JP4368936B2 - 転写dna結合部位を含む環状ダンベルデコイオリゴデオキシヌクレオチド(cdodn) - Google Patents

転写dna結合部位を含む環状ダンベルデコイオリゴデオキシヌクレオチド(cdodn) Download PDF

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本発明は、遺伝子治療分野の発明である。本発明は特に、新規のデコイオリゴデオキシヌクレオチドおよびその使用に関する。
転写因子の還元性トランス活性のための二本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ODNまたは「デコイ(decoy)」)は、遺伝子治療および遺伝子産物の機能研究のための、革新的かつ魅力的な戦略である。幾つかの異なった二本鎖DNA構造(非改変オリゴヌクレオチド二重鎖、脱アノマーオリゴヌクレオチド、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド二重鎖、およびダンベルオリゴヌクレオチドが挙げられる)が、転写因子のためのデコイとして、導入されている(Scholer HRおよびGruss P.,Cell 1984;36:403−411;Cereghini Setら,Genes Dev
1988;2:957−974;Berkowitz LAら,Mol Cell Biol 1989;9:4272−4281;Tanaka Hら,Nucleic Acids Res 1994;22:3069−3074;Bielinska Aら,Science 1990;250:997−1000;Clusel Cら,Nucleic Acids Res 1993;21:3405−3411;Lim CSら,Nucleic Acids Res 1997;25:575−581;Hosoya
Tら,FEBS Lett 1999;461:136−140;Mann MJおよびDzau VJ J.Clin.Invest.2000;106:1071−1075を、参照のこと)。
二本鎖シスエレメントデコイODNのトランスフェクションは、同配列の内在性シスエレメントからのトランス活性因子の隔離をもたらし、その結果、遺伝子発現の阻害をもたらす(Bielinska Aら,1990(前出);Morishita Rら1998(前出);およびSawa Y,Morishita R,Suzuki K.,Circulation 1997;96:II−280−II−285を、参照のこと).
さらに、NF−κB、c−myb、c−myc、cdc2、cdk2、E2F、およびCREに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはデコイオリゴヌクレオチドの投与は、悪液質を減少すること(Kawamura Iら,Gene Ther.1999;6:91−97)、実験的狭窄におけるインビトロの細胞増殖および内膜肥厚(Simons Mら,Nature 1992;359:67−73;Morishita Rら,J Clin Invest 1994;93:1458−1464;Morishita Rら,Proc Natl Acad Sci USA 1993;90:8474−8478;Morishita Rら,1995(前出); Morishita Rら,Nat Med 1997;3:894−899;Kaneda Y and Morishita R,Jpn J Clin Pathol 1997;45:99−105;Tomitaら,Am.J.Physiol.1998;275:F278−F284;Maeshima Yら,J.Clin.Invest.1998;101:2589−2597;Akimoto Mら,Exp Eye Res.1998;67:395−401;Mann MJら,Lancet,1999;354:1493−1498;Mann and Dzau 2000(前出);Kawauchi Mら,Circ.Res.2000;87:1063−1068;Mangi AA and Dzau VJ,Ann Med 2001;33:153−155;Ehsan Aら,J
Thorac Cardiovasc Surg 2001;121:714−722;Kawauchi Mら,Transplant.Proc.2001;33:451
;McCarthy M,Lancet,2001;358:1703を参照のこと)、増殖性胆管炎の抑制(Yoshida Mら,J.Surg.Res.2002;102:95−101)および癌モデルにおいて腫瘍増殖を遅くし、アポトーシスを誘導すること(Park YGら,J.Biol.Chem.1999;274:1573−80;Cho−Chung YSら,Mol.Cell.Biochem.2000;212:29−34;Alper Oら,Mol.Cell.Biochem.2001;218:55−63)が、それぞれ示されている。
非改変オリゴヌクレオチドODNの主な制限は、これらが血清中および細胞中のヌクレアーゼによって容易に分解されることである。この問題を解決するため、改変結合(例えば、ホスホロチオエートおよびメチルホスホネート)を有するオリゴヌクレオチドが、開発されている。しかし、これらの改変ODNは、RNase H に対する非反応性、細胞性DNA内への加水分解された改変ヌクレオチドの再利用の可能性、ODNベースの遺伝子治療の配列特異的結合効果の欠如、および免疫活性化などの問題点を示す(Moon
IJら,J Biol Chem.2000;275:4647−4653;Hosoya Tら,FEBS Letters 1999;461:136−140;Khaled Zら,Nucleic Acids Res 1996;24:737−775;Gao WYら,Mol Pharmacol 1992;41:223−229;Brown DAら,J Biol Chem 1994;269:26801−26805;およびBurgess TLら,Proc Natl Acad Sci USA 1995;92:4051−4055を参照のこと)。
近年、デコイが、転写因子に関連する疾患および障害(新内膜形成を含む)の処置のために提案されている。新内膜形成は、血管平滑筋細胞(VSMC)の過剰増殖および中膜から内膜への転移から生じ、これらは、アテローム性動脈硬化症および再狭窄(経皮的冠動脈形成術(PTCA)後の主要な問題である)の病因における、重要な工程である(Currier JW,およびFaxon DP.,J Am Coll Cardiol
1995;25:516−520;Clowes AW,ら,Lab Invest 1983;49:208−215;Liu MW,ら,Circulation 1989;79:1374−1387;Ross R.,Nature.1990;362:801−809;およびPauletto P,ら,Clin Sci.1994;87:467−479を、参照のこと)。
PTCA後の再狭窄の発生率および割合を減少するために、多くの薬物の試験が行われているが、結果は芳しくない。この十年にわたって、VSMC増殖に主眼を置いた抗遺伝子治療が、PTCA後の再狭窄を減少するための、可能性のある魅力的な戦略として、出現している(Simons M,ら,Nature 1992;359:67−73;Morishita R,ら,J Clin Invest 1994;93:1458−1464;Morishita R,ら,Proc Natl Acad Sci USA 1993;90:8474−8478;Morishita R,ら,Proc Natl Acad Sci USA 1995;92:5855−5859;Morishita R,ら,Nat Med 1997;3:894−899;Morishita Rら,Pharm.Ther.2001;91:105−114,Motokuni
Aら,Nippon Rinsho 2001;59:43−52を参照のこと)。
これまでの研究では、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)およびc−Jun NH−末端キナーゼ(JNK)(両方とも分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MAPK)ファミリーに属する)は、バルーン損傷後に、迅速かつ過渡的に活性化されることが見出されている(Ohashi N,ら,Arterioscler Thromb Vasc Biol.2000;20:2521−2526;Koyama H,ら,Ci
rc Res.1998;82:713−721;Hu Y,ら,Arterioscler Thromb Vasc Biol.1997;17:2808−2816;およびPyles JM,ら,Circ Res.1997;81:904−910を参照のこと)。
損傷した血管壁におけるERK2活性およびJNK1活性は、バルーン損傷後迅速に上昇し、損傷5分後に高レベルに達する。ERK2キナーゼ活性における持続的な上昇は、損傷後7日間にわたって動脈壁において、そして14日にわたって新内膜において、観察された。(Hu Y,ら,1997(前出);およびIzumi Y,ら,Circ Res.2001;88:1120−1126)。
JNKおよびERKは、核内に転座し、c−Junおよびc−Fos(二量体化し、転写因子複合体AP−1を形成する)を活性化することが公知である。AP−1は、多様な範囲の細胞増殖性応答(例えば、細胞外マトリックス産生)(Karin M.,J Biol Chem.1995;270:16483−16486;およびWhitmarch AJ,and Davis RJ.,J Mol Med.1996;74:589−607を参照)、アポトーシス(Le−Niculescu Hら,Mol.Cell.Biol.1999;19:751−763;Taimor G.ら,FASEB J.2001;15:2518−2520)、血管再形成(Morishita Rら,Biochem Biophys Res Commun 1998;243:361−367;Lauth M.ら,J Mol Med 2000;78:441−450;Wagner AH ら,Mol.Pharm.2000;58:1333−1340;Cattaruzza M.ら,J.Biol.Chem.2001;276:36999−37003)、COX−2媒介性炎症(Adderley,SRおよびFitzgerald DJ,J.Biol.Chem 1999;274:5038−5046;von Knethen Aら,Mol.Biol.Cell 1999;10:361−372;von Knethen Aら,J.Immunology 1999;163:2858−2866;Subbaramaiah Kら,J.Biol.Chem.2001;276:12449−12448)および1型プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター(PAI−1)の産生(Ahn JD.ら,Diabetologia 2001;44:713−720)TGF−β(Jin GおよびHowe PH,J.Biol.Chem.1997;272:26620−26626)およびIL−6(Viedt C ら,FASEB J 2000;14:2370−2372)に関連する多くの遺伝子の中に存在する、特定のDNA配列に結合する。
これらの結果は、AP−1結合が、血管損傷における血管平滑筋細胞増殖に関連し得ることを示唆する。しかし、AP−1結合の阻害が、新内膜形成を阻害するか否かは、知られていない。
近年の報告はまた、転写因子E2F(サイクリンA、cdk2、およびpRBと複合体を形成し、これらの細胞周期調節遺伝子を活性化およびリン酸化する)が、細胞成長および細胞増殖を維持するために重要であることを示している(Pagano Mら EMBO J 1992;11:961−971;Pardee AB.Proc Natl Acad Sci USA 1974;71:1286−1290;Weintraub
SJ,ら Nature 1992;358:259−261;Pagano MG,ら Science 1992;255:1144−1147;およびRosenblatt J,ら Proc Natl Acad Sci USA 1992;89:2824−2828)。
転写因子である核因子−κB(NFκB)は、サイトカインおよび接着分子遺伝子(虚
血および再灌流後の心筋障害に関連し得る)の協調的トランス活性化において、中心的な役割を果たす。NFκBに特異的なデコイは、転写因子に結合し、心筋の炎症を仲介する遺伝子の活性を阻害するためにインビボで使用され、従って、心筋炎症に対する効果的な治療を提供する(Morishita R.ら,Nat Med 1997 Aug;3(8):894−9)。
転写因子に関連する幾つかの疾患および障害に対して、成功したデコイの適用はあるが、上述の非改変オリゴヌクレオチドODNの、これらが血清中および細胞中に存在するヌクレアーゼによって容易に分解されるという主な制限は、これらの疾患および障害を処置しかつ予防する際の、デコイの有効性をかなり低下させる。
インビトロ研究において、共有結合的に閉じたODNが、これらの制限を克服する目的で、2つの相同な分子の酵素的な結合によってエキソヌクレアーゼ活性を避けるために、開発されている。酵素的結合による3’端および5’端の連結によってオリゴヌクレオチドを環状化して作製された、天然のDNAに似た非毒性非改変バックボーンを有する、環状ダンベルオリゴヌクレオチドは、エキソヌクレアーゼに対するより高い安定性を有し、化学改変直鎖状オリゴヌクレオチドと比較してより高い細胞内への取り込みを有していた(Chu BCFおよびOrgal L.,Nucleic Acids Res.1992;20:5857−5858;およびAbe T,ら,FEBS Lett.1998;425:91−96を参照のこと)。
しかし、このような共有結合的に閉じたODNまたは環状ダンベルオリゴヌクレオチドが、疾患または障害の処置または予防において有効であることを示す報告は、存在していない。
従って、本発明の目的は、転写因子に関連する疾患および障害を処置または予防するための、より効率的かつより有効な手段を、提供することである。
さらに、本発明の目的は、VSMCのトランスフェクションのための転写因子(例えば、AP−1)結合部位を含むデコイODNのような手段を提供することであり、この結合部位は、デコイを効果的にAP−1に結合させ、細胞増殖性応答に関連する不可欠な遺伝子のトランス活性化を防ぎ、そしてそれにより新内膜形成を阻害する。
従って、本発明の別の目的は、環状ダンベル構造(CDODN)を有する新規のAP−1デコイODNを提供し、バルーン損傷におけるAP−1活性化の役割を明らかにすることである。環状ダンベル構造(CDODN)を有するAP−1デコイODNは、センダイウイルス(HVJ)−リポソームを用いてトランスフェクトされ得る。この発明において、本発明者らは、CDODNの安定性および有効性を、インビトロおよびインビボで評価した。ここで、本発明者らは、AP−1活性化が、損傷への応答におけるVSMC増殖において重要な役割を果たすこと、およびバルーン損傷工程前のラット動脈への新規CDODNのトランスフェクションが、バルーン損傷したラット動脈における新内膜形成をほぼ完全に防ぐことを実証した。
本発明のさらなる目的は、血管形成術後の再狭窄についての新規の治療戦略を開発することであり、この戦略は、血管形成術の前、その間、またはその後に、有効量のCDODN AP−1デコイまたは他のAP−1阻害的化合物を、患者に投与する工程を包含する。
本発明のなおさらなる目的は、新規のE2Fデコイを提供することであり、この新規のE2Fデコイは、エキソヌクレアーゼ活性を避けるため、2つの相同なオリゴ分子の共有結合閉環によって作製される。本発明者らは、不可欠な細胞周期調節遺伝子のトランス活性化の際、ならびにVSMC増殖および新内膜形成の際の、この環状ダンベルE2Fデコイ(CD−E2F)の安定性および配列特異的阻害効果を調査した。
本発明のなおさらなる目的は、血管形成術後の再狭窄についての新規の治療戦略を開発することであり、この戦略は、血管形成術の前、その間、またはその後に、有効量のCD−E2Fデコイを、患者に投与する工程を包含する。
(発明の要旨)
本発明は、2つのループ構造および1つのステム構造を含む環状ダンベルオリゴデオキシヌクレオチド(CDODN)を提供し、このステム構造は、転写因子のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列を含む。本発明は、さらに、上記CDODNを含有する薬学的組成物を提供する。この薬学的組成物は、このような転写因子に関連する疾患または障害を処置および/または予防するために、使用され得る。本発明はまた、このような転写因子に関連する疾患および/または障害を処置または予防する方法を提供し、この方法は、治療有効量の2つのループ構造および1つのステム構造を備えたCDODNを被験体に投与する工程を包含し、ここで、このステム構造は、該転写因子のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列を含む。
好ましくは、この転写因子は、NFκB、STAT−1、GATA−3、STAT−6、AP−1、E2F、EtsおよびCREからなる群から選択される。好ましくは、NF−κBデコイは、配列5’−CCTTGAAGGGATTTCCCTCC−3’(配列番号9)を含み得る(NF−κBデコイ);STAT−1デコイは、配列5’−GATCTAGGGATTTCCGGGAAATGAAGCT−3’(配列番号10)を含み得る(STAT−1デコイ);GATA−3デコイは、配列5’−AGCTTGAGATAGAGCT−3’(配列番号11)を含み得る(GATA−3デコイ);STAT−6デコイは、配列5’−GATCAAGACCTTTTCCCAAGAAATCTAT−3’(配列番号12)を含み得る(STAT−6デコイ);AP−1デコイは、配列5’−AGCTTGTGAGTCAGAAGCT−3’(配列番号13)または5’−TGACTCA−3’を含み得る(AP−1 デコイ);etsデコイは、配列5’−AATTCACCGGAAGTATTCGA−3’(配列番号14)を含み得る(Etsデコイ);CREデコイは、配列5’−TGACGTCA−3’を含み得る(CREデコイ);およびE2Fデコイは、配列5’−TTTCGCGC−3’を含み得る(E2F デコイ)。
血管平滑筋細胞の過剰増殖および新内膜形成は、アテローム性動脈硬化症および経皮的血管形成術後の再狭窄の病因における重大な工程である。このような疾患および障害の処置または予防におけるAP−1のCDODNの有効性を示すため、以下の研究が行われ、転写因子AP−1は、これらの過程において重要な役割を果たすという本発明者らの仮説を試験し、そして血管形成後の再狭窄についての新規の治療戦略を開発した。全体的に、本発明者らの結果は、AP−1活性化は、血管損傷における平滑筋細胞増殖の媒介において、重要であることを示した。従って、本発明は、再狭窄を導く平滑筋細胞増殖に対する新規の戦略を提供する。
本発明者らは、エキソヌクレアーゼによる破壊を避けるために、環状ダンベル構造(CDODN)を有する新規のAP−1デコイODNを開発した。この新しい形態のAP−1デコイODNは、ホスホチオエート直鎖状デコイODN(PSODN)よりも、より安定で、エキソヌクレアーゼIIIまたは血清のどちらかの存在下でのインキュベーション後
、その構造的完全性を大いに保った。AP−1デコイODNのトランスフェクションは、血管平滑筋細胞の増殖および転移の両方を、強く阻害した。AP−1デコイODNはまた、PCNAおよびサイクリンAの、高濃度グルコース誘導性転写発現および血清誘導性転写発現も、阻害した。インビトロでのデータと一致して、センダイウイルス(HVJ)−リポソーム法を使用したAP−1デコイODNのインビボの投与は、ラット頚動脈のバルーン損傷後の新内膜形成を、ほぼ完全に阻害した。従来のPSODNと比較して、CDODNは、インビトロの平滑筋細胞の増殖阻害およびインビボの新内膜形成の阻害においてより効果的であった。PSODNと比較しておよそ半分の用量のCDODNが、インビトロおよびインビボの血管平滑筋細胞の増殖阻害において同様の結果を得るために、十分であった。その上、AP−1のCDODN結合の配列特異性は、予想外に、従来のPSODNよりも10倍以上高かった。
従って、本発明は、非常に効果的なHVJ−リポソーム送達法を用いた、AP−1に対しより安定なCDODNの使用は、ヒトにおいて、血管形成後の再狭窄の予防のための新規の治療戦略を提供することを、示す。
さらに、本発明は、細胞周期調節に関する幾つかの分子のトランス活性化において重要な役割を果たす、転写因子E2Fに関係する。先行研究は、E2F結合ドメインに対応するシスエレメント二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(デコイ)のトランスフェクションは、損傷した血管における血管平滑筋細胞(VSMC)増殖および新内膜肥厚を阻害し得ることを示している。本研究において、本発明者らは、環状ダンベル構造を有する新規のE2Fデコイ(CD−E2F)を開発し、そしてこのCD−E2Fの効果を、従来のホスホチオエート化E2Fデコイ(PS−E2F)と比較した。本発明者らは、CD−E2Fは、PS−E2Fよりも、より安定で、ヌクレアーゼまたは血清のどちらかの存在下でのインキュベーション後、その構造的完全性を大いに保った。CD−E2Fは、細胞周期調節遺伝子の高濃度グルコース誘導性転写発現および血清誘導性転写発現を、PS−E2Fと比較して、より強く阻害した。CD−E2Fのトランスフェクションは、VSMC増殖およびインビボの新内膜形成の阻害において、PS−E2Fと比較して、より効果的であった。PS−E2Fと比較して、40〜50%減少した用量のCD−E2Fが、インビトロのVSMC増殖阻害およびインビボの新内膜形成において同様の結果を得るために、十分であった。その上CD−E2Fは、予想外にも、PS−E2Fよりも10倍高いE2Fに対する配列特異性を示した。
結論として、本発明者らの結果は、例えば、血管形成後の再狭窄の処置において、CD−E2Fが、VSMC増殖を阻害する遺伝子治療(のため、そして転写調節の研究のために、従来のE2Fデコイより、価値の高い薬剤であることを示す。
(課題を解決するための手段)
本発明は、以下を提供する:
1.2つのループ構造および1つのステム構造を備える環状ダンベルオリゴデオキシヌクレオチド(CDODN)であって、このステム構造が、転写因子のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列を含む、環状ダンベルオリゴデオキシヌクレオチド。
2.上記転写因子が、NFκB、STAT−1、GATA−3、STAT−6、AP−1、E2F、EtsおよびCREからなる群から選択される、項目1に記載のCDODN。
3.酵素的結合によって共有結合する2つの相同なステムループ構造を有する、項目1に記載のCDODN。
4.いかなる化学改変されたヌクレオチドも含まない、項目1に記載のCDODN。
5.上記ステム構造が、2つ以上の転写因子のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列をさらに含む、項目1に記載のCDODN。
6.上記転写因子がAP−1である、項目1に記載のCDODN。
7.上記AP−1のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列が、5’−TGACTCA−3’である、項目6に記載のCDODN。
8.上記相同なステムループ構造のそれぞれが、配列番号3の配列を有する、項目6に記載のCDODN。
9.ステム構造が、別の転写因子のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列をさらに含む、項目6に記載のCDODN。
10.インビトロ競合結合アッセイで評価した場合に、配列番号4の配列を有するリン酸化オリゴヌクレオチドより、約5倍強いAP−1配列特異性を有する、項目6に記載のCDODN。
11.上記転写因子がE2Fである、項目1に記載のCDODN。
12.上記E2FのDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列が、5’−TTTCGCGC−3’である、項目11に記載のCDODN。
13.上記相同なステムループ構造のそれぞれが、配列番号6の配列を有する、項目11に記載のCDODN。
14.インビトロ競合結合アッセイで評価した場合に、配列番号7の配列を有するリン酸化オリゴヌクレオチドより、約5倍強いE2F配列特異性を有する、項目11に記載のCDODN。
15.上記転写因子がNFκBである、項目1に記載のCDODN。
16.被験体において、転写因子に関連する疾患または障害を処置または予防する方法であって、この方法は、治療有効量の2つのループ構造および1つのステム構造を備えたCDODNを被験体に投与する工程を包含し、ここで、このステム構造は、この転写因子のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列を含む、方法。
17.上記転写因子が、NFκB、STAT−1、GATA−3、STAT−6、AP−1、E2F、EtsおよびCREからなる群から選択される、項目16に記載の方法。
18.薬学的受容可能キャリアが、HVJ−リポソーム組成物である、項目16に記載の方法。
19.上記転写因子がAP−1である、項目16に記載の方法。
20.上記転写因子に関連する疾患または障害が、血管平滑筋細胞増殖または被験体における血管損傷後の新内膜過形成を含む、項目18に記載の方法。
21.被験体において、上記CDODNの量が、再狭窄を防ぐために十分である、項目19に記載の方法。
22.上記化合物が、血管損傷前に投与される、項目20に記載の方法。
23.上記転写因子がE2Fである、項目16に記載の方法。
24.上記疾患または障害が、血管平滑筋細胞増殖または被験体における血管損傷後の新内膜過形成を含む、項目23に記載の方法。
25.被験体において、上記治療有効量のCDODNが、被験体において再狭窄を防ぐために有効である、項目23に記載の方法。
26.上記CDODNが、血管損傷後に投与される、項目24に記載の方法。
27.上記転写因子がNFκBである、項目16に記載の方法。
28.上記疾患または障害が、炎症性腸疾患を含む、項目16に記載の方法。
29.被験体において、転写因子に関連する疾患または障害を処置または予防するための薬学的組成物であって、この薬学的組成物は、治療有効量の2つのループ構造および1つの該転写因子のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列を含むステム構造を備えたCDODN、ならびに薬学的受容可能キャリアを含有する、薬学的組成物。
30.上記転写因子が、NFκB、STAT−1、GATA−3、STAT−6、AP−1、E2F、EtsおよびCREからなる群から選択される、項目29に記載の薬学的組成物。
31.上記薬学的受容可能キャリアが、HVJ−リポソーム組成物である、項目29に記載の薬学的組成物。
32.上記転写因子がAP−1である、項目29に記載の薬学的組成物。
33.上記疾患または障害が、血管平滑筋細胞増殖または被験体における血管損傷後の新内膜過形成である、項目29に記載の薬学的組成物。
34.被験体において、上記CDODNの量が、再狭窄を防ぐために十分である、項目29に記載の薬学的組成物。
35.上記転写因子がE2Fである、項目29に記載の薬学的組成物。
36.上記疾患または障害が、血管平滑筋細胞増殖または被験体における血管損傷後の新内膜過形成である、項目35に記載の薬学的組成物。
37.被験体において、上記CDODNの量が、再狭窄を防ぐために十分である、項目36に記載の薬学的組成物。
38.上記転写因子がNFκBである、項目29に記載の薬学的組成物。
39.上記疾患または障害が、炎症性腸疾患を含む、項目29に記載の薬学的組成物。
40.被験体において転写因子に関連する疾患または障害を処置または予防するための医薬品の製造における、治療有効量の2つのループ構造および1つのステム構造を備えたCDODNの使用であって、ここで、このステム構造は、この転写因子のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列を含む、使用。
41.上記転写因子が、NFκB、STAT−1、GATA−3、STAT−6、AP−1、E2F、EtsおよびCREからなる群から選択される、項目40に記載の使用。
42.上記医薬品が、HVJ−リポソーム組成物の形態である、項目40に記載の使用。
43.上記転写因子がAP−1である、項目40に記載の使用。
44.上記疾患または障害が、血管平滑筋細胞増殖または被験体における血管損傷後の新内膜過形成である、項目43に記載の使用。
45.被験体において、上記CDODNの量が、再狭窄を防ぐために十分である、項目43に記載の使用。
46.上記転写因子がE2Fである、項目40に記載の使用。
47.上記疾患または障害が、血管平滑筋細胞増殖または被験体における血管損傷後の新内膜過形成である、項目46に記載の使用。
48.被験体において、上記治療有効量のCDODNが、被験体において再狭窄を防ぐために有効である、項目40に記載の使用。
49.上記転写因子がNFκBである、項目40に記載の使用。
50.上記疾患または障害が、炎症性腸疾患を含む、項目46に記載の使用。
本発明の別の局面において、本発明は、AP−1に関連する疾患または障害を処置する方法をさらに提供し、この方法は、治療有効量の、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼの遺伝子のAP−1によるトランス活性化を阻害し得る化合物、および薬学的受容可能キャリアを被験体に投与する工程を包含する。
さらに、本発明は、被験体において血管損傷後の血管平滑筋細胞増殖または新内膜肥厚を予防する方法を提供し、この方法は、治療有効量の、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼの遺伝子のAP−1によるトランス活性化を阻害し得る化合物、および薬学的受容可能キャリアを被験体に投与する工程を包含する。
本発明の1つの実施形態において、この化合物は、上記AP−1が上記遺伝子のプロモーターに結合する能力を、阻害し得る。
本発明の1つの実施形態において、この化合物は、抗体、または核酸もしくは核酸アナログである。
本発明の1つの実施形態において、この化合物は、AP−1のプロモーターへの結合を、競合的に阻害し得る。
本発明の好ましい実施形態において、この化合物は、2つのループ構造および1つのステム構造を備える環状ダンベルオリゴデオキシヌクレオチド(CDODN)であって、このステム構造は、AP−1のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列を含む。
本発明の1つの実施形態において、CDODNの量は、被験体において再狭窄を防ぐために十分であり得る。
本発明の1つの実施形態において、薬学的受容可能キャリアは、HVJ−リポソーム組成物であり得る。
本発明の別の局面において、本発明は、被験体において血管損傷後の血管平滑筋細胞増殖または新内膜肥厚を予防する薬学的組成物を提供し、この薬学的組成物は、治療有効量の、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼの遺伝子のAP−1によるトランス活性化を阻害し得る化合物、および薬学的受容可能キャリアを含有する。
本発明の1つの実施形態において、この化合物は、上記AP−1が上記遺伝子のプロモーターに結合する能力を、阻害し得る。
本発明の1つの実施形態において、この化合物は、抗体、または核酸もしくは核酸アナログである。
本発明の1つの実施形態において、この化合物は、AP−1のプロモーターへの結合を、競合的に阻害し得る。
本発明の好ましい実施形態において、この化合物は、2つのループ構造および1つのステム構造を備える環状ダンベルオリゴデオキシヌクレオチド(CDODN)であり得、このステム構造は、AP−1のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列を含む。
本発明の1つの実施形態において、CDODNの量は、被験体において再狭窄を防ぐために十分であり得る。
本発明の1つの実施形態において、薬学的受容可能キャリアは、HVJ−リポソーム組成物であり得る。
本発明の別の局面において、本発明は、被験体において血管損傷後の血管平滑筋細胞増殖または新内膜肥厚を予防する薬物の製造における、治療有効量の、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼの遺伝子のAP−1によるトランス活性化を阻害し得る化合物の使用を、提供する。
本発明の1つの実施形態において、この化合物は、上記AP−1が上記遺伝子のプロモーターに結合する能力を、阻害し得る。
本発明の1つの実施形態において、この化合物は、抗体、または核酸もしくは核酸アナログである。
本発明の1つの実施形態において、この化合物は、AP−1のプロモーターへの結合を、競合的に阻害し得る。
図1は、AP−1デコイODNの構造および分子安定性を示す。[A]AP−1デコイODNの構造。CDODNは、2つの共有結合した同一のステム−ループ分子から作製される。従って、CDODNは、そのステム領域にAP−1に対する2つの結合部位を有する。[B]エキソヌクレアーゼIII(左パネル)、S1ヌクレアーゼ(左パネル)、または血清(右パネル)の存在下でのデコイODNの安定性試験。ExoIII;エキソヌクレアーゼIIIで処理したデコイODN、S1;S1ヌクレアーゼで処理したデコイODN、CS;仔ウシ血清、D;CDODN、P;PSODN、L;連結前のCDODNのアニールした形態。 図2は、AP−1のDNA結合活性におけるCDODNの効果を示す。[A]競合アッセイ。種々の濃度の未標識オリゴヌクレオチドの存在下で、標識化プローブとAP−1タンパク質との間でAP−1複合体を形成させた。[B]AP−1デコイODNでトランスフェクトしたVSMCからのゲルシフトアッセイの代表例。この実験を5回繰り返した。NG;標準のグルコース(5.5mmol/l D−グルコース)と共に培養したVSMC、HG;高濃度グルコース(25mmol/l D−グルコース)と共に培養したVSMC、デコイODN;100nmol/lのAP−1デコイでトランスフェクトしたVSMC、P;PSODN、D;CDODN、M;ミスマッチAP−1デコイODN。EMSA結果の定量化を5回の独立の実験の平均値±SEMとして表した。NGと比較してp<0.001、HGと比較してp<0.01、§NG+10%血清と比較してp<0.001、HG+10%血清と比較してp<0.01。 図3は平滑筋細胞における遺伝子発現に対するCDODNの効果を示す。[A]細胞を、平滑筋にて高濃度グルコース条件下で、デコイODNとサイクリンAプロモーターの連続欠失体または変異体とを同時トランスフェクトした。pCA−266/+205と比較してp<0.001 pCA−133/+205と比較してp<0.001。[B]および[C]細胞を、デコイODN、とプラスミドAP1(PMA)−TA−Luc(B)またはpCA−266/+205(C)とを同時トランスフェクトした。デコイODNの活性は、ルシフェラーゼ活性をダウンレギュレートする能力に反映する。値は、β−ガタクトシダーゼ活性による正規化後の6回の独立した実験の平均値±SEMである。NGと比較してp<0.01、HG+10%血清と比較してp<0.01、HG+10%血清と比較してp<0.001、[D]代表的なノーザンブロット解析。サイクリンA(上のパネル)およびPCNA(下のパネル)の遺伝子発現をRASMC(左パネル)またはHVSMC(右パネル)のノーザンブロッティングによって測定した。N:正常なグルコース(5.5mmol/l D−グルコース)と共に培養したVSMC、H;高濃度グルコース(25mmol/l D−グルコース)と共に培養したVSMC、デコイODN;100nmol/lのAP−1デコイODNでトランスフェクトしたVSMC、P;PSODN、D;CDODN、M;ミスマッチAP−1デコイODN。 図4は、HVSMC(A)およびRASMC(B)における細胞増殖の阻害に対するCDODNの効果を示す。増殖活性は、6回の測定値の平均値±SEMである。HVSMC(C)およびRASMC(D)における細胞遊走に対するCDODNの効果。フィルターの低い方の表面上で、4つのランダムに選択した強拡(×400)場での平均細胞数を計数した。各実験を三連で行い、4回の独立した実験を行った。遊走活性は平均値±SEMである。N;正常なグルコース(5.5mmol/l D−グルコース)と共に培養したVSMC、H;高濃度グルコース(25mmol/l D−グルコース)と共に培養したVSMC、デコイODN:100nmol/lのAP−1デコイODNでトランスフェクトしたVSMC、P;PSODN、D;CDODN、M;ミスマッチAP−1デコイODN。NGと比較してp<0.01、HG+10%血清と比較してp<0.05、HG+10%血清と比較してp<0.01。 図5は、ラット頚動脈のバルーン損傷後の新内膜形成についてのAP−1デコイODNの効果を示す。(A)+(B)左総頚動脈の蛍光顕微鏡法:FITC−標識化ODNのみで処理した(A)か、またはHVJ−AVEリポソームを有するFITC−標識化ODNで処理した(B):(C)〜(G)コントロールラットの左総頚動脈の横断面(C)、バルーン損傷の14日後の左総頚動脈の横断面(D)、(E)〜(G)HVJ−AVEリポソーム法を用いてMODN(E)、PSODNで(F)、およびCDODNで(G)で処理したバルーン損傷の14日後の左総頚動脈の横断面。(H)AP−1デコイODNを含むHVJ−リポソームでトランスフェクトした群における左頚動脈の内膜領域/中膜領域の平均比。棒は、試験した動物の各群(n=10)からのバルーン損傷後の総頚動脈の新内膜/中膜比を表す。値は、平均値±SEMである。バルーン損傷した動脈と比較してp<0.01、PSODN処理した動脈と比較してp<0.05。 図6は、損傷した頚動脈における新内膜形成の阻害へのCDODN処理時点の効果を示す。(A)〜(E)コントロールラットの左総頚動脈の横断面(A)、バルーン損傷の14日後の左総頚動脈の横断面(B)、HVJ−AVEリポソーム法を使用してMODNの前処理をした左総頚動脈の横断面(C)、CDODNの前処理をした左総頚動脈の横断面(D)、およびCDODNの後処理をした左総頚動脈の横断面(E)。(F)AP−1デコイODNを含むHVJ−リポソームでトランスフェクトした群における左頚動脈の内膜領域/中膜領域の平均比。棒は、研究した動物の各群(n=10)からのバルーン損傷後の総頚動脈の新内膜/中膜比を表す。値は、平均値±SEM。バルーン損傷動脈と比較してp<0.005、CDODNで前処理した動脈と比較してp<0.01、CDODNで後処理した動脈と比較してp<0.01。 図7Aは、動脈抽出物におけるAP−1結合活性の分析を示す。損傷後に示された時点での頚動脈からの細胞の核抽出物を用いてゲル移動度シフトアッセイを行った(n=10)。バルーン損傷の前(CDODN前処理した)または後(CDODN後処理した)に、20μlのCDODNを含むHVJ−リポソーム複合体を室温にて管腔内で10分間インキュベートした。図7Bは、バルーン損傷後のラット頚動脈におけるPCNA発現を示す。コントロール血管のPCNA染色(1)、バルーン損傷した血管のPCNA染色(2)、MODNで前処理した動脈のPCNA染色(3)、CDODNで前処理した動脈のPCNA染色(4)およびCDODNで後処理した動脈のPCNA染色(5)。PCNA陽性細胞は、茶色がかった黒に見える。全ての図は、400×の拡大率である。 図8は、E2Fデコイの構造および分子安定性を示す。[A]CD−E2F分子を形成するために共有結合された2つの同一のステム−ループから構成されるE2Fデコイの構造。CD−E2Fは、そのステム領域上のE2Fに対する2つの結合部位からなる。[B]エキソヌクレアーゼIII(左パネル)、S1ヌクレアーゼ(左パネル)または血清(右パネル)の存在下でのデコイの安定性。略語:ExoIII;エキソヌクレアーゼIIIで処理したデコイ、S1:S1ヌクレアーゼで処理したデコイ、CS;仔ウシ血清、D;CD−E2F、P;PS−E2F、およびL;連結前のCD−E2Fのアニールした形態。 図9は、E2FのDNA結合活性についてのCD−E2Fの効果を示す。[A]種々の濃度の未標識のODNの存在下での標識化プローブとE2Fタンパク質との間に形成されるE2F複合体の量。[B]ゲルシフトアッセイの代表例をE2FデコイでトランスフェクトしたVSMCについて示す。この実験を6回繰り返した。略語:NG;正常のグルコース(5.5mmol/l D−グルコース)、HG;高濃度グルコース(25mmol/l D−グルコース)、デコイODN;100nmol/lのE2FデコイでトランスフェクトしたVSMC、P;PS−E2F、D;CD−E2F、およびM:M−E2F。EMSAの結果を5回の別の実験の平均値±SEMとして表す。統計的有意差を以下のように決定した:NGと比較してp<0.001、HG+10%血清と比較してp<0.01、PS−E2Fと比較してp<0.05。 図10は、平滑筋細胞における細胞周期関連遺伝子のプロモーター活性についてのCD−E2Fの効果を示す。(A)VSMCを、高濃度グルコース条件下で、デコイと、サイクリンAプロモーターの連続欠失体または変異体構築物とを同時トランスフェクトした。統計的有意差を以下のように決定した:pCA−266/+205と比較してp<0.01、pCA−133/+205と比較してp<0.01。VSMCを、デコイと、プラスミドpCA−266/+205(B)または[E2F]×4−Luc(C)とを同時トランスフェクトした。デコイの活性は、ルシフェラーゼ活性をダウンレギュレートする能力に反映される。値をβ−ガラクトシダーゼ活性の正規化後の5回の別の実験の平均値±SEMで表す。統計的有意差を以下のように決定した:NGと比較してp<0.01、HG+10%血清と比較してp<0.001、PS−E2Fと比較してp<0.05。略語:N:正常なグルコース(5.5mmol/l D−グルコース)と共に培養したVSMC、H;高濃度グルコース(25mmol/l D−グルコース)と共に培養したVSMC、デコイODN;100nmol/lのE2FのデコイでトランスフェクトしたVSMC、P;PS−E2F、D:CD−E2F、M;M−E2F。 図11は、VSMCにおける遺伝子発現についてのCD−E2Fの効果を示す。(A)代表的なノーザンブロット解析。RASMC(BおよびD)またはHVSMC(CおよびE)におけるサイクリンA(BおよびC)およびPCNA(DおよびE)の遺伝子発現を、濃度測定分析を用いて定量化した。略語:N;正常なグルコース(5.5mmol/l D−グルコース)と共に培養したVSMC、H;高濃度グルコース(25mmol/l D−グルコース)と共に培養したVSMC、デコイODN;100nmol/lのE2FデコイでトランスフェクトしたVSMC、P;PS−E2F、D;CD−E2F、M;M−E2F。値は、5回の別の実験の平均値±SEMを表す。統計的有意差を以下のように決定した:NGと比較してp<0.01、HG+10%血清と比較してp<0.01、##PS−E2Fと比較してp<0.05。 図12は、HVSMC(A)およびRASMC(B)における細胞増殖の阻害についてのCD−E2Fの効果を示す。増殖活性は6つの測定値の平均値±SEMである。デコイを平滑筋細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの2〜3日後、WST細胞計数キットを使用して細胞増殖の指数を決定した。統計的有意差を以下のように決定した:NGと比較してp<0.01、HG+10%血清と比較してp<0.01、および##PS−E2Fと比較してp<0.05。略語:N:正常なグルコース(5.5mmol/l D−グルコース)と共に培養したVSMC、H:高濃度グルコース(25mmol/l D−グルコース)と共に培養したVSMC、デコイODN;100nmol/lのE2FデコイでトランスフェクトしたVSMC、P;PS−E2F、D;CD−E2F、M;M−E2F。 ラット頚動脈におけるバルーン損傷後に生じる新内膜形成についてのE2Fデコイの効果。図は、FITC−標識化ODNのみ(A)か、またはHVJ−リポソームを有するFITC−標識化ODN(B)で処理した左総頚動脈の蛍光顕微鏡法を図示する。コントロールラットの左総頚動脈の横断面(C)、バルーン損傷の14日後の左総頚動脈の横断面(D)、HVJ−リポソーム法を使用してPS−E2Fを伴う、バルーン損傷の14日後の左総頚動脈の横断面(E)、HVJ−リポソーム法およびCD−E2Fを伴う左総頚動脈の横断面(F)、またはHVJ−リポソーム法およびM−E2Fを伴う左総頚動脈の横断面(G)を示す。E2Fデコイを含むHVJ−リポソームでトランスフェクトした群における左頚動脈の内膜領域/中膜領域の平均比を示す(H)。棒は、試験した動物の各群(n=10)からのバルーン損傷後の総頚動脈の、新内膜/中膜の比を表す。値は、平均値±SEMで表し、以下のように統計的有意差を決定した:バルーン損傷した動脈と比較してp<0.01、PS−E2F処理した動脈と比較してp<0.05。元の倍率の100×(AおよびB)および25×(C〜G)。スケールバーは、200μmを表す。 図14は、バルーン損傷後のラット頚動脈におけるPCNA発現を示す。コントロール血管(A)、バルーン損傷した血管(B)、M−E2Fで処理した動脈(C)、PS−E2Fで処理した動脈(D)およびCD−E2Fで処理した動脈(E)のPCNA染色。PCNA陽性細胞は、茶色がかった黒に見える。全ての図は、200×の拡大率である。スケールバーは、50μmを表す。
単数形の冠詞(例えば、英語において「a」、「an」、「the」など;ドイツ語において「ein」、「der」、「das」、「die」などおよびその活用形;フランス語において「un」、「une」、「la」、「le」など;他の言語においては、冠詞、形容詞、または任意の他の等価物など)は、他に言及されない限り、その複数形の概念を含むということが、本明細書全体にわたって理解されるべきである。また、本明細書中で使用される用語は、他に言及されない限り、当該分野で通常使用されている定義を有することも理解されるべきである。
他に明記しない限り、本発明の実施は、タンパク質化学、ウイルス免疫生物学、分子生物学および当該分野の技術の範囲内の組換えDNA技術の従来の方法を使用する。このような技術は、文献にて完全に例示される。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory,1989);およびF.M.Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates & Wiley Interscience New Yorkを参照のこと。
特に明記しない限り、本明細書中で使用される用語は、当該分野で使用されるものと同じ意味を有する。簡便のために、本明細書中、実施例および添付の特許請求の範囲で使用される用語をここに集める。
本明細書中で使用される場合、用語「動物」とは、哺乳動物をいう。好ましくは、哺乳動物はヒトなどの霊長類であり得る。同様に、本発明の方法によって処置される「患者」または「被験体」は、ヒトまたは非ヒト動物のいずれかを意味し得る。好ましくは、このような被験体または患者はヒトであり得る。
本明細書中で使用される場合、用語「デコイ」または「デコイ化合物」とは、AP−1もしくはE2Fのような転写因子する染色体の部位を模倣するか、または、転写調節因子が結合する、AP−1もしくはE2Fなどのような転写因子によって制御される遺伝子の染色体部位(本明細書中で後に、「標的結合部位」と称する)を模倣して、それによって染色体結合部位の転写因子への結合に競合する、化合物をいう。
本明細書中で使用される場合、「ダンベルデコイ」または「CDODN」とは、2本鎖ステム領域および2つのループ構造を有する環状のオリゴヌクレオチドをいう。このステム領域は、デコイとして働く配列を含む。好ましくは、CDODNは、2つの同一のステム−ループ構造の連結から形成される。
用語「ED50」とは、その最大応答または効果の50%を生じる薬物の量を意味する。用語「LD50」は、処置される集団の50%に対して致死的である薬物の量を意味する。
本発明の方法に関して、本発明の化合物(例えば、デコイ)または組成物の「有効量」は、E2FまたはAP−1に関連する疾患または障害を処置または予防するために有効な量をいう。本発明の方法に関して、本発明の化合物(例えば、デコイ)または組成物の「治療有効量」または「薬理学的有効量」とは、所望の薬理学的効果(例えば、処置される疾患または障害の緩和、治癒または発症の遅延)に十分な量をいう。
投与される量は、処置される被験体または処置される疾患もしくは障害を含む種々の因子に依存し、そして、好ましくは、このような量は、重大な副作用を伴わずに所望の効果が得られるように最適化されるべきである。このような量は、当業者によって決定され得
る。本発明の化合物または組成物の「有効量」、「治療有効量」または「薬理学的有効量」は、ED50および/またはLD50を用いて決定され得る。治療指数は、治療効果と毒性効果の間の用量比であり、ED50/LD50の比として表され得る。このような薬学的組成物が有する治療指数が大きいほど、より好ましい効果が得られ得る。ED50およびLD50の決定のために、細胞培養アッセイおよび動物実験が用いられ得、そこから得られたデータを用いて、ヒトへの用途のための用量範囲を外挿し得る。好ましくは、本発明は毒性効果がほとんどないか、または毒性効果がまったくない。このような用量は、投与の形態、被験体の感受性、投与経路などに依存して変化する。
用語「器官(臓器)」とは、組織の2つ以上の近接する層をいい、この組織の層は、細胞−細胞および/または細胞−マトリクス相互作用のいくつかの形態を維持して、微小構造を形成する。用語「組織」は、同様に特定化された細胞の集団または層をいい、一緒になってある特定化された機能を行う。
用語「異種」とは、核酸に関して使用される場合、核酸が自然状態においては互いに同じ関係性で見出されない、2つ以上のサブ配列を含むことを指す。例えば、この核酸は、代表的には組み替え的に作製され、新しい機能的な核酸を生じるように配置された無関係の遺伝子由来の2つ以上の配列を有する。例えば、1つの実施形態において、この核酸は、異なる遺伝子由来のコード配列の発現に向かうように配置された1つの遺伝子由来のプロモーターを有する。従って、このコード配列に関して、このプロモーターは異種性である。
2つの核酸またはポリペプチド配列の文脈において、用語「同一」とは、最大の一致で配置されたときに、同じである、2つの配列における残基をいう。配列同一性の割合がタンパク質またはペプチドに関して使用される場合、同一でない残ステム分は、保存的アミノ酸置換によってしばしば異なり、ここで、アミノ酸残基は、同様な化学特性(例えば、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基で置換され、従って、分子の機能的特性は変化しない。保存的置換において配列が異なる場合、配列同一性の割合は、置換基の保存的性質について補正するように上向きに調整され得る。この調整を行う手段は当業者に周知である。代表的には、この手段は、完全なミスマッチよりはむしろ、部分的なミスマッチとして保存的置換をスコア付け、それによって、配列同一性の割合を上昇させる工程を含む。従って、例えば、同一なアミノ酸が1のスコアを与えられ、非保存的置換が0のスコアを与えられる場合、保存的置換は、0〜1の間のスコアを与えられる。保存的置換のスコア付けは、例えば、MeyersおよびMiller,Computer Applic.Biol.Sci.,4:11−17(1988)のアルゴリズムに従って、 例えば、 プログラムPC/GENE(Intelligenetics,Mountain View,Calif.,USA)において実行されるように、計算される。
比較のための配列のアラインメントの方法は、当該分野で周知である。比較のための配列の最適な整列は、SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズム(SmithおよびWaterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482)によって;NeedlemanおよびWunschの相同性アラインメントアルゴリズム(NeedlemanおよびWunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443)によって:PearsonおよびLipmanの同様の方法についての検索(PearsonおよびLipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444)によって;これらのアルゴリズムのコンピュータ制御の実行(Intelligenetics,Mountain View,Calif.、GAP製のPC/GeneプログラムにおけるCLUSTAL、BESTFIT、FASTA、およびWisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group(GCG),575 Science D
r.,Madison,Wis.,USAにおけるTFASTAが挙げられるがこれらに限定されない)によって実行され得る。;CLUSTALプログラムは、HigginsおよびSharp(1988)Gene,73:237−244ならびにHigginsおよびSharp(1989)CABIOS 5:151−153;Corpetら(1988)Nucleic Acid Research 16,10881−90;Huangら(1992)Computer Applications in the Biosciences 8,155−65,ならびにPearsonら(1994)Methods in Molecular Biology 24,307−31によって十分に記載される。アラインメントはまた、しばしば、目視および手動の整列によって行われる。
サザンハイブリダイゼーションおよびノーザンハイブリダイゼーションのような核酸ハイブリダイゼーション実験の文脈において、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は、配列依存的であり、かつ、異なる環境パラメータ下において異なる。核酸のハイブリダイゼーションへの広範囲にわたる手引きは、Tijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Acid Probes part I chapter 2「overview of principles of Hybridization and
the strategy of nucleic acid probe assay」,Elsevier,N.Y.に見出される。一般に、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、所定のイオン強度およびpHにて特定の配列に対する熱融点(Tm)より約5℃低くなるように選択される。Tmは、(所定のイオン強度およびpH下で)標的配列の50%が、完全に適合するプローブにハイブリダイズする温度である。非常にストリンジェントな条件は、特定のプローブに対するTmと同じになるように選択される。
用語「核酸」とは、1本鎖または2本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーをいう。他に限定されないが、この用語は、DNAまたはRNAの公知の塩基アナログのいずれかを含むポリマー配列を包含し、これらの塩基アナログとしては以下が挙げられるがこれらに限定されない:4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシンおよび2,6−ジアミノプリン。
用語「遺伝子」とは、ポリペプチドまたは前駆体(例えば、c−myc)の産生に必須のコード配列を含む核酸(例えば、DNA)配列をいう。このポリペプチドは、全長ポリペプチドまたは活性フラグメントの所望の活性または機能的特性(例えば、酵素活性、リ
ガンド結合、シグナル伝達など)が保持される限り、全長のコード配列によってか、または任意の部分のコード配列によってコードされ得る。この用語はまた、構造遺伝子のコード領域を含み、いずれかの端の約1kb以上の距離で、5’末端および3’末端の両方のコード領域に近接して配置される配列を含み、その結果、遺伝子が全長mRNAの長さに対応する。コード領域の5’に位置し、かつmRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列と称される。コード領域の3’に位置し、かつmRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列と称される。用語「遺伝子」は、遺伝子のcDNAおよびゲノムの形態の両方を包含する。遺伝子のゲノム形態またはクローンは、「イントロン」または「干渉領域」または「干渉配列」と呼ばれる非コード領域によって中断されるコード領域を含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子のセグメントであり、イントロンは、エンハンサーのような調節エレメントを含み得る。イントロンは、核または最初の転写物から除去されるかまたは「スプライスアウト」される。従って、イントロンは、メッセンジャーRNA(mRNA)転写物に存在しない。mRNAは、翻訳の間に機能して、新生(nascent)ポリペプチドのアミノ酸の配列または順序を特定する。
本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子発現」は、遺伝子にコードされている遺伝情報を、遺伝子のRNAへの「転写」を介して(すなわち、RNAポリメラーゼの酵素作用を介して)、および、タンパク質をコードする遺伝子については、タンパク質へのmRNAの「翻訳」を介して、mRNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNAまたはsnRNA)に変換するプロセスをいう。遺伝子発現は、プロセスにおいて多くの段階で調節され得る。「アップレギュレーション」または「活性化」は、遺伝子発現産物(すなわち、RNAまたはタンパク質)の産生を増加する調節をいい、他方、「ダウンレギュレーション」または「抑制」は、産生を減少する調節をいう。アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションに関する分子(例えば、転写因子)は、しばしば、それぞれ「アクチベーター」および「リプレッサー」と呼ばれる。
用語「野生型」は、天然に存在する供給源から単離された場合の遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する、遺伝子または遺伝子産物をいう。野生型遺伝子は、集団において最も頻繁に観察される遺伝子であり、従って、遺伝子の「正常な」または「野生型」形態を任意に設計する。それに対して、用語「改変された」または「変異体」は、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較する場合に、配列および/または機能的特性における改変(すなわち、改変された特性)を示す遺伝子または遺伝子産物をいう。天然に存在する変異体が単離され得;野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較する場合に、それらが改変された特性を有するという事実によって同定されることに留意されたい。
DNA分子は、「5’末端」および「3’末端」を有するといわれる。なぜなら、1つのモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸が、ホスホジエステル結合を介して一方向にある、1つのその隣接する3’酸素に結合する様式で、モノヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを生じるように反応するからである。従って、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの末端は、その5’リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3’酸素に連結されない場合に「5’末端」、そしてその3’末端の酸素が続くモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸に連結されない場合に「3’末端」と称される。本明細書中で使用される場合、核酸配列はまた、より長いオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの内部であったとしても、5’末端および3’末端を有すると言われ得る。鎖状または環状のいずれかのDNA分子において、異なるエレメントが「下流」または3’に対してまたは「上流」または5’にあると言われる。この用語は、転写がDNA鎖にそって5’から3’の様式で進む事実に反映される。連結された遺伝子の転写に指向するプロモーターおよびエンハンサーは、一般に、5’またはコード領域の上流に配置される。しかし、エンハンサーエレメントは、プロモーターエレメントおよびコード領域の3’に配置された場合でさえも、その効果を発揮し得る。転写終止シグナルおよびポリ
アデニル化シグナルは、コード領域の3’下流に配置される。
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、短い長さの1本鎖ポリヌクレオチド鎖をいう。オリゴヌクレオチドは、代表的には100残基長以下(例えば、15〜50の間)であるが、本明細書中で使用される場合、この用語はまた、より長いポリヌクレオチド鎖を包含することが意図される。オリゴヌクレオチドはしばしば、その長さによって称される。例えば、24残基のオリゴヌクレオチドは、「24マー」と呼ばれる。オリゴヌクレオチドは、自己ハイブリダイズによってかまたは他のポリヌクレオチドとのハイブリダイズによって、二次構造および三次構造を形成し得る。このような構造としては、二重鎖、ヘアピン、十字形、屈曲型および三重鎖が挙げられ得るがこれらに限定されない。
本明細書中で使用される場合、用語「プライマー」は、精製された制限酵素消化(restriction digest)において天然に生じるか、または合成的に産生されるかのいずれかのオリゴヌクレオチドをいい、これは、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下(すなわち、ヌクレオチドの存在下、かつDNAポリメラーゼのような試薬を含み、そして適切な温度およびpH)に配置される場合に、合成の開始点として作用し得る。プライマーは、好ましくは、増幅における最大効率のために1本鎖であるか、あるいは、2本鎖であり得る。2本鎖の場合、プライマーは、伸長産物を調製するために使用される前に、まず処理されてその鎖を分離する。好ましくは、プライマーは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘導剤の存在下で伸長産物の合成を初回刺激する(prime)のに十分長くなければならない。プライマーの正確な長さは、多くの因子に依存し、これらとしては、温度、プライマーの供給源および使用方法が挙げられる。
用語「単離された」は、核酸に関して「単離されたオリゴヌクレオチド」または「単離されたポリヌクレオチド」のように使用される場合、その天然の環境下では通常付随する、少なくとも1つの混入した核酸から同定および分離された核酸配列をいう。単離された核酸は、天然で見出される形態とは異なる形態またはセッティングで存在するような核酸である。それに対し、単離されていない核酸は、天然において存在する状態で見出されるDNAおよびRNAのような核酸である。例えば、所定のDNA配列(例えば、遺伝子)は、近傍遺伝子に近接する宿主細胞染色体上で見出される。RNA配列(例えば、特定のタンパク質をコードする特定のmRNA配列)は、多数のタンパク質をコードする多数の他のmRNAとの混合物として細胞において見出される。しかし、所定のタンパク質をコードする単離された核酸は、例として、細胞において所定のタンパク質を通常発現するような核酸を含み、この核酸は、天然の細胞の位置とは異なる染色体位置にあるか、または、そうでなければ、天然で見出される核酸配列以外の異なる核酸配列によって隣接している。単離された核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、1本鎖または2本鎖の形態で存在し得る。単離された核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドがタンパク質を発現させるのに使用される場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、最低限でセンス鎖または有意鎖を有する(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは1本鎖であり得る)が、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含み得る(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは2本鎖であり得る)。
本明細書中で使用される場合、用語「プローブ」は、精製された制限酵素消化によって天然に生じたか、または合成的に、組換え的に、もしくはPCR増幅によって合成され、目的の別のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)をいう。プローブは、1本鎖または2本鎖であり得る。プローブは、特定の遺伝子配列の検出、同定および単離に有用である。本発明において使用される任意のプローブは、任意の「レポーター分子」で標識され、その結果、任意の検出システム
(酵素(例えば、ELISAならびに酵素ベースの組織化学的アッセイ)、蛍光、放射活性および発光システムが挙げられるがこれらに限定されない)で検出され得ることが企図される。本発明は、任意の特定の検出システムまたは標識に限定されることを意図しない。
本明細書中で使用される場合、用語「転写因子(transcription factor)」または「転写因子(transcriptional factor)」とは、互いにおよびRNAポリメラーゼ酵素と相互作用して転写を調節するタンパク質をいう。転写因子は、特定のDNA調節配列(例えば、エンハンサー)または他の転写因子を認識することによって遺伝子を標的化する。転写因子はしばしば、「シスエレメント」(例えば、エンハンサー)と相互作用する「トランス因子」と呼ばれる。なぜならば、これらは、代表的にはその調節部位(シス)から離れて位置する遺伝子(トランス)から産生される。いくつかの転写因子は、それ自体の別のコピー(すなわち、「ホモ二量体化ドメイン」を介して連結するホモ二量体)にか、または他の転写因子(すなわち、「ヘテロ二量体化ドメイン」を介して連結するヘテロ二量体)に結合する場合にのみ生物学的に活性である。多くの転写因子について、タンパク質の特定かつ別個の領域は、DNA結合(すなわち、「tDNA結合ドメイン」)および転写の活性化(すなわち、「活性化ドメイン」)を媒介する。最も重要なレベルの遺伝子発現調節は、遺伝子からメッセンジャーRNA分子へのこの情報の移動プロセスで発揮される。このプロセスは、転写と呼ばれる。これらのタンパク質または転写因子は、その作用様式に従って4群に分類される:一般的な転写因子、アクチベーター、コアクチベーターおよびリプレッサー。転写因子に関して、無虹彩症、ルービンスタイン−テービ症候群およびホジキン病のような疾患が関連しており、そしていくらかは分子が原因であり、すなわち、転写因子の分子不全の原因である変異体が明らかにされている。用語「AP−1」とは、細胞分化応答および細胞外マトリクス産生に関する多数の遺伝子に存在する特異的なDNA配列に結合する転写因子をいう。「E2F」とは、アデノウイルスE2プロモーターのE1A媒介性活性化に重大な意味を持つことが示された転写因子をいう。E2Fは、元々はF9胚性癌腫細胞の分化の間にダウンレギュレートされた転写因子として説明された、分化調節転写因子であるDRTFと同一であることが現在知られている。E2Fは、サイクリンA、cdk2およびpRBと複合体を形成し、活性化し、そしてこれらの細胞周期調節遺伝子をリン酸化して、細胞増殖(growth)および増殖(proliferation)のプロセスに重大な意味を持つ。
本明細書中で使用される場合、用語「転写因子に関連する疾患または障害」とは、病変した細胞または組織におけるこのような転写因子が増加したかもしくは減少したレベル、または不適切な(増強された、改変された、または減じられた、など)機能を伴う疾患または障害をいう。好ましくは、このような疾患としては、炎症性疾患(慢性関節性リウマチ、変形性関節炎など)、皮膚炎(アトピー性皮膚炎、乾癬など)、動脈瘤、動脈硬化症、血管炎、PTCAおよびPTA後の再狭窄、癌または癌腫、喘息などが挙げられる。ダンベルデコイを用いることによって、本発明はヌクレアーゼに対する抵抗性のような先行技術にわたる有意な効果を達成し、そして、細胞または組織における長期作用を有意に改善した。
本明細書中で使用される場合、「AP−1に関連する疾患または障害」とは、病変した細胞または組織において増殖したかもしくは減少したレベルのAP−1に関連する疾患もしくは障害、または、AP−1によって活性化された遺伝子の増加した発現に関連する疾患もしくは障害をいう。好ましくは、このような疾患は、炎症および細胞増殖に関連する。より好ましくは、このような疾患または障害は、血管平滑筋細胞の増殖または新内膜の過形成であり得る。用語「E2Fに関する疾患または障害」とは、病変した細胞または組織において増殖したレベルのE2Fに関する疾患もしくは障害、または、E2Fによって
活性化された遺伝子の増加した発現に関する疾患もしくは障害をいう。好ましくは、このような疾患または障害は、血管平滑筋細胞増殖または新内膜過形成であり得る。
用語「生物学的に活性」とは、本明細書中で使用される場合、天然に存在する分子(例えば、転写活性、または遺伝子の特定の部位に対する結合親和性を有する分子)の構造的、調節的または生化学的機能を有するタンパク質または他の分子をいう。
(ii.本発明の好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明は、2つのループ構造および1つのステム構造を含む環状のダンベルオリゴデオキシヌクレオチド(CDODN)を提供し、ここで、このステム構造は、転写因子のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列を含む。本発明は、上記CDODNを含む薬学的組成物をさらに提供する。薬学的組成物は、このような転写因子に起因する疾患または障害を処置および/または予防するために使用され得る。本発明はまた、このような転写因子に起因する疾患または障害を処置および/または予防するための方法を提供し、この方法は、2つのループ構造および1つのステム構造を含むCDODNの治療有効量を被験体に投与する工程を包含する。このステム構造は、転写因子のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列を含む。本発明は、環状のダンベルデコイまたはデコイ組成物を提供し、それによって被験体に投与した後のデコイまたはデコイ組成物の有意に改善した安定性を提供することによって、従来のデコイまたはデコイ組成物と比較して、転写因子に関する疾患または障害を処置および/または予防するための改善された効果を達成した。
本発明は、新規なAP−1デコイODNの転移が、インビトロでのVSMC増殖および、インビボでのバルーン損傷後の新内膜形成(新内膜)を防いだことを示す。これらの結果は、転写因子であるAP−1が、VSMCの増殖およびバルーン損傷後の新内膜形成において重要な役割を果たすことを示す。
積み重ねた証拠が、MAPキナーゼカスケードの活性化が損傷に対する応答におけるVSMCの増殖および細胞増殖の重要な事象であることを示唆する(Ohashi Nら、Arterioscler Thromb Vasc Biol.2000:20:2521−2526;Koyama Hら、Circ Res.1998;82:713−721;Hu Yら、Arterioscler Thromb Vasc Biol.1997:17:2808−2816;Pyles JMら、Circ Res.1997:81:904−910;およびIzumi Yら、Circ Res.2001:88:1120−1126を参照のこと)。これらのJNKおよびERKのようなMAPキナーゼは、AP−1転写因子の発現および活性化を制御する(Davis RJ.,J Biol Chem 1993:268:14553−14556;およびSeger Rら、FASEB J.1995:9:726−73)。AP−1は、VSMCの増殖応答および細胞外マトリクスの産生に関連する多数の遺伝子において存在する特異的なDNA配列に結合する(Karin M.,J Biol Chem.1995;270:16483−16486;およびWhitmarch AJ,Davis RJ,J Mol
Med.1996:74:589−607を参照のこと)。これらの知見は、AP−1の活性化が新内膜形成をもたらす重要な段階であり得ることを示唆する。しかし、新内膜形成の要因におけるAP−1の役割の直接的な証明は、AP−1の特異的かつ潜在的な薬理学的インヒビターが存在しないことによって妨害されている。AP−1がVSMCの増殖および新内膜形成において重要な役割を果たすという仮説を検証するために、本発明者らは、新しいAP−1 ODNトランスフェクション方法を用いた。2本鎖のシスエレメントデコイODNのトランスフェクションは、同じ配列の内因性のシスエレメント由来の全てのトランス因子の除去をもたらし、その後、遺伝子発現を阻害した。従って、本発明は、まず、VSMCの増殖および新内膜形成におけるAP−1の関与を直接的に示す。本
発明において、発明者らは、VSMCの増殖および遊走を増強するための刺激物質として高血糖および血清を用いた。これらの刺激因子は、MAPK経路を介して多くの初期遺伝子、増殖因子および分裂促進因子を誘導する(Miano JMら、Arterioscler Thromb.1993:13:211−219:Bennett MRら、J
Clin Invest.1994:93:820−828;Briata Pら、Biochem Biophys Res Commun.1989:165:1123−1129;Inaba Tら、Diabetes 1996:45:507−512:Di Paolo Sら、Am J Pathol.1996;149:2095−2106;Schwartz SMら、Circ Res.1995:77:445−465;Lindner Vら、Circ Res.1991;68:106−113を参照のこと)。本発明はまた、高血糖および血清が、細胞周期がG1期からS期への進行に必要とされる細胞周期調節遺伝子、サイクリンAおよびPCNAの内因性の発現を刺激することを実証する。AP−1 ODNは、高血糖および血清によって誘導される、VSMCの増殖、遊走ならびにサイクリンA遺伝子およびPCNA遺伝子の発現を効率的に消滅させる。さらに、サイクリンAプロモーターの連続欠損または変異構築物を用いた本発明者らのデータは、AP−1タンパク質のような転写因子の結合に重大な意味を有するATF(活性化転写因子)部位が高血糖によるサイクリンA遺伝子の発現のアップレギュレーションを媒介することを示した。ルシフェラーゼレポーター構築物を有するが、ODNにはミスマッチでないAP−1デコイODNのトランスフェクションはまた、高血糖および血清により誘導されるサイクリンAのルシフェラーゼ発現を完全に消滅させる。これらの観察は、AP−1デコイを用いたトランスフェクションがVSMCの増殖および遊走を阻害したというインビトロでの結果と合わせて、VSMCの増殖およびVSMCの遊走の抑制が、AP−1デコイによる新内膜形成の阻害に関与したことを実証した。
ラット頸動脈中へとAP−1デコイODNをトランスフェクトするために、本発明者らは、HVJ−リポソーム技術を使用した。このHVJ−リポソーム技術は、内皮露出に供されていないインタクトな動脈の内側VSMC中への遺伝子移入において非常に有効な方法である。HVJ−リポソーム法によるFITC標識ODNのトランスフェクションは、強力な蛍光を生じた。この蛍光は、動脈の全ての層において容易に検出された。本発明はまた、AP−1 ODNが、バルーン損傷後の新生内膜(neointima)形成を有効に防止することも示す。興味深いのは、デコイODNを用いる事前処置が、事後処置よりも有効であったという知見である。この知見は、損傷した動脈におけるAP−1活性化の時間経過によって説明され得る。以前の研究によって、脈管壁におけるERK活性およびJNK活性が、容易に増加し、損傷後5分でプラトーに達し、バルーン血管形成術後1時間維持されることが、報告された。極初期遺伝子であるc−junおよびc−fosの発現は、バルーン損傷後30分でピークに達する。本発明者らの結果はまた、AP−1活性が、バルーン損傷後30分で留意され、そしてバルーン損傷後3時間で最大値に達することを示す。これらのデータは、バルーン損傷に応答したシグナル伝達が迅速であること、そしてブロックの時期が、バルーン損傷による引き起こされるシグナルの流れをブロックするためには重要であることを、示す。
本発明において顕著であるのは、AP−1環状ダンベルデコイODN(CDODN)が、化学的に改変されたODNよりも安定かつ有効であったことである。このCDODNは、開口端を有さない単一のデコイ分子においてAP−1の2つの結合部位を含み、これにより、1つよりも多くのプロモーター部位の多重標的化が可能である。以前の研究において、改変されたODN(例えば、ホスホロチオエートおよびメチルホスホネート)が、ヌクレアーゼに対する安定性を増強するために広範に使用された(Khaled ARら、Clin Immunol Immunopathol 1998;86:170〜179;Larrouy Bら、Gene 1992;121:189〜194を参照のこと)。アンチセンスとしてc−myb、c−myc、cdc2およびcdk2に対するこれ
らの改変されたODN、またはデコイとしてNF−κBおよびE2Fに対するこれらの改変されたODNは、実験的再狭窄において内膜肥厚を減少した(Simos Mら、J.Clin Invest 1994;93:1458〜1464、Morishita Rら、1993(上記)、Morishita Rら、1994(上記)、Morishita Rら、1997(上記)を参照のこと)。しかし、これらの改変されたODNは、RNaseHに対する非感受性、加水分解された改変されたヌクレオチドをゲノムDNAへと再利用される可能性、配列特異的結合効果の欠如、および免疫活性化などの問題を示す。最近の報告(Chu BCFら、Nucleic Acids Res.1992:20:5873〜5858;およびAbe Tら、FEBS Lett.1998;425:91〜96を参照のこと)に従って、CDODNは、血清の存在下のPSODN、エキソヌクレアーゼIIIおよびS1ヌクレアーゼよりも安定であった。AP−1についての結合部位を含むCDODNおよびPSODNの配列特異性を評価するために、本発明者らは、インビトロ競合アッセイを設定した。非標識CDODNおよび非標識PSODNを競合因子として使用した場合、CDODNおよびPSODNの両方が、標識プローブへのAP−1の結合を完全に阻害したが、CDODNの配列特異性は、PSODNの効果よりも約10倍大きかった。さらに、本発明者らは、VSMCにおける高濃度グルコースまたは血清によって誘導される、AP−1結合活性に対するCDODNおよびPSODNの阻害効果を評価した。CDODNおよびPSODNの両方は、AP−1結合活性を有意に減弱したが、CDODNの阻害効果は、より大きかった。これらの結果は、CDODNが、PSODNよりも高い親和性を、AP−1結合タンパク質に対して有することを示す。これらのインビトロデータに従って、CDODNは、脈管損傷後の新生内膜(neointima)形成を防止する際により有効であった。ダンベルデコイODNのさらなる可能な利点は、DNA複製の間でのゲノムDNA中への導入または加水分解された改変されたヌクレオチドの再利用の際の修復に起因する、変異能の欠如である。
結論として、本発明は、ダンベルデコイODNが、以前に試みられた改変されたODNと比較して、顕著に増強された安定性を有することを示す。さらに、デコイODNによるAP−1活性の阻害は、細胞の増殖および遊走をインビボで有効に減少させ、ならびにインビボでの新生内膜(neointima)形成を有効に減少させた。本発明は、CDODNを最低限の副作用しか伴わずに使用し、そして非常に有効なHVJ−リポソーム遺伝子送達技術を使用することによって、再狭窄の処置のために可能な新規な治療ストラテジーを提供する。
本発明の別の局面において、本発明は、新規なE2F−デコイを提供する。いくつかの研究によって、細胞周期調節遺伝子の阻害は、損傷した脈管におけるVSMC増殖および新生内膜形成を首尾良くブロックしたことが、示された。しかし、単一の細胞周期調節遺伝子の阻害は、VSMC増殖および新生内膜形成を防止するには不十分である。従って、本発明者らは、転写因子E2Fに焦点を合わせた。E2Fは、G1/S細胞周期進行に関与する種々の遺伝子(PCNA、c−myc、c−myb、cdc2、およびcdk2を含む)のアップレギュレートされた発現に関係する(Bielinska Aら、1990(上記);Chu BCF,Organ L.,Nucleic Acids Res.1992;20:5857〜5858;およびAbe Tら、FEBS Lett.1998;425:91〜96を参照のこと)。本発明において、本発明者らは、E2Fデコイの転写が、損傷した脈管における平滑筋細胞の増殖および新生内膜肥厚を首尾良くブロックしたことを示す。このことは、以前のインビトロ研究およびインビボ研究と一致する。
本発明において、本発明者らは、ヌクレアーゼに対する安定性を改善するための新規な環状ダンベルデコイを考案した。以前の研究において、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、または他の外来物質を用いるODNの改変が、ヌクレアーゼに対する安定性を
増強するために使用された(Tanaka Hら、Nucleic Acids Res
1994;22:3069〜3074;Bielinska Aら、1990(上記)を参照のこと)。ヌクレアーゼに対するODNの安定性は、化学的改変によって増強されたが、これらの改変されたODNは、ODNを改変するための外来物質の使用が原因である他の異なる問題を誘導し得る。最近、ダンベル型ODNが、化学的に改変された線状ODNと比較して、ヌクレアーゼ耐性および細胞中への取り込みを増強すると、報告されている(Chu BCら、Nucleic Acids Res 1992:20:5857〜5858;Abe Tら、FEBS Lett 1998;425:91〜96を参照のこと)。従って、本発明者らは、E2F結合部位のための新規な環状ダンベルデコイODNを設計した。本発明者らのCD−E2Fは、開放端を有さない単一のデコイ分子において、E2Fの2つの結合部位を含み、これにより、1つの標的プロモーター部位の多重標的化または1つより多くのプロモーター部位を標的化することが、可能である。予期されるように、このCD−E2Fは、ヌクレアーゼおよび血清の存在下で、PS−E2Fよりも安定であった。さらに、CD−E2Fの配列特異性は、インビトロ競合結合アッセイによって評価した場合、PS−E2Fの配列特異性よりもほぼ10倍大きかった。さらに、VSMCにおけるグルコース誘導性E2F結合活性および血清誘導性E2F結合活性に対するCD−E2Fの阻害効果もまた、PS−E2Fよりも大きかった。これらの結果は、CD−E2Fが、増強された安定性、およびE2F結合部位に対する優れた配列特異的阻害効果を有することを示す。
従来のリポソーム方法によって送達されたODNの、乏しい細胞取り込みおよびエンドサイトーシス後のリポソーム分解が、ODN治療についての主要な障壁であった(Marcus−Sekure CJ.、Anal Biochm 1988;172:289〜295;Stein CA,Cohen JS.,Cancer Res 1988;48:2659〜2668を参照のこと)。この障壁を克服するために、本発明者らは、HVJ−リポソーム技術を使用して、E2Fデコイをラット頸動脈中にトランスフェクトした。この送達系において、外因性分子(例えば、プラスミドDNAまたはODN)は、リン脂質とコレステロールとを含むリポソーム中に、包まれる。その後、これらのリポソームは、UV照射したHVJと融合されて、HVJ−リポソームを形成する。HVJからの融合タンパク質は、これらのリポソームと細胞膜との融合、およびその細胞中への分子の配置を促進する。本発明者らは、HVJ−リポソーム方法を使用してFITC標識デコイを培養ヒトVSMC中へトランスフェクションすると、従来のトランスフェクション方法(Ahn JDら、Diabetologia 2001;44:713〜720を参照のこと)よりも遺伝子移入において非常に有効であったことを報告した。これに従って、インビボでのHVJ−リポソーム方法によるFITC標識デコイのトランスフェクションは、強力な蛍光を生じ、この蛍光は、その動脈のすべての層において容易に検出された。
高血糖は、糖尿病患者における大血管合併症の発症に寄与することが示唆されているが、VSMCに対するグルコース濃度上昇の直接的効果に対して焦点を合わせた研究は、ほとんどない(Ahn JDら、2001(上記);Natarajan Rら、Hypertension 1999;33:378〜384;Yasunari Kら、Circ Res 1997;81:953〜962)。本発明において、本発明者らは、VSMCにおけるE2F DNA結合活性、ならびに細胞周期調節遺伝子、およびVSMCの増殖に対する、高濃度グルコース濃度の効果を試験した。本発明者らの研究は、[E2F]×4−ルシフェラーゼ構築物(これは、プロモーター領域中に4つのE2F結合部位を含む)のE2F DNA結合活性およびルシフェラーゼ活性は、VSMCにおける高濃度グルコース濃度処理後に、有意に増加されたことを示す。これらの効果は、血清と相加的であった。本発明はまた、高濃度グルコースおよび血清が、細胞周期調節遺伝子(例えば、サイクリンAおよびPCNA)(これらは、G1期からS期への細胞周期進行のために重要である)の内因性発現を刺激する。E2Fデコイ(しかし、ミスマッチ配列オリゴヌ
クレオチド(M−E2F)ではない)のトランスフェクションは、VSMC増殖、ならびに高濃度グルコースおよび血清により誘導されるPCNA遺伝子およびサイクリンA遺伝子の発現を効果的に減弱した。このことは、サイクリンAのプロモーター研究の結果と一致した。さらに、サイクリンAプロモーター連続欠失または変異構築物の使用から導かれる本発明者らのこの結果は、サイクリンA遺伝子発現のグルコース刺激性アップレギュレーションは、サイクリンAプロモーターにおけるE2F部位によって媒介されることを実証する。E2Fデコイ(M−E2Fではない)とルシフェラーゼレポーター構築物との同時トランスフェクションはまた、高濃度グルコースにより誘導されるサイクリンAプロモーター下のルシフェラーゼ発現を、完全に排除した。
最後に、CD−E2Fのトランスフェクションは、バルーン損傷後の新生内膜形成を、PS−E2Fよりも有効に防止した。CD−E2Fで処理した脈管中のPCNA染色について陽性である細胞はまた、PS−E2Fで処理した脈管または非トランスフェクション脈管においてよりもかなり少ないことが、見出された。これらの知見は、インビトロ研究の結果とまとめると、CD−E2Fが、VSMC増殖の抑制および脈管損傷後の新生内膜形成の防止において、より有効であることを示す。CD−E2Fのさらなる潜在的な治療利益は、変異の可能性がないことであり、一方、外来物質を用いて改変されたODNは、加水分解されたヌクレオチドがDNA複製の間に再利用されてゲノムDNA中に導入された場合に、変異する可能性を有し得る。
結論として、本発明は、CD−E2Fが、従来の改変されたODNと比較して顕著に増加した安定性と、優れた配列特異的デコイ効果とを有することを、示す。さらに、CD−E2Fを使用してE2FのDNA結合活性を阻害すると、インビトロならびにインビボで、細胞周期調節遺伝子の発現および細胞増殖が有意に減少された。新規なCD−E2Fと非常に有効なHVJ−リポソーム送達技術とを使用する本発明は、ヒトにおける脈管形成術後の再狭窄を、副作用を最小限しか伴わずに防止するための新規な治療ストラテジーを提供する。
従って、本発明の好ましい実施形態において、本発明は、種々のAP−1関連疾患またはE2F関連疾患の治療または予防のための薬学的組成物を提供し、この治療および予防のための方法を提供する。この組成物は、AP−1を含み、あるいはまたはさらに、E2Fデコイを活性成分として含み、必要に応じて別の転写因子(例えば、NFκB)デコイを含む。
本発明の治療組成物/予防組成物が示される疾患は、AP−1関連疾患であり、そしてまたE2F関連疾患である。これらは、すなわち、転写調節因子であるAP−1またはE2Fの制御下にある遺伝子の望ましくない活性化によって引き起こされる疾患である。このような疾患としては、炎症疾患(慢性関節リウマチ、変形性関節症など)、皮膚炎(アトピー性皮膚炎、乾癬など)、動脈瘤、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、血管炎、PTCAおよびPTA後の再狭窄、癌または癌腫、喘息などが挙げられるが、これらに限定されない。
AP−1は、種々の重要な遺伝子の重要な調節因子であり、これらの遺伝子は、(i)組織破壊を引き起こす酵素の生成に関与する遺伝子、(ii)慢性炎症に関連するサイトカインの生成に関与する遺伝子、および(iii)細胞増殖に必要なタンパク質の生成に関与する遺伝子を包含する。従って、AP−1ダンベルデコイは、慢性炎症疾患を処置する際の潜在的に強力な因子であり得る。
転写因子のE2Fファミリーは、細胞増殖の調節において重要な役割を果す。従って、本発明により提供される新規なE2Fデコイは、異常な細胞増殖に関連する疾患を処置す
る際の潜在的に強力な因子であり得る。
本発明の別の実施形態において、本発明の治療組成物/予防組成物が示される疾患は、NF−κB関連疾患であり、この疾患は、すなわち、転写調節因子であるNF−κBの制御下にある遺伝子の望ましくない活性化により引き起こされる疾患である。そのような疾患には、虚血性疾患、炎症疾患、自己免疫疾患、癌転移および癌浸潤、ならびに悪液質が数えられ得る。この虚血性疾患としては、器官の虚血性疾患(例えば、虚血性心不全(例えば、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全など)、虚血性脳疾患(例えば、脳梗塞)、および虚血性肺疾患(例えば、肺梗塞)、器官移植または器官手術の予後の悪化(例えば、心臓移植、心臓手術、腎臓移植、腎臓手術、肝臓移植、肝臓手術、骨髄移植、皮膚移植、角膜移植、および肺移植の、予後の悪化)、再灌流障害、ならびにPTCA後の再狭窄が挙げられる。上記の炎症疾患としては、とりわけ、種々の炎症疾患(例えば、腎炎、肝炎、関節炎など)、急性腎不全、慢性腎不全、および動脈硬化症が挙げられる。上記の自己免疫疾患としては、リウマチ、多発性硬化症、および橋本甲状腺炎が挙げられるが、これらに限定されない。特に、本発明に従うNF−κBデコイを活性成分として含む薬学的組成物は、虚血性疾患における再灌流障害、器官移植もしくは器官手術の予後の悪化、PTCA後の再狭窄、癌の転移および浸潤、ならびに悪液質(例えば、癌の発症後の体重減少)を治療および予防するために非常に適切である。
転写因子が関連する他の任意の疾患が、本発明のデコイによって処置または予防され得る。そのような疾患としては、E2Fに関連する疾患、障害、または状態(例えば、新生内膜肥厚、新形成、糸球体腎炎、新脈管形成、炎症);AP−Iに関連する疾患、障害、または状態(例えば、新生内膜肥厚、心筋細胞の増殖/分化);NFκBに関連する疾患、障害、または状態(例えば、炎症、免疫応答、移植片拒絶、虚血再灌流損傷、糸球体腎炎、炎症腸疾患);SSREに関連する疾患、障害、または状態(例えば、新生内膜肥厚、バイパス移植片、新脈管形成、側副枝形成);CREBに関連する疾患、障害、または状態(例えば、cAMP活性化事象);MEF−2に関連する疾患、障害、または状態(例えば、心筋氏亜傍の分化および増殖);CArGボックスに関連する疾患、障害、または状態(例えば、心筋細胞の分化および増殖);taxに関連する疾患、障害、または状態(例えば、HTLV関連);VP16に関連する疾患、障害、または状態(例えば、HIV感染);GRE/HRE MREに関連する疾患、障害、または状態(例えば、ステロイドホルモンプロセス)(乳房もしくは前立腺の細胞増殖));熱ショックREに関連する疾患、障害、または状態(例えば、細胞ストレス(例えば、虚血性低酸素症));SREに関連する疾患、障害、または状態(例えば、細胞の増殖/分化);AP−2に関連する疾患、障害、または状態(例えば、細胞増殖);ステロール応答エレメントに関連する疾患、障害、または状態(例えば、高コレステロール血症);TRE(TGFb応答エレメント)に関連する疾患、障害、または状態(例えば、細胞の増殖、分化、遊走、新脈管形成、内膜応答性肥厚、マトリックス生成、エレメントアポトーシス)が挙げられるが、これらに限定されない。
特に、本発明に従うデコイを活性成分として含む薬学的組成物は、虚血性疾患における再灌流障害、器官移植もしくは器官手術の予後の悪化、PTCA後の再狭窄、癌の転移および浸潤、ならびに悪液質(例えば、癌の発症後の体重減少)を処置および予防するために非常に適切である。
本発明において使用され得るデコイは、転写因子の型に対応する染色体の結合部位と特異的に拮抗する任意の化合物であり得、このデコイとしては、核酸およびそれらのアナログが挙げられるが、これらに限定されない。上記デコイの好ましい例として、TGACTCA(AP−1)のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド、およびTTTCGCGC(E2F)のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド(それぞれ、配列表の配列番
号1および2の5’末端から7番目〜13番目のヌクレオチドの配列、ならびに5’末端
から8番目〜15番目のヌクレオチドの配列)、GGGATTTC(NFκB)のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド、またはその相補配列を含むオリゴヌクレオチド、それらのムテイン、ならびに上記オリゴヌクレオチド配列のうちのいずれかを含む化合物が、言及され得る。これらのオリゴヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよく、そしてまた、改変されたヌクレオチドおよび/または擬性ヌクレオチドを含み得る。さらに、それらのオリゴヌクレオチド、その改変体、またはそれらのうちのいずれかを含む化合物は、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、そして直鎖状であっても環状であってもよい。改変体とは、転写因子が結合する染色体結合部位と特異的に拮抗する、上記の配列のうちの何らかの部分の変異(例えば、置換、付加、および/または欠失)を含む核酸配列である。より好ましいデコイとしては、上記のヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数を各々が含む二本鎖オリゴヌクレオチド、ならびにそれらの改変体が挙げられる。本発明において使用され得るオリゴヌクレオチドとしては、生分解に対して感受性が低くなるように改変されたオリゴヌクレオチド(例えば、ホスホジエステル部分の酸素を硫黄で置き換える(S−オリゴ)際に利用可能なチオホスホジエステル結合を含むオリゴヌクレオチド、ならびにホスホジエステル部分を、電荷を保有しないメチルホスフェート基で置換する際に利用可能なオリゴヌクレオチドが挙げられる。
本発明において使用するためのデコイを生成するための技術に関して、従来の化学合成法または生化学合成法が、使用され得る。例えば、核酸がデコイとして使用されるべき場合、遺伝子操作において一般的に使用される核酸合成のための方法が、使用され得る。例えば、目的のデコイオリゴヌクレオチドは、DNA合成機において直接合成され得る。または、各々予め合成された核酸もしくはそのフラグメントが、PCRによってか、またはクローニングベクターなどを使用して、増幅され得る。さらに、望ましい核酸は、制限酵素などを用いる切断、および/またはDNAリガーゼなどによる連結のような手順によって、得られ得る。細胞中でより安定であるデコイヌクレオチドを得るために、本核酸の塩基部分、糖部分、および/またはリン酸部分は、アルキル化、アシル化、さもなければ化学改変され得る。本発明に従って活性成分としてデコイを含む薬学的組成物は、その活性成分が罹患部位中の細胞または標的組織の細胞によって取り込まれ得る限り、形態を限定されない。従って、本デコイは、単独でかまたは一般的な薬学的キャリアと混合してかのいずれかで、経口投与、非経口投与、局所投与、または外部投与され得る。
本薬学的組成物は、溶液、懸濁物、シロップ剤、リポソーム、ローションなどのような、液体投与形態でか、または錠剤、顆粒、散剤、およびカプセル剤などのような固体投与形態で、提供され得る。必要な場合は、薬学的組成物は、種々のビヒクル、賦形剤、安定化剤、滑沢剤、および/または他の従来の薬学的添加剤(例えば、ラクトース、クエン酸、酒石酸、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、石膏、スクロース、コーンスターチ、滑石、ゼラチン、寒天、ペクチン、落花生油、オリーブ油、カカオバター、エチレングリコールなど)を補充され得る。
特に核酸またはその改変産物がデコイとして使用される場合、好ましい投与形態としては、遺伝子治療において一般的に使用される投与形態(例えば、リポソーム(センダイウイルスを使用する膜融合リポソーム、およびエンドサイトーシスを利用するリポソーム)、カチオン性脂質を含む調製物(例えば、Lipofectamine(Life Tech Oriental))、またはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターなどを使用するビロソームが、挙げられる。特に好ましいのは、膜融合リポソームである。
このようなリポソーム調製物の構造は、大きな単層リポソーム(LUV)、多層リポソーム(MLV)、小さな単層リポソーム(SUV)のいずれかであり得る。小胞のおよそ
のサイズは、LUVについて200nm〜1000nmの範囲、MLVについて400nm〜3500nmの範囲、そしてSUVについて20nm〜50nmの範囲であり得るが、センダイウイルスを使用する膜融合リポソーム調製物の場合、例えば、直径200nm〜1000nmの小胞系を含むMLVが、好ましくは使用される。
本デコイが小胞中で首尾良く捕捉され得る限り、リポソーム生成のための技術に関して、制限は存在しない。従って、そのようなリポソームは、従来の技術(例えば、2〜3例挙げると、逆相エバポレーション法(Szoka,F.ら:Biochim.Biophys.Acta,Vol.601 559(1980))、注入法(Deamer,D.W.;Ann.N.Y.Acad.Sci.,Vol.308 250(1978))、および界面活性剤法(Brunner,J.ら:Biochim.Biophys.Acta,vol.455 322(1976)))によって製造され得る。
リポソームを形成するために使用され得る脂質としては、リン脂質、コレステロール、およびその融合体、ならびに窒素含有脂質が挙げられるが、リン脂質が、一般的には好ましい。使用され得るリン脂質としては、天然に存在するリン脂質(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、カルディオリピン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、ダイズレシチン、リソレシチンなど)、従来の方法によって水素添加された対応するリン脂質、ならびに合成リン脂質(例えば、ジセチルホスフェート、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、オレオステアロイルホスファチジルコリン、オレオステアロイルホスファチジルエタノールアミン、オレオステアロイルホスファチジルセリンなど)が、挙げられる。
上記脂質(特に、リン脂質)は、個別にかまたは適切な組合せで、使用され得る。正に荷電した基(例えば、エタノールアミンまたはコリン)を含む脂質を使用することによって、電気的に負のデコイヌクレオチドの結合が、増強され得る。主要なリン脂質に加えて、種々の化合物(例えば、リポソーム添加剤として公知である、コレステロールおよびその誘導体、ステアリルアミン、トコフェロールなど)が、リポソームの製造において添加され得る。
生じるリポソームに、膜融合プロモーター(例えば、センダイウイルス、不活化センダイウイルス、センダイウイルスから精製した膜融合促進タンパク質、ポリエチレングリコールなど)が、罹患部位または標的組織の細胞による細胞内取り込みを補助するために添加され得る。
薬学的リポソームの生成のための代表的な手順が、ここに、詳細に記載される。上記のリポソーム形成物質、ならびにコレステロールなどが、有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、クロロホルム、エタノールなど)中に溶解される。適切な容器において、その溶媒は減圧下で蒸発されて、その容器の内壁にリポソーム形成物質のフィルムが残る。その後、本デコイを含む緩衝液が添加され、そしてその混合物が攪拌される。上記膜融合プロモーターの必要に応じて添加した後、そのリポソームは単離される。そのようにして本デコイが捕捉されたリポソームが、適切な媒体中に懸濁されるか、またはその凍結乾燥体が、治療において使用するために適切な媒体中に再分散される。上記膜融合プロモーターは、リポソームを単離した後と使用の前との間の期間に添加され得る。
本デコイを活性成分として含む薬学的組成物のデコイ含有量に関して、そのデコイが転写因子関連疾患を制御するために有効な量で含まれる限り、制限はない。従って、このデコイ含有量は、制御されるべき疾患、標的部位、投与形態、および投与スケジュールに従
って、自由に選択され得る。
上記の様式で提供されるような本デコイを活性成分として含む薬学的組成物は、疾患の型および含まれるデコイの種類に従って、種々の方法によって投与され得る。虚血性疾患、炎症疾患、自己免疫疾患、癌の転移または浸潤、ならびに悪液質を例として採ると、本組成物は、脈管内に注入され得るか、罹患領域に直接適用され得るか、病巣中に注射され得るか、または罹患領域中の局所的血管中へと投与され得る。さらなる具体例として、PTCAが器官梗塞の処置のために実施される場合、本薬学的組成物が、手術と同時にか、手術前および手術後に、局所的血管中に投与され得る。器官移植のために、移植片物質は、本発明の組成物で前もって処理され得る。さらに、変形性関節症またはリウマチの処置において、本組成物は、関節中に直接注射され得る。
本デコイの投与量は、患者の年齢および他の要因、疾患の型、使用されるデコイの種類などを参照して選択されるが、脈管内投与、筋肉内投与、または関節内投与のためには、例えば、単位用量10nmol〜10,000nmolが、一般的には1日1回から2〜3回投与され得る。
以下の実施例は、例示のために提供され、限定のために提供されるものではない。
(実施例1:インビトロでの脈管平滑筋細胞の増殖およびインビボでの新生内膜形成に対する、新規なAP−1デコイオリゴヌクレオチドの阻害効果)
(材料および方法)
(動物)
280g〜320gの体重である9週齢〜10週齢の雄Sprague−Dawleyラット(Hyochang,Taegu,Korea)を、使用した。すべての手順は、研究施設における動物研究に関する指針に従った。
(細胞培養)
ヒトVSMCを、Ahnら、2001(上記)に記載される通りに採集し、ラット大動脈平滑筋細胞を、成体雄Sprague−Dawleyラット(200〜250g)の胸大動脈から採集した。VSMCを、20%ウシ胎仔血清(Gibco BRL)を含むDulbecco改変Eagle培地(DMEM;Gibco BRL,Grand Island,NY,USA)中で培養した。VSMCの純度を、平滑筋特異的α−アクチンモノクローナル抗体(Sigma,St.Louis,MO,USA)を用いる陽性染色によって特徴付けた。
(CDODNの構築)
本発明において使用したダンベル型およびAP−1結合部位から誘導したホスホロチオエート二本鎖ODNおよびミスマッチODNの配列は、以下の通りである:
CDODN(コンセンサス配列に下線を付している)、5’−GGATCCATGACTCAGAAGACGACACACGTCTTCTGAGTCAT−3’(配列番号3);
ホスホロチオエート線状AP−1デコイODN(PSODN)、5’−AGCTTGTGACTCAGAAGCT−3’(配列番号4);ミスマッチAP−1デコイODN(MODN)、5’−GGATCCAAATCTCAGAAGACGACACACGTCTTCTGAGATTT−3’(配列番号5)。
ステムの5’末端は、BamHIの制限部位として、6塩基の一本鎖配列5’−GGATCC−3’を有する。2つのオリゴ分子を、両方の5’末端の相補的な6塩基配列によ
って結合した。温度を80℃から25℃へと下げながら、ODNを2時間アニールさせた。1単位のT4 DNAリガーゼを添加し、16℃で24時間インキュベートして、共有結合したダンベルデコイODN分子(CDODN)を生成した。このCDODNは、2つのループと1つのステムとからなり、この1つのステムは、2つのAP−1コンセンサス配列を直列に含む(図1A)。
(CDODNの安定性)
CDODNの安定性を試験するために、各々1μgの非連結ホスホジエステルODN、PSODN、およびCDODNを、ヒト血清、ウシ胎仔血清、仔ウシ胎仔血清、エキソヌクレアーゼIII、またはS1ヌクレアーゼとともにインキュベートした。すべての血清は、DNase活性を保存するために、熱不活化をせずに使用した。各血清を、ODNに100μlの反応容器中50%まで添加し、37℃で24時間インキュベートした。160単位/μgのエキソヌクレアーゼIII(Takara,Otsu,Japan)をODNに添加し、37℃で2時間インキュベートした。10単位/μg ODNのS1ヌクレアーゼをODNに添加し、25℃で30分間インキュベートした。その後、ODNをフェノールおよびクロロホルムで抽出し、15%変性ポリアクリルアミドゲル上で試験した。
(VSMCの増殖に対するAP−1デコイODNの効果)
VSMCを、96ウェル組織培養プレート上に播種した。30%コンフルエンスにて、VSMCを、規定した無血清培地中で24時間インキュベーションすることによって、休止状態にした。その後、100nmol/LデコイODNを含むリポフェクチンを、これらのウェルに添加した。これらの細胞を、37℃で5時間インキュベートした。2〜3日間後、細胞増殖の指標を、WST細胞計数キット(Wako,Osaka,Japan)の使用によって決定した。
(細胞遊走アッセイ)
VSMC遊走を、改変型Boydenチャンバ(Corning,NY,USA)を使用して評価した。コントロール培地中に懸濁したVSMC(2×10細胞/ウェル)を、上部チャンバに添加し、試験サンプルを、下部チャンバ中に配置した。37℃で24時間のインキュベーション後、細胞を固定し、そしてヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。そのフィルターの下部表面上の無作為に選択した4つの高倍率(×400)視野からの平均細胞数を、計数した。
(電気泳動移動度アッセイ(EMSA))
核抽出物を、Ahn JDら(上記)に記載される通りに、VSMCから調製した。簡単に述べると、DNAプローブ(例えば、AP−1およびミスマッチデコイODN)を、プライマーとして標識した。タンパク質−DNA結合反応を、容量20μlにて室温で20分間実施した。この反応混合物は、6μgの核抽出物、100μg/mlのポリdI:dC、10mmol/l Tris/HCl(pH7.5)、50mmol/l NaCl、0.5mmol/lのEDTA、0.5mmol/l DTT、1mmol/l MgCl、4%グリセロールおよび60,000cpmの32P標識プライマーDNAを含んだ。インキュベーション後、これらのサンプルを、0.5×Tris−ホウ酸−EDTA緩衝液中にある4%ネイティブポリアクリルアミドゲル上にローディングし、150Vにて2時間泳動した。そのゲルを乾燥し、オートラジオグラフィーによって可視化した。競合研究のために、実験条件は同一であった。但し、適切な競合ODNを、核抽出物の添加前に反応混合物に50倍モル過剰〜100倍モル過剰で添加した。
(ルシフェラーゼアッセイ)
AP−1ルシフェラーゼ構築物pAP1(PMA)−TA−Lucを、Clontec
hから購入した。サイクリンAプロモータールシフェラーゼ構築物を、Masao Yoshizumi博士(University of Tokyo Hospital,Tokyo,Japan)により親切にも提供された(Yoshizumi Mら、J Biol Chem,1997;272:22259〜22264を参照のこと)。このルシフェラーゼ発現を分析するために、その細胞をPBSで2回洗浄し、200μlの1×Reporter溶解緩衝液(Promega,Madison,WI,USA)を用いて溶解した。50μlの各溶解物を、ルシフェラーゼ活性について試験した。
(ノーザンブロット分析)
PCNAおよびサイクリンAの遺伝子発現を、ノーザンブロッティングによって測定した。ノーザンブロット分析のために、10μgの全RNAを、1%ホルムアルデヒド−アガロースゲルに適用し、ナイロン膜に移した。このナイロン膜を、65℃のExpress HybTM溶液中で、放射標識PCNA cDNAプローブまたはサイクリンA cDNAプローブ(Young−Chae Chang博士、Dankook University Medical School,Koreaによって寄贈された)を用いてハイブリダイズし、製造業者の指示に従って洗浄した。この膜をX線フィルムに露光し、そしてそのmRNA発現を、濃度測定分析を用いて定量した。
(日本赤血球凝集ウイルス(HVJ)−リポソームの調製)
HVJ−AVEリポソームを、Ahn JDら、2001(上記)に記載される通りに調製した。簡単に述べると、コレステロール、ジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、およびホスファチジルセリンを、モル比50:13.3:13.3:13.3:10で混合した。この脂質混合物を、クロロホルム除去によって、フラスコの側面に堆積させた。乾燥した脂質を、ODNを含む200μlの平衡塩溶液(BSS;137mmol/l NaCl,5.4mmol/l KCl、10mmol/l Tris−HCl、pH7.6)中で水和した。リポソームを、振盪および濾過によって調製した。精製HVJ(Z染色)を、使用直前に3分間のUV照射によって不活化した。このリポソーム懸濁物を、総容量2mlのBSS中にあるHVJとともに混合した。その混合物を4℃で5分間インキュベートし、その後、穏やかに振盪しながら37℃で30分間インキュベートした。遊離したHVJを、ショ糖密度勾配遠心分離によって、HVJ−リポソームから除去した。そのショ糖勾配の最上層を、使用のために収集した。
(バルーン損傷およびインビボ遺伝子移入)
2 French Fogartyカテーテルを使用して、雄Sprague−Dawleyラット(280g〜320g)中に脈管損傷を誘導した。これらのラットを、ペントバルビタールで麻酔し、左総頸動脈を外科的に露出させた。外頸動脈を介して、この総頸動脈中にカテーテルを導入した。外頸動脈中に動脈切開を介してバルーンカテーテルを3回通過および膨張させることによって、この総頸動脈の脈管損傷を誘導した。損傷した部分を、一時的結紮によって一過的に分離させた。バルーン損傷後、CDODN、MODN、FITC標識PSODNのいずれかを含むHVJ−リポソームまたはHVJ−リポソーム単独を20μl、室温にて10分間管腔中でインキュベートした。10分間のインキュベーションの後、注入カニューレを取り出した。トランスフェクションの後、その総頸動脈への血流を、結紮糸の解放によって回復し、その後、その創傷を閉鎖した。有害な神経学的効果も脈管への効果も、この手順を行ったどの動物においても観察されなかった。
(組織学的分析)
トランスフェクション後2週間目に、ラットを屠殺し、そして脈管を、4%パラホルムアルデヒドで灌流固定した。新生内膜のサイズを、サンプルの正体を知らない個人による形態計測によって、定量した。内膜面積および中膜面積を、デジタル処理システム(モデ
ルINTUOS 6×8、Wacom,Vancouver,WA,USA)において測定した。FITC標識AP−1デコイODNトランスフェクションの場合、脈管を、トランスフェクション後3日目に採集し、そして4%パラホルムアルデヒドで灌流固定した。切片を、蛍光顕微鏡によって試験した。免疫組織化学のために、切片を、ウサギ抗増殖細胞核抗原抗体(1:200希釈、SantaCruz Biotechnology,Santa Cruz,CA,USA)とともにインキュベートし、そして標準的様式で免疫組織化学のために処理した。
(統計学的分析)
結果を、平均値±標準誤差平均として表す。その後のDuncan検定を用いる分散分析を使用して、多重比較における差の有意性を決定した。P<0.05を、統計学的に有意であると見なした。すべての実験は、少なくとも3回実行した。
(結果)
(安定性が増強したダンベル型AP−1デコイの構築)
種々のデコイODNの安定性を調査するために、本発明者らは、まず、ヌクレアーゼに対する分子の安定性を試験した。CDODNは、エキソヌクレアーゼIIIに対して安定であったが、PSODNおよびアニールしたデコイODNの両方は、エキソヌクレアーゼIIIと2時間インキュベートした後に、完全に分解された(図1B)。本発明者らはさらに、S1ヌクレアーゼを使用して、CDODNの分子特徴を試験した。S1ヌクレアーゼは、DNA分子における一本鎖領域を消化する。ダンベルデコイ(72塩基)およびPSODN(38塩基)の両方のステム領域は、S1ヌクレアーゼから保護されることが見出されたが、アニール型デコイODNのステム領域は、保護されなかった(図1B)。
PSODNおよびアニールしたデコイODNの両方は、非不活化ヒト血清、ウシ胎仔血清および仔ウシ胎仔血清の存在下での24時間のインキュベーションの後、有意に加水分解された。しかし、CDODNは、これらの種々の血清との24時間のインキュベーションの後に、大部分がインタクトなままであった。このことは、PSODNおよびアニール型デコイODNと比較した場合に、かなり改善された安定性を示す(図1B)。
(AP−1標的部位を有するダンベルデコイODNへのAP−1の特異的結合)
CDODNが、配列特異的様式で、デコイとして十分に強くAP−1と相互作用することを実証するために、インビトロ競合アッセイを行った。非標識化AP−1デコイODNの増加は、タンパク質によって形成された複合体に対応する遅延バンドの強度を減少させた(図2A)。1000倍モル過剰の非標識化PSODNは、競合物質として、標識化プローブへのAP−1結合に対してほぼ完全に競合した。CDODNを、競合物質としてPSODNの代わりに用いた場合、100倍モル過剰の非標識化CDODN競合物質は、標識化プローブへのAP−1結合に対して完全に競合した。次いで、本発明者らは、CDODNおよびPSODNを高濃度のグルコースおよび血清刺激条件下で細胞中にトランスフェクトして、CDODNがAP−1のDNA結合活性を特異的に阻害するか否かを調べた。予想通り、高濃度のグルコースでの処理により、低濃度のグルコースと比較して、AP−1結合活性が有意に増大した(図2B、p<0.001)。同様に、血清もまた、用量依存的にAP−1のDNA結合活性を増大させた(p<0.001)。PSODNおよびCDODNの両方のトランスフェクションは、高濃度のグルコースまたは血清によって誘導されたAP−1DNA結合活性を有意に低減した(p<0.01)が、CDODNは、AP−1結合活性のより高い阻害を示した(p<0.001)。
(平滑筋細胞における遺伝子発現に対するAP−1デコイODNの効果)
本発明者らは、プロモーター領域にAP−1結合部位を含むレポーター遺伝子構築物を用いて、プロモーター活性に対するAP−1デコイODNの効果を研究した。高濃度グル
コースによるサイクリンAプロモーター活性のアップレギュレーションにおけるAP−1結合部位の役割を調べるために、一連の種々の長さのヒトサイクリンA5’フランキング配列を含むルシフェラーゼレポーター遺伝子プラスミドを、高濃度のグルコースで処理した平滑筋細胞中にトランスフェクトした。これらのプラスミド中の2つのプラスミド(pCA−266/+205mtおよびpCA−133/−205mt)のみが、有意に低下したルシフェラーゼ活性を示し(図3A、pCA−266/+205またはpCA−133/+205と比較して、p<0.001)、そしてこれらのレポーター遺伝子構築物は、サイクリンAプロモーター由来のAP−1タンパク質を担う、ATF部位を変異させる。これらのデータは、平滑筋細胞において、AP−1デコイODNが、高濃度のグルコースによって誘導されるサイクリンAのプロモーター活性をダウンレギュレートし得たことを示す。
次いで、本発明者らは、ルシフェラーゼレポータープラスミドpAP1(PMA)−TA−LucおよびAP−1結合部位を含むサイクリンAプロモータールシフェラーゼ構築物(pCA−266/+205)の高濃度グルコースおよび血清誘導性活性に対するAP−1デコイODNの効果を比較した。予想通り、ルシフェラーゼレポーターのPSODNおよびCDODNとの同時トランスフェクションは、高濃度グルコース刺激性および血清刺激性ルシフェラーゼ遺伝子発現を顕著に低減した(図3BおよびC、p<0.01)。しかし、CDODNは、PSODNよりも有効であった(PSODNと比較して、p<0.01)。従って、本発明者らは、インビトロの細胞周期−調節遺伝子の内因性の発現に対するAP−1デコイODNの効果を調べた。この目的のために、PCNAおよびサイクリンAの遺伝子発現を、ノーザンブロット法によって測定した。サイクリンAおよびPCNAの両方は、G1期からS期への細胞周期進行に必要である。図3Dに示すように、ヒトVSMCおよびラット大動脈平滑筋細胞の両方において、高濃度グルコースおよび血清の両方が、PCNAおよびサイクリンA mRNAの発現を刺激した。ミスマッチのODNではなく、AP−1デコイODNのトランスフェクションにより、これらの遺伝子の高濃度グルコースおよび血清誘導性の発現の低減が引き起こされた。さらに、このような刺激条件において、これらの遺伝子発現に対するCDODNの阻害効果は、PSODNよりも強かった。
(インビトロにおける平滑筋細胞の増殖および遊走の阻害に対するAP−1デコイODNの効果)
高濃度グルコースおよび血清刺激性の初代培養ヒトVSMCおよびラットVSMCの増殖を、コントロールと比較した(図4Aおよび4B)。AP−1デコイODNのトランスフェクションにより、高濃度グルコースまたは血清によって刺激される細胞と比較して、細胞増殖の有意な阻害が引き起こされた(p<0.05)。注目すべきは、CDODNが、細胞増殖をほぼ完全に阻害することである(p<0.01)。同様に、VSMCの遊走は、高濃度グルコースおよび高濃度血清の両方によって、コントロールと比較して増大し(図4Cおよび4D、p<0.05)、そして、この高濃度グルコースおよび高濃度血清の両方によって刺激された遊走は、AP−1デコイODNでの処理によって有意に低減され(p<0.01)、一方、CDODNは、遊走に対して最も強力な阻害効果を示した(p<0.001)。
(ラットバルーン損傷頸動脈における新内膜形成に対するCDODNの効果)
本発明者らは、蛍光(FITC)−標識化AP−1デコイODNを用いたHVJ−リポソーム法のラット頸動脈中へのトランスフェクション効率を試験した。HVJ−リポソーム法によるFITC−標識化ODNのトランスフェクションにより、強い蛍光を生じ(図5AおよびB)、動脈の全層において容易に検出された。従って、本発明者らは、ラット頸動脈中にAP−1デコイODNをトランスフェクトするために、HVJ−リポソーム法を選択した。
HVJ−リポソーム法を用いて、ラット頚動脈バルーン損傷モデルにおける新内膜形成に対するAP−1デコイODNの効果を検査した。図5に示すように、ミスマッチのODNとトランスフェクトした脈管は、未処理の脈管と同様に、トランスフェクションの2週間後に新内膜形成を示した。対照的に、PSODNおよびCDODNの単回投与は、新内膜形成の有意な低下を引き起こした(p<0.001)。インビトロのデータと一致して、新内膜形成に対するCDODNの阻害効果は、PSODNよりも強力であった(p<0.0001)。
次いで、本発明者らは、損傷頚動脈における新内膜形成の阻害に対するAP−1デコイODNの前処理および後処理の効果を比較した。図6に示すように、バルーン損傷前のラット頸動脈中へのAP−1デコイODNでの前処理は、新内膜形成の阻害において、後処理よりも有効であった(バルーン損傷脈管と比較して、p<0.0001、CDODNの後処理と比較して、p<0.01)
(インビボにおけるAP−1 DNA結合活性および遺伝子発現に対するAP−1デコイODNの効果)
AP−1デコイODNが、インビボにおけるAP−1 DNA結合活性を効果的にブロックしたことを確認するために、本発明者らは、損傷動脈由来の細胞を用いて、ゲル移動性シフトアッセイを行った。図7Aに示すように、AP−1 DNA結合活性は、損傷後30分で増大し、損傷後3時間で最大になった。この活性化は、CDODNでの処理によって阻害された。デコイODNでの前処理は、後処理よりもより効果的にAP−1活性を低減させた。
細胞増殖に対するAP−1デコイODNの阻害効果は、PCNA染色(正常な状態および疾患状態の両方における増殖マーカーとして広く用いられる)によって確認された。図7Bに示すように、非損傷動脈におけるPCNA染色はなかった。損傷の2週間後、PCNA染色陽性の細胞における顕著な増大が、新内膜領域および再増殖した内皮細胞中に検出された。対照的に、AP−1デコイODNで処理された脈管において、PCNA染色陽性の細胞はさらに少なかった。
(実施例2:新規E2Fデコイオリゴデオキシヌクレオチドの効果)
(材料および方法)
(動物)
体重280〜320gの9〜10週齢の雄性Sprague−Dawley(SD)ラットを用いた。全ての手順は、研究施設における動物研究に関する指針に従った。
(細胞培養)
ヒトVSMCを、心臓移植ドナーの胸大動脈から単離した。この組織の収集は、機関の倫理委員会によって承認された。ラットVSMCを、成体雄性SDラットの胸大動脈から回収した。VSMCを、20% FBS(Gibco BRL)を含むDMEM(Gibco BRL,Grand Island,NY,USA)中で培養した。VSMCの純度を、平滑筋特異的なα−アクチンモノクローナル抗体(Sigma,St.Louis,MI,USA)を用いるポジティブ染色によって特徴付けた。
100mmディッシュ中で80〜90%のコンフルエンスに達した後、ヒトVSMCを、無血清培地中で24時間血清飢餓させ、そしてコントロール正常グルコース培地(5.5mmol/l D−グルコースを含むDMEM)または馴化培地(10%血清および22mmol/l D−グルコースを含むDMEM)のいずれかに供した。次いで、細胞を、以下に記載されるような核タンパク質抽出またはRNA抽出で処理した。
(ダンベル型デコイODNの構築)
本発明において使用される、E2F結合部位に対するダンベル型およびホスホロチオエート二重鎖ODNならびに変異型ODNの配列は、以下の通りである:CD−E2F(注記;コンセンサス配列に下線を付す)、5’−GGATCCGTTTCGCGCTATTGCAAAAGCAATAGCGCGAAAC−3’(配列番号6);ホスホロチオエートE2Fデコイ(PS−E2F)、5’−ATsTTAAGTTTCGCGCCCTTTCTCAsAs−3’(配列番号7);変異型E2Fデコイ(M−E2F)、5’−GGATCCGTTTCGATTTATTGCAAAAGCAATAAATCGAAAC−3’(配列番号8)。CD−E2Fは、ステムループ構造を形成すると予測された。ステムは、各オリゴの両端の相補的な配列によって形成される。ステムの5’末端は、BamHIの酵素部位として6塩基の一本鎖配列5’−GGATCC−3’を有する。2つのオリゴ分子を、両方の5’末端の相補的な6塩基の配列によって連結した。温度を80℃から25℃に低下させながら、ODNを2時間アニーリングさせた。1単位のT4 DNAリガーゼを添加し、そして16℃で24時間インキュベートして、共有結合したダンベル型デコイ分子を生成した。CD−E2Fは、2つのループおよび2つのE2Fコンセンサス配列を含む1つのステムからなる(図8A)。
(CD−E2Fの安定性)
CD−E2Fの安定性を試験するために、各々1μgのPS−E2F、非連結ホスホジエステルオリゴおよびCD−E2Fを、ヒト血清、FBS、エキソヌクレアーゼIIIまたはS1ヌクレアーゼのいずれかと共にインキュベートした。DNase活性を維持するために、全ての血清を熱不活化せずに使用した。各血清を100μlの反応容積中50%までオリゴに添加し、そして37℃で24時間インキュベートした。オリゴ1μg当たり160単位のエキソヌクレアーゼIII(Takara,Otsu,Japan)をオリゴに添加し、そして37℃で2時間インキュベートした。オリゴ1μg当たり10単位のS1ヌクレアーゼ(Takara)をオリゴに添加し、そして25℃で30分間インキュベートした。次いで、これらのオリゴをフェノールおよびクロロホルムで抽出し、そして15%変性ポリアクリルアミドゲルで試験した。
(インビトロ遺伝子移入)
細胞に、新鮮な培養培地を供給し、その一日後に、デコイを添加し、そして各試験の前にOpti−MEM(Gibco BRL)で2回洗浄した。細胞を、LipofectinTM(モル比;DNA:脂質=1:3)(Gibco BRL)と合わせて、100nMのデコイODNでトランスフェクションした。デコイODN:Lipofectinの混合物を、製造業者の指示に従って細胞に滴下した。これらの細胞を37℃で5時間インキュベートした。次いで、新鮮な培地を10% FBSに交換した後、これらの細胞をCOインキュベータ中でインキュベートした。
(VSMC増殖に対するデコイODNの効果)
VSMCを、96ウェルの組織培養プレートに播種した。30%コンフルエンスで、VSMCを、規定された無血清培地中で24時間インキュベートすることによって静止状態にした。次いで、Lipofectin:デコイODN(100nMのODNを含む)をウェルに添加した。これらの細胞を37℃で5時間インキュベートした。2〜3日後、細胞増殖の指標を、WST細胞計数キット(Wako,Osaka,Japan)を使用して決定した。
(電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA))
核抽出物を、Ahn JDら、2001(前出)に記載されるようにVSMCから調製した。簡潔には、E2Fおよび変異型ODNに対するプローブのようなDNAプローブを、[γ−32P]ATPおよびT4ポリヌクレオチドキナーゼを使用して、プライマーと
して標識した。末端標識後、32P標識したODNをNAP−5カラムを用いて精製した。タンパク質−DNA結合反応を、20μlの容量で室温にて20分間実施した。この反応混合物は、6μgの核抽出物、100μg/mlのポリdI:dC、10mmol/l
Tris/HCl(pH7.5)、50mmol/l NaCl、0.5mmol/l
EDTA、0.5mmol/l DTT、1mmol/l MgCl、4%グリセロールおよび60,000cpm 32P標識プライマーDNAを含んだ。インキュベーション後、サンプルを、0.5×Tris−ホウ酸−EDTA緩衝液中で4%非変性ポリアクリルアミドゲルに充填し、そして150Vで2時間泳動した。ゲルを乾燥させ、そしてオートラジオグラフィーによって可視化した。競合実験について、実験条件は、適切な競合ODNを、反応混合物に対して50倍〜100倍モル過剰で添加し、その後各抽出物を添加したこと以外、同一であった。
(ノーザンブロット分析)
PCNAおよびサイクリンAの遺伝子発現を、ノーザンブロットによって測定した。10μgの総RNAを、1%ホルムアルデヒド−アガロースゲルにアプライし、そしてナイロンメンブレンに移した。このナイロンメンブレンをExpress HybTM溶液中で65℃で2時間、放射性標識したPCNA cDNAプローブまたはサイクリンA cDNAプローブ(Dr Young−Chae Chang,Dankook University Medical School,Koreaにより贈与)とハイブリダイズさせ、そして製造業者の指示に従って洗浄した。このメンブレンを、24〜48時間X線に曝露し、そしてmRNA発現を、濃度測定分析によって定量した。充填の差異を、18s rRNA cDNAプローブを用いて正規化した。
(センダイウイルス(HVJ)−リポソームの調製)
HVJ−リポソームを、Ahn JDら、2001(前出)に記載されるように調製した。簡潔には、コレステロール、ジオレイル−ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリンおよびホスファチジルセリンを、50:13.3:13.3:13.3:10のモル比で混合した。この脂質混合物を、クロロホルムの除去によってフラスコ側面に堆積させた。乾燥脂質を、ODNを含む、200μlの平衡塩溶液(BSS;137mmol/l NaCl、5.4mmol/l KCl、10mmol/l Tris−HCl、pH7.6)中に水和した。リポソームを、攪拌および濾過によって調整した。精製HVJ(Z株)を、使用直前に3分間のUV照射によって不活化した。リポソーム懸濁物を、総容量2mlのBSS中でHVJと混合した。この混合物を4℃で5分間インキュベートし、次いで、37℃で30分間穏やかに攪拌した。遊離のHVJを、スクロース密度勾配遠心分離によってHVJリポソームから除去した。スクロース勾配の上層を、使用するために収集した。
(バルーン損傷およびインビボの遺伝子移入)
2つのFrench Fogartyカテーテルを使用して、雄性SDラットの血管損傷を誘導した。これらのラットを、ペントバルビタールで麻酔し、そして左総頚動脈を外科的に露出させた。カニューレを、外部総頚動脈を介して総頚動脈中に導入した。インビボの遺伝子移入を、挿入したバルーンカテーテルを3回膨脹させることによって、総頚動脈の血管損傷を誘導した後に、実施した。損傷したセグメントを、一時的結紮によって一過的に隔離した。バルーン損傷後、CDE2F、M−E2F、FITC−標識化PS−E2FまたはHVJ−リポソームのみのいずれかを含む、20μlのHVJ−リポソーム複合体を、室温にて管腔内で10分間インキュベートした。10分間のインキュベーション後、注入カニューレを除去した。トランスフェクション後、総頚動脈への血流を、結紮の解放によって回復させ、次いで、創傷を閉じた。有害な神経学的効果も血管の効果も、この手順を受けた全ての動物で観察されなかった。
(ルシフェラーゼアッセイ)
E2Fルシフェラーゼ構築物は、Dr.Youngchae Jang(Dankook University,Chunan,Korea)の厚意により提供された。ルシフェラーゼ発現を分析するために、細胞をPBSで2回洗浄し、そして200μlの1×Reporter溶解緩衝液(Promega,Madison,WI,USA)で溶解させた。50μlの各溶解物を、ルシフェラーゼ活性について試験した。
(組織学的分析)
トランスフェクションの2週間後、ラットを屠殺し、そして血管を4%パラホルムアルデヒドで灌流固定した。新内膜(neointima)サイズを、サンプルの正体について盲目の個体による形態測定によって定量した。内部領域および中間領域を、デジタル化システム(モデルINTUOS 6x8,Wacom,Vancouver,WA,USA)で測定した。FITC標識E2FデコイODNトランスフェクションの場合、血管を、トランスフェクション後の3日目に回収し、そして4%パラホルムアルデヒドで灌流固定した。切片を、蛍光顕微鏡によって試験した。免疫組織化学について、切片を、ウサギ抗増殖細胞核抗原抗体(1:200希釈、SantaCruz,Santa Cruz,CA,USA)と共にインキュベートし、そして標準的な様式で免疫組織化学のために処理した。
(統計的分析)
結果を、平均値±SEMとして示す。引き続くDuncan試験を用いた分散の分析を使用して、複数の比較における差異の有意差を決定した。P<0.05を、統計的に有意とみなした。全ての実験を少なくとも3回実施した。
(結果)
(CD−E2Fの安定性)
新たに合成したCD−E2Fの安定性を調査するために、本発明者らは、ヌクレアーゼの存在下での分子の安定性を最初に試験した(図8B)。CD−E2Fは、予測どおり、エキソヌクレアーゼIIIに耐性であり、そしてゲル電気泳動において主要なバンドとして観察された。CD−E2Fと対照的に、PS−E2Fおよびアニールしたデコイの両方が、エキソヌクレアーゼIIIとの2時間のインキュベーション後に、完全に分解された。CD−E2Fのステムループ構造を確認するために、本発明者らは、S1ヌクレアーゼを使用して、CD−E2Fの分子特徴をさらに試験した。デコイを、DNA分子中の一本鎖領域を消化するS1ヌクレアーゼと共にインキュベートした。CD−E2F(74塩基)およびPS−E2F(50塩基)の両方のステム領域は、S1ヌクレアーゼから保護されるが、アニールした型のデコイのステム領域は保護されないことが見出された(図8B)。
エキソヌクレアーゼ活性は、細胞質および血清におけるヌクレアーゼ活性のほとんどを構成することが報告されている。従って、本発明者らは、熱不活化していない血清とのインキュベーションによって、デコイの安定性を試験した。デコイを、50%の非不活化ヒト血清、FBSまたはウシ血清で24時間処理した。PS−E2Fおよびアニールした型のデコイの両方が、各血清の存在下での24時間のインキュベーション後に、有意に加水分解された。しかし、CD−E2Fは、これらの異なる血清との24時間のインキュベーション後にほぼインタクトなままであり、PS−E2Fおよびアニールした型のデコイの両方と比較して、改善された安定性を示した(図8B)。
(E2Fの、E2F標的部位を有するCD−E2Fに対する特異的結合)
CD−E2Fの配列特異性を試験するために、インビトロ競合アッセイを実施した。非標識E2Fデコイの増大は、E2Fタンパク質によって形成される複合体に対応する、遅
延したバンドの強度を減少させた(図9A)。競合物としての非標識PS−E2Fの1000倍モル過剰は、E2F結合において、標識プローブに対して完全に競合した。他方で、CD−E2FをPS−E2Fの代わりに競合物として使用した場合、100倍モル過剰の非標識CD−E2F競合物のみが、標識プローブに対するE2F結合について完全に競合するのに必要であった。次に、本発明者らは、デコイがE2FのDNA結合活性を特異的に阻害し得るか否かを調べるために、細胞にデコイをトランスフェクトした。予測されるように、高濃度のグルコースおよび血清を含む馴化培地における培養は、コントロール培地中での培養と比較して、E2F結合活性が有意に増大していた(図9B、p<0.01)。PS−E2FおよびCD−E2Fのトランスフェクションは、高濃度のグルコースおよび血清によって誘導されるE2F DNA結合活性を有意に減弱させた(p<0.01)。しかし、高濃度のグルコースおよび血清によって誘導されるE2F DNA結合活性の増大は、PS−E2Fと比較して、CD−E2Fによって強力に阻害された(p<0.05)。
(平滑筋細胞におけるサイクリンプロモーター活性に対するE2Fデコイの効果)
本発明者らは、プロモーター活性に対するE2Fデコイの効果を調査するために、レポーター遺伝子構築物を使用した。この構築物は、プロモーター領域中にE2F結合部位を含む。高濃度のグルコースによるサイクリンAプロモーター活性のアップレギュレーションに対するE2F結合部位の役割を調査するために、本発明者らは、種々の長さのヒトサイクリンAの5’隣接配列を含む、一連のルシフェラーゼレポーター遺伝子プラスミドを、高濃度のグルコースで処理した平滑筋細胞中にトランスフェクトした。これらのプラスミド中で、2つのプラスミド(pCA−133/+205およびpCA−133/−2)だけが、有意に減少したルシフェラーゼ活性を示し(図10A)、そしてpCA−133/−2構築物(本発明者らが、サイクリンAプロモーターから2つのE2F結合部位を欠失させた)の活性は、最低だった。これらのデータは、E2F部位が、VSMCにおける高濃度のグルコースによるサイクリンAプロモーター活性のアップレギュレーションを媒介することを示す。次に、本発明者らは、レポーター遺伝子プラスミドpCA−266/+205および[E2F]X4−Luc(これは、プロモーター領域中に4つのE2F結合部位を含む)のプロモーター活性に対するE2Fデコイの阻害効果を調査した。予想されるように、E2Fデコイの共トランスフェクションは、高濃度のグルコースおよび血清によってアップレギュレートされたルシフェラーゼ遺伝子発現を顕著に減弱させた(図10BおよびC、p<0.01)。また、CD−E2Fは、PS−E2Fよりも有効であり(p<0.05)そしてM−E2Fは、ルシフェラーゼ活性の増大を無効にした。
(VSMCにおける細胞周期調節遺伝子の発現に対するE2Fデコイの効果)
本発明者らは、内因性の細胞周期調節遺伝子の発現に対するE2Fデコイの効果を評価した。図11に示されるように、高濃度のグルコースおよび血清は、ヒトVSMCおよびラットASMCの両方において、サイクリンA遺伝子およびPCNA遺伝子の発現を刺激した(p<0.01)。M−E2FではなくE2Fデコイのトランスフェクションは、PCNAおよびサイクリンAの遺伝子発現の減弱を生じた(p<0.01)。18S rRNA発現は、E2Fデコイのトランスフェクションによって影響されなかった。これらの遺伝子の発現に対するCD−E2Fの阻害効果は、これらの刺激条件下で、PS−E2Fよりも強力であった(p<0.05)。
(インビトロのVSMC増殖の阻害に対するE2Fデコイの効果)
バルーン損傷に対する血管の共通の特徴は、VSMCの増殖であるので、E2Fデコイを、平滑筋細胞の増殖を阻害するその能力について試験した。高濃度のグルコースおよび血清での処理は、WST細胞計数キットによって評価されるように、コントロールと比較して、培養初代ヒトVSMCおよびラットVSMCの増殖を刺激した(図12AおよびB)。E2Fデコイのトランスフェクションは、高濃度のグルコースまたは血清で刺激され
た細胞と比較して、細胞増殖の有意な阻害を生じた(p<0.01)。CD−E2Fは、ほぼ完全に細胞増殖を阻害した(PS−E2Fと比較してp<0.05)。
(バルーン損傷したラット頚動脈に対するCD−E2Fの効果)
本発明者らは、HVJ−リポソーム法を使用して、ラット頚動脈へのE2Fデコイのトランスフェクションの効率を試験した。HVJ−リポソーム法を使用する、FITC標識E2Fデコイのトランスフェクションは、動脈の全ての層において容易に検出される強い蛍光を生じた(図13B)。従って、本発明者らは、実験の残りについて、ラット頚動脈へE2Fデコイをトランスフェクションするために、HVJ−リポソーム法を使用した。
本発明者らは、ラット頚動脈バルーン損傷モデルにおいてE2Fデコイを使用して、インビボ抗原ストラテジーの効果を試験した。図13に示されるように、M−E2Fでトランスフェクトした血管は、トランスフェクション後2週間目で、未処理の血管と類似の新内膜形成を示した。対照的に、PS−E2FおよびCD−E2Fの単一の投与は、新内膜形成の有意な減少を生じた(p<0.001)。インビトロのデータと一致して、新内膜形成に対するCD−E2Fの阻害効果は、PS−E2Fよりも強力であった(p<0.05)。デコイ処理は、中間領域を変更しなかった。新内膜形成における減少は、トランスフェクトされた領域に限定された。
PCNAの遺伝子は、E2F依存性であることが示され、そして元々、その出現が細胞の増殖状態と相関する核タンパク質として定義された。従って、本発明者らは、PCNA発現に対するバルーン損傷の効果と、E2Fデコイでの処理がPCNA発現を阻害するかどうかとを試験した。図14に示されるように、非損傷のコントロール動脈においては、PCNA染色は存在しなかった。損傷の2週間後、新内膜領域のPCNAポジティブ細胞および再増殖する内皮細胞の顕著な増大が存在した。対照的に、E2Fデコイ処理した血管のPCNAポジティブ細胞の数は、未処理の血管よりもかなり低かった。
(実施例3:新規NF−κBデコイオリゴヌクレオチドの効果)
(ダンベル型デコイODNの構築)
本発明において使用された、NFκB結合部位に対するダンベル型およびホスホロチオエート二本鎖ODNの配列ならびに変異型ODNは、以下の通りである:CD−NF(注記:コンセンサス配列に下線を付す)、5’−GGATCCGGGGATTTCTATTGCAAAAGCAATAGCGCGAAAC−3’(配列番号15);ホスホロチオエートNFκBデコイ(PS−NF)、5’−ATsTTAAGGGGATTTCCCTTTCTCAsAs−3’(配列番号16):変異型E2Fデコイ(M−NF)、5’−GGATCCGGGGATATTTATTGCAAAAGCAATAAATCGAAAC−3’(配列番号17)。CD−NFは、ステムループ構造を形成することが予測された。ステムは、各オリゴの両端における相補的配列によって形成される。ステムの5’末端は、BamHIの酵素部位として6塩基の一本鎖配列5’−GGATCC−3’を有する。2つのオリゴ分子を、両方の5’末端で、相補的な6塩基の配列によって連結した。温度を80℃から25℃に低下させながら、ODNを2時間アニーリングさせた。1単位のT4 DNAリガーゼを添加し、そして16℃で24時間インキュベートして、共有結合したダンベル型デコイ分子を生成した。CD−NFは、2つのループおよび2つのNFκBコンセンサス配列を含む1つのステムからなる。
(NF−κBデコイ(デコイオリゴヌクレオチド)の合成)
DNA合成機で、NF−κBデコイオリゴヌクレオチドおよびスクランブルデコイオリゴヌクレオチド(NF−κBデコイオリゴヌクレオチドと同じ塩基組成であるがランダム化された配列を有するオリゴヌクレオチド)(これらのヌクレオチド配列は、以下に示される)を、それぞれ、S−オリゴヌクレオチドから合成した。これらのヌクレオチドを8
0℃で30分間加熱し、次いで2時間かけて室温まで冷却させて、二本鎖DNAを提供した。
NF−κBデコイオリゴヌクレオチド
CCTTGAAGGGATTTCCCTCC(配列番号9)
GGAACTTCCCTAAAGGGAGG(配列番号18)
スクランブルデコイオリゴヌクレオチド
TTGCCGTACCTGACTTAGCC(配列番号19)
AACGGCATGGACTGAATCGG(配列番号20)。
(CD−NFの安定性)
CD−NFの安定性を試験するために、各々1μgのPS−NF、非連結ホスホジエステルオリゴおよびCD−NFを、ヒト血清、FBS、エキソヌクレアーゼIIIまたはS1ヌクレアーゼのいずれかと共にインキュベートした。DNase活性を維持するために、全ての血清を熱不活化せずに使用した。各血清を100μlの反応容積中50%までオリゴに添加し、そして37℃で24時間インキュベートした。オリゴ1μg当たり160単位のエキソヌクレアーゼIII(Takara,Otsu,Japan)をオリゴに添加し、そして37℃で2時間インキュベートした。オリゴ1μg当たり10単位のS1ヌクレアーゼ(Takara)をオリゴに添加し、そして25℃で30分間インキュベートした。次いで、これらのオリゴをフェノールおよびクロロホルムで抽出し、そして15%変性ポリアクリルアミドゲルで試験した。
(インビトロ遺伝子移入)
細胞に、新鮮な培養培地を供給し、その一日後に、デコイを添加し、そして各実験の前にOpti−MEM(Gibco BRL)で2回洗浄した。細胞を、LipofectinTM(モル比;DNA:脂質=1:3)(Gibco BRL)と合わせて、5μMのデコイODNでトランスフェクションした。デコイODN:Lipofectinの混合物を、製造業者の指示に従って細胞に滴下した。これらの細胞を37℃で5時間インキュベートした。次いで、10% FBSを含む新鮮な培地に交換した後、これらの細胞をCOインキュベータ中でインキュベートした。
(CD−NFのセンダイウイルス(HVJ)−リポソームの調製)
HVJ−リポソームを、Ahn JDら、2001(前出)に記載されるように調製した。簡潔には、コレステロール、ジオレイル−ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリンおよびホスファチジルセリンを、50:13.3:13.3:13.3:10のモル比で混合した。この脂質混合物を、クロロホルムの除去によってフラスコの側面に堆積させた。乾燥脂質を、ODNを含む、200μlの平衡塩溶液(BSS;137mmol/l NaCl、5.4mmol/l KCl、10mmol/l Tris−HCl、pH7.6)中に水和した。リポソームを、攪拌および濾過によって調整した。精製HVJ(Z株)を、使用直前に3分間のUV照射によって不活化した。リポソーム懸濁物を、総容量2mlのBSS中でHVJと混合した。この混合物を4℃で5分間インキュベートし、次いで、37℃で30分間穏やかに攪拌した。遊離のHVJを、スクロース密度勾配遠心分離によってHVJリポソームから除去した。スクロース勾配の上層を、使用するために収集した。
(正常なNF−κBデコイのリポソーム調製物の生成)
1:4.8:2の重量比(合計10mg)で提供されたホスファチジルセリン、ホスファチジルコリンおよびコレステロールを、テトラヒドロフラン中に溶解させた。ロータリーエバポレータを使用して、テトラヒドロフランを脂質溶液から除去して、この脂質をフラスコ壁に接着したフィルムの形態にした。これに、実施例1において調製したNF−κ
Bデコイオリゴヌクレオチド(0.7mg)を含む約200mlの生理食塩水(BSS;139mM NaCl、5.4mM KCl、10mM Tris−HCl、pH7.6)を添加し、そしてこの混合物を通常の条件下で攪拌し、超音波処理して、NF−κBデコイオリゴヌクレオチドを含むリポソーム懸濁物を提供した。このリポソーム小胞の懸濁物(0.5ml、脂質含量10mg)を、使用の3分前に、UV照射(110erg/mm/秒)に曝露した精製センダイウイルス(Z株10000血球凝集単位)と混合し、そしてこの混合物を、BSSで4mlにした。この混合物を4℃で5分間維持し、次いで、37℃で30分間の穏やかな攪拌に供した。リポソームに結合しなかったセンダイウイルスをスクロース密度勾配遠心によって除去した後、最上層を分離し、そしてその濃度をBSSで調節して、捕捉された場合に8μMのNF−κBデコイオリゴヌクレオチドを含むリポソーム調製物を提供した。リポソーム調製物を、NF−κBデコイオリゴヌクレオチドの代わりに、実施例1のスクランブルデコイオリゴヌクレオチドを使用して同様に生成した。
(再灌流モデル実験)
((1)方法)
9〜10週齢のSDラットをペントバルビタールナトリウムで麻酔した後、カニューレを、気道に隣接する左頚動脈中に挿入し、そして心臓の大動脈弁の近傍(冠状動脈の口の近く)に留置した。さらに、気管にカニューレ挿入し、そして動物を、気管カニューレを人工呼吸器に接続することによって、支持的呼吸においた。その後、左肋間切開を行い、ラット心臓の左下行前動脈を結紮して、虚血状態を生じた。30分後、結紮縫合を切断して、再灌流を開始した。その直後、1.5ml/ラットの、上記のように調製した、リポソームに捕捉されたCD−NF、PS−NF、M−NF、NF−κBデコイヌクレオチドまたはスクランブルデコイヌクレオチドを、冠状動脈の口の近くに留置されたカニューレを介して、投与した。胸部を閉じた後、気管もまた縫合し、そして動物を生存させた。24時間後、このラットを再麻酔し、そして心臓を摘出し、そして生理食塩水で洗浄した。ラット心臓の心室を、6枚の切片にスライスし、これを、塩化テトラゾリウム(TTC)で染色した。6枚の切片をそれぞれ撮影し、そして画像分析に供した。梗塞領域を、以下の式によって計算した。
梗塞率(%)=6枚の切片の梗塞面積の合計/6枚の切片の合計×100
統計的分析を、多重比較(ANOVA)によって行った。
((2)結果)
未処置コントロール群、M−NFおよびスクランブルデコイ処置群において、心筋梗塞は、ほぼ等しい程度で見出された。CD−NF、PS−NFおよびNF−κBデコイヌクレオチドを与えられた群において、梗塞は、未処置コントロール群、M−NFおよびスクランブルデコイ処置群から、有意な程度まで抑制される。これらのポジティブ群において、CD−NFを与えられた群は、正常なデコイまたはPS−NFよりも、有意により高い抑制を示す。
類似の阻害効果は、リポソームが梗塞の誘導直前に投与される場合に見出された。
(癌転移の阻害)
((1)方法)
7週齢のC57BL/6株の雌性マウスに、1×10のマウス小網細胞肉腫M5076細胞を静脈内投与し、そして24時間後、各々0.2ml(6nmole)の、リポソームに捕捉された、上記と同じ様式で調製された、上記で調製したCD−NF、PS−NF、M−NF、NF−κBデコイヌクレオチドまたはスクランブルデコイヌクレオチドを静脈内投与した。コントロール群は、同じ様式で0.2mlの生理食塩水を受けた。M5076の静脈内注射後14日目に、動物を剖検し、そして肝臓表面上の腫瘍小節の数を、
立体顕微鏡下で計数した。各群は、10匹のマウスからなった。統計的分析のために、Kruskal−Wallis試験およびDunnett多重比較を使用した。
((2)結果)
CD−NF、PS−NFおよびNF−κBデコイ処置した群は、M−NFで処置した群またはコントロール群よりも腫瘍サイズの抑制における有意な効果を示した。これらのポジティブ群の中で、CD−NFを受けた群は、正常デコイまたはPS−NFよりも、腫瘍サイズにおける有意に大きい抑制を示す。
(悪液質の阻害)
((1)方法)
7週齢の雄性BALB/cマウスを使用して、マウス結腸癌系統Colon 26の2mm立方の腫瘍塊を、皮下移植した。移植後7日目に開始して、0.2ml(6nmole)のリポソームに捕捉された、上記のように調製したCD−NF、PS−NF、M−NF、NF−κBデコイヌクレオチドまたはスクランブルデコイヌクレオチドを、この腫瘍塊に投与し、そして体重および腫瘍重量を連続的に決定した。動物を13日目に剖検し、そして精巣上体脂肪および腓腹筋を単離し、そして計量した。さらに、残りの器官および腫瘍を全て除いた死体の湿重量を決定した。腫瘍重量を、以下の式によって、各腫瘍塊の大きい方の直径および小さい方の直径から計算した。
腫瘍重量(mg)=大きい方の直径×小さい方の直径/2
各群は、10匹のマウスからなった。統計的分析を、一方向のレイアウトのANOVAおよびDunnett多重比較によって行った。
((2)結果)
腫瘍保有群において、腫瘍の増殖は、体重、精巣上体脂肪重量、腓腹筋重量および死体湿重量の有意な増加を生じた。CD−NF、PS−NFおよびNF−κBデコイ群において、改善が得られる。この改善は、PS−NF群またはNF−κB群よりも、CD−NF群において有意に高い。しかし、M−NF群およびスクランブルデコイ群においては改善は見出されない。M−NF群またはスクランブルデコイ群においては、腫瘍重量に対する明確な効果は存在しない。
本発明の上記の実施形態の記載は、例示および説明の目的のために提供されている。これらは、網羅的であることも、開示された明確な形態に本発明を限定することも意図せず、そして上記教示に鑑みて多くの改変およびバリエーションが明らかに可能である。これらの実施形態は、本発明の原理およびその実際の適用を最良に説明し、それによって、当業者が、意図された特定の使用に適切である種々の実施形態で、そして種々の改変を共なって、本発明を最良に利用することができるようにするために、選択し、記載した。本発明の範囲は、本明細書に添付される特許請求の範囲によって規定されることが意図される。本明細書中に引用される全ての参考文献は、本明細書中で参考として援用される。
本発明は、2つのループ構造および1つのステム構造を備える環状ダンベルオリゴヌクレオチド(CDODN)を提供し、ここで、このステム構造は、転写因子のDNA結合ドメインと結合し得るヌクレオチド配列を含む。本発明はさらに、このCDODNを含む薬学的組成物を提供する。この薬学的組成物は、このような転写因子に関する疾患または傷害を処置および/または予防するために使用され得る。本発明はまた、このような転写因子に関する疾患または傷害を処置および/または予防するための方法を提供し、この方法は、治療有効量の、2つのループ構造および1つのステム構造を備えるCDODNを被験体に投与する工程を包含し、ここで、このステム構造は、転写因子のDNA結合ドメインと結合し得るヌクレオチド配列を含む。
さらに、本発明は、転写因子AP−1のトランス活性化能力を阻害することによる、血管形成術後の再狭窄の処置のための方法および組成物を提供する。これらの組成物および方法は、血管障害の処置において有用である。
本発明はまた、転写因子AP−1およびE2Fに対する新規の環状ダンベルオリゴヌクレオチドデコイ(CDODN)を提供し、これは、AP−1およびE2F関連の傷害の処置およびこれらの転写因子の細胞での役割を解明する際に有用である。

Claims (11)

  1. 2つのループ構造および1つのステム構造を備える環状ダンベルオリゴデオキシヌクレオチド(CDODN)であって、該ステム構造が、転写因子のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列を含む、CDODNであって、該転写因子がE2Fであり、該ヌクレオチド配列がTTTCGCGCである、CDODN。
  2. 酵素的連結によって共有結合する2つの相同なステムループ構造を有する、請求項1に記載のCDODN。
  3. いかなる化学改変されたヌクレオチドも含まない、請求項1または2に記載のCDODN。
  4. 前記ステム構造が、2つ以上の転写因子のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載のCDODN。
  5. 前記相同なステムループ構造のそれぞれの配列が、配列番号6の配列である、請求項2に記載のCDODN。
  6. 被験体において、転写因子に関連する疾患または障害を処置または予防するための薬学的組成物であって、該薬学的組成物は、治療有効量の2つのループ構造および1つの該転写因子のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列を含むステム構造を備えたCDODN、ならびに薬学的受容可能キャリアを含有する、薬学的組成物であって、該転写因子がE2Fであり、該ヌクレオチド配列がTTTCGCGCである、薬学的組成物。
  7. 前記薬学的受容可能キャリアが、HVJ−リポソーム組成物である、請求項6に記載の薬学的組成物。
  8. 前記CDODNが酵素的連結によって共有結合する2つの相同なステムループ構造を有し、該相同なステムループ構造のそれぞれの配列が、配列番号6の配列である、請求項6に記載の薬学的組成物。
  9. 被験体において転写因子に関連する疾患または障害を処置または予防するための医薬品の製造における、治療有効量の2つのループ構造および1つのステム構造を備えたCDODNの使用であって、ここで、該ステム構造は、該転写因子のDNA結合ドメインに結合し得るヌクレオチド配列を含む、使用であって、該転写因子がE2Fであり、該ヌクレオチド配列がTTTCGCGCである、使用。
  10. 前記医薬品が、HVJ−リポソーム組成物の形態である、請求項に記載の使用。
  11. 前記CDODNが酵素的連結によって共有結合する2つの相同なステムループ構造を有し、該相同なステムループ構造のそれぞれの配列が、配列番号6の配列である、請求項に記載の使用。
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