JP2007046185A - ポリエステル太細糸 - Google Patents

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亘洋 前田
Jun Hanaoka
純 花岡
聡 ▲くわ▼山
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Abstract

【課題】 金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分およびポリオキシアルキレングリコール成分を共重合成分とする共重合ポリエステル組成物の成形時において、ろ圧上昇がなく、製糸性や製膜性が良好であり、かつ従来品に比べてポリマー色調および染色性に優れたポリエステル組成物から、自然な杢調を有し、かつ優れたスパン感とソフトな風合いをもつ太細糸を提供する。
【解決手段】 0.1〜10モル%の金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分と0.1〜5.0重量%の重量平均分子量400〜6000のポリオキシアルキレングリコール成分を共重合しており、酸化チタン粒子を0.1〜7.0重量%含有し、アンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するアンチモン原子換算での含有量が30ppm以下であり、酸化チタン粒子とは別にチタン化合物とリン化合物を含有するポリエステルからなり、かつ任意の繊維横断面の単糸断面積の標準偏差をσとしたとき、σが35×10−12以上であることを特徴とするポリエステル太細糸。
【選択図】図1

Description

本発明は染色性に優れたポリエステル組成物からなるポリエステル太細糸に関するものである。さらに詳しくは、ポリエステルの製造時において、重合時に使用した触媒に起因した異物による溶融紡糸時のろ圧上昇がなく、製糸性が良好であり、かつ、従来品に比べて熱安定性、色調、染色性に優れたポリエステルであり、かつ太細のピッチが短く分散した、自然な杢調を表現することが可能なポリエステル太細糸に関するものである。
ポリエステルはその機能性の有用さから多目的に用いられており、例えば、衣料用、資材用、医療用に用いられている。その中でも、汎用性、実用性の点でポリエチレンテレフタレートが優れ、好適に使用されている。
一般にポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールから製造されるが、高分子量のポリマーを製造する商業的なプロセスでは、重縮合触媒としてアンチモン化合物が広く用いられている。しかしながら、アンチモン化合物を含有するポリマーは以下に述べるような幾つかの好ましくない特性を有している。
例えば、アンチモン触媒を使用して得られたポリマーを溶融紡糸して繊維とするときに、アンチモン触媒の残渣が口金孔周りに堆積することが知られている。この堆積が進行するとフィラメントに欠点が生じる原因となるため、適時除去する必要が生じる。アンチモン触媒残渣の堆積が生じるのは、ポリマー中のアンチモン化合物が口金近傍で変成し、一部が気化、散逸した後、アンチモンを主体とする成分が口金に残るためであると考えられている。
また、ポリマー中のアンチモン触媒残渣は比較的大きな粒子状となりやすく、異物となって成形加工時のフィルターの濾圧上昇、紡糸の際の糸切れあるいは製膜時のフイルム破れの原因になるなどの好ましくない特性を有しており、操業性を低下させる一因となっている。
上記のような背景からアンチモン含有量が少ないか、あるいは含有しないポリエステルが求められている。そこで、重縮合触媒の役割をアンチモン系化合物以外の化合物に求める場合、ゲルマニウム化合物が知られているが、ゲルマニウム化合物は埋蔵量も少なく希少価値であることから汎用的に用いることは難しい。
そこで、本発明では上記の問題点を改良し、糸切れの少ないポリエステルを鋭意検討した結果、重合用触媒としてチタン化合物を用いることにより本発明の目的を達成できるという知見を得た。
これに対し、従来、重合用触媒としてチタン化合物とリン化合物とからなるチタン錯体をポリエステル重合用触媒として用いる提案がされている(特許文献1〜5参照)。この方法によれば触媒に起因した異物を少なくすることができるものの、得られるポリマーの色調は十分なものではない。従って、チタン化合物のさらなる改善が求められている。
また、金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分またはポリエーテル成分を共重合成分とする共重合ポリエステルにおいても、重合用触媒としてチタン化合物とリン化合物とからなるチタン錯体を用いる提案がされている(特許文献6〜10参照)。確かに、この方法によれば触媒起因の異物が少なく、色調の改善された制電性もしくは吸湿・吸水性のポリエステルを得ることができるが、上記の問題点が非常に顕著となる共重合ポリエステルでは十分なものではない。
また、フェニレンジオキシジ酢酸類を共重合成分とする共重合ポリエステルにおいて、重合触媒と、リン化合物として有機ホスファイト化合物を用いる提案がされている(特許文献11参照)。この方法によれば、ガスバリア性を付与するために必須成分として共重合成分であるフェニレンジオキシジ酢酸類を添加しており、有機ホスファイト化合物を添加することで色調改善が行われる。しかしながら、特許文献11に記載された具体的な重縮合触媒はアンチモン化合物のみであり、成形加工時のフィルターの濾圧上昇、紡糸の際の糸切れあるいは製膜時のフィルム破れの原因を解消することにはなっていない。また、発明の実施の形態に記載された重縮合触媒として、チタン等の有機酸等を挙げているが、本発明にて挙げた特定のチタン化合物を挙げているわけではない。
そこで、本発明では少なくとも特定のチタン化合物とリン化合物がポリエステル重合用触媒であることを特徴とするポリエステル組成物により、上記の改善について達成できる見通しを得た。
一方、杢調を得ることができる太細糸に関する技術開示はこれまでに多数されてきているが(特許文献12〜14参照)、従来、アンチモン化合物をアンチモン原子換算で30ppm以上含有するポリエステルを延伸すると太細のピッチが揃ってしまうという問題点があり、自然な杢調を得ることはできなかった。しかしながら、本発明のポリエステルを本発明のように延伸することで、太細のピッチを分散させることができ、これまでに得ることができなかった濃淡染色差のない自然な杢調を得ることが可能になった。
以上のことに鑑み、ポリエステルの製造上及び品質上の欠点改善、さらには展開用途について鋭意検討した結果、少なくとも特定のチタン化合物とリン化合物がポリエステル重合用触媒であることを特徴とするポリエステルから、自然な杢調を有する太細糸が得られることがわかった。
特表2001−524536号公報 特表2002−512267号公報 特開2002−293909号公報 特開2003−40991号公報 特開2003−40994号公報 特開2003−128769号公報 特開2003−128770号公報 特開2003−119273号公報 特開2003−147633号公報 特開2003−129336号公報 特開2003−147060号公報 特開2003−20519号公報 特開平11−222727号公報 特開2003−105682号公報
本発明の課題は、上記従来の問題を解消し、金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分およびポリオキシアルキレングリコール成分を共重合成分とする共重合ポリエステル組成物の成形時において、ろ圧上昇がなく、製糸性や製膜性が良好であり、かつ従来品に比べてポリマー色調および染色性に優れたポリエステル組成物から、自然な杢調を有し、かつ優れたスパン感とソフトな風合いをもつ太細糸を提供することにある。
上記本発明の課題は、0.1〜10モル%の金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分と0.1〜5.0重量%の重量平均分子量400〜6000のポリオキシアルキレングリコール成分を共重合しており、酸化チタン粒子を0.1〜7.0重量%含有し、アンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するアンチモン原子換算での含有量が30ppm以下であり、酸化チタン粒子とは別にチタン化合物とリン化合物を含有するポリエステルからなり、かつ任意の繊維横断面の単糸断面積の標準偏差をσとしたとき、σが35×10−12以上であることを特徴とするポリエステル太細糸により達成できる。
本発明の、特定のチタン化合物とリン化合物を配合してなるポリエステル組成物は成形加工性に優れ、繊維用製造において、色調悪化、口金汚れ、濾圧上昇、糸切れ等の問題を解消でき、染色性を向上させた自然な杢調を有するポリエステル太細糸を得ることができる。
本発明のポリエステルは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーである。このようなポリエステルとして具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。本発明は、なかでも最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレートまたは主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体において好適である。
また、本発明のポリエステルには、金属スルホネート基を含有するイソフタル酸が0.1〜10モル%、重量平均分子量400〜6000のポリオキシアルキレングリコールが0.1〜5.0重量%共重合されていることが重要である。金属スルホネート基を含有するイソフタル酸の共重合量が多すぎると成型時の粘度が異常に高くなり、濾圧上昇などの問題が起きる。一方、少なすぎると染色性に劣る。また、ポリオキシアルキレングリコールの重量平均分子量が大きすぎると、共重合せずポリエステル中で塊を形成しやすく、小さすぎると染色性に劣る。また、ポリオキシアルキレングリコールの共重合量が多すぎると、耐熱性およびポリマー色調が悪化し、少なすぎると染色性に劣る。金属スルホネート基を含有するイソフタル酸の共重合量は0.6〜5モル%が好ましく、中でも1.0〜2.0%がより好ましい。ポリオキシアルキレングリコールの重量平均分子量は2000〜5000が好ましく、共重合量は0.5〜2.0重量%が好ましい。なお、ここで言う重量平均分子量は液体クロマトグラフィー(GPC法:Gel Peameation Chromatography)により測定している。GPC法とはゲル状の粒子を充填したカラムに高分子の希薄な溶液を流し、分子の大きさによって流出するまでの時間が異なることを利用した分子量の測定法である。
その他に、アジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸等のオキシカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体等が共重合されていてもよい。
本発明の少なくとも特定のチタン化合物とリン化合物を添加してなることを特徴とするポリエステル組成物において、重合用触媒として用いることができるチタン化合物は、置換基が下記式1〜5で表される官能基からなる群より選ばれる少なくともカルボニル基またはカルボキシル基またはエステル基を含有する少なくとも1種であるチタン化合物が挙げられる。
Figure 2007046185
(化学式1〜5中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基または水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基またはアミノ基を有する炭素数1〜30の炭化水素基を表し、チタン化合物は少なくともカルボニル基またはカルボキシル基またはエステル基を含有する。)
本発明の化学式1としては、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸系化合物からなる官能基が挙げられる。
また、化学式2としては、アセチルアセトン等のβ−ジケトン系化合物、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル系化合物からなる官能基が挙げられる。
また、化学式3としては、フェノキシ、クレシレイト、サリチル酸等からなる官能基が挙げられる。
また、化学式4としては、ラクテート、ステアレート等のアシレート基、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸またはそれらの無水物等の多価カルボン酸系化合物、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等の含窒素多価カルボン酸からなる官能基が挙げられる。
また、化学式5としては、アニリン、フェニルアミン、ジフェニルアミン等からなる官能基が挙げられる。
中でも化学式1および/または化学式4が含まれていることがポリマーの熱安定性及び色調の観点から好ましい。
また、チタン化合物としてこれら式1〜式5の置換基の2種以上を含んでなるチタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナートやチタントリエタノールアミネートイソプロポキシド等が挙げられる。
なお、従来から知られているテトライソプロポキシチタンやテトラブトキシチタン等の、カルボニル基、カルボキシル基及びエステル基を含有しないアルコキシチタン化合物は本発明の化学式1には含まれない。
なお、本発明に用いる触媒としては、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーにおいて、以下の(1)〜(3)の反応全てまたは一部の素反応の反応促進に実質的に寄与する化合物が挙げられる。
(1)ジカルボン酸成分とジオール成分との反応であるエステル化反応
(2)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分とジオール成分との反応であるエステル交換反応
(3)実質的にエステル反応またはエステル交換反応が終了し、得られたポリエチレンテレフタレート低重合体を脱ジオール反応にて高重合度化せしめる重縮合反応
したがって、繊維の艶消し剤等に無機粒子として一般的に用いられている酸化チタン粒子は上記の反応に対して実質的に触媒作用を有しておらず、本発明の触媒として用いることができるチタン化合物とは異なる。
本発明におけるチタン化合物(酸化チタン粒子を除く)は、得られるポリマーに対してチタン原子換算で0.5〜150ppm含有されていることが好ましい。1〜100ppmであるとポリマーの熱安定性や色調がより良好となり好ましく、さらに好ましくは3〜50ppmである。
本発明のポリエステルは、チタン化合物と共にリンがポリエステルに対してリン原子換算で0.1〜400ppm含有されていることが好ましい。なお、製糸時におけるポリエステルの熱安定性や色調の観点からリン含有量は、1〜200ppmが好ましく、さらに好ましくは3〜100ppmである。
なお、本発明の少なくとも特定のチタン化合物とリン化合物を添加してなることを特徴とするポリエステルにおいて、用いられる特定のリン化合物は下記式6にて表される。
Figure 2007046185
(上記化学式6中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表し、ベンゼン環に対して2個以上有していてもよい。なお、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造、脂肪族の分岐構造、フェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。また、R2、R3はそれぞれ独立に、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表し、リン原子に対して−OR2または−OR3となるアルコキシ基であってもよい。なお、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造、脂肪族の分岐構造、フェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。また、L+M+N=3であり、かつLは1〜3の整数、M及びNは0〜2の整数である。)
以上の上記化学式6にて表されるリン化合物としては、例えば亜リン酸エステル、ジアリール亜ホスフィン酸アルキル、ジアリール亜ホスフィン酸アリール、アリール亜ホスホン酸ジアルキル、アリール亜ホスホン酸ジアリールなどが挙げられ、特に熱安定性及び色調改善の観点から亜リン酸エステルであることが好ましい。具体的には、環状構造を有しないリン化合物として化学式6中のL=3、かつM=0、かつN=0の化合物としてトリフェニルホスファイト、トリス(4−モノノニルフェニル)ホスファイト、トリ(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等があり、L=2、かつM=1、かつN=0の化合物としてモノオクチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスファイト等があり、L=1、かつM=1、かつN=1の化合物としてジオクチルモノフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト等があり、その中でも下記化学式8のトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。この化合物はアデカスタブ2112(旭電化株式会社)またはIRGAFOS168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)として入手可能である。
Figure 2007046185
また、化学式6にて表されるリン化合物は、熱安定性及び色調改善の観点からリン原子を含む6員環以上の環構造を有する化合物であることが好ましい。具体的なリン化合物は、L=1、かつM=1、かつN=1の化合物としてビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、3,9−ビス(2,4−ジクミルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン、フェニル−ネオペンチレングリコール−ホスファイト等があり、L=2、かつM=1、かつN=0の化合物として2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。さらに、熱安定性及び色調改善の観点から下記化学式7に記載した化合物が好ましい。
Figure 2007046185
なお、上記化学式7中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表し、ベンゼン環に対して2個以上有していてもよく、かつ異なる基であってもよい。この場合の炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造、脂肪族の分岐構造、フェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。具体的な化合物としては、以下の下記化学式9で表されるビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、化学式10で表されるビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、化学式11で表される2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。これらの式9〜11の化合物はそれぞれ、アデカスタブPEP−36、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブHP−10としていずれも旭電化株式会社より入手可能であり、化学式10はIRGAFOS126としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズより入手可能である。また、これらの化合物を単独または併用してもよい。
Figure 2007046185
Figure 2007046185
Figure 2007046185
本発明の特定のリン化合物を添加する場合、リン化合物を前記のエチレングリコール等のジオール成分に溶解させた状態または分散させたスラリー状にすることが好ましい。
なお、本発明のポリエステルに含有されるリンは、化学式6以外のリン化合物を熱安定性及び色調改善の観点から添加してもよい。このようなリン化合物としてはリン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系、亜ホスホン酸系、亜ホスフィン酸系、ホスフィン系のいずれか1種または2種であることが好ましい。具体的には、例えば、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル等のリン酸系、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸系、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスホン酸ジエチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジフェニルエステル、ベンジルホスホン酸ジメチルエステル、ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、ベンジルホスホン酸ジフェニルエステル、リチウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ナトリウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、マグネシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、カルシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸メチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル等のホスホン酸系化合物、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、プロピルホスフィン酸、イソプロピルホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、トリルホスフィン酸、キシリルホスフィン酸、ビフェニリルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ジトリルホスフィン酸、ジキシリルホスフィン酸、ジビフェニリルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アントリルホスフィン酸、2−カルボキシフェニルホスフィン酸、3−カルボキシフェニルホスフィン酸、4−カルボキシフェニルホスフィン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,6−トリカルボキフェニルホスフィン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、ビス(2−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3−ジカルボキルシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,6−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,4−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、及びビス(2,4,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、メチルホスフィン酸メチルエステル、ジメチルホスフィン酸メチルエステル、メチルホスフィン酸エチルエステル、ジメチルホスフィン酸エチルエステル、エチルホスフィン酸メチルエステル、ジエチルホスフィン酸メチルエステル、エチルホスフィン酸エチルエステル、ジエチルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸メチルエステル、フェニルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸フェニルエステル、ジフェニルホスフィン酸メチルエステル、ジフェニルホスフィン酸エチルエステル、ジフェニルホスフィン酸フェニルエステル、ベンジルホスフィン酸メチルエステル、ベンジルホスフィン酸エチルエステル、ベンジルホスフィン酸フェニルエステル、ビスベンジルホスフィン酸メチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸エチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸フェニルエステル等のホスフィン酸系、トリメチルホスフィンオキサイド、トリエチルホスフィンオキサイド、トリプロピルホスフィンオキサイド、トリイソプロピルホスフィンオキサイド、トリブチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、プロピル亜ホスホン酸、イソプロピル亜ホスホン酸、ブチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等の亜ホスホン酸系、メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、プロピル亜ホスフィン酸、イソプロピル亜ホスフィン酸、ブチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸、ジメチル亜ホスフィン酸、ジエチル亜ホスフィン酸、ジプロピル亜ホスフィン酸、ジイソプロピル亜ホスフィン酸、ジブチル亜ホスフィン酸、ジフェニル亜ホスフィン酸等の亜ホスフィン酸系、メチルホスフィン、ジメチルホスフィン、トリメチルホスフィン、メエルホスフィン、ジエチルホスフィン、トリエチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系が挙げられ、これらのリン化合物を単独または併用してもよい。
本発明のポリエステル重合用触媒の具体的な溶媒としては、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ベンゼン、キシレンが挙げられ、これらのいずれか1種または2種であることが好ましい。また、熱安定性及び色調の観点からチタン化合物とリン化合物をpH=4〜6の溶媒中で調製するために塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸等の酸性化合物、MES:2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(pH=5.6〜6.8)、ADA:N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(pH=5.6〜7.5)等のグッド緩衝剤または上記のリン化合物を用いても良い。
本発明のポリエステル重合用触媒の合成方法は、(1)チタン化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液にリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。(2)前記ヒドロキシカルボン酸系化合物や多価カルボン酸系化合物等のチタン化合物の配位子を用いる場合は、チタン化合物または配位子化合物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合溶液に配位子化合物またはチタン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下する。また、この混合溶液にさらにリン化合物を原液または溶媒に溶解希釈させ滴下することが、熱安定性及び色調改善の観点から好適である。上記の反応条件は0〜200℃の温度で1分以上、好ましくは20〜100℃の温度で2〜100分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧でも良い。温度計及び撹拌翼を備えた反応装置に該混合溶媒を仕込み、0〜200℃の温度で1分以上、好ましくは10〜100℃の温度で2〜60分間撹拌混合することによって行われる。
また、本発明のポリエステル重合用触媒は、ポリエステルの反応系にそのまま添加してもよいが、予め該化合物をエチレングリコールやプロピレングリコール等のポリエステルを形成するジオール成分を含む溶媒と混合し、溶液またはスラリーとし、必要に応じて該化合物合成時に用いたアルコール等の低沸点成分を除去した後、反応系に添加すると、ポリマー中での異物生成がより抑制されるため好ましい。添加時期はエステル化反応触媒やエステル交換反応触媒として、原料添加直後に触媒を添加する方法や、原料と同伴させて触媒を添加する方法がある。また、重縮合反応触媒として添加する場合は、実質的に重縮合反応開始前であればよく、エステル化反応やエステル交換反応の前、あるいは該反応終了後、重縮合反応触媒が開始される前に添加してもよい。さらに、熱安定性や色調改善の観点から、リン化合物を追加添加しても良い。この場合、チタン化合物を含んでいる本発明のポリエステル重合用触媒とリン化合物が接触することによる触媒の失活を抑制するために、異なる反応槽に追加添加する方法や、同一の反応槽において本発明のポリエステル重合用触媒とリン化合物の添加間隔を1〜15分とする方法や添加位置を離す方法がある。
本発明のポリエステルにおいては、アンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するアンチモン原子換算での含有量が30ppm以下であることが重要である。この範囲とすることで、成形加工時の口金汚れの発生等が少なく、かつ比較的安価なポリマーを得ることができる。より好ましくは、10ppm以下、特には実質的に含有しないことが好ましい。
また、チタン化合物のチタン原子に対してリン原子としてモル比率でTi/P=0.1〜20であるとポリエステルの熱安定性や色調が良好となり好ましい。
より好ましくはTi/P=0.2〜10であり、さらに好ましくはTi/P=0.3〜5である。
本発明のポリエステルにおいては、その製造段階において、任意の時点でマンガン化合物をポリエステルに対するマンガン原子換算で1〜400ppm含有し、マンガン化合物とリン化合物の比率がマンガン原子とリン原子のモル比率としてMn/P=0.1〜200となるように添加すると重合活性の低下を抑制することができ、それにより得られるポリマーの色調が良好となり好ましい。この場合に用いるマンガン化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、塩化マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、マンガンアセチルアセトネート、酢酸マンガン四水塩、酢酸マンガン二水塩等が挙げられる。
また、本発明のポリエステルにおいては、その製造段階において、任意の時点でさらにコバルト化合物をポリエステルに対するコバルト原子換算で1〜400ppm添加すると、得られるポリマーの色調が良好となり好ましい。この場合に用いるコバルト化合物としては特に限定はないが、具体的には、例えば、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト四水塩等が挙げられる。
また、本発明のポリエステルにおいては、その製造段階において、任意の時点でさらに色調調整剤として青系調整剤および/または赤系調整剤を添加すると、得られるポリマーの色調が良好となり好ましい。
本発明の色調調整剤とは樹脂等に用いられる染料のことであり、COLOR INDEX GENERIC NAMEで具体的にあげると、SOLVENT BLUE 104,SOLVENT BLUE 122,SOLVENT BLUE 45等の青系の色調調整剤、SOLVENT RED 111,SOLVENT RED 179,SOLVENT RED 195,SOLVENT RED 135,PIGMENT RED 263,VAT RED 41等の赤系の色調調整剤,DESPERSE VIOLET 26,SOLVENT VIOLET 13,SOLVENT VIOLET 37,SOLVENT VIOLET 49等の紫系色調調整剤が挙げられる。なかでも装置腐食の要因となりやすいハロゲンを含有せず、高温での耐熱性が比較的良好で発色性に優れた、SOLVENT BLUE 104,SOLVENT BLUE 45,SOLVENT RED 179,SOLVENT RED 195,SOLVENT RED 135,SOLVENT VIOLET 49が好ましく用いられる。
また、これらの色調調整剤を目的に応じて、1種類または複数種類用いることができる。特に青系調整剤と赤系調整剤をそれぞれ1種類以上用いると色調を細かく制御できるため好ましい。さらにこの場合には、添加する色調調整剤の総量に対して青系調整剤の比率が50重量%以上90重量%以下であると得られるポリエステルの色調が特に良好となり好ましい。
最終的にポリエステルに対する色調調整剤の添加量は総量で2ppm以上30ppm以下であることが好ましい。30ppmを越えるとポリエステルの透明性が低下したり、くすんだ発色となることがある。
ポリマー色調をバランスのとれたものにするため、コバルトと色調調整剤の含有量が下記式(1)を満たすことが好ましい。
2≦ CL+CO/10 ≦ 15 …式(1)
[但し、式中のCLはポリエステルに対する色調調整剤の含有量(ppm)、COはポリエステルに対するコバルト原子換算でのコバルト化合物の含有量(ppm)を示す。]
この式(1)の値は4以上10以下であることが色調の観点からより好ましい。
ポリエステルへの色調調整剤の添加は、エステル化反応またはエステル交換反応が完了した後、重縮合反応が完了するまでの任意の時期に添加することが好ましい。特に、エステル化反応またはエステル交換反応が完了した後、重縮合反応を開始するまでの間に添加すると、ポリエステル中での分散が良好となり好ましい。
また、色調調整剤を実質的に重縮合反応が完了した後にポリエステルに添加することも可能である。この場合には、1軸あるいは2軸押出機を用いてチップに色調調整剤を直接溶融混練する方法や、あらかじめ別に高濃度に色調調整剤を含有するポリエステルを調製しておき、色調調製剤を含まないチップとブレンドしても良い。
また、得られるポリマーの熱安定性や色調を向上させる目的で、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、スズ化合物等を添加してもよい。
本発明のポリエステルは酸化チタン粒子を0.1〜7.0重量%含有していることが必要である。酸化チタン粒子が少なすぎると溶融時の熱分解によってポリマー色調が悪化しやすくなり、多すぎると成型時の異物の問題が発生する。好ましくは0.5〜4.0重量%であり、さらに好ましくは1.0〜3.0重量%である。
さらに、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、カーボンブラック等の粒子のほか、着色防止剤、安定剤、抗酸化剤等の添加剤を含有しても差支えない。
本発明のポリエステルは、チップ形状での色調がハンター値でそれぞれL値が50以上、a値が−5〜1、b値が−0.5〜7の範囲にあることが、繊維やフィルムなどの成型品の色調の点から好ましい。さらに好ましいのは、L値が65〜100、a値が−3〜0.5、b値が1〜6の範囲である。特にb値については、3〜5の範囲がより好ましい。
本発明のポリエステルを繊維形成性重合体の構成成分として用いることで今までにない高い染色特性を持ち、かつ繊維形成性重合体の繊維物性を損なわない合成繊維を得ることができる。
また、本発明において繊維形成性重合体として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルが挙げられるがこれらに限定されるものではない。好ましくは衣料用合成繊維として最も汎用性の高い、ポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルである。
また、繊維形成性重合体には、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料のほか従来公知の抗酸化剤、着色防止剤、耐光剤、帯電防止剤等が添加されても勿論良い。
本発明のポリエステル太細糸は糸長手方向に太細を有し、かつ任意の繊維横断面の単糸断面積をσとしたとき、σが35×10−12以上であることが重要である。σが35×10−12より小さいと太細の位相がそろってしまうため、濃淡染色差が出やすく汎用的に使用できる太細糸とならない。σは80×10−12以下であることが好ましい。太細糸の糸ムラの程度は後述するU%測定法で測定して3〜12%の範囲にあるものが好ましく、3〜8%の範囲にあることがさらに好ましい。
また、本発明のポリエステル太細糸は、任意の同一繊維断面中に太細の単糸を混在させるために、延伸前に張力振動を与えることが好ましい。張力振動を与える方法であれば特に限定されないが、特に延伸装置における延伸領域の前に交絡ノズルを使用することが好ましい。以下に代表的な本発明太細糸の製造方法を示す。本発明の太細糸は、本発明の共重合ポリエステルを従来公知の方法により溶融紡糸し、一旦未延伸糸を巻き取った後、定応力伸長領域以下の延伸倍率で、延伸領域前に交絡を付与しながら不均一延伸することによって得られる。紡糸工程に連続して不均一延伸することも可能であるが、紡糸直後の未延伸糸は定応力伸長域が明瞭でなく、不均一延伸してもマルチフィラメント全体に実質的に太細を形成しにくいので、一旦巻き取った後、未延伸糸を不均一延伸することが好ましい。
本発明のポリエステル太細糸の断面形状は丸ばかりでなく、三角、偏平、多葉型などのいずれの形状も好ましく用いることができる。布帛形態としては、織物、編物、不織布など目的に応じて適宜選択できる。
実用上良好な染色性を得るためには合成繊維の染色吸尽率は高いほど好ましく、30%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは50%以上である。
次に、本発明のポリエステルの製造方法を説明する。具体例としてポリエチレンテレフタレートの例を記載するがこれに限定されるものではない。
ポリエチレンテレフタレートは通常、次のいずれかのプロセスで製造される。
すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスである。ここでエステル化反応は無触媒でも反応は進行するが、前述のチタン化合物を触媒として添加してもよい。また、エステル交換反応においては、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム等の化合物や前述のチタン化合物を触媒として用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加することが行われる。
本発明の製造方法は、(1)または(2)の一連の反応の任意の段階、好ましくは(1)または(2)の一連の反応の前半で得られた低重合体に、艶消し剤として酸化チタン粒子や、コバルト化合物等の添加物を添加した後、重縮合触媒として前述のチタン化合物を添加し重縮合反応を行い、高分子量のポリエチレンテレフタレートを得るというものである。
また、上記の反応は回分式、半回分式あるいは連続式等の形式に適応し得る。
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)ポリエステル中の触媒由来のチタン元素、リン元素、アンチモン元素及びマンガン元素の含有量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)により求めた。なお、次の前処理をした上で蛍光X線分析を行った。すなわち、ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解(溶媒100gに対してポリマー5g)し、このポリマー溶液と同量のジクロロメタンを加えて溶液の粘性を調製した後、遠心分離器(回転数18000rpm、1時間)で粒子を沈降させる。その後、傾斜法で上澄み液のみを回収し、上澄み液と同量のアセトンを添加することによりポリマーを再析出させ、そのあと3G3のガラスフィルター(IWAKI社製)で濾過し、濾上物をさらにアセトンで洗浄した後、室温で12時間真空乾燥してアセトンを除去した。以上の前処理を施して得られたポリマーについてチタン元素、リン元素、アンチモン元素及びマンガン元素の分析を行った。
(2)ポリマーの固有粘度IV
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(3)溶液ヘイズ
測定する試料2.0gをオルソクロロフェノール20mLに溶解させ、(1)と同様の前処理を行った後、ヘイズメーター(スガ試験機社製,HGM−2DP型)を用い、積分球式光電光度法にて分析を行った。
なお、溶液ヘイズが2%より小さければ異物の含有率が少なく、製糸性に優れたポリマーであると言える。
(4)ポリマーの色調
色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ型式SM−3)を用いて、ハンター値(L、a、b値)として測定した。
(5)口金の堆積物の観察
繊維の紡出から72時間後の口金孔周辺の堆積物量を、長焦点顕微鏡を用いて観察した。堆積物がほとんど認められない状態を○、堆積物は認められるものの操業可能な状態を△、堆積物が認められ頻繁に糸切れが発生する状態を×として判定した。
(6)染料吸尽率
筒編地をマラカイトグリーン(関東化学製)5%o.w.f、酢酸0.5ml/l、酢酸ソーダ0.2g/lからなる浴比1:100の120℃熱水溶液中で60分間染色を行い、染色前後の液中染料濃度差から筒編地の染料吸尽率を求めた。
なお、この値が40%より大きければ、染色性に優れたポリマーであると言える。
(7)任意繊維横断面における単糸断面積の標準偏差σ
得られたポリエステル太細糸の任意の横断面写真を360倍で撮影、その写真をもとに各単糸の断面積を測定し、その標準偏差を算出する。これを5回繰り返し、標準偏差の平均値をσとする。
(8)沸水収縮率
マルチフィラメント糸をかせ取りし、0.09cN/dtexの加重下で試料長L0を測定した後、無加重の状態で15分間、沸騰水中で処理を行う。処理後、風乾し、0.09cN/dtexの加重下で試料長L1を測定する。
沸騰水収縮率(SW)(%)=[(L0−L1)/L0]×100
(9)糸ムラU%の測定方法
測定器としては市販のUster Eveness Tester(計測器工業株式会社製)を使用する。糸のトータル繊度により使用する測定用スロットを選択し、糸速度を25m/minとし、撚糸機で1500rpmの回転を与え、撚糸しつつノルマルテストにて測定する。U%値は3分間の測定を1回として測定試料の任意の5カ所について測定し、その平均値で表す。
(10)定応力伸長領域伸度
インストロン型引張り試験機で得た図1に示すチャート上のAの伸度を読みとる。定応力伸長領域伸度については5カ所について測定し、その平均値で表す。
(11)官能評価
得られた太細糸を下記条件で製織、染色し、染色布帛の濃淡の分散度合い、布帛の風合い(ソフト感、ふくらみ感)について目視および官能試験を実施し、それぞれについて「極めて優れている」は○○、「優れている」は○、「普通」は△、「劣っている」は×で表した。
製織条件
経糸 :33dtex−6フィラメントのポリエステル撚糸(800T/m)
緯糸 :実施例で得た太細糸
経糸本数 :4550本、 整経糸長 :1300m
オサ密度 :23.77羽/cm、打ち込み巾長 :95cm
染色条件
染料 :アイゼンカチロンブルー(保土谷化学工業製)
:カチオン染料5%o.w.f
浴比 1 : 50
染色 :50℃×15分処理の後、1.3℃/分の速度で昇温し、130℃×60分処理する。
実施例1
高純度テレフタル酸(三井化学社製)82.5kgとエチレングリコール(日本触媒社製)35.4kgのスラリーを予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約100kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、このエステル化反応生成物の101.5kgを重縮合槽に移送した。
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された前記重縮合反応槽に、シリコン(東芝シリコーン製、TSF433)5gを添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト11.5g(ポリマーに対してコバルト原子換算で30ppm)、酢酸マンガン15g(ポリマーに対してマンガン原子換算で33ppm)、ペンタエリスリトールーテトラキス(3−(3,5−ジーt−ブチルー4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(チバガイギー(株)製、イルガノックス1010)75g、酢酸リチウム45g、青系色調調整剤SOLVENT BLUE 104(クラリアント社製、Polysynthren Blue RBL)0.4gのエチレングリコール溶液と、ポリマーに対してチタン原子換算で10ppm相当のクエン酸キレートチタン化合物及びリン酸からなるエチレングリコール溶液(触媒A)、ポリマーに対して70ppm(リン原子換算で7ppm)相当のビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(旭電化社製、アデカスタブPEP−36)のエチレングリコールスラリーの混合物を添加した。更に5分間撹拌した後、重量平均分子量4000のポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製)を1kg添加した。更に5分間撹拌した後、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ヒドロキシエチルエステルのエチレングリコール溶液(竹本油脂(株)製、ES−740)を、ポリマーに対する硫黄分量が0.3%となるように添加した。更に5分撹拌した後、酸化チタン粒子のエチレングリコールスラリーを、ポリマーに対して酸化チタン粒子換算で1.5重量%となるように添加し、その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻し重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
得られたポリマーのIVは0.68、色調はL=72、a=−2.5、b=4.5、溶液ヘイズは0.7%であった。また、ポリマーから測定したチタン触媒由来のチタン原子の含有量は10ppm、リン原子の含有量は13ppmであり、Ti/P=0.50であり、アンチモン原子の含有量は0ppmであることを確認した。
また、このポリエステルを乾燥後、紡糸温度290℃、紡糸速度2800m/分で紡糸し、伸度160%、定応力伸長領域伸度45のポリエステル未延伸糸を得た。これを延伸領域前に交絡処理を行い、延伸温度80℃、熱処理温度130℃、延伸倍率1.34倍で不均一延伸し、84デシテックス、36フィラメントのポリエステル太細糸を得た。得られた太細糸のU%は5.0%、沸水収縮率は7.5%、任意の繊維横断面における単糸断面積の標準偏差σは、39.5×10−12であった。
溶融紡糸工程においては、紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められず、また延伸時の糸切れもほとんどなく成形加工性の良好なポリマーであった。
この糸を27ゲージの靴下編機(英光産業(株)製)により筒編地を編成した。次いで、これを0.2%の非イオン性活性剤(グランアップCS、三洋化成(株)製)と0.2%のソーダ灰を含む沸騰水で5分間煮沸精錬し、水洗い、乾燥させた。この筒編地の染料吸尽率は62%であり、染色性良好であった。
さらにこの太細糸を製織して染色後、濃淡の分散度合い、布帛の風合いについて可能試験を実施し、4段階評価した。得られた布帛は濃淡のコントラストがマイルドで、適度なふくらみがあり、自然な杢調を表現できる素材として優れたものとなった。
実施例2〜12
金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分の共重合量、ポリエチレングリコールの重量平均分子量と共重合量を変更した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、紡糸、延伸、染色した。紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められず、色調、染色性ともに良好であった。さらに得られた太細糸を製織して染色後、濃淡の分散度合い、布帛の風合いについて可能試験を実施し、4段階評価した。得られた布帛は濃淡のコントラストがマイルドで、適度なふくらみがあり、自然な杢調を表現できる素材として優れたものとなった。
Figure 2007046185
実施例13〜23
酸化チタン粒子の含有量、触媒であるチタン化合物の含有量、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトの代わりにフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトを用いる点、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトの含有量を変更した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、紡糸、延伸、染色した。紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められず、色調、染色性ともに良好であった。さらに得られた太細糸を製織して染色後、濃淡の分散度合い、布帛の風合いについて可能試験を実施し、4段階評価した。得られた布帛は濃淡のコントラストがマイルドで、適度なふくらみがあり、自然な杢調を表現できる素材として優れたものとなった。
Figure 2007046185
実施例24〜36
金属換算で15ppmの三酸化アンチモン(住友金属鉱山社製)をチタン化合物と混合して添加する点、コバルト化合物、マンガン化合物、色調調整剤の種類と含有量を変更した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、紡糸、延伸、染色した。紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められず、色調、染色性ともに良好であった。さらに得られた太細糸を製織して染色後、濃淡の分散度合い、布帛の風合いについて可能試験を実施し、4段階評価した。得られた布帛は濃淡のコントラストがマイルドで、適度なふくらみがあり、自然な杢調を表現できる素材として優れたものとなった。
Figure 2007046185
実施例37〜45
触媒にクエン酸キレートチタン化合物とフェニルホスホン酸及びリン酸からなる触媒Bを用いた以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、紡糸、延伸、染色した。紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められず、色調、染色性ともに良好であった。さらに得られた太細糸を製織して染色後、濃淡の分散度合い、布帛の風合いについて可能試験を実施し、4段階評価した。得られた布帛は濃淡のコントラストがマイルドで、適度なふくらみがあり、自然な杢調を表現できる素材として優れたものとなった。
Figure 2007046185
実施例46〜54
触媒に乳酸キレートチタン化合物とリン酸からなる触媒Cを用いた以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、紡糸、延伸、染色した。紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められず、色調、染色性ともに良好であった。さらに得られた太細糸を製織して染色後、濃淡の分散度合い、布帛の風合いについて可能試験を実施し、4段階評価した。得られた布帛は濃淡のコントラストがマイルドで、適度なふくらみがあり、自然な杢調を表現できる素材として優れたものとなった。
Figure 2007046185
実施例55〜63
触媒に乳酸キレートチタン化合物とフェニルホスホン酸及びリン酸からなる触媒Dを用い、リン化合物1の添加量を変更した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、紡糸、延伸、染色した。紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められず、色調、染色性ともに良好であった。さらに得られた太細糸を製織して染色後、濃淡の分散度合い、布帛の風合いについて可能試験を実施し、4段階評価した。得られた布帛は濃淡のコントラストがマイルドで、適度なふくらみがあり、自然な杢調を表現できる素材として優れたものとなった。
Figure 2007046185
なお、表1〜6記載のリン化合物1とはビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(旭電化社製、アデカスタブPEP−36)であり、B1とは青系色調調整剤SOLVENT BLUE 104(クラリアント社製、Polysynthren Blue RBL)であり、表3〜6記載のR1とは赤系色調調整剤SOLVENT RED 135(クラリアント社製、Polysynthren Red GFP)であり、表2記載のリン化合物2とはフェニルホスファイト(Aldrich社製)であり、リン化合物3とはトリス(モノノニルフェニル)ホスファイト(Aldrich社製)、リン化合物4とはビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(旭電化社製、アデカスタブPEP24G)である。
なお、以下に触媒A〜Fの合成方法を記す。
触媒A.クエン酸キレートチタン化合物(リン酸混合)の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、リン酸の85重量/重量%水溶液(114g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量2.49重量%)。
触媒B.クエン酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)及びリン酸の85重量/重量%水溶液(39.9g、0.35モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量2.49重量%)。
触媒C.乳酸キレートチタン化合物(リン酸混合)の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、リン酸の85重量/重量%水溶液(114g、1.00モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量4.23重量%)。
触媒D.乳酸キレートチタン化合物(フェニルホスホン酸、リン酸混合)の合成方法
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。この混合溶液に対し、フェニルホスホン酸(158g、1.00モル)及びリン酸の85重量/重量%水溶液(39.9g、0.35モル)を加えることで、リン化合物を含有するチタン化合物を得た(P含有量5.71重量%)。
比較例1、2
金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分の共重合量を変更したこと以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、紡糸、延伸、染色した。
比較例1では紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められず、また色調良好であったが、得られた太細糸の染料吸尽率は25%と低く、得られた布帛も染色性に劣っており、自然な杢調感を得ることはできなかった。
一方、比較例2では染色性は優れていたものの、紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇が発生し、また延伸時の糸切れも頻発した。加えてb値が7.4と色調の劣った黄色いポリマーとなり、得られた布帛も、自然な杢調を有するものではなかった。
比較例3,4
ポリエチレングリコールの重量平均分子量を変更したこと以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、紡糸、延伸、染色した。
比較例3では紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められず、また色調良好であったが、得られた太細糸の染料吸尽率は19%と低く染色性に劣っており、得られた布帛も同様の結果となった。一方、比較例4では紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇が発生し、また延伸時の糸切れも頻発し、成形加工性に劣っていた。さらに得られた布帛についても自然な杢調感を得ることはできなかった。
比較例5、6
ポリエチレングリコールの共重合量を変更したこと以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、紡糸、延伸、染色した。
比較例5では紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められず、また色調も良好であったが、得られる太細糸の染料吸尽率は22%と低く染色性に劣っており、得られた布帛も染色性に劣る、自然な杢調を有するものではなかった。
一方、比較例6では染色性は優れていたものの、紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇が発生し、また延伸時の糸切れも頻発した。加えてb値が8.5と色調の劣った黄色いポリマーとなり、得られた布帛は自然な杢調を有するものではなかった。
比較例7、8
酸化チタン粒子の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、紡糸、延伸、染色した。
比較例7では紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められず、また色調も良好であったが、b値が10.2と色調の劣った非常に黄色いポリエステルとなった。また、得られた布帛も染色性に劣る、自然な杢調を有するものではなかった。一方、比較例8では色調に優れていたものの、紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇が発生し、また延伸時の糸切れも頻発し、成形加工性に劣っていた。
比較例9
触媒Aの代わりに三酸化アンチモン(住友金属鉱山社製)を、得られるポリエステルに対してアンチモン原子換算で334ppm、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトの代わりにリン酸を、得られるポリエステルに対してリン原子換算で26ppm添加し、色調調整剤を添加しないこと以外は実施例1と同様にして重合し、溶融紡糸を行った。触媒を変更しても重合反応性は良好に推移し得られるポリマーの色調も問題ないが、ポリマーの溶液ヘイズは3.4%と高く、紡糸時に口金汚れが認められ頻繁に糸切れが発生し、操業性に劣っていた。
なお、表7記載のリン化合物1とはビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(旭電化社製、アデカスタブPEP−36)であり、B1とは青系色調調整剤(クラリアント社製、Polysynthren Blue RBL)である。
比較例10
任意の繊維横断面の単糸断面積の標準偏差σを変更したこと以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、紡糸、延伸、染色した。
口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められず、また色調も良好であったが、得られた布帛は自然な杢調を有するものではなかった。
Figure 2007046185
定応力伸長領域伸度を説明するための強伸度曲線の概略図である。
符号の説明
A:定応力伸長領域伸度
B:破断伸度

Claims (14)

  1. 0.1〜10モル%の金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分と0.1〜5.0重量%の重量平均分子量400〜6000のポリオキシアルキレングリコール成分を共重合しており、酸化チタン粒子を0.1〜7.0重量%含有し、アンチモン化合物を含まないかあるいはポリエステルに対するアンチモン原子換算での含有量が30ppm以下であり、酸化チタン粒子とは別にチタン化合物とリン化合物を含有するポリエステルからなり、かつ任意の繊維横断面の単糸断面積の標準偏差をσとしたとき、σが35×10−12以上であることを特徴とするポリエステル太細糸。
  2. 置換基が下記化学式1〜5で表される官能基からなる群より選ばれる基であるチタン化合物であって、かつ少なくともカルボニル基またはカルボキシル基またはエステル基を含有するチタン化合物と、化学式6にて表される少なくとも1種のリン化合物を含有するポリエステルであることを特徴とする請求項1記載のポリエステル太細糸。
    Figure 2007046185
    (上記化学式1〜5中、R1〜R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基、アルコキシ基または水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基またはアミノ基を有する炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
    Figure 2007046185
    (上記化学式6中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。また、R2、R3はそれぞれ独立に、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。また、L+M+N=3であり、かつLは1〜3の整数、MおよびNは0〜2の整数である。)
  3. 化学式1〜3中、R1〜R3のうち少なくとも1つが、カルボニル基またはカルボキシル基またはエステル基を有する炭素数1〜30の炭化水素基であることを特徴とする請求項2記載のポリエステル太細糸。
  4. 化学式4のR1が、炭素数1〜30の炭化水素基もしくは、水酸基またはカルボニル基またはアセチル基またはカルボキシル基またはエステル基を有する炭素数1〜30の炭化水素基であることを特徴とする請求項2記載のポリエステル太細糸。
  5. 化学式6にて表されるリン化合物が、リン原子を含む6員環以上の環構造を有する化合物であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載のポリエステル太細糸。
  6. リン化合物が、下記化学式7にて表されるリン化合物であることを特徴とする請求項5記載のポリエステル太細糸。
    Figure 2007046185
    (上記化学式7中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。)
  7. チタン化合物をポリエステルに対するチタン原子換算で0.5〜150ppm(酸化チタン粒子のチタン原子含有は除く)、リン化合物をポリエステルに対するリン原子換算で0.1〜400ppm含有し、チタン化合物とリン化合物の比率が、チタン原子とリン原子のモル比率としてTi/P=0.1〜20であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項記載のポリエステル太細糸。
  8. マンガン化合物とコバルト化合物を含有するポリエステルであって、マンガン化合物をポリエステルに対するマンガン原子換算で1〜400ppm、コバルト化合物をコバルト原子換算で1〜400ppm含有し、マンガン化合物とリン化合物の比率が、マンガン原子とリン原子のモル比率としてMn/P=0.1〜200であることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項記載のポリエステル太細糸。
  9. 色調調整剤として青系調整剤および/または赤系調整剤を含有するポリエステルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のポリエステル太細糸。
  10. 色調調整剤とコバルト化合物の含有量が下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項9記載のポリエステル太細糸。
    2≦ CL+CO/10 ≦ 15 …式(1)
    [但し、式中のCLはポリエステルに対する色調調整剤の含有量(ppm)、COはポリエステルに対するコバルト原子換算でのコバルト化合物の含有量(ppm)を示す。]
  11. 色調調整剤が染料であり、そのCOLOR INDEX GENERIC NAMEが青系ではSOLVENT BLUE 104、SOLVENT BLUE 122,およびSOLVENT BLUE 45のうちの少なくとも1種、赤系ではSOLVENT RED 135、SOLVENT RED 111、およびSOLVENT RED 179のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項9または10記載のポリエステル太細糸。
  12. 色調が、ハンター値でそれぞれL値が50以上、a値が−5〜1、b値が−0.5〜7であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載のポリエステル太細糸。
  13. 沸水収縮率が2〜25%であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載のポリエステル太細糸。
  14. 糸ムラU%が3〜12%であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項記載のポリエステル太細糸。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010070878A (ja) * 2008-09-18 2010-04-02 Teijin Modern Yarn Co Ltd 太さ斑を有するポリエステルモノフィラメントおよびその製造方法および布帛および繊維製品

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