JP4368555B2 - 電動工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば携帯式の電気カンナのような電動工具に関し、詳しくは加工作業時において、加工具を被加工材に沿って移動させて該被加工材の加工を行う際に、被加工材に対する加工具の位置を一定に保持するように案内する案内部材を備えた電動工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の案内部材を備えた電気カンナは、例えば特開平4−193501号公報に記載されている。公報に記載された電気カンナ用の案内部材(誘導定規)は、複数のアーチ状の緊定具と、その緊定具に対向して取り付けられる2枚の案内板とから構成されている。案内部材の緊定具は、カンナ本体に対して着脱可能に構成されており、その緊定具に対して案内板が位置調整、あるいは着脱可能とされている。電気カンナで被加工材(例えば角材)の上面を切削する場合においては、案内板を被加工材の切削面に直交する端面(側面)に当接して電気カンナを移動させることによって、被加工材に対してカンナ刃の位置を一定に保持し、カンナ刃の被加工材に対する直進性を保持することができる。これにより、仕上がりの良好な切削面を得ることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の案内部材は、全ての切削作業に用いるとは限らず、作業によっては使用しないことがある。このような場合、従来は案内部材を電気カンナから取り外している。すなわち、従来の案内部材は、使用時には電動カンナに取り付け、不使用時には電気カンナから取り外す構成のため、その着脱作業に時間が掛かり面倒であるという点で問題がある。
【0004】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加工具を被加工材に沿って移動させて該被加工材の加工を行う際に、被加工材に対する加工具の位置を一定に保持するように案内する案内部材を備えた電動工具において、案内部材の着脱作業を不要とすることが可能な技術を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明の電動工具は、請求項に記載の通りに構成される。
請求項1に記載の発明は、加工具を被加工材に沿って移動させて該被加工材の加工を行う際に、被加工材に対する加工具の位置を一定に保持するように案内する案内部材を備えた電動工具において、案内部材は、取り外し不能に設けられるとともに、被加工材に対する加工具の位置を一定に保持する使用位置と、保持しない退避位置との間で位置替え可能に構成されている。ここで、取り外し不能とは、通常取り外すことを前提にしないという意味であり、例えば分解のために取り外すような場合を除外するものではない。
すなわち、請求項1に記載の発明は、案内部材を、加工作業に応じて使用位置または退避位置へ位置替えする形式としたものであり、これにより、従来のような案内部材の着脱作業が不要となり、作業能率を向上できる。
【0006】
また、請求項1に係る発明は、被加工材に沿って摺動可能な摺動面を有する定盤と、定盤と一体的に移動する工具本体と、定盤または工具本体に取り付けられ、工具本体に備えられた加工具を該工具本体と共に被加工材に沿って移動させて該被加工材の加工を行う際に、被加工材に対する加工具の位置を一定に保持するように案内する案内部材とを備えた電動工具において、案内部材の着脱作業を不要とする技術である。
【0007】
請求項1に記載の発明では、案内部材は、被加工材の端面に当接して該被加工材に対する加工具の位置を一定に保持する使用位置と、被加工材の端面に当接しない退避位置との間で位置替え可能に構成されている。
したがって、請求項1に記載の発明によれば、工具本体または定盤に取り付けられた案内部材を、加工作業に応じて使用位置または退避位置へ位置替えすることで、従来のような案内部材の着脱作業を不要とし、作業能率を向上できる。
【0008】
請求項1に記載の発明では、案内部材は、工具本体または定盤に上下動可能に取り付けられ、定盤の摺動面よりも下方へ突き出る位置を使用位置とされ、定盤の摺動面よりも上方へ上昇される位置を退避位置とされている。したがって、請求項1に記載の発明によれば、電動工具を被加工材に沿って移動しつつ加工具で加工する場合において、案内部材を定盤の摺動面から突き出した使用位置へ位置替えしたときは、該案内部材を被加工材の端面に当接させた状態で電動工具を移動させることにより、加工具を被加工材に対してその位置が一定となるように保持して案内することができる。一方、案内部材を定盤の摺動面よりも上昇させて退避位置へ位置替えしたときは、被加工材の端面に当接不能となるので、このときは、案内部材を用いずに加工作業を行うことができる。
【0009】
請求項1に記載の発明では、2つの案内部材が被加工材の端面に転動可能なローラーを有する。したがって、案内部材の使用状態では、前後2箇所での案内となるため、安定した案内作用を得ることができ、またローラーによって移動時の円滑性を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電動工具において、案内部材は、前記工具本体または定盤に形成されたガイド孔に上下動可能に嵌合された軸部を有し、その軸部と前記ガイド孔との間には、径方向にばね付勢されたボールと、そのボールが係脱可能な上下2個の溝部とから構成され、案内部材を位置替えされた位置に保持する位置保持機構を備えている。したがって、請求項2に記載の発明によれば、ボールを付勢するばね力を上回る操作力で案内部材を上下方向に移動させることによって案内部材を簡単に位置替えすることができる。また、位置替え後の案内部材を当該位置に保持することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。本実施の形態は電動工具として携帯式の電気カンナに適用したものである。図1は案内部材を備えた電気カンナを示す側面図であり、図2および図3はそれぞれ案内部材の取付構造を示す断面図であり、図2は使用位置に位置替えした状態を示し、図2は退避位置に位置替えした状態を示す。図4は図3のA矢視図、図5は案内部材の使用態様を示す概略平面図である。
【0012】
図1に示すように、電気カンナ1は、研削作業時に移動させる方向の前後に配置された前後の定盤2,3および両定盤2,3の上部間に跨るように配置される工具本体4を備えている。工具本体4は、カンナ刃5の回転駆動源としての電動モータ(図示省略)を収容するモーターケース、カンナ刃5とそのカンナ刃5に電動モータの回転を伝達する動力伝達機構(図示省略)を収容するハウジング、そのハウジングの側面開口部分を開閉するために着脱可能に取り付けられるカバー4a等から構成されている。そして、工具本体4の外面後部にはハンドル6が設けられ、外面前部にはグリップ7が設けられ、更にハンドル6にはモータ起動停止用のスイッチを操作するためのトリガー8が取り付けられている。
作業者はハンドル6とグリップ7を掴み、定盤2,3を切削すべき被加工材W(図2〜図5参照)の切削面W1に載せ、工具本体4を定盤2,3と共に切削面W1に沿って前方へ滑らせることによって、カンナ刃5による切削作業を行う。カンナ刃5が本発明でいう加工具に対応する。
【0013】
なお、カンナ刃5の切込深さを調整するために、前定盤2は工具本体4に対して高さ方向の位置調整可能に取り付けられている。本実施の形態では前定盤2を斜め方向へスライドさせて高さ調整を行う形式であり、図1には高さ調整機構の一部である操作グリップ9が示されている。なお、高さ調整機構自体は、従来と同様の構成のため、具体的な図示および説明を省略する。また、後定盤3と工具本体4とは相互に結合されて一体化されている。
【0014】
電気カンナ1は、被加工材Wの切削作業時において、該被加工材Wの切削面W1に対して直角をなす端面W2(切削面W1が上面であるときは側面)に当接して移動することで、該電気カンナ1が切削方向に真っ直ぐに移動するように案内(すなわち、被加工材Wに対してカンナ刃5の位置を一定に保持して案内)するための案内部材10を有している。つまり、案内部材10は、電気カンナ1を被加工材Wに沿って移動させカンナ刃5によって該被加工材Wを切削する際に、被加工材Wとカンナ刃5との相対的な位置関係を一定に保持して案内するものである。本実施の形態では、案内部材10は切削方向の前後2箇所に設けられており、前側の案内部材10は、前定盤2の切削移動方向に向かって左側面下部に取り付けられ、後側の案内部材10は、工具本体4の構成部材であるカバー4aの左側面下部に取り付けられている。そして、前後の案内部材10は、切削移動方向に真っ直ぐな同一中心線P上に配置されている(図5参照)。
【0015】
前後の案内部材10は、定盤2,3の下面(本発明でいう摺動面に対応する)2a,3aよりも下方へ突き出て被加工材Wの端面W2に当接する位置(図2に示す位置であり、以下、この位置を使用位置という)と、定盤2,3の下面よりも上方へ上昇して被加工材Wの端面W2に当接しない位置(図3に示す位置であり、以下、この位置を退避位置という)との間で位置替え可能に取り付けられている。すなわち、案内部材10は、被加工材Wに対するカンナ刃5の位置を一定に保持する使用位置と、保持しない退避位置との間で位置替え可能とされている。なお、案内部材10の取付構造は、前後共同一構造である。
【0016】
次に、前定盤2および工具本体4に対する案内部材10の取付構造を図2および図3に基づいて説明する。図示のように、前定盤2および工具本体4の側面下部には取付部20が形成され、その取付部20には上下方向を軸方向とするガイド孔21が貫設されている。なお、前定盤2の取付部20は、該前定盤2の側方へ突き出る態様で形成され、工具本体4の取付部20は、図4に示すようにカバー4aに形成される側面窪み部4bの下側に形成される平板部を利用して構成されている。案内部材10は、軸部11と、その軸部11の下端部に水平回転可能に取り付けられたローラー12とを主体に構成されており、軸部11をガイド孔21に下方から挿通後、軸部11の上端に抜け止め用の止め輪を13を取り付けることで取付部20に対して抜け止めされた状態で上下動可能に取り付けられている。なお、本実施の形態ではガイド孔21および軸部11は、共に円形に形成されている。したがって、取付時において周方向の方向性が特定されず、組付性がよい。
【0017】
上記のように取り付けられた案内部材10は、ローラー12が定盤2,3の下面2a,3aよりも下方へ突き出る使用位置と、ローラー12が下面2a,3aよりも上方へ持ち上がる退避位置との間で位置替え可能とされる。退避位置へ変位されたローラー12は、取付部20に形成された収納凹部22に格納されるようになっている。なお、本実施の形態では、収納凹部22は下面と側面が開放された断面L形に形成されているが、下面のみが開放された釣鐘状の凹部にしてもよい。そして、位置替えされた案内部材10は、軸部11と取付部20との間に設けられた位置保持機構30によって保持されるようになっている。
【0018】
位置保持機構30は、案内部材10の軸部11の外周面に形成された断面V字形をなす環状の上下2個の係合溝31と、取付部20に設けられて係合溝31に対して係脱可能なボール32とを主体に構成されている。ボール32は、取付部20に形成された横孔33内に収容され、圧縮ばね34によって係合方向に付勢されている。なお、圧縮ばね34は横孔33にねじ込まれたねじ35によって支持されている。
【0019】
本実施の形態に係る電気カンナ1は、上記のように構成したものである。したがって、案内部材10を用いて切削作業を行うときは、まず、前後の案内部材10をそれそれ手動で押し下げる。これにより、ローラー12が定盤2,3の下面2a,3aよりも下方へ突き出た使用位置(図1の仮想線および図2参照)となり、使用位置へ変位された案内部材10は、軸部11の上側の係合溝31がボール32に係合することで使用位置に保持される。
そして、電気カンナ1による被加工材Wの切削加工を行う場合に、図2〜図5に示すように、被加工材Wの切削面W1に直交する端面W2に対してローラー12を当接させ、これを案内にして電気カンナ1を被加工材Wに真っ直ぐに移動させることができる。すなわち、案内部材10は、被加工材Wに対してカンナ刃5の位置を一定に保持するように案内し、これにより、仕上がりの良好な切削面を得ることができる。
【0020】
一方、案内部材10を使用しないで切削作業を行うときは、前後の案内部材10をそれぞれ手動で上方へ押上げる。これにより、ローラー12が定盤2,3の下面2a,3aよりも上方の退避位置へ変位される(図1の実線状態および図3参照)。退避位置へ変位されたローラー12は、格納凹部22内に格納され、その位置で軸部11の下側の係合溝31がボール32と係合し、これにより格納状態に保持される。したがって、案内部材10はその不使用時においては電気カンナ1による切削作業の邪魔にならない。
【0021】
このように本実施の形態によれば、案内部材10を前定盤2と工具本体4にそれぞれ取り付け、定盤下面よりも下方へ突き出る使用位置と、定盤下面よりも上方へ押上げられた退避位置との間で位置替えする形式としたので、従来の着脱形式に比べて、案内部材10の使用形態から不使用形態、あるいは不使用形態から使用形態への切替を簡単に行うことができ、作業性を向上できる。
また、本実施の形態では、ローラー12が被加工材Wの端面W2を転動する構成であり、しかも切削移動方向の前後で案内する構成としたので、円滑にして安定した案内作用を得ることができる。また、案内部材10を上下方向へ直線的に移動させて位置替えを行う形式のため、使用中に案内部材10には上向きの外力が作用することがなく、使用位置に保持することができる。また、ばね付勢されたボール32と係合溝31とによって位置保持機構30を構成したので、ボール32を係合方向に付勢する圧縮ばね34のばね力を上回る操作力を軸方向へ加えるだけで簡単に案内部材10の位置替えを行うことができる。
【0022】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。
例えば、実施の形態では、案内部材10の軸部11をガイド孔21に摺動可能に嵌合させ、ボール32と係合溝31とからなる位置保持機構30で切替位置に保持する構成としたが、位置保持機構はこれに限定するものではなく、例えば取付部20に、ボール32に変えて径方向(横方向)に抜差し可能なばね付勢されたピンあるいはねじピンを設けてもよい。
また、特許請求の範囲に記載した発明には含まれないが、以下の関連発明によっても同様の作用効果を得ることができる。例えば、実施の形態では、案内部材10はローラー12が被加工材Wに対して転動する構成としたが、ローラー12の変わりに被加工材Wに対して平面で当接するプレートを用いてもよい。さらには、案内部材10の軸部11をねじ軸とし、ガイド孔21をねじ孔とすることで、案内部材10を回すことによって使用位置と退避位置との間で位置替えする構成に変更してもよい。
さらに、特許請求の範囲に記載した発明には含まれないが、案内部材10は単一にしてもよく、また、実施の形態では、案内部材10の位置替えを、上下方向に直線的に移動させて切替える構成としたが、例えば横軸回りの回動動作によって上下方向へ移動させて切替える形式(跳ね上げ式)に変更してもよい。その場合、回動方向は、前後方向あるいは左右方向が考えられる。これらの関連技術によっても同様の作用効果を得ることができる。
【0023】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、加工具を被加工材に沿って移動させて該被加工材の加工を行う際に、被加工材に対する加工具の位置を一定に保持するように案内する案内部材を備えた電動工具において、案内部材の着脱作業を不要とすることが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態に係る電気カンナの全体を示す側面図である。
【図2】 案内部材の取付構造を示す断面図であり、使用位置に位置替えされた状態を示す。
【図3】 案内部材の取付構造を示す断面図であり、退避位置に位置替えされた状態を示す。
【図4】 図3のA矢視図である。
【図5】 案内部材の使用しての切削態様を示す概略平面図である。
【符号の説明】
1…電気カンナ(電動工具)
2,3…前後の定盤
2a,3a…下面(摺動面)
4…工具本体
5…カンナ刃(加工具)
10…案内部材
11…軸部
12…ローラー
21…ガイド孔
30…位置保持機構
31…係合溝
32…ボール
W…被加工材
W1…切削面
W2…端面
Claims (2)
- 被加工材に沿って摺動可能な摺動面を有する定盤と、前記定盤と一体に移動する工具本体と、前記定盤および前記工具本体のそれぞれに取り付けられ、前記工具本体に備えられた加工具を該工具本体と共に前記被加工材に沿って移動させて該被加工材の加工を行う際に、前記被加工材に対する前記加工具の位置を一定に保持するように案内する移動方向前後2つの案内部材とを備えた電動工具であって、
前記2つの案内部材は、前記工具本体および前記定盤に形成されたガイド孔に上下動可能に嵌合された軸部と、該軸部に回転可能に支持されて前記被加工材の端面に転動可能なローラーと、前記軸部を、前記定盤の摺動面よりも下方に突き出されて前記ローラーを前記被加工材の端面に当接して該被加工材に対する前記加工具の位置を一定に保持する使用位置と、前記定盤の摺動面よりも上方へ上昇して前記ローラーを前記被加工材の端面に当接しない退避位置との間で位置替え可能、かつそれぞれの位置に位置保持可能な位置保持機構を備え、
該2つの案内部材の前記使用位置と前記退避位置との間での位置替え操作を前後それぞれ個別に行う構成とした電動工具。 - 請求項1に記載の電動工具であって、前記位置保持機構は、径方向にばね付勢された前記ガイド孔側のボールと、該ボールが係脱可能な上下2個の前記軸部側の係合溝を備え、該軸部を上下に移動させて前記上側の係合溝に前記ボールを係合させて該軸部を前記使用位置に保持可能、前記下側の係合溝に前記ボールを係合させて該軸部を前記退避位置に保持可能な構成とした電動工具。
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