JP4371457B2 - 画像処理装置、方法及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 - Google Patents

画像処理装置、方法及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に入力した画像情報を、拡大変倍して出力するプリンタ等の画像出力装置や、解像度の異なる機種間通信で、低解像情報から高解像情報に解像度変換する場合に用いて好適な画像処理装置、方法及びそれらに用いられるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、入力した画像の低解像情報を高解像情報に解像度変換する方法として、様々な方法が提案されている。これらの従来方法は、対象となる画像の種類(例えば、各画素ごとに階調情報の持つ多値画像、疑似中間調により2値化された2値画像、固定閾値により2値化された2値画像、文字画像等)によって、その変換処理方法が異なっている。
【0003】
従来の内挿方法として、図12に示すような、内挿点に最も近い同じ画素値を配列する最近接内挿方法、図13に示すような内挿点を囲む4点(4点の画素値をA,B,C,Dとする)の距離により、以下の演算によって画素値Eを決定する共1次内挿法等が一般的に用いられている。
E=(1−i)・(1−j)・A+i・(1−j)・B+(1−i)・j・C+i・j・D・・・・(1)
(但し、画素間距離を1とした場合に、Aから水平方向にi、垂直方向にjの距離があるとする(i≦1、j≦1))。
【0004】
また、古くからサンプリング定理で表されているように、サンプリングされた離散信号を連続信号に変換する手段として、SINC関数で表現できる理想低域ろ波器を通過することによって再現することができる。SINC関数を演算するのは処理時間がかかることなどから、SINC関数で表現される補間関数を近似して、簡単な積和演算のみで補間値を算出する方法がある。
【0005】
「画像解析ハンドブック:高木幹雄、下田陽久監修東京大学出版会」によると、3次畳み込み内挿法(Cubic Convo1ution interpo1ation)において、補間関数の近似が実現できる。内挿したい点の周囲の観測点16点の画像データを用いて、求める画像データを次の式で示される3次畳み込み関数を用いて内挿する。
【0006】
【数1】
Figure 0004371457
【0007】
【数2】
Figure 0004371457
【0008】
【数3】
Figure 0004371457
【0009】
尚、式(2)のPn〜P44は周辺画素値を示し、図14に配置を示す。
【0010】
しかし、上述した3種類の従来例では、いずれも補間時に補間によるボケ及び入力低解像に依存したブロツク状のジャギーが発生し、高画質の高解像情報が作成できなかった。
そこで、本出願人は、低解像情報から高解像情報の作成において、補間処理による補間ボケもなく、また、ジャギーが発生することなく解像度変換ができる方法を、特開平7−93531号公報、特開平7−107268号公報、特開平7−105359号公報等により提案した。
【0011】
これらの提案の基本的な考え方は、入力した原情報から解像度依存成分を除去し、除去した状態で、画素数を出力解像度相当まで増加させ、増加させた状態の中で新たな解像度に見合う情報を推測し作成する方法である。入力解像度の依存性を取り除く手段としては、LPFによる平滑化、画素数の増加は線形補間により実現可能である。高解像情報の推測は補間後の情報を単純2値化して、“1”に分類された画素と“0”に分類された画素とに対してそれぞれ異なる処理を行うことにより、出力する画素値を算出する。
【0012】
また、特開平9−252400号公報で提案したように、画素値の連続性が保たれた良好なエッジを作成する方法もある。この公報では、低解像度注目画素の周辺画素よりm点(m≧1)の画素(但し、m点中の観測点nにおける画素値をP(n)とする)を検出し、注目画素を複数画素分に補間した各補間点kにおける前記補間値C(k)を基に、出力値h(k)を以下の式により演算している。
【0013】
【数4】
Figure 0004371457
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例では、以下に述べるような欠点があった。即ち、いくら高解像情報の作成を行っても、高画質化には限度があるという点である。当然、サンプリング定理より明らかなように、入力解像度のナイキスト限界以上の情報は入力画像には存在しないため、ナイキスト周波数以上の情報作成は全て推測によるものになる。
【0015】
そのため、あまり複雑ではないCG画像、イラスト画像、アニメーション画像のような平坦な人工的画像をジャギーレスに変換することは容易であるが、自然画像のナイキスト限界以上の情報推測による高画質化は難しい。即ち、いかなる方法を用いたとしても、低解像情報を入力して高解像に変換した画像は、もともと高解像情報を入力した画像と比較すると、明らかに画質は低くなる。
【0016】
一方、近年、デジタルビデオカメラ等の普及により、撮影した動画像を、連続した1フレーム単位にコンピュータに入力できる手段が増えてきている。ただ、プリンタの出力解像度は年々増加しているが、撮像系の入力解像度は増加傾向にあるとはいっても、プリンタ解像度に比べると、まだまだ低いのが現状である。
【0017】
そこで、従来例の技術で述べたような、1枚の低解像静止画から、1枚の高解像静止画を作成するのではなく、動画から取り込んだ連続した複数の低解像静止画から、1枚の高解像静止画を作成する技術を本発明により提案する。
従来、複数の静止画から、より広範囲のパノラマ画像の作成方法としては、「動画像のパニングを考慮した背景画像の合成:吉沢、花村、富永、信学春季全大予稿集7−51(1990)」、及び「分割撮像によるパノラマ画像の生成法:中村、金子、林、信学春季全大予稿集7−165(1991)」等による提案がある。
【0018】
しかし、1枚の静止画よりも撮像範囲を拡大したパノラマ画像を作成するのではなく、撮像範囲は同一で、複数の静止画の情報を合成させて、内挿により画像の解像度を向上させる技術の提案は数少ない。
【0019】
このような低解像の動画から高解像の静止画作成の技術として、特開平5−260264号公報による提案がある。この提案は、連続した画像同士を比較して、2種画像の差異から、アフィン変換、及び平行移動のパラメータを検出して、2種画像を合成するものである。上記提案の第2の実施例に、合成を補間に利用する例について述べられている。
【0020】
しかし、上記提案では以下の問題点がある。
即ち、上記公報の第2の実施例に記載された方法は、前述した図12から図14に示した補間方法により拡大した連続画像同士を比較することにより、前述したパラメータを算出して補間位置を決定し、合成していくものである。しかし、補間演算自体が新たな高解像情報を作成するものではないために、合成する座標の正確な決定も困難である。
【0021】
補間するということは、画素間を内挿するということである。上記方法では、連続画像同士を比較する時に入力解像度の画素間の情報がない。簡単に言い換えると、2種の画像を画像A、画像Bと仮定すると、画像Aの画素間のどの位置に画像Bの画素を内挿するかという決定が、単なる拡大画像間の比較では困難である。
【0022】
これは、動きベクトルのベクトル量の最小単位が画素単位であり、画素間距離よりも細かい分解能がないという点に起因している。即ち、ベクトルの分解能が画素間以下の精度を持たなければ、複数の静止画を用いて補間する効果は薄れ、前記従来例で述べた、1枚の低解像静止画から1枚の高解像静止画への作成の場合と、画質的にほとんど変わりなくなる。
【0023】
「国際標準画像符号化の基礎技術:小野文孝、渡辺裕コロナ社」には、各種動き検出法について幾つかの方法の説明がある。しかし、この説明の何れの方法も、動き補償を目的とした検出方法であり、複数の画像から1枚の画像を作成しようとする本発明の目的とは異なるため、細かい検出精度が不必要であり、これらの技術を利用しても良好な複数画像の合成は困難である。
【0024】
そこで本出願人は、直交変換を利用して、画素間距離よりも細かい分解能を持つベクトルの算出方法を提案した。この方法により、複数の静止画が各々独立したものではなく、画像間の空間的座標の関連付けが可能になった。しかし、動きべクトルの分解能が画素間距離よりも細かく算出されたとしても、画像間の相対位置が正しく把握できるのみで、まだ問題点は数多く残っている。
【0025】
その一つが、合成する際の誤差が画質劣化を引き起こすという問題である。即ち、合成する画像の枚数が多くなればなるほど、動きベクトルの誤差が蓄積する。
【0026】
図15は従来の動きベクトルを算出する順序を示した図である。
図において、時刻mフレームから(m+3)フレームまでの連続した4フレーム分の画像を合成する例について説明する。
1501、1502、1503、1504はそれぞれ、mフレーム目の画像情報、(m+1)フレーム目の画像情報、(m+2)フレーム目の画像情報、(m+3)フレーム目の画像情報を示している。
【0027】
動きベクトルを算出する順序としては、まずmフレーム目と(m+1)フレーム目、続いて、(m+1)フレーム目と(m+2)フレーム目、続いて(m+2)フレーム目と(m+3)フレーム目という3回のベクトル算出になる。即ち、従来の動画像符号化の動き補償と同様に、1フレーム進行後の動き量を逐次算出する方法である。この場合、動きベクトルを算出する基準となるフレーム(基準フレームと称す)は、常に、対象となるフレーム(対象フレームと称す)と1フレーム分しか時間的には開きがない。
【0028】
しかし、この方法では、動き補償の目的には最適な方法でも、本発明の目的としている複数画像の合成では幾つかの問題がある。その一つが、上記の誤差の蓄積である。即ち、1フレーム分の移動量が正確に算出されないと、時間的にそれ以降の動きベクトル算出では、誤差が生じた画像に対して新たに移動量を求めることになってしまう。画像枚数が多ければ多いほど、その蓄積される誤差が増加し、本来の配置位置とは大きく異なる結果になる場合がある。
【0029】
また、もう一つの問題としては、複数枚の連続画像の途中に動きベクトルの算出困難なフレームが存在した場合の対処である。当然、複数枚の連続画像の中では、撮像途中のビデオカメラ等の入力機器側のぶれや、対象物の移動等により、不鮮明な画像のフレームも存在してくる。その場合に、図15のような従来の方法を用いると、結果として動きベクトルを大きく誤ったものにする恐れもあり、1度ベクトル算出を間違えば、前述したようにそれ以降のフレームに対しても誤差は解消されない。
【0030】
このような、動きべクトル算出の順序の問題は、例えば現在、既に市販されているビデオカメラにおける、CCDの画素ずらしの技術を用いて高解像化する用途では、いかなる順序で複数枚を合成しても問題にならない。それは、画像毎の相対位置に相当する“ずらし量”が機器側で制御されているためである。しかし、後述する本発明の実施の形態の場合は、画像毎の相対位置は全く制御されていない。そのため、動きべクトルを算出する順序が画質向上に大きな要因をもたらす。
【0031】
また、本発明者は、先に複数の画像の合成を、ただ単に複数フレームの画素値を配置する方法ではなく、基準のフレームに適合させるように、画像データを加工して配置合成する方法を提案した。画像データを加工する方法では、どのフレームを基準フレームにするかによって、全く画質の異なる合成画像になってしまう。データ加工後に合成する方式では、合成フレームの枚数が3枚以上の場合のみならず、2枚の場合でも、どちらの画像を基準フレームにするかで画質は異なってくる。
即ち、従来では、複数枚の画像を合成する場合に、どの画像同士を比較して動き量を求め、合成につなげていくかという良好なフレームの制御方法が提案されていなかった。
【0032】
従って、本発明は、複数枚の画像を合成して、一枚の高解像度の画像を得る場合におけるフレーム制御方式を提案するものである。
【0033】
【課題を解決するための手段】
本発明の画像処理装置は、mフレーム目から(m+n)フレーム目までの連続した(n+1)枚分(m,nは任意の自然数)の画像情報のエッジ強度を算出し、その算出結果に基づいて上記(n+1)枚の中から該エッジ強度が大きい第1の画像情報を選択する選択手段と、上記第1の画像情報以外のn枚の画像情報について、それぞれ第1の画像情報に対する動きベクトルを演算する演算手段と、上記演算結果に基づいて、上記(n+1)枚の画像情報を合成して一枚の画像を形成する合成手段とを備えたことを特徴とする。
【0034】
また、本発明の画像処理方法は、画像処理装置を制御する画像処理方法であって、mフレーム目から(m+n)フレーム目までの連続した(n+1)枚分(m,nは任意の自然数)の画像情報のエッジ強度を算出し、その算出結果に基づいて上記(n+1)枚の中から該エッジ強度が大きい第1の画像情報を選択する選択工程と、上記第1の画像情報以外のn枚の画像情報について、それぞれ第1の画像情報に対する動きベクトルを演算する演算工程と、上記演算結果に基づいて、上記(n+1)枚の画像情報を合成して一枚の画像を形成する合成工程とを有することを特徴とする。
【0035】
また、本発明のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、画像処理装置を制御するコンピュータプログラムを記憶するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、mフレーム目から(m+n)フレーム目までの連続した(n+1)枚分(m,nは任意の自然数)の画像情報のエッジ強度を算出し、その算出結果に基づいて上記(n+1)枚の中から該エッジ強度が大きい第1の画像情報を選択する選択処理と、上記第1の画像情報以外のn枚の画像情報について、それぞれ第1の画像情報に対する動きベクトルを演算する演算処理と、上記演算結果に基づいて、上記(n+1)枚の画像情報を合成して一枚の画像を形成する合成処理とをコンピュータにて実行させるコンピュータプログラムを記憶したことを特徴とする。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
図1は本発明の実施の形態による画像処理装置を示すブロックである。
尚、本実施の形態における画像処理装置は、主として、動画像を撮像するアナログビデオカメラやデジタルビデオカメラの内部、もしくはビデオカメラと直接、あるいはコンピュータを介して接続されるプリンタやビデオプリンタ等の画像出力装置内部に具備することが効率的であるが、ビデオカメラとプリンタとの接続で中間アダプタとなる画像処理装置、又はホストコンピュータ内のアプリケーションソフト、あるいはプリンタに出力するためのプリンタドライバソフトとして内蔵することも可能である。
【0037】
図1の画像処理装置の構成及び動作について説明する。
図1において、100はビデオカメラで撮像された動画像が入力される入力端子を示している。本実施の形態では、デジタルビデオカメラで撮像した画像をコンピュータに送信して、コンピュータ内のアプリケーションソフトにより、プリンタ相当の解像度まで変換する例について述べる。
【0038】
デジタルビデオで撮影した動画像を記録媒体から再生して、ユーザは自分の欲するシーンで画像の取り込み命令を送る。この取り込み命令に同期して、コンピュータ内の格納部101に取り込み命令直後の連続した複数フレームの画像情報を格納する。いま、取り込み命令を時刻mフレーム目とし、mフレーム目から(m+n)フレーム目までの(n+1)枚の画像情報が格納されるものとする。
【0039】
102は選択部を示し、格納した(n+1)フレーム分の画像情報から、どの時刻の画像を基準フレームとして設定するのかを判断する。いま、判定結果により設定された基準フレームを仮にフレームGとする。103は、フレーム制御部を示し、処理対象である2種の画像を選出するための手段である。2種の画像とは、一つが基準フレームであるフレームGであり、もう一つは、フレームG以外に格納されているn枚のフレーム中の一つのフレームである(フレームHとする)。
【0040】
104は動きベクトル演算部を示し、フレームGと、フレームHの2種画像の差異を基に、部分的に移動した移動量をベクトルとして計測する手段である。
【0041】
105は配置処理部Aを示し、撮像したフレームGの画像をメモリ内に配置する手段である。このメモリは、(入力したフレーム画素数)×(垂直方向拡大率)×(水平方向拡大率)以上のアドレス空間を有している。そこで配置処理部Aでは、所定の拡大率に見合った画素の配置を実行していく。例えば、拡大率が水平方向、垂直方向ともに2倍の時には、垂直方向、水平方向ともに1画素おきにフレームGの画素を配置していくことになる。
【0042】
106はデータ加工部を示し、フレームGの画像情報にうまく適合するようにフレームHの画素値に加工を施す手段である。
【0043】
107は配置処理部Bを示し、フレーム制御部103で算出したフレームGとフレームHとの相対的なベクトル量に応じて、配置処理部A105と同一メモリ内に配置する手段である。格納したフレーム数が3枚以上ある場合には、再びフレーム制御部103に戻り、新たなフレームに対して前述した同様の処理を繰り返す。但し、2回目以降の処理においては、フレームGは固定であり、またフレームGの画像情報は、既に配置されているため、新たに配置する必要はない。フレームHのみが新たなフレームに更新され、前述した動きベクトル演算、データ加工、配置の各処理工程を実行することになる。
【0044】
108は合成部であり、同一メモリ内に配置した複数枚の画像を合成して1枚の画像情報にする。109は合成した画像がまだ、所望の解像度までの内挿点の情報が埋まっていない場合に、埋まっていない内挿点の情報を補間演算により算出する補間演算部である。110は出力端子を示し、高解像度化した画像情報がプリンタ等に送信される。
【0045】
図2は、本実施の形態の特徴である選択部102の構成を示す。
いま例として、格納部101では、mフレーム目の画像から(m+3)フレーム目の画像までの計4枚の連続した画像を格納したとする。201、202、203、204は、それぞれエッジ抽出部を示し、格納した4枚の画像情報を基に、画像中に含まれるエッジ情報を抽出する手段である。
【0046】
図3に一般的なラプラシアンのエッジ抽出フィルタの例を示す。
いま、(m+s)フレーム目(但し、0≦s≦3)の画像上の座標(x,y)における画素値をfs (x,y)、エッジ抽出処理後の値をks (x,y)とすると、図3のエッジ抽出フィルタでは以下の積和演算になる。
【0047】
s (x,y)=fs (x−1,y−1)+fs (x,y−1)+fs (x+1,y−1)+fs (x−1,y)−8fs (x,y)+fs (x+1,y)+fs (x−1,y+1)+fs (x,y+1)+fs (x+1,y+1)・・・・(6)
【0048】
図2において、205、206、207、208はそれぞれ、エッジ強度評価部を示し、エッジ抽出部201〜204により抽出されたエッジの強度を画像全体にわたって積算する手段である。画像全体の縦画素数をV、横画素数をHとすると、(m+s)フレーム目のエッジ強度Psは以下のように算出する。
【0049】
【数5】
Figure 0004371457
【0050】
209は最大エッジ強度決定部を示し、エッジ強度評価部205〜208でそれぞれ求めたPsが最大となるフレームsを基準フレームとして決定する。即ち、エッジ強度という独自の評価関数を設定し、格納した複数枚の画像の中で、画像全体に渡って最もエッジの強度が大きいと評価されたフレームを選択するものである。
【0051】
エッジの強度が大きい画像を基準フレームとして設定するということは、後述する動きベクトルを算出する時にも、また、他の対象フレームのデータ加工をする時にも有利になる。エッジ強度による評価は、格納した複数枚の中で、最も焦点がはっきりと撮影された画像であると仮定することもできる。そのため、基準フレーム以外の対象フレームの画像は、基準フレームの画質に付加価値を付けていく役割になり、最低でも基準フレーム単独以上の画質向上が保証される。
【0052】
また、図2の構成は、説明を容易にするために、全フレームを並列に処理する例について述べたが、当然、エッジ抽出部、エッジ強度評価部は単一で、垂直に処理する構成でもよい。
また、式(7)ではks ’(x,y)の算出をks (x,y)の絶対値を用いていたが、当然、ks (x,y)の2乗を用いて演算することも可能である。
【0053】
次に、動きベクトル演算部104について説明する。
動きベクトルを算出する方法としては、古くから様々な方法が提案されているが、従来方法では、画素間距離以下のベクトルの分解能がないために、合成、補間を施して低解像の動画を高解像度の静止画に変換する用途には適さない。
【0054】
図4に本実施の形態による動きベクトル演算部104の詳細ブロック図を示す。図1の格納部101から動きベクトル演算部104に送信される2種の画像は、基準フレームであるフレームGと対象フレームとなるフレームHである。
【0055】
図4において、ブロック化部401は、フレームHの画像情報をN×N画素単位にブロック化する。Nの値は様々考えられるが、例としてN=8を想定する。いま、この作成した8×8画素の注目ブロックを仮にブロックAと称す。次に、直交変換部402において、ブロックAの直交変換を演算する。直交変換の種類は限定しないが、高速で容易に演算できるアダマール変換、及びJPEG(Joint Photografic Expert Group)で採用されているDCT(離散コサイン変換)等が一般的である。
いま、DCTを例にすると、N×N画素の2次元DCTの変換係数は、
【0056】
【数6】
Figure 0004371457
【0057】
で求められる。
【0058】
一方、基準フレームGは、M×M’ブロック化部403によりM×M’画素単位にブロック化される。この時、M×M’画素単位のブロックは、フレームH内の、ブロックAと同一座標のN×N画素のブロックを包括し、大小関係は、M≧N、かつM’≧N(但し、M=M’=Nの場合を除く)になる。いま、M=M’=20と仮定する。即ち、ブロックAと同一座標を含む20×20のブロックをフレームG内に用意することになる。
【0059】
次に、N×Nブロック化部404により、20×20画素のブロック内で、ブロックAと同サイズのN×N画素のブロックを作成する。ブロックの作成は、ブロックAと同一座標からスタートしてもよいし、また、M×M’ブロックの端から順に初めてもよい。いま、フレームG内で作成したN×N画素のブロックを仮にブロックBと称する。
【0060】
直交変換部405は、作成したブロックBをブロックAと同様に直交変換する。当然、直交変換部402、405の直交変換は同一の変換手段でなくてはならない。直交変換係数評価部406は、ブロックA、ブロックBの直交変換係数を基に、その変換係数の類似性を評価する。類似性の評価は、ブロックのDC(直流)成分と、AC(交流)成分の主に低周波域の成分を基に、それぞれの係数の差分に、成分に応じた重み付け係数を乗じた値の和で評価する。
【0061】
いま、説明を容易にするために、ブロックの座標を、ブロックを形成する左上の画素の座標で管理することにする(以下、この画素の座標をブロックの原点と称する)。即ち、図5に示すように、ブロックBの原点(斜線部の画素に相当する)を(a,b)とすると、ブロックAとブロックBとの類似性の評価関数は、
【0062】
【数7】
Figure 0004371457
【0063】
で算出する。
【0064】
高周波域になるほど、隣接ブロック間の変換係数の相関が低くなるため、高周波域ほど重み付け係数W(u、v)の値を小さく設定する。座標が空間的に近いブロック同士の低周波域の変換係数は非常に相関が高いため、式(9)では、ブロック同士の空間的な位置関係を変換係数の類似性に置き換えて評価している。また、式(9)では絶対値を用いているが、差分の2乗でも同様の評価は可能である。
【0065】
次に、ブロック制御部407は、ブロックBの原点(a,b)を1画素移動して、新たにブロックを作成し、同様の処理を繰り返す。即ち、N=8、M=M’=20を例にすると、8×8画素のブロックは20×20画素のブロック中に13×13個作成できるため、そのブロック数分に対して繰り返し類似性を演算することになる。
【0066】
フレームG内において、全てブロックBの走査を終了すると、前述の評価関数であるR(a,b)が最小になる座標(a’,b’)を判定する。即ち、類似性R(a,b)はブロックAB間の誤差成分と見なせるため、R(a,b)の最小値をとる時のブロックB(この時のブロックをブロックB’と称する)が、空間的にもブロックAと最も近いブロックと見なし、ブロックAの移動した先と判断する。
【0067】
ただ、これだけでは従来例と同様、動きベクトルの分解能は1画素単位であり、画素間距離以下のベクトルが判定できない。そこで、本実施の形態では、画素間距離よりも短い分解能で動きベクトルを推測する。
【0068】
以下にベクトルの推測方法を説明する。
上述の方法において、対象フレームであるフレームH上の注目ブロックであるブロックAの原点を(a0,b0)とし、また、前述したR(a,b)の最小値をとるフレームGのブロックB’の原点を(a’,b’)とする。変換係数評価部406において、ブロックB’の検索は大まかな画素単位の検索であったが、今度はブロックB’周辺に絞った細かい距離の推測をする。
【0069】
即ち、変換係数評価部406では、まず、空間的に最も近いと思われるブロックB’の検索、次に求めたブロックB’からの微小なずれ量の推測という、2段階の構戌の異なる評価を実施することになる。
【0070】
図6は、上記2段階目の推測の動作手順を示すフローチャートである。
ステップS601(以下、ステップ略)は、ブロックB’の1画素左に作成したブロックと1画素右に作成したブロックの式(7)の評価関数結果をそれぞれ比較する。即ち、ブロックB’の原点は(a’、b’)であるため、R(a’+1,b’)とR(a’−1,b’)の大小を評価する。このR(a’+1,b’)、R(a’−1,b’)については、第1段階の類似性評価の際に算出しているため、演算結果を記憶、保持しておくのが好ましい。
【0071】
S601において、もし、R(a’+1,b’)が小さいと評価されるとS602に、また否と評価されるとS603に移動する。次にS602では、原点R(a’+1,b’)より構成されるブロックをブロックCと設定し、また、S603では、原点R(a’−1,b’)より構成されるブロックをブロックCと設定する。それと同時に、S602では変数cをc=1と設定し、また、S603では、c=−1と設定する。
【0072】
次にS604において、今度はブロックB’の1画素上に作成したブロックと1画素下に作成したブロックの式(7)の評価関数結果をそれぞれ比較する。即ち、ブロックB’の原点は(a’,b’)であるため、R(a’,b’+1)とR(a’,b’−1)の大小を評価する。この類似性の評価関数に関しても、第1段階の類似性評価の際に算出しているため、演算結果を記憶、保持しておくのが好ましい。
【0073】
S604において、もし、R(a’,b’+1)が小さいと評価されるとS605に、また否と評価されるとS606に移動する。次にS605では、原点R(a’,b’+1)より構成されるブロックをブロックDと設定し、また、S606では、原点R(a’,b’−1)より構成されるブロックをブロックDと設定する。それと同時に、S605では、変数dをd=1と設定し、また、S606ではd=−1と設定する。
【0074】
次にS607では、ブロックAの直交変換係数中の水平方向のAC基本波成分であるFA (1,0)と、ブロックB’、及びブロックCの直交変換係数中の水平方向のAC基本波成分であるFB ’(1,0)、FC (1,0)の3種の値の大小関係を評価する。即ち、FA (1,0)の値が、FB ’(1,0)の値とFC (1,0)の値との間に存在するか否かを判断している。もし、存在していれば、S608へ、否ならS609へ移動する。
【0075】
S608では、変数Vxが以下の式(10)で算出される。
Vx=(FA (1,0)−FB ’(1,0))/(FC (1,0)−FB ’(1,0))・・・・(10)
また、S609では、変数VxはVx=0に設定される。
【0076】
同様に、S610では、ブロックAの直交変換係数中の垂直方向のAC基本波成分であるFA (0,1)と、ブロックB’及びブロックDの直交変換係数中の水平方向のAC基本波成分であるFB ’(0,1)、FD (0,1)の3種の大小関係を評価する。即ち、FA (0,1)の値が、FB ’(0,1)の値とFD (0,1)の値との間に存在するか否かを判断している。もし、存在していれば、S611へ、否ならS612へ移動する。
【0077】
S611では、変数Vyが以下の式(11)で算出される。
Vy=(FA (0,1)−FB ’(0,1))/(FD (0,1)−FB ’(0,1))・・・・(11)
また、S612では、変数VyはVy=0と設定される。
【0078】
S613では、式(10)、式(11)により算出したVx,Vyを基に、ブロックAから真に移動したと判断されるブロック(ブロックB”と称する)への動きベクトルAB”を以下のように設定して終了する。
【0079】
【数8】
Figure 0004371457
【0080】
即ち、ブロックAからブロックB’への動きベクトルは、
【0081】
【数9】
Figure 0004371457
【0082】
となるので、式(12)のc×Vx、及びd×Vyの項が画素間距離よりも分解能の高いベクトル成分となっている。
【0083】
以上、動きベクトル演算部104について述べたが、上述したように、本実施の形態の動きベクトル演算部104は2段階の処理になっている。まず、空間的に最も近いと思われるブロックの検索、次に、求めたブロックからの微小なずれ量の推測である。
上述した実施の形態では、2段階とも直交変換係数を用いた推測をしているが、処理の簡略化、高速化等により、第1段階目のブロック検索は直交変換係数を用いずに、ブロック内の画素値の比較により推測する方法を用いてもよい。
【0084】
次に、データ加工部106について図7を用いて説明する。
図7において、座標管理部701は、動きベクトル演算部104から算出されたベクトルに従って、対象フレームであるフレームHのブロックが、基準フレームであるフレームGのどの位置に相当するかを管理する。この座標管理部701からは、前述した式(9)の評価関数が最小であったアドレスが出力される。
【0085】
N×Nブロック化部702は、フレームHの画像をN×N画素単位でブロック化する。この手段は、前段の動きベクトル演算部104内部で使用したブロック(注目ブロックと称する)の画素値情報を保持していれば、改めてデータ加工部106内部で行う必要はない。
【0086】
同様に、N×Nブロック化部703は、座標管理部701から受けたアドレスに基づいて、フレームGのN×N画素単位のブロック化を実行する。この手段も前段の動きベクトル演算部104内部で作成、評価したブロックのうち、評価関数が最小になったブロック(誤差最小ブロックと称する)、及び誤差最小ブロックの周辺に位置するブロック(周辺ブロックと称する)の画素値情報を保持していれば、改めてデータ加工部106内部で行う必要はない。
【0087】
いま、フレームH上の注目ブロックをブロックA、フレームG上でブロックAに対する誤差最小ブロックをブロックB’、また、ブロックB’を基準にして水平方向の左右1画素毎にずらしてブロック化した2種のブロックのうち、評価関数が小さいと評価されたブロックをブロックC、同様に、ブロックB’を基準にして垂直方向に上下1画素毎にずらしてブロック化した2種のブロックのうち、評価関数が小さいと評価されたブロックをブロックDとする。
【0088】
また、ブロックCの原点のx座標、及び、ブロックDの原点のy座標を原点とするブロックをブロックEとする。ブロックEはブロックB’とは水平垂直ともに1画素づつずれていることになる。
【0089】
平均値算出部704は、注目ブロックであるブロックA内の画素値の平均値を算出する手段である。ブロックAの原点座標を(a0,b0)とすると、ブロックAの平均値TA を以下のように算出する。
【0090】
【数10】
Figure 0004371457
【0091】
平均値分離部705は、ブロックA内の各画素から、算出した平均値TA を減算することにより分離する手段である。分離後の値をgH (x,y)とすると、以下の式(15)で算出される。
H (x,y)=fH (x,y)−TA ・・・・(15)
【0092】
一方、平均値算出部706は、フレームGのブロックB’、C、D、Eの各ブロックの平均値を算出する。ブロックB’の原点座標を(a’,b’)とすると、各ブロックの平均値TB ’、TC 、TD 、TE はそれぞれ以下のように算出される。
【0093】
【数11】
Figure 0004371457
【0094】
但し、c,dは図6のフローチャートの説明で述べたように、水平方向に左右1画素毎ずらしてブロック化した場合に、右方向にずらしたブロックがブロックAとの類似性を示す評価関数結果が小さいと評価された場合にはc=1、逆に左方向にずらしたブロックが評価関数結果が小さいと評価された場合にはc=−1、同様に、垂直方向の比較で下方向の場合にはd=1、上方向の場合にはd=−1である。
【0095】
また、ブロックB’、ブロックC、ブロックD、ブロックEの4ブロックは、ブロックの重なりが大きいため、4ブロックのうち、一つのブロックのみを平均値算出して、残りの3ブロックの平均値に関しては、算出したブロックの平均値から、ブロックの非重なり画素のみを加減算して算出してもよい。
【0096】
次に、平均値置換部707においては、以下の演算が行われる。
H (x,y)=gH (x,y)+(1−Vx’)・(1−Vy’)・TB +Vx’・(1−Vy’)・TC +(1−Vx’)・Vy’・TD +Vx’・Vy’・TE ・・・・(20)
【0097】
ここで、Vx’、Vy’はブロックB’の原点(a’,b’)から内挿点までの距離を示している。即ち、前述した式(10)、式(11)により算出したVx、Vyの座標が、所望の内挿点上に完全に合致する場合は極めて少ない。実際には、算出したVx、Vyの値に基づいて、それに最も距離の近い内挿点Vx’、Vy’上に内挿することになる。
【0098】
図8にVx、Vy、Vx’、Vy’の位置関係の例を図示する。●印がフレームGの標本点、×印が原点座標(a’,b’)から式(10)、式(11)により算出したVx、Vyだけ離れた点、○印が解像度を増加させるために、真に内挿すべき内挿点である。いま、c=1、及びd=1の場合、この内挿点の座標は、(a’+Vx’、b’+Vy’)となる。この内挿点がブロックAの原点となり、配置点である。
【0099】
式(20)は、ブロックAの平均値を、ブロックB’、ブロックC、ブロックD、ブロックEの平均値に置換していることを意味している。しかも、置換する平均値は、ブロックAの内挿位置に依存して、4ブロックの平均値の線形演算となっている。言い換えると、ブロックAのDC成分を基準フレーム上のブロックB’、ブロックC、ブロックD、ブロックEに適合するように変更して、ブロックAのAC成分のみを利用しようとするものである。
【0100】
以上、データ加工部106について述べたが、本実施の形態においては、上述した例には限らない。ブロックB’、ブロックC、ブロックD、ブロックEの重なりが大きいため、算出するそれぞれの平均値は大差がない場合も考えられる。その場合には、ブロックB’の平均値TB ’のみをgH (x,y)に加算する簡易的な方法も可能である。
【0101】
図9は、以上述べてきた、フレーム制御部106を中心にして動きベクトル算出、配置までの処理を含めた、特に3枚以上の複数フレームを使用した時の繰り返し処理の動作手順を示すフローチャートである。
まず始めに、S901により、格納したmフレーム目から(m+n)フレーム目までの(n+1)枚で、各フレーム毎にエッジ強度を評価する。そしてS902で、それらを相互比較する。
【0102】
続いて、S903で、最大のエッジ強度を有する(m+p)フレーム目をフレームGとして設定する。これが基準フレームである。次にS904では、変数s、及び変数qを0に初期化する。次にS905で、変数sがpに等しいか否かを判断する。これは現在処理しようとしているフレームが基準フレームなのか、否かを判定することになる。
【0103】
もし、いま処理するフレームsが基準フレームでなければ、S906において、qが0に等しいか否かを判定する。これは、現在処理している繰り返し回数が1回目なのか否かを判定するものである。もし、qが0に等しければ、S907で、フレームGを配置させ、S908で、変数qをカウントアップする。もし、S906で否と判定された場合には、処理が2回目以降と判定され、既に基準フレームであるフレームGは配置されているため、S907、S908はジャンプする。
【0104】
続いて、S909では、フレームGと(m+s)フレーム目(フレームHとする)との間で、動きベクトルを算出する。次に、S910で、フレームHをデータ加工した後に、S911で、配置を行う。S912で、変数sをカウントアップした後に、S913で、繰り返し回数がn回になっているか否かを判断する。否の場合は、まだ処理していないフレームが格納されていると判断され、S905に戻り、他のフレームに対しても同様の処理工程を繰り返す。
格納した全てのフレームに対して配置が終了すると、1枚の画像情報に合成されて処理は完了する。
【0105】
以上、本実施の形態の一連の処理を説明してきたが、本発明の特徴は選択部102にある。そのため、動きベクトル演算部104、データ加工部106、配置処理部107等の内容は限定しない。動きベクトル演算は、直交変換を用いない方法でも当然可能であるし、対象フレームのデータも加工しないで、各対象フレームの画素値を配置するだけの構成も考えられる。
【0106】
また、式(7)のエッジ強度の評価関数はこれに限るものではない。式(7)の変形例として以下の式(21)も考えられる。
【0107】
【数12】
Figure 0004371457
【0108】
この場合は、エッジ抽出フィルタ後の値が、ある閾値以上になった画素数をカウントすることを意味している。式(21)でも十分に画像全体のエッジの強度は把握できる。
また、エッジ抽出フィルタも図3に限るものではなく、よりノイズ耐性の強いフィルタを用いてもよい。
【0109】
また、エッジ強度の評価は、エッジ抽出フィルタを用いない方式、例えば、直交変換の高周波成分の変換係数を基に判定する方式も考えられる。その場合には、どのフレームが高周波域の電力が大きいかを評価し、最も電力が大きいと判断されたフレームを基準フレームとして設定する。
【0110】
また、本実施の形態では、画像の特徴量にエッジ情報を利用したが、これに限るものではなく、他の画像の特徴量を用いて評価してもよい。
【0111】
図10は、本発明の第2の実施の形態による動作手順を示すフローチャートである。本実施の形態は、図1の選択部102による選択方法が異なっているのみで、他の各部に関しては同一である。
また、図10のフローチャートは、mフレーム目から(m+n)フレーム目までの(n+1)枚の画像情報を基に1枚の高解像の静止画像を作成する例を示している。
【0112】
S1001は除算工程を示し、nの値を2で除算した場合の整数部分をpとして代入する。実際の処理上では、ビットシフトで実現できる。続いて、S1002で、(m+p)フレーム目を基準フレームであるフレームGとして設定する。次にS1003では、変数s、及び変数qを0に初期化する。次にS1004で、変数sがpに等しいか否かを判断する。これは現在処理しようとしているフレームが基準フレームなのか、否かを判定することになる。
【0113】
もし、いま処理するフレームSが基準フレームでないならば、S1005において、qが0か否かを判定する。これは、いま処理する回数が1回目か否かを判定するものである。qが0であるならば、S1006で、フレームGを配置させ、S1007で、変数qをカウントアップする。S1005で、否と判定された場合は、処理が2回目以降と判定され、既に基準フレームであるフレームGは配置されているため、S1006、S1007はジャンプされる。
【0114】
続いて、S1008では、フレームGと(m+s)フレーム目(フレームHとする)との間で、動きベクトルを算出し、S1009で、フレームHをデータ加工した後に、S1010で、配置する。S1011で、変数sをカウントアップした後に、繰り返し回数がn回になっているか否かを判断する。まだ、処理していないフレームが格納されている場合には、S1004に戻り、他のフレームに対しても同様の処理工程を繰り返す。
【0115】
格納した全てのフレームに対して配置が終了すると、単一の画像として合成されて処理は完了する。
以上のように、本実施の形態は、基準フレームの選択を、入力されたフレーム順により決定するのが特徴である。
【0116】
図11は、5フレーム分格納した場合の基準フレームの決定を示した図である。斜線で示したフレームが基準フレームである。
格納画像が5フレーム分の場合、n=4になるので、2で除算することにより、p=2となり、(m+2)フレーム目の中間フレームが基準フレームとして設定される。この基準フレームを他の4フレームとそれぞれ比較して処理することになる。
【0117】
もし、格納フレーム数が偶数の場合には、nを2で除算した結果が非整数になるため、正しく中間にはなり得ないが、中間前後のフレームを基準フレームに設定して構わない(但し、図10のフローチャートでは、中間より前になる)。即ち、前述した図9のフローチャートの実施の形態では、基準フレームの選択を“画像の特徴”に基づいて設定する方法であった。画像の特徴量が、最も顕著に表せる評価関数としてエッジの強度を評価した。確かに画像の特徴で選択すれば、画質的に最適な画像を基準フレームとして設定できる可能性がある。
【0118】
しかし、連続画像を扱うため、時間的には必ずしも最適とは言えない。そこで、図10のフローチャートの実施の形態では、“時間的な画像の相関性”を重視して選択している。時間軸において中間の画像を用いるということは、格納画像中の各フレームと比較した場合に、画像の連続性を考えると、画像の相関性が最も高い中心的な画像と仮定することができる。即ち、時間的ずれが最小であるため、各フレームと基準画像との差異が少なくて済む。
【0119】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、図9及び図10の各フローチャートの折衷案も考えられる。即ち、画像の特徴量、及び時間軸上での位置を考慮して新たな評価関数を作成し、基準フレームを決定することも可能である。その場合には、例え時間軸上で最適であるフレームが画質的に不鮮明であった場合でも、総合的に最適な画像を選択することができる。
【0120】
次に本発明の他の実施の形態としての記憶媒体について説明する。
本発明の目的は、ハードウェア構成により達成することも可能であり、また、CPUとメモリとで構成されるコンピュータシステムで達成することもできる。コンピュータシステムで構成する場合、上記メモリは本発明による記憶媒体を構成する。即ち、上述した各実施の形態において説明した動作を実行するための、ソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体をシステムや装置で用い、そのシステムや装置のCPUが上記記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し、実行することにより、本発明の目的を達成することができる。
【0121】
また、この記憶媒体としては、ROM、RAM等の半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク、磁気媒体等を用いてよく、これらをCD−ROM、フロッピィディスク、磁気媒体、磁気カード、不揮発性メモリカード等に構成して用いてよい。
【0122】
従って、この記憶媒体を図1等に示したシステムや装置以外の他のシステムや装置で用い、そのシステムあるいはコンピュータがこの記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し、実行することによっても、上記各実施の形態と同等の機能を実現できると共に、同等の効果を得ることができ、本発明の目的を達成することができる。
【0123】
また、コンピュータ上で稼働しているOS等が処理の一部又は全部を行う場合、あるいは記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された拡張機能ボードやコンピュータに接続された拡張機能ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づいて、上記拡張機能ボードや拡張機能ユニットに備わるCPU等が処理の一部又は全部を行う場合にも、上記各実施の形態と同等の機能を実現できると共に、同等の効果を得ることができ、本発明の目的を達成することができる。
【0124】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、格納した複数フレームの中から各フレームとの比較の基準となる単一の基準フレームを、画像の特徴量や時間的な相関性を基に設定することにより、ベクトル算出時の誤差の蓄積を生じず、不鮮明なフレームが存在していた場合でも問題なく良好な合成を可能にする。
【0125】
また、本発明によれば、従来提案されていた、1枚の低解像静止画からの高解像静止画作成の内挿、補間技術に比べて格段に高画質化した画像情報を作成することができる。
【0126】
さらに、 本発明によれば、ビデオカメラで撮影した低解像静止画情報から1枚の高解像静止画情報を容易に作成できるため、入出力の解像度の異なる機種間通信や、拡大変倍して高画質な画像を出力するビデオカメラ、プリンタ等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による画像処理装置を示すブロック図である。
【図2】図1の選択部を示すブロック図である。
【図3】エッジ抽出フィルタの例を示す構成図である。
【図4】図1の動きベクトル演算部を示すブロック図である。
【図5】動きベクトルを説明する構成図である。
【図6】図4の変換係数評価部の動作手順を示すフローチャートである。
【図7】図1のデータ加工部を示すブロック図である。
【図8】ブロック内の配置位置を説明する構成図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態による選択部を含めた一連の処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施の形態による選択部を含めた一連の処理を示すフローチャートである。
【図11】基準フレームを説明する構成図である。
【図12】従来の最近接内挿法を説明する構成図である。
【図13】従来の共1次内挿法を説明する構成図である。
【図14】従来の3次畳み込み内挿法を説明する構成図である。
【図15】従来の動きベクトル算出の比較フレームを説明する構成図である。
【符号の説明】
102 選択部
103 フレーム制御部
104 動きベクトル演算部
105、107 配置処理部
106 データ加工部
108 合成部
109 補間部
201〜204 エッジ抽出部
205〜208 エッジ強度評価部
209 最大エッジ強度決定部

Claims (5)

  1. mフレーム目から(m+n)フレーム目までの連続した(n+1)枚分(m,nは任意の自然数)の画像情報のエッジ強度を算出し、その算出結果に基づいて上記(n+1)枚の中から該エッジ強度が大きい第1の画像情報を選択する選択手段と、
    上記第1の画像情報以外のn枚の画像情報について、それぞれ第1の画像情報に対する動きベクトルを演算する演算手段と、
    上記演算結果に基づいて、上記(n+1)枚の画像情報を合成して一枚の画像を形成する合成手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
  2. 上記選択手段は、画像のエッジを抽出するフィルタ手段を有し、そのフィルタリング後のエッジ抽出情報の強度に基づいて選択することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
  3. 上記選択手段は、上記エッジ強度に加え、上記画像情報の時間的な相関から第1の画像情報を選択することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
  4. 画像処理装置を制御する画像処理方法であって、
    mフレーム目から(m+n)フレーム目までの連続した(n+1)枚分(m,nは任意の自然数)の画像情報のエッジ強度を算出し、その算出結果に基づいて上記(n+1)枚の中から該エッジ強度が大きい第1の画像情報を選択する選択工程と、
    上記第1の画像情報以外のn枚の画像情報について、それぞれ第1の画像情報に対する動きベクトルを演算する演算工程と、
    上記演算結果に基づいて、上記(n+1)枚の画像情報を合成して一枚の画像を形成する合成工程とを有することを特徴とする画像処理方法。
  5. 画像処理装置を制御するコンピュータプログラムを記憶するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
    mフレーム目から(m+n)フレーム目までの連続した(n+1)枚分(m,nは任意の自然数)の画像情報のエッジ強度を算出し、その算出結果に基づいて上記(n+1)枚の中から該エッジ強度が大きい第1の画像情報を選択する選択処理と、
    上記第1の画像情報以外のn枚の画像情報について、それぞれ第1の画像情報に対する動きベクトルを演算する演算処理と、
    上記演算結果に基づいて、上記(n+1)枚の画像情報を合成して一枚の画像を形成する合成処理とをコンピュータにて実行させるコンピュータプログラムを記憶したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
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