特許文献2の構成によれば、原稿挿入口から、ピックアップローラ及び分離ローラと分離パッドとを介して1枚ずつに分離搬送される原稿は搬送ローラ対にて原稿台ガラスの原稿読取部の上面に当接する密着ローラの下面に向かって斜め下向きに案内するように構成され、搬送ローラ対は、固定されたフレームに配置されている。したがって、この搬送ローラ対若しくは密着ローラと原稿台ガラスとの間に挟まった紙ジャムを処理するには、原稿挿入口若しくは原稿排出口側から無理やり原稿を引き抜くしか方法がなく、詰まった原稿が破れるなどの不具合があった。
仮に、引用文献1のように上カバーを開く構成を採用しても、上記給紙側で、紙が詰まった場合には、前記搬送ローラ対を逆転させる構成を採用しない限り、詰まった紙が除去されるとはかぎらず、強引に原稿を引っ張ると当該原稿が破れるおそれがあり、さらにその破れて原稿搬送路の内部に残った紙部分を除去(取り出す)することは非常に困難になるという問題があった。
本発明は、このような課題を解消し、下位置に給紙部を配置し、上位置に排紙部を有してUターン状の原稿搬送路を有する原稿読取装置に用いられる自動原稿搬送装置において、この原稿搬送路の大部分を開放できるようにすると共に、給紙側の原稿搬送路における原稿のニップ箇所の大部分をニップ解除できるようにして、紙ジャムに対して簡単に対応できる原稿搬送装置を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明における原稿搬送装置は、所定の搬送方向に搬送される原稿の画像を読取位置で読み取る読取手段を有する画像読取装置に搭載され、下側に配置された給紙トレイ部から前記読取位置へ原稿を搬送する第1の搬送方向と、前記読取位置を経て前記給紙トレイ部より上側に配置された排紙トレイ部まで原稿を搬送する第2の搬送方向とからなる略Uターン形状の原稿搬送路が備えられる原稿搬送装置であって、前記略Uターン形状の原稿搬送路に配置された反転ローラの下面側に前記読取位置が位置し、前記給紙トレイ部に堆積状態にて載置された複数の原稿から1の原稿を分離して第1の搬送方向に搬送するために第1の回転駆動部材と第1の当接部材とは、前記読取位置よりも搬送上流側に配置され、前記反転ローラに対して弾力的に当接可能な従動ローラが前記読取位置より搬送上流側と搬送下流側とにそれぞれ配置され、前記搬送下流側に配置された従動ローラと前記第1の当接部材とはカバー部材に設けられ、前記カバー部材を閉じたときには前記第1の当接部材が前記第1の回転駆動部材に弾力的に押圧され、且つ前記搬送下流側に配置された従動ローラが前記反転ローラに弾力的に押圧される一方、前記カバー部材が開いたときには、前記第1の当接部材が前記第1の回転駆動部材から離間し、且つ前記搬送下流側に配置された従動ローラが前記反転ローラから離間するように構成され、前記第1の回転駆動部材と前記読取位置との間の原稿搬送路に配置されて前記反転ローラに押圧される従動ローラは、強制離間手段を介して前記反転ローラから強制的に離間可能とするように構成されているものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の原稿搬送装置において、前記カバー部材は、前記反転ローラから離間した位置の回動軸であって、且つ前記給紙トレイ部よりも排紙トレイ部に近い位置に設けられた回動軸を中心に回動可能に構成され、前記カバー部材は、前記原稿搬送路のうち、前記反転ローラの周面における前記読取手段の読取面に対向して配置された部分を除く部分を開放可能に構成されているものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の原稿搬送装置において、前記読取位置より搬送上流側に配置された前記従動ローラは、原稿搬送装置の本体側に設けた移動可能なフレームに設けられ、該フレームはばね手段により付勢されているものである。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の原稿搬送装置において、前記フレームは、前記第1回転駆動部材の下方に配置され、且つ静止原稿押圧のための第2の押圧部材の上面に配置され、前記読取位置より搬送上流側に配置された前記従動ローラは、前記フレームの始端に回転可能に支持されており、前記フレームの後端は、前記従動ローラを前記反転ローラに向かって弾力的に押圧する付勢手段を介して前記第2の押圧部材の上面に配置された支持片に支持されているものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の原稿搬送装置において、前記第1の回転駆動部材は搬送方向に隔てた2つの駆動ローラからなり、この2つの駆動ローラに対してそれぞれパッド状の第1の当接部材が弾力的に付勢されているものである。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の原稿搬送装置において、前記各パッド状の当接部材が前記カバー部材の内面にて押圧手段を介して前記各駆動ローラに押圧されるように取付けられているものである。
請求項1に記載の発明によれば、所定の搬送方向に搬送される原稿の画像を読取位置で読み取る読取手段を有する画像読取装置に搭載され、下側に配置された給紙トレイ部から前記読取位置へ原稿を搬送する第1の搬送方向と、前記読取位置を経て前記給紙トレイ部より上側に配置された排紙トレイ部まで原稿を搬送する第2の搬送方向とからなる略Uターン形状の原稿搬送路が備えられる原稿搬送装置であって、前記略Uターン形状の原稿搬送路に配置された反転ローラの下面側に前記読取位置が位置し、前記給紙トレイ部に堆積状態にて載置された複数の原稿から1の原稿を分離して第1の搬送方向に搬送するために第1の回転駆動部材と第1の当接部材とは、前記読取位置よりも搬送上流側に配置され、前記反転ローラに対して弾力的に当接可能な従動ローラが前記読取位置より搬送上流側と搬送下流側とにそれぞれ配置され、前記搬送下流側に配置された従動ローラと前記第1の当接部材とはカバー部材に設けられ、前記カバー部材を閉じたときには前記第1の当接部材が前記第1の回転駆動部材に弾力的に押圧され、且つ前記搬送下流側に配置された従動ローラが前記反転ローラに弾力的に押圧される一方、前記カバー部材が開いたときには、前記第1の当接部材が前記第1の回転駆動部材から離間し、且つ前記搬送下流側に配置された従動ローラが前記反転ローラから離間するように構成され、前記第1の回転駆動部材と前記読取位置との間の原稿搬送路に配置されて前記反転ローラに押圧される従動ローラは、強制離間手段を介して前記反転ローラから強制的に離間可能とするように構成されている。
従って、前記搬送下流側に配置された従動ローラと前記第1の当接部材とはカバー部材に設けられ、前記カバー部材を閉じたときには前記第1の当接部材が前記第1の回転駆動部材に弾力的に押圧され、且つ前記搬送下流側に配置された従動ローラが反転ローラに弾力的に押圧されているが、前記カバー部材が開いたときには、前記第1の当接部材が前記第1の回転駆動部材から離間し、且つ前記搬送下流側に配置された従動ローラが前記反転ローラから離間するように構成されているので、第1の搬送方向(給紙側)の原稿搬送路及び、第2の搬送方向(排紙側)の原稿搬送路で紙ジャムが発生しても、前記カバー部材を開くだけで、当該2の搬送方向(排紙側)の原稿搬送路が開放されて簡単に紙ジャムを処理することができる。
他方、前記第1の回転駆動部材と前記読取位置との間の原稿搬送路に配置されて前記反転ローラに押圧される従動ローラは、強制離間手段を介して前記反転ローラから強制的に離間可能となるので、カバー部材を開いた後に、作業者が指またはドライバー等の工具で強制離間手段を操作することで、前記搬送上流側に配置された従動ローラを反転ローラの周面から離間させられるから、原稿を軽い力で抜き出せて、簡単に紙ジャムを解除できる。
請求項4に記載の発明によれば、前記フレームは、前記第1の回転駆動部材の下方に配置され、且つ、静止原稿押圧のための前記本体側における第2の押圧部材の上面に配置されているので、前記フレームの配置により、前記第1の回転駆動部材と第1の当接部材による原稿の分離搬送の機能(作用)が損なわれることがない。また、静止原稿押圧のための第2の押圧部材の作用も阻害することがないという効果を奏することができる。
請求項4に記載の発明によれば、前記読取位置より搬送上流側に配置された従動ローラは、前記フレームの始端に回転可能に支持されており、前記フレームの後端は、前記従動ローラを前記反転ローラに向かって弾力的に押圧する付勢手段を介して前記第2の押圧部材の上面に配置された支持片に支持されているものである。
従って、前記フレームの始端と後端との間を上下寸法の薄い扁平な形状とすることができ、前記第1の回転駆動部材の下面と前記第2の押圧部材の上面との間の小さくした上下隙間内に前記フレームを配置してコンパクトに構成することができる。
請求項2に記載の発明によれば、カバー部材は、前記反転ローラから離間した回軸軸であって、且つ前記給紙トレイ部よりも排紙トレイ部に近い位置に設けられた回動軸を中心に回動可能に構成され、前記カバー部材は、前記原稿搬送路のうち、前記反転ローラの周面における前記読取手段の読取面に対向して配置された部分を除く部分を開放可能に構成されているものである。
従って、カバー部材を1つの回転中心の周りで開閉させるだけで、各当接部の形成と解除とを簡単に達成させることができるという効果を奏する。そして、反転ローラから遠い側を回動中心にしてカバー部材を開くと、その反転ローラの周面のうち前記回動中心から遠い側である搬送下流側(第2搬送側)に配置された従動ローラを反転ローラの周面から大きく離間でき、紙ジャムを処理するための開放空間を大きく採れるという効果を奏する。
請求項5に記載の発明によれば、前記第1の回転駆動部材は搬送方向に隔てた2つの駆動ローラからなり、この2つの駆動ローラに対してそれぞれパッド状の第1の当接部材が弾力的に付勢されているものである。従って、2つの駆動ローラを同時に回転駆動させ易く、また、各駆動ローラに対するパッド状の当接部材で当接部を形成するから、当接位置を適宜に選択することができる。
請求項6に記載の発明によれば、パッド状の当接部材を押圧手段にて駆動ローラに押圧するからその押圧力の調整が容易になり、且つ押圧手段の構成も簡単にできるという効果を奏する。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面に基づいて説明する。図1は本発明の画像読取装置を備えた多機能装置の斜視図、図2は平面図、図3は原稿搬送装置(ADF)における原稿搬送路を覆うカバー部材としての搬送部カバー体を開いた(開放した)状態の斜視図、図4は搬送部カバー体を大きく開いた状態の平面図、図5(a)は画像読取装置の図2のVa−Va線矢視断面図、図5(b)は画像読取装置の図2のVb−Vb線矢視断面図、図6は図5(a )の要部拡大断面図、図7は画像読取位置での原稿をガラス板に押圧する押圧部材及び従動ローラを押圧・離間させる手段の箇所を示す拡大断面図、図8は搬送部カバー体を開放した状態の拡大平面図、図9は図8のIX−IX線矢視拡大断面図、図10は駆動系を示す図、図11は反転ローラ及び押圧部材等の箇所を示す拡大斜視図、図12は静止原稿を押圧する押圧板等の斜視図、図13は他の実施形態を示す拡大断面図である。
本発明の実施形態は、ファクシミリ機能、スキャナ機能、複写機能及びプリンタ機能を備えた多機能装置1における画像読取装置2とその原稿搬送装置3に適用したものである。
図1及び図2に示すように、多機能装置1の本体ケース4の上面には、その前寄り部位に、ファクシミリ機能、スキャナ機能、複写機能を実行するためのテンキーや各種作業を指令するためのボタンキー、指令内容表示やエラー表示等を行う液晶パネルなどを備えた操作パネル部5が配置されている。操作パネル部5の後方には、スキャナ機能を実行するための画像読取装置2とそれに搭載される原稿搬送装置3とが配置されている。図5(a)及び図5(b)に示すように、画像読取装置2におけるケース2a上には静止原稿載置用及び搬送原稿用の透明板部材として兼用されるガラス板6が配置されている。従って、ガラス板6は請求項にいう第1の透明部材及び第2の透明部材を兼用する。ガラス板6の下方には、原稿の画像記録面を読取るためのライン形の読取手段8(例えば、密着形イメージセンサ:CIS(Contact Image Sensor)等)を備えている。図1のX方向に沿った直線状のガイド軸9に載置されて往復移動可能なライン形の読取手段8は図1のY方向に直線的に長く形成されている。
画像読取装置2におけるケース2aはその一側端部(実施形態では、図1及び図2の左側端)側で本体ケース4に水平に設けられた枢軸7(図5(a)及び図5(a)参照)を中心に上下回動可能に装着されている。
画像読取装置2に対して原稿を搬送する原稿搬送装置3(自動原稿供給装置(ADFともいう)は、ガラス板6上に画像記録面を当接させて載置する静止原稿を押圧する押圧板体10(請求項でいう第2の押圧部材に相当)の上部に設けられる。合成樹脂製の押圧板体10はその後端(操作パネル部5と反対側)の蝶番10a(図2及び図4で一方のみ示す)を介してケース2aに対して上下回動可能に装着されている。なお、この押圧板体10の下面には、スポンジ及び白板等からなる押え体(図示せず)を貼り付けても良い。
図5(a)、図5(b)、図6及び図7に示すように、ガラス板6の左端部に読取手段8を静止させた位置であって、ガラス板6の上面に接着されたY方向に長い案内片11を挟んで左側の領域が後述するように第1の搬送方向に搬送される原稿Dの画像記録面を下向きにして部分的に露出される露出開口部36となり、CISの検出位置の上方が搬送原稿の読取位置Reとなる。ガラス板6の上面に接着されたY方向に長い案内片11を挟んで右側の領域が静止原稿の読取領域となる。読取手段8は請求項にいう第1及び第2の読取手段を兼用するものである。
本発明の第1実施形態に係る原稿搬送装置3は、図1〜図7に示すように、押圧板体10の上方の略全体を覆う上カバー12の上面に形成される給紙トレイ部13と、この給紙トレイ部13より上側に配置され、且つ給紙トレイ部13よりもX方向の長さの短い排紙トレイ部14とに隣接するように配置されている。原稿搬送装置3は、給紙トレイ部13の一側部(X方向の一端部)に位置する読取位置Re(図5(a)及び図6参照)まで原稿Dを搬送する第1の搬送方向と、読取位置Reから排紙トレイ部14まで原稿Dを搬送する第2の搬送方向とからなる略Uターン形状の原稿搬送路が備えられている。他方、上カバー12の上面側に突出する一対の原稿ガイド13aの上面に排紙トレイ部14が一体的に設けられている。そして、周知の連動機構13b(図5(a)、図5(b)参照)により、一方の原稿ガイド13aを手で動かすと、一対の原稿ガイド13aが同時にY方向に移動して原稿DのY方向の幅寸法に応じて広狭調節可能となるように構成されている。このように、排紙トレイ部14のX方向の長さが短いから、給紙トレイ部13の他端部寄り部位(原稿搬送路が配置されている側から最も離れた反対側)は、読取後に排出された原稿Dを堆積させる積載部と兼用することになる。このように、給紙トレイ部13のうち第1の搬送方向の上流側部位は読取後の原稿Dを堆積させる積載部と兼用されているものであるから、原稿Dを堆積させる箇所の高さ寸法を小さくできて装置をコンパクトにできるという効果を奏する。そして、上カバー12(給紙トレイ部13)の他端部(最後部)には、排出された原稿Dの先端が給紙トレイ部13の最後部から滑り落ちないようにするための原稿ストッパー体34が設けられている。その場合、上カバー12の最後部には、原稿ストッパー体34が嵌まり得る上方開放状の凹所35を形成し、該凹所35内で原稿ストッパー体34の基部を上流側回動可能に枢着する等して折り畳み可能等の収納可能とする構成を採用すると、多機能装置1の不使用時や梱包時に給紙トレイ部13(本体ケース4)外や上面側に原稿ストッパー体34がはみ出さずコンパクトになるという効果を奏する。
原稿搬送装置3には、給紙トレイ部13に堆積状態にて載置された複数枚の原稿Dから1枚の原稿を分離して第1の搬送方向(読取位置Reに近づく方向)に搬送するための第1の回転駆動部材と第1の当接部材とからなり、その両者のうち何れか一方または双方が相手に弾力的に当接可能に構成された分離・搬送手段と、該分離・搬送手段によって搬送されてきた原稿を読取位置Reから第2の搬送方向に反転してさらに搬送するために第2の回転駆動部材とこの第2の回転駆動部材に弾力的に当接可能な第2の当接部材からなる反転搬送手段と、反転搬送手段から離間し、且つ給紙トレイ部13よりも排紙トレイ部14に近い位置に設けられた回動軸を中心に回動可能であって、第1及び第2の当接部材のうち少なくとも第2の当接部材が配置されると共に、原稿の少なくとも一部の原稿搬送路を開放可能なカバー部材とを備える。
実施形態では、図5〜図7及び図9等に示すように、第1の回転駆動部材としての2つの回転駆動ローラ(搬送上流側に吸入ローラ15、下流側に分離ローラ16)と第2の回転駆動部材としての大径の反転ローラ20とが、押圧板体10の上面であって、原稿Dの搬送方向と直交する方向(原稿Dの横幅方向)の略中央部位に配置されている(図12参照)。反転ローラ20を支持する駆動軸28の回転中心線は平面視において読取位置Reの軸線と重なることで、反転ローラ20の周面のうちの下端面は読取手段8による読取面と対向することになる。
吸入ローラ15及び分離ローラ16の上面にそれぞれ弾力的に当接可能な第1の当接部材としてのパッド状部材(吸入ローラ15に対して吸入ニップ片17、分離ローラ16に対して分離パッド18)と、反転ローラ20に弾力的に当接可能な複数の第2の当接部材である自由回転可能な従動ローラのうち第2ピンチローラ22及び第3ピンチローラ23とが、カバー部材としての側断面略L字状の蓋カバー体19の内面に配置されている(図3及び図9参照)。なお、図5(a)、図5(b)〜図7及び図9には、後述する庇状上部案内部材52は記載されていない。
第2ピンチローラ22及び第3ピンチローラ23は、側断面略L状の金属板製のバネ片27に両端にそれぞれ軸支持され、そのバネ片27の中途部が蓋カバー体19の内面に固着されている。分離ローラ16よりも搬送下流側に配置されて反転ローラ20に当接可能な従動ローラの第1ピンチローラ21は、押圧板体10の上面にてX方向に移動可能に配置された金属製等のフレーム24に装着されている。フレーム24の後端を反転ローラ20に向かって弾力的に押圧するための付勢(ばね)手段である圧縮コイルばね25の後端は支持片26に支持されている(図6及び図7参照)。
前記実施形態では、第1の回転駆動部材としての2つの回転駆動ローラ(搬送上流側に吸入ローラ15、下流側に分離ローラ16)に対して第1の当接部材(吸入ニップ片17、分離パッド18)が弾力的に当接可能に構成されているが、その逆に、第1の当接部材(吸入ニップ片17、分離パッド18)に対して、第1の回転駆動部材としての2つの回転駆動ローラ(搬送上流側に吸入ローラ15、下流側に分離ローラ16)を弾力的に当接可能に構成されていても良い。
蓋カバー体19には、第3ピンチローラ23よりも搬送下流側に、排出シュート部としての原稿Dの幅方向に沿って長手の排紙補助ガイド板29が設けられている。この排紙補助ガイド板29の前端部29a(搬送上流側)は反転ローラ20の上面より下位置にあるように傾斜状に形成されており、排紙補助ガイド板29の前端縁と蓋カバー体19における上部屋根19aの搬送下流側の端縁19bとの間が搬送される原稿Dの排出口となる。この排紙補助ガイド板29の上面の搬送下流側の水平部29bは、同じく水平状態の排紙トレイ部14の上面の搬送上流側に続くように略同じ高さ位置に設けられている。吸入ニップ片17、分離パッド18は、蓋カバー体19における排紙補助ガイド板29の下面側でそれぞれ基端側(上端側)を中心にして上下回動可能であり、吸入ニップ片17は押圧手段である圧縮コイルばね30を介して吸入ローラ15に、分離パッド18は押圧手段である板バネ31を介して分離ローラ16の上面に、それぞれ押圧付勢されている。吸入ニップ片17と吸入ローラ15との間に給紙トレイ部13に堆積された原稿Dが吸い込まれるように構成しているので、排紙補助ガイド板29の下面側は給紙トレイ部13からの原稿Dの吸入シュート部32に相当する。
そして、蓋カバー体19は、排紙補助ガイド板29の下面側であって、吸入ニップ片17の基部近傍(分離搬送手段に近い位置、反転ローラ20から遠い側)の両側部から突出する回動軸(図示せず)を中心にして上下回動可能に構成されている。従って、図6及び図9に示すように、カバー部材を閉じたときには、吸入ニップ片17は吸入ローラ15の上面に、分離パッド18は分離ローラ16の上面に、第2ピンチローラ22及び第3ピンチローラ23は反転ローラ20の反転側周面にそれぞれ弾力的に押圧される。蓋カバー体19を上向きに開き回動すると、第2ピンチローラ22及び第3ピンチローラ23が反転ローラ20から大きく離間でき、蓋カバー体19を略120度(図9参照)大きく回動すれば、吸入ニップ片17及び分離パッド18も、吸入ローラ15及び分離ローラ16からそれぞれ大きく離間でき、これらの当接部(ニップ部)で挟まれていた原稿Dを簡単に除去することができ、紙ジャムを解除できるのである。押圧手段であるコイルばね25の付勢力に抗して移動できる第1ピンチローラ21と反転ローラ20との当接部(ニップ部)で挟まれていた原稿Dは前記付勢力にかかわらず抜き出すことができる。
なお、図7に示すように、コイルばね25の後端を支持している支持片26をX方向に移動可能とし、且つ支持片26から突出している把手部26aを、上カバー体12に穿設された長孔33に臨ませておく等の構成の強制離間手段を採用することにより、作業者が指またはドライバー等の工具で把手部26aと共に支持片26を動かし、コイルばね25の付勢力に抗して第1ピンチローラ21を反転ローラ20の周面から離間させると、原稿Dを軽い力で抜き出せるから、簡単に紙ジャムを解除できる。
板状の排紙トレイ部14の下面と給紙トレイ部13との間には読取るべき原稿Dをその画像記録面を下向きにして堆積して載置できるものである。排紙トレイ部14の水平状の下面と給紙トレイ部13の上面との距離H2に対して、排紙トレイ部14の吸入ローラ15に近い先端側14aが低くなるように傾斜形成させて、給紙口の高さ寸法H3とし、H3<H2に設定することにより(図6参照)、堆積させた原稿Dを吸入ローラ15と吸入ニップ片17との間への導入作用を円滑に行えるようにしている。また、吸入ローラ15と吸入ニップ片17とによる吸入手段を設けることにより、水平状の給紙トレイ部13に堆積させた原稿Dを、分離ローラ16と分離パッド18とによる分離手段箇所に確実に届けることができる。この作用を確実にするため、吸入ローラ15と分離ローラ16との直径及び周速度が等しく設定されている。
図3、図7、図11及び図12に示すように、反転ローラ20を挟んで左右両外側(原稿Dの幅方向)の下面側には、読取位置Reを含む露出開口部36で原稿Dの画像記録面をガラス板6の表面に隙間なく押し付けるための第1の押圧部材40を配置する。この第1の押圧部材40は平板状で大判の押圧板体10(第2の押圧部材)と一体的に成形(合成樹脂の射出成形)されている。その場合、図12に示すように、第1の押圧部材40の基部(原稿Dの幅方向の端縁寄り部位)は押圧板体10の側部に設けられた反転ローラ20の駆動軸28の軸支部42の近傍に一体的に連結されている。そして、一方の軸支部42の外側には、駆動軸28、吸入ローラ15及び分離ローラ16にそれぞれ回転駆動力を伝達するための伝動ギヤ機構43及び駆動モータ44が収納できる伝動部ケース45が設けられている(図1〜図4、図10及び図12参照)。
各第1の押圧部材40は下向き凸の略半円弧状のシェル状に形成されており、反転ローラ20の左右両側に近い側には上向きの弾性フック体41が一体的に形成され、この各弾性フック体41が反転ローラ20の駆動軸28に被嵌して吊支されている。これにより、第1の押圧部材40の下面のガラス板6に対する高さ位置を簡単な構成で確保することができる。
各第1の押圧部材40の下面のうち露出開口部36の領域に対応する範囲ではガラス板6の表面とほぼ平行状であって且つ反転ローラ20の外周(下面)よりガラス板6の表面に若干近づくように形成されている。これにより、反転ローラ20の外周に沿って搬送された原稿Dは一時的に反転ローラ20の下面から離間させられて、原稿Dの画像記録面はガラス板6の表面に隙間なく押し付けられて読取手段8により正確な画像を読取ることができる。この場合、第1の押圧部材40は、反転ローラ20を挟んで、原稿Dの搬送方向と直交する原稿Dの幅方向の両側に配置され、ガラス板6と対面する部位が略平板状に形成されているものであるから、反転ローラ20の原稿Dの幅方向の寸法を大きくすることなく、反転ローラ20を挟む両側の第1の押圧部材40により、画像読取領域において原稿Dの幅方向の全体にわたってほぼ均一に平面部を形成することができて、当該原稿Dの幅方向の画像を正確に読取ることができる。
また、第1の押圧部材40の下面(読取位置Reを含む範囲)に白色のテープを添付または塗料を塗布することにより、読取手段8での基準となる色度、輝度の検出を実行できるようにする。
次に、反転ローラ20の上側にて、第2搬送方向、つまり読取後の原稿DがUターンされて排出シュート部としての排紙補助ガイド板29ひいては排紙トレイ部14に排出されるとき、各原稿Dの画像記録面が上向きであり、且つ先行して排出された原稿Dの下方に次の原稿Dが確実に排出されるようにする(排出された原稿Dの堆積順序を正順にする)ための構成について説明する。
その第1の実施形態の手段は、蓋カバー体19を閉じた状態において、搬送最下流側の第3ピンチローラ23と反転ローラ20の周面のうちの上側とのニップ部(当接部)の高さ位置は、排紙補助ガイド板29の前端部29a(搬送上流側)より高い位置にあり、且つ排紙補助ガイド板29の水平部29b(搬送下流側)の上面の高さ位置より低い位置にあるように設定されている(図6、図7及び図13参照)。
このように構成すれば、給紙トレイ部13で堆積され、且つ画像記録面が下向きの原稿Dはその最下層の第1枚目から順に分離ローラ16と分離パッド18との間で分離搬送され、第1ピンチローラ21と反転ローラ20の下側周面との当接部を経て露出開口部36で、第1押圧部材40にてガラス板6の表面に画像記録面が摺接されながら搬送されする。露出開口部36の読取位置Reでその下方の読取手段8にて原稿Dの画像が読み取られた後、原稿Dは第2ピンチローラ及び第3ピンチローラと反転ローラ20の周面での当接且つ搬送にて、蓋カバー体19の上部屋根19aの搬送下流側の端縁19bの下方の排出口から排紙される。そして、原稿Dの画像記録面が上向きの状態で排紙補助ガイド板29及び排紙トレイ部14の上面に載せられる。その場合、第3ピンチローラ23と反転ローラ20との当接高さ位置が排紙補助ガイド板29の前端部29a(搬送上流側)より高い位置にあり、且つ排紙補助ガイド板29の水平部29b(搬送下流側)の上面の高さ位置より低い位置にあるので、先に排出されて排紙補助ガイド板29上に堆積されている原稿Dの下面側に後続する原稿Dの先端が近づいて排紙補助ガイド板29上に誘い込まれるので、排出された原稿Dの堆積順序は給紙トレイ部13に載置した状態と同じになり、後で作業者が原稿Dの堆積順序を変更する必要がなくなる。
上記のような作用をさらに確実にするための第2の実施形態は、図3、図4、図6、図7及び図13に示すように、反転ローラ20を挟んで左右両外側の上側には、原稿Dの幅方向に延びるように、断面ほぼ半割り筒状の一対の被嵌部材46を配置する。この各被嵌部材46は各第1の押圧部材40の上端に連設され、従って、駆動軸28を上方から被嵌した形態であり、図示しない係合手段で各被嵌部材46と各第1の押圧部材40とを連結している。各被嵌部材46における外周面には、第3ピンチローラ23と反転ローラ20との当接位置に相当する箇所から搬送下流側に斜め上方に延び、排出シュートである排紙補助ガイド板29の始端側に近接する案内部材47が一体的に形成されている。この各案内部材47の最上端部47aは、第3ピンチローラ23と反転ローラ20との当接位置の高さ位置よりも高い位置になるように形成されている。この構成によれば、第3ピンチローラ23と反転ローラ20との当接位置から開放された原稿Dは傾斜状の案内部材47に沿って上方に最上端部47aまで案内されるが、この最上端部47aは排紙補助ガイド板29の水平部29bより低い位置にあるので、先に排出されて排紙補助ガイド板29上に堆積されている原稿Dの下面側に後続する原稿Dの先端が近づいて排紙補助ガイド板29上に誘い込まれるように搬送でき、排出された原稿Dの堆積順序は給紙トレイ部13に載置した状態と同じにできるのである。
排出された原稿Dの堆積順序を正順にするための第3の実施形態は、図13に示すように、搬送最下流側の第3ピンチローラ23と反転ローラ20との当接位置より原稿Dを持ち上げるための弾性支持片49を備える。この弾性支持片49は、厚さ0.2mm〜1mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)等の腰の強い合成樹脂製の弾性板材からなり、断面ほぼL型に屈曲形成されているものである。そして、被嵌部材46の外周面のうち原稿Dの幅方向の適宜位置の凹み部46aには、第3ピンチローラ23と反転ローラ20との当接位置の高さ位置の近傍にて弾性支持片49の基端部が接着剤等にて固定されている。この弾性支持片49は搬送下流側に向かって高い位置(排紙補助ガイド板29の水平部29bより高い位置)にあるように配置し、その最上縁49aから下向きに屈曲して延伸された自由端部49bは、被嵌部材46に穿設された溝(スリット)孔50に挿入されているように配置する。この構成によれば、第3ピンチローラ23と反転ローラ20との当接位置から開放された原稿Dは弾性支持片49に載るが、原稿Dの重さにより弾性支持片49は若干下向きに撓む。この状態で弾性支持片49自体の弾性力で持ち上げられた原稿Dの自由端部はほぼ水平状態のまま、排紙補助ガイド板29上に向かって排出できる。従って、先に排出されて排紙補助ガイド板29の水平部29b上に堆積されている原稿Dの下面側に後続する原稿Dの先端が近づいて排紙補助ガイド板29上に誘い込まれるように搬送でき、排出された原稿Dの堆積順序は給紙トレイ部13に載置した状態と同じにできるのである。
このように、弾性支持片49はその側断面がほぼL字型に形成され、弾性支持片49の基端部を反転ローラ20の左右両側方に配置される被嵌部材46の外周に固定し、弾性支持片49のほぼL字型から下向きに延伸する傾いた自由端部49bは、被嵌部材46に穿設されたスリット孔50に挿入されているので、原稿Dが載って弾性支持片49が弾性により下向きに撓むとき、その自由端部49bの位置がスリット孔50に沿って上下に移動するので、弾性支持片49の変形方向が規制されて、先行する原稿Dの下面に後続の原稿Dの先端が近づく作用を一層確実にできる。
さらに、蓋カバー体19の内面には、X方向に沿って搬送下流側の端縁19bにまで延びる長手のリブ19cがY方向に適宜間隔にて一体的に形成されている(図3、図4、図7、図9、図10、図13及び図14参照)。これら適宜位置の複数のリブ19cの間に、弾性支持片49が配置されるように構成すれば(図14参照)、最上縁49aの上下動範囲を大きくできて、排出される原稿Dに対する弾性支持片49による持ち上げ作用を一層確実に与えることができる。
排出された原稿Dの堆積順序を正順にするための第4の実施形態は、同じく図13に示すように、搬送最下流側の第3ピンチローラ23とほぼ同じ高さ位置に設けた掻き出しローラ51によるものであって、円筒形ローラの外周に円周方向に適宜間隔で突起が設けられた形態や断面拍車型のローラもしくは厚みの薄い板状の拍車であって良く、これら複数の掻き出しローラ51を被嵌部材46の外周面または反転ローラ20の外周面と対峙さて配置する。被嵌部材46の外周面と対峙させるときは掻き出しローラ51を積極的に回転駆動させることが望ましい。これらの構成によれば、掻き出しローラ51の回転により、第3ピンチローラ23と反転ローラ20との当接位置から開放された原稿Dの先端部は積極的に掻き上げられることになり、原稿Dの先端部が下向きにカールしている場合に、排紙補助ガイド板29の傾斜状の前端部29aに原稿Dの先端部が突き当たって水平部29b側に円滑に誘導できない状態を無くすることができ、排出された原稿Dの堆積順序は給紙トレイ部13に載置した状態と同じにできるのである。
排出された原稿Dの堆積順序を正順にするための第5の実施形態は、排出シュート部である排紙補助ガイド板29の上方の少なくとも一部、好ましくは、傾斜状の前端部29aから水平部29bの前半部までにわたって、ほぼ水平な庇状上部案内部材52を備えるものである(図13参照)。このように構成すれば、先に排出されて排紙補助ガイド板29上に堆積されている原稿Dの搬送上流側が庇状上部案内部材52の下面に規制されて水平部29bとほぼ平行の堆積状態を保持できるから、その下面側に後続する原稿Dの先端が円滑に誘導され易くなる。排出された原稿Dの堆積順序を給紙トレイ部13に載置した状態と同じにして多数枚を堆積できるのである。
なお、蓋カバー体19における上部屋根19aの搬送下流側の端縁19bの近傍に、庇状上部案内部材52の基部を枢軸53を介して上下回動可能に取付けすることにより、蓋カバー体19を大きく開いた状態では庇状上部案内部材52の自由端縁が排紙トレイ部14または給紙トレイ部13の上面に当接して、蓋カバー体19の開き回動姿勢を保持できるようにすることもできる。
なお、これら第1の実施形態に加えて、第2実施形態から第5実施形態の構成を適宜組み合わせて採用することが好ましい。
また、被嵌部材46の外周面はほぼ円弧状であるから、反転ローラ20に摺接しない原稿Dの幅方向のカールした状態の両端部側が、駆動軸28に巻き込まれることなく、被嵌部材46の外周面に沿って円滑に排出口方向に誘導できるのである。
本発明では、第2の回転駆動部材として反転ローラ20に代えて、無端ベルトを用いることができることはいうまでもない。