のエンジンであるものとして説明するが、もちろん、ディーゼルエンジンなどの圧縮着火式のエンジンに適用することもできる。図示されているように、エンジン10は、大きくはシリンダヘッド20と、シリンダブロックASSY30と、メインムービングASSY40と、吸気通路50と、排気通路58と、エンジン制御用ユニット(以下、ECU)60などから構成されている。
【0033】
シリンダブロックASSY30は、シリンダヘッド20が取り付けられるアッパーブロック31と、メインムービングASSY40が収納されているロアブロック32とから構成されている。また、アッパーブロック31とロアブロック32との間にはアクチュエータ33が設けられており、アクチュエータ33を駆動することで、アッパーブロック31をロアブロック32に対して上下方向に移動させることが可能となっている。また、アッパーブロック31の内部には円筒形のシリンダ34が形成されている。
【0034】
メインムービングASSY40は、シリンダ34の内部に設けられたピストン41と、ロアブロック32の内部で回転するクランクシャフト43と、ピストン41をクランクシャフト43に接続するコネクティングロッド42などから構成されている。これらピストン41、コネクティングロッド42、クランクシャフト43はいわゆるクランク機構を構成しており、クランクシャフト43が回転するとそれにつれてピストン41がシリンダ34内で上下方向に摺動し、逆に、ピストン41が上下に摺動すればクランクシャフト43がロアブロック32内で回転するようになっている。シリンダブロックASSY30にシリンダヘッド20を取り付けると、シリンダヘッド20の下面側(アッパーブロック31に接する側)とシリンダ34とピストン41とで囲まれた部分に燃焼室が形成される。従って、アクチュエータ33を用いてアッパーブロック31を上方に移動させれば、これに伴ってシリンダヘッド20も上方に移動して燃焼室内の容積が増加するので、圧縮比を小さくすることができる。逆に、アッパーブロック31とともにシリンダヘッド20を下方に動かせば、燃焼室内の容積が減少して圧縮比を大きくすることができる。
【0035】
シリンダヘッド20には、燃焼室内に空気を取り入れるための吸気ポート23と、燃焼室内から排気ガスを排出するための排気ポート24とが形成されており、吸気ポート23が燃焼室に開口する部分には吸気バルブ21が、また、排気ポート24が燃焼室に開口する部分には排気バルブ22が設けられている。吸気バルブ21および排気バルブ22は、ピストン41の上下動に合わせて、それぞれカム機構によって駆動される。こうしてピストンの動きに同期させて吸気バルブ21および排気バルブ22を、それぞれ適切なタイミングで開閉すれば、燃焼室内に空気を吸入したり、あるいは燃焼室内から排気ガスを排出することができる。また、シリンダヘッド20には、燃焼室内に形成された混合気に火花を飛ばして点火するための点火プラグ27も設けられている。
【0036】
シリンダヘッド20の吸気ポート23には、外気をシリンダヘッド20まで導くための吸気通路50が接続されており、吸気通路50の上流側端部にはエアクリーナ51が設けられている。燃焼室内に吸入される空気は、エアクリーナ51でゴミなどの異物を取り除かれた後、吸気通路50、吸気ポート23を経由して燃焼室に流入する。吸気通路50には、スロットルバルブ52や燃料噴射弁55などが設けられており、電動アクチュエータ53でスロットルバルブ52の開度を制御すれば、燃焼室内に流入する空気量を制御することができる。燃料は、燃料噴射弁55から吸気ポート23に向かって噴射される。噴射された燃料噴霧は、一部が吸気ポート23内で気化した状態で、残りは燃料噴霧あるいは燃料液膜の状態で燃焼室内に流入した後、燃焼室内で気化しつつ空気と混合して混合気を形成する。また、吸気通路50には吸気圧センサ56が設けられており、吸気通路内の圧力を検出することが可能となっている。
【0037】
シリンダヘッド20の排気ポート24には排気通路58が接続されており、燃焼室から排出された排気ガスは、排気通路58によって外部に導かれて放出される。
【0038】
ECU60は、中央処理装置(以下、CPU)を中心として、ROM、RAM、入出力回路などが、バスで相互に接続されたマイクロコンピュータである。詳細には後述するが、ECU60は、クランクシャフト43に設けられたクランク角センサ61や、アクセルペダルに内蔵されたアクセル開度センサ62、更には必要に応じて、吸気圧センサ56などから必要な情報を取り込んで、点火プラグ27、燃料噴射弁55、電動アクチュエータ53などを駆動することにより、エンジン10全体の動作を制御する。
【0039】
B.エンジン制御の概要:
次に、上述した構成を有するエンジン10の動作について説明する。図2は、ECU60がエンジン10の動作を制御する流れを示したフローチャートである。以下、フローチャートに従って説明する。
【0040】
ECU60は、エンジン制御ルーチンを開始すると先ず初めに、エンジンの回転速度Ne およびアクセル開度θacを検出する(ステップS100)。エンジン回転速度Ne は、クランク角センサ61の出力から算出し、また、アクセル開度θacは、アクセル開度センサ62を用いて検出することができる。
【0041】
尚、ステップS100では、アクセル開度θacに替えて、吸気圧センサ56で検出した吸気通路内圧力や、スロットル開度などを用いることも可能である。スロットル開度は、電動アクチュエータ53に内蔵された図示しないスロットル開度センサによって検出することができる。もちろん、ECU60はスロットル開度を制御しているから、ECU60内部で制御のために使用している開度を利用することも可能である。
【0042】
こうしてエンジン回転速度Ne およびアクセル開度θacを検出したら、エンジン10の定常運転度合いを判定する処理を開始する(ステップS102)。詳細には後述するが、「定常運転度合い」とは、エンジン10が定常状態で運転されているのか、あるいは運転条件が頻繁に変わっているのか、更には変わり方は大きいのか小さいのかといった運転状態を表す指標である。定常運転度合いを判定する処理の詳細については後述する。
【0043】
エンジン10の定常運転度合いを判定したら、圧縮比を設定する処理を開始する(ステップS104)。図1を用いて説明したように本実施例のエンジン10は、アクチュエータ33を用いてエンジンの圧縮比を変更することが可能である。そこで、ステップS104では、先に判定した定常運転度合いを考慮しながら、エンジンの運転条件に応じた適切な圧縮比を求めた後、アクチュエータ33を駆動して、エンジン10の圧縮比を適切な圧縮比に設定する処理を行う。圧縮比設定処理の詳細については後述する。
【0044】
ECU60は、圧縮比設定処理に続いて燃料噴射制御を開始する(ステップS106)。かかる制御では、燃焼室内に吸入される空気量を検出し、所定空燃比となる分量の燃料を、燃料噴射弁55から適切なタイミングで噴射する制御を行う。本実施例では、燃焼室内に吸入される空気量は、吸気圧センサ56により検出した吸気通路内の圧力に基づいて算出している。もちろん、吸気通路50内にエアフローセンサを設けてエンジン10が吸い込んだ空気量を計測してもよく、更には簡便に、エンジン回転速度およびアクセル開度(スロットルバルブ52の開度)をパラメータとして吸入空気量を予め計測してマップとして記憶しておき、このマップを参照して空気量を求めることも可能である。
【0045】
こうして求めた空気量に対して所定の空燃比となるように燃料を噴射する。空燃比とは、燃料と空気との混合割合を表す指標であり、燃焼室内に供給された空気重量を燃料重量で除算した値として定義される。ECU60に内蔵されたROMには、エンジン回転速度とアクセル開度(あるいはスロットルバルブ開度)とをパラメータとするマップの形式で、圧縮比毎に、目標の空燃比が記憶されている。
【0046】
図3は、エンジンの圧縮比毎に目標の空燃比を記憶しているマップを例示した説明図であり、エンジンの圧縮比13(ε=13)、圧縮比10.5(ε=10.5)、圧縮比9(ε=9)の三枚のマップが記憶されている様子を概念的に表している。例えば、圧縮比設定処理(図2のステップS104)においてエンジン10の圧縮比が13に設定された場合は、図3中で一番手前に表示したマップを参照しながら補間演算を行うことで、エンジン回転速度およびアクセル開度に対する目標の空燃比を算出することができる。もちろん、設定した圧縮比に対応するマップが記憶されていない場合は、異なる圧縮比の間で補間演算を行うことによって、設定した圧縮比についての目標空燃比を算出することができる。
【0047】
次いで、先に検出した空気量に対して空燃比が目標空燃比となるような燃料噴射量と、燃料噴射量に対応した燃料噴射開始タイミングとを算出する。前述した空燃比の定義から、空気量と目標の空燃比とが決まれば、噴射すべき燃料量は自ずから決定される。また、燃料噴射量が決まれば、燃料の噴射開示タイミングも自ずから決定される。すなわち、本実施例のエンジン10では燃料の噴射終了タイミングが固定されているので、燃料噴射量と燃料噴射開始タイミングとは一対一の関係にあり、燃料噴射量が決まれば自ずから燃料噴射開始タイミングも決定されるのである。燃料噴射制御(図2のステップS106)では、以上に説明したようにして燃料噴射開始タイミングを決定した後、クランク角センサ61の出力に基づいて、適切なタイミングで燃料噴射弁55を駆動する制御を行う。
【0048】
ECU60は、燃料噴射制御を終了すると点火制御を開始する(ステップS108)。点火制御では、適切なタイミングで点火プラグ27から火花を飛ばすことにより、燃焼室内に形成された混合気に点火する処理を行う。点火のタイミングは、ECU60のROMに記憶されたマップに基づいて設定される。
【0049】
図4は、エンジン回転速度とアクセル開度(あるいはスロットルバルブ開度)とをパラメータとするマップの形式で、圧縮比毎に、点火時期が記憶されている様子を概念的に表している。上述した燃料噴射制御の中で目標空燃比を算出する場合と同様にして、点火制御においても、図4に示したマップから補間演算を行って点火タイミングを算出する。点火制御では、こうしてエンジンの運転条件に応じた点火タイミングを算出した後、クランク角センサ61の出力に基づいて、適切なタイミングで点火プラグ27を駆動することにより、燃焼室内の混合気に点火する制御を行う。その結果、混合気が燃焼して燃焼室内の圧力が急激に上昇し、ピストン41が押し下げられる。この力が、コネクティングロッド42を介してクランクシャフト43に伝えられ、クランク機構で回転力に変換されて動力として出力されることになる。
【0050】
次いで、ECU60は、エンジンを停止する旨が設定されたか否かを確認し(ステップS110)、停止する旨が設定されていなければステップS100に戻って続く一連の処理を繰り返す。エンジンを停止する旨が設定された場合は、そのままエンジン制御ルーチンを終了する。こうして、エンジン10は、ECU60の制御の下で、図2の制御ルーチンに従って運転され、操作者の設定に応じた動力を発生させる。
【0051】
C.圧縮比変更制御:
上述したように、本実施例のエンジン10は、圧縮比を変更することが可能であり、エンジンの定常運転度合いを考慮して適切な圧縮比に設定することによって、燃料消費効率を大きく改善することが可能となっている。以下では、先ず、定常運転度合いを判定する処理(図2のステップS102)について説明した後、定常運転度合いを考慮して圧縮比を設定する処理(図2のステップS104)について説明する。
【0052】
C−1.定常運転度合い判定処理:
図5は、エンジン10の定常運転度合いを判定する処理の流れを示すフローチャートである。かかる処理は、前述したエンジン制御ルーチンの中でECU60によって実行される。尚、以下に説明する定常運転度合い判定処理は、後述するように、定常運転度合いの判定のために、エンジン制御ルーチン中で検出したアクセル開度を利用しているが、エンジン制御ルーチン中でアクセル開度に替えてスロットル開度あるいは吸気通路内圧力を検出する場合には、これらを用いて判定することも可能である。以下、フローチャートに従って説明する。
【0053】
定常運転度合い判定処理を開始すると、先ず初めに、変数Iを1だけインクリメントする処理を行う(ステップS200)。定常運転度合い判定処理はエンジン制御ルーチンが一周、回るたびに一回ずつ行われ(図2参照)、また、エンジン制御ルーチンが一周するために要する時間はほぼ一定であることから、変数Iは、エンジン制御ルーチンが回った回数を表すとともに、おおまかではあるが経過時間を表す変数と考えることもできる。
【0054】
次いで、アクセル開度の変化量、すなわち、今回のルーチンで検出されたアクセル開度が、前回のルーチンで検出したアクセル開度からどの程度変化したかを算出する(ステップS202)。アクセルペダルが踏み増されていれば、アクセル開度の変化量は正の値となり、逆にアクセルペダルが戻されていれば、変化量は負の値となる。
【0055】
そして、アクセル開度の変化量が反転したか否かを判断する(ステップS204)。変化量の符号が変わっていなければ変化量は反転していないと判断し、逆に符号が変わっていれば変化量が反転していると判断することができる。そして、変化量が反転している場合は(ステップS204:yes)、反転回数Nを1つだけインクリメントする(ステップS206)。変化量が反転していない場合は(ステップS204:no)、反転回数Nをインクリメントする処理(ステップS206)はスキップする。
【0056】
次いで、変化量の絶対値を累積して、アクセル操作量として記憶する(ステップS208)。こうして反転回数を計数しながら、変化量の絶対値を累積していく結果、例えば、アクセルペダルを小刻みに変更しながら頻繁に操作した場合は、反転回数Nは大きな値を取り、アクセル操作量は反転回数の割には小さな値を取ることになる。また、アクセルペダルをゆっくりと大きく操作した場合は、反転回数Nは小さく、アクセル操作量は大きな値となる。アクセルペダルを大きく且つ頻繁に操作した場合は、反転回数Nもアクセル操作量も大きな値を取ることになる。
【0057】
尚、アクセル開度の変化量が小さい場合(例えば、変化量の絶対値が所定値以下の場合)は、反転回数Nのインクリメントを行わず、あるいは変化量の絶対値を累積しないこととしても良い。こうすれば、閾値を適切な値に調整することで、定常運転度合いをより適切に判定することも可能となる。
【0058】
こうして変化量の累積値をアクセル操作量として記憶したら、エンジン制御ルーチンが回った回数を示す変数Iが、所定回数に達したか否かを判断し(ステップS210)、所定回数に達していない場合は(ステップS210:no)、定常運転度合い判定処理を終了して、図2に示したエンジン制御ルーチンに復帰する。こうしてエンジン制御ルーチンが一回実行される度に、定常運転度合い判定処理が実行され、反転回数Nやアクセル操作量が更新される。そして、変数Iが所定回数に達すると(ステップS210:yes)、反転回数Nとアクセル操作量とに基づいて、後述する方法で定常安定度合いを判定した後(ステップS212)、反転回数Nやアクセル操作量、変数Iをリセットして(ステップS214)、定常運転度合い判定処理を終了する。すなわち、ステップS210では、エンジン制御ルーチンが所定回数だけ回る間に、アクセルペダルが操作された回数とアクセルペダルの操作量とに基づいて定常運転度合いを判定していることになる。この様子を、図6を参照しながら補足して説明する。
【0059】
図6は、時間の経過とともにアクセルペダルが操作される様子を概念的に表した説明図である。図6は、経過時間を横軸にとって、アクセル開度が変化する様子を示したものである。アクセル開度の変化を示す曲線上に、一定間隔で設けられた小さな白丸は、エンジン制御ルーチン中でアクセル開度が検出されたことを表している。ここでは、エンジン制御ルーチンが一周するのに要する時間は、ほぼdt時間であり、従って、アクセル開度は時間dt毎に計測されているものとしている。また、図中に示したdθは、時間dt毎に計測されたアクセル開度の変化量である。
【0060】
図6に示した例では、初めの間は、アクセル開度は検出する度に増加しており、変化量dθは正の値を取り続けるが、時刻taに達すると、それまで正の値を取っていた変化量dθが負の値に転じる。従って、このとき反転回数Nが1だけインクリメントされて、N=1となる。次いで、時刻tbに達すると、アクセル開度の変化量dθが再び正の値に転じ、反転回数NがインクリメントされてN=2となる。以下、同様に、時刻tc、時刻tdにおいて、反転回数Nが、それぞれN=3、N=4とインクリメントされる。こうした操作を行うことで、エンジン制御ルーチンが所定回数だけ回る間に、アクセル開度の変化量dθが反転した回数を検出することができる。また、変化量dθの絶対値を累積していけば、アクセルの操作量を求めることが可能となる。
【0061】
以上のようにして、エンジン制御ルーチンが所定回数だけ実行される間の、反転回数Nとアクセル操作量とを検出したら、図7に示すようなマップを参照することによって、定常運転度合いの判定を行う。ECU60のROMには、反転回数とアクセル操作量との組合せに応じて、定常運転度合いが設定されたマップが記憶されている。図7に示すように、本実施例では、定常運転度合いとして、「定常運転」、「準定常運転」、「非定常運転」の三つの段階が設定されている。「定常運転」は、反転回数もアクセル操作量もいずれも小さい場合が該当する。また、アクセル操作量は大きいものの反転回数が小さい場合(例えば、一回だけアクセルペダルを大きく動かした場合など)や、逆に反転回数は多いもののアクセル操作量が小さい場合(例えば、アクセルペダルを微調整するものの、全体としては一定条件で運転している場合など)も「定常運転」に設定されている。反転回数もアクセル操作量もいずれも大きな値を取る場合は「非定常運転」に設定されている。反転回数あるいはアクセル操作量が非定常運転より小さく、定常運転と非定常運転との中間的な状態は「準定常運転」に設定されている。
【0062】
図5に示した定常運転度合い判定処理中のステップS212では、検出された反転回数Nと、アクセル操作量とに基づいて、図7に示したマップを参照することにより、定常運転度合いを反転するのである。
【0063】
尚、以上の説明においては、エンジン制御ルーチンが回った回数をカウントして、ルーチンが所定回数だけ実行される間の反転回数Nおよびアクセル操作量を検出し、これらの値に基づいて定常運転度合いを判定した。もちろん、ルーチンが回った回数をカウントするのではなく、タイマーをセットすることによって、所定時間が経過する間の反転回数Nおよびアクセル操作量を検出して、定常運転度合いを判定することとしても良い。
【0064】
また、以上の説明では、定常運転度合いは、「定常運転」、「準定常運転」、「非定常運転」の三つの段階が設定されているものとしたが、より多くの段階を設定することも可能である。更には、定常運転度合いを数値によって表現し、反転回数とアクセル操作量とに基づいて数値を決定することとしてもよい。
【0065】
あるいは、以上の説明では、エンジン制御ルーチンが所定回数だけ回る間のdθ(アクセル開度の変化量)の絶対値を累積し、この累積値をアクセル操作量とした。これに対して、変化量dθが反転してから再び反転するまでの間で変化量dθの絶対値を累積して、反転するたび毎にアクセル操作量を求めても良い。こうして、エンジン制御ルーチンが所定回数だけ回る間の、反転回数と、反転するたび毎のアクセル操作量とを求め、平均のアクセル操作量を算出して、定常運転度合いを判定しても良い。あるいは、それぞれのアクセル操作量を、例えば変化量dθの符号やエンジンの運転条件などに応じて適宜、重みを付けながら平均し、得られたアクセル操作量と反転回数とに基づいて定常運転度合いを判定することとしても良い。
【0066】
C−2.圧縮比設定処理:
以上のようにして、定常運転度合いを判定したら、判定結果を考慮しながら圧縮比を設定する。図8は、本実施例のエンジン10が圧縮比を設定する処理の流れを示したフローチャートである。この処理は、エンジン制御ルーチンが一回、回る度にECU60によって実行される。以下、図8に従って説明する。
【0067】
圧縮比設定処理を開始すると、先ず初めに、エンジン回転速度およびアクセル開度に基づいて圧縮比を決定する(ステップS300)。エンジン回転速度およびアクセル開度は、エンジン制御ルーチン中のステップS100において既に検出されている。また、圧縮比の決定に際して定常運転度合いを考慮してないことからも明らかなように、このときに決定される圧縮比は、エンジン10が定常運転している状態で最適となるように設定された圧縮比である。こうした圧縮比は、ECU60のROM内にマップの形式で記憶されている。
【0068】
図9は、ECU60のROM内に記憶されているマップ、すなわち、エンジン10の定常運転時に、燃料消費効率が最も高くなるような圧縮比が設定されたマップを概念的に示した説明図である。図示されているように、本実施例では、アクセル開度が大きくなるほど、すなわちエンジン負荷が高くなるほど、圧縮比が低くなるように設定されている。また、エンジン回転速度が比較的低い領域内には、回転速度が低くなるほど圧縮比も低くなるように設定された領域が存在している。
【0069】
一般に、エンジン負荷が高くなるほどノッキングが発生し易くなり、ノッキングが発生すると点火時期を遅角させてノッキングを回避しなければならず、結果として燃料消費効率が悪化してしまう。従って、エンジン負荷が高くなるほど圧縮比を低く設定しておけば、ノッキングの発生を回避し、延いては燃料消費効率の悪化を避けることができる。また、エンジン回転速度が低い運転条件ではノッキングが発生し易いので、エンジン回転速度が比較的低い領域内に、回転速度が低くなるほど圧縮比も低くなるように設定された領域を設けておくことで、ノッキングの発生を回避して、燃料消費効率の悪化を避けることが可能である。図8に示した圧縮比設定処理中のステップS300では、図9に示すマップを参照することによって、定常運転時の圧縮比を決定するのである。
【0070】
こうして定常運転時の圧縮比を決定したら、定常運転度合いを考慮して補正する処理を行う(ステップS302)。圧縮比の補正量は、ECU60内のROMに予め記憶されている。図10は、ROMに記憶された圧縮比の補正量を例示した説明図である。例えば、現在の定常運転度合いが「定常運転」であると判定されているとする。この場合は、ステップS300で決定した圧縮比をそのまま採用すればよいので、補正量は「0」が記憶されている。定常運転度合いが「準定常運転」と判定されている場合は、ステップS300で決定した圧縮比を「1.5」だけ低い圧縮比に補正する。また、定常運転度合いが「非定常運転」と判定されている場合は、圧縮比を「2.5」だけ低い圧縮比に補正する。図8に示した圧縮比設定処理中のステップS302では、こうして、定常運転度合いに応じて圧縮比を補正する処理を行う。
【0071】
次いで、圧縮比が上限値を超えていないことを確認する(ステップS304)。すなわち、仮に、何らかの理由で異常に高い圧縮比が算出された場合を考慮して、圧縮比には、定常運転度合いに応じた上限値が予め定められている。図10は、ECU60のROM内に、定常運転度合いに応じて圧縮比の上限値が記憶されている様子を概念的に例示した説明図である。ステップS304では、補正された圧縮比が、このように定常運転度合いに応じて定められた圧縮比の上限値を超えていないことを確認し、仮に上限値を超えている場合は(ステップS304:no)、圧縮比を上限値に変更する(ステップS306)。この結果、エンジン10の圧縮比は、定常運転度合いに応じた圧縮比にクリップされ、決して上限値を超えることはない。
【0072】
ECU60は、こうして補正した圧縮比に応じてアクチュエータ33を駆動することにより、エンジン10の圧縮比を変更する(ステップS308)。アクチュエータ33は電力を動力源として動作するリニアアクチュエータであり、ECU60との間で、位置サーボを行うサーボ制御系を構成している。もちろん、アクチュエータ33の替わりに、油圧などの他の動力源によって動作するアクチュエータを用いることも可能である。ECU60は、アクチュエータ33を制御してエンジン10の圧縮比を補正された圧縮比に変更したら、図8に示す圧縮比設定処理を終了して図2のエンジン制御ルーチンに復帰する。
【0073】
以上に説明したように、本実施例のエンジン10では、定常運転度合いを考慮して圧縮比を設定している。このため、以下に説明する理由から、圧縮比を変更可能な効果を十分に引き出して燃料消費効率を大きく向上させることが可能となる。
【0074】
エンジンが、ほぼ一定の運転状態で運転されている場合には、運転条件(代表的には、エンジン回転速度およびエンジン負荷)に応じて適切な圧縮比に設定してやることで、エンジンの燃料消費効率を大きく改善することが可能である。ところが、エンジンは運転条件(特にエンジン負荷)の変動の変化が、大きく、あるいは頻繁に変更されながら運転されることが多いので、運転条件の変動に応じて圧縮比も変更する必要が生じる。しかし圧縮比を変更するためには、アクチュエータ33を駆動してアッパーブロック31およびシリンダヘッド20を移動させるための大きなエネルギが必要となり、従って、頻繁にあるいは大きく圧縮比を変更したのでは、圧縮比変更によって本来ならば得られるであろう燃料消費効率の改善効果を減殺することになる。こうした点を鑑みて、上述したように定常運転度合いを考慮して圧縮比を設定することとすれば、運転条件の変更を見越して適切な圧縮比に設定することができ、延いては燃料消費効率を大きく向上させることが可能となるのである。
【0075】
更には、圧縮比を高圧縮比から低圧縮比に変更する場合、運転条件の変化に対して圧縮比の変更が遅れると、強いノッキングが発生することがある。ノッキングの発生を回避するために点火時期を遅角させたのでは、燃料消費効率の低下を招いてしまう。もちろん、運転条件の変動に対して圧縮比の変更が遅れることの無いように、大型のアクチュエータ33を用いてアッパーブロック31およびシリンダヘッド20を素早く動かしてやれば、ノッキングの発生を回避することができるが、これでは、アクチュエータ33を駆動するために大きなエネルギが必要となってしまい、結局は、燃料消費効率の低下を招いてしまう。これに対して、上述したように定常運転度合いを考慮することによって、運転条件の変更を見越して適切な圧縮比に設定してやれば、こうした事態の発生を回避することができるので、燃料消費効率を大きく向上させることが可能となる。
【0076】
D.変形例:
以上に説明した実施例では、定常運転時の最適な圧縮比を記憶しておき(図9参照)、この圧縮比を、定常運転度合いに応じて補正するものとして説明した。もっとも、定常運転度合いの判定結果を考慮しながら適切な圧縮比を設定する方法は、こうした方法に限られるものではなく、種々の方法を適用することが可能である。例えば、図11に示すように、定常運転度合い毎に適切な圧縮比を予め記憶しておき、定常運転度合いの判定結果に応じて、対応するマップを参照しながら圧縮比を設定することとしても良い。
【0077】
また、以上の説明では、エンジン10の圧縮比は連続的に変更可能として説明したが、もちろん、圧縮比を何段階かに切り換え可能としても構わない。こうすれば、制御内容を簡素なものとすることが可能となる。
【0078】
以上に説明した実施例では、アクチュエータ33を用いてアッパーブロック31およびシリンダヘッド20を動かすことによって、圧縮比を変更するものとした。しかし、圧縮比を変更する方法は、こうした方法に限られるものではなく、種々の方法に適用することも可能である。いずれの切り換え方法を用いた場合でも、上述した実施例と同様に、運転条件の変動に対して圧縮比の切り換えが遅れた場合には、ノッキングの発生を回避するために点火時期を遅角させる必要が生じる。また、圧縮比の切り換えには大きなエネルギが必要であるため、頻繁に切り換えたり、あるいは速やかに切り換えるためには大きなエネルギが消費される点でも同様である。従って、本発明は、こうした場合にも好適に適用可能なことは言うまでもない。
【0079】
更に、上述した本実施例のエンジン10は、車両の動力源として好適に搭載することができる。車両は走行状況が変化するので、これに伴って内燃機関の運転条件が大きくあるいは頻繁に変更されることが多い。従って、上述したエンジン10を動力源として用いれば、燃料消費効率を大きく改善することが可能となる。
【0080】
以上、各種の実施例について説明してきたが、本発明は上記すべての実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施例のエンジンの構成を概念的に示した説明図である。
【図2】 エンジン運転制御ルーチンの流れを示すフローチャートである。
【図3】 圧縮比に応じて空燃比の制御目標値が設定されているマップを概念的に示した説明図である。
【図4】 圧縮比に応じて点火時期の制御目標値が設定されているマップを概念的に示した説明図である。
【図5】 エンジン制御ルーチンの中で実行される本実施例の定常運転度合い判定処理の流れを示したフローチャートである。
【図6】 定常運転度合いを判定するために、アクセル開度の変化量が反転した回数とアクセル操作量とを検出している様子を概念的に示した説明図である。
【図7】 反転回数とアクセル操作量とに応じて定常運転度合いが決定される様子を例示した説明図である。
【図8】 エンジン制御ルーチンの中で実行される本実施例の圧縮比設定処理の流れを示したフローチャートである。
【図9】 エンジンの運転条件に応じて、定常運転状態での圧縮比が設定されているマップを概念的に例示した説明図である。
【図10】 圧縮比の補正量と圧縮比の上限値とが定常運転度合いに応じて設定されている様子を例示した説明図である。
【図11】 定常運転度合いに応じて適切な圧縮比がマップの形式で記憶されている様子を概念的に示した説明図である。
【符号の説明】
10…エンジン
20…シリンダヘッド
21…吸気バルブ
22…排気バルブ
23…吸気ポート
24…排気ポート
27…点火プラグ
30…シリンダブロックASSY
31…アッパーブロック
32…ロアブロック
33…アクチュエータ
34…シリンダ
40…メインムービングASSY
41…ピストン
42…コネクティングロッド
43…クランクシャフト
50…吸気通路
51…エアクリーナ
52…スロットルバルブ
53…電動アクチュエータ
55…燃料噴射弁
56…吸気圧センサ
58…排気通路
60…ECU
61…クランク角センサ
62…アクセル開度センサ
Claims (7)
- 圧縮比を制御可能な圧縮比制御機構を有する内燃機関であって、
前記内燃機関の運転条件として、前記内燃機関の負荷に関連した値を検出する運転条件検出手段と、
前記内燃機関が定常状態で運転されている度合いを表す定常運転度合いを、前記検出した運転条件に基づいて判定する定常運転度合い判定手段であって、前記負荷に関連した値の検出結果から所定期間内における前記負荷の変化量と、前記負荷の変化量の正負の反転回数とを抽出し、前記変化量と前記反転回数とを用いて前記定常運転度合いを判定する定常運転度合い判定手段と、
前記検出した負荷の変化量を用いて前記内燃機関が定常運転で運転されている場合における圧縮比の制御目標値を決定し、前記判定した定常運転度合いが定常運転に該当しない度合いを示す場合には、前記決定された制御目標値を低減する目標圧縮比設定手段と
を備える内燃機関。 - 請求項1に記載の内燃機関であって、
前記定常運転度合いに応じて前記圧縮比の上限値を記憶している上限圧縮比記憶手段と、
前記設定された圧縮比の制御目標値が、前記定常運転度合いに応じて記憶されている上限値を超える場合に、該圧縮比の制御目標値を該上限値に変更する目標圧縮比変更手段と
を備える内燃機関。 - 請求項1に記載の内燃機関であって、
前記負荷の変化量と前記負荷の反転回数とに応じて定められた複数の領域毎に、前記圧縮比の許容値を記憶している許容圧縮比記憶手段と、
前記設定された圧縮比の制御目標値が、前記領域毎に記憶されている前記許容値を超える場合に、該圧縮比の制御目標値を該許容値に変更する目標圧縮比変更手段と
を備える内燃機関。 - 請求項3記載の内燃機関であって、
前記許容圧縮比記憶手段は、少なくとも前記負荷の変化量および前記負荷の反転回数が少ない領域ほど、大きな値の前記許容値を記憶している手段である内燃機関。 - 請求項1記載の内燃機関であって、
前記運転条件検出手段は、前記運転条件として、少なくとも前記内燃機関の負荷に関連した値と、該内燃機関の回転速度とを検出する手段であり、
前記目標圧縮比設定手段は、
少なくとも前記回転速度を含んだ運転条件毎に、該運転条件に応じた基準の圧縮比を記憶している基準圧縮比記憶手段と、
前記運転条件に応じて記憶されている前記基準の圧縮比を、前記定常運転度合いに基づき低減する基準圧縮比補正手段と
を備えるとともに、
前記基準圧縮比記憶手段は、少なくとも所定回転速度以下の領域内に、前記回転速度が低くなるほど前記記憶されている基準の圧縮比が小さくなる領域を有している内燃機関。 - 圧縮比を制御可能な圧縮比制御機構を有する内燃機関を動力源として搭載した車両であって、
前記内燃機関に対して要求する出力を設定するアクセルペダルと、
前記内燃機関が定常状態で運転されている度合いを表す定常運転度合いを、所定期間内における前記アクセルペダルの操作量と、前記アクセルペダルの開度の変化量の正負の反転回数とに基づいて判定する定常運転度合い判定手段と、
前記アクセルペダルの操作量を用いて前記内燃機関が定常運転で運転されている場合における圧縮比の制御目標値を決定し、前記判定した定常運転度合いが定常運転に該当しない度合いを示す場合には、前記決定された制御目標値を低減する目標圧縮比設定手段と
を備える車両。 - 圧縮比を制御可能な圧縮比制御機構を有する内燃機関の制御方法であって、
前記内燃機関の運転条件として、前記内燃機関の負荷に関連した値を検出する第1の工程と、
前記内燃機関が定常状態で運転されている度合いを表す定常運転度合いを、前記負荷に関連した値の検出結果を用いて抽出した所定期間内における前記負荷の変化量と、前記負荷の変化量の正負の反転回数とを用いて判定する第2の工程と、
前記検出した負荷の変化量を用いて前記内燃機関が定常運転で運転されている場合における圧縮比の制御目標値を決定し、前記判定した定常運転度合いが定常運転に該当しない度合いを示す場合には、前記決定された制御目標値を低減する第3の工程と、
前記決定または低減された制御目標値に前記内燃機関の圧縮比を制御する第4の工程と
を備える内燃機関の制御方法。
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