JP4377552B2 - 連続鋳造用タンディッシュ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属溶湯の連続鋳造において取鍋から鋳型に溶湯を注入する際に使用する連続鋳造用タンディッシュに関するもので、詳しくは、ピンホールや介在物の少ない高品質な鋳片を製造し、且つ、注入流が制御不能などのトラブルの際に確実にトラブルに対処し得るタンディッシュに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属溶湯の連続鋳造ではタンディッシュから鋳型へ溶湯を注入する際に、溶湯の注入量を制御する方法として以下の2つの方法がある。1つは、先端が半球状のストッパ−とタンディッシュノズル(以下、上ノズルと称す)により、上ノズル上面の開口部における溶湯の流通路面積を変化させて注入量を制御するストッパータイプと、他1つは、上ノズル下面に3枚の孔のあいたプレートを重ね、中央のプレートを水平方向にスライドする、あるいは、2枚プレート方式で下プレートをスライドすることにより、溶湯流通路面積を変化させて注入量を制御するスライディングノズル(以下、SNと称す)タイプがある。
【0003】
最近の特に鋼の品質厳格化ニーズが高まる中で、耐火物同士の接合部からの外気侵入によるピンホール発生防止と、注入中の再酸化防止による介在物低減技術が重要となってきている。これらの大きな要因の一つとして、タンディッシュからモールドへの注入中に溶湯が通過する耐火物の接合部位の隙間から空気を吸い込み、その空気が溶鋼中に侵入し、溶鋼を酸化すると考えられ、それが介在物の増加、あるいは鋳片表層のピンホール欠陥の原因になっていると考えられている。
【0004】
空気の吸い込みの観点からすると、前記SNタイプの注入量制御方式では、耐火物同士の接合面が多く、それだけ空気侵入箇所が多いので、再酸化の観点からは不利である。
一方、ストッパータイプでは、実開平5−33948号公報に開示されているようなタンディッシュから鋳型までの溶湯通過時に溶湯に接する耐火物を一体化し、耐火物同士の接合部を皆無とし、空気の侵入源を絶つという利点はあるが、ストッパータイプでは、長時間使用するうちに耐火物が溶損し、あるいはストッパーと上ノズル間に付着物が堆積し、ストッパーを上ノズルに押し付けてもその接触面に隙間ができて、溶湯の流出を停止できないケースが発生する。このようなとき、ひどい場合は鋳型から溶湯がオーバーフローして、大トラブルとなる可能性があり、その防止策として注入流の緊急停止手段が必要である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の対応策として、例えば特開昭52−141423号公報には、浸漬ノズルの横に非常用の樋を設置しておき、非常時の場合は、この樋を注入ノズルに衝撃的にぶつけてノズルを破壊し、同時に落下溶鋼を樋に導いて安全な非常ポットへ流出せしめる技術が開示されている。しかし、溶湯の流出自体を止めるものではない。
【0006】
本発明の目的は、通常の注入時には、空気の吸引を抑制し、高品質の鋳片を製造し得るストッパータイプによる流量制御方式のタンディッシュであり、注入流が制御不能となった非常時でも、確実に注入流を停止できる連続鋳造用タンディッシュを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の要旨は次の通りである。
(1)タンディッシュからモールドへ注入する溶湯の注入量を制御するストッパーと、前記溶湯が通過する注入流経路の特定部位が分離可能な構造とした耐火物と、当該分離可能な部位に隣接して、注入量が制御不能となった場合に注入を停止するための閉鎖プレートとを設けた連続鋳造用タンディッシュにおいて、前記注入流経路の耐火物の分離可能な部位について、当該部位の目地材として定形シール材を用い、前記閉鎖プレートが注入流を閉鎖する場合に、当該閉鎖プレートを水平方向に移動すると同時に、前記分離可能な耐火物のうち下部耐火物を押し出す構造とし、前記閉鎖プレートの構造が、前記水平方向に下部耐火物を押し出す際に上部耐火物下面に付着した定形シール材を削り取る構造としたことを特徴とする連続鋳造用タンディッシュ。
(2)前記定形シール材が、シリカ(SiO2 )を主体としたことを特徴とする上記(1)記載の連続鋳造用タンディッシュ。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面によって本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である。取鍋から供給された溶湯がタンディッシュ1内に注入され、次に溶湯はタンディッシュ底部の上ノズル2から浸漬ノズル3を経て鋳型へと注入される。上ノズル2上部には、先端が球面状となったストッパー4が押し付けられて溶湯が流出しない構造となっているが、注入開始時には、ストッパー4を上昇させ、溶湯を上ノズル2を通して落下させる。この時ストッパー4と上ノズル2との間隔を変化させることによって、鋳型への注入量を制御する。上ノズル2の下には、浸漬ノズル3が接続されて溶湯を鋳型まで導いている。
【0009】
本実施例では、溶湯の通過経路に接する耐火物の接続部は1箇所のみである。即ち、上ノズル2(上部耐火物)の下端と浸漬ノズル3(下部耐火物)の上端との接続箇所である。その接続部には、従来モルタルを使用していた。しかし、モルタルは、20%程度の水分を含んでおり、注入中にはモルタル中の水分は蒸発する。モルタル中の水分が蒸発すると、その部分は空隙となり、そこから空気が侵入する。従って、本発明では耐火物同士の接合部には、定形シール材5を使用する。この定形シール材5を使用することにより空気の侵入は、かなり抑制できる。
【0010】
そして、その耐火物の接合部の側方に閉鎖プレート6を設ける。該閉鎖プレート6は、ストッパー4が溶損などの原因により注入流の制御が不能となった場合に、油圧駆動等により水平に移動し浸漬ノズル3を反対側に押し出しながら、上ノズル2の下で停止し、タンディッシュ1からの溶湯流出を防ぐものである。この時、上ノズル下面に定形シール材5などが残存していると、閉鎖プレート6が上ノズル2の流出孔出口を完全に塞ぐことができず、隙間から溶湯が洩れてトラブルを回避できないケースが出てくる。
この対策として、閉鎖プレート6が上ノズル2の下に移動するときに上ノズル下に付着したシール材5を削り取りながら移動できるように、閉鎖プレート6の進行方向前面側を鋭角にしたり、あるいは、刃を設けるなどして、残存シール材を削ることのできる構造とすることが望ましい。
【0011】
また、前記定形シール材5は、通常アルミナ(Al2 O3 )主体のものである(下記表1参照)。アルミナ主体の定形シール材は、耐溶損性に優れているが、熱間での接着強度が強いために、閉鎖プレートの押し込み力を大きくする必要がある。一方、表1に示すようなシリカ(SiO2 )主体の定形シール材の場合には、閉鎖プレート6の押し込み力は、アルミナ主体の定形シール材に対して小さくても良く、押し込み装置の押し込み能力が小さい場合には、シリカ主体の定形シール材の使用が可能である。もちろん、アルミナ原料と珪石原料とを組み合わせることで、中間の特性を持った定形シール材を製造し、使用することも可能である。
【0012】
【表1】
【0013】
上述した本発明に係るタンディッシュを実際の鋳造作業に適用したところ、下記の表2に示す如く、鋳造された鋳片品質について格段に改善されていることが確認された。すなわち、本発明の採用により、ピンホール個数及び介在物個数ともに従来方式に比べ低減していることが分かる。
【0014】
【表2】
【0015】
【発明の効果】
以上説明した本発明により、溶湯の流量制御をストッパータイプで行うタンディッシュでも、非常時には、閉鎖プレートを押し込むことにより確実に注入流を停止でき、且つ、通常の注入時には、空気の侵入を抑制し、高品質の鋳片を製造可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例であるタンディッシュの全体概要を示す図である。
【符号の説明】
1 タンディッシュ
2 上ノズル(上部耐火物)
3 浸漬ノズル(下部耐火物)
4 ストッパー
5 定形シール材
6 閉鎖プレート
Claims (2)
- タンディッシュからモールドへ注入する溶湯の注入量を制御するストッパーと、前記溶湯が通過する注入流経路の特定部位が分離可能な構造とした耐火物と、当該分離可能な部位に隣接して、注入量が制御不能となった場合に注入を停止するための閉鎖プレートとを設けた連続鋳造用タンディッシュにおいて、前記注入流経路の耐火物の分離可能な部位について、当該部位の目地材として定形シール材を用い、前記閉鎖プレートが注入流を閉鎖する場合に、当該閉鎖プレートを水平方向に移動すると同時に、前記分離可能な耐火物のうち下部耐火物を押し出す構造とし、前記閉鎖プレートの構造が、前記水平方向に下部耐火物を押し出す際に上部耐火物下面に付着した定形シール材を削り取る構造としたことを特徴とする連続鋳造用タンディッシュ。
- 前記定形シール材が、シリカ(SiO2 )を主体としたことを特徴とする請求項1記載の連続鋳造用タンディッシュ。
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