JP4369061B2 - セルラ無線通信システムにおけるハンドオーバの決定のための方法および装置 - Google Patents

セルラ無線通信システムにおけるハンドオーバの決定のための方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、セルラ無線通信に関し、詳細には、セルラ無線通信システム内でのハンドオーバを決定するための方法および手段に関する。
【0002】
(関連技術の説明)
「無線装置」によって意味するのは、モバイル/セルラ電話機、送受信機、ページャ、テレックス、電子ノートブック、内蔵無線を備えたラップトップ、通報機(communicator)、コンピュータ、ルータ、調整済みのマイクロチップ、または通信の手段として無線リンクを使用する任意の他の電子装置など、無線通信のための、すべての可搬および非可搬の装置である。これらの装置は、セルラ・ネットワーク、サテライト・ネットワークまたは小さなローカル・ネットワークなど、任意の型の無線通信システムで使用することができる。
【0003】
セルラ無線通信システムは、通常、音声通信およびデータ通信を複数の無線装置または加入者に対して提供するために使用される。
【0004】
セルラ無線通信システム、例えば、AMPS、NMT、D−AMPS、GSM、DECT、およびIS−95(CDMA)は、一般的に、1つまたは複数の無線装置と、1つまたは複数の基地局(例えば、基地局送受信機)と、1つまたは複数の基地局コントローラ(BSC)と、少なくとも1つの移動通信交換局(MSC)とを含む。通常のセルラ無線通信システムは、数百の基地局と、数千の無線装置と、複数の移動通信交換局とを含み得る。
【0005】
移動通信交換局およびそれと関連する複数の基地局が、一般的に、セルラ無線ネットワークを定義する。
【0006】
ある地理的区域をカバーするセルラ無線ネットワークは、通常、セルまたは領域、すなわち、地理的区域の部分に分割される。これらのセルは、通常、基地局と、この基地局がそれと通信している無線装置とを含む。無線装置がそれと通信している特定の基地局に関連するセルは、一般的に、在圏セル(serving cell)と呼ばれる。
【0007】
各セルは、それに割り当てられた1つまたは複数のボイス/データ・チャネルおよび/またはトラフィック・チャネル、ならびにいくつかの場合には、1つまたは複数の専用制御チャネルを有することになる。これらのチャネルは、そのセル内での基地局と無線装置との間の通信に使用する。例えば、GSMデジタル・セルラ無線ネットワークの通常のセルは、1つのデジタル制御チャネルおよび21個のボイス/データ・チャネルまたはトラフィック・チャネルを有する。
【0008】
「チャネル」は、アナログシステム、例えば、AMPSおよびNMT内での特定の搬送波周波数、ハイブリッドTDMA/FDMAシステム、例えばGSM内での特定の搬送波/スロット結合、およびCDMAシステム内での1つまたは複数の割当て済み符号を指し得ることに留意されたい。
【0009】
接続は、所定の通信チャネルを介して2つのポイント間で確立された通信パスである。
【0010】
在圏セル内での無線装置と基地局の間の接続を隣接セル内での新しい基地局に切り替える必要性が、無線装置の可動性およびそのチャネル上での低い無線品質のために発生し得る。接続、例えば、呼を1つのセルから別のセルに転送する処理は、ハンドオーバと呼ばれ、これは、すなわち、在圏セル内のチャネル上の通信を隣接セル内の別のチャネルに切り替えることである。ハンドオーバがそれ向けて行われることになる特定の隣接セルは、一般的に、目標セルと呼ばれる。
【0011】
今日、ハンドオーバを行う決定は、主にパワー・バジェット(power-budget)計算に基づいて行われ、最良の搬送波対雑音比(C/N)(最良のパワー・バジェット)を有するセルが、無線装置にサーブするように選択される。この測定は、多くの状況において十分ではない。今日のモバイル・ネットワークでの高い干渉レベル(C/I)のために、通信品質(例えば、ビット・エラー率)はC/Nのみによって推定することはできない。代わりに、ハンドオーバの決定をC/N(パワー・バジェット)の測定とBERとの組み合わせに基づいて行うことが必要不可欠である。
【0012】
セルに関するパワー・バジェットは、無線装置での受信信号強度、ならびに基地局での感度または受信信号強度および基地局内での受信機の感度から判定することができる。
【0013】
米国特許第5673307号には、セルラ・モバイル・システム内でのハンドオーバのための方法、システム、および装置が記載されている。モバイル装置が、現在の基地局および隣接基地局からのBERおよび信号強度を測定する。ハンドオーバは、隣接基地局からの測定信号強度が、現在の基地局からの測定信号強度よりも高いときに実行する。そうではない場合、BERを検査する。BERが、あるレベルより高い場合、低い信号強度ハンドオーバしきい値を選択し、BERが、前記レベルより低い場合、高い信号強度ハンドオーバしきい値を選択する。次に、隣接基地局からの信号強度が、この信号強度ハンドオーバしきい値より高い場合、ハンドオーバを実行する。
【0014】
欧州特許出願EP0530165には、セルラ・モバイル無線システム内での呼設定およびハンドオーバのための方法、システム、および装置が記載されている。現在の基地局および隣接基地局からの信号強度を測定する。隣接基地局からの信号強度が、現在の基地局からの信号強度よりも高い場合、ハンドオーバを実行する。BERを検査して、何らかのビット・エラーが存在する場合、カウンタを増分する。カウンタが、ある値に達した場合で、かつあるタイムアウト制限を超過していない場合、同一基地局内の新しいチャネルへのハンドオーバを実行する。BERがゼロに等しい場合、異なる基地局からの信号強度との新しい比較を実行して、新しい基地局、または同一基地局内の新しいチャネルのいずれかへのハンドオーバを行う。
【0015】
英国特許出願GB2297885には、セルラ・モバイル無線システム内でのチャネル推定のための方法および装置が記載されている。ある期間中の信号強度とBERの平均値を使用して、無線チャネル上での品質が低下しているかを推定する。その品質が低下していると推定される場合、チャネル変更要求を生成する。
【0016】
本明細書で見るとおり、これらの特許で開示される方法および手段は、本発明の方法および手段とは異なる型および構造のものである。
【0017】
(概要)
本発明は、ハンドオーバ手順に関連する問題に対処する。
【0018】
問題は、受信信号のみに基づき、接続の通信品質に関わらず、ハンドオーバが接続に対して実行されるときに発生する。
【0019】
前述の内容に照らして、本発明の主要な目的は、通信品質が、ハンドオーバ決定に対して大きな影響を有する、ハンドオーバを決定するための方法および手段を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、シフトする無線環境内での漸進的で柔軟なハンドオーバ実行のための方法および手段を提供することである。
【0021】
本発明による方法では、在圏セルおよび隣接セルに関するパワー・バジェットを計算する。次に、隣接セルに関するパワー・バジェットが、そのセルの通信品質によって判定された特定の品質調整値によって調整される。したがって、ハンドオーバ決定は、隣接セルの調整済みパワー・バジェットの値に依存する。
【0022】
この方法の一実施形態によれば、在圏セル内、および隣接セルからの信号強度を測定する。在圏セル内の通信品質も測定する。パワー・バジェットを計算して、これらのセルに関して、いくつかのランキング値を決定する。通信品質調整値を使用することによって、隣接セルに関する新しいランキング値を計算する。前記特定の隣接セルに関する新しいランキング値が、在圏セル内のランキング値を越える場合、ハンドオーバを実行することを決定する。
【0023】
本発明の方法は、請求項1に記載されるとおりに特徴づけられる。
【0024】
本発明による方法を利用するための構成は、請求項12に記載されるとおりに特徴づけられる。
【0025】
本発明の利点は、接続におけるいくつかの異なるレベルの劣悪な品質に対処することが可能なことである。
【0026】
別の利点は、無線装置に、最良の搬送波対雑音比を提供している基地局とだけでなく、最良の通信品質を提供する基地局と交信させて、接続の品質を向上させるのが可能なことである。
【0027】
さらに別の利点は、ハンドオーバの回数が低減され得ることである。
【0028】
さらに別の利点は、良好な通信品質を有する隣接セルが、初期のハンドオーバによって優先されることが可能であり、劣悪な通信品質を有する隣接セルは後続のハンドオーバによって回避され得ることである。
【0029】
(実施形態の詳細な説明)
本発明は、セルラ無線通信システム内におけるハンドオーバを決定するための方法および装置に関する。
【0030】
図1a、1bは、同一のセルラ無線通信システムにおける一般的なハンドオーバ・シナリオの例を図示している。
【0031】
ハンドオーバ前のシナリオを示す図1aでは、無線装置100が、第1セル102内の第1接続C1上で、第1基地局101(基地送受信局とも呼ばれるBTS)と通信を行っている。第1セル102は、したがって、在圏セル102と呼ばれる。第1隣接セル103および第2隣接セル104は、それぞれ、在圏セル102の隣に、それと部分的に重なり合って位置している。第1隣接セル103は、第2基地局105によってサーブされ、第2隣接セル104は、第3基地局107によってサーブされている。無線装置100は、在圏セル102内で、第1隣接セル103に向かって移動している。基地局101、105、107は、それぞれ、基地局コントローラBSC106に接続され、これが、ハンドオーバ決定および電力制御などの機能を制御する。BSC106は、他のBSCおよび/またはMSC(移動通信交換局または移動通信サービス交換局)に接続されることが可能である。BSC106は、無線装置100が、在圏セル102から第1隣接セル103に移動しているとき、ハンドオーバを実行するか、どのように実行するか、いつ実行するかを決定する。第1隣接セル103もまた、目標セルと呼ばれる。
【0032】
ハンドオーバの後のシナリオを示す図1bで、ハンドオーバが実行されており、無線装置100は、現在、第2接続C2を介して第2基地局105と通信を行っている。第1隣接セル103が、現在、無線装置100にたいする在圏セルになっている。
【0033】
前述のとおり、いつハンドオーバを実行するかを決定する一般的な解決法は、セルに関するパワー・バジェット(pbgt)を計算することである。パワー・バジェットは、一般的に、デシベル(dB)で与えられる値である。最良のパワー・バジェット(最高のパワー・バジェット値)を有するセルが、最良のセルであると考えられ、そのセルにサーブしている基地局が、したがって、無線装置と通信を行うべきである。2つのセルが同等のパワー・バジェットを有する境界は、パワー・バジェット・ハンドオーバ境界と呼ばれる。在圏セル102と隣接セル103の間のパワー・バジェット・ハンドオーバ境界108が、図1bに破線で図示されている。
【0034】
セルに関するパワー・バジェットは、アップリンク上、ダウンリンク上、またはアップリンク上とダウンリンク上の両方でのパワー・バジェットを計算することによって判定することができ、これは、当分野でよく知られている。パワー・バジェットをセル内のアップリンクとダウンリンクの両方に関して計算する場合、これらの2つのパワー・バジェットのうちの悪い方(低い方のパワー・バジェット値)をそのセルに関するパワー・バジェットとして選択するのが一般的である。ダウンリンク・パワー・バジェットの例は、pdgtdL=RSS(RU)−sens(RU)[dB]であり、ここで、RSS(RU)は、無線装置での受信信号強度であり、sens(RU)は、無線装置感度である。アップリンク・パワー・バジェットの例は、pdgtuL=RSS(BTS)−sens(BTS)[dB]であり、ここで、RSS(BTS)は、基地局での受信信号強度であり、sens(BTS)は、基地局内の受信機の感度である。基地局での受信信号強度RSS(BTS)は、基地局によって測定され得るか、あるいは無線装置での受信信号強度RSS(RU)から推定することができる。これは、当分野では、よく知られている。
【0035】
図2は、ハンドオーバ境界200でのパワー・バジェット特性を図示している。x軸が、在圏セル101と隣接セル103の間でのパワー・バジェット差Δpdgt=pdgt-pdgtSを表し、ここで、pdgtは、隣接セルのパワー・バジェットであり、pdgtは、在圏セルのパワー・バジェットである。y軸は、対数スケールで表されたBER(ビット・エラー率)を表す。ハンドオーバは、無線装置100が、パワー・バジェット・ハンドオーバ境界を横断し、隣接セルが、在圏セルよりも良好なパワー・バジェット(Δpdgt>0)を得るときに実行する。2つのセルの間で、前記セルの間に位置する無線装置に対するハンドオーバが行き来するのを防止するために、例えば、3dBのハンドオーバ・マージンを使用する。したがって、パワー・バジェット・ハンドオーバ境界200の特性は、図2で、右に3dB、移されている。
【0036】
下記の本発明の説明では、単純にするため、セルのパワー・バジェットに、それが、アップリンク上、ダウンリンク上、またはそれら両方のリンク上のうち、どれで計算されているかに関わらず、言及する。例として、在圏セル102に関するパワー・バジェット(pbgt)は、パワー・バジェットpbgtと呼ぶ。このパワー・バジェットは、ダウンリンク上で(pdgtdLとして)、アップリンク上で(pdgtuLとして)、あるいはこれら両方のリンク上で計算することができ、このため、在圏セルのパワー・バジェットpbgtは、pdgtuL>pdgtdLである場合、pdgtdLに等しく、pdgtuL<pdgtdLである場合、pdgtuLに等しい。同じことが、隣接セルのパワー・バジェット(pbgtNx)についても該当する。
【0037】
図3a、3bは、図1a、1bによるシナリオで実行した、本発明による方法の第1形態の流れ図を示している。
【0038】
図3aでのステップ301によれば、図1aの在圏セル102内のダウンリンク上での受信信号強度(RSSS(RU))が、無線装置100によって測定される。在圏セル102での受信信号強度は、別法として、図1aの基地局101によって、または無線装置と基地局の両方によって測定され得る。
【0039】
ステップ302によれば、各隣接セルからの受信信号強度(RSSNx)が、ダウンリンク上で測定される。RSSNxのxは、特定の隣接セル、例えば、第1隣接セル103としてのRSSN1を表す整数を代表している。無線装置100は、図1aの第1隣接セル103からの受信信号強度(RSSN1(RU))および図1aの第2隣接セルからの受信信号強度(RSSN2(RU))を測定する。
【0040】
ステップ303によれば、在圏セル102内のビット・エラー率(BER)が、測定される。無線装置100が、ダウンリンク上のビット・エラー率(BERS(RU))を測定し、第1基地局101が、アップリンク上のビット・エラー率(BERS(BTS))を測定する。
【0041】
ステップ304によれば、通信品質値(RxQual)が、アップリンク(RxQualS(BTS))とダウンリンク(RxQualS(RU))の両方に対して生成される。無線装置100は、ステップ303で測定したBERS(RU)を0から7の間の対数値に変換することによって、RxQualS(RU)値を生成する。第1基地局101が、同様の方式で、ステップ303で測定したBERS(BTS)からRxQualS(BTS)値を生成する。BER値を対数値に変換することは、当分野でよく知られている。
【0042】
ステップ305によれば、RSSS(RU)、RSSNx(RU)、RxQualS(RU)、RxQualS(BTS)のすべての値が、無線装置100および第1基地局101から図1aの基地局コントローラ(BSC)106に伝送される。
【0043】
ステップ306によれば、在圏セル102に関するパワー・バジェット(pdgt)が、BSC106によって計算される。在圏セル102に関するパワー・バジェットは、pdgt=RRS−sensである。BSC106は、在圏セルに関する通信品質ランキング値(RANK)を判定し、これは、在圏セルのパワー・バジェット値に等しい(RANK=pdgt)。
【0044】
ステップ307によれば、各隣接セルに関するパワー・バジェット(pdgtNx)が、BSC106内で計算される。隣接セルに関するパワー・バジェットは、pdgtNx=RRSNx−sensである。BSC106は、隣接セルに関する通信品質ランキング値(RANKNx)を決定し、これは、RANKNx=pdgtNxに設定される。このシナリオでは2つの隣接セルが存在する。したがって、第1ランキング値RANKN1が、第1隣接セル103に関して決定され、第2ランキング値RANKN2が、第2隣接セル104に関して決定される。
【0045】
ステップ308によれば、通信品質調整値(RxQualx(Adj))がdBで、各隣接セルごとにBSC106内で計算される。この通信品質調整値は、下記の調整アルゴリズムを用いて計算する。
RxQualx(Adj)=Cf(RxQual,RxQualNx)*f(t)−Cf(RxQual,U)*(f(t)−1)
この調整アルゴリズムは、一般的に、関与するセルおよび時間の第1関数f(t)に依存するアルゴリズムとして説明することができる。
【0046】
Cf(RxQual,RxQualNx)は、dBでの第1補償係数であり、これは、所定の通信品質補償表から導出する。下記の表1を参照されたい。
【0047】
Figure 0004369061
【0048】
Cf(RxQual,U)は、dBでの第2補償係数であり、これもまた、所定の通信品質補償表1から導出する。
【0049】
第1補償係数および第2補償係数を導出するのに使用するRxQual値は、ステップ304に従って生成したRxQualS(BTS)値およびRxQualS(RU)値のうちの高い方である。第1補償係数を導出するのに使用するRxQualNx値は、既知であるか、未知であるかのいずれかである。RxQualNx値は、特定のセルが、無線装置に対する在圏セルであった場合には、既知であり、これは、その特定のセルに関するRxQualS(RU)値およびRxQualS(BTS)値が、ステップ304に従って生成されていることを意味する。これら2つのRxQual値の高い方は、BSC106内のメモリ内に記憶して、これを隣接セル内での無線装置に関するRxQualNx値として使用できるようにする。記憶されるRxQual値は、所定時間Tstoredだけ記憶され、これは、この実施形態では、20秒である。この時間Tstoredは、第1関数f(t)に関連して下記に説明する時間Tに等しい。RxQualNxは、その特定のセルに関する古いRxQual値が、BSC106内のメモリ内に全く記憶されていない場合、未知(U)である。
【0050】
RxQualNxが既知である場合、表1内のRxQualNx列0〜7をRxQual値と併せて使用して、第1補償係数を導出する。例えば、RxQual=4かつRxQualNx=1である場合、第1補償係数は、表1により、+5dBである。
【0051】
RxQualNxが未知である場合、表1内のU列をRxQual値とともに使用して、第1補償係数を導出する。例えば、RxQual=5かつRxQualNxが未知である場合、第1補償係数は、表1により(列Uを参照)、+6dBである。表1内のU列は、第2補償係数Cf(RxQual,U)を導出するのに、常に使用する。例えば、RxQual=4である場合、第2補償係数は、表1により、+4dBである。
【0052】
時間t[0−>T]の第1関数f(t)は、1で開始して、所定時間Tの後、0まで減少する。第1関数は、例として、f(t)=1−t/Tであり得る。時間Tは、この実施形態では20秒であるが、無線環境に応じて、他の値に設定することができる。
【0053】
(f(t)−1)は、第1関数から1を引いたものであり、これは、それが0で開始して、所定時間Tの後、−1まで減少することを意味している。
【0054】
ステップ309によれば、新しい(調整した)通信品質ランキング値(RANKNx(new))が、ステップ308からのそれぞれのRxQualx(Adj)値を用いて、各隣接セルごとにBSC106内で計算される。この新しいランキング値は、下記のとおり計算する。RANKNx(new)=RANKNx+RxQualx(Adj)、ただし、RANKNxは、関与する隣接セルに関して、ステップ307で生成したRANKNx値、例えば、第1隣接セル103に関するRANKN1である。
【0055】
ステップ310によれば、ステップ306からのRANK値とハンドオーバ・マージン値(HM)の合計が、各隣接セルごとに、ステップ309で計算した新しいランキングRANKNx(new)値と比較される。これは、BSC106によって行われ、このシナリオでは、2つの隣接セル103、104のそれぞれに関して行われる。RANKNx(new)値のうちのどれかが、RANKとHMの合計を越えた場合、この方法は、ステップ311で継続する。越えなかった場合は、この方法は、ステップ301で継続する。2つのセル間のハンドオーバ境界上に位置するそれらの無線装置に対して、2つのセル間でハンドオーバが行き来するのを防止するため、HM値をRANKに追加する。このHM値は、既知の方式で決定する。この実施形態では、これは、3dBに設定する。
【0056】
ステップ311によれば、最高のRANKNx(new)値を有する隣接セル(Nセル)が、目標セル103として、BSC106によって選択される。図1bのシナリオによれば、第1隣接セル103が、目標セル103として選択される。したがって、このシナリオでは、RANKN1(new)>RANKN2(new)>RANK+HMである。
【0057】
これは、表1内の−4の補償係数が、ハンドオーバを遅延させ(RANKNx(new)を低減し)、表1内の+4の補償係数が、ハンドオーバを促進する(RANKNx(new)を増加する)ことを意味する。
【0058】
ステップ312によれば、BSC106が、ハンドオーバを目標セル103に向けて実行することを決定して、無線装置100および基地局101、105のそれぞれに、前記セル間でのハンドオーバを実行するように命令する。この方法は、ステップ301で継続する。
【0059】
表1内の補償係数は、本発明による方法で使用することができる1セットの補償係数の一例である。表1内の各補償係数の実際の値は、ネットワーク特性によって決定される。これらの補償係数は、あるセルについて固定する、無線通信システムによって定期的に更新される、またはBSC内に記憶されたいくつかの固定セットの補償係数のなかから選択することが可能である。
【0060】
図4aは、本発明による方法によって決定される第1ハンドオーバ境界401の特性を図示している。ハンドオーバ境界401の第1特性は、通信品質補償表1内のU列(未知のRxQualNx)にほぼ対応する。図1aでの在圏セル102の通信品質が、例えば、5(かなり悪い通信品質に対応する)である場合、無線装置100は、Δpbgtが−3dB(またはそれより高い)場合でも、ハンドオーバを実行することになる。これは、無線装置100が、在圏セル102の十分に中に入っていても、ハンドオーバを行うことを意味する(図2で示すパワー・バジェット特性200によれば、ハンドオーバは、Δpbgt=3で行われることになる)。在圏セル102の通信品質が、例えば、1(非常に良好な通信品質に対応する)である場合、無線装置は、Δpbgtが6dB(または、それより低い)場合に、ハンドオーバを実行することになる。これは、無線装置100が、隣接セル103の十分に中に入るまで、ハンドオーバ・ユニットを遅延することを意味している(図2で示すパワー・バジェット特性200によれば、ハンドオーバは、Δpbgt=3で行われることになる)。
【0061】
図4bは、本発明による方法によってそれぞれ決定される、3つの異なるハンドオーバ境界401〜403の特性を図示している。第1ハンドオーバ境界401の特性は、前述の図4aに関連して説明した。第2ハンドオーバ境界402の特性は、通信品質補償表1内のRxQualNx=5列にほぼ対応する。5というRxQualNxは、前に無線装置100にサーブしたとき、劣った通信品質を提供した隣接セルに対応する。隣接セル内での既知の悪い品質のため、第1ハンドオーバ境界401の特性と比較して、ハンドオーバは、より遅く(より高いΔpbgtで)実行されることになる。第3ハンドオーバ境界403の特性は、通信品質補償表1内のRxQualNx=0列にほぼ対応する。0というRxQualNxは、前に無線装置100にサーブしたとき、非常に良好な通信品質を提供した隣接セルに対応する。隣接セル内での既知の良好な品質のため、第1ハンドオーバ境界401の特性と比較して、ハンドオーバは、より早く(より低いΔpbgtで)実行されることになる。図4bで見たとおり、異なる通信品質を有する異なるハンドオーバ状況が、本発明による方法によって処理され得る。
【0062】
図5は、2つの基地局101、105、2つの隣接セル102、103、およびセル間のパワー・バジェット・ハンドオーバ境界108を有する、図1bと同じシナリオを図示している。実線500が、本発明による方法を使用することによって計算され、通信品質の点で最適化されている、2つのセル間のハンドオーバ境界を示している。この図で見られるとおり、ハンドオーバ境界500は、パワー・バジェット・ハンドオーバ境界108とは大きく異なっている。
【0063】
図6は、本発明による方法を利用するための通信システム600のブロック図を示している。通信システム600は、無線装置601と、基地局602(基地送受信局BTSともよばれる)と、基地局602に接続された基地局コントローラ603とを含む。基地局コントローラ603は、移動通信交換局(MSC)604に接続され、この移動通信交換局は、少なくとも1つの通信ネットワーク605、例えば、PSTNに接続されている。無線装置600および基地局602は、BERおよび受信信号強度を測定して、それらを図3aでのステップ301〜305に従って基地局コントローラ603に伝送するための既知の回路を含む。
【0064】
図7は、開示した方法を実行するための構成を含んだ基地局コントローラ603のブロック図を示し、また各方法ステップを実行するための装置を含んでいる。これらの装置は、ハードウェア構成要素、適切なソフトウェアによってプログラムされたコンピュータ、この2つの任意の組み合わせを使用して、または任意の他の方式で、各方法ステップを実行することができる。
【0065】
基地局コントローラ603は、計算装置701と、品質補償装置702と、セル選択装置703と、ハンドオーバ実行装置704と、メモリ705とを含む。計算装置701は、ステップ306および307に従って、パワー・バジェットを計算し、ステップ308および309に従って、新しいランキング値を計算する。計算装置701に接続された品質補償装置702は、ステップ306〜307に従って、すべてのセルのランキングを実行する。品質補償装置702に接続されたセル選択装置703は、ステップ310〜311に従って、どのセルが無線装置にサーブすべきかを選択する。計算装置701および品質補償装置701に接続されたメモリ装置702は、時間Tstoredの間、RxQual値を記憶する。セル選択装置703に接続されたハンドオーバ実行装置704は、ステップ312に従って、新しいセルへのハンドオーバを開始して、それを制御する。
【0066】
第1関数f(t)は、図1aでの在圏セル101内の無線装置100の速度vが既知である場合、第2関数f(t,v)によって置き換えられ得る。第2関数f(t,v)は、時間tおよび速度vの関数である。第2関数は、第1関数と同様に、1で開始して、0まで減少する。速度が高いとき、第2関数f(t,v)は、速度が低いときよりもより速く減少することになる。
【図面の簡単な説明】
【図1a】 ハンドオーバ前のセルラ無線通信システム内でのシナリオを示す図である。
【図1b】 ハンドオーバ後のセルラ無線通信システム内でのシナリオを示す図である。
【図2】 ハンドオーバ境界でのパワー・バジェット特性を示す図である。
【図3a】 本発明による方法の第1実施形態を示す流れ図である。
【図3b】 本発明による方法の第1実施形態を示す流れ図である。
【図4a】 本発明によるハンドオーバ境界での第1特性を示す図である。
【図4b】 本発明による3つの異なるハンドオーバ境界での3つの特性を示す図である。
【図5】 本発明によるハンドオーバ境界を有する図1bでのシナリオを示す図である。
【図6】 通信システムを示すブロック図である。
【図7】 基地局コントローラを示すブロック図である。

Claims (14)

  1. 無線通信システム内で、無線装置(100)と第1基地局(101)の間で確立された接続(C1)の、第2基地局(105)に向けてのハンドオーバを決定するための方法であって、前記第1基地局(101)が在圏セルをサーブし、かつ前記第2基地局(105)が隣接セル(103)をサーブしており、
    a)前記第1基地局(101)からの第1受信信号強度(RSS)を測定するステップ(301)と、
    b)前記第2基地局(105)からの第2受信信強度(RSSNx)を測定するステップ(302)と、
    c)少なくとも前記在圏セル(102)内における第1通信品質値(RXQUALS(RU))および第2通信品質値(RXQUALS(BTS))を測定するステップ(303)と、
    を有し、さらに、
    d)前記第1受信信号強度(RSS)から前記在圏セル(102)に関する第1パワー・バジェット(pbgt)を計算するステップ(306)と、
    e)前記第2受信信号強度(RSSNx)から前記隣接セル(103)に関する第2パワー・バジェット(pbgtNx)を計算するステップ(307)と、
    f)前記在圏セル(102)に関する第1ランキング値(RANK)を前記第1パワー・バジェット(pbgt)に基づいて決定し、前記隣接セル(103)に関する第2ランキング値(RANKNx)を前記第2パワー・バジェット(pbgtNx)に基づいて決定するステップ(306、307)と、
    g)前記隣接セル(103)に関する新しいランキング値(RANKNx(new))を前記第2ランキング値(RANKNx)から計算するステップ(309)と、
    h)前記新しいランキング値(RANKNx(new))が、前記第1ランキング値(RANK)を越えたかを判定して(310)、
    越えている場合、前記接続(C1)の前記第1基地局(101)から前記第2基地局(105)へのハンドオーバを実行するステップ(312)と、
    を有し、
    前記新しいランキング値(RANK Nx(new) )は、通信品質調整値(RxQual x(Adj) )を前記第2ランキング値(RANK Nx )に追加することによって計算される値であり(309)、
    前記通信品質調整値(RxQual x(Adj) )は、前記在圏セル内での2つの通信品質値(RXQUAL S(RU) 、RXQUAL S(BTS) )のうちの1つと、前記隣接セル(103)に関して以前に測定した記憶済みの通信品質値(RXQUAL Nx )とから計算される(308)
    ことを特徴とする方法。
  2. 前記通信品質調整値(RxQualx(Adj))は、前記在圏セル内での2つの通信品質値(RXQUALS(RU)、RXQUALS(BTS))のうちの1つと、前記隣接セル(103)に関する所定の通信品質値(U)とから計算される(308)ことを特徴とする請求項に記載の方法。
  3. 前記通信品質値(RXQUALS(RU)、RXQUALS(BTS)、RXQUALNx)は、ビット・エラー率(BER、BERNx)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記通信品質調整値(RxQualx(Adj))は、調整アルゴリズムを用いて計算される(308)ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記調整アルゴリズムは、第1補償係数(Cf(RxQual,RxQualNx))および第2補償係数(Cf(RxQual,U)を含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
  6. 前記補償係数(Cf(RxQual,RxQualNx)、Cf(RxQual,U))は、前記在圏セルに関するいくつかの異なる通信品質値(RXQUALS(RU)、RXQUALS(BTS))、および前記隣接セルに関する、対応する通信品質値(RxQualNx,U)に依存して前記補償係数を定義する少なくとも1つの表(表1)から導出されることを特徴とする請求項に記載の方法。
  7. 前記表(表1)内の前記補償係数(Cf(RxQual,RxQualNx)、Cf(RxQual,U))は、所定の間隔で更新されることを特徴とする請求項に記載の方法。
  8. 前記調整アルゴリズムは、1で開始して、所定時間(T)の後に0まで減少する時間の関数(f(t))をも含むことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記調整アルゴリズムは、1で開始して所定時間(T)の後に0まで減少し、かつ、速度(v)に依存する時間および速度の関数(f(t,v))をも含むことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記第1ランキング値(RANK)は、前記第1パワー・バジェット(pbgt)と同じ値に設定され、かつ、前記第2ランキング値(RANKNx)は、前記第2パワー・バジェット(pbgtNx)と同じ値に設定されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 無線通信システムにおいて、在圏セルと隣接セルの間でのハンドオーバを決定するための装置であって、
    前記在圏セルに関する第1パワー・バジェットおよび前記隣接セルに関する第2パワー・バジェットを、前記セル内で測定した受信信号強度に基づいて計算する手段(701)と、
    前記第1パワー・バジェットから第1ランキング値を決定し、前記第2パワー・バジェットから第2ランキング値を決定する手段(702)と、
    前記第2ランキング値および通信品質調整値(RxQualx(Adj))に基づいて、前記隣接セルに関する新しいランキング値を計算する手段(701)と、
    前記新しいランキング値が前記第1ランキング値を越えたかを判定し、前記隣接セルを目標セルとして選択する手段(703)と、
    前記目標セルに向けてハンドオーバを開始する手段(704)と、
    を有し、
    前記新しいランキング値(RANK Nx(new) )は、前記通信品質調整値(RxQual x(Adj) )を前記第2ランキング値(RANK Nx )に追加することによって計算される値であり(309)、
    前記通信品質調整値(RxQual x(Adj) )は、前記在圏セル内での2つの通信品質値(RXQUAL S(RU) 、RXQUAL S(BTS) )のうちの1つと、前記隣接セル(103)に関して以前に測定した記憶済みの通信品質値(RXQUAL Nx )とから計算される(308)
    ことを特徴とする装置。
  12. 前記通信品質調整値(RxQualx(Adj))は、前記在圏セル内および前記隣接セル内で測定した通信品質(RXQUAL、RXQUALNx、U)と、時間の関数(f(t))とに依存することを特徴とする請求項1に記載の装置。
  13. 前記在圏セルおよび前記隣接セルの前記通信品質の前記依存関係は、通信品質補償表(表1)内で定義されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  14. 前記時間の関数(f(t))は、1で開始して、所定時間(T)の後に0まで減少することを特徴とする請求項1または1に記載の装置。
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