JP4370955B2 - 吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維及びその製造方法ならびに吸湿性布帛 - Google Patents
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Description
(1)繊維横断面において、芯成分中の親水性成分(A)の分散径が2.0μm以下であり、芯成分における親水性成分(A)のブレンド率が5〜39重量%
(2)芯鞘型ポリエステル繊維の吸放湿パラメーター(ΔMR)が1.0%以上であり、芯成分と鞘成分の複合比率が重量比で95:5〜55:45
(3)置換基が下記式1〜5で表される官能基からなる群より選ばれる基であるチタン化合物であって、かつ少なくともカルボニル基またはカルボキシル基またはエステル基を含有するチタン化合物を親水性成分(A)、もしくは親水性成分(A)及び繊維形成性重合体中に配合してなるポリエステル組成物
(式1〜式5中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基または水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基またはアミノ基を有する炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)(4)下記式6で表されるリン化合物を親水性成分(A)、もしくは親水性成分(A)及び繊維形成性重合体中に配合してなるポリエステル組成物
また本発明は、芯鞘型ポリエステル繊維を溶融紡糸する際に、親水性成分(A)と繊維形成性重合体(B)とを個別に溶融してから、混練して分散せしめることを特徴とする上記の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維の製造方法である。
本発明の式1としては、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸系化合物からなる官能基が挙げられる。
(1)ジカルボン酸成分とジオール成分との反応であるエステル化反応
(2)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分とジオール成分との反応であるエステル交換反応
(3)実質的にエステル反応またはエステル交換反応が終了し、得られたポリエチレンテレフタレート低重合体を脱ジオール反応にて高重合度化せしめる重縮合反応
従って、繊維の艶消し剤等に無機粒子として一般的に用いられている二酸化チタン粒子は上記の反応に対して実質的に触媒作用を有しておらず、本発明の触媒として用いることができるチタン化合物とは異なる。
以上の上記式6にて表されるリン化合物としては、例えば亜リン酸エステル、ジアリール亜ホスフィン酸アルキル、ジアリール亜ホスフィン酸アリール、アリール亜ホスホン酸ジアルキル、アリール亜ホスホン酸ジアリールが挙げられ、特に熱安定性及び色調改善の観点から亜リン酸エステルであることが好ましい。具体的には、環状構造を有しないリン化合物として式6中のL=3、かつM=0、かつN=0の化合物としてトリフェニルホスファイト、トリス(4−モノノニルフェニル)ホスファイト、トリ(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等があり、L=2、かつM=1、かつN=0の化合物としてモノオクチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスファイト等があり、L=1、かつM=1、かつN=1の化合物としてジオクチルモノフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト等があり、その中でも下記式8のトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。この化合物はアデカスタブ2112(旭電化株式会社)またはIRGAFOS168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)として入手可能である。
A.ポリエステル中のチタン元素、リン元素、アンチモン元素及びマンガン元素の含有量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)により求めた。なお、ポリエステルに二酸化チタン粒子が含有されている際には、次の前処理をした上で蛍光X線分析を行った。すなわち、ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解(溶媒100gに対してポリマー5g)し、このポリマー溶液と同量のジクロロメタンを加えて溶液の粘性を調製した後、遠心分離器(回転数18000rpm、1時間)で粒子を沈降させる。その後、傾斜法で上澄み液のみを回収し、上澄み液と同量のアセトンを添加することによりポリマーを再析出させ、そのあと3G3のガラスフィルター(IWAKI社製)で濾過し、濾上物をさらにアセトンで洗浄した後、室温で12時間真空乾燥してアセトンを除去した。以上の前処理を施して得られたポリマーについてチタン元素、リン元素、アンチモン元素及びマンガン元素の分析を行った。
B.ポリマーの固有粘度IV
オルトクロロフェノール溶液とし、25℃で求めた。
C.カルボン酸末端基量
Mauriceらの方法[Anal.Chim.Acta,22,p363 (1960)]によった。
D.溶液ヘイズ
測定する試料2.0gをオルソクロロフェノール20mLに溶解させ、ヘイズメーター(スガ試験機社製,HGM−2DP型)を用い、積分球式光電光度法にて分析を行った。
E.ポリマーの色調
色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ型式SM−3)を用いて、ハンター値(L、a、b値)として測定した。
F.口金の堆積物の観察
繊維の紡出から72時間後の口金孔周辺の堆積物量を、長焦点顕微鏡を用いて観察した。堆積物がほとんど認められない状態を○、堆積物は認められるものの操業可能な状態を△、堆積物が認められ頻繁に糸切れが発生する状態を×として判定した。
G.吸放湿パラメーター(ΔMR)
試料がポリマの場合はチップを約2mm角の立方体状に裁断し、また繊維の場合は原糸を筒編みし、布帛の場合は裁断し、いずれの場合も60℃で12時間真空下で乾燥し、乾燥後の重量をおよそ1gとし、20℃×65%RHあるいは30℃×90%RHの雰囲気下、恒温恒湿器(エスペック社製PR−2G)中に24時間放置後の重量との重量変化から、次式で求めた。
吸湿率(%)=[(吸湿後の重量−乾燥後の重量)/乾燥後の重量]×100
上記測定した20℃×65%RH及び30℃×90%RHの条件での吸湿率(それぞれMR1及びMR2とする)から、
ΔMR(%)=MR2−MR1
を求めた。
H.強度、伸度
東洋ボールドウィン社製テンシロン引張り試験機を用いて試長20cm、引張り速度10cm/分の条件で応力−歪み曲線から値を求めた。尚、測定のn数は5とした。
I.親水性成分(A)の繊維中での分散径
本実施例で採用した親水性成分(A)はオスミニウム酸で染色可能であるので、繊維横断面をオスミニウム酸で染色し、TEM写真撮影し、染色された10カ所を無作為に抽出し、その最長径を測定し平均することで確認した。
親水性成分(A)となる共重合ポリエステルとして、高純度テレフタル酸(三井化学社製)100kgとエチレングリコール(日本触媒社製)45kgのスラリーを予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、このエステル化反応生成物の123kgを重縮合槽に移送した。
静止混練子の段数を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様な方法により芯鞘型ポリエステル繊維の筒編地を得た。結果を表1にまとめる。
芯成分中の親水性成分(A)とポリエチレンテレフタレート(繊維形成性重合体(B))とのブレンド比を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様に84デシテックス24フィラメントの芯鞘型ポリエステル繊維の製造を試みた。しかし比較例3においては紡糸時糸流れが多発して未延伸糸を得ることができなかった。繊維特性を表2にまとめた。
芯成分と鞘成分の吐出量を変更して繊維の芯鞘複合比率を変更した以外は実施例1と同様な方法で84デシテックス24フィラメントの芯鞘型ポリエステル繊維を得た。しかし比較例4においては満足するΔMRを得られなかった。繊維特性を表3にまとめた。
実施例1において共重合ポリエステル中のチタン化合物種(触媒B〜D)及び量を変更する以外は同様な方法で共重合ポリエステルを得た。該共重合ポリエステルを構成成分とし、実施例1と同様な方法で84デシテックス24フィラメントのポリエステル繊維を得た。繊維特性を表4にまとめた。比較例5、6についてはポリマーの色調悪化が著しく、比較例7については紡糸時の口金汚れが著しく口金に堆積物が認められ頻繁に糸切れが発生する状態であり、親水性成分の分散径も大きく、満足するΔMRが得られなかった。
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、リン酸の85重量/重量%水溶液(114g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量2.49重量%)。
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量2.49重量%)。
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、リン酸の85重量/重量%水溶液(114g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量4.23重量%)。
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量4.23重量%)。
実施例1において共重合ポリエステル中のリン化合物の種類(リン化合物2〜6)及び量を変更する以外は同様な方法で共重合ポリエステルを得た。該共重合ポリエステルを構成成分とし、実施例1と同様な方法で84デシテックス24フィラメントのポリエステル繊維を得た。繊維特性を表5にまとめた。比較例8については特定のリン化合物を添加していないため、ポリマー色調は悪化した。
実施例23では、実施例1において共重合ポリエステルである親水性成分(A)だけではなく繊維形成性重合体(B)についても、実施例24については繊維形成性重合体(C)についても実施例1と同様なチタン触媒及びリン化合物を用いて得られたポリエチレンテレフタレートを使用する以外は同様な方法でポリエステル繊維を得た。また、実施例25、26ではエステル化反応終了後、重縮合反応開始前の任意の時点でグリコール成分を追添する量を変更する以外は同様な方法で共重合ポリエステルを得た。該共重合ポリエステルを構成成分とし、実施例1と同様な方法で84デシテックス24フィラメントのポリエステル繊維を得た。繊維特性を表6にまとめた。
実施例1で得たのと同様の芯鞘型ポリエステル繊維の筒編地を、精錬後さらに、98℃の条件下、4%のNaOH水溶液でアルカリ処理を繊維布帛重量に対し減量率10%まで行った。得られた布帛のΔMRは1.6%であった。
2:ポリマー導入孔(芯成分)
3:ポリマー導入孔(鞘成分)
4:静止混練子
5:複合口金
Claims (12)
- 親水性成分(A)を分散した繊維形成性重合体(B)を芯成分、繊維形成性重合体(C)を鞘成分とし、以下の条件を満たすことを特徴とする吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維。
(1)繊維横断面において、芯成分中の親水性成分(A)の分散径が2.0μm以下であり、芯成分における親水性成分(A)のブレンド率が5〜39重量%
(2)芯鞘型ポリエステル繊維の吸放湿パラメーター(ΔMR)が1.0%以上であり、芯成分と鞘成分の複合比率が重量比で95:5〜55:45
(3)置換基が下記式1〜5で表される官能基からなる群より選ばれる基であるチタン化合物であって、かつ少なくともカルボニル基またはカルボキシル基またはエステル基を含有するチタン化合物を親水性成分(A)、もしくは親水性成分(A)及び繊維形成性重合体中に配合してなるポリエステル組成物
- 請求項1記載のポリエステル繊維のカルボン酸末端基量が20〜40eq/tであり、親水性成分(A)のカルボン酸末端基量が3〜10eq/tであり、かつ親水性成分(A)と繊維形成性重合体(B)及び繊維形成重合体(C)のカルボン酸末端基量の比(A/B)及び(A/C)が0.1〜0.4であることを特徴とする吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維。
- 請求項1または2記載の親水性成分(A)であるポリエステルの主たる酸成分がテレフタル酸であり、ポリエステルを製造する際にエステル化反応終了後、重縮合反応開始前の任意の時点で、テレフタル酸に対するモル比で0.3〜1.1のグリコール成分を追添することを特徴とする吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維の製造方法。
- 式6にて表されるリン化合物がリン原子を含む6員環以上の環構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維。
- チタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で0.5〜150ppm(二酸化チタン粒子のチタン原子含有は除く)、リン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.1〜400ppm、アンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するアンチモン原子換算で30ppm以下含有し、チタン化合物とリン化合物の比率が、チタン原子とリン原子のモル比率としてTi/P=0.1〜20であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の芯鞘型ポリエステル繊維にて、親水性成分(A)、もしくは親水性成分(A)及び繊維形成性重合体のポリエステル組成物中にカルボニル基を3個以上有する芳香族多価カルボン酸化合物を配合してなることを特徴とする吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維。
- 親水性成分(A)がポリエーテルエステル系化合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維。
- 芯鞘型ポリエステル繊維を溶融紡糸する際に、親水性成分(A)と繊維形成性重合体(B)とを個別に溶融してから、混練して分散せしめることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維の製造方法。
- 親水性成分(A)と繊維形成性重合体(B)との混練手段として静止混練子を用いることを特徴とする請求項9記載の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項記載の吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維を用いたことを特徴とする吸湿性布帛。
- 吸湿性に優れた芯鞘型ポリエステル繊維の表面に減量処理を施したことを特徴とする請求項11記載の吸湿性布帛。
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