JP4368181B2 - 改質剤組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は改質剤組成物、前記改質剤組成物からなる難燃剤、および前記改質剤組成物を含有する組成物に関する。さらには、前記改質剤組成物ならびに改質剤組成物を含有する組成物の製造方法に関する。
耐衝撃性改良剤や難燃剤など、合成樹脂やエラストマーに配合して用いられる改質剤の製造には、乳化重合法をはじめとする水系分散重合を利用した方法が多く用いられている。乳化重合法を用いた場合には、重合反応後に得られたラテックスから改質剤の有効成分を固形分として、多くの場合は粉体として回収するプロセスが必要となる。このプロセスとしては従来、酸や塩などをラテックスに混合して凝固スラリーを得た後、熱処理・脱水・乾燥を経る粉体の回収方法が広く知られている(凝固法)。この方法は酸や塩などによる凝固が可能なラテックスに対しては採用することができるが、凝固が困難なラテックス、例えばノニオン系界面活性剤が用いられているものなどに対しては適用できない問題があった。また、凝固法では凝固・熱処理・脱水・乾燥という複数のプロセスを経る必要があり、設備が複雑になるため各プロセス間の連携を調整するシステムが必要になる場合があるなど設備費や運転の観点からも改良が望まれることがあった。さらに凝固法では脱水プロセスで、主として重合・凝固プロセスで用いられた成分由来の水溶性成分を含む廃水が多量に発生し、これを処理するための設備が必要になるなど設備全体が大がかりになるという問題があった。
このような問題を解決できる方法として、改質剤を含むラテックス等をノズルなどから噴霧しながら熱風で乾燥させて粉体を得る方法が広く知られている(スプレー乾燥法)。スプレー乾燥法は凝固を必要としないため凝固が困難なラテックスであっても粉体を回収できるばかりでなく、噴霧・乾燥が一プロセスで終了するため設備が単純化されており、さらには廃水が生じないため廃水処理設備も必要なく、設備取得にかかる費用が安価ですむという利点を有する。しかしながら、重合工程で用いられた副原料の中には合成樹脂やエラストマーと配合して用いた際に樹脂の熱安定性や耐候性を損ねるなど好ましくない影響を与えるものが存在する場合があり、スプレー乾燥法ではそれら化合物が高濃度で改質剤樹脂中に残留するため、熱安定性が低下し分解・着色したり、要求される物性を満たす成形体が得られないといった問題を生ずる場合があった。
例えば,オルガノポリシロキサン系グラフト共重合体を改質剤、すなわち難燃剤兼耐衝撃改良剤として含む難燃性ポリカーボネート系樹脂組成物を開示した特許文献1では、乳化重合法によって得られたオルガノポリシロキサン系グラフト共重合体ラテックスから粉体を回収する際にスプレー乾燥法を用いてよいことが記載されている。しかしながら具体的な実施例については記載されていない。本発明者らの検討結果によれば、特許文献1に開示されたと同様にしてオルガノポリシロキサン系グラフト共重合体ラテックスを合成し、得られたラテックスをそのまま単純にスプレー乾燥して粉体として回収した後にポリカーボネート樹脂と配合して成型し、その難燃性および耐衝撃性を調べたところ、同一ラテックスから凝固法で得られたオルガノポリシロキサン系グラフト共重合体の粉体を用いた場合と比較して難燃性が劣り、常温での耐衝撃性が劣ること、さらに成型体に着色が見られ熱安定性の低下が示唆されること、流動性が著しく高くなって樹脂の分解が示唆されることなど、改良の余地があることが判明した。
別の改質剤組成物、すなわちスチレン系ポリマーのスルホン酸金属塩からなり、かつ金属硫酸塩が5重量%以下である難燃性付与剤が開示されている(特許文献2)。ここでは最終成形体の物性に悪影響を与える金属硫酸塩を水洗や晶析により低減させることにより、最終成形体の難燃性を向上する方法が記載されているが、水洗や晶析においては廃水が発生し、さらに、スチレン系ポリマーのスルホン酸金属塩の合成時に有機溶剤を用いた場合には廃水がこれら有機溶剤を含むために環境負荷が高くなり、それ故廃水処理設備が複雑になるなど、改良が望まれた。
有機スルホン酸塩、好ましくはパーフルオロアルカンスルホン酸のカリウム塩などを熱可塑性樹脂、特にポリカーボネート系樹脂の難燃剤として用いる検討は数多く行われており(非特許文献1)、改質剤としてのシリコーン系樹脂と併用する技術が特許文献3および4をはじめ多く開示されている。これらでは、シリコーン系樹脂とともにごく少量(ポリカーボネート系樹脂に対して0.5重量部以下)のパーフルオロアルカンスルホンアルカリ(土類)金属塩が用いられている。前述のごとき少量で前記塩による難燃性改良効果が発現するのは、それが燃焼時触媒的にポリカーボネート系樹脂の熱分解反応を促進し、発泡断熱層を形成するためであると説明されている(非特許文献1および2)。一方で、過剰に前記同様の塩が存在する場合には、燃焼時のみならず成型時においても熱分解反応が促進されると考えられ、かえって物性低下を引き起こすことが、前記特許文献3および4を始めとする多くの文献で述べられている。改質剤の製造に際して用いた化合物由来の残留物が前述のごとき有機スルホン酸塩などと同様の効果を有する場合などにも同様のことが言えるが、公知の技術ではこのような問題を解決できる方法が開示されておらず、改良法が望まれた。
特開2003−012910号公報 特開2003−64229号公報 特開平6−306265号公報 特開平6−336547号公報 ノンハロゲン系難燃材料による難燃化技術、株式会社エヌ・ティー・エス発行 J.Polym.Sci.:Part A:Polym.Chem.,Vol.26,2113−2127(1988)
本発明は、難燃剤、耐衝撃改良剤、加工助剤などの改質剤を製造するにあたっては酸や塩などを用いる凝固法に比べてシンプルな設備で製造でき、廃水が発生せず低環境負荷でありながら、同時に最終的に得られる成型体の物性や熱安定性の低下を伴うことのない改質剤組成物、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、前述のごとき特定の改質剤に対して、二価以上の金属の塩を混合して得られる改質剤組成物により上記の課題を達成できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、樹脂(c)を主成分とする改質剤組成物の製造方法であって、順に、
該樹脂(c)、一価の金属イオン、及び、二価以上の金属イオンを含む改質剤(a)の水性分散体であって、該二価以上の金属イオンの含有量が、該水性分散体の固形分に対して1重量%以下である水性分散体を、風乾、キャスティング、及びスプレー乾燥からなる群から選ばれる1種以上の方法で乾燥して粉体を得る工程、及び
該粉体に、該一価の金属イオン総量の0.5〜15倍モル量の二価以上の金属イオンの塩(b)であって、該二価以上の金属イオンの塩(b)の金属イオンと該一価の金属イオンの塩の陰イオンとからなる化合物の20℃における水への溶解度が、該一価の金属イオンの塩の同条件での溶解度よりも小さい二価以上の金属イオンの塩(b)を混合する工程を含む改質剤組成物の製造方法に関する。
好ましい実施態様としては、
前記改質剤(a)が、ラテックスから回収される樹脂(c)を含む、
前記樹脂(c)が、グラフト共重合体(d)である
前記樹脂(c)が、オルガノポリシロキサン系樹脂(e)を含む、
前記樹脂(c)が、オルガノポリシロキサン系樹脂(e)のラテックスの存在下にビニル系単量体、オレフィン系単量体、ジエン系単量体から選ばれる少なくとも一つの単量体を一段以上重合して得られるオルガノポリシロキサン系グラフト共重合体(f)である
前記水性分散体であって、前記二価以上の金属イオンの含有量が、前記水性分散体の固形分に対して0.05重量%以下である、
前記二価以上の金属イオンの塩(b)の金属成分が、アルカリ土類金属、アルミニウムから選択される少なくとも一種の金属である、
前記二価以上の金属イオンの塩(b)が無機塩である、
上記記載の改質剤組成物の製造方法に関する。
本発明によれば、酸や塩などを用いる凝固法に比べてシンプルな設備で製造でき、廃水が発生せず低環境負荷でありながら、最終的に得られる成型体の物性や熱安定性が良好な改質剤組成物、並びに該改質剤組成物を含む成形体を得ることができる。
以下に、本発明の好ましい実施の形態を説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
本発明は、水性分散体から得られ、二価以上の金属イオンを1重量%以下含む改質剤(a)の水性分散体を乾燥して得られる粉体と、前記改質剤(a)の水性分散体に含まれる一価の金属イオン総量の0.5〜15倍モル量の二価以上の金属イオンの塩(b)を混合して得られる改質剤組成物に関するものである。
改質剤(a)は、難燃剤、耐衝撃改良剤、加工助剤、離型剤、摺動性改良剤、艶消し剤などを含む概念であり、主として樹脂成分からなるものである。これらは好ましくは、一官能以上のビニル系単量体、オレフィン系単量体、ジエン系単量体などから得られる重合体である。
前記ビニル系単量体としては限定はないが、例えば、一官能であれば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートに代表される(置換)アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミドに代表されるN−置換または未置換の(メタ)アクリルアミド;アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;スチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル化合物などが、二官能以上であれば、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレートなどに代表されるアリルエステル類;1,3−ジオールジメタクリレートに代表される多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニルに代表される芳香族ジビニル化合物などが、また、オレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテンなどが、ジエン系単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物;1,4−ペンタジエンなどの非共役ジエン化合物などが挙げられる。
前記改質剤(a)は水性分散体から得られるものであり、ここで言う水性分散体とは、ミニエマルジョン、エマルジョン、マイクロサスペンジョン等の概念をを含むラテックス、サスペンジョン、スラリーから回収される樹脂を含む概念である。また、水性分散体の媒体としては、主成分としての水を50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらには80重量%以上含むことができ、もっとも好ましくは水のみからなる。ここで水とともに存在する他の媒体は用いる組成比において水と均一に混合するものであることが好ましい。改質剤としての機能設計を行いやすく、かつ沈降を伴わず取扱いが容易という観点から、水性分散体としては、ラテックスであることが好ましい。
従って、改質剤は、ラテックスから回収される樹脂(c)を含むものであることが好ましい。前記ラテックスから回収される樹脂(c)は乳化重合により製造することができ、通常の方法、すなわち水、乳化剤の存在下で前述のごとき一官能以上のビニル系単量体、オレフィン系単量体、ジエン系単量体などを、通常のラジカル重合開始剤を用いて一段以上で重合することができる。この乳化重合の重合温度、圧力、脱酸素などの条件は、当業者が知る範囲のものである。
前記乳化剤としては限定はないが、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムに代表されるアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに代表されるアルキルアリールスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムに代表されるジアルキルスルホコハク酸塩、パルミチン酸カリウムに代表される高級脂肪酸塩などのアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンドデシルエーテルに代表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルに代表されるポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルに代表されるポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、ソルビタンモノラウリン酸エステルなどのノニオン系界面活性剤;セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイドに代表される4級アンモニウム塩などカチオン性界面活性剤が挙げられる。
前記ラジカル重合開始剤としては限定はないが、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸カリウムなどの熱分解型開始剤の他、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキサイドなどの有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸カリウムなどの無機過酸化物といった過酸化物と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、グルコースなどの還元剤、および必要に応じて硫酸鉄(II)など併用したレドックス型開始剤系を使用することができる。
前記改質剤(a)は、溶剤可溶の実質的に直鎖状のものであり得るが、架橋重合体や、耐衝撃性を発現するものである場合には好ましくはゴム形成性重合体に前記単量体等をグラフト重合したグラフト共重合体(d)を含むことができる。前記グラフト共重合体(d)は好ましくは乳化重合法で製造される。
前記グラフト共重合体(d)の幹重合体は、前記ラテックスから回収される樹脂(c)に関して述べた単量体から得ることができる、例えば、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムに代表されるジエン系ゴム;ブチルアクリレートゴムに代表されるアクリルゴムを用いることができる。これらは好ましくは前述のごとき乳化重合法で製造され、ラテックスの形で用いられる。この他、後述する未架橋オルガノポリシロキサンやオルガノポリシロキサンゴム、特開平4−100812号公報に開示されるごときアクリル−シリコーン複合ゴム、特開平11−100481号公報に開示されるごときアクリルおよび/または共役ジエン−シリコーン共肥大ゴムなどを用いることができ、この場合にも好ましくはこれらは乳化重合で製造され、ラテックスの状態で用いる。またポリイソブチレンや高重合度オルガノポリシロキサンを用いることができるが、この場合には溶液重合などで重合したこれら化合物を、乳化剤、水、必要に応じて有機溶剤などとともに例えば高圧ホモジナイザーなどで機械的に乳化し、エマルジョンの形で使用することが好ましい。
前記グラフト共重合体(d)の枝重合体は、好ましくは乳化重合法で製造され、より好ましくは、前記幹重合体のラテックスの存在下で、前記ラテックスから回収される樹脂(c)に関して述べた単量体を、同様の重合方法で一段以上乳化重合して製造することが好ましい。
前記改質剤(a)は、オルガノポリシロキサン系樹脂(e)を含むことができる。これには制限はないが、好ましくは、熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂・エラストマー(以下、マトリクス)などに配合した際のマトリクス中での分散制御の観点から、前記グラフト共重合体(d)で述べたごときオルガノポリシロキサンを幹重合体、前記一官能以上のビニル系単量体、オレフィン系単量体、ジエン系単量体などから得られる重合体を枝重合体に含有するグラフト共重合体であり、もっとも好ましくは、特開2000−226420号公報、特開2000−834392号公報に開示されるごとき、オルガノポリシロキサン系樹脂ラテックスの存在下に前述のごとく一官能以上のビニル系単量体、オレフィン系単量体、ジエン系単量体から選ばれる少なくとも一つの単量体を一段以上重合して得られるオルガノポリシロキサン系グラフト共重合体(f)である。ここで、WO03/068835号公報で開示されるごとくオルガノポリシロキサン系樹脂ラテックスの存在下に、前述にて例示した二官能以上のビニル系単量体やジエン系単量体などの多官能性単量体などを主成分として含む少なくとも1種の単量体を重合させ、さらに少なくとも1種の、マトリクスへの分散性の確保のため好ましくは一官能性のビニル系単量体を1段以上重合させることもできる。反応性が高く転化率が上がりやすいことおよび得られたグラフト共重合体(f)の粉体特性が良好となる観点からは、前記多官能性単量体としては前述同様の二官能以上のビニル系単量体を用いることが好ましい。
前記オルガノポリシロキサン系樹脂ラテックスは、特開2000−226420号公報、特開2000−834392号公報、米国特許第2891920号明細書、同第3294725号明細書などに記載の公知の乳化重合法により得ることができる。すなわち、1,3,5,7−オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)に代表される環状シロキサン、および/またはジメチルジメトキシシラン、テトラプロピルオキシシラン(TPOS)などの2官能以上のアルコキシシラン、並びに必要に応じてメルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルフェニルジメトキシメチルシランなどのグラフト交叉剤を、好ましくは水、界面活性剤とともにホモジナイザーなどを用いて乳化し、その後酸を加えてpHを4以下、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、または塩基を加えてpHを8以上、好ましくは9.5以上、より好ましくは11以上とし、重合温度を0℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、さらには60℃以上、150℃以下、好ましくは120℃以下、より好ましくは95℃以下として、好ましくは窒素などの不活性ガス雰囲気下もしくは真空脱気した状態下で、加水分解・縮合反応させることにより得ることができる。ここで、前記環状シロキサンおよび/またはシラン等を重合するに際しては、特開昭63−202630号公報、特開昭63−202631号公報、特開平4−258636号公報に開示されるように有機重合体をシード粒子として用いる方法、特開昭60−088040号公報に開示されるようにオルガノポリシロキサンラテックスをシードラテックスとして用いる方法などを採用することができ、好ましくはWO03/068835号公報で開示されるごとく環状シロキサンに対する膨潤性を有する有機重合体をシード粒子として用いる方法、またはラテックス粒子径が20nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下の重合体をシード粒子として用いる方法を採用することができる。
他の方法として、重量平均分子量が好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下、さらに好ましくは3000以下の、末端がヒドロキシル基、アミノ基、またはアルコキシル基などの加水分解性基であり、必要に応じてメルカプトプロピル基、メタクリロイルオキシプロピル基、ビニル基、ビニルフェニル基などで部分置換された(変性)ジメチルポリシロキサンを、必要に応じて前述のごときグラフト交叉剤とともに用いて、水、界面活性剤などを加え、例えば高圧ホモジナイザーなどにより所望の粒子径になるよう機械的に強制乳化し、重合温度を0℃以上、好ましくは15℃以上、さらには25℃以上、好ましくは100℃以下、より好ましくは70℃以下、さらには50℃以下、pHを好ましくは前述の環状シロキサンおよび/またはシラン等の重合と同様に酸あるいは塩基などを用いて同様の範囲にすることにより、前記オルガノポリシロキサン系樹脂ラテックスを得ることができる。
前記環状シロキサンおよび/またはシラン等の重合、または(変性)ジメチルポリシロキサンの強制乳化重合に際して酸性重合条件を用いる場合には、界面活性剤としては酸性下でも界面活性能が発揮されるものを用い、例えば、アルキル硫酸エステルの金属塩、アルキルスルフォン酸の金属塩、アルキルアリールスルホン酸の金属塩などのアニオン系界面活性剤を好ましくは用いる。前記金属塩としては、好ましくはアルカリ金属塩、特にナトリウム塩、カリウム塩が選ばれる。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが最も好ましい。また、前述のビニル単量体等の重合に際して述べたノニオン系界面活性剤を用いること、もしくは併用することもできる。酸性条件にするための酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸を用いることができるが、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機酸を用いることもできる。ドデシルベンゼンスルホン酸に代表されるアルキルアリールスルホン酸は、酸成分としてのみでなく界面活性剤としての機能も有し、場合によってはそれのみの使用ですむ場合があり、好ましく用いられる。しかしこれに限定されるものではなく、これら酸、界面活性剤はそれぞれ単一、複数成分の組み合わせ、いずれであっても良い。酸性条件下重合が終了した後には、必要に応じてラテックスを室温付近で数時間以上熟成してオルガノポリシロキサンを高分子量化した後に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニアなどの無機塩基、アルキルアミン、アルキルアンモニウムヒドロキサイドなどの有機塩基を添加して系をpHが5〜8になるように中和することによりシロキサンの重合を停止することができる。
同様に塩基性重合条件を用いる場合には、界面活性剤としては塩基性でも界面活性能が発揮されるものを用い、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジアルキルジメチルアンモニウムブロマイドなどのカチオン系界面活性剤を好ましく用いる。また、ノニオン系界面活性剤を用いること、もしくは併用することもできる。塩基性条件にするための塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの無機塩基、アルキルアンモニウムヒドロキサイドなどの有機塩基を用いることができる。特開2001−106787号公報に記載のセチルトリメチルアンモニウムヒドロキサイドなどのテトラオルガノアンモニウムヒドロキサイドは、カチオン系界面活性剤と塩基の両方の機能を有し、場合によってはそれのみの使用で済む場合があり、好ましく用いられる。しかしこれに限定するものではなく、これら塩基、界面活性剤はそれぞれ単一、複数成分の組み合わせ、いずれであっても良い。塩基性条件下で重合が終了した後は、必要に応じて熟成し、硫酸などの無機酸、または酢酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機酸などで系を前述同様に中和することによりシロキサンの重合を停止することができる。
かくして得られたオルガノポリシロキサン系樹脂ラテックスの存在下に、前述のごとく一官能以上のビニル系単量体、オレフィン系単量体、ジエン系単量体などを一段以上グラフト重合し、オルガノポリシロキサン系グラフト重合体を得る事ができる。もっとも容易で好ましい方法は、ドデシルベンゼンスルホン酸、必要に応じてそのナトリウム塩などを用いる酸性重合方法で得たオルガノポリシロキサン系グラフト共重合体(f)を用いる方法である。
本発明に係る改質剤(a)の水性分散体は、その乾燥処理後の固形分に対して二価以上の金属イオンを1重量%以下含むことを要し、好ましくは0.6重量%、より好ましくは0.2重量%、さらには0.05 重量%以下含むことが好ましい。二価以上の金属イオンを1重量%を超えて含むと、改質剤(a)を水性分散体から回収する前に凝集が起こり適切な回収方法を適用できず、脱水により改質剤(a)を水性媒体から単離する必要が生じ、最終的に多量の廃水がでてしまうため本発明の目的を達成できなくなる。しかるに本発明においては、改質剤(a)をラテックスから回収するに際して、回収処理後の前記改質剤(a)に含まれる一価の金属イオン量が回収処理前のラテックス中に含まれる一価の金属イオン量と実質的に同量であることが好ましい。かかる改質剤(a)を与える回収処理方法としては、例えば改質剤(a)の水性分散体を好ましくは風乾、キャスティング、スプレー乾燥、より好ましくはスプレー乾燥する方法などが採用できる。回収処理前後で一価の金属イオン量が実質的に変化する方法としては凝固法が挙げられるが、この方法では脱水工程において水溶性である一価の金属イオンとその対イオン成分が廃水に流れ出し、これまで述べたように廃水処理が必要になるなど、好ましからざる結果となる場合がある。なお、ここで言う実質的とは、方法論的に自明である場合には明白であるため処方上の理論値で議論できるが、分析値から調査する必要がある場合には、回収処理後の改質剤(a)の固形分に対する一価の金属イオン含有量の分析値が、回収処理前のラテックス中の固形分に対する分析値(自明である場合は理論値でも良い)の0.5〜2倍の範囲内にあることを言う。本発明は、前述のごとき改質剤(a)を経る本発明の改質剤組成物の製造方法にも及ぶ。
なお、前記回収処理を行うに際しては、発生する排ガスは実質的に水のみを含むために大気放出することが可能だが、用いる原料によっては臭気が発生したり水以外の成分を含む場合があり、そのような場合には凝縮によりそれら成分を回収したり、活性炭やゼオライトなどの吸着剤に吸着させ除去することが好ましい。
前記改質剤(a)には、その製造時に用いられる原料、もしくは副原料に由来する成分で、本発明の改質剤組成物が配合される対象となるマトリクスを熱分解などさせる成分(以下、分解促進成分と呼ぶ)が含まれている場合があり、本発明で用いる二価以上の金属の塩(b)は、該分解促進成分に対して、その熱分解促進作用を失活、もしくは低減させる機能を有するものである。
かかる二価以上の金属の塩(b)としては、限定するものではないが、毒性が少ないことや少量で効果が発現できることから、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の塩、または、アルミニウムの塩が好ましく、それらの塩化物塩などのハロゲン化物塩、四フッ化ホウ素塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、ケイ酸塩、酢酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、水素化ホウ素塩、フェノール塩など種々の塩を挙げることができるが、なかでも塩化物塩、炭酸水素塩、硝酸塩などの無機塩が好ましく用いられる。
前記二価以上の金属の塩(b)の前記改質剤(a)との混合は、粉体などの固体どうしで行われて良いが、効率的に作用させるために好ましくは溶液状の塩(b)を粉体などの固体状の前記改質剤(a)と混合する。用いる溶媒としては水が好ましいが、メタノール、エタノール、アセトンなどを用いることもできる。溶液状の二価以上の金属の塩(b)を混合した場合には、さらに乾燥を行って溶媒を除去する。前記塩(b)と前記改質剤(a)との混合の方法としては、本発明の改質剤組成物が配合される対象となるマトリクスとの混合と同時に行う、塩(b)と改質剤(a)との混合を行ってからマトリクスとの混合を行う、塩(b)とマトリクスとの混合を行ってから改質剤(a)との混合を行う、改質剤(a)とマトリクスとの混合を行ってから塩(b)との混合を行う等の方法が挙げられ、いずれでも良いが、確実に効率よく分解促進成分を失活あるいはその作用を低減させるためには、塩(b)と改質剤(a)との混合を行ってからマトリクスとの混合を行うことが好ましい。
本発明では、改質剤(a)が含んでいる一価の金属の塩において、当該金属塩の20℃における水に対する溶解度が、二価以上の金属の塩(b)の金属イオンと前記一価の金属の塩の陰イオンとからなる化合物の同条件での溶解度よりも大きいことを特徴とするように選択するとき、特に効果が強く発現される。溶解度の測定方法としては、定法が用いられるが、本発明においては必ずしもその絶対的な値を求めた上での比較が必要なわけではなく、相対的な大小関係が明確であればよく、そのため前記一価の金属の塩の水溶液に同濃度以下の二価以上の金属の塩(b)の水溶液を添加し、二価以上の金属の塩(b)の金属イオンと前記一価の金属の塩の陰イオンとからなる化合物の沈殿の生成を確認することで、簡易的に代用することができる。ここで前述のごとく簡易的な方法を用いる場合には、前記一価の金属の塩の水溶液の濃度はその溶解度以下であればよく、また前記沈殿の生成が確認できる範囲で適度な濃度を用いることができる。また、この簡易的な方法においては、前記一価の金属の塩は改質剤(a)から抽出したものを直接用いる以外に、主成分、すなわち前記一価の金属の塩中に51重量%以上含まれる成分のみを別途用意して、モデル的に調査する方法であってかまわない。さらに改質剤(a)の処方が明確である場合には、改質剤(a)を分析して得た値に基づいて前記一価の金属の塩の主成分を決定する方法以外に、処方から理論的に計算できる値に基づいて主成分を決定して差し支えない。
かかる組み合わせとしては、一価の金属の塩としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウムなどの有機スルホン酸アルカリ金属塩、ドデシル硫酸ナトリウムなどの有機硫酸アルカリ金属塩などが挙げられ、二価以上の金属の塩(b)を構成する金属イオンとしては、例えば、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属イオン、またはアルミニウムイオンなどを挙げることができる。かかる二価以上の金属の塩(b)としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどが安価に安全に入手でき、好ましく用いられる。
前記二価以上の金属の塩(b)は、二価以上の金属イオン総量が改質剤(a)に含まれる一価の金属イオン総量に対して0.5倍以上、好ましくは1倍以上、より好ましくは2倍以上、15倍以下、好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下、さらには5倍以下のmol相当量となるよう用いる。前記量を下回るとマトリクスの分解抑制など本発明による効果が得られにくくなり、上回ると最終成形体の耐衝撃性などの物性低下をもたらす場合がある。
以上の様にして得られる本発明の改質剤組成物は、熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂・エラストマーなどのマトリクスと混合して用いられる。ここで言うエラストマーとは、熱可塑性エラストマーを含む概念である。ここで、熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアリーレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン樹脂(AAS)、塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PSt)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、ナイロンなど、またはこれらの混合物などが挙げられ、熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリイミドなどが挙げられ、エラストマーとしてはブチルアクリレート系ゴムなどのアクリルゴム、ブタジエン−アクリロニトリル系共重合体などのニトリルゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、メチルメタクリレート−ブチルアクリレートブロック共重合体、スチレン−イソブチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ポリエステルエラストマーなどが挙げられ、様々なものを用いることができるが、本発明の効果が大幅に発現することが期待できるのは、分子内に加水分解性結合基を持つマトリクスである。加水分解性結合基とは、水分子の作用を受けて炭素−酸素結合や炭素−窒素結合が酸基と水酸基やアミノ基などに解裂する結合基であり、このような結合基としてはエステル結合、アミド結合、カーボネート結合等が挙げられ、それらはマトリクスを構成する主鎖および/または側鎖のいずれに存在してもよいが、特に効果的なのは主鎖にアミド結合や、特にエステル結合、カーボネート結合などが存在するマトリクスであり、これらの結合基を有するPC、PET、PBT、ポリエステルエラストマーなどのマトリクスが好ましい。
本発明の改質剤(a)がオルガノポリシロキサン系樹脂(e)であり、マトリクスがPC、PC/PETアロイ、PC/PBTアロイ、PC/PETアロイなどのPC系樹脂、PPEなどである場合には、本発明の改質剤組成物は難燃剤としても使用することができる。
本発明においてはまた、前記改質剤組成物、重量平均分子量が19000の芳香族ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンを溶融混練して得られる芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物のメルトインデックスが、改質剤(a)、前記芳香族ポリカーボネート、前記ポリテトラフルオロエチレンを溶融混練して得られる対照樹脂組成物のメルトインデックスの好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらには70%以下となる様特徴付けられることが好ましい。前記値を上回る場合には、本発明によるマトリクス樹脂の熱分解抑制効果などが発現しない。なお前記メルトインデックスは、前記芳香族ポリカーボネート100重量部に対して前記改質剤組成物または改質剤(a)を3重量部、ポリテトラフルオロエチレン0.4部を混合し、260℃で溶融混練してペレットを得、該ペレットを120℃にて5時間予備乾燥した後、測定温度260℃にて、予熱5分、荷重5kgの条件でJIS−K7210に基づき測定する。
本発明は、前記改質剤組成物と前記マトリクスを必要に応じて他の配合剤とともに混合した形で、例えばインジェクション成形、押出成形、ブロー成形などすることにより最終成形体へと加工することができる。
以下では、本発明をより具体的に表す実施例を説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。以下、「部」は「重量部」を意味する。
[固形分含有率]
ラテックスを130℃の熱風乾燥機で2時間乾燥し、(130℃で2時間乾燥した後の残渣の重量)/(乾燥前のもとのラテックス重量)として算出した。
[重合転化率]
(仕込み総量(部)×固形分含有率−(乳化剤仕込み量(部)+無機酸及び/又は有機酸仕込み量(部)+ラジカル重合開始剤仕込み量(部)+還元剤(部)+酸化還元触媒(部)))/(仕込み単量体量(部))として算出した。
[体積平均粒子径]
シードポリマー、オルガノポリシロキサン粒子およびグラフト共重合体の体積平均粒子径をラテックスの状態で測定した。測定装置として、日機装株式会社製のMICROTRAC UPA 150を用いて、光散乱法により体積平均粒子径(μm)を測定した。以下この値を粒子径と呼ぶ。
[トルエン不溶分率]
ラテックスにメタノールを添加することにより凝固してから一晩放置し、透明な液層を除去した。さらにメタノールを添加して一晩放置してから透明な液層を除去、その後乾燥させてオルガノポリシロキサンの固体を得た。この0.3gを室温にてトルエン100mlに40時間浸漬後、上澄みを除去しトルエンが膨潤したトルエン不溶分を得、さらにそれを乾燥させた。トルエン不溶分率は、(トルエン乾燥後の重量)/(トルエン浸漬前の重量)として求めた。
[重量平均分子量(Mw)]
トルエン不溶分率を得るときと同様にして、オルガノポリシロキサンの固形分を得た。この固体中のクロロホルム可溶分を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析することにより重量平均分子量(Mw)を決定した。GPC分析においてはWaters社製GPCシステムを使用し、カラムはポリスチレンゲルカラム Shodex K−806およびK805(昭和電工株式会社製)を用い、クロロホルムを溶出液とし、ポリスチレン換算で解析した。
[耐衝撃性]
ASTM D−256に準じて、ノッチつき1/8インチバーを用いて0℃でのアイゾット試験により評価した。
[難燃性]
UL94 V試験により評価した。
[メルトインデックス]
ペレットを120℃にて5時間予備乾燥した後、測定温度260℃にて、予熱5分、荷重5kgの条件で、メルトインデクサー 型式:P−101(東洋精機株式会社製)を用いてJIS−K7210に準拠し測定した。
(参考例1) ポリブチルアクリレート系シードポリマー(SD−1)の製造
撹拌機、還流冷却器、チッ素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、水400重量部および15%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(花王株式会社製、ネオペレックスG15)を12部(固形分)を混合したのち50℃に昇温し、液温が50℃に達した後、窒素置換を行った。その後ブチルアクリレート10部、t−ドデシルメルカプタン3部を加えた。30分後、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.01部(固形分)、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.3部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)0.01部、硫酸第一鉄0.0025部を添加し、1時間攪拌した。ブチルアクリレート90部、t−ドデシルメルカプタン27部、および、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.09部(固形分)の混合液を3時間かけて連続追加した。その後、2時間の後重合を行い、粒子径が0.03μm、重合転化率が90%(t−ドデシルメルカプタンを原料成分とみなした)のシードポリマー(SD−1)を含むラテックスを得た。
(参考例2〜4) オルガノポリシロキサン粒子(S−1〜3)の製造
表1に示す組成でホモミキサーにより7500rpmで5分間撹拌してシロキサンエマルジョンを調製した。別途、表1に示した量の固形分に相当するシードポリマー(SD−1)ラテックスを撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに仕込んだ。このフラスコに先のエマルジョンを一括して添加した。窒素気流下系を撹拌しながら80℃に昇温し、次に10%ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA、花王株式会社製、ネオペレックスGS)水溶液1部(固形分)を添加した。15時間反応させ、25℃に冷却して20時間放置後、系のpHを3%水酸化ナトリウム水溶液で6.5にして重合を終了し、オルガノポリシロキサン粒子(S−1〜3)を含むラテックスを得た。重合転化率、オルガノポリシロキサン粒子のラテックスの粒子径およびトルエン不溶分率、重量平均分子量(Mw)を測定した結果を表1に示す。
Figure 0004368181
(参考例5〜7) オルガノポリシロキサン系グラフト共重合体(SG−1〜3)の製造
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口および温度計を備えた5口フラスコに、純水240部(オルガノシロキサン粒子を含むラテックスからの持ち込み分を含む)、および参考例2〜4で得たオルガノポリシロキサン粒子(S−1〜3)のラテックスを表2に示す量(ただし、表2は固形分相当)仕込み、系を撹拌しながら窒素気流下に表2に示す温度まで昇温した。表2に示す温度到達の1時間後に、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.2部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA)0.01部、硫酸第一鉄0.0025部を添加したのち、表2に示す組成のグラフト単量体の混合物(MG−1)を一括で追加し、1時間撹拌を続けた。その後、表2に示す組成のグラフト単量体の混合物(MG−2)を1時間かけて滴下追加し、追加終了後、さらに2時間撹拌を続けることによってオルガノポリシロキサン系グラフト共重合体(SG−1〜3)のラテックスを得た。グラフト部すべての重合転化率、ラテックスの粒子径を測定した結果を表2に示す。
Figure 0004368181
(実施例1〜4)
参考例5で得たオルガノポリシロキサン系グラフト共重合体(SG−1)のラテックスを大川原化工機株式会社製スプレー乾燥機L−12型を用いてスプレー乾燥に供し、改質剤(a)の粉体として回収した。回収樹脂100部に対して表3に示す量(ただし固形分相当)の25重量%塩化カルシウム(CaCl2)水溶液を添加し、さらに50℃で一晩静置乾燥し、改質剤組成物を得た。処方から計算される改質剤(a)中の一価の金属イオン総量、および二価の金属イオン総量、ならびに添加した塩化カルシウム由来のカルシウムイオンの前記一価の金属イオン総量に対するモル倍数を表3に示した。
得られたオルガノポリシロキサン系グラフト共重合体(SG−1)を含む改質剤組成物3部を、ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業株式会社製、商品名:ポリフロンFA−500)0.4部とともにポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製、商品名:パンライトL1225WX)100部に対して配合した。得られた配合物を2軸押出機(株式会社日本製鋼所製 TEX44SS)で270℃にて溶融混錬し、ペレットを製造した。得られたペレットを用いて、前記評価方法に従ってメルトインデックスを測定した。また、得られたペレットをシリンダー温度280℃に設定した株式会社ファナック(FANUC)製のFAS100B射出成形機で1/20インチの難燃性評価用試験片および1/8インチの耐衝撃性評価用試験片を作成した。得られた試験片を用いて前記評価方法に従って評価した。成型体のメルトインデックス、耐衝撃性と難燃性の結果を表3に併せて示す。
Figure 0004368181
処方から、改質剤(a)に含まれる一価の金属の塩の主成分はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。別途用意したドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの15重量%水溶液10gに対して20℃で塩化カルシウムの15重量%水溶液5gを添加したところ、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムの白色沈殿を得た。これより、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの溶解度は15重量%よりも大きく、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムの溶解度は15重量%よりも小さいことが確認された。
(実施例5)
スプレー乾燥機の変わりに熱風循環式オーブンを使用し、120℃で5日間風乾した以外は実施例2同様とした。結果を表3に示した。
(実施例6、7)
実施例2におけるオルガノポリシロキサン系グラフト共重合体(SG−1)のラテックスの変わりに参考例6、7で得たSG−2、3を用いた以外は実施例2同様とした。結果を表3に示した。
(実施例8) 25重量%塩化カルシウム水溶液1.8部(固形分相当)の代わりに25重量%塩化マグネシウム(MgCl2)水溶液1.8部(固形分相当)を用いた以外は実施例2同様とした。結果を表3に示した。
(比較例1)
改質剤(a)に塩化カルシウム水溶液を添加しなかった以外は、実施例2同様とした。結果を表4に示した。
Figure 0004368181
(比較例2)
参考例5で得たオルガノポリシロキサン系グラフト共重合体(SG−1)のラテックスに2.5重量%塩化カルシウム水溶液4部(固形分相当)を加えて凝固・撹拌した後に、系の固形分濃度が10重量%となるよう水を加え、さらに撹拌を加えて均一なスラリーにした。このスラリーを95℃まで昇温し、熱処理した後に、65℃になるまで放冷し、この後に脱水を行った。得られた脱水樹脂の含水率(100%−固形分含有率に当たる)は50%だった。脱水樹脂を熱風循環式オーブンで3日間乾燥し、改質剤(凝固品)を得た。
得られた改質剤(凝固品)を実施例2の改質剤組成物に代えて用いた以外は、実施例2と同様とした。結果を表4に示した。
(比較例3)
比較例2おける2.5重量%塩化カルシウム水溶液4部(固形分相当)の代わりに同10部を用いた以外は実施例2と同様とした。結果を表4に示した。
(比較例4)
比較例2において脱水を行わず、熱処理後のスラリーをそのまま熱風循環式オーブンで1週間乾燥した以外は実施例2と同様とした。結果を表4に示した。
(比較例5)
比較例1におけるオルガノポリシロキサン系グラフト共重合体(SG−1)のラテックスの変わりに参考例6、7で得たSG−2、3を用いた以外は比較例1同様とした。結果を表4に示した。
なお表中において、SDBSはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、D4は1,3,5,7−オクタメチルシクロテトラシロキサン、DSMAはメタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、MPrDMSはメルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、DBSAはドデシルベンゼンスルホン酸、AlMAはアリルメタクリレート、TBPIPCはt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、MMAはメチルメタクリレート、CHPはクメンハイドロパーオキサイドを示す。
表3、表4に見るように、二価以上の金属の塩(b)を添加しなかった比較例1および5、6に比較して、実施例2はメルトインデックスが大きすぎることなく、すなわち樹脂の分解が起こっていないことが示唆されており、かつ難燃性・耐衝撃性が良好であることが分かる。実施例2に加えて実施1、3、4からも、本発明の範囲で二価以上の金属の塩(b)を用いることにより良好な結果を与えることが示された。実施例5からは、改質剤(a)の回収に当たり静置乾燥を行っても実施例2のスプレー乾燥を行う方法と同等の良好な結果が得られたことが分かる。実施例6、7と比較例5、6からこれらは樹脂の種類によらず成り立つことが示された。比較例2、3は凝固法により改質剤(a)の回収を行ったものであるが、得られる改質剤(凝固品)の約9倍もの廃水が発生し、本発明の目的を達成しない。比較例4では多くの二価以上の金属イオンを含むため凝固が起こっており、得られたスラリーをすべて風乾し廃水を発生させていないものの、実施例2と比較して明らかなように性能が低下していることが分かる。以上より、実施例1〜8はいずれも本発明の目的、すなわち廃水といった環境負荷を低減したままで物性を同時に発現することを達成しており、優れたものである。

Claims (8)

  1. 樹脂(c)を主成分とする改質剤組成物の製造方法であって、順に、
    該樹脂(c)、一価の金属イオン、及び、二価以上の金属イオンを含む改質剤(a)の水性分散体であって、該二価以上の金属イオンの含有量が、該水性分散体の固形分に対して1重量%以下である水性分散体を、風乾、キャスティング、及びスプレー乾燥からなる群から選ばれる1種以上の方法で乾燥して粉体を得る工程、及び
    該粉体に、該一価の金属イオン総量の0.5〜15倍モル量の二価以上の金属イオンの塩(b)であって、該二価以上の金属イオンの塩(b)の金属イオンと該一価の金属イオンの塩の陰イオンとからなる化合物の20℃における水への溶解度が、該一価の金属イオンの塩の同条件での溶解度よりも小さい二価以上の金属イオンの塩(b)を混合する工程を含む改質剤組成物の製造方法。
  2. 前記改質剤(a)が、ラテックスから回収される樹脂(c)を含むことを特徴とする請求項1に記載の改質剤組成物の製造方法
  3. 前記樹脂(c)が、グラフト共重合体(d)である、請求項1または2に記載の改質剤組成物の製造方法
  4. 前記樹脂(c)が、オルガノポリシロキサン系樹脂(e)を含むことを特徴とする請求項1〜3何れか1項に記載の改質剤組成物の製造方法
  5. 前記樹脂(c)が、オルガノポリシロキサン系樹脂(e)のラテックスの存在下にビニル系単量体、オレフィン系単量体、ジエン系単量体から選ばれる少なくとも一つの単量体を一段以上重合して得られるオルガノポリシロキサン系グラフト共重合体(f)である、請求項4に記載の改質剤組成物の製造方法
  6. 前記水性分散体であって、前記二価以上の金属イオンの含有量が、前記水性分散体の固形分に対して0.05重量%以下である請求項1〜5の何れか1項に記載の改質剤組成物の製造方法。
  7. 前記二価以上の金属イオンの塩(b)の金属成分が、アルカリ土類金属、アルミニウムから選択される少なくとも一種の金属であることを特徴とする請求項1〜6何れか1項に記載の改質剤組成物の製造方法
  8. 前記二価以上の金属イオンの塩(b)が無機塩であることを特徴とする請求項1〜7何れか1項に記載の改質剤組成物の製造方法
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