JP4374731B2 - 車両統合制御システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンや自動変速機等、車両に搭載される複数の構成要素を統合制御する車両統合制御システムに関し、特に、各構成要素の制御にずれが生じた際に制御則を補正するための学習制御を実行するのに好適な車両統合制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両を構成する複数の構成要素を統合制御するシステムの一つとして、システムの大規模化に対する開発期間の増加を抑えることのできる統合制御システムが提案されている。
【0003】
例えば、特開平7−108882号公報に開示されているように、車両のパワートレイン制御系を機能別に分割することにより、制御システムを、パワートレイン制御演算装置、噴射制御装置、点火制御装置、入出力処理装置、ミッション制御装置、スロットル制御装置、等から構成し、これら各装置間を通信ラインで接続することにより、パワートレイン制御演算装置以外の装置は、通信ラインを介して、パワートレイン制御演算装置からの指令で動作するようにし、しかも、センサやアクチュエータ等、制御系の仕様変更に関わる部分は、入出力処理装置に集中させるようにしたシステムが提案されている。
【0004】
また、例えば、特開平5−85228号公報に開示された制御装置では、エンジン出力、駆動力、制動力、といった制御課題を実行する制御要素と車両の運転特性を制御する制御要素とを階層構造の形で配置し、上位の階層から下位の階層へと要求される特性を順に供給することにより、車両全体で最適な制御を実現できるようにしている。
【0005】
これらの統合制御システムは、何れも、車両の制御系を複数に分離することにより、システムの仕様変更等が生じた際に設計変更すべき制御系の構成要素を少なくして、設計変更にかかる開発期間を低減したり、或いは、各構成要素毎の独立性を保つことにより、個々の構成要素の並行開発ができるようにして、開発期間を短縮できるようにしたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記提案の技術では、制御系の構成が整理され、システムの大規模化に対する開発期間の増加を抑えることはできるが、構成要素の個体差や経時変化等に伴い制御特性にばらつきが生じた場合に、そのばらつきを補償することができないといった問題があった。
【0007】
即ち、構成要素の個体差や経時変化等に伴い制御にばらつきが生じた場合には、その制御のずれを検出して制御則(制御に用いる定数)を補正することにより、制御のばらつきを補償する、所謂学習制御が知られているが、従来では、上記提案のシステムのように、上位の制御装置側で下位の制御装置の動作を規定するようにした場合に、こうした学習制御をどのように実行すればよいかといった提案がなされておらず、こうした学習制御を確立することが急務となっていた。
【0008】
つまり、上記前者のシステムを例に取ると、パワートレイン制御系の構成要素に特性ばらつきがある場合、学習により補正可能な制御則は、パワートレイン制御演算装置側と、その演算装置からの指令で動作する下位の制御装置側との両方が有り得るが、どちらで学習してもよい、という訳ではなく状況に応じて適切な箇所を選択する必要がある。
【0009】
しかし、従来の学習制御は、制御装置において、制御対象の挙動が目標からずれたときに、そのずれ量に応じて制御則を補正するというものであることから、こうした学習制御を、上位のパワートレイン制御演算装置にて実行するようにすると、下位の制御装置のうちの特定の制御装置での制御のばらつきが大きく、これによりパワートレイン全体としての挙動が不適切になっている場合に、良好な学習制御を実行することができず、逆に、パワートレイン制御演算装置の指令で動作する各装置側で学習制御を実行するようにすると、各装置毎に生じる制御のばらつきは小さく、パワートレイン全体で生じる制御のばらつきが、個々の装置の制御のばらつきの総和によって大きくなる場合に、良好な学習制御を実行できなくなってしまうのである。
【0010】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、車両を構成する各構成要素毎に制御装置を設け、これら各制御装置の制御動作を上位の制御装置にて統合制御するようにしたシステムにおいて、構成要素の個体差や経時変化等に伴う特性のばらつきに対する制御補償を、各制御装置で実行する学習制御によって良好に実現できるようにすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1記載の車両統合制御システムにおいては、車両に搭載された複数の構成要素を、各構成要素に対応する複数の構成要素制御部が夫々制御し、各構成要素制御部よりも上位の制御部であるマネージャ制御部が、各構成要素制御部に対して、各構成要素を制御する際の動作指針を指令する。
【0012】
従って、本発明(請求項1)によれば、各構成要素の挙動を対応する構成要素制御部により制御し、制御対象となる車両全体の挙動をマネージャ制御部により制御することができる。よって、本発明のシステムにおいても、前述した従来システムと同様、仕様変更等により構成要素の一部が変更された際には、それに対応して構成要素制御部を変更するだけでよく、また、システム設計時には各制御部を個々に設計すればよいため、開発期間を短くすることができる。
【0013】
また、本発明では、マネージャ制御部が、制御プログラムの内部定数を変更する学習動作を実行する構成要素制御部を特定し、各構成要素制御部に対して、該特定結果に基づき制御プログラムの内部定数を変更する学習動作に関する情報を出力し、各構成要素制御部は、その情報に応じて、対応する構成要素に対する学習動作を実行する。
【0014】
つまり、本発明では、構成要素の個体差や経時変化等によって制御特性にばらつきが生じるのを防止するために、各構成要素制御部に学習機能を持たせているが、各構成要素制御部の学習動作を、マネージャ制御部側で制限できるようにしている。
【0015】
このため、本発明によれば、例えば、制御対象の挙動が目標からずれたときに、マネージャ制御部側で、学習動作を実行させるべき構成要素制御部を特定して、その特定した構成要素制御部に対して、学習動作を実行させることができる。よって、本発明によれば、各構成要素制御部が個々に学習動作を実行することにより生じる誤学習を防止しつつ、システム全体での学習制御を効率よく行い、制御対象となる車両の挙動を常に最適に制御することが可能となる。
【0016】
ここで、マネージャ制御部が各構成要素制御部に出力する情報は、各構成要素制御部での学習動作を制限できればよいため、その情報としては、請求項2に記載のように、各構成要素制御部に対して学習動作の実行を許可又は禁止する情報であってもよく、或いは、請求項3に記載のように、各構成要素制御部が学習動作の実行によって制御プログラムの内部定数を変更する際に変更が許可される量である変更許可量を規定する情報であってもよく、また、これらの情報を組み合わせたものであってもよい。
【0017】
ところで、本発明(請求項1)を実現するには、マネージャ制御部側で、学習動作を実行/停止させる(若しくは学習動作に制限をかける)構成要素制御部を特定する必要がある。
そして、この特定のためには、例えば、車両の運転状態毎に学習動作を実行/停止させる(若しくは学習動作に制限をかける)構成要素制御部を予め設定しておき、マネージャ制御部は、車両全体の挙動が目標からずれて学習動作が必要と判断すると、そのときの車両の運転状態に応じて、学習動作を実行/停止させる(若しくは学習動作に制限をかける)構成要素制御部を特定するようにしてもよい。
【0018】
しかし、このような方法では、各構成要素制御部による各構成要素の実際の制御状態に応じて、学習動作を実行/停止させる(若しくは学習動作に制限をかける)構成要素制御部を設定することができないことから、各構成要素制御部による学習動作を最適に制御できず、学習動作による補償機能を充分発揮できないことも考えられる。
【0019】
そこで、本発明(請求項1)を実現するに当たって、より好ましくは、車両統合制御システムを、請求項4に記載のように構成するとよい。
即ち、請求項4に記載の車両統合制御システムにおいては、マネージャ制御部側で、判定手段が、制御プログラムの内部定数を変更する学習動作が必要か否かを各構成要素制御部ごとに判定して、その判定結果に応じて前記学習動作を実行する構成要素制御部を特定し、該特定結果に基づき前記学習動作に関する情報を出力し、各構成要素制御部側では、学習手段が、マネージャ制御部側判定手段から出力された情報に応じて学習動作を実行する。
【0020】
このため、請求項4記載の車両統合制御システムによれば、マネージャ制御部側で、各構成要素制御部による構成要素の制御状態に基づき、学習動作を実行させるべき構成要素制御部を特定し、その構成要素制御部に対して、学習動作を実行させることが可能となる。
【0021】
よって、本発明(請求項4)によれば、各構成要素制御部が同時に学習動作を実行することにより生じる誤学習を防止できるだけでなく、学習動作が必要な構成要素制御部に対してのみ学習動作を実行させることにより、各構成要素制御部が不要な学習動作を実行して制御が不安定になるのを防止することができる。
【0022】
ここで、マネージャ制御部に設けられる判定手段は、各構成要素制御部による学習動作が必要か否かを判定するものであるが、その判定は、請求項5に記載のように、各構成要素制御部へ指令する動作指針と各構成要素の動作とを比較することにより行うようにしてもよく、請求項6記載のように、各構成要素制御部に設けられた出力手段が出力してくる構成要素の制御状態を表す情報を用いるようにしてもよく、これら各パラメータ(各構成要素制御部へ指令する動作指針,各構成要素の動作,構成要素制御部側出力手段が出力してくる構成要素の制御状態)を総合的に判断することにより行うようにしてもよい。
【0023】
また、請求項6記載のように、各構成要素制御部に、構成要素の制御状態を表す情報を出力する出力手段を設ける場合、出力手段としては、構成要素の制御状態を表す情報として、構成要素の挙動を表す情報を出力するように構成してもよく、構成要素の挙動(制御結果)と制御目標とのずれを表す情報を出力するように構成してもよく、或いは、そのずれから判定した学習動作の要・否を表す情報を出力するように構成してもよい。
【0024】
そして、このように、構成要素制御部側出力手段を、学習動作の要・否を表す情報を出力するように構成した場合には、マネージャ制御部側で、動作指針と各構成要素の動作とを比較することにより判定した学習動作の要・否と、構成要素制御部側出力手段からの情報(学習動作の要・否)とを比較し、これらが一致しているときと一致していないときとで、各構成要素制御部に出力する情報(学習動作の実行/停止或いは学習動作の制限を指令するための情報)を適宜設定するようにするとよい。
【0025】
つまり、本発明のように各制御部が独立して制御動作を実行するシステムでは、マネージャ制御部側で構成要素制御部による制御が不適切であると判断して、その構成要素制御部に対して学習手段による学習動作を実行させるための情報を出力しても、構成要素制御部側の学習手段が、構成要素を適切に制御できていると判断して、制御プログラムの内部定数を変更しないことが考えられる。
【0026】
しかし、上記のように構成要素制御部側の出力手段からマネージャ制御部に対して、構成要素の制御状態を表す情報として、構成要素制御部側で判定した学習動作の要・否を表す情報を出力するようにすれば、マネージャ制御部側では、その出力手段からの情報に基づき、構成要素制御部に対して学習動作を実行させるための情報を出力しても、構成要素制御部側学習手段の学習動作によって、構成要素制御部の制御プログラムの内部定数が変更されないことを判断して、マネージャ制御部側で、その構成要素制御部に対する学習動作を実行し、その構成要素制御部による構成要素の制御を適切に実行させる、といったことができるようになるのである。
【0027】
尚、マネージャ制御部側で、特定の構成要素制御部に対する学習動作を実行する際には、例えば、その構成要素制御部に出力する動作指針を補正するようにすればよい。
一方、マネージャ制御部側の判定手段が各構成要素制御部に出力する情報としては、請求項7記載のように、各構成要素制御部に対して学習動作の実行を許可又は禁止する情報であってもよく、或いは、請求項12に記載のように、各構成要素制御部の学習手段が学習動作によって内部定数を変更する際に変更が許可される量である変更許可量を規定する情報であってもよく、また、これらの情報を組み合わせたものであってもよい。
【0028】
そして、請求項7記載のシステムを実際に構築する場合、判定手段としては、請求項8記載のように、学習動作が必要であると判定した構成要素制御部の学習手段に対して学習動作を許可する情報を出力するように構成してもよく、請求項9記載のように、学習動作が不要であると判定した構成要素制御部の学習手段に対して、学習動作を禁止する情報を出力するように構成してもよく、請求項10記載のように、特定の構成要素制御部以外の構成要素制御部による学習動作が必要であると判定した場合に、その特定の構成要素制御部の学習手段に対して、学習動作を禁止する情報を出力するように構成してもよく、請求項11記載のように、特定の構成要素制御部以外の構成要素制御部による学習動作が不要であると判定した場合に、その特定の構成要素制御部の学習手段に対して、学習動作を許可する情報を出力するようにしてもよく、或いは、これら動作を適宜組み合わせることにより各構成要素制御部に学習動作を許可又は禁止する情報を出力するようにしてもよい。
【0029】
また、請求項12記載のシステムを実際に構築する場合、判定手段としては、請求項13に記載のように、各構成要素の動作の動作指針からのずれに応じて、各構成要素制御部の学習手段に対する変更許可量を算出するよう構成するとよい。
【0030】
次に、請求項4〜請求項13何れか記載のシステムにおいて、判定手段が、学習動作が必要であると判定した構成要素制御部の学習手段に対して学習動作を実行させる情報を出力したとしても、構成要素制御部側の学習手段が正常に機能していない場合や、学習動作実行時に学習手段が構成要素を適切に制御できていると判断して制御プログラムの内部定数を変更しない場合等には、その構成要素制御部による制御が適切に実行されないことになる。
【0031】
そして、この場合、マネージャ制御部側判定手段から構成要素制御部側学習手段に、学習動作を実行させる情報を出力し続けても意味がなく、学習手段の誤動作等により却って制御が不安定になることも考えられる。
そこで、マネージャ制御部には、請求項14に記載のように、出力情報変更手段を設けるとよい。つまり、請求項14に記載のシステムによれば、マネージャ制御部において、判定手段が、学習動作が必要であると判定した構成要素制御部の学習手段に対して前記学習動作を実行させる情報を出力したにも関わらず、その構成要素制御部による学習動作が必要である場合には、出力情報変更手段が、判定手段がその構成要素制御部の学習手段に出力する情報を学習動作を停止させる情報に変更することから、学習手段による学習動作を実行させたにも関わらず制御が適切に実行されない構成要素制御部側で誤学習が生じて、制御が不安定になるのを防止できる。
【0032】
また、この場合、単に学習手段の学習動作を停止させただけでは、構成要素制御部による制御は継続して不適切なものになってしまうことから、より好ましくは、請求項15に記載のように、マネージャ制御部に補正手段を設けるとよい。
つまり、請求項15に記載のシステムによれば、出力情報変更手段が、判定手段が出力する情報を学習動作を停止させる情報に変更すると、補正手段が、その情報の出力先である特定の構成要素制御部に対して指令する動作指針を、その構成要素制御部による構成要素に対する学習動作が必要となるように補正することから、結局、構成要素制御部による制御は適切に実行されることになり、マネージャ制御部は、制御対象である車両全体を所望の状態に制御することができるようになる。
【0033】
一方、構成要素制御部の学習手段を動作させる情報を出力したにも関わらず、構成要素制御部による制御が適切に実行されないのは、構成要素制御部側の学習手段がマネージャ制御部側の期待通りに動作しないためであるが、このような問題は、マネージャ制御部が構成要素制御部に出力している動作指針を変化させることによって解消できることも考えられる。
【0034】
また、このために、所望の学習効果が得られない特定の構成要素制御部に対する動作指針だけを変更させたのでは、制御対象である車両全体の挙動を所望状態に制御することができなくなるが、本発明の車両統合制御システムでは、複数の構成要素を構成要素制御部により個々に制御することにより、車両全体の挙動を所望状態に制御するものであるため、車両全体の挙動を所望状態に制御するための各構成要素制御部に対する動作指針としては、多数の組み合わせがある。具体的には、例えば、自動変速機から駆動輪側に出力される駆動トルクを目標トルクに制御するのに必要なエンジントルクと自動変速機の変速比との組み合わせは、多数存在する。
【0035】
このため、請求項16に記載のように、マネージャ制御部に、動作指針制限手段を設け、判定手段が、学習動作が必要であると判定した構成要素制御部の学習手段に対して学習動作を実行させる情報を出力したにも関わらず、構成要素制御部による学習動作が必要であると判断した場合には、その後、そのとき構成要素制御部に対して出力している動作指針を出力するのを禁止するようにしてもよい。
【0036】
つまり、特定の構成要素制御部において、学習手段による学習効果が得られない場合には、そのとき構成要素制御部に出力している動作指針を、その後の制御で出力しないように、マネージャ制御部側での制御則(詳しくは各構成要素制御部に出力する動作指針の組み合わせ)を変更することで、各構成要素制御部における学習手段の学習効果を充分発揮できるようにするのである。
【0037】
そして、このようにすれば、マネージャ制御部は、各構成要素制御部に動作指針を出力することにより、制御対象となる車両全体を所望状態に制御でき、しかも、構成要素の個体差や経年変化によって生じる制御のばらつきを、各構成要素制御部に設けた学習手段の学習動作やマネージャ制御部側での動作指針の補正動作等によって速やかに補正することが可能となる。
【0038】
尚、マネージャ制御部が各構成要素制御部に対して出力する動作指針としては、後述するエンジントルク、自動変速機の変速時間というような構成要素の制御目標値であってもよく、或いは、エンジントルク上昇、変速時間短縮というような各構成要素制御部側で設定した制御目標値の変化方向を示す指令であってもよい。
【0039】
また次に、本発明(請求項1〜請求項16)の車両統合制御システムは、車両に搭載された複数の構成要素を統合制御することにより各構成要素の動作によって生じる車両全体の挙動を制御するものであり、各構成要素を夫々制御する構成要素制御部と、車両全体の挙動を目標状態にするために各構成要素制御部に対して動作指針を指令するマネージャ制御部とから構成されるが、これら各制御部は、必ずしも独立したハード構成にて実現する必要はなく、例えば、特定の構成要素制御部とマネージャ制御部とをマイクロコンピュータからなる一つの制御ユニットの動作によって実現し、他の構成要素制御部を、その制御ユニットとは異なる制御ユニットの動作によって実現するようにしてもよい。
【0040】
しかし、各制御部の設計は、一つのハード構成毎に行うことになるので、一つの制御ユニットに複数の制御部としての機能を実現させると、設計が煩雑になり、また、設計変更等によって特定の構成要素を変更した際には、その変更した構成要素に対する制御部だけでなく、その制御部と共に制御ユニットに組み込まれた制御部をも変更しなければならず、それまでの学習動作によって最適値に設定されていた内部定数が初期値に戻ってしまうといった問題がある。
【0041】
このため、本発明の車両統合制御システムを構成するマネージャ制御部及び複数の構成要素制御部は、請求項17に記載のように、夫々、マイクロコンピュータからなる独立した電子制御ユニットで構成し、これら各制御部間を、互いにデータ伝送可能な通信ラインで接続するようにするとよい。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明が適用された実施例の車両統合制御システム全体の構成を表すブロック図である。
【0043】
本実施例の車両統合制御システムは、車両駆動系の構成要素であるエンジン2と自動変速機(以下単にATという)4とを統合制御するための所謂パワートレイン制御システムであり、本発明の構成要素制御部として、エンジン2及びAT4を各々制御するためのエンジンECU6及びATECU8を備え、本発明のマネージャ制御部として、エンジンECU6及びATECU8に対してエンジン2及びAT4の動作指針を指令するマネージャECU10を備える。
【0044】
各ECU6、8、10は、マイクロコンピュータからなる演算処理部6a、8a、10aを中心に各々独立して構成された電子制御ユニットである。そして、これら各ECU6、8、10には、データ通信用の通信線(請求項17記載の通信ライン)Lを介して互いに接続された通信部6b、8b、10bが内蔵されており、これら各通信部6b、8b、10b及び通信線Lを介して、パワートレイン制御のためのデータを互いに送受信できるようにされている。
【0045】
また、エンジンECU6及びATECU8は、エンジン2及びAT4を夫々制御するためのものであるため、これら各ECU6,8には、エンジン2及びAT4の状態を検出する各種センサからの検出信号を取り込むと共に、エンジン2及びAT4に設けられた各種アクチュエータに駆動信号を出力するための信号入出力部6c、8cも内蔵されている。
【0046】
そして、エンジンECU6の信号入出力部6cには、運転者によるアクセルペダルの踏込量を検出するアクセルペダル開度センサ、吸入空気の流量(吸気量)を検出するエアフローメータ、吸入空気の温度を検出する吸気温センサ、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ、排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ、ノッキングを検出するノックセンサ、冷却水温を検出する水温センサ、クランク軸の回転角度やその回転速度を検出するためのクランク角センサ、イグニッションスイッチ、といったセンサ・スイッチ類が接続されると共に、エンジン2の気筒毎に設けられたインジェクタ、点火用高電圧を発生するイグナイタ、燃料タンクから燃料を汲み上げインジェクタに供給する燃料ポンプ、エンジン2の吸気管に設けられたスロットルバルブを開閉するためのスロットル駆動モータ、といったエンジン制御のための各種アクチュエータが接続されている。
【0047】
また、ATECU8の信号入出力部8cには、AT4を構成するトルクコンバータから変速機への入力軸の回転数を検出する回転数センサ、AT4の出力軸に連結された車両駆動軸の回転から車速を検出する車速センサ、AT4内の作動油の温度を検出する油温センサ、運転者が操作するシフトレバーの操作位置(シフト位置)を検出するシフトポジションスイッチ、運転者のブレーキ操作によって点燈するストップランプの状態(換言すれば運転者のブレーキ操作)を検出するストップランプスイッチ、といったセンサ・スイッチ類が接続されると共に、変速段を切り替えるためのシフトソレノイド、変速クラッチの係合力を操作するためのライン圧ソレノイド、トルクコンバータの入・出力軸を締結するロックアップクラッチの締結力を操作するためのロックアップ圧ソレノイド、といったAT制御のための各種アクチュエータ(ソレノイド)が接続されている。
【0048】
次に、上記各ECU6、8、10において、演算処理部6a、8a、10aは、夫々、予めメモリに格納された制御プログラムに従い、エンジン2、AT4、及びシステム全体を制御するための制御処理(エンジン制御処理、AT制御処理、パワートレイン制御処理)を実行すると共に、エンジン2やAT4の個体差若しくは経年変化等によって生じる制御のずれを補正する学習処理を実行する。
【0049】
以下、これら各ECU6、8、10において実行される制御処理、及び、学習処理について説明する。
まず図2は、上記各ECU6、8、10において実行される制御処理を機能ブロックで表すブロック図である。
【0050】
図2に示すように、マネージャECU10において実行されるパワートレイン制御処理では、まず、目標車軸トルク設定部12にて、運転者による車両の加・減速要求を表すアクセルペダル開度や、車両の実際の走行状態を表す車速等に基づき、パワートレインの挙動を規定する目標車軸トルクを設定し、エンジントルク変速段振分部14にて、車速、エンジン回転数、シフトポジション、エンジン学習不可フラグ、AT学習不可フラグ等に基づき、目標車軸トルクを実現するのに最適な目標エンジントルクと目標変速段を算出する。
【0051】
ここで、目標車軸トルク設定部12及びエンジントルク変速段振分部14にて上記各目標値を設定するのに使用されるアクセルペダル開度、車速、エンジン回転数、シフトポジション等の各パラメータは、通信ラインLを介してエンジンECU6又はATECU8から送信されてきたものであり、エンジン学習不可フラグ及びAT学習不可フラグは、後述の学習処理にて、車両の走行領域毎に、エンジンECU6又はATECU8による学習制御が正常に機能しないと判断された際にセット(ON)されるフラグである。
【0052】
また、エンジントルク変速段振分部14では、シフトポジションから推定される運転者の意志や、オーバーレブ防止、エンジン2の燃費、エミッション、燃焼安定性等を考慮し、且つ、エンジン学習不可フラグ及びAT学習不可フラグがONされている走行領域でのエンジン2の運転及びAT変速の頻度が低くなるように設定された制御則に則って、目標車軸トルクを実現する上で望ましいエンジン動作点を設定し、それに応じて、目標変速段、目標エンジントルクを設定する。
【0053】
尚、目標車軸トルク設定部12やエンジントルク変速段振分部14で上記各目標値を設定するための制御則は、予めメモリ内に格納されたマップ若しくは演算式により規定されており、上記各目標値を実際に設定する際には、これらのマップ若しくは演算式が使用される。
【0054】
次に、エンジントルク変速段振分部14にて設定された目標エンジントルクは、ATECU8に送信されると共に、マネージャECU10側での制御処理の一つである目標エンジントルク補正部16にも出力される。
目標エンジントルク補正部16は、後述の学習処理により目標エンジントルク補正量が設定されている場合に、その補正量を用いて目標エンジントルクを補正する補正処理を実行するものであり、補正後の目標エンジントルクは、エンジンECU6の制御目標値として、エンジンECU6に送信される。
【0055】
尚、学習処理により設定される目標エンジントルク補正量は、エンジンECU6側での学習処理が正常に機能しない走行領域が存在する場合(換言すれば、エンジンECU6側での制御にずれがある場合)に、その走行領域では、エンジントルク変速段振分部14にて設定された真の目標エンジントルクをマネージャECU10側で補正することによって、エンジンECU6側で実行すべき学習処理をマネージャECU10側で代行できるように設定されるものであり、本実施例では、この補正のために実行される目標エンジントルク補正部16としての処理が、本発明(請求項15記載)の補正手段として機能する。
【0056】
また次に、エンジントルク変速段振分部14にて設定された目標変速段は、ATECU8に送信されると共に、マネージャECU10側での制御処理の一つである目標変速時間設定部18にも出力される。
目標変速時間設定部18は、AT4の変速段を目標変速段に切り換える必要がある場合に、そのときの車速と目標変速段とに基づき、ATECU8側での変速動作に必要な目標変速時間を設定するものであり、設定された目標変速時間は、ATECU8に送信される。
【0057】
一方、エンジンECU6側で実行されるエンジン制御処理は、アクチュエータ指令設定部22にて、マネージャECU10から送信されてきたエンジン2の動作指針を表す情報(つまり、補正後目標エンジントルク)と、上述したセンサ・スイッチ類からの検出信号とに基づき、補正後目標エンジントルクを、予め設定された目標空燃比で実現するのに要するスロットル開度、燃料噴射量、点火時期を設定し、それに基づいてインジェクタ、イグナイタ、燃料噴射ポンプ、スロットル駆動モータを駆動するための指令値(駆動信号)を生成して、これら各アクチュエータに出力することにより実行される。
【0058】
また、ATECU8側で実行されるAT制御処理は、ソレノイド指令設定部24にて、マネージャECU10から送信されてきたAT4の動作指針を表す情報(つまり、目標変速段及び目標変速時間)と、同じくマネージャECU10から送信されてきた目標エンジントルクと、上述したセンサ・スイッチ類からの検出信号とに基づき、目標変速段が現在の変速段と異なる場合に、目標変速段を実現するように変速段切換ソレノイドを駆動するための指令値(駆動信号)を生成して、変速段切換ソレノイドに出力し、同時に、変速に関わるクラッチの係合力として、目標エンジントルクに応じて目標変速時間で変速終了させるのに要するライン圧指令値を算出して、ライン圧ソレノイドを駆動するための指令値(駆動信号)を生成し、これをライン圧ソレノイドに出力することにより実行される。
【0059】
また、ソレノイド指令設定部24では、予め、燃費、変速フィーリングを考慮して設定されているロックアップ状態(ロックアップクラッチ開放、スリップロックアップ、ロックアップクラッチ締結)になるようロックアップクラッチ圧指令値を算出し、この指令値をロックアップ圧ソレノイドに出力する、といった手順でロックアップ制御も実行される。
【0060】
以上のように、本実施例では、マネージャECU10が、パワートレイン制御処理により、システム全体を制御するための指令をエンジンECU6及びATECU8に出力し、エンジンECU6及びATECU8側では、エンジン制御処理及びAT制御処理により、その指令に対応してエンジン2及びAT4の動作を夫々制御するのであるが、各ECUにて実行される学習処理においても、上述した制御処理と同様に、マネージャECU10側で実行される学習処理の結果に従いエンジンECU6、ATECU8が学習処理を実行する。
【0061】
つまり、本実施例では、マネージャECU10側では、学習処理として、変速時、非変速時を区分し、その区分した各領域毎に、システム全体の動作及びエンジン2、AT4の動作が適切かどうか判定し、その結果に応じて、学習動作に関する情報をエンジンECU6、ATECU8へ送信するパワートレイン学習処理を実行する。そして、エンジンECU6、ATECU8側では、そのパワートレイン学習処理を実行することによってマネージャECU10から送信されてくる情報に応じて学習処理(エンジン学習処理及びAT学習処理)を実行する。
【0062】
以下、このように上記各ECUにて実行される学習処理について説明する。尚、マネージャECU10側で実行されるパワートレイン学習処理は、本発明(請求項4〜16)の判定手段として機能し、エンジンECU6及びATECU8側で実行されるエンジン学習処理及びAT学習処理側は、本発明(請求項4〜16)の学習手段として機能する。
【0063】
図3は、パワートレイン学習処理の具体的な手順を表すフローチャートである。
この処理は、予め設定された所定時間毎に実行される処理であり、ATECU8から送信されてくるAT4の変速状態を表す情報に基づき、前回の演算タイミングでの変速状態と今回の演算タイミングでの変速状態とで処理が振り分けられる。
【0064】
即ち、まずステップ1000(以下、ステップをSと記載する)にて、前回が変速中かどうか判定し、変速中でないならS1010に移行し、変速中ならS1100へ移行する。また、S1010では、今回が変速中かどうか判定し、変速中でないならS1015へ移行し、変速中ならS1011へ移行する。また、S1100においても、今回が変速中かどうか判定し、変速中でないならS1101へ移行し、変速中ならS1110へ移行する。この結果、パワートレイン学習処理は、前回と今回の変速状況に応じて、4通りに振り分けられることになる。
【0065】
以下、まず、前回も今回も変速中でない場合に実行されるS1015以降の処理を説明する。
まず、S1015では、システム判定終了フラグがONかどうか判定する。システム判定終了フラグは、後述するシステム全体動作判定の結果、システム全体の動作が適切であると判定されるか、或いは、後述するエンジン動作判定の結果、エンジンの動作が不適切であると判定された場合にONされるフラグであり、このフラグがONならば処理を終了し、OFFならばS1020へ移行する。
【0066】
次にS1020以降の処理では、システム全体の動作が適切かどうか判定し、その結果に応じてエンジン2の動作が適切かどうか判定する。
S1020では、走行領域を判定する。この走行領域には、図4に示すように、エンジン回転数と目標エンジントルクとを用いて区分される複数の走行領域が予め設定されており、S1020では、エンジンECU6から送信されてきた現在のエンジン回転数と、パワートレイン制御処理にて設定されている現在の目標エンジントルクとから、現在の走行領域が図4に示す0番から15番までの何れの走行領域に属しているのかを判定する。
【0067】
尚、図4に示す各走行領域において、各走行領域の境界線上には、エンジン回転数及び目標エンジントルクの揺れを見込んで、ヒステリシスが設定してある。また、これら各走行領域に対応して、後述するエンジン学習カウンタ、エンジン学習不可フラグ、AT学習カウンタ、AT学習不可フラグが設定されており、これに対応して、以下に説明するエンジン動作判定及びAT動作判定は、各走行領域毎に実行される。
【0068】
次に、S1030では、今回の走行領域が0領域かどうか判定し、0領域の場合は処理を終了する。つまり、0領域には、エンジン2の加速走行の常用動作域とは離れた領域が設定されており、S1030では、走行領域が0領域の場合には学習する重要度が低いと判定して、以降の処理を実行せず、そのまま当該処理を終了するのである。
【0069】
一方、S1030にて、走行領域が0領域でないと判断された場合には、S1040にて、前回と今回の走行領域を比較する。そして、走行領域が前回と異なる場合には、S1041にて、後述するシステム判定カウンタ、エンジントルクずれ量積算カウンタ、エンジントルクずれ量積算値をゼロクリアし、システム判定終了フラグをリセット(OFF)した後、S1050に移行し、逆に、走行領域が前回と同じ場合には、そのままS1050へ移行する。
【0070】
次にS1050では、システム判定カウンタに1加算し、続くS1060にて、システム判定カウンタとシステム判定カウンタ制限値とを比較する。システム判定カウンタ制限値は、システム全体の動作が適切かどうか判定する回数の制限値であり、予め設定されている。これは後述する車両加速度算出の精度などに応じて設定される。そして、システム判定カウンタがシステム判定カウンタ制限値を超えている場合には、現在の走行領域でのシステムの動作判定は完了したと判断して、S1061でシステム判定終了フラグをONし、処理を終了する。
【0071】
一方、システム判定カウンタがシステム判定カウンタ制限値以下の場合は、S1070にて、システム全体及びエンジン2の動作が適切かどうか判定する。このS1070で実行されるシステム・エンジン動作判定処理は、図5に示すフローチャートに沿って実行される。
【0072】
即ち、まず、S2000で目標車軸トルクから車両目標加速度を算出する。具体的には、例えば、目標車軸トルクとタイヤ有効径からタイヤ設置面での目標駆動力を算出し、その目標駆動力と、車両質量や車速から算出される走行抵抗を用いて車両目標加速度を算出する。
【0073】
次にS2010では、車両実加速度を算出する。具体的には、例えば、ATECU8から送信されてくる車速に基づき、今回演算タイミングと前回演算タイミングの車速の差をローパスフィルタ処理することにより算出する。
また、続くS2020及びS2030では、システムの動作が適切かどうか判定する。具体的には、S2020にて、車両目標加速度と車両実加速度の差から、車両加速度ずれ量を算出し、S2030にて、車両加速度ずれ量の絶対値と加速度判定しきい値を比較する。
【0074】
そして、車両加速度ずれ量の絶対値が加速度判定しきい値より大きければ、システムの動作が適切でないと判定して、S2040に移行し、逆に車両加速度ずれ量の絶対値が加速度判定しきい値以下であれば、システムの動作は正常であると判定して、処理を終了する。
【0075】
S2040は、エンジン2の動作が適切であるかどうかを判定するための処理であり、このエンジン動作判定処理は、例えば図6に示すフローチャートに沿って次のように実行される。
まず、S3000にて、ATECU8から送信されてくるロックアップ制御状態を表す情報に基づき、AT4でのロックアップクラッチが解放又はスリップロックアップ状態にあるか否かを判定する。
【0076】
そして、ロックアップクラッチが解放又はスリップロックアップ状態にある場合には、S3010にて、トルクコンバータの特性とエンジン回転数の加速状況とロックアップクラッチの伝達トルクとから推定エンジントルクを算出する。
具体的には、例えば、図7に示す如きマップを使ってエンジン回転数と変速機入力回転数とから求められるトルクコンバータのトルク容量係数とエンジン回転数の2乗の積で求められるトルクコンバータ入力トルクと、エンジン回転数微分値とエンジン2のイナーシャに応じて設定される係数の積で求められるエンジン回転を加速させるためのトルクと、ATECU8から送信されてくる推定ロックアップクラッチ伝達トルクと、を加えることにより推定エンジントルクを算出する。なお、トルク容量係数はトルクコンバータの特性を計測することにより設定することができる。
【0077】
一方、S3000にて否定判断された場合(ロックアップクラッチの締結時)は、S3011にて、図8に示す如きエンジントルクマップを用いて推定エンジントルクを算出する。尚、この推定に用いられるエンジントルクマップは、エンジンECU6の制御定数が設定されてから特性計測することで設定されるものである。
【0078】
こうしてS3010又はS3011にて推定エンジントルクが算出されると、今度は、S3020にて、推定エンジントルクと目標エンジントルクの差からエンジントルクずれ量を算出すると共に、その算出したエンジントルクずれ量の積算値を算出し、続くS3030にて、エンジントルクずれ量積算カウンタに1を加算する。
【0079】
また次に、続くS3040では、上記算出したエンジントルクずれ量の絶対値とエンジントルク判定制限値を比較し、エンジントルクずれ量の絶対値が、エンジントルク判定制限値より大きい場合には、エンジン2の動作が適切でないと判定して、S3050に移行し、逆に、エンジントルクずれ量の絶対値がエンジントルク判定制限値以下である場合には、処理を終了する。
【0080】
尚、エンジントルク判定制限値は、推定エンジントルクの精度に応じて設定されるものであり、例えば、ATECU8から送信されてくるトルクコンバータの作動油温が低い場合など、推定エンジントルクの推定精度が低い条件では、大きい値に設定される。
【0081】
次に、S3050では、エンジン2の動作異常の判定回数を計測するためのエンジン判定カウンタに1を加算し、続くS3060にて、そのエンジン判定カウンタとエンジン判定制限値とを比較する。そして、エンジン判定カウンタがエンジン判定制限値以下の場合は、処理を終了し、逆に、エンジン判定カウンタがエンジン判定制限値より大きい場合は、S3070に移行する。
【0082】
尚、S3060の判定処理は、エンジン2の動作異常の誤判定により以降のエンジン学習用の処理を誤って実行することのないようにするための処理である。また、S3060で用いるエンジン判定制限値は、S3040で用いるエンジントルク判定制限値と同様、推定エンジントルクの精度に応じて設定されるものであり、トルクコンバータ作動油温が低い場合など推定精度が低い条件で大きくなっている。
【0083】
次に、続くS3070では、システム判定終了フラグをONし、エンジントルクずれ量の平均値を算出する。尚、この平均値は、エンジントルクずれ量積算値をエンジントルクずれ量積算カウンタの値で割ることにより算出される。
また、続くS3080では、エンジン学習カウンタを1加算し、S3090にて、そのエンジン学習カウンタの値とエンジン学習回数制限値とを比較する。尚、このエンジン学習回数制限値は、エンジンECU6側での学習回数の制限値であり、エンジン学習回数制限値の回数学習してもエンジン制御のずれがなくならない場合には、その走行領域では、エンジンECU6側での学習処理ではエンジン制御のずれを解消できないと判断して、学習を禁止するのに用いられる。
【0084】
つまり、S3090にて、エンジン学習カウンタの値がエンジン学習回数制限値より大きいと判断した場合には、S3091で現在の走行領域の重要度(領域重要度)を図9に示す如きマップを用いて判定し、領域重要度が0で、現在の走行領域が重要でない場合には、今後、現在の走行領域での制御をできるだけ実行しないようにするために、S3092にて、前述のエンジン学習不可フラグをONし、逆に、領域重要度が1で、現在の走行領域が車両制御にとって重要な領域である場合には、S3093にて、エンジンECU6側での学習を禁止するために、エンジン学習許可フラグをOFFし、続くS3094にて、目標エンジントルク補正量として、エンジントルクずれ量平均値を設定し、処理を終了する。
【0085】
尚、この目標エンジントルク補正量は、前述したパワートレイン制御処理の実行時に、補正手段としての目標エンジントルク補正部16にて目標エンジントルクを補正するのに使用されるものである。
また、領域重要度を設定するのに使用されるマップ(図9)は、図4に示した走行領域と同様に分割された各領域毎に、パワートレイン制御を実行する上で重要度が高い領域に対して値1、それ以外の領域に対して値0を設定したものである。
【0086】
一方、S3090にて、エンジン学習カウンタの値がエンジン学習回数制限値以下であると判断した場合には、エンジンECU6に学習処理を実行させるべく、S3100にて、エンジン学習許可フラグをONする。そして、続くS3110では、エンジンECU6に対して、学習動作に関する情報として、エンジントルクずれ量平均値を送信し、処理を終了する。
【0087】
尚、エンジン学習許可フラグは、上記のようにマネージャECU10側の学習処理でON/OFFされるだけでなく、エンジンECU6側で学習処理が実施された際にも、エンジンECU6側でOFFされるものであり、各ECU10、6間で通信により常時同期がとられている。従って、S3100にてエンジン学習許可フラグをONさせた場合には、エンジンECU6側で学習処理が開始され、S3093にてエンジン学習許可フラグをOFFさせた場合には、エンジンECU6が学習処理を実行していたとしても、その学習処理は停止されることになる。
【0088】
よって、本実施例では、このようにエンジンECU6側での学習を禁止するためにエンジン学習許可フラグをOFFするS3093の処理が、本発明(請求項14)の出力情報変更手段として機能することになる。また、本実施例において、パワートレイン制御処理にて現在の走行領域での制御を実行しないようにエンジン学習不可フラグをONするS3092の処理は、本発明(請求項16)の動作指針制限手段として機能する。
【0089】
次に、図3に戻り、前回、今回とも変速中でない場合以外の処理について説明する。尚、以下に説明する処理は、全て、AT4の動作が適切かどうか判定するための処理である。
まず、前回が変速中でなく今回が変速中の場合に実行されるS1011では、後述する変速時間計測カウンタをゼロクリアし、変速判定終了フラグをOFFし、目標車軸トルク初期値として今回の目標車軸トルクを設定する、といった手順で、変速判定のための初期設定を行い、当該処理を一旦終了する。
【0090】
一方、前回が変速中で今回も変速中の場合に実行されるS1110では、変速判定終了フラグがONかどうかを判定し、変速判定終了フラグがONであれば当該処理を終了し、変速判定終了フラグがOFFであれば、S1120に移行して、変速時間計測カウンタを1加算する。
【0091】
そして、続くS1130では、現在の目標車軸トルクと目標車軸トルク初期値との差から求まる目標車軸トルク変化量と、その制限値(目標車軸トルク変化量制限値)とを比較する。尚、目標車軸トルク変化量制限値は、後述するAT動作の判定精度が車軸トルク変化時に悪化するため、後述するAT動作判定を実施するか否かを判断するための制限値として設定されるものである。
【0092】
このため、S1130にて、目標車軸トルク変化量が目標車軸トルク変化量制限値以下であると判断された場合には、当該処理をそのまま終了し、目標車軸トルク変化量が目標車軸トルク変化量制限値以下であると判断された場合には、S1131にて、今回のAT4の変速動作に伴うAT動作判定を禁止すべく、変速判定終了フラグをONして、当該処理を終了する。
【0093】
また次に、前回が変速中で今回が変速中でない場合に実行されるS1101では、AT4の変速中に実行されるS1131の処理により変速判定終了フラグがONされたか否かを判定し、変速判定終了フラグがONされていれば、そのまま当該処理を終了し、逆に、変速判定終了フラグがONされていなければ、続くS1140に移行して、AT4の動作が適切かどうかを判定するAT動作判定処理を実行した後、当該処理を終了する。
【0094】
図10は、このAT動作判定処理を表すフローチャートである。
図10に示す如く、AT動作判定処理では、まず、S4000にて、変速時間計測カウンタを用いて計測された変速時間と目標変速時間との差から変速時間ずれ量を算出する。そして、続くS4010では、前述のS1020と同様に、図4に示す特性に従い、変速時の走行領域を設定し、続くS4020にて、この走行領域でのエンジン学習状況を判定する。具体的には、S4010にて設定した走行領域でエンジン動作判定処理によりエンジン2の動作判定をした最新の結果(詳しくはS3040による判定結果)が、エンジン動作が不適切であるというものであったか、エンジン動作は適切であるかを判定する。
【0095】
次に、S4020で、エンジン動作は不適切であると判定した際には、以降のAT動作判定用の処理を実行することなく、当該処理を終了し、逆にS4020にて、エンジン動作は適切であると判定した際には、AT動作判定を実行すべく、続くS4030に移行する。
【0096】
S4030では、AT学習フラグをONし、続くS4040にて、AT学習カウンタを1加算し、続くS4050にて、このAT学習カウンタの値と、AT学習回数制限値とを比較する。このAT学習回数制限値は、ATECU8側での学習回数の制限値であり、AT学習回数制限値の回数学習してもAT制御のずれがなくならない場合には、現在の走行領域では、ATECU8側で学習制御を実行してもAT制御のずれを解消できないと判断して、ATECU8側ので学習を禁止するのに用いられる。
【0097】
つまり、S4050にて、AT学習カウンタの値がAT学習回数制限値より大きいと判断した場合には、今後、現在の走行領域でAT4の変速動作をできるだけ実行しないようにするために、S4051にて、前述のAT学習不可フラグをONして、当該処理を終了し、逆に、AT学習カウンタの値がAT学習回数制限値以下の場合には、S4060にて、AT学習許可フラグをONすることにより、ATECU8に対して学習処理の実行を許可し、S4070にて、S4000で求めた変速時間ずれ量をATECU8へ送信した後、当該処理を終了する。
【0098】
尚、AT学習許可フラグは、上記のようにマネージャECU10側の学習処理でONされ、ATECU8側で学習処理が実施された際にOFFされるものであり、各ECU10、6間で通信により常時同期がとられている。従って、S4060にてAT学習許可フラグをONさせた場合には、ATECU8側で学習処理が開始され、ATECU8側での学習処理が終了した後、マネージャECU10側でAT学習許可フラグをONしなければ、ATECU8側での学習処理を禁止することになる。
【0099】
よって、本実施例では、このようにATECU8側での学習を禁止するために、エンジン学習許可フラグをONするS4060の処理を実行させないS4050の判定処理も、本発明(請求項14)の出力情報変更手段として機能することになる。また、パワートレイン制御処理にて現在の走行領域での制御を実行しないようにAT学習不可フラグをONするS4051の処理も、前述のS3092の処理と同様、本発明(請求項16)の動作指針制限手段として機能する。
【0100】
次に、エンジンECU6及びATECU8において夫々実行される学習処理(エンジン学習処理及びAT学習処理)について、図11及び図12に示すフローチャートに沿って説明する。
まず図11は、エンジンECU6において所定時間毎に実行されるエンジン学習処理を表すフローチャートである。
【0101】
図11に示す如く、エンジン学習処理では、まずS110にて、マネージャECU10側で実行されるパワートレイン学習処理にてエンジン2等の動作判定を行うのに必要なエンジン回転数等の情報を送信する、本発明(請求項6)の出力手段としての処理を実行する。そして続くS120では、エンジン学習許可フラグがONか否かを判定し、OFFであれば以降の学習処理を実行することなく当該処理を終了する。
【0102】
一方、エンジン学習許可フラグがONであれば、S130〜S160の学習処理を実行し、当該処理を終了する。
この学習処理は、現在の走行領域に対応したエンジン制御量(前述のスロットル開度、燃料噴射量、点火時期)の補正係数を、予め設定されたマップ若しくは演算式を用いて算出し(S130)、その算出した制御量補正係数とマネージャECU10から送信されてきたエンジントルクずれ量平均値とを乗算することにより、各制御量に対する制御補正量を算出し(S140)、その算出した制御補正量をメモリに記憶し(S150)、エンジン学習許可フラグをOFFする(S160)といった手順で実行される。
【0103】
この結果、エンジンECU6において、エンジン制御処理を実行するに当たって、現在の走行領域に対する制御補正量がメモリに記憶されている場合には、この制御補正量を用いて各エンジン制御量が補正され、上記学習処理が正常に機能していれば、エンジントルクずれ量が低減されることになる。
【0104】
次に、図12は、ATECU8において所定時間毎に実行されるAT学習処理を表すフローチャートである。
図12に示す如く、AT学習処理では、まずS210にて、マネージャECU10側の学習処理(詳しくはS3010)で推定エンジントルクを算出するのに必要な推定ロックアップクラッチ伝達トルクを、予め設定された計算式(例えば、(ロックアップ油圧指令値−油圧指令値オフセット値)×油圧トルク変換係数)を用いて算出する。尚、油圧指令値オフセットは、ロックアップクラッチがトルク伝達し始める指令値であり、油圧トルク変換係数は、クラッチの摩擦係数や受圧面積等で決まる。
【0105】
そして、続くS220では、S210で算出した推定ロックアップクラッチ伝達トルクや車速センサを用いて検出した車速等、マネージャECU10側でAT4若しくはエンジン2の動作判定を行うのに必要な情報を送信する、本発明(請求項6)の出力手段としての処理を実行する。また、続くS230では、AT学習許可フラグがONか否かを判定し、OFFであれば以降の学習処理を実行することなく当該処理を終了する。
【0106】
一方、AT学習許可フラグがONであれば、S240〜S270の学習処理を実行し、当該処理を終了する。
この学習処理は、1−2速変速、2−3速変速、…といった現在の変速種類に対応した油圧指令変換係数を、予め設定されたマップ若しくは演算式を用いて算出し(S240)、その算出した油圧指令変換係数とマネージャECU10から送信されてきた変速時間ずれ量とを乗算することにより、前述したライン圧指令値を補正するための油圧指令補正量を算出し(S250)、その算出した油圧指令補正量をメモリに記憶し(S260)、AT学習許可フラグをOFFする(S270)といった手順で実行される。
【0107】
この結果、ATECU8においても、AT制御処理を実行するに当たって、変速時に、そのときの変速種類に対応した油圧指令補正量がメモリに記憶されている際には、この油圧指令補正量を用いてライン圧指令値が補正されることになり、上記学習処理が正常に機能していれば、変速時間ずれ量が低減されることになる。
【0108】
以上説明したように、本実施例のパワートレイン制御システムにおいては、車両駆動系の構成要素であるエンジン2及びAT4をエンジンECU6及びATECU8が夫々制御し、マネージャECU10が、これら各ECU6,8に対して、エンジン2及びAT4を制御する際の動作指針(目標エンジントルク、目標変速段、目標変速時間)を指令する。また、エンジンECU6及びATECU8は、夫々、エンジン2又はAT4の個体差或いはこれらの経年変化等によって生じる制御を補正するための学習処理を実行するが、この学習処理に関しても、マネージャECU10が、各ECU6,8に対して学習動作に関する情報(学習許可フラグ及び制御のずれ量)を送信することにより実行される。
【0109】
従って、本実施例のパワートレイン制御システムによれば、マネージャECU10側で実行されるパワートレイン制御処理により車両駆動系全体の挙動を最適に制御できるだけでなく、車両駆動系の挙動が目標からずれたときに、マネージャ制御部側で実行されるパワートレイン学習処理でのエンジン2及びAT4の動作判定によって、制御のずれがエンジン2及びAT4の何れに起因するのかを特定して、それに対応したECU6又は8に対して、適切な学習動作を実行させることができる。よって、本実施例によれば、システム全体での学習制御を効率よく行い、車両駆動系の挙動を最適に制御することが可能となる。
【0110】
また、本実施例では、マネージャECU10側でエンジン2の動作が不適切であると判断して、エンジンECU6に対して学習処理を実行させると、その後、マネージャECU10は、その学習処理により制御のずれを低減できたかどうかを判定し、制御のずれを低減できていないとには、そのときの走行領域での学習制御を禁止して、その代わりにエンジンECU6に送信する目標エンジントルクを補正するか、或いは、制御のずれを低減できない走行領域でエンジン2を運転することのないよう、エンジン学習不可フラグをONする。
【0111】
またATECU8での学習処理に関しても、マネージャECU10は、その学習処理により変速時間ずれ量を低減できたか否かを判断して、変速時間ずれ量を低減できない場合には、そのときの走行領域でAT4の変速動作を実行しないように、AT学習不可フラグをONする。
【0112】
このため、エンジンECU6又はATECU8側で実行される学習処理が正常に機能しない走行領域がある場合でも、システム全体の挙動を最適に制御することができ、制御精度をより向上することができる。
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
【0113】
例えば、上記実施例では、エンジンECU6及びATECU8は、学習処理を実行することにより、スロットル開度、燃料噴射量、点火時期、ライン圧指令値といった各種制御量に対する補正量を、制御プログラムの内部定数として設定・変更するが、これら各ECU6,8側で学習処理により変更する制御プログラムの内部定数としては、マネージャECU10から指令される動作指針(目標エンジントルク、目標変速段、目標変速時間)に対する補正量であってもよい。
【0114】
また上記実施例では、マネージャECU10側でエンジン2及びAT4の動作判定を行い、その動作が不適切である場合に、対応するECU6又は8に対して、学習処理を実行させるための情報(学習許可フラグ及び制御のずれ量)を送信するようにしたが、例えば、エンジンECU6及びATECU8側で夫々エンジン2及びAT4の動作判定を行い、その判定結果をマネージャECU10に送信し、マネージャECU10側では、駆動系全体の挙動の目標値からのずれを判定して、そのずれとエンジンECU6及びATECU8側での動作判定結果とに基づき、学習処理を実行すべきECUは、エンジンECU6であるか、ATECU8であるか、或いは、マネージャECU10自らであるかを判定し、その判定結果に応じてエンジンECU6或いはATECU8に学習動作に関する情報を送信するようにしてもよい。
【0115】
また、上記実施例では、本発明の車両統合制御システムを簡単に説明するために、マネージャECU10は、エンジンECU6とATECU8とに各種指令を送信するものとして説明したが、エンジンECU6及びATECU8に加えて、車両各車輪に設けられた制動装置を制御する電子制御ユニットをマネージャECU10に接続することにより、マネージャECU10側で車両駆動系だけでなく制動系をも含めた車両全体の挙動を制御するようにしてもよく、更に、ナビゲーションシステム等の各種情報システムをマネージャECU10に接続することにより、マネージャECU10がこれらの情報システムから、現在車両が走行している道路の勾配、高度等の情報を取得し、その情報に従い駆動輪の駆動トルクや制動時に各車輪に加える制動トルクが最適となるよう、車両駆動系及び制動系を統合制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例のパワートレイン制御システム全体の構成を表すブロック図である。
【図2】 パワートレイン制御システムを構成する各ECUにて車両制御の為に実行される制御処理を機能ブロックで表す説明図である。
【図3】 マネージャECUにて実行されるパワートレイン学習処理を表すフローチャートである。
【図4】 パワートレイン学習処理において分割される走行領域を説明する説明図である。
【図5】 パワートレイン学習処理の一部として実行されるシステム・エンジン動作判定処理を表すフローチャートである。
【図6】 システム・エンジン動作判定処理の一部として実行されるエンジン動作判定処理を表すフローチャートである。
【図7】 トルク容量係数設定用のマップを表す説明図である。
【図8】 エンジントルク設定用のマップを表す説明図である。
【図9】 図4に示した走行領域毎に設定される重要度を表す説明図である。
【図10】 パワートレイン学習処理の一部として実行されるAT動作判定処理を表すフローチャートである。
【図11】 エンジンECUにて実行されるエンジン学習処理を表すフローチャートである。
【図12】 ATECUにて実行されるAT学習処理を表すフローチャートである。
【符号の説明】
2…エンジン、4…AT、6…エンジンECU、8…ATECU、10…マネージャECU、L…通信線、12…目標車軸トルク設定部、14…エンジントルク変速段振分部、16…目標エンジントルク補正部、18…目標変速時間設定部、22…アクチュエータ指令設定部、24…ソレノイド指令設定部。

Claims (17)

  1. 車両の複数の構成要素を、予め設定された制御プログラムに従い夫々制御する複数の構成要素制御部と、
    該複数の構成要素制御部に対して、各構成要素制御部が制御する各構成要素の動作指針を夫々指令するマネージャ制御部と、
    を備えた車両統合制御システムにおいて、
    前記マネージャ制御部は、前記制御プログラムの内部定数を変更する学習動作を実行する構成要素制御部を特定し、前記各構成要素制御部に対して、該特定結果に基づき前記制御プログラムの内部定数を変更する学習動作に関する情報を出力し、
    前記各構成要素制御部は、前記マネージャ制御部からの情報に応じて、前記学習動作を実行すること
    を特徴とする車両統合制御システム。
  2. 前記マネージャ制御部が出力する情報は、前記各構成要素制御部に対して前記学習動作の実行を許可又は禁止する情報であり、
    前記各構成要素制御部は、前記マネージャ制御部からの前記学習動作の許可又は禁止情報に応じて、前記学習動作を実行又は停止することを特徴とする請求項1記載の車両統合制御システム。
  3. 前記マネージャ制御部が出力する情報は、前記各構成要素制御部での前記学習動作の実行によって前記内部定数を変更する際に変更が許可される量である変更許可量を規定する情報を含み、
    前記各構成要素制御部は、前記変更許可量を規定する情報に基づき、前記内部定数を変更することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両統合制御システム。
  4. 車両の複数の構成要素を、予め設定された制御プログラムに従い夫々制御する複数の構成要素制御部と、
    該複数の構成要素制御部に対して、各構成要素制御部が制御する各構成要素の動作指針を夫々指令するマネージャ制御部と、
    を備えた車両統合制御システムにおいて、
    前記マネージャ制御部は、前記制御プログラムの内部定数を変更する学習動作が必要か否かを前記各構成要素制御部ごとに判定し、該判定結果に応じて前記学習動作を実行する構成要素制御部を特定し、該特定結果に基づき前記学習動作に関する情報を出力する判定手段を備え、
    前記各構成要素制御部は、前記判定手段からの情報に応じて、前記学習動作を実行する学習手段を備えたことを特徴とする車両統合制御システム。
  5. 前記判定手段は、前記各構成要素制御部へ指令する動作指針と前記各構成要素の動作とを比較することにより、前記学習動作が必要か否かを判定することを特徴とする請求項4記載の車両統合制御システム。
  6. 前記各構成要素制御部は、前記構成要素の制御状態を表す情報を前記マネージャ制御部に出力する出力手段を備え、
    前記判定手段は、前記出力手段からの情報に基づき、前記学習動作が必要か否かを判定することを特徴とする請求項4又は請求項5記載の車両統合制御システム。
  7. 前記判定手段が出力する情報は、前記各構成要素制御部の学習手段の学習動作を許可又は禁止する情報であり、
    前記学習手段は、前記判定手段からの情報に応じて、前記学習動作を実行又は停止することを特徴とする請求項4〜請求項6何れか記載の車両統合制御システム。
  8. 前記判定手段は、前記学習動作が必要であると判定した構成要素制御部の学習手段に対して、前記学習動作を許可する情報を出力することを特徴とする請求項7記載の車両統合制御システム。
  9. 前記判定手段は、前記学習動作が不要であると判定した構成要素制御部の学習手段に対して、前記学習動作を禁止する情報を出力することを特徴とする請求項7又は請求項8記載の車両統合制御システム。
  10. 前記判定手段は、特定の構成要素制御部以外の構成要素制御部による前記学習動作が必要であると判定した場合に、該特定の構成要素制御部の学習手段に対して、前記学習動作を禁止する情報を出力することを特徴とする請求項7〜請求項9何れか記載の車両統合制御システム。
  11. 前記判定手段は、特定の構成要素制御部以外の構成要素制御部による前記学習動作が不要であると判定した場合に、該特定の構成要素制御部の学習手段に対して、前記学習動作を許可する情報を出力することを特徴とする請求項7〜請求項10何れか記載の車両統合制御システム。
  12. 前記判定手段が出力する情報は、前記各構成要素制御部の学習手段が前記学習動作によって前記内部定数を変更する際に変更が許可される量である変更許可量を規定する情報を含み、
    前記各構成要素制御部の学習手段は、該変更許可量を規定する情報に応じて、前記内部定数を変更することを特徴とする請求項4〜請求項11何れか記載の車両統合制御システム。
  13. 前記判定手段は、前記各構成要素の動作の前記動作指針からのずれに応じて、前記各構成要素制御部の学習手段に対する前記変更許可量を算出することを特徴とする請求項12記載の車両統合制御システム。
  14. 前記マネージャ制御部は、
    前記判定手段が、前記学習動作が必要であると判定した構成要素制御部の学習手段に対して前記学習動作を実行させる情報を出力したにも関わらず、該構成要素制御部による前記学習動作が必要である場合に、前記判定手段が該構成要素制御部の学習手段に出力する情報を、前記学習動作を停止させる情報に変更する出力情報変更手段、
    を備えたことを特徴とする請求項4〜請求項13何れか記載の車両統合制御システム。
  15. 前記マネージャ制御部は、
    前記出力情報変更手段が、前記判定手段が出力する情報を前記学習動作を停止させる情報に変更すると、該情報の出力先である特定の構成要素制御部に対して指令する動作指針を、該構成要素制御部による前記学習動作が必要となるように補正する補正手段、
    を備えたことを特徴とする請求項14記載の車両統合制御システム。
  16. 前記マネージャ制御部は、
    前記判定手段が、前記学習動作が必要であると判定した構成要素制御部の学習手段に対して前記学習動作を実行させる情報を出力したにも関わらず、該構成要素制御部による前記学習動作が必要であると判断すると、その後、そのとき該構成要素制御部に対して出力している動作指針を出力するのを禁止する動作指針制限手段、
    を備えたことを特徴とする請求項4〜請求項15何れか記載の車両統合制御システム。
  17. 前記マネージャ制御部、及び、前記複数の構成要素制御部は、夫々、マイクロコンピュータからなる独立した電子制御ユニットで構成され、各制御部間は、互いにデータ伝送可能な通信ラインで接続されていることを特徴とする請求項1〜請求項16何れか記載の車両統合制御システム。
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