JP4370903B2 - カーボンナノチューブ設置基板 - Google Patents

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Description

これらの発明は、カーボンナノチューブを設置した基板に関し、特に、電界放出型電子源として有名なカーボンナノチューブ設置基板に関するものである。
カーボンナノチューブは、六角網目状炭素格子層(グラフェン)が一層及至数十層円筒状に巻かれた極細炭素繊維であり、その直径は1〜数十nm、長さは数〜数十μmである。カーボンナノチューブはそのアスペクト比(数千)により、特に、電子放出源として使用した場合に、カーボンナノチューブ先端の電界強度が強められることから、電界放出(フィールドエミッション)により電子が放出され易く、また、安定な結晶構造を有していて、熱的、化学的、機械的にも高い耐久性を有している。そこで、カーボンナノチューブは現在最も冷陰極電界放出型電子源として優れているとされている物質である。また、センサ素子や水素吸蔵体、複合材としての使用においても実用化が検討されている。
カーボンナノチューブを用いた基板の用途としては、次世代ディスプレーと期待されている電界放出型ディスプレー(FED)や蛍光表示管(VFD)、さらには電子顕微鏡やX線源、電子回折装置の電子銃などが考えられている。このうち、FEDは電子放出密度が低いものの、高い均一性が求められる。一方、VFDやその他の電子銃では、電子放出部の面積が数〜数十mm2と小さいこともあり、電子放出の均一性よりも、より低い電界強度にて所定の電流密度を得られることや、高い電流密度における耐久性の確保が求められている。
このうち、FED向けのカーボンナノチューブを用いた電子放出素子については国内外を問わず各社から均一性を高める技術や素子の形成方法等数多くの発明がなされている。
例えば、所定の粗さ曲線を有したカーボンナノチューブ表面層としたり、カーボンナノチューブを混合したペーストを塗布した後、層間剥離させ、焼成させたりすることで、巨視的に見て均一な電子放出分布と、それを得るための電圧を低く抑える技術が紹介されている。(特許文献1参照)
また、後加工によりカーボンナノチューブの配向、カーボンナノチューブの面積密度、凹凸の曲率の異なる領域を分布させることにより、電界放出に必要な電界強度、電子放出特性の均一性を制御し低電圧にて電子放出を行う電子放出源の技術が紹介されている。(特許文献2参照)
特開2003−16911 特開2003−45315
しかしながら、以上の発明はFEDをターゲットにしており、低電子放出密度における電子放出の均一性もしくは低電圧動作に主眼が置かれている。
通常の小型電子放出素子、特に電子顕微鏡やX線源、電子回析装置の電子銃は、小さい電極面積でFEDなどと比べると10倍以上高い電子放出密度が求められる代わりに、強い加速電圧を印加したり、レンズを設けたりすることもあり、電子放出の均一性をほとんど必要としない。前記の技術を用いて小さい電極面積の電子放出源を作製しても、前記用途に必要な電子放出量を得ようとした場合、高い電界強度が必要になり、印加電圧の高電圧化による周辺部品製造コスト、運転コストの増加、加えて、電子放出素子周辺の絶縁強化に伴う設計、製作費の増大が抑えられない。
さらに、カーボンナノチューブを設置した電子放出源の寿命(耐久性)は、電子放出密度に影響を受け、同一の電極の場合、電子放出密度が高いほど寿命が短くなる。理由としては、カーボンナノチューブと基材との接触抵抗(カーボンナノチューブの抵抗に比べ高い)によりジュール発熱が起こり、カーボンナノチューブを変質・分解しやすくなること、また、真空中に僅かに存在する気体分子と放出電子の衝突によるイオン数が放出電子数に比例して増大し、カーボンナノチューブに衝突する前記イオン数が増加することによりカーボンナノチューブがスパッタリングされることが挙げられる。
また、電子放出源以外の用途、たとえば、センサ基板や二次電池の電極として使用される場合においても、化学反応等により、僅かではあるが、徐々にカーボンナノチューブを変質・分解することにより前記電極の寿命が定まる。
いずれにせよ、上記カーボンナノチューブを設置した基板の長寿命化、特に基板の構造にて長寿命化を実現する技術は先例が少なく、さらに、大電流密度を有する電子放出基板の長寿命化については先例が無いのが実情である。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、高い耐久性を備えつつ高い放出密度の得られるカーボンナノチューブを備えた電子放出基板、センサや二次電池の電極等において高い耐久性を備えたカーボンナノチューブを備えた電極を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討の結果、以下のことを突き止めた。カーボンナノチューブを基板上に置いてこれを押付部材により基板に押し付けると、押付によって圧縮されて体積密度が増加するとともに個々のカーボンナノチューブが基板に平行な状態に配向する。次いで、この押付部材を引き離すと、押付によってアンカー効果で押付部材に貼付いていたカーボンナノチューブが押付部材に引張られて起立し、これにより表面積のカーボンナノチューブの体積密度が低下する。
一方、基板面近傍のカーボンナノチューブは体積密度の低下が少なく基板に平行な状態を維持したまま基板への接着機能を発揮する。そして、表面側のカーボンナノチューブは起立により優れた電子放出機能を発揮するため、簡便な方法で、高い耐久性を備えつつ高い電子放出密度の得られるカーボンナノチューブ設置基板の取得に成功した。
すなわち、本発明は、カーボンナノチューブを含む概ね炭素にて構成され、個々のカーボンナノチューブの配向が概ね開放空間に向いている第1の領域と、個々のカーボンナノチューブの配向が無秩序もしくは基板のカーボンナノチューブ取付面に概ね平行な第2の領域を備え、前記2つの領域が概ね層状に積層され、開放空間側に前記第1の領域がそして、カーボンナノチューブ被取付基板側に前記第2の領域が配置され、取り付けられているカーボンナノチューブ設置基板であって、カーボンナノチューブ集合体を基板に載せて、その上からカーボンナノチューブ押し付け手段により加圧し、次いでカーボンナノチューブ押し付け手段を基板から引離すことによって得られるカーボンナノチューブ設置基板と、カーボンナノチューブを含む概ね炭素にて構成され、カーボンナノチューブの体積密度が低い第1の領域と、カーボンナノチューブの体積密度が高い第2の領域を備え、前記2つの領域が概ね層状に積層され、開放空間側に前記第1の領域がそして、カーボンナノチューブ被取付基板側に前記第2の領域が配置され、取り付けられているカーボンナノチューブ設置基板であって、カーボンナノチューブ集合体を基板に載せて、その上からカーボンナノチューブ押し付け手段により加圧し、次いでカーボンナノチューブ押し付け手段を基板から引離すことによって得られるカーボンナノチューブ設置基板と、カーボンナノチューブを含む概ね炭素にて構成され、個々のカーボンナノチューブの配向が概ね開放空間に向いておりかつカーボンナノチューブの体積密度が低い第1の領域と、個々のカーボンナノチューブの配向が無秩序もしくは基板のカーボンナノチューブ取付面に概ね平行でかつカーボンナノチューブの体積密度が高い第2の領域を備え、前記2つの領域が概ね層状に積層され、開放空間側に前記第1の領域がそして、カーボンナノチューブ被取付基板側に前記第2の領域が配置され、取り付けられているカーボンナノチューブ設置基板であって、カーボンナノチューブ集合体を基板に載せて、その上からカーボンナノチューブ押し付け手段により加圧し、次いでカーボンナノチューブ押し付け手段を基板から引離すことによって得られるカーボンナノチューブ設置基板に関するものである。
本発明のカーボンナノチューブを備えた電極は、基材となる電極のカーボンナノチューブ取り付け面に取り付けられたカーボンナノチューブからなる付着物が第1の領域からなる層と第2の領域からなる層を有していることが特徴である。この2つの領域の作用としては、例えば電子放出源として使用した場合に第1の領域は、電界強度を高めたり、電子放出を行う領域であり、第2の領域は、初期は前記第1の領域の作用を行わないが、経時的に変化し、例えば第1の領域が消耗した場合に、第1の領域として再生し、寿命を高める効果がある。言い換えれば、初期の電極の動作は、第1の領域のみで行われ、第2の領域は寄与しないが、第1の領域が消耗するに従い、第2の領域の形態が第1の領域の形態に変化し、電極の動作を再生するということである。
しかしながら、電極の動作を持って、2つの領域が存在することを確認することは困難である。例えば、電子放出源を考えると、電極のカーボンナノチューブのうち開放空間に露出されている表面部分は、電子放出を行うもしくは電界強度を形状効果により高めていることは容易に想像つくが、表面より僅かの深さの位置に存在するカーボンナノチューブが、前記効果に寄与しているか否かを判別することはできない。
本発明は、以上の理由から計測可能な形態を指標に、前記作用に関する2つの領域を備えることにより、弁別を可能としている。
前記、ひとつの指標としてカーボンナノチューブの配向が挙げられる。たとえば、電子放出源として使用した場合に、カーボンナノチューブが開放空間に向け配向されている場合の電子放出特性(所定の電子放出量を得るために必要な平均電界強度)に比べ、カーボンナノチューブが基材表面に平行に付着している場合の電子放出特性が劣るのは良く知られていることである。よって、基材表面から見て開放空間側に、概ね開放空間に向けて配向されているカーボンナノチューブより構成される層状の第1の領域、基材表面側に、前記第1の領域と配向が異なる、より具体的には、無秩序に配向されている。もしくは、基材表面と概ね平行に配向されている概ね層状の第2の領域を備えることにより、前述各々別の作用を有する2つの領域を持った基板を実現できる。なお、第2の領域には経時的に第1の領域に変化することを先に述べてあるが、カーボンナノチューブの配向で考えると、まず動作開始初期は、第1の領域に損傷はなく、比較的低い平均電界強度にて、所定の電子放出量を得ることができる。この際、通電や、電子放出、さらに放出電子により作り出されるイオンの衝突により、カーボンナノチューブにエネルギーが与えられ、個々のカーボンナノチューブ間の吸引力(主にファンデルワース力による)に打ち勝ち、ある確率で第2の領域のカーボンナノチューブの配向が僅かに変化する。しかしながら、前記第2の領域のカーボンナノチューブを開放空間に向けるまでの作用が無い。ここで、時間とともに第1の領域が熱的あるいは化学的、物理的に損傷を受け昇華、飛散し、電子放出源としての機能を失う、もしくは低下した場合、所定の電子放出量を確保するためには、平均電界強度を上昇させる必要がある。この平均電界強度の上昇により、イオンの衝突によるエネルギが増大するだけでなく、個々のカーボンナノチューブに加わる静電力(静電力∝カーボンナノチューブの局所電界強度∝平均電界強度)も増加する。この静電力は開放空間に向けた基材表面と垂直な方向に働くため、カーボンナノチューブはこの静電力により開放空間側に配向される。当然のことながら、この静電力の大きさは個々のカーボンナノチューブに加わる局所電界強度に依存することから、前述した、電子放出により加えられたエネルギにより、僅かに配向が開放空間側に向けられ、局所電界強度の高められたカーボンナノチューブに対して優先的に作用する。また、表面に露出していないカーボンナノチューブは、イオン衝突によるエネルギの供給がないだけでなく、局所電界強度も低いことから、前述効果は表面に配置されたカーボンナノチューブに対してのみ作用する。このため、第1の領域の損傷に応じ第2の領域の表面付近が第1の領域に変化し、常に電子放出機能を維持する、いわゆる再生を行うことが可能となる。
なお、本発明でいう第1の領域と第2の領域は連続しているため境界は無く、例えば表面近傍の配向と、基材付着部分での配向に明らかな差があることのみを意味する。また、概ね層状という表現も、前記明瞭な境界が無く、また、
仮に境界を規定したとしても連続な面である必要は無く、基材表面から開放空間に向かうカーボンナノチューブ付着物の厚さ方向に、カーボンナノチューブの形態が変化しており、あたかも積層されているかの如く観察されることより、概ね層状の表現を用いている。
また、基材表面とカーボンナノチューブ接触部におけるカーボンナノチューの配向は、接触部における導電性に影響を与える。これは、一本のカーボンナノチューブが垂直に配向された場合、基材とは点接触になるのに対して、水平に配向された場合は線接触になることと、複数のカーボンナノチューブの平均的な配向がより基材表面に対し平行に向かうほど線接触を行うカーボンナノチューブの確率が増加することからも容易に想像つく。この接触部における導電性の向上は、カーボンナノチューブに供給する電流を大きくした場合に、接触部におけるジュール発熱を抑え、カーボンナノチューブを構成する炭素原子同士の結合力低下を抑制するため、熱的、化学的に耐久性を向上させる効果がある。
なお、第1の領域に関しては、縞状、島状、格子状等、微視的に見れば空隙が存在した形態でもよく、巨視的に見て層状の形態を有していれば良い。
また、別の指標としてカーボンナノチューブの密度を挙げることができる。基材表面に対しカーボンナノチューブが垂直に配向されている場合を考えると、カーボンナノチューブの密度が低い場合には、基材表面よりのカーボンナノチューブ高さに応じてカーボンナノチューブ先端の電界強度が高くなる。しかしながら、カーボンナノチューブの密度が高くなり、互いのカーボンナノチューブが接近すると、互いのカーボンナノチューブの電界に影響を与え、カーボンナノチューブ先端の電界強度を弱め合う。極端な例では、カーボンナノチューブが隙間無く隣接した状態で配置された場合、カーボンナノチューブ先端の電界強度はあたかも平滑な平面電極の電界強度と変らない値となる。このため、カーボンナノチューブの密度が低い第1の領域を開放空間側、密度が高い第2の領域を基材側に配置することにより、前述の2つの作用を有する層状の領域を得ることができる。この第2の領域も、前述の如く放出電子に起因するイオン衝突等のエネルギと電界による静電力により、表層の近い部分より、ある確率で開放空間側に配向される。この開放空間に配向されたカーボンナノチューブは、配向される時点で他のカーボンナノチューブに比べ高い静電力、言い換えれば高い局所電界が印加されているわけであり、当然のことながら、周辺のカーボンナノチューブの密度は低く、さらに、総じてカーボンナノチューブの密度が低い開放空間側に配向されることにより、第1の領域を構成するカーボンナノチューブへと変化する。表面に露出していないカーボンナノチューブの形態が変化しにくいことも、前述のとおりである。
また、基材表面とカーボンナノチューブ接触部におけるカーボンナノチューブの密度は、接触部における導電性に影響を与える。これは、基材表面と接するカーボンナノチューブの本数が密度に比例していることから、カーボンナノチューブより構成される付着物との実効接触面積が増加し、導電性を高めることができるからである。この接触部における導電性の向上は、カーボンナノチューブに供給する電流を大きくした場合に、接触部におけるジュール発熱を抑え、カーボンナノチューブを構成する炭素原子同士の結合力低下を抑制するため、熱的、化学的に耐久性を向上させる効果がある。
なお、第1の領域に関しては、概ね層状の概念には縞状、島状、格子状等、微視的に見れば空隙が存在した状態でもよく、巨視的に見て層状の形態を有していれば良い。
前記2つの指標は、互いに独立しており、また、各々独立した効果を有している。すなわち、前記2つの指標を併せ持つことにより、相乗効果にて、より大きな作用を発揮できる。
本発明のカーボンナノチューブ設置基板は、高い電流密度を確保しつつ、耐久性も高い、特に、大電流密度と高い耐久性を必要とする電子放出機器の提供を可能とするものである。
電極基材である基板の材質は、電極として機能するためにカーボンナノチューブに電力を提供できるように、基材のカーボンナノチューブ取付面が導電性を有していれば材質は問わないが、好ましくは、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属およびステンレス等の合金、さらには、金属やITO(錫ドープ酸化インジウム)等の導電性膜をコーティングした、ガラス、セラミクスが使用できる。基板の形状および寸法は特に制限がなく、カーボンナノチューブ設置基板の用途に応じて定められるが、基板の形状は通常は円柱である。基板の面取りは必須ではないが、円柱エッジ部の電界集中が強くなりすぎると、その部分のみ選択的にカーボンナノチューブが消耗するため、カーボンナノチューブ取付部はある程度均一な電界が印加されるようにするのが好ましい。基板のカーボンナノチューブ取付部表面の平滑度は、取り付けられるカーボンナノチューブが厚いため、#800番程度の湿式研磨を行うのみで充分である。
カーボンナノチューブにはシート状の集合体にしたものを用いることが好ましい。このカーボンナノチューブ集合体には本発明者らが先に開発したテープ状のものを用いることができる。このテープ状カーボンナノチューブ集合体は、アーク放電で炭素材料よりなる陰極上に形成させる際に、陰極と陽極の間を相対的に移動させることによって得られるものである。この他、粉末状カーボンナノチューブを圧縮成型したりすることで、同様の集合体を得ることもできる。但し、バインダ等の有機物や金属とカーボンナノチューブとを混練したものは、真空中のガス放出性や使用過程における電極の再生機能を妨げるため、好ましくない。また、集合体状のカーボンナノチューブの形状も特に制限は無いが、少なくとも電極基材のカーボンナノチューブ取付面より広い面積を有するほうが作業性の面で有利である。
このカーボンナノチューブ集合体は化学成分比で90%以上の炭素を含むものが好ましい。
これは、基板上に設置した後のカーボンナノチューブの第1の領域に不純物、特に有機物や高蒸気圧の物質を含んでいると、電子放出に伴うエネルギーもしくは放出電子に伴い生じるイオン衝突によるエネルギーにより、前記不純物が熱的、あるいは物理的に開放空間すなわち真空中に放出され、真空を汚染、例えば電極表面近傍の局所真空度を悪化させる。真空の汚染、特に電極近傍での局所真空度の悪化は、放出電子との衝突によるイオンをさらに増大させ、さらに放出ガスを増大させるという悪循環を引き起こす。この結果、ついには高い電流密度を伴った火花放電へと発展し、電極の損傷、特にカーボンナチューブの破壊、飛散を引き起こすだけでなく、最悪の場合、真空容器、電源等周辺装置の損傷も起こる。このため、電極、特に電子放出部には、不純物が少ないことがより好ましい。
また、第2に領域については、経時的に第1の領域に変化することからも、前記理由により不純物が少ない方がよく、さらに、低蒸気圧金属などの不純物がカーボナノチューブ同士を固定していると、イオン衝突やジュール発熱等のエネルギーのよってもカーボンナノチューブの配向に変化が起こらず、第1の領域に変化するという再生機能を損なう。
以上の様に、第1の領域、第2の領域に関わらず、不純物が少ない、言い換えればカーボンナノチューブの純度が高い方が望ましい。カーボンナノチューブは炭素原子から構成されているため、化学成分比で言えば、実質的に不純物の影響を無視しえる90%以上の炭素、より好ましくは95%以上の炭素より構成することで、高電子放出量を備えた電極を構成することができる。ここで、カーボンナノチューブはガス吸着性を示すが、電子放出源として使用する際、真空中で使用することから、これら吸着ガスは化学成分比から除外するが、例えば、電子線マイクロアナライザ等、真空中で化学分析を行う分析装置においても、吸着ガスの一部はカーボンナノチューブ表面に残存し、分析結果として表示されるために、実質的に不純物の影響を無視しえる炭素の成分比を90%以上もしくは95%以上としている。
さらに、カーボンナノチューブ集合体は構成比で50%以上カーボンナノチューブを含んでいることが好ましい。これは、たとえ化学成分比で、100%の炭素で構成されたとしても、カーボンナノチューブ以外の形態、例えば非結晶炭素、グラファイト、ダイアモンド等のみで構成された電極は、電子放出源としての性能は著しく劣る。電子放出源として作用させるためには、アスペクト比の高いカーボンナノチューブがより多く含まれている必要がある。また、特に非結晶質炭素は炭素原子同士の結合が弱いため、熱的、化学的、物理的に不安定(少なくともカーボンナノチューブに比べ)であり、分解や化学反応により飛散しやすい。さらに、これらカーボンナノチューブ以外の形態を持った炭素が多いと、カーボンナノチューブに被さるなどして、イオン衝突やジュール発熱に起因する第2の領域の配向変化を生じさせにくくなり、再生機能を損なう。しかしながら、個々のカーボンナノチューブ表面に付着している微量の熱炭素皮膜は、カーボンナノチューブ同士の吸引(主にファンデルワース力による)による、強い吸引力を有したバンドル化を防ぎ、第2の領域における僅かなカーボンナノチューブの配向変化を起こす確率を増加させることにより、電極の再生を促進させる効果を有し、かつ電子放出性能に悪影響を及ぼさないことから、付着物の50%以上、より望ましくは80%以上のカーボンナノチューブより構成されることで、高電子放出量を備えた電極を構成することができるからである。
また、カーボンナノチューブ集合体は、化学成分比およびカーボンナノチューブの構成比が一様であることが好ましい。これは、第1の領域と第2の領域が形成された後の、本発明の第2の領域は、経時的に第1の領域に変化することを前提にしているため、化学成分もしくはカーボンナノチューブの構成比は、実質上同一であることが望ましい。前述したように、第1の領域と第2の領域の明確な境界は存在しないため、構成する材料の化学成分比およびカーボンナノチューブの構成比が概ね一様にすることで高電子放出量を備えた電極を構成することができるからである。
さらに、カーボンナノチューブ集合体は、電極基材に取り付けた後に、10〜200μmの厚さを有することが必要である。これは、電子放出源に限らずセンサや二次電池等に使われるカーボンナノチューブを備えた電極は、熱的、化学的、物理的に攻撃を受け、僅かながらではあるがカーボンナノチューブが消耗する。本発明の様に再生機能を有している電極においては、電極としての寿命はカーボンナノチューブの厚さにほぼ比例することは容易に想像つく。このことにより、カーボンナノチューブの付着厚さは厚いほうが良いということになる。しかしながら、カーボンナノチューブを厚く付着させていくと、巨視的な表面の平滑度を確保しにくいだけでなく、電極を構成するカーボンナノチューブの消耗によって、さらに表面が荒れるといった局所的なカーボンナノチューブの消耗により、電極を厚くした割には寿命が短くなる。また、カーボンナノチューブの付着量を増加させることは、カーボンナノチューブが吸着、言い換えれば真空中にて放出するガス量も増加することから、電極使用前の熱処理等によるガス出しが長時間必要となり、実用的でない。このことから、本発明では、第1の領域と第2の領域を加えた総厚さの下限を、一般的に行われているスクリーン印刷や樹脂バインダ混合塗布の5μm以下に対して、充分寿命が長いと判断できる、10μm、より好ましくは20μmとし、上限を、前記実用的観点から200μm、より好ましくは100μmとしている。
本発明のカーボンナノチューブ集合体の第1の領域と第2の領域は、例えば図1に示す装置を用いて形成することができる。この装置は、電極基材である基板を固定する固定手段と、カーボンナノチューブ集合体を電極基材に押し付ける押付手段と、その際、押付手段とカーボンナノチューブの間に介在させるインサート材よりなっている。
固定手段は、電極基材である基板にカーボンナノチューブを押し付けたときに基板が動かなければ良く、基板が安定な形状のものならば平板でも良く、また万力等の治具を用いても構わない。
カーボンナノチューブ押付手段は、電極基材のカーボンナノチューブ取付面に平行な押付面を有し、かつ前記取付面に対して垂直な方向に上下動できる機構を備えたものである。この際、カーボンナノチューブ押付手段の面が回転せずに、すなわちカーボンナノチューブ取付面前面に対して、押し付ける以外の方向の力が働かないようにする必要がある。
インサート材は、必須ではないが、インサート材を押し付け毎に交換することで、カーボンナノチューブ押し付け手段の押し付け面の汚染を防ぐことが可能となる。具体的には、ゴムや樹脂、より具体的にはテフロン(登録商標)やポリエチレン、ポリエステル等の高分子シートや、紙、より具体的には薬包紙等表面が平滑な紙、およびアルミニウム、鉛、錫、インジウム、銅、銀、金等の金属箔が使用可能である。
カーボンナノチューブ設置基板の製作手順は、まず基板を固定手段に取り付ける。この際、カーボンナノチューブ取付面が上面となるようにセットする。カーボンナノチューブ取付面にカーボンナノチューブ集合体を載せる。このカーボンナノチューブ集合体の上にインサート材を載せ、その上からカーボンナノチューブ押し付け手段の押し付け面を当て、加圧する。この際、カーボンナノチューブ集合体は圧縮され、体積密度が増加する。すると、カーボンナノチューブ集合体を構成する個々のカーボンナノチューブ同士が接近し、主にファンデルワース力による吸引を発生する。また、個々のカーボンナノチューブの配向も、ほぼ基板カーボンナノチューブ取付面に平行な状態で配向される。この状態でカーボンナノチューブ押し付け手段の押し付け面を基板から離すと、インサート材はカーボンナノチューブ押し付け手段の押し面へのアンカー効果(くさび効果)にて、押し付け面に貼り付いた状態で剥がれる。一方カーボンナノチューブ集合体を形成する個々のカーボンナノチューブのうち基板カーボンナノチューブ取付面に近いものは、押し付けの際生じた主にファンデルワース力による吸引力により固定されるため、押し付けられた状態を維持する。しかしながらインサート材側のカーボンナノチューブは、まず表面のカーボンナノチューブがインサート材にめり込み剥がされるので、開放空間側に引っ張られる。また、前記開放空間側に引っ張られたカーボンナノチューブと絡んでいる、もしくは接触している他のカーボンナノチューブも、真綿を引き千切るが如く、前記開放空間側に引っ張られたカーボンナノチューブにより開放空間側に引っ張られる。これにより、図2に示すように、開放空間に近い側のカーボンナノチューブは、開放空間に概ね配向され、また、密度も電極基材カーボンナノチューブに取付面に近いカーボンナノチューブに比べ粗となる。なお、カーボンナノチューブの長さは高々数十〜数百μmであるので、カーボンナノチューブ表面は微小な凹凸を有した状態となる。また、カーボンナノチューブと基板の接合は、主にファンデルワールス力によるものと考えられるが、カーボンナノチューブ単体の強度(硬度)はステンレス等の基板よりも硬く、一部カーボンナノチューブが基板表面にめり込んでいることも考えられる。いずれにせよ、接着剤やバインダ等を用いずに十分な強度を有して、電極基材である基板にカーボンナノチューブを取り付けることができる。
こうして得られたカーボンナノチューブ設置基板の第1の領域は表面の凹凸に寄与する。カーボンナノチューブ設置基板の表面に凹凸を形成することにより、表面の電界強度に強弱を持たせることが可能である。言い換えれば、表面の凹凸形成に寄与する領域は、電子放出または表面の電界強度増大に寄与する第1の領域であり、表面の凹凸形成に寄与しない領域は第2の領域であるので、前述の2つの作用を持つ層状の領域を備えた電極を形成することが可能であり、また、前述の発明との相乗効果により、より大きな効果が発揮される。
なお、第1の領域に関しては、概ね層状の概念には縞状、島状、格子状等、微視的に見れば空隙が存在した形態でもよく、巨視的に見て層状の形態を有していれば良い。
また、この第1の領域は厚さが5μm以上であることが好ましい。特に本発明に関しては、第2の領域の厚さ、すなわち再生能力が寿命を決定することは明らかである。しかしながら、電子放出源としての性能(電子放出特性)を得るためには、第1の領域の厚さもある程度必要である。本発明における第1の領域は、カーボンナノチューブの配向、密度、凹凸であり、これらが、高い電子放出密度を得るためには、実質1〜2μ程度の厚さを有していれば良い。しかしながら、前述の様に第1の領域と第2の領域との境界は明確ではなく、第2の領域の表面と明確に弁別できる領域を持って第1の領域とするしかなく、この場合の第1の領域は弁別不能領域を考慮し、5μm程度の厚さを有していれば確実である。このことより、第1の領域の厚さを5μm以上とすることにより、良好な電子放出特性を確保しつつ、高い耐久性を持った電子放出基板を構成することができる。
前述の第1の領域および第2の領域は、各々の領域の面積方向において均一性を有しているほうが、電子放出分布および局所消耗に対する耐久性の面でも有利である。ここでいう均一性は前述した、配向性、密度、マクロ的な凹凸に関するものである。ここで、均一性を確保するために、第1の領域と第2の領域から成る部分と第2の領域からのみなる部分を、平面的に微細パターン状もしくは微細に分散させることが有効である。なお前述のとおり、第1の領域は概ね層状を成しているが、微視的に見れば縞状、島状、格子状などのパターン化された形態もあり、微視的に見た第1の領域の形状が平面的にパターン化された形状を有することになり、均一な電子放出特性を確保しつつ、高い耐久性を持った電子放出基板を構成することができる。
前述の第2の領域のカーボンナノチューブは、電極基材表面のカーボンナノチューブ取付面との接触面積が大きく、ファンデルワールス力などにより基板との接合強度が大きい。第1の領域を構成するカーボンナノチューブの一部は一端が第2に領域に埋まり、もう一方の端部が開放空間に向かっているものも存在する。結果として第1の領域のカーボンナノチューブは機械的、電気的に基板と強く接合されていることになり、電子放出特性ならびに耐久性が向上する。
基板にはSUS304製で直径5mm高さ8mmの円柱状電極基材を用い、カーボンナノチューブ取付面はC0.5の面取りを施してあるものを用いた。
カーボンナノチューブには、アーク放電法にて製造されるテープ状のカーボンナノチューブ集合体を用い。触媒等用いていないため化学成分比ほぼ100%炭素からなるものであり、また、電子顕微鏡観察によると、90%以上がカーボンナノチューブより構成されている。このカーボンナノチューブ集合体は、幅6mm、長さ10mm、厚さ200μmのものを使用した。
このテープ状カーボンナノチューブは次のようにして製作した。
陽極電極として、外径36mm、内径10mmの中空電極を用い、図9に示すように、解放空間(大気圧下・大気雰囲気中)にて中空電極内部の孔から陰極電極に向けて3%の水素を含むアルゴンガスを10リットル/分の流量送給しながら電流500A、電圧35V(アーク長約5mm)にて1分間アーク放電を行った。
図1に示す装置を用い、固定手段には厚さ20mmのSUS板に直径5mm深さ6mmの穴を開けたものを用いた。押付手段にはアルミニウム製棒の一端を研磨したものを用い、ガイドを使用して直線方向の上下運動が可能な様にしている。インサート材には厚さ1mmのテフロン(登録商標)シートを使用した。
固定手段に基板をカーボンナノチューブ取付面を上にして取り付け、その上にテープ状カーボンナノチューブを載せた。この上にインサート材のテフロン(登録商標)シートを載せ、その上から押付手段のアルミニウム製棒を下降させてカーボンナノチューブを基板に押し付けた。次いで、押付手段のアルミニウム棒を上昇させるとテフロン(登録商標)シートはアルミ棒の押付面にアンカー効果(くさび効果)で貼り付いた状態で上昇し、カーボンナノチューブ面から引離された。
こうして得られたカーボンナノチューブ設置基板はカーボンナノチューブが基板表面にしっかり接着しており、このカーボンナノチューブは、図2に示すよううに、カーボンナノチューブが開放空間に向かって配向している開放空間側の第1の領域と、カーボンナノチューブが無秩序あるいは基板表面に平行に配向している基板表面側の第2の領域よりなっていた。
電極表裏面観察
以上の様に作製した電極の、第1の領域であるカーボンナノチューブ表面を電子顕微鏡で観察した結果を図4に示す。表面に5〜20μmの細かな凹凸が確認され、また、凸部特に頂点部のカーボンナノチューブは開放空間側に配向されたものが多いことが確認された。また、カーボンナノチューブの集合密度も形態のものとは異なり、フワっとした疎な集合状態であることが確認できた。本実施例の場合、第2の領域については表面から観察することはできないが、例えば、電極基材をITO(錫ドープ酸化インジウム)をコーティングしたガラスに本実施例と同様の手法にてカーボンナノチューブを取り付けた電極を、電極基材側から観察するとカーボンナノチューブが圧縮された状態で密かに集合して、さらに、概電極基材と平行に配向されていることが確認できることからも、第2の領域が存在していることを確認できた。また、この際、カーボンナノチューブと電極基材との接触は、各カーボンナノチューブの側面が線接触していることが確認され、接触面積が大きく取られていることが確認された。
純度
本実施例に用いたテープ状カーボンナノチューブ集合体を、燃焼法にて炭素含有量を測定したところ、99%の炭素からなる集合体であることが確認できた。本実施例では、カーボンナノチューブの電極基材への取り付けにおいて、バインダ、接着剤、ろう材のような金属を用いておらず、取付工程にてカーボンナノチューブ集合体の純度が変化する要因は存在しない。このため、第1の領域、第2の領域共、純度95%の炭素から構成されていることが確認された。念のため、カーボンナノチューブ取付後の電極表面を蛍光X線分析にて元素分析を行ったところ、インサート材として用いた高分子は検出されず、97%以上が炭素から構成されていることを確認した。燃焼法と炭素含有量が異なるのは、水分や酸素、窒素等の吸着ガスによる影響と測定誤差によるものと考えている。いずれにせよ、第1の領域、第2の領域共、95%以上が炭素から構成されていることは確認できた。
また、カーボンナノチューブの構成比は電子顕微鏡観察からは、塊状の非結質炭素やグラファイトは確認されず、一見するとほぼ構成比100%のカーボンナノチューブ集合体の様に見えた。しかしながらより詳細に観察すると、各々カーボンナノチューブには、直径〜数nm程度の炭素微粒子、恐らくフラーレンやカーボンナノチューブに付着した熱炭素皮膜、カーボンナノオニオン等が付着しているのが観察された、これら、不純物である炭素微粒子の重量を想定することは非常に難しいが、電子顕微鏡観察画像や各々のカーボンナノチューブ、炭素微粒子の大きさから想像するに、カーボンナノチューブの構成比は少なくとも80%以上であった。
本実施例に使用したテープ状カーボンナノチューブ集合体は、もともとほぼ一様な化学成分比およびカーボンナノチューブ構成比を備えており、カーボンナノチューブ取付の工程で圧縮等があっても、当然、これら成分比および構成比は変化しないことから、本発明の電極は、第1の領域および第2の領域とも成分比および構成比が概一様であるということができる。
付着厚さ
また前記電極の、カーボンナノチューブ付着厚さを波長670nm、スポット径φ2μmの半導体レーザを用い、共焦点方式にて計測するレーザ変位計を用い測定したところ、図4に示すように、最大付着厚さは約120μm、凹凸差は約20μmであった。この、付着厚さおよび凹凸差は取り付け時における加圧条件と、使用するカーボンナノチューブ集合体の厚み、構成する各カーボンナノチューブの長さより種々選択できる。例えば、構成するカーボンナノチューブ繊維が短めのテープ状カーボンナノチューブ集合体を用い、同様に作られた別の電極のカーボンナノチューブ付着厚さを同様にして測定したところ、最大付着厚さ約50μm、凹凸差5μmのものも見られた。また、厚さの厚いテープ状カーボンナノチューブ集合体を用い、同様に作られた別の電極のカーボンナノチューブ付着厚さを同様にして測定したところ、最大付着厚さ約190μm、凹凸差20μmのものも見られた。このように種々テープ状カーボンナノチューブ集合体を用い、種々取付、特に押し付け条件を検討した結果、全体の付着厚さは10〜200μm、凹凸差は3〜80μm程度まで種々選ぶことが可能であった。
この凹凸を形成している部分を第1の領域とすれば、第2の領域の最大厚さは、全体の付着厚さから第1の領域の厚さを引いたものであるから、第2の領域の最大厚さは、全体の付着厚さ範囲を10〜200μmとすれば、5〜195μmの範囲を選ぶことができる。
電子放出特性
前述電極の電子放出特性を計測するために、10-7Pa台の高真空に排気した真空容器内にて、前述電極とこれに対向して配置された平板電極間に電界を印加して、この電界強度と電子放出電圧の関係を測定した。結果は図5に示すように、およそ2V/μmにて、10mA/cm2となり、50mA/cm2の電界密度にて使用することが充分可能であった。図6は、従来法による、カーボンナノチューブ粉末を有機バインダに混練したものを、電極基材表面に塗りつけた後に焼成した電子放出電極と、本発明の耐久性を比較したものであり、同一電流密度を得るために必要な平均電界強度の時間変化を示したものである。電極試用開始直後は、双方の電極ともほぼ同じ特性を示すが、時間が経過するに従い、従来法の電極のほうがより高い電界強度が必要となり、寿命が短いことが判る。さらに、従来法における必要電界強度が概ね二次関数的に上昇しているのに対し、本発明の電極は緩やかな直線的に上昇している。同一電流密度にて、各々の方法にて作られたカーボンナノチューブ設置電極共、表面のカーボンナノチューブにおいては同様な損傷、例えばイオン衝突によるスパッタリンを受けるはずであり、にもかかわらず、本発明の電極の方がより高い耐久性を示すのは、電子放出に寄与する第1の領域の損傷と同時に、第2の領域が第1の領域に変化する再生作用があるためと考えられる。
従来法による電極
図8は上記の従来法において製作されたカーボンナノチューブ設置電極基板の模式図を示したものである。この電極は、予めカーボンナノチューブ粉末を有機バインダに混練しておき、スクリーン印刷にて電極基材カーボンナノチューブ取付面に塗布したものを、約550度の焼成炉を用いバインダに炭化させたものである。有機バインダには溶剤等の蒸発部分が多く含まれているため、焼成に伴い体積が減少する。このため、塗布されたときに有機バインダに満たされた領域は有機バインダの炭化に伴い、空隙へと変化する。結果としてカーボンナノチューブは海綿状の、内部に微小な空隙を多く含んだ形態となって電極基材表面に付着していることとなる。なお、焼成された有機バインダは、一部カーボンナノチューブに付着し、多くは基材表面へ付着した状態で残留する。
このようにして作られた電極は、カーボンナノチューブの配向、密度が一様であり、また、電極基材との接合界面付近には、有機バインダの残留物により、カーボンナノチューブの構成比が著しく低い部分が存在する。
パターン化された表面を有するカーボンナノチューブ設置電極
図7はカーボンナノチューブ設置電極作製に関する、本発明の別の形態を示したものである。まず、前述のごとく、カーボンナノチューブ設置基板電極を製作する。この際、インサート材表面をより平滑にし、カーボンナノチューブ表面の凹凸が大きくならないようにする。次に、インサート材のカーボンナノチューブ接触面を予め機械加工やエッチングなどにより凹凸、開口などの微細なパターンを設けておき、再びカーボンナノチューブ押し付け手段を用い、押し付ける。これにより、カーボンナノチューブ表面は制御された微細なパターン形状を有する。この微細パターンを設ける方法としては、カーボンナノチューブ取付後に、電子銃などにいる電子照射、レーザ照射等によるパターン作製も使用できる。
このようにして作られた電極を電子放出源として使用した場合、微細パターンを有していない電極に比べ、電子放出が均一化し、結果として、カーボンナノチューブ取付物の局所消耗が抑えられ、耐久性および、電子放出分布の安定性が向上した。
前述のカーボンナノチューブ設置基板は、良好な電子放出特性、または、および均一性を確保しつつ、高い耐久性を兼ね備えているので、電界放出型電子源、特に高い電流密度や耐久性を必要とする、蛍光表示管や走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、電子銃等の電子源として使用できる。
前述の電子源を、電子源を備えた機器、たとえば蛍光表示管や走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、電子銃等に用いることで、機器の高い耐久性を確保することができる。
本発明のカーボンナノチューブ設置基板を製作する状態を示す側面断面図である。 本発明のカーボンナノチューブ設置基板の状態を示す側面図である。 本発明のカーボンナノチューブ設置基板第1斜線部分を上から見た電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例1で得られたカーボンナノチューブ設置基板のカーボンナノチューブ付着厚さを測定した結果を示すグラフである。 本発明の実施例1で得られたカーボンナノチューブ設置基板の電子放出特性を示すグラフである。 本発明の従来例で得られたカーボンナノチューブ設置基板の電子放出特性を示すグラフである。 本発明のカーボンナノチューブ設置基板を製作する別の例を示す工程図である。 従来のカーボンナノチューブ設置基板の状態を示す側面図である。 本発明の実施例で使用したテープ状カーボンナノチューブの製造方法の説明図である。

Claims (13)

  1. カーボンナノチューブを含む概ね炭素にて構成され、個々のカーボンナノチューブの配向が概ね開放空間に向いている第1の領域と、個々のカーボンナノチューブの配向が無秩序もしくは基板のカーボンナノチューブ取付面に概ね平行な第2の領域を備え、前記2つの領域が概ね層状に積層され、開放空間側に前記第1の領域がそして、カーボンナノチューブ被取付基板側に前記第2の領域が配置され、取り付けられているカーボンナノチューブ設置基板であって、カーボンナノチューブ集合体を基板に載せて、その上からカーボンナノチューブ押し付け手段により加圧し、次いでカーボンナノチューブ押し付け手段を基板から引離すことによって得られるカーボンナノチューブ設置基板
  2. カーボナノチューブを含む概ね炭素にて構成され、カーボンナノチューブの体積密度が低い第1の領域と、カーボンナノチューブの体積密度が高い第2の領域を備え、前記2つの領域が概ね層状に積層され、開放空間側に前記第1の領域がカーボンナノチューブ設置基板であって、カーボンナノチューブ集合体を基板に載せて、その上からカーボンナノチューブ押し付け手段により加圧し、次いでカーボンナノチューブ押し付け手段を基板から引離すことによって得られるカーボンナノチューブ設置基板
  3. カーボンナノチューブを含む概ね炭素にて構成され、個々のカーボンナノチューブの配向が概ね開放空間に向いておりかつカーボンナノチューブの体積密度が低い第1の領域と、個々のカーボンナノチューブの配向が無秩序もしくは基板のカーボンナノチューブ取付面に概ね平行でかつカーボンナノチューブの体積密度が高い第2の領域を備え、前記2つの領域が概ね層状に積層され、開放空間側に前記第1の領域がそして、カーボンナノチューブ被取付基板側に前記第2の領域が配置され、取り付けられているカーボンナノチューブ設置基板であって、カーボンナノチューブ集合体を基板に載せて、その上からカーボンナノチューブ押し付け手段により加圧し、次いでカーボンナノチューブ押し付け手段を基板から引離すことによって得られるカーボンナノチューブ設置基板
  4. 第1の領域が表面の凹凸形成に寄与し、第2の領域が凹凸形成に寄与しない請求項1及至3のいずれかに記載のカーボンナノチューブ設置基板
  5. 第2の領域が第1の領域と基板とを接着する役割を果たしている請求項1及至4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ設置基板
  6. 第1の領域および第2の領域の化学成分の90%以上が炭素である請求項1及至5のいずれかに記載のカーボンナノチューブ設置基板
  7. 第1の領域および第2の構成の50%以上がカーボンナノチューブである請求項1及至6のいずれかに記載のカーボンナノチューブ設置基板
  8. 第1の領域と第2の領域において、これらを構成する材料の化学成分比およびカーボンナノチューブの構成比が概ね一様であることを特徴とする請求項1及至7のいずれかに記載のカーボンナノチューブ設置基板
  9. 第1の領域と第2の領域を加えた厚さが10〜200μmであることを特徴とする請求項1及至8のいずれかに記載のカーボンナノチューブ設置基板
  10. 第1の領域の厚さが5μm以上であること特徴とする請求項1及至9のいずれかに記載のカーボンナノチューブ設置基板
  11. 前記第1の領域と前記第2の領域を有する部分と前記第2の領域のみからなる部分を、平面的に微細パターン状もしくは微細に分散させたことを特徴とする請求項1及至10のいずれかに記載のカーボンナノチューブ設置基板
  12. 前記請求項1及至11のいずれかに記載のカーボンナノチューブ設置基板を用いたことを特徴とする電界放出型電子源
  13. 前記請求項12に記載の電界放出電子源を用いた電子機器および装置
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