JP4368866B2 - 測位装置 - Google Patents
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ところで、フェーディング現象による受信信号の強度低下を防止するため、GPS衛星からの信号を受信するn個(nは1以上の整数)のアンテナ10−1〜10−nと、受信信号を復調するn個の受信処理部11−1〜11−nと、ベースバンド信号から(m×n)チャンネルの位置情報を算出する(m×n)個のベースバンド信号処理部13−11〜13−nmを設け、(m×n)個のベースバンド信号処理部13−11〜13−nmで算出された(m×n)チャンネルの位置情報から、ダイバシティ処理を行って、移動体の位置情報を算出し、空間ダイバシティと時間ダイバシティとにより、移動体の位置を算出するように構成された測位装置が知られいる(例えば、特許文献1を参照。)。
一方、発信機からの電波を複数の受信機で受信し、その受信信号に基づいて発信機の位置を一定周期ごとに測位するとともに、次回周期測位予測値を推定する機能を備えており、複数の受信機の受信信号による観測値と、推定された次回周期測位予測値による予測値との比較に基づいて測位予測誤差を算出する測位処理部と、測位予測誤差に基づいて発信機の測位値及び次回周期測位予測値の状態推定を行うフィルタ手段とを備えた測位装置が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
しかし、空間ダイバシティ処理では、マルチパスにより遅延または分散した信号をかき集めて合成するため、受信機の構成が複雑になるという問題がある。
他方、上記第2の測位装置は、受信機間の位相差によるのではなく、受信機ごとの観測値及び位相予測値を用いて測位演算を行い、さらに受信機ごとの位相観測値に対する予測誤差に荷重して測位演算を行うことにより、フェーディング等の影響を個別に抑制しているが、上記第2の測位装置についても、やはり受信機の構成が複雑になるという問題がある。
そこで、本発明は、上記実情に鑑み創案されたものであって、受信機の簡易な構成によりマルチパスフェーディング環境下におけるマルチパス信号を排除し、安定した直接波信号の信号強度を確保した高い測位精度および高い利用性を有する測位装置を提供することを目的とする。
GNSS衛星等から送信されるGNSS信号は、所定のデータを含む搬送波が特定の符号(コード)によって変調されている。また、マルチパス信号波はアンテナに到達するまでの間に複数回の反射を繰り返し、搬送波の位相およびコードの位相について、直接波信号に係る搬送波の位相およびコードの位相に対して何らかの差(ズレ)を生じている。また、GNSS信号に用いられるコードは、位相差ゼロにおいては相関が強く、且つ位相差ゼロ以外では相関が十分に小さいため、GNSS信号は自己相関がきわめて強い。従って、何らかの方法により、基準アンテナにおける直接波信号の搬送波の位相およびコードの位相を正確に求め、他のアンテナで受信される直接波信号と基準アンテナで受信される直接波信号との位相差を求めることが出来るならば、他のアンテナで受信される直接波信号の搬送波およびコードの位相を正確に求めることができ、その結果、各アンテナで受信される受信信号からマルチパス信号を選択的に排除することが可能となる。
そこで、上記測位装置では、複数のアンテナを使用し、基準アンテナで受信される直接波信号に係る搬送波の位相およびコードの位相、並びに他のアンテナで受信される直接波信号に係る搬送波の位相差およびコードの位相差を、上記位置情報に基づいて推定し、更にその推定結果が課されたレプリカ信号と各アンテナで受信される受信信号との相関をとることにより、受信信号からマルチパスによる信号を選択的に排除する。これにより、直接波信号の信号強度が増幅され、測位精度および利用性を向上させることが出来るようになる。
一般に送信機が衛星の場合、送信機と受信機との距離に関する情報は、送信機と受信機との時刻のズレ、電離層遅延量またはマルチパス等による測位誤差を知得することができなければ、正確な値を得ることは難しいが、上記角度については、送信機と受信機との距離が十分大きい場合は、疑似距離を用いても正確に求めることが出来る。更にアンテナ間の距離がわかれば、基準アンテナで受信される直接波信号と他のアンテナで受信される直接波信号との行路差が求まり、各アンテナで受信される直接波信号間の位相差を求めることが出来る。
そこで、上記測位装置では、上記角度および距離情報に基づいて、受信信号からマルチパス信号を排除する拘束条件を求め、その拘束条件をレプリカ信号に課し、そのレプリカ信号と各アンテナで受信される受信信号との相関をとることにより、受信信号からマルチパス信号を排除するように構成した。
本願発明者が、マルチパス信号波と衛星からの直接波信号との搬送波の位相およびコードの位相を鋭意研究したところ、アンテナ間の距離が小さい場合は、アンテナ間のコード位相差は無視することができ、コード位相については、どれか一のアンテナで受信した受信信号のコード位相により代表させることが出来ることを見出した。従って、コードの位相については、初期捕捉モードおよび追跡モードにおいて、単一のレプリカ信号のみを生成すればよいことになる。
上記測位装置では、上記構成とすることにより、初期捕捉モードおよび追跡モードにおいて、コード位相についての相関処理が大幅に簡略化されることになる。
上記測位装置では、上記構成とすることにより、各アンテナで受信される直接波信号の搬送波の位相を求めることが可能となる。
上記測位装置では、上記構成とすることにより、レプリカ信号を直接波信号に用いられた符号に対し同期させることが出来る。
上記測位装置では、上記構成とすることにより、追跡モードにおいては、各アンテナで受信される受信信号からマルチパス信号を排除することが出来る。
この初期捕捉部100は、例えばGPS信号またはGNSS信号等の衛星からの送信信号を受信する複数のアンテナAnt0,Ant1,・・・,Antnから成るアンテナ部1と、その受信信号を増幅する低ノイズアンプLNA0,LNA1,・・・,LNAnをから成る増幅部2と、その受信信号の周波数を中間周波数(IF周波数)に変換するバンドパスフィルタ、アンプ及びミキサRF0,RF1,・・・,RFnから成るRF部3と、所定の信号処理が施された受信信号をディジタル信号に変換するADコンバータADC0,ADC1,・・・,ADCnから成るAD変換部4と、第1レプリカ信号生成器9で生成されるレプリカ信号との相関をとる相関器1,相関器2,・・・,相関器nから成る相関部5と、各アンテナで受信される受信信号に用いられた符号を再現したレプリカ信号を生成する第1レプリカ信号生成器9と、レプリカ信号が受信信号に同期したか否かを判別する信号捕捉判別器10とを具備して構成されている。なお、説明の都合上、アンテナAnt0を基準アンテナとする。
この追跡部200は、アンテナ部1、増幅部2、RF部3、AD変換部4および相関部5の構成については上記初期捕捉部100と同一であり、その他に、送信機の位置、受信機の位置又はその他の姿勢情報に基づいて定められた拘束条件が課されたレプリカ信号を生成する第2レプリカ信号生成器6と、コード位相および搬送波位相を調整するNCO(数値制御発振器)7と、コード位相または搬送波位相の遅れ又は進みを検知し、レプリカ信号の位相を制御するDLLフィルタまたはPLLフィルタを有するフィルタ部8とを具備して構成される。なお、拘束条件については、図3を参照して後述する。
この追跡部200では、送信機の位置、各アンテナの位置または送信機と基準アンテナを結ぶ直線を基準とした時の各アンテナの方位角度から、基準アンテナで受信される直接波信号に対する他のアンテナで受信される直接波信号の位相差を推定する。ここで、送信機がGNSS衛星の場合は、衛星の位置は航法メッセージから計算され、対する各アンテナの位置は航法メッセージに記された電波の発信時刻と各アンテナの受信時刻とから算出される疑似距離を用いて算出される。従って、このようにして得られたGNSS衛星の位置と各アンテナの位置とから、送信機と基準アンテナを結ぶ直線に対する他のアンテナの方位角(偏角)を計算することが可能となる。その得られた方位角と基準アンテナに対する各アンテナ間距離を用いて直接波信号の位相差を推定することになる。なお、GNSS衛星と各アンテナとの距離が大きいため、疑似距離による測位誤差が大きい場合であっても、その誤差が方位角の計算精度に与える影響は殆ど無視することが出来る。
図から、遅延距離Lkは、Lk=dk*cos(E−θ)・・・・・(式1)
で計算され、その遅延距離Lkに対応した、基準アンテナAnt0で受信される直接波信号と第kアンテナAntkで受信される直接波信号との搬送波の位相差φkは、
φk=2π*dk/λ*cos(E−θ)・・・・・(式2)
で与えられる。ここで、dkは、基準アンテナAntkと第kアンテナAntkの位相中心の間隔である。また、Eは、水平線Hに対するGNSS衛星の仰角であり、θは水平線Hに対する第kアンテナの姿勢角である。
次に、基準アンテナAnt0で受信される直接波信号の搬送波の位相φを推定する。今、基準アンテナAnt0で受信される直接波信号に対するレプリカ信号についての同相成分および直交成分を、それぞれ
A*cosφ、A*sinφ(A:振幅)・・・・・(式3)
とすると、第kアンテナAntkで受信した直接波信号に対するレプリカ信号についての同相成分および直交成分は、それぞれ、
A*cos(φ+φk)、A*sin(φ+φk)(A:振幅、k=1,・・・,N)・・・・(式3)
とすることが出来る。
次に、(式3)のレプリカ信号と、各アンテナで受信される受信信号との相関をとり、これら相関値の和を求める。そして、φを変化させながら、相関和が最大となる時のφを基準アンテナAnt0で受信される直接波信号の搬送波の位相推定値φmとする。
次に、この位相推定値φmを基にして、第kアンテナ(k=1,・・・,N)で受信される直接波信号に対するレプリカ信号についての同相成分、直交成分は、それぞれ
A*cos(φm+φk)、A*sin(φm+φk)(A:振幅、k=1,・・・,N)
と求めることが出来る。従って、これらのレプリカ信号と、各アンテナで受信した受信信号との相関をとることにより、マルチパス信号、即ち、φm+φk+δの位相を持つ受信信号は、相関部5において排除され、一方、φmおよびφm+φk(k=1,・・・,N)の位相を有する受信信号は加算され増幅されることになる。なお、上記相関和を求める際に、アンテナ毎に重み付けを設定し、相関値に重み付けを掛けて相関和を求めても良い。
この場合は、各アンテナに到達する電波(直接波信号)は平行波とみなされないため、実際に基準アンテナとスードライトの距離ならびに第kアンテナとスードライトの距離との差から遅延距離Lkを求めなければならない。各距離は、上述した通り、スードライトの位置、基準アンテナの位置、基準アンテナに対する各アンテナの変位ベクトルから求めることが出来る。遅延距離Lkを求めた後の処理は、図3の場合と全く同様である。
2 増幅部
3 RF部
4 AD変換部
5 相関部
6 第2レプリカ信号生成部
7 NCO
8 DLL、PLLフィルタ
9 第1レプリカ信号生成部
Claims (4)
- 送信信号を受信するN+1個(N≧1)のアンテナと、該送信信号に対応したレプリカ信号を生成するレプリカ信号生成器と、前記送信信号と該レプリカ信号との相関をとる相関器とを備えた測位装置であって、
一のアンテナを基準アンテナ(Ant0)とした時の、「前記送信信号を送信する送信機」から該基準アンテナ(Ant0)に到る距離と同他のアンテナ(Antk ;k=1,・・・,N)に到る距離との差である遅延距離(L k ;k=1,・・・,N)に基づいて定められる「前記基準アンテナ(Ant0)で受信される直接波信号と他のアンテナ(Antk)で受信される直接波信号」との搬送波の位相差(φ k =2πL k /λ ;k=1,・・・,N)を求め、
次に、前記基準アンテナ(Ant0)で受信される直接波信号の搬送波に対応するレプリカ信号の同相成分および直交成分を(COSφ、SINφ)とし、各アンテナ(Antk;k=1,・・・,N)で受信される直接波信号の搬送波に対するレプリカ信号の同相成分および直交成分を(COS(φ+φ k )、SIN(φ+φ k );k=1,・・・,N)とし、前記レプリカ信号と各アンテナ(Antk;k=0,1,・・・,N)で受信される送信信号との相関和を求め、
次に、前記φを変化させながら前記相関和が最大となる時の該φを前記基準アンテナで受信される直接波信号の搬送波の位相推定値φmとし、
前記遅延距離(L k ;k=1,・・・,N)に係る搬送波の位相差(φ k =2πL k /λ ;k=1,・・・,N)と前記基準アンテナで受信される直接波信号の搬送波の位相推定値(φm)とから成る拘束条件(φ k +φm ;k=1,・・・,N)を、各アンテナ毎に(Antk;k=1,・・・,N)に生成される前記レプリカ信号の同相成分(COS(φ k +φm);k=1,・・・,N)および直交成分(SIN(φ k +φm);k=1,・・・,N)に各々課し、
前記拘束条件が課されたレプリカ信号と各アンテナで受信される送信信号との相関をとることにより、前記送信信号からマルチパス信号を選択的に排除し直接波信号の信号強度を増幅させることを特徴とする測位装置。 - 前記レプリカ信号生成器は、直接波信号の符号についてのレプリカ信号を、一のアンテナで受信される受信信号に対してのみ生成し、且つ該レプリカ信号は他のアンテナで受信される受信信号に対しても使用される請求項1に記載の測位装置。
- 前記送信信号に対する初期捕捉モードにおいて、レプリカ信号の位相および周波数を変化させながら、全部または一部のアンテナで受信される受信信号と前記レプリカ信号との相関をとり、初期捕捉を行う請求項1又は2に記載の測位装置。
- 前記レプリカ信号生成器は、初期捕捉完了後の追跡モードにおいて、直接波信号の搬送波についての前記拘束条件が課されたレプリカ信号をアンテナ毎に生成する請求項1から3の何れかに記載の測位装置。
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