JP4372684B2 - 標的核酸への変異の導入方法 - Google Patents

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Description

本発明は遺伝子への変異導入、遺伝子上の変異修復に有用な、標的核酸への変異の導入方法に関する。
現在行われている遺伝子治療は、細胞中の遺伝子の欠損、変異によって機能に異常をきたした細胞に対して、ウイルスベクター等を用いてその遺伝子を細胞に導入する方法である。これによって、細胞が正常な機能を回復し本来の役割を果たすことができる。いわば遺伝子の補充療法である。
しかしウイルスベクターによる遺伝子の導入は問題点を有している。染色体上には変異遺伝子がそのまま残存しており、この変異遺伝子由来の変異タンパクが正常な遺伝子由来の正常タンパクと類似した構造をもつ場合、変異タンパクが正常タンパクの機能を妨げる可能性もある。
近年、ウイルスベクターによるDNAの導入とは違って、細胞中の目的遺伝子の塩基を変換させる遺伝子ターゲティング法が注目されている。具体的な例を挙げれば、トーマス・ジェファーソン大学のEric B.Kmiecが開発したキメラ形成法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、Vol.93、p2071〜2076(1996)]では、変化させたい塩基部分をDNAとし、その両端に位置決めのためのRNAを配したキメラオリゴヌクレオチドを用いている。DNA同士よりもRNAとDNAの方が強く結合するので、キメラオリゴヌクレオチドを細胞に導入すると両端のRNAの塩基配列が細胞内のDNAの中から対応する塩基配列をみつけて二本鎖を形成し、次いでミスマッチ修復によって目的部位に変異が導入される。しかし、キメラオリゴヌクレオチドの環状構造が複雑で、それを維持するため余計な8つのチミン(thymine)が使われているので、標的DNAへの結合力に対してかなりのマイナス面がある。
O.Igouchevaらが一本鎖オリゴヌクレオチド(single stranded oligonucleotides、以下ssオリゴと称す場合もある)形成法[Gene Therapy、Vol.8、p391〜399(2001)]を開発した。ここでは標的核酸中の変異させようとする塩基に対応する塩基を中央に配し、両側に細胞中のヌクレアーゼに分解されにくい数個のメチル化したウラシル(uracil)をつけた数十個塩基のオリゴヌクレオチドが使用されている。
しかしながら、上記の二種類の変異導入方法はともに修復効率がまだ低い。二つの中では修復効率がよい一本鎖オリゴヌクレオチド(ssオリゴ)形成法でも明確な欠点がある。それは標的核酸に結合した後のミスマッチ修復の過程で、二本鎖DNAのセンス、アンチセンス両鎖の変異塩基を一度に修復することができず、どちらか一方の変異塩基を修復するだけで、残りの相補鎖中の変異塩基を細胞のミスマッチ修復機構によってもう一回修復する必要がある。
前記Kmiecらのキメラオリゴヌクレオチド(キメラオリゴ)は環状構造の維持のため、標的DNAと関係のない配列が導入されている。その数はオリゴ全体の一割強を占めている。このため、キメラオリゴの標的DNAへのターゲッティング活性が低い。
もう一つ大事なポイントは、キメラオリゴとssオリゴにおける修復のメカニズム、使用されるオリゴヌクレオチドの構造から見たとき、離れている二つ以上の塩基の同時修復が不可能ということである。もし、二つ以上の離れている変異塩基の修復あるいは変異の導入を行う場合は、数回のオリゴヌクレオチド導入とクローニングを行なわなければならない。手間がかかることは勿論、現在の細胞へのDNA導入技術では細胞へのダメージが大きく、生存し、かつ所望の機能を保持した細胞を得ることは困難である。
また、細胞の染色体の変異塩基を修復したい場合には、修復用DNAを細胞質に導入するだけである。この修復用DNAが濃度勾配にそって自由拡散する形で核へ移動する。この場合は細胞に高いモル数の修復用DNAを導入しなければならないが、結局、核に入る量が少なく変異の修復効率もよくない。
遺伝子治療の発展と共に、上記のようにメカニズムが複雑で、かつ効果の悪い修復方法にかわる、複数の塩基を同時に修復することが可能で、能動的に修復用DNAを核へ輸送でき、かつ効果の高い方法が求められている。
発明の概要
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、逆方向反復を有するDNAを使用することにより、標的核酸中の塩基に効率よく変異を導入することができることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の第1の発明は、標的核酸の塩基配列に変異を導入する方法に関し、
(1)逆方向反復配列を有するDNAを調製する工程;ここで、当該逆方向反復配列を有するDNAの塩基配列は標的核酸に相同的で、かつ標的核酸に導入しようとする変異を含む塩基配列を有している、及び
(2)前記逆方向反復配列を有するDNAを細胞内に導入する工程、
を包含することを特徴とする。
第1の発明において、逆方向反復配列を有するDNAは核移行シグナルを有するタンパクに対する結合モチーフ(binding motif)配列、たとえば転写因子に対する結合モチーフ配列を有することができる。また、前記DNAは適当な修飾塩基を含有するものであってもよい。
第1の発明において、標的核酸は細胞質、または核に存在する核酸であることができる。また、逆方向反復配列を有するDNAは二本鎖、一本鎖いずれのDNAでもよい。
第1の発明の方法によれば、同時に複数の変異を標的核酸に導入することも可能である。標的核酸に導入される変異としては塩基の置換、欠失及び/又は挿入が例示される。
本発明の第2の発明は、第1の方法により標的核酸に変異を導入するためのキットであって、標的核酸に相同的で、かつ標的核酸に導入しようとする変異を含む塩基配列を有している逆方向反復配列を有するDNAを含有することを特徴とする。
第2の発明のキットに含有される逆方向反復配列を有するDNAは転写因子の結合モチーフ配列や適当な修飾塩基を含有するものであってもよい。さらに、逆方向反復配列を有するDNAは二本鎖、一本鎖DNAのいずれでもよい。
図1:本発明において作製した、逆方向反復配列を有するプラスミドの模式図である。
発明の詳細な説明
本明細書に記載の「標的核酸」には特に限定はなく、変異の導入が望まれる核酸のいずれもが包含される。例えば、本発明は細胞内に存在するDNAへの変異の導入に使用することができ、細胞質に存在するDNA(エピゾームDNA;プラスミド、ミトコンドリアDNA等)、核内に存在するDNA(染色体DNA)を標的核酸とすることができる。
また、本発明で標的核酸に導入される変異にも特に限定はなく、塩基置換の他、欠失、挿入等の変異を導入することも可能であり、この場合には、使用する逆方向反復配列を有するDNAに上記の変異を有する塩基配列を包含させればよい。
さらに、本発明における変異の導入が、正常な塩基配列への変異の導入のみならず、天然において生じた塩基配列の変異を正常な配列に修復する態様を包含することは当然である。
本発明に使用される逆方向反復配列を有するDNA(以下、逆方向反復DNAと記載することがある)は、標的核酸に相同的で、かつ標的核酸に導入しようとする変異を含む塩基配列を有しているDNAである。ここで「相同的」とは、標的核酸もしくはその相補鎖との間で二本鎖を形成しうる塩基配列を有することを指し、完全に一致した塩基配列を有することを意味するものではない。すなわち、塩基対の形成によって標的核酸との間に二本鎖を形成するに十分な塩基配列を有していることを意味する。
逆方向反復配列を有するDNAの作製方法には特に限定はなく、化学的な合成、酵素的な合成(核酸増幅反応等)、生物学的な合成(プラスミド等の自己複製能を有する核酸を利用する方法)のいずれもが使用できる。逆方向反復を有するDNAは標的核酸のセンス鎖、アンチセンス鎖の配列がタンデムに並んだものであるが、両者の間には標的核酸への変異導入が可能な範囲で、任意の配列(スペーサー)が挿入されていてもよい。
本発明には、逆方向反復を有する二本鎖DNAを使用することができるが、このような二本鎖DNAを変性して得られる一本鎖DNAを使用することもできる。当該一本鎖DNAはセンス鎖部分とアンチセンス鎖部分が互いに相補的な塩基配列を有しているために、両部分が塩基対結合を形成したヘアピン構造をとることもあるが、本発明ではこのような形態の一本鎖DNAも使用することができる。
上記のヘアピン構造を形成した逆方向反復配列を有するDNAは、例えば米国特許第5,643,762号、第5,714,323号、第6,043,028号にslDNAとして記載された一本鎖DNAと同じ方法により調製することができる。
本発明の方法では標的核酸上の2箇所以上に同時に変異を導入することも可能である。このような目的に使用される逆方向反復配列を有するDNAはできるだけ長い方がいいと考えられる。細胞の増殖周期の中のDNA合成期(S phase)において、DNA相同組換え修復が行われる。親DNAから娘DNAへの複製の際、親DNAらせんが解けて複製フォークが形成される。この時期にフォーク部分のDNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の両方に同時に結合できるDNAが、ターゲッティング活性が高いはずである。以上のことから、本発明者らは、一本鎖のDNAで、標的DNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の配列を持つ、つまり、標的DNAのセンス、アンチセンス両鎖に結合できる一本鎖の逆方向反復DNAを作製した。
方法としては、先ず、プラスミドに二つの同じ遺伝子或いはその断片が向きを逆にして並んだ逆方向反復DNAインサートが入っているプラスミドを構築する。例えば、実施例2のようなプラスミドの構築方法である。このプラスミドでトランスフォームした大腸菌を培養して大量のプラスミドを得ることができる。プラスミド中の逆方向反復DNAインサートの両端にある制限酵素を使いインサートをベクターから切断すると逆方向反復DNAを得ることできる。また、上記のプラスミドを鋳型としたPCR法で逆方向反復DNAを増幅する方法もある。
ただ、上記のプラスミドの構築において、逆方向反復DNAに挿入される遺伝子あるいはその断片は、特に限定するものではないが、一般的に500bpから1500bpまでが好ましい。500bp以下の場合には、全く同じ二つのDNA断片を互いに逆方向でベクタープラスミドに挿入することは難しいことがある。このような場合には他の方法、例えば化学的、もしくは酵素的に目的のDNAを合成することもできる。
また、相同組換えを起こしやすいように、変異を導入しようとする標的核酸上の部位の上、下流の十塩基以上、好ましくは百塩基以上を含む塩基配列を有する逆方向反復DNAが本発明に使用できる。
本発明により、逆方向反復配列を有するDNAを使用して標的核酸中に変異を導入する場合、例えば、遺伝子上に存在する変異塩基を是正する場合は、変異塩基に対応する部位に正常な塩基を含むワイルドタイプ(野生型)遺伝子の配列を持つ逆方向反復DNAを作製し、公知のDNA導入法、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、脂質を媒体としたトランスフェクション法などを用いて細胞に導入すると変異塩基の修復ができる。
逆に、ワイルドタイプ遺伝子に変異を導入する場合はその遺伝子に導入したい塩基(塩基配列)を含ませた逆方向反復DNAを調製し、上記のDNA導入法を用いて細胞に導入すれば、標的遺伝子に変異導入ができる。
本発明中の逆方向反復配列を有するDNAがヌクレアーゼにより分解されるのを防ぐため、前記DNAの5’末端と3’末端をヌクレアーゼの作用から保護してもよい。末端の保護は、特に限定するものではないが、たとえばDNAを物理的、化学的に環化させて実施することができる。また、修飾した塩基、たとえば修飾デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、LNA(WO 99/14226号国際公開パンフレット)等を前記DNAに含有させてもよく、特に好ましくはメチル化されたリボヌクレオチドや硫黄化デオキシリボヌクレオチド等を導入して末端の保護が行われる。前記の各種塩基の逆方向反復配列を有するDNAの末端部分への導入は、化学的手段、もしくは後述の実施例に示すように酵素的手段によって実施することができる。
本発明に使用される逆方向反復配列を有するDNAには核移行シグナルを有するタンパクに対する結合モチーフ(binding motif)配列、すなわち当該タンパクに結合しうるDNA配列を含有させることができる。
本発明に使用できる核移行シグナルを有するタンパクには特に限定はなく、天然、もしくは人工のものを使用することができ、例えば転写因子、SV40ラージT抗原、ヒストン、ヌクレオプラスミン、二本鎖RNA結合タンパクであるNF90等が例示される。また、Biochim.Biophys.Acta、Vol.1071、p83〜101(1991)にも多種の核移行シグナルを有するタンパクが記載されており、これらを本発明に使用することができる。
上記の核移行シグナルを有するタンパクが特定のDNA配列に結合できる能力を有するものである場合、本発明の逆方向反復配列を有するDNAに前記タンパクに対する結合モチーフ配列を含有させることができる。
本発明に使用できる結合モチーフ配列には特に限定はなく、例えば変異を導入しようとする細胞において発現されている核移行シグナルを有するタンパクに結合しうる配列を本発明に使用することができる。DNAとの結合部位を有しない、もしくは結合部位の存在が知られていない核移行シグナルを有するタンパクについても、これらの核移行シグナルと適切なDNA結合配列とを有するキメラタンパク質を作製することによって本発明に使用することができる。
前記の核移行シグナルを有するタンパクが変異を導入しようとする細胞において発現されているものであった場合、前記タンパクに対する結合モチーフ配列を有する逆方向反復配列を有するDNAを細胞に導入することにより、導入されたDNAが前記タンパク質に結合して核に輸送され、染色体DNAに目的の変異を導入することができる。核移行シグナルを有するタンパクが変異を導入しようとする細胞において発現されていない場合、あるいは人工的に作製したものであった場合には、変異を導入しようとする細胞に前記タンパクもしくはこれをコードする遺伝子を導入し、本発明の方法を実施すればよい。前記タンパクもしくはこれをコードする遺伝子の細胞への導入方法には特に限定はなく、公知の方法、例えばリポソーム等を使用する方法やプラスミドベクター、ウイルスベクター等を使用する方法が利用できる。さらに、前記タンパクもしくはこれをコードする遺伝子と該タンパクに対する結合モチーフ配列を有する逆方向反復配列を有するDNAとを同時に細胞に導入してもよい。
本発明に好適に使用される核移行シグナルを有するタンパクに結合しうる配列としては、例えば転写因子に結合することができるDNA配列が例示される。本明細書に記載の転写因子とはRNAポリメラーゼによるDNAからのRNAの転写の効率に影響を与える因子を意味する。本発明に使用することのできる転写因子に対する結合モチーフ配列としては、特に本発明を限定するものではないが、たとえば、NF−κB、Sp1、AP1、NF−IL6(C/EBPβ)、AP2、Oct−1、SRF、Ets−1等の転写因子に結合しうる配列が例示される。前記転写因子の結合モチーフ配列は、例えば以下の文献に記載されている:Eur.J.Biochem、Vol.268、p1828〜1836(2001);J.Biol.Chem.、Vol.263、p3372〜3379(1998);Cell、Vol.49、p741〜752(1987);EMBO J.、Vol.9、p1897〜1906(1990);Proc.Natl.Acad.Sci.USA、Vol.88、p7948〜7952(1991);Genes Dev.、Vol.2、p1582〜1599(1988);Nucleic Acids Res.、Vol.20、p3297〜3303(1992);Genes Dev.、Vol.4、p1451〜1453(1990)。
本発明の逆方向反復配列を有するDNAに含有させる結合モチーフ配列のコピー数には限定はなく、1コピーでも、複数コピーでもよい。また、その位置にも特に限定はなく、前記DNAの5’あるいは3’末端部分でもよい。たとえば、2コピー以上の結合モチーフ配列を5’末端部分、3’末端部分の両方に含有させてもよい。好ましくは、逆方向反復配列部分の中央、すなわち反復する配列の間に結合モチーフ配列が導入される。
前記の、核移行シグナルを有するタンパクに対する結合モチーフを含有する逆方向反復配列を有するDNAは、核内に能動的に輸送されることができるため、染色体DNAへの変異の導入、もしくは変異の修復に高い効果を示す。
本発明の方法により遺伝子のノックアウトを行うこともでき、この場合には、例えば、開始コドンであるATG中の一つまたは二つの塩基を置換してタンパクへの翻訳を妨害すればよい。また、標的遺伝子中の適当な位置に終止コドンを導入して完全長の翻訳産物の生成を阻害してもよい。さらに、標的遺伝子の塩基配列に一つまたは二つの塩基を挿入した(もしくは欠失させた)逆方向反復DNAを調製し、これを利用して標的遺伝子のタンパクをコードする領域の塩基配列にフレームシフトを生じさせて遺伝子のノックアウトを達成することができる。例えば、遺伝子の開始コドン塩基、開始コドンから2〜30塩基以内、酵素タンパクの場合はその酵素活性部位に当たるアミノ酸残基をコードする塩基、蛍光を出すタンパクの場合はその蛍光を決めるアミノ酸残基をコードする塩基を変異させることが望ましい。
二つまたは二つ以上の離れた変異塩基を同時に修復することが可能であることが本発明の最も重要な特徴である。数百から千数百塩基の間に、標的核酸中の複数の変異塩基を修復できるような塩基を含有させた、数百から千数百塩基の逆方向反復DNAを使用すれば、単一の変異塩基の修復と同様に複数の変異を修復することができる。例えば、実施例5のように遺伝子中の約200塩基離れた二つの変異塩基を一度で修復することが可能である。
上記の態様により、2以上の部位に変異を導入する場合の、前記部位間の距離には特に限定はなく、数百塩基離れていてもよい。変異導入効率の観点からは、好ましくは200塩基以内の部位であり、より好ましくは100塩基以内であり、特に好ましくは30塩基以内である。
本発明は、上記の本発明の変異の導入に使用されるキットを提供する。1つの実施態様において、該キットは標的核酸に変異を導入するための逆方向反復配列を有するDNAを含有する。さらに、前記DNAを細胞に導入するための試薬を含有するものであってもよい。
さらに、本発明の方法によって遺伝子に変異を導入された細胞は生体に移植することが可能である。こうして生体内で変異遺伝子、もしくは変異が修復された遺伝子を発現させる遺伝子治療を行うことができる。
上記の細胞には特に限定はなく、血液細胞(造血細胞、造血幹細胞、骨髄細胞、臍帯血液細胞、末梢血幹細胞、単核球、リンパ球、B細胞、T細胞等)、線維芽細胞、神経芽細胞、神経細胞、内皮細胞、血管内皮細胞、肝細胞、筋芽細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、癌細胞、白血病細胞等が例示される。
たとえば、造血幹細胞を標的細胞とした遺伝子治療は以下のような操作によって実施することができる。まず、ドナーより造血幹細胞を含有する材料、たとえば骨髄組織、末梢血液、臍帯血液等を採取する。これらの材料はそのまま遺伝子導入操作に用いることも可能だが、通常は密度勾配遠心分離等の方法により造血幹細胞が含まれる単核細胞画分を調製するか、さらに適切な細胞表面のマーカー分子を利用した造血幹細胞の精製を行う。これらの造血幹細胞を含有する材料について、本発明の方法を用いた変異の導入もしくは変異の修復を実施する。こうして得られた細胞は、例えば静脈内投与やその他の方法によってレシピエントに移植することができる。レシピエントは好ましくはドナー自身であるが、同種異系移植を行うことも可能であり、たとえば臍帯血液を材料とした場合には同種異系移植が行われる。
本発明による遺伝子治療としては、患者において発現が亢進している、あるいは変異のために機能が低下もしくは失われている遺伝子を対象とするものが例示される。例えば、鎌形赤血球貧血症のような単一の塩基置換に起因する遺伝病は本発明の方法による治療に好適な疾患である。
上記の遺伝子治療はヒト、ならびにヒト以外の脊椎動物、非脊椎動物についても適用可能である。
さらに、本発明の適用の一例として、たとえば標的細胞として生殖系の細胞(胚性幹細胞、プライモディアル ジャーム セル、卵母細胞、卵原細胞、卵子、精母細胞、精子等)を使用した非ヒトトランスジェニック動物(例えばマウス、ラット、イヌ、ブタ、ウシ、ニワトリ、カエル、メダカ等)の簡便な作製を挙げることができる。本発明の方法によれば、例えば目的の遺伝子の発現のみを特異的に抑制した遺伝子ノックアウト動物を作製することができる。前記ノックアウト動物は遺伝子機能の解析、当該遺伝子の機能に関連した薬剤のスクリーニング等に非常に有用である。
以下に実施例をもって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
Red−shift Green Fluorescent Protein遺伝子への変異塩基の導入
プラスミドpQBI25(Quantum Biotechnologies Inc.社製)に挿入されているRed−shift Green Fluorescent Protein(以下GFPと略称する)をコードする遺伝子(配列表の配列番号1)について、該遺伝子が発現されることがないように、その塩基配列中の一つの塩基を置換した。PCR in vitro mutagenesis kit(タカラバイオ社製)を使用し、GFPの蛍光に重要な66〜68番目アミノ酸残基のうち、67番目のチロシンをコードするコドンTATを終止コドンであるTAGに変えた。このようにして作製した変異GFP(mGFP)遺伝子と変異を導入しないGFPをコードする遺伝子をそれぞれプラスミドpDON−AI(タカラバイオ社製)に挿入し、pDON−mGFPとpDON−GFPを構築した。これらのプラスミド1μgを含むTE緩衝液50μlずつを、1μgのlipofectamine 2000(LF2000,Gibco BRL社製)を含む50μlのOptimen培地(Gibco BRL社製)と混ぜて293細胞にトランスフェクトし、4日後に蛍光顕微鏡で観察した。pDON−GFPを加えた細胞では強い緑蛍光が観察されたが、pDON−mGFPが入った細胞には蛍光がみられなかった。この結果、細胞内で蛍光を発することのない、変異遺伝子が構築された。このmGFP遺伝子を以降の実験に用いた。
GFP遺伝子の塩基配列を有する逆方向反復DNA(以下irDNAと称す)を作るために、先ず、プラスミドにirDNA増幅の鋳型となる逆向きの二つのGFP遺伝子断片を組み込んだ。プラスミドpQBI25に挿入されているGFP遺伝子の全配列をプライマーUs−EcoRI、DEND(配列表の配列番号2、3)で増幅した断片をEcoRI、BamHI(ともにタカラバイオ社製)で消化して得られた760bpのDNA断片をプラスミドpUC19(タカラバイオ社製)のEcoRI、BamHIサイト間に組み込んだ。ついで、このプラスミドのHindIII、BamHIサイト間にGFP遺伝子の全配列をプライマーUs−hindIII(配列表の配列番号4)およびDENDを用いて増幅して得られたDNA断片を、HindIII(タカラバイオ社製)およびBamHIで消化して得られた760bpのDNA断片を組み込んだ。こうして構築されたプラスミドをpucGFP0−0と命名した。
また、GFP遺伝子の全配列をプライマーUs−EcoRIおよびDENDを用いて増幅した断片をEcoRI、PvuII(タカラバイオ社製)で消化して得られた714bpのDNA断片をプラスミドpUC19のEcoRI、SmaIサイト間に組み込んだ。次いで、このプラスミドのHindIII、BamHIサイト間にGFP遺伝子の全配列をプライマーUs−hindIIIおよびDENDを用いて増幅して得られたDNA断片をHindIII、BamHIで消化して得られた760bpのDNA断片を組み込んだ。こうして構築されたプラスミドをpucGFP0−2と命名した。
さらに、GFP遺伝子をプライマーU100hindIIIおよびU100bamhI(配列表の配列番号5、6)で増幅して得られたDNA断片をHindIII、BamHIで消化して110bpのDNA断片を調製した。上記のプラスミドpucGFP0−0中の760bpのHindIII−BamHI断片をこの110bpのDNA断片と置き換え、プラスミドpucGFP0−6を構築した。
pucGFP0−0はGFPをコードする遺伝子の全長について逆方向反復配列を有しており、インサートDNAの長さは1518bpである。pucGFP0−2は反復配列の一方が終止コドンから38塩基までを欠失しており、インサートDNAの長さは1479bpである。プラスミドpucGFP0−6はGFPをコードする遺伝子の全長とGFP遺伝子中の150〜250番目の塩基から形成される逆方向反復配列を有しており、インサートDNAの長さは868bpである。図1AにpucGFP0−0、図1BにpucGFP0−2、図1CにpucGFP0−6を図示する。
pucGFP0−0、pucGFP0−2、pucGFP0−6をそれぞれ鋳型としたPCRにより、逆方向反復DNAである0−0 irDNA、0−2 irDNA、0−6 irDNAを作製した。0−0 irDNA、0−2 irDNAの作製にはプライマーUs−ecoRI−1、Us−hindIII−1(配列表の配列番号7、8)、また0−6 irDNAの作製にはプライマーUs−ecoRI−1、U100hindIII−1(配列表の配列番号9)を使用した。mGFP遺伝子に導入された変異塩基であるGとCを、野生型GFP遺伝子の塩基に取り戻すためのTとAは、0−0 irDNA、0−2 irDNA、0−6 irDNAにおけるセンス鎖の5’側或いはアンチセンス鎖の3’側(EcoRI site)からそれぞれ237と1282、237と1243、237と813番目の塩基に当たる。図1において、mGFP遺伝子のセンス鎖あるいはアンチセンス鎖における、変異塩基の修復に関与する塩基の位置を*および#で示している。
エピゾーム(episome)実験モデルでのmGFP遺伝子の単一変異塩基の修復
逆方向反復DNAによる遺伝子修復実験を行い、標的核酸との結合、標的核酸の変異塩基の修復を調べた。数回のDNA導入による細胞への毒性の影響を避けて、標的核酸であるmGFP遺伝子を組み込んだプラスミド(pcep−mGFP)と、修復用の三種類の逆方向反復DNA(irDNA)またはコントロールに用いたssオリゴのいずれかを同時に細胞質に導入した。ssオリゴの塩基配列を配列表の配列番号10に示す。
(1)熱で変性したirDNAによるエピゾームmGFP遺伝子の修復
実験モデルを作るために、実施例1で構築したpDON−mGFPからmGFP遺伝子を含む760bpのHindIII−BamHI断片を単離し、episomal mammalian発現ベクターであるpCEP4(Invitrogen社製)のHindIII、BamHIサイトの間にサブクローニングし、プラスミドpcep−mGFPを作った。48ウェルプレートに293細胞(8万個)を播いて、10% FBSを含むDEME培地で一晩培養した。それぞれ2μgの0−0 irDNA、0−2 irDNA、0−6 irDNAをそれぞれ94℃、5分間で熱変性し、氷水で急冷した。2μgのssオリゴ、0−0 irDNA、0−2 irDNA、0−6 irDNAと1.5μgのpcep−mGFP或いはpUC19(ネガティブコントロール1)を37.5μlのOptimen培地で希釈し、同量の2μgのLF2000を含むOptimen培地と混ぜた。3.5μgのpcep−mGFPだけを含む37.5μlのOptimen培地と、同量の2μgのLF2000を含むOptimen培地と混ぜた混合物をネガティブコントロール2とした。
20分間のインキュベーション後、これらのDNA−LF2000 reagent complexesを細胞に添加して、30分間室温に置き、更に150μlのOptimen培地を加えた。6時間トランスフェクション後、1mlの10% FBSを含むDEME培地を添加した。48時間後、ネガティブコントロール1とネガティブコントロール2には緑蛍光を発する細胞(GFP陽性細胞)が見られなかったのに対して、変異塩基修復用のssオリゴまたは三種類のirDNAと標的DNAを含むpcep−mGFPとがトランスフェクションされたウェルにはGFP陽性細胞が見られるようになり、4日目にGFP陽性細胞が一番多くなった。この細胞をトリプシンで処理してプレートから細胞を外し、FACSでGFP陽性細胞を測定した。この測定値よりバックグラウンドに相当するネガティブコントロール1の値を引いた結果を表1に示す。
mGFP遺伝子上の変異塩基の修復の指標である239細胞1万細胞あたりのGFP陽性細胞の数は0−0 irDNAの場合が最も多く、その修復効果はssオリゴによるものの約3倍であった。4回の独立した実験のMann−WhitneyのU検定の結果、ssオリゴの修復効率に対する0−0 irDNAの修復効率は有意差(p<0.05)を示した。
Figure 0004372684
(2)熱変性しないirDNAによるエピゾームmGFP遺伝子の修復
PCR増幅により調製したirDNAを熱変性することなく使用した他は、上記実施例3−(1)と同じ操作でmGFP遺伝子の修復を調べた。1万個の293細胞中に出現したGFP陽性細胞の数を表2に示す。熱変性しないirDNAを使用した場合の修復効率はいずれもssオリゴより高かった。4回の独立した実験のMann−WhitneyのU検定の結果、ssオリゴの修復効率に対する0−0 irDNA、0−2 irDNAの修復効率は有意差(p<0.05)を示した。
Figure 0004372684
一方、標的核酸であるpcep−mGFPと変異修復用0−0 irDNAを6時間の間隔をあけて順次トランスフェクションした場合も、ssオリゴを使用した場合より高い修復効率が得られた。
上記(2)の実験において、標的核酸であるプラスミドは使用した細胞のすべてに導入されていないことが明らかとなったことから、pcep−GFPと0−0 irDNAとを上記と同一の条件で293細胞に導入し、GFP陽性細胞数を調べた。この結果、21.22±4.67%の細胞だけにプラスミドが入っていた。従って、表2に示された結果をプラスミドが入ってない細胞を除いて換算すると、pcep−mGFPが導入されている細胞1万個当たりの、変異塩基が修復されたGFP陽性細胞の数は表3のとおりとなった。4回の独立した実験のMann−WhitneyのU検定の結果、ssオリゴの修復効率に対する0−0 irDNAの修復効率は有意差(p<0.05)を示した。
Figure 0004372684
上記の実験においてトランスフェクションには三種類のirDNAとssオリゴをいずれも2μgずつ使用したが、それぞれをモル数に換算すると、ssオリゴのモル数が529nmol、0−0 irDNA、0−2 irDNA、0−6 irDNAのモル数がそれぞれ9.5、10.1、16.6nmolである。それでも、三つのirDNAがいずれもssオリゴより変異塩基の修復率が高かった。ir DNAを熱で変性してトランスフェクションした場合と同様に、変性しないでトランスフェクションした場合でも、修復効率が高いのは全GFP遺伝子領域を含む0−0 irDNAであり、ssオリゴの5倍以上であった。0−0 irDNAの数がssオリゴより数十倍少ないにもかかわらず、修復効率がssオリゴより数倍高いという実験結果からは、irDNAの標的核酸へのターゲッティング活性がssオリゴよりかなり高く、修復効率の向上を導いたと示唆された。
細胞の染色体へのmGFP遺伝子の導入
Retrovirus packaging kit ampho(タカラバイオ社製)を用いて、細胞の染色体にmGFP遺伝子を導入するレトロウイルス粒子の作製を行なった。実施例1に記載の組み換えレトロウイルスベクターpDON−mGFPと上記キットのパッケージングベクターを、ともにリン酸カルシウム法により同時に293細胞に導入した。48時間培養後、培養液上清を採取してフィルター濾過した。さらに、この培養液上清(レトロウイルス溶液)を希釈して293細胞の培地に添加した。ここからクローニングした細胞(293−10細胞)にmGFP遺伝子が入っていることはPCRで増幅したDNA断片のシークエンスを解析して確認した。また、この293−10細胞のゲノムDNAを抽出して、レトロウイルスベクターのintegration siteと該siteに隣接する細胞側の染色体DNAの配列を解析し、1コピーのGFP遺伝子を細胞に導入したことを確認した。以下の実験にはこのクローン化した細胞を使用した。
メチル化リボヌクレオチドで修飾した修復用0−0 irDNAの作製とmGFP変異塩基の修復
2’−O−methyl RNA phosphoamiditeとCE−phosphoamiditeを用いて、phosphoamidite法で合成した5’プライマー RNA−ecoRI、3’プライマー RNA−hindIIIの塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号11、12に示す。これら両プライマーの最初の6塩基がメチル化リボヌクレオチドである。この二つのプライマーを使用し、pucGFP0−0を鋳型としてPCRを行って得られた0−0irDNAのセンス鎖、アンチセンス鎖の5’末端には6個のメチル化リボヌクレオチドがつく。この、細胞内でヌクレアーゼに分解され難い0−0 irDNAをR0−0 irDNAと命名した。
24ウェルプレートの各ウェルに40万個の293−10細胞或いは293細胞(ネガティブコントロール用)を播いて、一晩、10% FBSを含むDEME培地で一晩培養した。4μgのssオリゴと0−0 irDNAまたはR0−0 irDNAをOptimen培地で75μlになるように希釈し、4μg LF2000を含む同量のOptimen培地と混ぜた。20分間インキュベート後、このDNA−LF2000 reagent complexesを細胞に直接にかけて、更に、90μlの10% FBSを含むDEME培地を添加してトランスフェクションを行った。培地中のssオリゴのモル数は992.00nmolで、0−0 irDNAは17.83nmol、R0−0 irDNAは17.82nmolであった。6時間後、1.5mlの10% FBSを含むDEME培地を添加した。16〜18時間後に3% FBSを含むDEMEに培地を交換し、32℃で2日半培養した。
正確にGFP陽性細胞を数えるため、PBSで洗った細胞をトリプシンで剥がして、新しいウェルプレートの培地が入っているウェルに移し、蛍光顕微鏡で各ウェル(160〜190万細胞)における各々のGFP陽性細胞を数えた。修復用DNAをかけた293−10細胞におけるGFP陽性細胞の数からコントロールの293細胞におけるバックグラウンドを引き算した。その結果ssオリゴ、0−0 irDNA、R0−0 irDNAを用いた場合には、平均的に1ウェル中にそれぞれ約54、2300、3800個のGFP陽性細胞が存在していた。293−10細胞1万個あたりのGFP陽性細胞の数を表4に示す。
4回の独立した実験のMann−WhitneyのU検定の結果、ssオリゴの修復効率に対する2種類のirDNAの修復効率はいずれも有意差(p<0.05)を示した。
Figure 0004372684
以上の、R0−0 irDNAによる293−10細胞の染色体中の変異塩基修復率がssオリゴと0−0 irDNAのものよりも高いとの実験結果は、メチル化リボヌクレオチドがヌクレアーゼ等による分解作用に対して耐性であり、R0−0 irDNAの細胞質成いは核にいる時間が0−0 irDNAより長く保たれたことから変異修復効率が高められたことを示唆した。
転写因子と結合できる配列を含むirDNAによる変異塩基の修復
転写因子は核へのシグナルトランスダクションにかかわる重要な因子で、遺伝子の発現を制御する役割を果たしている。多くの転写因子は細胞質で合成され、常に細胞質に待機して出番を待っている。もし、活性化シグナルを受けた場合には、転写因子は核内に移行して機能する。
転写因子であるNF−κBとその活性を抑制するI−κBとは結合した形で細胞質に多く存在し、TNFα等のサイトカインの刺激によってI−κBがリン酸化されるとNF−κBが活性化され核へ移行する[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、Vol.91、p11884〜11888(1994)]。NF−κBが遺伝子の上流にあるNF−κBモチーフという短いDNA配列と結合して遺伝子の転写を促進する。
293細胞にNF−κBが存在し、それと結合できるDNA配列(5’−gattgctttagcttggaaattccggagctg−3’、配列番号13)が報告されている[Eur.J.Biochem、Vol.268、p1828〜1836(2001)]。この配列をirDNAの中央の逆方向反復配列に導入するために、三つのプライマー、GFP−kB1、GFP−kB2、GFP−kB3(各プライマーの塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号14、15、16に示す)を合成した。まずGFP−kB1と前記のプライマーUs−EcoRIを用い、pucGFP0−0から切り出したGFP遺伝子を含むEcoRI−BamHI断片を鋳型DNAとしたPCR反応を行い、増幅DNA断片を得た。ついでこの増幅断片を鋳型としてGFP−kB2とUs−EcoRIを用いたPCRを行い、増幅断片を得た。さらに、この増幅断片を鋳型としてGFP−kB3とUs−EcoRIを用いたPCRを行い、増幅断片を得た。得られた増幅断片をEcoRI、BamHIで消化して、その断片をpucGFR0−0中のEcoRI−BamHI断片と入れ替えた。こうして構築されたプラスミドをpucGFP0nf−0と命名した。
pucGFP0nf−0にはGFP遺伝子の逆方向反復配列とNF−κB結合モチーフ配列を含むインサートが含まれており、インサートの長さは1548bpである。このプラスミドを鋳型DNAにしてRNA−ecoRIプライマーとRNA−hindIIIプライマー、或いはS−ecoRIとS−hindIIIプライマー(配列はRNA−ecoRIプライマー、RNA−hindIIIプライマーとまったく同じであるが、5’から六つの塩基がデオキシリボヌクレオチドに変更されるとともに、その間のリン酸基が硫黄分子で修飾されたプライマーである)を用いてPCRを行った。増幅したフラグメントはそれぞれR0nf−0 irDNA、S0nf−0 irDNAと命名した。
293−10細胞とネガティブコントロールである293細胞の前培養の条件及び修復用DNAをトランスフェクションする方法は実施例5と同じであるが、ssオリゴ、R0−0 irDNA、R0nf−0 irDNA、S0nf−0irDNAを導入してから6時間後、添加する培地中に8ng/mlのTNFαを加えた。
実施例5のように細胞を処理し、蛍光顕微鏡の下で各ウェルのGFP陽性細胞の数を数えて、修復用DNAをかけた細胞におけるGFP陽性細胞の数からコントロールの293細胞におけるバックグラウンドを引き算した。ssオリゴの場合の平均GFP陽性細胞数88個に対して、R0−0 irDNAが約6000個、R0nf−0 irDNA、S0nf−0 irDNAはそれぞれ1万個を超えた。ssオリゴ、R0−0 irDNA、R0nf−0 irDNA、S0nf−0 irDNAを用いた場合の293−10細胞1万個あたりのGFP陽性細胞の数を表5に示す。もっとも修復効率がよいS0nf−0 irDNAを用いた場合はssオリゴの138倍高い修復効率を示した。
4回の独立した実験のMann−WhitneyのU検定の結果、ssオリゴの修復効率に対する3種類のirDNAの修復効率はすべて有意差(p<0.05)を示した。また、転写因子の結合モチーフ配列を導入されたR0nf−0irDNA、S0nf−0 irDNAの修復効率は、R0−0 irDNAの効率に対しても有意差(p<0.05)を示した。
Figure 0004372684
lipofectamineを用いて細胞質に導入したssオリゴと0−0 irDNAは、受動拡散の形で、濃度勾配に沿って核へ自由拡散する。0−0 irDNAの濃度はssオリゴの数十分の一であるため核に入るコピー数が少なく、0−0 irDNAによる変異塩基の修復率はssオリゴより低いと思われたが、実際の結果はssオリゴより高い修復率を示した。この結果は、0−0 irDNAが細胞核に入るコピー数が少なくても、高いターゲッティング活性を持つために変異塩基の修復率が高いことを示唆した。また、irDNAの核内への輸送を促進するため、転写因子と結合できる短いDNA配列をirDNAに導入することによって修復の効果が高められる。このirDNAの5’側をヌクレアーゼによって分解され難いメチル化リボヌクレオチド或いは硫黄化デオキシリボヌクレオチドで修飾すれば、効果が更に高くなる。
ただ、逆方向反復の構造を持たない単なる標的DNAと同じ配列のDNAにNF−κBの結合モチーフ配列を付け加えても、修復効果は逆方向反復DNA(0nf−0 irDNA)の数分の一である。また、二分子の逆方向にしたNF−κBの結合モチーフ配列を0−0 irDNAの中央に導入したDNAは一分子を導入した0nf−0 irDNAの効果の半分程度であった。
ダブルミューテーションを有するGFP遺伝子の修復
PCR in vitro mutagenesis法を適用し、GFP遺伝子の開始コドンであるATG中のGをTに変えた。このミューテーションGFP(m1GFP)遺伝子をpCEP4にサブクローニングし、293細胞にトランスフェクトして、蛍光が見られないことを確認した。さらに、このm1GFP遺伝子のHindIII−NheI断片(−36−174)を用い、既に実施例1で作製したmGFP遺伝子の上流側のHindIII−NheI断片(−36−174)と入れ替えて、ダブルミューテーションGFP(dmGFP)遺伝子を構築した。
このdmGFP遺伝子には3番目のT、201番目のGの二つの変異塩基があり、両者は198塩基離れている。このdmGFP遺伝子に入っている760bp HindIII−BamHI断片を、pCEP4のHindIIIとBamHIの間にサブクローニングし、標的核酸として使用するプラスミドpcep−dmGFPを作った。
実験条件は実施例3と同じ条件で、0−0 irDNAによるダブルミューテーションの同時修復の効率を調べた。その結果、二つ変異塩基が一度に修復できたことを示すGFP陽性細胞は、1万細胞当たりに15.85±2.00個が得られた。
産業上の利用の可能性
本発明により、高い効率で遺伝子上の塩基配列に変異を導入できる方法が提供される。本発明によれば、細胞内のDNAへの人工的な変異の導入、あるいは変異が起こって機能していない遺伝子の修復を行うことができる。本発明の方法は遺伝子治療、ノックアウト生物の作製、遺伝子機能の解析などに有用である。
Figure 0004372684
Figure 0004372684

Claims (10)

  1. 核に存在する標的核酸の塩基配列に変異を導入する方法であって、
    (1)逆方向反復配列を有する二本鎖DNAを調製する工程;ここで、当該逆方向反復配列を有するDNAの塩基配列は標的核酸のセンス鎖及びアンチセンス鎖の配列がタンデムに並んだもので、かつ標的核酸に導入しようとする変異を含む塩基配列を有している、及び
    (2)前記逆方向反復配列を有するDNAを生体外で細胞内に導入する工程、
    を包含することを特徴とする標的核酸への変異の導入方法。
  2. 逆方向反復配列を有するDNAが核移行シグナルを有するタンパクに対する結合モチーフ配列を有するものである請求項1記載の標的核酸への変異の導入方法。
  3. 核移行シグナルを有するタンパクに対する結合モチーフ配列が転写因子に対する結合モチーフ配列である請求項2記載の標的核酸への変異の導入方法。
  4. 逆方向反復配列を有するDNAが修飾された核酸塩基を有するものである請求項1記載の標的核酸への変異の導入方法。
  5. 同時に複数の変異を標的核酸に導入することを特徴とする請求項1記載の標的核酸への変異の導入方法。
  6. 標的核酸に導入される変異が、塩基の置換、欠失及び/又は挿入である請求項1記載の標的核酸への変異の導入方法。
  7. 請求項1記載の方法により標的核酸に変異を導入するためのキットであって、標的核酸のセンス鎖及びアンチセンス鎖の配列がタンデムに並び、かつ標的核酸に導入しようとする変異を含む塩基配列を有している逆方向反復配列を有する二本鎖DNAを含有することを特徴とするキット。
  8. 逆方向反復配列を有するDNAが核移行シグナルを有するタンパクに対する結合モチーフ配列を有するものである請求項7記載のキット。
  9. 核移行シグナルを有するタンパクに対する結合モチーフ配列が転写因子に対する結合モチーフ配列である請求項8記載のキット。
  10. 逆方向反復配列を有するDNAが修飾された核酸塩基を有するものである請求項7記載のキット。
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